(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】爆発安定性に優れた板状アルミニウムを含む顔料組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20240918BHJP
C09C 1/64 20060101ALI20240918BHJP
C09C 1/62 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/64
C09C1/62
(21)【出願番号】P 2023532359
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 KR2021015051
(87)【国際公開番号】W WO2022119122
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0167192
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520138287
【氏名又は名称】シーキューブ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CQV CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】144,Seongjung-ro,Jincheon-eup,Jincheon-gun,Chungcheongbuk-do 27845,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナム イル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジャン フン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ユン ソク
(72)【発明者】
【氏名】シン、デ ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、グム ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ギル ワン
(72)【発明者】
【氏名】イム、グァン ス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ビョン ギ
(72)【発明者】
【氏名】カン、グァン ジュン
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518910(JP,A)
【文献】特開2000-198944(JP,A)
【文献】特開2018-188665(JP,A)
【文献】特開昭62-146962(JP,A)
【文献】特開2020-063424(JP,A)
【文献】特開平07-069636(JP,A)
【文献】特表2018-536733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレーク、及び、
金属酸化物層が被覆されたTiO
2を含
み、
前記アルミニウムフレークが、SiO
2
を含む第1酸化物層と、屈折率1.8以上の金属酸化物を含む第2酸化物層とを含み、
前記TiO
2
を被覆する金属酸化物層が、Fe
2
O
3
を含む
ことを特徴とする爆発安定性が改善された顔料組成物。
【請求項2】
前記TiO
2は、1μm~150μmの平均直径及び10nm~500nmの厚さを示す
請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項3】
前記TiO
2は、内部に中空を含む
請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項4】
前記アルミニウムフレークとTiO
2は、1:9~7:3の重量比で混合される
請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項5】
産業用コーティング、ワニス、自動車コーティング、粉末コーティング、印刷インク又は化粧品用途に使用される
請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項6】
アルミニウムフレークを
、SiO
2
を含む第1酸化物層
と、屈折率1.8以上の金属酸化物を含む第2酸化物層で順次被覆し、被覆アルミニウムフレークを得る段階;
板状フレークにTiO
2をコーティングする段階;
前記TiO
2がコーティングされた板状フレークを酸処理及び塩基処理し、板状フレークが除去されたTiO
2板状粒子を得る段階;
前記TiO
2板状粒子の表面に
Fe
2
O
3
を含む金属酸化物をコーティングし、被覆TiO
2板状粒子を得る段階;及び、
前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO
2板状粒子とを混合する段階;を含む
ことを特徴とする顔料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO
2板状粒子とを乾式で混合する
請求項6に記載の顔料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発安定性に優れた板状アルミニウムを含む顔料組成物、その製造方法及び使用用途に関し、より詳細には、複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレーク、及び金属酸化物層が被覆されたTiO2を含み、爆発安定性が確保された顔料組成物、その製造方法及び使用用途に関する。本出願は、2020年12月3日に出願された韓国特許出願第10-2020-0167192号に基づいた優先権を主張し、該当の出願の明細書及び図面に示した全ての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
真珠光沢顔料は、光の特性及び物質の屈折を用いて特殊な色及び光沢効果を出す真珠光、虹光、金属光を放つ顔料を通称するものであって、特殊光沢顔料の一種である。普通の顔料は、定められた色のみを発色するようになっているが、真珠光沢顔料は、見る角度によって色が多様になるという特徴を有しているので、多様な産業領域に利用可能であり、持続的に研究・開発されている分野である。媒介質の屈折率の差によって天然真珠などの虹彩色又は金属性光沢を出すことができ、多様な色及び光沢を具現するために、二酸化チタン、酸化鉄、二酸化ケイ素などの多様な金属酸化物が混合されて使用されている。
【0003】
ただし、顔料内の金属基材がアルミニウムを含む場合、テルミット反応(thermic reaction)が問題となり得る。前記テルミット反応は、アルミニウムとその他の金属酸化物との間の発熱化学反応であって、これを抑制することが要求される。
【0004】
特許文献1:韓国登録特許第2107608号では、水性コーティング段階で非金属微粒子を混合し、金属酸化物をコーティングする工程を紹介しているが、非金属微粒子と金属フレークの比重及び比表面積などの差によって均一な色のコーティングが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、アルミニウムと金属酸化物のテルミット反応による爆発に安定性を示す顔料組成物を製造しようと研究・努力した結果、複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレークと、金属酸化物層が被覆されたTiO2とを混合することによって、彩度及び隠蔽力を維持しながらも爆発安定性が向上した顔料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレーク、及び
金属酸化物層が被覆されたTiO2を含む爆発安定性が改善された顔料組成物を提供する。
前記TiO2は、1μm~150μmの平均直径及び10nm~500nmの厚さを示すことができる。
【0008】
前記TiO2は、内部に中空を含むことができる。
【0009】
前記アルミニウムフレークは、屈折率1.8以下の金属酸化物を含む第1酸化物層、及び屈折率1.8以上の金属酸化物を含む第2酸化物層が順次被覆されたものであってもよい。
【0010】
前記金属酸化物は、Fe2O3、SnO2、ZrO2、SiO2、MgO・2、MgO・2O3、K2O・2、MnO及びMg2SiO4から選ばれた1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0011】
前記TiO2を被覆する金属酸化物層は、Fe2O3を含むことができる。
【0012】
前記アルミニウムフレークとTiO2は、1:9~7:3の重量比で混合されてもよい。
【0013】
前記顔料組成物は、産業用コーティング、ワニス、自動車コーティング、粉末コーティング、印刷インク又は化粧品用途に使用されてもよい。
【0014】
一方、本発明は、
アルミニウムフレークを第1酸化物層及び第2酸化物層で順次被覆し、被覆アルミニウムフレークを得る段階;
板状フレークにTiO2をコーティングする段階;
前記TiO2がコーティングされた板状フレークを酸処理及び塩基処理し、板状フレークが除去されたTiO2板状粒子を得る段階;
前記TiO2板状粒子の表面に金属酸化物をコーティングし、被覆TiO2板状粒子を得る段階;及び
前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO2板状粒子とを混合する段階;を含む顔料組成物の製造方法を提供する。
【0015】
前記TiO2板状粒子の表面にFe2O3を含む金属酸化物をコーティングし、被覆TiO2板状粒子を得ることができる。
【0016】
前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO2板状粒子は、乾式で混合することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る顔料組成物は、他の板状無機粒子に比べて見掛け比重が低い金属酸化物層が被覆されたTiO2を混合し、彩度及び隠蔽力の低下を防止しながらも、アルミニウムと金属酸化物によるテルミット反応に対する安定性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対して詳細に説明する。これに先立って、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的又は辞典的な意味に限定して解釈してはならなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念によって解釈する。よって、本明細書の実施例に記載の構成は、本発明の最も好ましい実施例に過ぎなく、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらに取って代わる多様な均等物及び変形例があり得る。
【0019】
本発明の顔料組成物は、複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレーク、及び金属酸化物層が被覆されたTiO2を含むことを特徴とする。
【0020】
前記TiO2は、板状型からなり、内部中央を貫通する中空を含み得るが、これに限定されない。前記TiO2が中空を含む場合、重さが軽くなり、他の板状無機顔料に比べて見掛け比重が低いので、他の顔料より低い混合比率でも同一の爆発安定性を確保することができる。
【0021】
前記TiO2は、1μm~150μmの平均直径及び10nm~500nmの厚さを示すことができ、内部中央を貫通する中空を含む場合、中空を除いた基材自体の厚さを意味する。
【0022】
また、前記TiO2は、厚さによって干渉色が変わり得るが、具体的には、30nm~70nmの厚さを有する場合は白色(White)の干渉色を示し、70nm~100nmの厚さを有する場合は金色(Gold)の干渉色を示し、100nm~120nmの厚さを有する場合は赤色(Red)の干渉色を示し、120nm~140nmの厚さを有する場合は紫色(Violet)の干渉色を示し、140nm~160nmの厚さを有する場合は青色(Blue)の干渉色を示し、170nm~190nmの厚さを有する場合は緑色(Green)の干渉色を示す。
【0023】
前記TiO2の表面には金属酸化物層が被覆される。前記金属酸化物は、Fe2O3、SnO2、ZrO2、SiO2、MgO・2、MgO・2O3、K2O・2、MnO及びMg2SiO4から選ばれた1種又は2種以上の混合物を含み得るが、好ましくはFe2O3を含むことができる。
【0024】
前記金属酸化物は、TiO2 100重量部に対して、10重量部~100重量部が含まれてもよく、好ましくは20重量部~80重量部、さらに好ましくは25重量部~50重量部、最も好ましくは25重量部~35重量部が含まれてもよい。
【0025】
また、前記アルミニウムフレークの表面には、複数の金属酸化物層が被覆される。前記アルミニウムフレークは、1μm~150μmの平均直径及び10nm~500nmの厚さを示すことができる。
【0026】
前記アルミニウムフレークは、屈折率1.8以下の金属酸化物を含む第1酸化物層、及び屈折率1.8以上の金属酸化物を含む第2酸化物層が順次被覆されたものであってもよい。好ましくは、前記第1酸化物層に含まれる金属酸化物はSiO2であってもよく、前記第2酸化物層に含まれる金属酸化物はFe2O3であってもよいが、これに限定されない。
【0027】
本発明の顔料組成物は、前記複数の金属酸化物層が被覆されたアルミニウムフレークと、金属酸化物層が被覆されたTiO2とが1:9~7:3の重量比で混合されたものであってもよく、好ましくは3:7~6:4の重量比で混合されたものであってもよく、最も好ましくは4:6~5:5の重量比で混合されたものであってもよい。
【0028】
本発明の顔料組成物は、産業用コーティング、ワニス、自動車コーティング、粉末コーティング、印刷インク又は化粧品用途に使用されてもよい。
【0029】
また、本発明は、
アルミニウムフレークを第1酸化物層及び第2酸化物層で順次被覆し、被覆アルミニウムフレークを得る段階;
板状フレークにTiO2をコーティングする段階;
前記TiO2がコーティングされた板状フレークを酸処理及び塩基処理し、板状フレークが除去されたTiO2板状粒子を得る段階;
前記TiO2板状粒子の表面に金属酸化物をコーティングし、被覆TiO2板状粒子を得る段階;及び
前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO2板状粒子とを混合する段階;を含む顔料組成物の製造方法であることを特徴とする。
【0030】
まず、アルミニウムフレークを第1酸化物層及び第2酸化物層で順次被覆する。
【0031】
好ましくは、前記第1酸化物層に含まれる金属酸化物はSiO2であってもよく、前記第2酸化物層に含まれる金属酸化物はFe2O3であってもよい。
【0032】
具体的には、前記アルミニウムフレークを溶媒に投入し、Si前駆体化合物を添加して撹拌した後、塩基性溶液を添加しながら追加的に撹拌し、SiO2を含む第1不動態層を形成することができる。
【0033】
前記Si前駆体化合物としては、テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate、TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(Tetra Methyl Ortho Silicate、TMOS)などを使用することができる。
【0034】
次に、前記第1不動態層に形成されたアルミニウムフレークを脱イオン水に投入し、Fe前駆体化合物を添加して撹拌した後で熱処理することによって、Fe2O3を含む第2不動態層を形成することができる。このとき、pH調節剤を用いてpHを1~5の範囲で調節することが好ましく、さらに好ましくは、pHを2~4の範囲に調節すると良い。
【0035】
前記Fe前駆体化合物としては、FeCl3、Fe(NO3)3、FeSO4などを使用することができる。
【0036】
前記第2不動態層が形成されたアルミニウムフレークを脱水、水洗い及び乾燥させた後、200℃~400℃で熱処理することによって、顔料組成物内の第1成分である被覆アルミニウムフレークを得ることができる。
【0037】
次に、別途の板状フレークを準備し、前記フレークの表面にTiO2をコーティングする。
【0038】
具体的には、前記板状フレークを脱イオン水に懸濁させ、pH1~5、好ましくはpH1.5~2.5の酸性条件に維持した状態でTi前駆体化合物と塩基性溶液を添加した後、撹拌及び焼成することによってTiO2コーティング層を形成することができる。
【0039】
前記Ti前駆体化合物としては、TiCl4、TiOCl2、Ti(SO4)2、Ti(NO3)4などを使用することができる。
【0040】
前記板状フレークは、雲母、板状シリカ及びガラスフレーク(glass flake)から選ばれた1種以上を含むことができ、このうち雲母を用いることが好ましい。このような板状フレークとしては、粉砕及び分級された粉末を用いたり、粉末を製造した後で粉砕及び分級したものを使用することができる。
【0041】
前記板状フレークとしては、平均直径が1μm~150μmを示すものを用いることが好ましい。板状フレークの平均直径が前記範囲未満である場合は、板状フレーク基材の表面に物質がコーティングされながら、コーティングの厚さが増加するほど板状フレーク基材が徐々に球体の形態に変化することに起因して角形比が減少するが、角形比が減少する場合は、乱反射を引き起こし、光の散乱をもたらすようになり、一定に同一の屈折率を有する同一の色を示すことができないという問題がある。その一方で、板状フレークの平均直径が前記範囲を超える場合は、コーティングされる表面積が増加するので、色を具現するためのコーティング層の構成が難しくなり得る。
【0042】
前記板状フレークの表面にTiO2をコーティングし、TiO2のコーティング層は、10nm~1,000nmの厚さを示すことができ、好ましくは50nm~500nm、さらに好ましくは100nm~300nmの厚さを示すことができる。
【0043】
次に、前記TiO2がコーティングされた板状フレークを酸処理及び塩基処理し、板状フレークが除去されたTiO2板状粒子を得る。
【0044】
まず、TiO2がコーティングされた板状フレークを脱イオン水に混合して懸濁させた状態で酸性溶液を投入し、1次的に酸処理した後、還流、水洗い及びろ過することができる。
【0045】
このとき、酸処理では、300rpm~500rpmの速度で撹拌しながら、15kHz~40kHz及び70W~110Wの出力電力条件で超音波を印加することがより好ましい。
【0046】
撹拌速度が300rpm未満であったり、超音波出力電力が70W未満である場合は、撹拌が不十分になり得る。その一方で、撹拌速度が500rpmを超えたり、超音波出力電力が110Wを超える場合は、粒子の割れが激しくなり、不必要な小さいサイズの粒子が多く発生するので、所望の大きさにサイズを制御したり、後工程を進行することが難しくなる。
【0047】
このとき、酸性溶液としては、硫酸、リン酸及び硝酸などから選ばれたいずれか一つを単独で使用したり、
【0048】
又は、これらのうち少なくとも二つ以上を混合した混合溶液を用いることができる。このような酸性溶液としては、40重量%~60重量%の濃度に希釈されたものを用いることが好ましい。酸性溶液の濃度が前記範囲未満である場合は、1次酸処理時、板状フレークがうまく溶解されないので、中空構造の確保に困難が伴われ得る。その一方で、酸性溶液の濃度が前記範囲を超える場合は、過度な濃度により、板状フレークと共に被覆されたTiO2コーティング層が共に溶解されるという問題をもたらし得る。
【0049】
本段階において、還流は、80℃~120℃で4時間~6時間にわたって実施することが好ましい。還流温度が80℃未満であったり、又は還流時間が4時間未満である場合は、十分な溶解率を確保することができなく、不均一な中空球の生成により、不溶板状フレークによって表面クラックを誘発し得る。その一方で、還流温度が120℃を超えたり、又は還流時間が6時間を超える場合は、撹拌による中空球コーティング層の割れやTiO2コーティング層の分離現象が現れ得るので好ましくない。
【0050】
前記酸処理後、脱水及び水洗いを行った結果物に脱イオン水を混合して懸濁させた状態で塩基性溶液を投入し、2次的に塩基処理した後、還流及びろ過することができる。
【0051】
前記塩基性溶液としては、40重量%~55重量%の濃度の強塩基を用いることが好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれた1種以上を用いることができる。
【0052】
塩基性溶液の濃度が40重量%未満である場合は、1次的に酸処理されたTiO2コーティング板状フレークが完全に溶解されないので、中空形態が形成され得ないおそれがある。その一方で、塩基性溶液の濃度が55重量%を超える場合は、過度な濃度により、板状フレーク基材のみならず、被覆されたTiO2層が共に溶解され得るので好ましくない。
【0053】
このとき、還流は、50℃~70℃で1時間~3時間にわたって実施することが好ましい。
【0054】
前記過程を通じて、TiO2コーティング層が形成された板状フレークを1次的に酸処理することによって板状フレークの半分以上を除去した状態で、2次的にアルカリ処理を実施するので、板状フレークを完全に全て除去することが可能であり、中空構造を形成することができる。
【0055】
前記塩基処理の結果物を乾燥させ、板状フレークが除去された中空構造のTiO2板状粒子を得ることができる。
【0056】
このとき、乾燥は、100℃~150℃で10分~120分間実施することが好ましい。乾燥温度が100℃未満である場合は、乾燥時間が長くなり、経済性及び生産性が低下し得る。その一方で、乾燥温度が150℃を超える場合は、粉末粒子の間に凝集が増加する現象が発生し得るので好ましくない。
【0057】
次に、前記TiO2板状粒子の表面に金属酸化物をコーティングし、被覆TiO2板状粒子を得る。
【0058】
前記金属酸化物としてはFe2O3を含み得るが、具体的には、脱イオン水に投入し、Fe前駆体化合物を添加して撹拌した後で熱処理することによって、Fe2O3を含む第2不動態層を形成することができる。このとき、pH調節剤を用いてpHを1~5の範囲に調節することが好ましく、さらに好ましくは、pHを2~4の範囲に調節すると良い。
【0059】
前記Fe前駆体化合物としては、FeCl3、Fe(NO3)3、FeSO4などを使用することができる。
【0060】
前記Fe2O3を含む金属酸化物をコーティングした後、脱水、水洗い及び乾燥させた後、500℃~1,000℃で熱処理し、顔料組成物内の第2成分である被覆TiO2板状粒子を得ることができる。
【0061】
次に、前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO2板状粒子とを混合し、最終顔料組成物を得る。
【0062】
前記被覆アルミニウムフレークと被覆TiO2板状粒子は、1:9~7:3の重量比で混合されてもよく、好ましくは3:7~6:4の重量比で混合されてもよく、最も好ましくは4:6~5:5の重量比で混合されてもよい。また、前記被覆アルミニウムフレークと前記被覆TiO2板状粒子は、水性溶媒などから分離された状態で乾式で混合されることが好ましい。
【0063】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び実験例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る各実施例は、多くの他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記で詳述する各実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の各実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0064】
製造例1:被覆アルミニウムフレークの製造
【0065】
D50 15μmのアルミニウムフレーク100gをイソプロピルアルコール(IPA)490gに投入し、第1スラリーを製造した。その後、テトラエチルオルトシリケート(Tetra Ethyl Ortho Silicate、TEOS)50gを第1スラリーに投入し、7.5cmのインペラーを用いて400rpmで撹拌を実施した。次に、前記第1スラリーを50℃に昇温した後、H2O 140g及び25%のアンモニア水5gを投入した。その後、50℃に維持しながら約20時間にわたって撹拌し、シリコン酸化物材質の第1不動態層を形成した。その後、IPAで脱水/水洗いした後で乾燥させた。
【0066】
前記第1不動態層がコーティングされたアルミニウムフレーク30gを浄水300gに投入することによって第2スラリーを製造し、7.5cmのインペラーを用いて400rpmで撹拌を実施した。その後、75℃に昇温し、pH3.0に調節した後、30分間還流した。次に、pH3.0に維持しながらFeCl3水溶液を投入した。このとき、pH維持には苛性ソーダを使用した。FeCl3水溶液の投入初期には銅色を示し、FeCl3水溶液の投入量が増加しながら銅色から金色に変化したことを確認した後、FeCl3水溶液の投入を中止した。その後、浄水で脱水、水洗い及び乾燥させて得た粉末を300℃で1時間熱処理し、被覆アルミニウムフレークを得た。
【0067】
製造例2:中空型被覆TiO2板状粒子の製造
【0068】
まず、脱イオン水2Lにマイカ粒子100gを懸濁させた後、80℃でpH1.5に維持しながら40重量%のTiOCl2と水酸化ナトリウム溶液を同時に添加した。これを通じて、マイカ粒子の表面にTiO(OH)2コーティング層を生成した。所望の干渉色が得られたら、TiOCl2と水酸化ナトリウム溶液の添加を中止した後、10分以上撹拌し、洗浄及び乾燥させた後、850℃で焼成することによってTiO2コーティング層を合成マイカ粒子の表面に形成した。
【0069】
次に、板状TiO2粒子を製造するために酸処理及びアルカリ処理を施した。まず、反応器に凝縮器を装着した後、硫酸400mlを入れながら400rpmで撹拌した。次に、100℃に維持した状態で6時間にわたって還流(Reflux)させ、冷却した後、800mlの水を添加しながら再び還流した。その後、フィルターペーパー(Filter Paper)を用いてろ過してから1000mlの水で4回洗浄した。次に、酸処理されたパウダーを3Lのフラスコに入れ、脱イオン水800mlを入れ、400rpmの速度で撹拌して懸濁させた後、50重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液400mlを投入してから、60℃に維持した状態で4時間にわたって還流した。その後、フィルターペーパーを用いてろ過し、800mlの水で4回洗浄した後、120℃で乾燥させることによって中空型TiO2板状粒子を製造した。
【0070】
前記中空型TiO2板状粒子30gを浄水500gに投入することによってスラリーを形成し、7.5cmのインペラーを用いて400rpmで撹拌を実施した。その後、75℃に昇温し、pH3.0に調節した後で30分間還流した。次に、pH3.0に維持しながらFeCl3水溶液を投入した。このとき、pH維持には、苛性ソーダを使用した。FeCl3水溶液の投入量が増加しながら金色に変化させた後、FeCl3水溶液の投入を中止した。その後、浄水で脱水、水洗い及び乾燥させて得た粉末を800℃で1時間熱処理し、中空型被覆TiO2板状粒子を得た。
【0071】
実施例1:顔料組成物の製造
【0072】
前記製造例1で製造された被覆アルミニウムフレークと前記製造例2で製造された被覆TiO2板状粒子とを混合し、顔料組成物を製造した。
【0073】
実験例1:爆発安定性の確認
【0074】
前記実施例1の顔料組成物において、被覆アルミニウムフレークと被覆TiO2中空型板状粒子との乾式混合比率を異ならせて混合し、それによる爆発力を測定した結果を下記表1に示した。
【0075】
下記爆発力は、パウダー3gに火炎を直接接触させ、テルミット反応を起こした後、その爆発の程度を比較して示した。このとき、爆発の程度は、被覆アルミニウムフレーク単独(100%)の爆発力を10として相対的に比較した値を意味する。
【0076】
【0077】
前記表1に示すように、被覆アルミニウムフレークと被覆TiO2板状粒子の重量比5:5までは爆発力が低く維持されることが確認できたが、被覆TiO2板状粒子の重量比率が高くなるほど爆発力が高くなることが確認できた。
【0078】
一方、前記被覆アルミニウムフレークを合成マイカ(Mica)や金属酸化物がコーティングされた一般TiO2粒子と混合し、前記と同一に爆発力を確認した結果を下記表2乃至表4に示した。
【0079】
比較のために使用された合成マイカとしては、D50を基準にして約20μm、厚さは約500nmの板状合成マイカを使用した。
【0080】
また、TiO2コーティングされた合成マイカとしては、前記合成マイカを浄水に10重量%で希釈した後、70℃でTiOCl2と水酸化ナトリウムを用いてpH1.8に一定に維持し、金色(Gold)トーンが具現されるまで行った後、脱水/水洗い、熱処理して製造したものを使用した。
【0081】
また、Fe2O3コーティングされた合成マイカとしては、前記合成マイカを浄水に10重量%で希釈した後、70℃でFeCl3と水酸化ナトリウムを用いてpH3.0に一定に維持し、銅色(bronze)トーンが具現されるまで行った後、脱水/水洗い、熱処理して製造したものを使用した。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
前記表2乃至表4に示すように、アルミニウムフレークと一般的な無機粒子とを混合する場合は爆発力が高く維持されることを確認したので、本発明の顔料組成物が相対的に爆発安定性を確保したことが確認できた。
【0086】
実験例2:顔料組成物の彩度及び隠蔽力の確認
【0087】
前記実験を通じて、本発明の顔料組成物が被覆アルミニウムフレークと被覆TiO2板状粒子を5:5の重量比率で混合する場合は爆発安定性が確保されることを確認したので、被覆アルミニウムフレークと他の無機粒子は、5:5の重量比で混合した顔料組成物と彩度及び隠蔽力を測定して比較し、これを下記表5に示した。
【0088】
前記表5において、実施例は、前記製造例1の被覆アルミニウムフレークと製造例2の被覆TiO2板状粒子とが5:5の重量比で混合された組成物を示す。
【0089】
一方、下記表5において、比較例1は、製造例1の被覆アルミニウムフレークと合成マイカー粒子とが5:5の重量比で混合された組成物を示し、比較例2は、製造例1の被覆アルミニウムフレークとTiO2がコーティングされた合成マイカ粒子とが5:5の重量比で混合された組成物を示し、比較例3は、製造例1の被覆アルミニウムフレークとFe2O3がコーティングされた合成マイカ粒子とが5:5の重量比で混合された組成物を示す。
【0090】
【0091】
前記表5において、C*は、彩度を意味し、dC*は、製造例1の被覆アルミニウムフレークとの彩度の差を意味する。
【0092】
前記表5に示すように、実施例の顔料組成物が他の顔料組成物に比べて優れた彩度及び隠蔽力を示すことが確認できた。