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  • 特許-接近報知システム 図1
  • 特許-接近報知システム 図2
  • 特許-接近報知システム 図3
  • 特許-接近報知システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】接近報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024026988
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115360
【氏名又は名称】ヨシモトポール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直紀
(72)【発明者】
【氏名】生田 泰雄
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-024833(JP,A)
【文献】特開2020-003832(JP,A)
【文献】特開2008-059126(JP,A)
【文献】特開平05-046897(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01775692(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩道の切下げ部に隣接した場所に配置され、歩車道の境界近傍の歩道に設置される道路附属物を備え
前記道路附属物は、
切下げ部を挟んで設置されている第1の道路附属物及び第2の道路附属物を有し、
前記第1の道路附属物は、
第1の柱状部と、
前記第1の柱状部の上部に設けられ、該第1の道路附属物の周辺の移動物体を検知する第1のセンサを有し、
前記第1のセンサは、検知範囲の中心が切下げ部から奥の方向に向くように配置されており、
前記第2の道路附属物は、
第2の柱状部と、
前記第2の柱状部の上部に設けられ、該第1の道路附属物の周辺の移動物体を検知する第2のセンサを有し、
前記第2のセンサは、検知範囲の中心が切下げ部から奥の方向に向くように配置されている接近報知システム
【請求項2】
前記第1のセンサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部への信号を出力する第1の出力部と、
前記第2のセンサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部への信号を出力する第2の出力部と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の接近報知システム
【請求項3】
前記第1のセンサは、前記第1の柱状部の上部に設けられているLiDARセンサであり、
前記第2のセンサは、前記第2の柱状部の上部に設けられているLiDARセンサであることを特徴とする請求項1に記載の接近報知システム
【請求項4】
優先道路と非優先道路が交差する交差点のコーナーに配置され、歩車道の境界近傍の歩道に設置される道路附属物を備え、
前記道路附属物は、
非優先道路を挟んで設置されている第1の道路附属物及び第2の道路附属物を有し、
前記第1の道路附属物は、
第1の柱状部と、
前記第1の柱状部の上部に設けられ、道路附属物の周辺の移動物体を検知する第1のセンサを有し、
前記第1のセンサは、検知範囲の中心が交差点から非優先道路が延びる方向に向くように配置されており、
前記第2の道路附属物は、
第2の柱状部と、
前記第2の柱状部の上部に設けられ、道路附属物の周辺の移動物体を検知する第2のセンサを有し、
前記第2のセンサは、検知範囲の中心が交差点から非優先道路が延びる方向に向くように配置されている接近報知システム。
【請求項5】
前記第1のセンサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部への信号を出力する第1の出力部と、
前記第2のセンサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部への信号を出力する第2の出力部と、を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の接近報知システム。
【請求項6】
前記第1のセンサは、前記第1の柱状部の上部に設けられているLiDARセンサであり、
前記第2のセンサは、前記第2の柱状部の上部に設けられているLiDARセンサであることを特徴とする請求項4に記載の接近報知システム。
【請求項7】
前記第1の柱状部又は前記第2の柱状部は、高さが600~1500mmであり、
前記第1の柱状部又は前記第2の柱状部は、歩道と車道とを隔てるフェンスの一部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接近報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路附属物及び道路附属物を利用した接近報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転を支援する種々の技術が開発されており、車両に搭載される運転支援システムだけでなく車両が通行する道路側に設けられる運転支援システムも考案されている。例えば、交差点を通過する車両に対して、運転支援のための情報提供を路側から行う運転支援システムが考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、今後実用化が進んでいく自動運転技術や、屋外環境におけるスマートシティ発展のために、自動車だけでなく、歩行者や自転車、車椅子を含めた様々な人の移動の安全を確保する取り組みが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-39779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車や歩行者が共存する環境(例えば、車歩道や交差点)では、移動物体を事前に検知することで、自動車の運転者や歩行者に予め注意を喚起することが一案である。そのためには、検知装置や検知結果を通信する通信装置を設置する必要があるが、街路樹や建築物の大きさや高さによっては検知や通信が阻害される環境があり得る。そのため、設置場所の選定は重要である。加えて、各種装置の設置のためのオリジナルな設備を道路や歩道に設置しようとすると、インフラ整備のコストを増大させることになる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、簡易な構成で車両や歩行者等の安全を向上する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の道路附属物は、歩車道の境界近傍に設置される道路附属物であって、道路附属物の周辺の移動物体を検知するセンサを備える。
【0008】
この態様によると、歩車道の境界近傍での車両や歩行者等の安全を簡易な構成で実現できる。
【0009】
センサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部への信号を出力する出力部を更に備えてもよい。これにより、道路附属物の周辺の車両や歩行者に移動物体の接近を報知し注意を喚起できる。
【0010】
高さが600~1500mmの柱状部を有してもよい。センサは、柱状部の上部に設けられているLiDARセンサであってもよい。これにより、遠方の広範囲まで移動物体を検知できる。また、柱状部を車止めやフェンスの支柱として利用することで、センサのための専用の設備を道路に設置しなくてもよくなる。
【0011】
本発明の他の態様は、接近報知システムである。この接近報知システムは、歩道の切下げ部に隣接した場所に配置される道路附属物を有している。センサは、検知範囲の中心が切下げ部から奥の方向に向くように配置されていてもよい。
【0012】
この態様によると、例えば、切下げ部から出てくる車両を事前に検知できる。
【0013】
道路附属物は、切下げ部を挟んで設置されている第1の道路附属物及び第2の道路附属物を有してもよい。これにより、第1の道路附属物で検知できない車両を第2の道路附属物で検知できる。
【0014】
本発明の他の態様は、接近報知システムである。この接近報知システムは、優先道路と非優先道路が交差する交差点のコーナーに配置されている道路附属物を有している。センサは、検知範囲の中心が交差点から非優先道路が延びる方向に向くように配置されていてもよい。
【0015】
この態様によると、例えば、非優先道路から出てくる車両を事前に検知できる。特に、信号機がない交差点における車両や歩行者の事故を低減できる。
【0016】
道路附属物は、非優先道路を挟んで設置されている第1の道路附属物及び第2の道路附属物を有してもよい。これにより、第1の道路附属物で検知できない車両を第2の道路附属物で検知できる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両や歩行者等の安全を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係る接近報知システムが有効な交通環境を説明するための模式図である。
図2図2(a)は、第1の実施の形態に係る道路附属物の側面図、図2(b)は、図2(a)に示す道路附属物の上面図である。
図3】第1の実施の形態に係る接近報知システムのブロック図である。
図4】第2の実施の形態に係る接近報知システムが有効な交通環境を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る接近報知システムが有効な交通環境を説明するための模式図である。図2(a)は、第1の実施の形態に係る道路附属物の側面図、図2(b)は、図2(a)に示す道路附属物の上面図である。
【0022】
図1に示す交通環境は、片道二車線の幹線道路の車道R1に沿って幅W1が4m程度の歩道Sが併設されている。歩車道の境界近傍には歩道Sと車道R1とを隔てるフェンスFが設けられている。また、歩道Sには車道R1に向かって傾斜した切下げ部Tが形成されており、車道R1から見て切下げ部Tの奥に向かって車道R2が延びている。切下げ部Tは、例えば、ビルやマンションの駐車場や私道から車両が車道R1に出る場所に設けられている。
【0023】
歩道Sには歩行者10や車椅子12が移動している。また、自転車や各種モビリティの乗員も歩道Sを移動する場合がある。車道R1には乗用車14,16やバス18が走行している。乗用車14,16やバス18は自動運転車両の場合もある。車道R2には乗用車20,22が走行している。本実施の形態の移動物体は、歩行者、車椅子、乗用車、バス、自転車等の自律的に移動する物体が含まれる。
【0024】
このような状況では、切下げ部Tを横切る歩行者10や車椅子12(以下、「歩行者10や車椅子12」を「歩行者10」と称する。)は、車道R2から車道R1に出る乗用車20,22に対する注意が必要である。しかしながら、車道R2の両側に壁や建物がある場合、歩道Sにいる歩行者10から乗用車20,22を視認することが遅れることがある。また、車道R2を見ていない歩行者10も存在する。
【0025】
そこで、本実施の形態では、フェンスFの一部である道路附属物としての柱状部24に周辺の移動物体を検知するセンサ26を備えている。柱状部24は、高さHが約600~1500mmであり、好ましくは高さHが約800~1200mmである。本実施の形態に係るセンサ26は、柱状部24の上部Uに設けられているLiDAR(Light Detection and Ranging)センサである。本実施の形態に係る上部とは、柱状部24の頂点から1/2~1/4の部分である。センサ26の位置は、雨などによる浸水の影響を受けにくい高さが好ましく、例えば地面から30cm以上の位置に設けられている。
【0026】
LiDARセンサの測定距離Dは0.5~300m程度、垂直方向の測定範囲αは水平面を挟んで約90°、水平方向の測定範囲βは柱状部24の鉛直線を中心に約270°である。本実施の形態では、測定距離Dが10~200mの範囲にある、あるいは20~100mの範囲にあるLiDARセンサを用いることができる。
【0027】
これにより、遠方の広範囲まで移動物体を検知できる。また、柱状部24をフェンスFの支柱として利用することで、センサのための専用の設備を道路に設置しなくてもよくなる。また、柱状部24は、歩道Sの切下げ部Tに隣接した場所に道路附属物として配置されている。センサ26は、検知範囲の中心が切下げ部Tから車道R2の奥の方向に向くように配置されている。また、切下げ部Tから出てくる乗用車20,22を事前に検知できる。
【0028】
図3は、第1の実施の形態に係る接近報知システム100のブロック図である。接近報知システム100は、センサ26で検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体(歩行者10)に他の移動物体(乗用車20,22)の接近を報知する報知部30への信号Pを出力する出力部28を更に備えている。
【0029】
本実施の形態に係る報知部30は、例えば、切下げ部Tの近傍に設けられたスピーカー、ディスプレイ、点消灯する光源、といった音や光で注意を喚起し、切下げ部Tから出てくる乗用車20,22の接近を事前に歩行者10に知らせるものである。換言すると、報知部30は、歩行者10の接近を乗用車20,22に知らせることもできる。また、報知部30は、柱状部24に一体化されていてもよい。
【0030】
報知部30の他の態様として、信号Pが近接無線通信や携帯電話網といった各種無線通信を利用できるものであれば、歩行者10が持っている携帯端末や乗用車20,22に搭載されているカーナビゲーションシステムであってもよい。この場合、携帯端末を振動させたり、カーナビゲーションシステムの画面に注意喚起の内容を表示させたりすることで、他の移動物体の接近を知らせることができる。このように、柱状部24からなる道路附属物は、道路附属物の周辺の乗用車20,22や歩行者10に他の移動物体の接近を報知し注意を喚起できる。また、歩車道の境界近傍での車両や歩行者等の安全を簡易な構成で実現できる。
【0031】
また、本実施の形態に係る道路附属物は、図3に示すように、切下げ部Tを挟んで設置されている第1の道路附属物(柱状部24a)及び第2の道路附属物(柱状部24b)を有している。図3に示す状況で柱状部24aのセンサが乗用車20を検知している場合、乗用車20の影にある乗用車22を検知できない場合がある。その場合、柱状部24bのセンサで乗用車22を検知できる。このように、切下げ部Tを挟んで車道R2の両側にそれぞれセンサを配置することで、1つのセンサで検知できない車両を他のセンサで検知できる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る接近報知システムが有効な交通環境を説明するための模式図である。以下の説明では、図1と同様の構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0033】
図4に示す交通環境は、片側一車線の優先道路R3と非優先道路R4との交差点の周囲に歩道Sが併設されている。この交差点には信号機がないため、歩行者10が非優先道路R4を横切る際は注意を要する。そこで、本実施の形態に係る接近報知システムは、優先道路R3と非優先道路R4が交差する交差点のコーナーに配置されている道路附属物としての柱状部34を有している。柱状部34のセンサは、検知範囲の中心が交差点から非優先道路R4が延びる方向に向くように配置されている。これにより、例えば、非優先道路R4から出てくる乗用車20,22を事前に検知できる。特に、信号機がない交差点における車両や歩行者の事故を低減できる。なお、本実施の形態に係る接近報知システムが適用される交差点は、十字路だけでなく、T字路や五差路といった他の交差点であってもよい。
【0034】
また、柱状部34を車止めとして利用することで、センサのための専用の設備を道路に設置しなくてもよくなる。また、本実施の形態に係る道路附属物は、非優先道路を挟んで設置されている第1の道路附属物(柱状部34a)及び第2の道路附属物(柱状部34b)を有している。これにより、第1の道路附属物で検知できない車両を第2の道路附属物で検知できる。
【0035】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0036】
10 歩行者、 12 車椅子、 14 乗用車、 18 バス、 20 乗用車、 22 乗用車、 24 柱状部、 24a 柱状部、 24b 柱状部、 26 センサ、 28 出力部、 30 報知部、 34 柱状部、 100 接近報知システム、 R1 車道、 R2 車道、 R3 優先道路、 R4 非優先道路、 S 歩道。
【要約】
【課題】簡易な構成で車両や歩行者等の安全を向上する新たな技術を提供する。
【解決手段】道路附属物は、歩車道の境界近傍に設置される道路附属物であって、道路附属物の周辺の移動物体を検知するセンサ26を備える。道路附属物は、センサで検知した移動物体の情報を取得し、周囲の移動物体に他の移動物体の接近を報知する報知部30への信号Pを出力する出力部28を更に備えてもよい。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4