(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】細胞培養容器
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240918BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240918BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240918BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12N5/074
(21)【出願番号】P 2024080299
(22)【出願日】2024-05-16
【審査請求日】2024-05-16
(32)【優先日】2023-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524186567
【氏名又は名称】宮川 広之
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】宮川 広之
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-103189(JP,A)
【文献】米国特許第04317886(US,A)
【文献】特開平02-265468(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040135(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/125923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角柱状の内部空間を有する、有底の容器本体と、
前記容器本体の内部に前記容器本体と同軸で配置された複数の多角柱状の筒体と、
前記容器本体の軸方向端部に取り付けられた蓋体と、
前記蓋体の筒状のネック部に取り付けられたキャップと、
前記複数の多角柱状の筒体の外周面のうちの角部であって且つ前記複数の多角柱状の筒体の軸方向端部に設けられたスペーサと、
を備え、
前記容器本体の内周面のうちの角部または前記筒体の内周面のうちの角部に前記スペーサが嵌り込んでおり、
前記容器本体の底部は、円錐形状又は多角錐形状である、
細胞培養容器。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、
前記複数の多角
柱状の筒体は第1筒体と第2筒体であり、
前記第1筒体の内部に前記第1筒体と同軸で配置された前記第2筒体が設けられており、
前記第1筒体の外周面のうちの角部であって且つ前記第1筒体の軸方向端部に設けられた第1スペーサと、
前記第2筒体の外周面のうちの角部であって且つ前記第2筒体の軸方向端部に設けられた第2スペーサと、
をさらに備え、
前記容器本体の内周面のうちの角部に前記第1スペーサが嵌り込んでおり、前記第1筒体の内周面のうちの角部に前記第2スペーサが嵌り込んでいる、
細胞培養容器。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、
前記スペーサは、前記容器本体の内周面のうちの角部または前記筒体の内周面のうちの角部に嵌り込む端部がV字形状とされている、
細胞培養容器。
【請求項4】
請求項2に記載の細胞培養容器であって、
前記第1スペーサは、前記容器本体の内周面のうちの角部に嵌り込む端部がV字形状とされ、前記第2スペーサは、前記第1筒体の内周面のうちの角部に嵌り込む端部がV字形状とされている、
細胞培養容器。
【請求項5】
請求項2または4に記載の細胞培養容器であって、
前記容器本体、前記第1筒体、及び前記第2筒体はいずれも六角形状であり、前記第1スペーサは前記第1筒体の外周面のうちの3つの角部であって且つ前記第1筒体の軸方向端部に等間隔で設けられ、前記第2スペーサは前記第2筒体の外周面のうちの3つの角部であって且つ前記第2筒体の軸方向端部に等間隔で設けられており、前記第2スペーサは、前記第1スペーサが設けられていない前記第1筒体の外周面の角部の内側に嵌り込んでおり、前記容器本体の内面、前記第1筒体の内外両面、及び前記第2筒体の内外両面に付着した目的細胞を剥離させ、分離分散させるために使用される、
細胞培養容器。
【請求項6】
請求項2または4に記載の細胞培養容器であって、
前記第1筒体における前記第1スペーサの長手方向の長さは前記第1筒体の長手方向の長さよりも小さく、前記容器本体の内面と前記第1筒体の外面との間に細胞培養液が流動するための一定間隔の通路が確保されるように構成される、
細胞培養容器。
【請求項7】
請求項2または4に記載の細胞培養容器であって、
前記第1筒体の、前記容器本体の底部側の軸方向端部に、当該細胞培養容器が縦置き配置されたときに前記第2筒体を支持するサポートが設けられており、
前記第2筒体の、前記容器本体の底部側の軸方向端部に、前記サポートが嵌り込む溝が設けられている、
細胞培養容器。
【請求項8】
請求項1または2に記載の細胞培養容器であって、
前記容器本体の外側面のうちの少なくとも1つの平面に、前記容器本体の軸方向に延びる少なくとも2本の線状の印が設けられている、
細胞培養容器。
【請求項9】
請求項1または2に記載の細胞培養容器であって、
前記キャップは、
キャップ本体と、
前記キャップ本体に取り付けられた、前記容器本体の内部空間へ流体を給排可能な第1バルブと、を備え、
前記第1バルブは、給排器具が差し込まれることで開くスリット部が設けられた、弾性材料からなる第1弁体を有する、
細胞培養容器。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞培養容器であって、
前記キャップは、
前記キャップ本体に取り付けられた、前記容器本体の内部空間へ流体を給排可能な第2バルブをさらに備え、
前記第2バルブは、給排器具が差し込まれることで開くスリット部が設けられた、弾性材料からなる第2弁体を有する、
細胞培養容器。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、横向きにした前記細胞培養容器を、前記細胞培養容器の軸方向回りに所定の回転速度で回転させて、前記細胞培養容器内の細胞を培養する培養工程と、所定の培養期間経過ごとに、前記細胞培養容器内の細胞の状態を検鏡する確認工程と、所定の培養期間経過ごとに、前記キャップに取り付けられたバルブを経由して前記細胞培養容器内の液体培地及び/又はガスを交換する交換工程と、所定の培養期間経過後、前記容器本体の内面、および前
記筒体の内外両面に付着した目的細胞を回収する回収工程と、を含む細胞培養容器を用いた細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養に一般的に使用される容器は、マルチウェルプレートまたはT型フラスコである。T型フラスコをベースにした培養容器は、さまざまなメーカーによって開発されており、大規模な細胞培養のために使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2017/0029756
【文献】米国特許5,010,013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の細胞培養容器は、研究用の培養にフォーカスしたものであり、その中でも量産培養に鑑みた場合には、ローラーボトルが最も実用的なものとして使用されている。
【0005】
特許文献1には、付着性の哺乳動物細胞の増殖が容器の内表面のみで行われる八角柱状のカラム型細胞培養容器が提案されている。容器の内表面は、細胞の成長と付着のための足場として機能する。哺乳動物細胞が付着する内表面の面積は、容器のサイズを拡大する場合にのみ増加する。そのため、容器のボトル径を大きくすることで量産培養が可能ではあるものの、ボトルが大型化してしまうといった問題があった。
【0006】
このような問題から、特許文献2では、容器内の構造を蛇腹・アコーディオン状とすることで内部表面積を増加させることが提案されている。しかしながら、この方法も大規模な培養をサポートするには不十分であり、独自の欠点がある。具体的には、このような構造とすることにより、容器内の内面積を増大させることは可能であるが、効率的に細胞が付着できる構造ではない。細胞は、容器内の培地中では懸濁されているが、容器を回転して培養している間に、細胞は、重力に従って落下する。蛇腹・アコーディオン状の構造は山と谷が曲面を成しながら連なっている構造であり、細胞は鉛直方向に落下していくため、蛇腹の底に相当する部分に細胞が堆積する虞がある。その結果として、細胞が堆積した部分では細胞が生育できなくなる。したがって、容器内の構造を蛇腹・アコーディオン状とすることで内面積を増やしたとしても、実際に細胞が付着できる有効な面積は限られている。
【0007】
そこで、本発明は、容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面を広く確保することができる細胞培養容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願で開示する細胞培養容器は、多角柱状の内部空間を有する、有底の容器本体と、前記容器本体の内部に前記容器本体と同軸で配置された多角柱状の第1筒体と、前記容器本体の軸方向端部に取り付けられた蓋体と、前記蓋体の筒状のネック部に取り付けられたキャップと、前記第1筒体の外周面のうちの角部であって且つ前記第1筒体の軸方向端部に設けられた第1スペーサと、を備え、前記容器本体の内周面のうちの角部に前記第1スペーサが嵌り込んでいる。
【0009】
上記構成によれば、容器本体の内部に、第1筒体を設置することで、第1筒体の内外両面を培地の浸漬領域とすることができるため、容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面を広く確保することができる。また、第1スペーサが第1筒体の外周面のうちの角部であって且つ第1筒体の軸方向端部に設けられることで、回転培養中の液体流による不均一な細胞接着の発生を減少させることができる。
【0010】
前記細胞培養容器は、前記第1筒体の内部に前記第1筒体と同軸で配置された多角柱状の第2筒体と、前記第2筒体の外周面のうちの角部であって且つ前記第2筒体の軸方向端部に設けられた第2スペーサと、をさらに備え、前記第1筒体の内周面のうちの角部に前記第2スペーサが嵌り込んでもよい。
【0011】
上記構成によれば、第1筒体の内部に、第2筒体を設置することで、第2筒体の内外両面を培地の浸漬領域とすることができるため、容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面をさらに広く確保することができる。また、第2スペーサが第2筒体の外周面のうちの角部であって且つ第2筒体の軸方向端部に設けられることで、回転培養中の液体流による不均一な細胞接着の発生を減少させることができる。
【0012】
前記細胞培養容器において、前記第1スペーサは、前記容器本体の内周面のうちの角部に嵌り込む端部がV字形状とされてもよい。
【0013】
上記構成によれば、容器本体の内部空間において、第1筒体を容器本体から一定の間隔を空けて固定することが可能となる。
【0014】
前記第2スペーサにおいて、前記第1筒体の内周面のうちの角部に嵌り込む端部がV字形状とされてもよい。
【0015】
上記構成によれば、容器本体の内部空間において、第2筒体を第1筒体から一定の間隔を空けて固定することが可能となる。
【0016】
前記細胞培養容器において、前記第1筒体の、前記容器本体の底部側の軸方向端部に、当該細胞培養容器が縦置き配置されたときに前記第2筒体を支持するサポートが設けられており、前記第2筒体の、前記容器本体の底部側の軸方向端部に、前記サポートが嵌り込む溝が設けられてもよい。
【0017】
上記構成によれば、容器本体の内部空間において、第1筒体と第2筒体とを確実に固定することができる。
【0018】
前記細胞培養容器において、前記容器本体の外側面のうちの少なくとも1つの平面に、前記容器本体の軸方向に延びる少なくとも2本の線状の印が設けられてもよい。
【0019】
上記構成によれば、2本の線状の印により、撮影開始点、フォーカス調整開始点を物理的に示すことで、撮影装置に細胞培養容器を静置させることなく、細胞培養容器を移動させても、同じ領域での検鏡撮影を行うことができる。その結果、細胞の状態を的確に判定することができるとともに、細胞の培養を継続するか否かを判断することができる。
【0020】
前記細胞培養容器において、前記キャップは、キャップ本体と、前記キャップ本体に取り付けられた、前記容器本体の内部空間へ流体を給排可能な第1バルブと、を備え、前記第1バルブは、給排器具が差し込まれることで開くスリット部が設けられた、弾性材料からなる第1弁体を有してもよい。
【0021】
上記構成によれば、細胞培養容器は、異物(細菌など)による汚染を防ぎながら、細胞培養容器内に気体や液体を注入することができる。また、細胞培養容器内の気体の置換を行うことができる。
【0022】
前記細胞培養容器において、前記キャップは、前記キャップ本体に取り付けられた、前記容器本体の内部空間へ流体を給排可能な第2バルブをさらに備え、前記第2バルブは、給排器具が差し込まれることで開くスリット部が設けられた、弾性材料からなる第2弁体を有してもよい。
【0023】
上記構成によれば、一方のバルブを介して外部から気体や液体を導入し、他方のバルブを介して細胞培養容器内の気体や液体を引き抜くことができる。
【0024】
本願で開示する細胞培養方法は、上記のいずれかの細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、横向きにした前記細胞培養容器を、前記細胞培養容器の軸方向回りに所定の回転速度で回転させて、前記細胞培養容器内の細胞を培養する培養工程と、所定の培養期間経過ごとに、前記細胞培養容器内の細胞の状態を検鏡する確認工程と、所定の培養期間経過ごとに、前記キャップに取り付けられたバルブを経由して前記細胞培養容器内の液体培地及び/又はガスを交換する交換工程と、所定の培養期間経過後、前記容器本体の内面、および前記第1筒体の内外両面に付着した目的細胞を回収する回収工程と、を含む。
【0025】
上記構成によれば、閉鎖系で細胞培養を継続して行うことができるため、異物(細菌など)による汚染を防ぎながら、有用細胞の量産培養が可能となる。さらに、定期的な培地交換とガス交換を、バルブを経由して自動で行うことも可能であるため、細胞培養をより効率化することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、細胞培養容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、一実施形態に基づく細胞培養容器の正面図を示す。
【
図2】
図2は、一実施形態に基づく細胞培養容器の分解斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のP-P線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に基づく細胞培養容器の上面図を示す。
【
図5】
図5は、
図1のQ'-Q'線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
【
図6】
図6は、
図1のQ-Q線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
【
図7】
図7(a)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の上面図を示す。
図7(b)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の下面図を示す。
【
図8】
図8(a)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の上面図を示す。
図8(b)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の下面図を示す。
【
図9】
図9は、一実施形態に基づく細胞培養容器の側面図を示す。
【
図10】
図10は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の斜視図を示している。
【
図11】
図11は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の斜視図を示している。
【
図14】
図14は、一実施形態に基づく細胞培養容器のP-P線に沿った断面図を示す。
【
図15】
図15は、一実施形態に基づく細胞培養容器のQ-Q線に沿った断面図を示す。
【
図16】
図16は、一実施形態に基づく細胞培養容器のQ-Q線に沿った断面図を示す。
【
図17】
図17は、一実施形態に基づく細胞培養容器のQ-Q線に沿った断面図を示す。
【
図18】
図18は、一実施形態に基づく細胞培養容器の容器本体の平面に、容器本体の軸方向に延びる2本の線状の印が設けられた細胞培養容器の例を示す。
【
図19】
図19は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップの斜視図を示す。
【
図20】
図20は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップの上面図を示す。
【
図21】
図21は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップの正面図を示す。
【
図22】
図22は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブの分解斜視図を示す。
【
図23】
図23は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブの内部構造を示す断面斜視図である。
【
図24】
図24は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブを介してシリンジを接続する状態を示す模式図である。
【
図25】
図25は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブにルアーロック針ハブを介してシリンジを接続する状態を示す模式図である。
【
図26】
図26は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブにルアーロックコネクタを介してゴムチューブを接続する様子を示す模式図である。
【
図27】
図27は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップの変形例の正面図を示す。
【
図28】
図28は、一実施形態に基づく細胞培養容器を用いた細胞培養方法と細胞の回収方法の工程を示すフロー図である。
【
図29】
図29は、一実施形態に基づく細胞培養容器に把持装置を装着した説明図である。
【
図30】
図30は、一実施形態に基づく細胞培養容器を用いた細胞培養方法と上清液の製造方法の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、添付の図面を参照して、実施形態についてより詳細に説明する。当業者であれば理解されるように、説明された実施形態は様々な変更が可能であり、それらはすべて本開示の趣旨や範囲を逸脱することなく行われる。
【0029】
図面および説明は例示であり、限定的なものではない。本明細書全体を通じて、同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0030】
図面に示される各構成のサイズや厚さは、理解を深め、説明を容易にするために任意に示されている。特に説明されていない限り、本開示はこれに限定されない。たとえば、要素間の特定のサイズや位置関係が図面を参照して説明される場合、その図面はそのようなサイズや位置関係を示すために使用される。層、板、パネル、領域などの厚さは、特に説明されていない限り、明確にするために誇張される場合がある。たとえば、要素間の特定の厚さの関係が図面を参照して説明される場合、その図面はそのような厚さの関係を示すために使用される。一部の層や領域の厚さが誇張されている場合がある。
【0031】
単数形は文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形を含むものとする。
【0032】
明細書およびクレームにおいて、「および/または」の用語は、意味と解釈の目的で用語「および」および「または」の任意の組み合わせを含むものとされている。たとえば、「Aおよび/またはB」という表現は、「A、B、またはAおよびB」を意味するものと解釈される。
【0033】
明細書およびクレームにおいて、「少なくとも一つ」というフレーズは、「群から選ばれた少なくとも一つ」という意味と解釈のために含まれている。たとえば、「AおよびBの少なくとも一つ」という表現は、「A、B、またはAおよびB」を意味するものと解釈される。
【0034】
「第1」「第2」などの用語は、さまざまな構成要素を説明するためにのみ使用され、これらの構成要素を制限するものではない。これらの用語は、単に異なる構成要素を区別するために使用される。たとえば、第1構成要素は第2構成要素と呼ばれる場合があり、同様に、第2構成要素は第1構成要素と呼ばれる場合があるが、これは本開示の範囲を逸脱することはない。
【0035】
層、板、パネル、領域、または基板などの要素が他の要素の「上に」あると記述される場合、直接他の要素の上にある場合もあり、中間に要素がある場合もある。一方、第1要素が第2要素の「直接上に」あると記述される場合、中間に要素はない。仕様書全体を通じて、対象物の「上に」ある要素は、その対象要素の上または下に配置されていると理解され、重力の反対方向に対する「上に」を必ずしも示しているわけではない。
【0036】
例えば、空間的に相対的な用語「下」または「上」は、図面に示されるように、一つの要素または構成要素と他の構成要素との関係を説明するのに使用することができる。空間的に相対的な用語は、図面に示された方向に加えて、使用または操作中の他の方向も含むものとされている。例えば、図面に示された装置が反転された場合、別の装置の下に配置されていた装置は、他の装置の「上」に配置されてもよい。したがって、例示的な用語「下」は、下部および上部の位置を含んでいてもよい。装置は他の方向に向けられていてもよく、空間的に相対的な用語は方向によって異なる解釈がされる可能性がある。
【0037】
本明細書において、要素(または領域、層、部分など)が他の要素に「接続されている」または「結合されている」と記載される場合、それは直接配置、接続、または結合されているか、またはその間に要素が配置されていてもよい。
【0038】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語や科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義された用語は、関連技術および/または本明細書の文脈における意味と一致するように解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想化された意味や過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0039】
図1は、一実施形態に基づく細胞培養容器の正面図を示す。
図2は、一実施形態に基づく細胞培養容器の分解斜視図を示す。
図3は、
図1のP-P線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
図4は、一実施形態に基づく細胞培養容器の上面図を示す。
図5は、
図1のQ'-Q'線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
図6は、
図1のQ-Q線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
図7において、
図7(a)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の上面図を示す。
図7(b)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の下面図を示す。
図8において、
図8(a)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の上面図を示す。
図8(b)は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の下面図を示す。
【0040】
図1~6を参照すると、一実施形態に基づく細胞培養容器は、有底の容器本体1、第1筒体2および第2筒体3、蓋体4、底部11、およびキャップ5を含んでいる。
【0041】
容器本体1は、空の内部空間を持つ多角柱状である。したがって、容器本体1は複数の四角形の平面パネル1Aにより構成されている。この実施形態では、容器本体1は六つの四角形の平面パネル1Aにより構成されている。この実施形態では、容器本体1は六角柱状であるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、容器本体1は、五角柱状や八角柱状など、様々な多角柱状であってもよい。容器本体1は、プラスチックやガラスなどさまざまな材料で作られ、透明、着色、または不透明であってもよい。これらの材料は透明性を確保するために選択されてもよい。ただし、培養条件に応じて光を遮断できる不透明な樹脂を使用してもよい。さらに、特定の波長範囲を選択的に吸収または透過する材料を使用してもよい。前述のように、容器本体1は六角柱状または多角柱状であってもよいが、少なくとも一つの平面パネル1Aを有するように構成することが必要である。これにより、細胞が付着する内部表面を顕微鏡Mで観察しながら、細胞の培養状態を観察し、培養を継続するかどうかを判断することができる。なお、容器本体1が円筒状の場合、平面パネル1Aがないため、培養の過程で顕微鏡Mにより細胞の培養状態を観察することが困難となる。
【0042】
なお、本発明では、顕微鏡を採用する実施形態としているが、顕微鏡Mを使用して培養容器内の細胞を観察しつつ培養状態を継続する場合、細胞培養の観察に適したものは、倒立顕微鏡である。この倒立顕微鏡としての顕微鏡Mを使用した方式では、培養容器の表面側に接眼レンズを配置し、当該培養容器の背面側に対物レンズを配置して、2つのレンズで挟み込んで観察する必要がある。そのため、本実施形態の培養容器を複数使って培養の自動化を図ろうとした場合、前記培養容器の表面側と背面側に夫々レンズを配置する領域が必須となるため、培養容器を複数使用して自動培養するための培養装置が、大型化してしまうといった問題があった。
【0043】
そこで、本発明者は、CCDカメラやCMOSカメラなどのデジタルカメラを使用し、撮影画像自体を拡大表示して観察することが可能なデジタルカメラを使用した方式で自動培養装置を組む場合には、小型化に関して非常に有効であることを見出した。というのも、このデジタルカメラで培養状態をモニタリングする方式では、撮像して観察するために必要な光源を前記デジタルカメラと同じ位置に一体的に設けることが可能であるからである。
【0044】
このような培養状態をCCDセンサやCMOSセンサ、又は、ラインセンサから構成されるデジタルカメラを使用してモニタリングする装置は、特開2022-023903号公報の
図13、
図14に示されている。CCDセンサやCMOSセンサ、又は、ラインセンサからなる半導体センサを含むデジタルカメラは、光源24と一体的に構成されていることから、前記培養容器の表面側又は背面側のいずれか一方に設けることができるので、小型化が可能となる。このような光源と一体型のモニタリング装置は、公知であり、例えば、このようなデジタルカメラとしては、エビデント社(旧オリンパス社)製のインキュベーションモニタリングシステムCMや、サイトロニクス社製のCell Recorderが適している。
【0045】
また、このようなデジタルカメラを使用し、本発明の多層の培養容器内の細胞の培養状態を観察する場合には、前記デジタルカメラの焦点位置を適宜変更することによって、第1筒体2および第2筒体3は複数の四角形の平面パネル2A及び平面パネル3Aの表裏面の培養状態を、平面パネル2A及び平面パネル3Aの表裏面の培養領域に適宜にピントを合わせることで達成することができる。
【0046】
次に、このように本実施形態における多層のボトル型の培養容器の平面パネル2A及び平面パネル3Aの表裏面の培養状態を前記デジタルカメラの焦点位置を適宜変更して、各層の培養状態を個別に観察することが好適である理由について、以下説明する。
【0047】
細胞培養を行う場合、細胞を培養する最初の段階で播種という作業が行われ、その作業は、おおもととなる細胞を培地と共に培養容器に投入することにより行われる。
【0048】
本発明の培養容器は、複数の内筒(第1筒体2、第2筒体3)を有するものであるため、播種された細胞は、その外形が凹状を呈する内筒(第1筒体2、第2筒体3)の表面に接触する場合と、凸状を呈する内筒の裏面(第1筒体2、第2筒体3)に接触する場合とでは、細胞懸濁液の挙動が異なる。より正確な細胞数、細胞占有面積率を、非侵襲的に測定するためには、全ての細胞接着面を観察する事が好ましい。
【0049】
本発明のような多層のボトル型の培養容器において、正確に細胞の培養状態をモニタリングするために、各層の細胞接着面をモニタリングすることがより正確な培養状態を把握することで、拡大培養された細胞を剥離分散するタイミングの算出と判定が的確に可能となる。
【0050】
上述した特開2022-023903号公報の
図13や
図14に示されるデジタルカメラを採用した場合、従来の単相の八角形状ボトルでは観測する細胞接着面と相対する面との距離が広すぎるので、観察する細胞接着面に照射する光原の照度を十分確保する必要がある。一方、本発明の実施形態に記載する培養容器(多層のボトル型容器)であれば、反射光を生じるための相対する面との距離が充分に縮まり、光源の出力を高めることなく、光毒性のない範囲で、観察を容易にするだけの照度を確保できる。
【0051】
更に、前述したような培養装置を小型化するメリットとしては、つぎのような点も指摘することができる。すなわち、培養容器で培養を観察する場合には、インキュベータ内で観察するか、それともインキュベータ外に出して観察して、観察後に再度にインキュベータ内に戻すかの2つの方法が想定される。このような場合には、小型化の自動培養装置とすることで、どちらの方法でも適用が容易であることから、自動培養装置を用いた細胞培養システムを構築際のシステム設計自由度が高まるメリットがある。
【0052】
例えば、本発明者の自動培養装置の細胞培養システムの構想としては、安全キャビネット内にアームや遠心機や撮影装置が配置されており、複数の培養容器について、同時に培養処理を進めていくもの、そして、1つの装置で、複数の培養容器を同時進行で処理を進め、培養完了のタイミングで、自動化作業の最終梱包の剤形に収め、排出するようなものである。複数の個別の装置で、受け渡しをしながら培養工程が進んでいくわけではなく、終始同じ清潔空間の装置内にとどまる構成が想定される。
【0053】
図1に示されるように、容器本体1は下端で底部11に接続されている。底部11は円錐形または多角錐形であってもよい。容器本体1の下側は底部11によって閉じられている。底部11はプラスチックやガラスなどさまざまな材料で作られ、透明であるか、着色されているか、不透明であってもよい。底部11は容器本体1と一体に形成されていてもよい。
【0054】
図3に示されるように、第1筒体2には第1スペーサ21、22が第1筒体2の外周面のうちの角部であって且つ第1筒体2の軸方向上端部と軸方向下端部に設けられる。また、第2筒体3には第2スペーサ31が第2筒体3の外周面のうちの角部であって且つ第2筒体3の軸方向上端部に設けられる。第1筒体2における第1スペーサ21、22の長手方向の長さをh、h´、第1筒体2の長手方向の長さをHとした場合、h、h´がHよりも十分小さくなるように第1スペーサ21、22が設けられている。そのため、容器本体1の内表面と第1筒体2の外表面との間に、回転培養時においての細胞が流動するための一定の間隔Lの通路Sを確保することができる。また、容器本体1の内表面と第1筒体2の外表面との間に一定の間隔Lを設けることができる。このように、第1スペーサ21、22を設けることで、培養時において、細胞の流動性が阻害されるのを回避することができる。
【0055】
図5、6に示されるように、第1筒体2および第2筒体3は空の内部空間を有する多角柱状であり、第1筒体2および第2筒体3は複数の四角形の平面パネル2A及び平面パネル3Aを有している。この実施形態では、第1筒体2および第2筒体3はそれぞれ六つの四角形の平面パネルを有している。容器本体1、第1筒体2、及び第2筒体3は、一定の間隔を空けて固定されている。
【0056】
第1筒体2および第2筒体3は容器本体1と同じ回転軸Xを有する。つまり、第1筒体2および第2筒体3と容器本体1は同軸の柱体である。ここで、同軸とは、略同軸の意味であるが、例えば、一方の軸線と他方の軸線とが数mm程度ずれた状態も含む意味である。この実施形態では、第1筒体2および第2筒体3は六角柱状であるが、これに限定されない。他の実施形態では、第1筒体2および第2筒体3は五角柱状や八角柱状など、さまざまな多角柱状であってもよい。第1筒体2および第2筒体3は容器本体1と同じ多角柱状の形状を有することが好ましいが、これに限定されない。容器本体1の内部に、第1筒体2および第2筒体3を設置することで、第1筒体2および第2筒体3の内外両面を培地の浸漬領域とすることができるため、容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面を広く確保することができる。
【0057】
図2、5に示されるように、この実施形態では、第1スペーサ21は第1筒体2の外周面の全ての角部であって且つ第1筒体2の軸方向上端部に設けられている。
図2、6に示されるように、第1スペーサ22は第1筒体2の外周面の全ての角部であって且つ第1筒体2の軸方向下端部に設けられている。第1スペーサ21、22は第1筒体2の外周面の全ての角部ではなく、一部の角部に設けられてもよい。第1スペーサ21、22は第1筒体2の軸方向端部ではなく、軸方向中央部に設けられてもよい。第1スペーサ21、22が第1筒体2の外周面の角部であって且つ第1筒体2の軸方向端部に設けられることで、回転培養中の液体流による不均一な細胞接着の発生を減少させることができる。また、第1スペーサ22が第1筒体2の軸方向下端部に設けられることで、第1筒体2が、容器本体1の底部11に落下することを回避することができる。
【0058】
図7(a)(b)に示されるように、第1スペーサ21、22は、容器本体1の内周面の角部に嵌り込むように端部21a、22aがV字形状とされることが好ましい。第1スペーサ21、22の端部21a、22aをV字形状とすることにより、容器本体1の内部空間において、第1筒体2を容器本体1から一定の間隔Lを空けて固定することが可能となる。
【0059】
図2、5に示されるように、この実施形態では、第2スペーサ31は第2筒体3の外周面の全ての角部であって且つ第2筒体3の軸方向上端部に設けられている。第2スペーサ31は第2筒体3の外周面の全ての角部ではなく、一部の角部に設けられてもよい。第2スペーサ31は第2筒体3の軸方向上端部ではなく、軸方向下端部や軸方向中央部に設けられてもよい。第2スペーサ31が第2筒体3の外周面の角部であって且つ第2筒体3の軸方向端部に設けられることで、回転培養中の液体流による不均一な細胞接着の発生を減少させることができる。
【0060】
図8(a)に示されるように、第2スペーサ31は、第1筒体2の内周面の角部に嵌り込むように端部31aがV字形状とされることが好ましい。第2スペーサ31の端部31aをV字形状とすることにより、容器本体1の内部空間において、第2筒体3を第1筒体2から一定の間隔を空けて固定することが可能となる。
図8(b)に示されるように、この実施形態では、第2筒体3の軸方向下端部に第2スペーサが設けられていないが、第2筒体3の軸方向下端部に第2スペーサが設けられてもよい。
【0061】
この実施形態では、細胞培養容器には、第1筒体2および第2筒体3が設けられ、2つの筒体が設けられているが、これに限定されない。他の実施形態では、細胞培養容器には、1つの筒体、または3つ以上の筒体が設けられてもよい。
【0062】
第1筒体2および第2筒体3はプラスチックやガラスなど、さまざまな材料で作られてもよく、透明、着色、または不透明であってもよい。これらの材料は透明性を確保するために選択されることがある。ただし、培養条件に応じて光を遮断できる不透明な樹脂を使用することも可能である。また、特定の波長範囲を選択的に吸収または透過する材料を使用してもよい。
【0063】
蓋体4は容器本体1の上端に接続される。蓋体4は、接着剤によって、溶接によって、または機械的に結合することによって容器本体1の上端に接続されてもよい。
【0064】
蓋体4には開口部とキャップ5への接続用の外部ねじを備えたネック部41、および容器本体1の上側を覆うショルダー部分が含まれている。蓋体4は、第1筒体2および第2筒体3が容器本体1から外れないようにし、第1筒体2および第2筒体3を容器本体1に固定することができる。
【0065】
キャップ5は、蓋体4のネック部41の外部スレッドと結合するための内部スレッドを備えている。キャップ5は、蓋体4のネック部41にねじ込まれ、蓋体4の開口部を閉じ、細胞培養容器を密封するために使用される。キャップ5は、蓋体4のネック部41からねじり外されることにより、細胞培養容器を開封することができる。
【0066】
本実施例による細胞培養容器は、少なくとも1つの筒体を備えている。したがって、細胞培養容器は大規模な培養に十分な内部表面積を提供することができる。
【0067】
図9は、一実施形態に基づく細胞培養容器の側面図を示す。
図10は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第1筒体の斜視図を示す。
図11は、一実施形態に基づく細胞培養容器の第2筒体の斜視図を示す。
図12は、
図9のP'-P'線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
図13は、
図9のQ-Q線に沿った細胞培養容器の断面図を示す。
【0068】
図9、10、12、13に示されるように、細胞培養容器は、第1筒体2の、容器本体1の底部側の軸方向端部に、当該細胞培養容器が縦置き配置されたときに第2筒体3を支持するサポート23が設けられてもよい。また、
図11に示されるように、第2筒体3の、容器本体1の底部側の軸方向端部に、サポート23が嵌り込む溝33が設けられてもよい。第1筒体2のサポート23に、第2筒体3の溝33が嵌り込むことで、容器本体1の内部空間において、第1筒体2と第2筒体3とを確実に固定することができる。
【0069】
図14は、一実施形態に基づく細胞培養容器のP-P線に沿った断面図を示す。
図15~17は、一実施形態に基づく細胞培養容器のQ-Q線に沿った断面図を示す。
【0070】
図14および
図15~17に示される細胞培養容器は、さらに第2スペーサ32が設けられている。
【0071】
図15において、第1スペーサ22は、第1筒体2の外周面の全ての角部であって且つ第1筒体2の軸方向下端部に設けられているが、これに限定されない。
図16、17に示されるように、第1スペーサ22は、第1筒体2の外周面の全ての角部ではなく、一部の角部に設けることもできる。第1スペーサ22は、第1スペーサ21と同様に、容器本体1の内周面の角部に嵌り込むように端部がV字形状とされてもよい。第1スペーサ22は、第1スペーサ21とともに容器本体1に対して一定の間隔Lを空けて第1筒体2を固定する。
【0072】
図15において、第2スペーサ32は、第2筒体3の外周面の全ての角部であって且つ第2筒体3の軸方向下端部に設けられているが、これに限定されない。
図16、17に示されるように、第2スペーサ32は、第2筒体3の外周面の全ての角部ではなく、一部の角部に設けることもできる。第2スペーサ32は、第2スペーサ31と同様に、それらが第1筒体2の内周面の角部に嵌り込むように端部がV字形状とされてもよい。第2スペーサ32は、第2スペーサ31とともに第1筒体2に対して一定の間隔を空けて第2筒体3を固定する。
【0073】
図15は、第1筒体2の外周面の全ての角部であって且つ第1筒体2の軸方向下端部に第1スペーサ22が設けられ、第2筒体3の外周面の全ての角部であって且つ第2筒体3の軸方向下端部に第2スペーサ32が設けられた細胞培養容器の実施例を示している。
図16は、二つの対向する角部に第1スペーサ22および第2スペーサ32が設けられた細胞培養容器の実施例を示している。
図17は、三つの角部に第1スペーサ22および第2スペーサ32が設けられた細胞培養容器の実施例を示している。
図17では、第2スペーサ32は、第1スペーサ22が配置されていない第1筒体2の内周面の三つの角部に収まるように構成されている。
【0074】
第1スペーサ22および第2スペーサ32、第1スペーサ21および第2スペーサ31により、第1筒体2および第2筒体3は容器本体1に確実に取り付けられる。
【0075】
図18は、一実施形態に基づく容器本体の平面パネルの外側面に、容器本体の軸方向に延びる少なくとも2本の線状の印が設けられた細胞培養容器の例を示す。
図18に示されるように、容器本体1の平面パネル1Aの一面には、少なくとも2本の線状の印13が設けられることが必要であるが、線状の印13がさらに追加されてもよい。また、線状の印13は、破線状であってもよい。線状の印13は、印字されたものであってもよく、線状の突起であってもよい。線状の印13の内側に断端を複数設けることで、オートフォーカスなどの機能を用いた検鏡撮影を自動化する際に、毎回の撮影視野を高精度に一致させることが容易となる。つまり、線状の印13により、撮影開始点、フォーカス調整開始点を物理的に示すことで、撮影装置に細胞培養容器を静置させることなく、細胞培養容器を移動させても、同じ領域での検鏡撮影を行うことができる。その結果、細胞の状態を的確に判定することができるとともに、細胞の培養を継続するか否かを判断することができる。
【0076】
細胞培養容器のキャップ5にはさまざまなタイプのバルブを備えることができる。
図19は、本実施例による細胞培養容器のキャップの斜視図を示す。
図20は、本実施例による細胞培養容器のキャップの上面図を示す。
図21は、本実施例による細胞培養容器のキャップの正面図を示す。
図22は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブの分解斜視図を示す。
図23は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブの内部構造を示す断面斜視図である。
図24は、本実施例による細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブを介して注射器を接続する概略図を示す。
図25は、本実施例による細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブにルアーロック構造の注射器を接続する概略図を示す。
図26は、本実施例による細胞培養容器のキャップに取り付けられたバルブにルアーロックコネクタを介してゴムチューブを接続する概略図を示す。
図27は、一実施形態に基づく細胞培養容器のキャップの変形例の正面図を示す。
【0077】
図19~21を参照すると、キャップ5はトッププレート55と、その周囲に沿ってトッププレート55の周囲に連結された周囲パネル56と、トッププレート55に取り付けられた第1バルブ52、第2バルブ52と、を含む。各バルブ52はキャップ5のトッププレート55の上方に突出しており、注射器の針やニードルハブなどの給排器具6が挿入される挿入構造(第1弁体、第2弁体)521を有している。各バルブ52はスプリットセプタム方式を採用してもよいし、機械式バルブであってもよい。各バルブ52は、イソプレン、シリコン、これらの組み合わせ、または類似の材料で作られていてもよい。
【0078】
図22~24に示されるように、キャップ5は、キャップ本体と、キャップ本体に取り付けられた、容器本体1の内部空間へ流体を給排可能なバルブ52と、を備え、バルブ52は、給排器具6が差し込まれることで開くスリット部522が設けられた、弾性材料からなる第1弁体521、第2弁体521を有していてもよい。通常、細胞培養はCO
2インキュベータ内で、開放系の培養が行われるが、キャップ5にバルブ52が設けられることにより、閉鎖系の培養を行うことができる。ここで、細胞培養容器内の気相(ガス)の置換が重要となるが、ルアーロックのシリンジなどの給排器具6などを用いることにより、異物(細菌など)による汚染を防ぎながら、細胞培養容器内の内圧を開放することができる。また、細胞培養容器に対して気体や液体を容易に注入することが可能となる。これにより、細胞培養容器の内部大気の容易な置換が実現される。バルブ52は、インサート成形、ルアーロック、またはルアースリップなどのさまざまな方法でキャップ5に接続されてもよい。バルブ52は、イソプレン、シリコン、その組み合わせ、または類似の材料で作られてもよい。
【0079】
この実施例では、キャップ5には2つのバルブ(第1バルブ、第2バルブ)52が含まれているが、これに限定されない。別の実施例では、キャップ5には1つのバルブ、または3つ以上のバルブが含まれてもよい。キャップ5に2つ以上のバルブ52がある場合、一方のバルブ(第1バルブ又は第2バルブ)52を介して外部から気体や液体を導入し、他方のバルブ(第2バルブ又は第1バルブ)52を介して細胞培養容器内の気体や液体を引き抜いてもよい。細胞培養容器の内部大気を交換するために、膜フィルタを介してガスを連続的に細胞培養容器に注入し、同時に周期的に細胞培養容器の内部からガスを排出してもよい。さらに、培養中に培地にサプリメントや細胞懸濁液を添加する際に、キャップ5を開けることなくバルブ52を使用すると、汚染のリスクを減少させつつより清潔な操作が可能となる。
【0080】
図19~24では、バルブ52がスプリットセプタム方式の例を使用していることを示している。バルブ52は、挿入構造(第1弁体、第2弁体)521としてのスプリットセプタムを有する。スプリットセプタムは通常閉じられたスリット部522を有し、給排器具6が押し込まれると開くように構成されている。このシステムにより、キャップ5をねじり外さずに、バルブ52を経由して、細胞培養容器の内部に容易にアクセスすることができる。このような、スプリットセプタム方式や機械式バルブは逆止弁となっており、イン・アウトの流体の流れの方向を決めることができる効果を有すると共に、常時閉塞されていることから更に密閉度を高めることができる。バルブ52は、他の既知のスプリットセプタム方式や機械式バルブを採用することができる。
【0081】
図25に示されるように、本実施例に基づく細胞培養容器のキャップ5に取り付けられた各バルブ52は、ルアーロック針ハブを備えたシリンジ110に接続されてもよい。このような接続を行うことにより、キャップ5を開けることなく少量の物質を添加したり、少量の培養細胞をサンプリングしたりすることができる。
【0082】
図26に示されるように、本実施例に基づく細胞培養容器のキャップ5に取り付けられた各バルブ52は、ラバーチューブ120に接続されてもよい。このような接続を行うことにより、キャップ5を開けることなく、気体や液体の交換が可能性となる。なお、バルブ52を用いて密閉し気相置換することで、容器内雰囲気を低酸素状態や高酸素状態の特殊な環境に設定することが可能となる。本実施例はセプタム方式であることから、ラバーチューブ120への薬液注入ポートにより密閉性と清潔を確保することができる。細胞培養容器内の気相環境を変えることも細胞を培養する上で重要な条件になり、細胞の挙動を大きく変えることができる。
【0083】
キャップ5の内部スレッドは、本実施例以外の容器にも適用できる。バルブ52が備わったキャップ5は、内部スレッドのねじピッチやサイズを変更することで、細胞培養容器に普遍的に使用することができる。言い換えれば、バルブ52が備わったキャップ5は、回転培養だけでなく、T型フラスコを使用した静的培養にも使用できる。バルブ52が備わったキャップ5は、バルブ52を介して任意の相と分圧の気体を導入することができる。したがって、細胞培養容器の内部大気を容易に置換し、低酸素培養などの培養環境とすることができる。具体的には、本実施例に基づくキャップ5は、さまざまなタイプの細胞培養容器、例えば、T25、T75、T175、T225に適用することが可能である。
【0084】
図27は、2つの口径を有するキャップ50を示す。細胞培養容器として広く使用されるT型フラスコは、T175、T225のサイズのものである。例えば、キャップ50aをT175のサイズに対応させ、キャップ50bをT225のサイズに対応させることにより、一般的に使用される2つのサイズのT型フラスコに対応させることができる。その結果、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0085】
(細胞培養方法)
キャップ5に上記バルブ52を備えた細胞培養容器を用いた細胞培養方法について、以下説明する。
【0086】
上記の細胞培養容器を用いた細胞培養方法は、横向きにした前記細胞培養容器を、前記細胞培養容器の軸方向回りに所定の回転速度で回転させて、前記細胞培養容器内の細胞を培養する培養工程と、所定の培養期間経過ごとに、前記細胞培養容器内の細胞の状態を検鏡する確認工程と、所定の培養期間経過ごとに、バルブ52を経由して前記細胞培養容器内の液体培地及び/又はガスを交換する交換工程と、所定の培養期間経過後、容器本体1の内面、および第1筒体2の内外両面に付着した目的細胞を回収する回収工程と、を備えてもよい。
【0087】
上記構成によれば、閉鎖系で細胞培養を継続して行うことができるため、異物(細菌など)による汚染を防ぎながら、有用細胞の量産培養が可能となる。さらに、定期的な培地交換とガス交換を、バルブを経由して自動で行うことも可能であるため、細胞培養をより効率化することが可能となる。この細胞培養方法で回収される目的細胞は、iPS細胞や間葉系幹細胞などを含む接着細胞や付着細胞であり、例えば、脂肪組織由来幹細胞、羊膜組織由来幹細胞、ヒト臍帯ウォートンジェリー由来幹細胞、及び絨毛膜組織由来幹細胞等の幹細胞が挙げられる。
【0088】
上記の細胞は、筋肉や骨、神経、脂肪などの組織に分化できることから、再生医療への貢献が期待できる。
【0089】
上記の細胞培養容器を用いた細胞培養方法は、所定の期間経過ごとに、バルブ52を経由して前記細胞培養容器内の液体培地及び/又はガスを交換する交換工程と、前記細胞培養容器内の細胞に有用物質を産生させる有用物質産生工程と、前記バルブ52を経由して前記細胞培養容器内の上清液を回収する回収工程と、を備えてもよい。
【0090】
上記構成によれば、定期的な培地交換とガス交換により、細胞の状態を最適化することで、細胞に有用物質を効果的に産生させることができる。また、定期的な培地交換とガス交換を、バルブを経由して自動で行うことも可能であるため、上清液の製造をより効率化することが可能となる。この上清液製造方法で有用物質を産生する細胞としては、iPS細胞や間葉系幹細胞などを含む接着細胞や付着細胞であり、例えば、脂肪組織由来幹細胞、羊膜組織由来幹細胞、ヒト臍帯ウォートンジェリー由来幹細胞、及び絨毛膜組織由来幹細胞等の幹細胞が挙げられる。上清液には、これらの細胞から産生された成長因子やタンパク質が含まれている。具体的には、サイトカイン、エクソソーム、EGF(上皮細胞成長因子)、KGF(ケラチノサイト増殖因子)、IGF(インスリン様増殖因子)等が含まれる。得られた上清液は、リウマチの改善、皮膚疾患の改善、抗炎症作用、動脈硬化の予防等に利用される。また、アンチエイジング医療や予防医学の領域で施術に用いる成分として利用され、また、化粧品や美容液の成分としても利用される。
【0091】
図28は、一実施形態に基づく細胞培養容器を用いた細胞培養方法と細胞の回収方法の工程を示すフロー図である。
図29は、一実施形態に基づく細胞培養容器に把持装置を装着した説明図である。
【0092】
(細胞の回収方法)
1.初代培養工程
脂肪組織由来幹細胞を培養する場合、患者の腹部等から採取した脂肪を検体として用いる。羊膜組織由来幹細胞を培養する場合、羊膜を検体として用いる。ヒト臍帯ウォートンジェリー由来幹細胞を培養する場合、ヒト臍帯を検体として用いる。絨毛膜組織由来幹細胞を培養する場合、絨毛膜を検体として用いる。
【0093】
検体の搬送・受入れ後(S1)、前処理が行われる(S2)。前処理においては、剥離用酵素によって細胞を剥離後(S3)、細胞が抽出され、回収される(S4)。回収された細胞は、液体培地が投入された細胞培養容器に播種され(S5)、まずは静置培養が開始される(S6)。液体培地としては、市販の培地、例えば、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を使用してもよく、これを基礎培地として別の成分を添加してもよく、独自の液体培地を作成して使用してもよい。静置培養において、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ、前記細胞培養容器内の細胞の状態が確認される(S7)。また、所定の培養期間経過ごとにバルブ52を経由して定期的な培地交換とガス交換が行われる(S8)。さらに、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ(S9)、細胞の充分な増殖が確認された後、初代培養が完了する(S10)。
【0094】
2.拡大培養工程
初代培養で得られた細胞について、セルカウントを行う(S11)。セルカウントは非侵襲的手法により行われ、検鏡観察によって細胞数が測定されることが好ましい。培養細胞の非侵襲的測定は、細胞へダメージがなく、測定を自動で行うことができるため、細胞培養をより効率化することが可能となる。細胞数の測定後、バルブ52を経由して、剥離用酵素を添加し、細胞培養容器の内面に付着して増殖した細胞を剥離させる(S12)。次に、必要量の液体培地を追加し(S13)、懸濁後、回転培養を開始する(S14)。液体培地としては、初代培養で使用した液体培地と同じ液体培地を使用してもよく、これを基礎培地として別の成分を添加してもよく、別の液体培地を使用してもよく、独自の液体培地を作成して使用してもよい。また、このとき、必要に応じて、細胞培養液および細胞の品質検査が行われてもよい(S19)。品質検査は、定量PCRによって行われ、細菌などによる感染がないか確認される。
【0095】
回転培養は、
図29に示される把持装置7に細胞培養容器を装着して行われることが好ましい。把持装置7は、細胞培養容器を把持する把持部7aとモーター(不図示)に連結されるモーター連結部7bとから構成される。把持部7aは、容器本体1の一部のみを把持するため、顕微鏡Mで撮影される領域に傷がつくことを防ぐことができる。また、観察は、把持部7aがない面で検鏡することができ、必要に応じて、把持部7aの差し込みを1面ずらすことで、全ての面を簡便にくまなく観察することができる。例えば、培地交換やガス交換の前後で、把持部7aの差し込み位置を1面ずらすことで、すべての面をくまなく観察することができる。回転培養は、横向きにした細胞培養容器を、細胞培養容器の軸方向回り(周方向)に所定の回転速度で回転させることにより行う。容器本体1の内面、及び第1筒体2の内外両面に付着した細胞が表面張力により液体培地で常に覆われるように、所定の回転数で細胞培養容器を回転させることが好ましい。
図29には、細胞培養容器の上面からみて、細胞培養容器が右方向(時計回り)に回転するように示されているが、左方向(反時計回り)に回転してもよい。回転培養において、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ、細胞培養容器内の細胞の状態が確認される(S15)。また、所定の培養期間経過ごとにキャップ5のバルブ52を経由して定期的な培地交換とガス交換が行われる(S16)。さらに、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ(S17)、細胞の増殖が確認された後、拡大培養が完了する(S18)。
【0096】
3.細胞保管工程
拡大培養で得られた細胞の細胞数を、セルカウントにより測定する(S20)。セルカウントは、上記同様、非侵襲的手法により行われることが好ましい。細胞数の測定後、キャップ5のバルブ52を経由して、剥離用酵素を添加し、細胞培養容器の内部に付着して増殖した細胞を剥離させる(S21)。このとき、必要に応じて、細胞培養液を一部サンプリングしてセルカウントを行い、液中の細胞数を調整してもよい。この際、セルカウントは、一般的な手法で行われ、0.3~0.5%トリパンブルー染色液を使用した血球計算機または自動セルカウンターを用いて測定される。細胞培養容器内の細胞培養液は、凍結保存用チューブに分注され(S22)、ディープフリーザー、液体窒素、又は液体窒素気相で保存される(S23)。凍結保存された細胞は、後に説明する起眠・拡大培養工程後、上清液製造のために使用される。
【0097】
4.細胞回収工程
移植を行うための細胞を回収する場合は、細胞培養容器の内部に付着して増殖した細胞を剥離させたのち(S21)、必要量の細胞を分取する(S24)。細胞をPBS等で洗浄後(S25)、所定の剤形に梱包する。また、必要量の細胞を分取する際(S24)、品質検査用として細胞をサンプリングし(S27)、所定の項目の品質検査を実施し(S28)、検査結果の判定後(S29)、安全性が確認された細胞の剤形は、医療機関や研究施設等に納品される。
【0098】
図30は、一実施形態に基づく細胞培養容器を用いた細胞培養方法と上清液の製造方法の工程を示すフロー図である。
図30におけるS1~S23は、
図28におけるS1~S23と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
5.起眠・拡大培養工程
凍結保存されている細胞培養液(S23)を凍結融解する(S30)。必要に応じてセルカウントを行い、液中の細胞数を確認する(S31)。この際、セルカウントは、一般的な手法で行われる。次に、液体培地が投入された細胞培養容器に細胞を播種後(S32)、回転培養が開始される(S33)。回転培養において、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ、細胞培養容器内の細胞の状態が確認される(S34)。また、所定の培養期間経過ごとにバルブ52を経由して定期的な培地交換とガス交換が行われる(S35)。さらに、所定の培養期間経過ごとに定期的な検鏡が行われ(S36)、細胞の充分な増殖が確認された後、拡大培養が完了する(S37)。これ以降は、細胞培養用条件から上清液製造用条件に切り替えられてもよく(S38)、拡大培養の完了により、細胞移植を伴う再生医療の治療用の細胞として細胞が回収されてもよい(S24)。
【0100】
6.上清液製造工程
細胞培養用条件から上清液製造用条件に切り替えられると(S38)、上清液製造工程が開始される(S39)。上清液製造工程において、所定の期間経過ごとにバルブ52を経由して定期的な培地交換とガス交換が行われる(S40)。細胞から有用物質が産生されると、有用物質を含む上清液が回収される(S41)。上清液製造工程は、細胞培養容器を静置させた状態で行ってもよいが、体液循環のある生体内により近い環境を作り出す観点から、細胞培養容器の軸方向回りに所定の回転速度で回転させて行うことが好ましい。
【0101】
7.品質検査工程
品質検査においては、上清液中に異物の混入や感染がないか確認される。
【0102】
エンドトキシン試験が行われる(S42)。エンドトキシンを検出する一般的な方法として、ゲル化法が挙げられる。ゲル化法は、エンドトキシンの存在によるライセート試薬の凝固反応に基づいて、エンドトキシンを検出する。ゲル化試薬を入れた試験管を37℃、60分間インキュベートしてゲル化を判定する。ゲルが崩れなければ陽性、ゲルが形成されなければ陰性と判断される。
【0103】
無菌検査が行われる(S43)。無菌検査は、上清液を規定の方法で処理し培養することによって、培地で増殖する微生物の有無を肉眼で確認することにより行われる。
【0104】
マイコプラズマ検査が行われる(S44)。マイコプラズマ検査は、マイコプラズマ培養法、DNA染色法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法のいずれかが行われてもよく、これらが併用されてもよい。マイコプラズマ培養法は、マイコプラズマ用に最適化した培地を用い、試験サンプルを接種する検査方法である。DNA染色法は、マイコプラズマの核をヘキスト染色またはDAPIで対比染色し、蛍光顕微鏡を用いて画像にして確認する検査方法である。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法は、サンプル中にマイコプラズマが存在する場合、そのDNAが増幅されることに基づく検査方法である。
【0105】
上記の3つの品質検査により安全性が確認された上清液は(S45)、医療機関や研究施設等に納品される。
【0106】
本実施形態は、さまざまな異なる形態で実施することができる。本開示がその精神または本質的な特徴を変更することなく、他の特定の形態で実施されることがあることは、本開示の対象となる技術者にとって理解される。したがって、前述の実施形態はすべての態様において例示的であり、限定的でないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0107】
1 容器本体
2 第1筒体
21、22 第1スペーサ
21a 端部
23 サポート
3 第2筒体
31、32 第2スペーサ
33 溝
4 蓋体
41 ネック部
5、50 キャップ
52 第1バルブ、第2バルブ
521 第1弁体、第2弁体
522 スリット部
6 給排器具
【要約】
【課題】容器内で細胞が付着して増殖するための細胞接着面を広く確保することができる細胞培養容器を提供すること。
【解決手段】この細胞培養容器は、多角柱状の内部空間を有する、有底の容器本体1と、容器本体1の内部に容器本体1と同軸で配置された多角柱状の第1筒体2と、容器本体の軸方向端部に取り付けられた蓋体4と、蓋体4の筒状のネック部に取り付けられたキャップ5と、第1筒体2の外周面のうちの角部であって且つ第1筒体2の軸方向端部に設けられた第1スペーサ21、22と、を備え、容器本体1の内周面のうちの角部に第1スペーサ21、22が嵌り込んでいる。
【選択図】
図2