(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】異なる組成の活物質層を含む二次電池用負極、これを含む電極組立体、および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20240918BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240918BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240918BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/36 D
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2023503483
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2022009475
(87)【国際公開番号】W WO2023287076
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091135
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テギュン・ノ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-070976(JP,A)
【文献】特開2015-064975(JP,A)
【文献】特開2020-087856(JP,A)
【文献】特開2019-149269(JP,A)
【文献】特開2018-181543(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225515(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0028582(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0073801(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2124105(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体
上に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、
前記負極活物質層は、第1負極活物質層、および第2負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層は平坦部を構成し、前記第2負極活物質層は、前記平坦部の両側にある第1傾斜部と第2傾斜部を構成し、
前記第1負極活物質層は
負極活物質として第1負極活物質
のみを含み、前記第2負極活物質層は
負極活物質として第2負極活物質
のみを含み、
前記第1負極活物質は未コーティングの黒鉛からなり、前記第2負極活物質はカーボンでコーティングされた黒鉛からなる、二次電池用負極。
【請求項2】
前記第1負極活物質の黒鉛および前記第2負極活物質の黒鉛はそれぞれ人造黒鉛または天然黒鉛である、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項3】
前記第2負極活物質のカーボンは、低結晶性カーボン、非晶質カーボン、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項4】
前記第2負極活物質のカーボンは、カーボンでコーティングされた黒鉛全体重量を基準にして5~20重量%でコーティングされている、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項5】
前記第1負極活物質層と前記第2負極活物質層は、それぞれ、バインダーおよび導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上の種類が異なるか、構成成分の含量比が異なる、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項6】
前記第1負極活物質は、活物質としての未コーティングの黒鉛とバインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)と導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含み、
前記第2負極活物質は、活物質としてのカーボンでコーティングされた黒鉛とバインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)と導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含む、請求項
5に記載の二次電池用負極。
【請求項7】
前記第1負極活物質層と前記第2負極活物質層の体積比は4:6~6:4である、請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項8】
請求項1に記載の二次電池用負極を含む二次電池用電極組立体であって、
正極と前記二次電池用負極の間に介される分離膜を含み、
前記正極の正極集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されている、二次電池用電極組立体。
【請求項9】
前記正極活物質層は、第1正極活物質層、および前記第1正極活物質層の平面上一側または両側に形成されており、前記第1正極活物質層と組成が異なる第2正極活物質層を含む、請求項
8に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項10】
前記第1正極活物質層と前記第2正極活物質層は、それぞれに含まれる正極活物質、バインダー、および導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上の種類が異なるか、構成成分の含量比が異なる、請求項
9に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項11】
請求項
8に記載の二次電池用電極組立体、および電解質が電池ケースに内装されている二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年7月12日付韓国特許出願第10-2021-0091135号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、異なる組成の活物質層を含む二次電池用負極、これを含む電極組立体、および二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれてエネルギー源として二次電池に対して需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうちでも高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
また、最近は環境問題に対する関心が大きくなるにつれて大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両を代替することができる電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く行われている。このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としては、高いエネルギー密度、高い放電電圧および出力安定性のリチウム二次電池が主に研究、使用されている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、消費者の要求によって急速充電の可能なモデルへの開発が行われており、このためには高エネルギー密度、長寿命、低スウェリングに向けて電池の設計が行われる。
【0006】
しかし、急速充電の充電レート(Rate)が高まるにつれて電池負極にリチウム析出が発生するようになり、これは初期には局部的に発生するが、終局には電池の寿命維持率とスウェリングを悪化させる問題を発生させる。
【0007】
しかし、二次電池の電極は、製造過程中に電極活物質スラリーのコーティングによって発生するスライディング現象で位置別コーティング量が異なり、これにより充放電特性が異なって負極のリチウム析出速度に差を有するようになるところ、これは電池の長期性能に影響を与えるようになる。
【0008】
したがって、これを解決することができる技術の開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電極活物質層の製造時、スライディング現象によって発生する平面上ローディング量差によるリチウム析出不均衡問題を解決して、電池性能が急速に低下するのを防止することができる二次電池用負極、これを含む電極組立体、および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による二次電池用負極は、負極集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、前記負極活物質層は、第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層の平面上一側または両側に形成されている第2負極活物質層を含み、前記第1負極活物質層は未コーティング黒鉛を第1負極活物質として含み、前記第2負極活物質層はカーボンコーティング黒鉛を第2負極活物質として含む。
【0011】
この時、前記負極は、平面上一端側の第1傾斜部、他端側の第2傾斜部、および前記第1傾斜部と第2傾斜部の間に位置する平坦部から構成され、前記平坦部には第1負極活物質層が形成されており、前記第1傾斜部および第2傾斜部には第2負極活物質層が形成されていてもよい。
【0012】
前記第1負極活物質および第2負極活物質の黒鉛は人造黒鉛または天然黒鉛であってもよく、前記第2負極活物質のカーボンは、低結晶性カーボン、非晶質カーボン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0013】
ここで、前記カーボンは、カーボンコーティング黒鉛全体重量を基準にして5~20重量%でコーティングされていてもよい。
【0014】
また、前記第1負極活物質層と第2負極活物質層は、バインダーおよび導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上がその種類が異なるか、構成成分の含量比が異なってもよい。
【0015】
具体的には、前記第1負極活物質は、活物質としての未コーティング黒鉛:バインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR):導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含み、前記第2負極活物質は、活物質としてのカーボンコーティング黒鉛:バインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR):導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含むことができる。
【0016】
一方、前記第1負極活物質層と第2負極活物質層の体積比は6:4~4:6であってもよい。
【0017】
本発明のまた他の一実施形態によれば、本二次電池用負極を含む二次電池用電極組立体であって、正極と前記負極の間に介される分離膜を含み、前記正極は正極集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されている電極組立体が提供される。
【0018】
この時、前記正極活物質層は、第1正極活物質層、および前記第1正極活物質層の平面上一側または両側に形成されており、前記第1正極活物質層と組成が異なる第2正極活物質層を含むことができる。
【0019】
この時、前記第1正極活物質層と第2正極活物質層も、前記第1負極活物質層および第2負極活物質層と同様に、各層に含まれる正極活物質、バインダー、および導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上がその種類が異なるか、構成成分の含量比が異なってもよい。
【0020】
本発明はまた前記二次電池用電極組立体、および電解質が電池ケースに内装されている二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による二次電池用負極は、平面上に互いに異なる活物質を含むように第1負極活物質層および第2負極活物質層を形成することによって、電極コーティング時発生するスライディングによるリチウム析出速度の差を緩和させることができるので、析出不均衡による二次電池の充放電特性の低下を防止することができる効果がある。
【0022】
また、正極も同一に平面上に互いに異なる活物質を含むように第1正極活物質層および第2正極活物質層を形成する場合、このような問題をさらに効果的に解決して、さらに向上した二次電池性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による二次電池用負極を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による二次電池用電極組立体を模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明のまた他の一実施形態による二次電池用電極組立体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【0025】
また、本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は通常的且つ辞典的な意味に解釈されてはならず、発明者らはその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するのではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる多様な均等物と変形例があり得るし、本発明の範囲が以下に記述する実施形態に限定されるのではない。
【0026】
本発明は一実施形態によれば、負極集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されている二次電池用負極であって、前記負極活物質層は、第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層の平面上一側または両側に形成されている第2負極活物質層を含み、前記第1負極活物質層は未コーティング黒鉛を第1負極活物質として含み、前記第2負極活物質層はカーボンコーティング黒鉛を第2負極活物質として含む二次電池用負極が提供される。
【0027】
ここで、前記負極集電体は銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、異種金属で表面処理された銅、異種金属で表面処理されたステンレススチール、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選択される1種であってもよく、詳しくは、負極集電体として、銅を含む金属であってもよい。
【0028】
一方、従来は負極集電体に形成される負極活物質層を単層に形成するか、組成を異にして多層に形成した。しかし、負極活物質層が製造される時、負極活物質スラリーがコーティングされる工程により、コーティング方向から垂直である方向の一端と他端にスライディング現象が発生し、これにより、位置別に充放電特性が異なって示される問題に対する認識が不足した。
【0029】
よって、本出願の発明者らはこのような問題を認識し解決しようとした。特に最近急速充電の要求が多くなるにつれて、急速充電を行うことによって発生するリチウム析出現象が二次電池の性能に多くの影響を与え、このようなリチウム析出も、前記スライディング現象によって負極活物質層で位置別に異なって発生することを確認した。
【0030】
よって、本出願の発明者らはコーティング工程上活物質層にスライディングが発生することが避けられないので、これを解決しようと深みのある研究を繰り返し、これにより、平面上に互いに異なる活物質を含むように活物質層を異なるように形成し、リチウム析出不均衡を防止することができるように活物質などを適切に選択する場合にはこのような問題を解決して、二次電池性能の向上を図ることができるのを確認して本発明を完成するに至った。
【0031】
したがって、本発明の二次電池用負極での負極活物質層は平面上において第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層の一側または両側に形成されている第2負極活物質層に区分され、前記第1負極活物質層は未コーティング黒鉛を第1負極活物質として含み、前記第2負極活物質層はカーボンコーティング黒鉛を第2負極活物質として含むことによって、位置およびローディング量によるリチウム析出不均衡問題を解消した。
【0032】
さらに具体的にその構成を説明するために、
図1には本発明の一実施形態による二次電池用負極の断面図を模式的に示した。
【0033】
図1を参照すれば、二次電池用負極100は、負極集電体101上に第1負極活物質層111と第2負極活物質層112が形成された構造になっている。
【0034】
この時、二次電池用負極100は平面上一端側の第1傾斜部121、他端側の第2傾斜部122、および前記第1傾斜部121と第2傾斜部122の間に位置する平坦部123から構成され、平坦部123に第1負極活物質層111が形成されており、第1傾斜部121および第2傾斜部122には第2負極活物質層112が形成されている。
【0035】
即ち、負極活物質層形成のためのスラリーコーティング時、コーティング方向での両端にスライディング現象が発生し、前記スライディングによって第1傾斜部121と第2傾斜部122を有するようになる。
【0036】
したがって、第1傾斜部121および第2傾斜部122と平坦部123はローディング量に差を有するようになるところ、充放電特性が異なるようになり、これによりリチウム析出様相も異なるようになり、このような差が電池性能の低下をもたらすようになる。
【0037】
したがって、本発明は、第1傾斜部121および第2傾斜部122に、平坦部123とは異なり、さらに多くのリチウムを吸蔵放出することができる負極活物質層を形成することによって、前記問題を解決した。
【0038】
即ち、第2負極活物質層はカーボンコーティング黒鉛を第2負極活物質として含ませて、カーボンコーティングによって粒子強度を強くし、電極圧延後にも表面に気孔をよく分布するようにし表面伝導度を増加させることによって第2負極活物質のレート特性を向上させることができて、平坦部と第1傾斜部および第2傾斜部のリチウム析出速度を均一にした。
【0039】
この時、前記第1負極活物質および第2負極活物質としてはベースとして黒鉛が使用され、この時、黒鉛はそれぞれ前記第1負極活物質および第2負極活物質として人造黒鉛または天然黒鉛を適用することができるが、詳しくは、第1負極活物質、および第2負極活物質の両方とも本願の効果である急速充電時電池性能低下を防止しようとする目的に符合するように電池の急速充電特性を向上させる人造黒鉛であってもよい。
【0040】
この時、前記人造黒鉛は、1次粒子が凝集されて形成された2次粒子であってもよい。
【0041】
このような2次粒子としての人造黒鉛は10%~30%の空隙率、詳しくは15%~20%の空隙率を有することができる。このような範囲を満足する場合、リチウムイオンとの接触面積がより広くなって容量特性および寿命特性を改善することができる。
【0042】
また、前記人造黒鉛の比表面積は0.5m2/g~1.5m2/g、詳しくは、0.8m2/g~1.2m2/gであってもよい。このような範囲の比表面積(BET)を有する人造黒鉛粒子は優れた急速充電特性、およびサイクル寿命特性を有することができる。
前記天然黒鉛は球形の単一粒子であってもよく、この場合、圧延性能および高温保存特性を向上させることができる。
【0043】
このような天然黒鉛の空隙率も10%~30%の空隙率、詳しくは15%~20%の空隙率を有することができる。このような範囲を満足する場合、リチウムイオンとの接触面積がより広くなって容量特性および寿命特性を改善することができる。
【0044】
また、前記天然黒鉛の比表面積は0.5m2/g~5m2/g、好ましくは1.5m2/g~2.5m2/gであってもよく、前記範囲にある時、圧延時圧延性能が向上し電極構造の変化を最少化する側面から好ましい。
【0045】
前記黒鉛の比表面積は、BET(Brunauer‐Emmett‐Teller;BET)法で測定することができる。例えば、気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp‐II mini)を使用して窒素ガス吸着流通法によってBET6点法で測定することができる。一方、第2負極活物質として、使用されるカーボンコーティング黒鉛のカーボンコーティングは従来知られた方法で行うことができ限定されないが、例えば、カーボンまたはその前駆体を前記黒鉛表面に提供した後、これを熱分解することによって形成できる。即ち、熱処理処理して形成することができる。この時、熱処理温度は1000℃~4000℃温度範囲で実施できる。
【0046】
または、カーボン物質を黒鉛表面に提供した後、単純乾式混合またはメカノフュージョン法のようなせん断力を加えて形成することもできる。
【0047】
この時、詳しくは、前記カーボンは、低結晶性カーボン、非晶質カーボン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0048】
具体的に、前記低結晶性カーボンまたは非晶質カーボンは、スクロース(sucrose)、メチレンジフェニルジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate)、ポリウレタン、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、フラン樹脂、セルロース、スチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、タール、および低分子量重質油からなる群より選択される少なくとも一つを含むカーボン前駆体から形成できるが、これに限定されるのではない。
【0049】
また、前記カーボンは、カーボンコーティング黒鉛全体重量を基準にして5~20重量%、詳しくは10~20重量%でコーティングされていてもよい。
【0050】
前記範囲を逸脱して、過度に少ない含量でコーティングされる場合、本発明による効果を発揮しにくく、過度に多い含量で含まれる場合にはリチウムイオンの移動抵抗が増加して好ましくない。
【0051】
一方、前記第1負極活物質として未コーティング黒鉛の平均粒径(D50)は6μm~20μmであってもよく、具体的に8μm~18μmであってもよく、より具体的に10μm~18μmであってもよい。この範囲を満足する場合、容量、保存特性など電池性能が全般的に優れる。
【0052】
前記第2負極活物質としてカーボンコーティング黒鉛の平均粒径(D50)は10μm~25μm、詳しくは12μm~20μmであってもよい。前記範囲を満足するとき、電池の優れた急速充電特性を実現する側面から好ましい。
【0053】
前記平均粒径(D50)は粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的に、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販されるレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して、粒子がレーザービームを通過する時の粒子大きさによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出することによって、D50を測定することができる。ここで、粒径は直径を意味する。
【0054】
一方、前記第1負極活物質層と第2負極活物質層はそれぞれ、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。これらバインダーおよび導電材の種類および含量が各層同士同一であってもよいが、詳しくは、バインダーおよび導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上がその種類が異なってもよい。即ち、それぞれの層で使用されるバインダーの種類が異なるか、導電材の種類が異なるか、両方とも異なってもよい。
【0055】
または、種類が同一でも、第1負極活物質層と第2負極活物質層に含まれる構成成分の含量比が異なってもよい。即ち、負極活物質、バインダーおよび導電材の含量比が第1負極活物質層と第2負極活物質層で異なってもよい。
【0056】
前記バインダーは、従来当業界に知られた種類のバインダーであって、電極成分の接着力向上の可能な種類であれば限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニルアルコール、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、水系バインダーとしてポリアクリル酸(PAA)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選択される1種以上であってもよい。そして、第1負極活物質層のバインダーと第2負極活物質層のバインダーが前記例から選択され、互いに同一に、または互いに異なるように選択されてもよい。
【0057】
前記バインダーが含まれる場合、各活物質層で0.1~30重量%、詳しくは1~10重量%、より詳しくは1~5重量%でそれぞれ含まれていてもよい。もちろん、各層の含量が異なってもよい。
【0058】
同様に、前記導電材は当該電池に化学的変化を誘発しないながら導電性を有するものであれば特に制限されるわけではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ素化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。そして、第1負極活物質層の導電材と第2負極活物質層の導電材が前記例から選択され、互いに同一に、または互いに異なるように選択されてもよい。
【0059】
前記導電材が含まれる場合、各活物質層で0.1~30重量%、詳しくは1~10重量%、より詳しくは1~5重量%でそれぞれ含まれていてもよい。もちろん各層の含量が異なってもよい。
【0060】
最も詳しくは、前記第1負極活物質は、活物質としての未コーティング黒鉛:バインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR):導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含み、前記第2負極活物質は、活物質としてのカーボンコーティング黒鉛:バインダーとしてのスチレン‐ブタジエンゴム(SBR):導電材としてのカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ(CNT)を重量比として、93~97:1~5:0.1~5で含むことができる。
【0061】
一方、前記第1負極活物質層と第2負極活物質層の体積比は前記傾斜部と平坦部に対応するように形成される点で限定されないが、従来工程を基準にして判断する時、例えば、4:6~9:1、または4:6~8:2、または4:6~7:3であってもよく、最も詳しくは、4:6~6:4であってもよい。
【0062】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、二次電池用負極を含む二次電池用電極組立体であって、正極と前記負極の間に介される分離膜を含み、前記正極は正極集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されている電極組立体が提供される。
【0063】
このような一実施形態による電極組立体の断面図を
図2に模式的に示した。
【0064】
図2を参照すれば、電極組立体200は、前記説明した構成のような負極100、正極210と、負極100と正極210の間に介される分離膜220を含む。
【0065】
ここで、正極210は正極集電体211上に正極活物質層212が形成されており、負極100と同様に平坦部201と平坦部201の両端に傾斜部202、203を有するように構成されるが、全体的に同一な組成の正極活物質層212を形成した。
【0066】
一方、前記正極活物質層は第1正極活物質層、および前記第1正極活物質層の平面上一側または両側に形成されており、前記第1正極活物質層と組成が異なる第2正極活物質層を含むことができ、ここで組成が異なると言うことは、前記第1正極活物質層と第2正極活物質層は、各層に含まれる正極活物質、バインダー、および導電材からなる群より選択されるいずれか一つ以上がその種類が異なるか、構成成分の含量比が異なってもよいのを意味する。
【0067】
【0068】
図3を参照すれば、電極組立体300は、前記説明した構成のような負極100、正極310と、負極100と正極310の間に介される分離膜320を含む。
【0069】
ここで、正極310は負極100と同一に正極活物質層の形成のための製造時スラリーのスライディング現象により平坦部301と平坦部301の両端に傾斜部302、303を有する。そして、正極集電体311上に平坦部301には第1正極活物質層312が形成されており、傾斜部には第2正極活物質層313が形成されている。
【0070】
前記第1正極活物質層および第2正極活物質層に含まれる正極活物質はそれぞれ、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1種またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNixMn2-xO4で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;LiFePO4で表されるリン酸鉄リチウム化合物;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などを含むことができるが、これらのみに限定されるのではない。
【0071】
前記各層に含まれる正極活物質の種類は同一であってもよく、異なってもよい。
【0072】
前記正極活物質層に含まれるバインダーおよび導電材の例は前記負極活物質層で説明した通りであり、これらも、各層に同一な種類、異なる種類が含まれてもよい。
【0073】
また、活物質、バインダー、および導電材の含量比が各層で同一、または異なってもよい。
【0074】
一方、本発明のまた他の一実施形態によればまた、前記二次電池用電極組立体、および電解質が電池ケースに内装されている二次電池が提供される。
【0075】
二次電池において前記電極組立体を除いたその他の構成成分の具体的な内容は当業界によく知られているので、本明細書にはこれに関する具体的な説明を省略する。
【0076】
以下、例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。
【0077】
<製造例1>カーボンコーティング黒鉛の製造
ニードルコークスをジェットミルを用いて粉砕した後、篩にかけて粉体を得た。
【0078】
不活性(Ar)ガス雰囲気下で3,000℃で20時間前記粉体を熱処理(黒鉛化)して平均粒径(D50)が2.5μmである人造黒鉛1次粒子を製造した。
【0079】
その後、前記人造黒鉛1次粒子と石油系ピッチを92:10の比率で投入した後、1,500℃で10時間熱処理して、前記人造黒鉛1次粒子が2次粒子に凝集されて粗粒化され、同時にカーボンコーティングが行われてカーボンコーティングされた人造黒鉛(炭素含量3重量%、平均粒径(D50):約15μm)を製造した。
【0080】
<例1>
製造例1で製造されたカーボンコーティング人造黒鉛を活物質とし、バインダーとしてSBR、導電材としてカーボンブラックを重量比95:3.5:1.5で混合した混合物と、分散媒として水を使用して混合物と分散媒の重量比を1:2にして混合した活物質層用スラリーを準備した。
【0081】
スロットダイを用いて、厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の一面に前記活物質層用スラリーをコーティングし、130℃真空下で1時間乾燥して、活物質層を形成した。このように形成された活物質層をロールプレシング(roll pressing)方式で圧延して、80μm厚さの活物質層を備えた負極を製造した。
【0082】
<例2>
前記例1で、活物質としてカーボンコーティング人造黒鉛の代わりに、未コーティング人造黒鉛(平均粒径(D50):18μm)を使用し、バインダーとしてSBR、導電材としてカーボンブラックを重量比95:3.5:1.5で混合した混合物と、分散媒として水を使用して混合物と分散媒の重量比を1:2にして混合した活物質層用スラリーを使用して活物質層を形成したことを除いては例1と同一に負極を製造した。
【0083】
<実験例1>
前記例1、および例2で製造された負極を使用し、正極としてはLi金属を使用し、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.15M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
【0084】
前記コイン型半電池をCHC 0.1Cで3サイクル回した後、3Cレート電流値を計算して3Cで28分間充電してプロファイルを1次微分して、dQ/dVに変曲点を確認してLiプレーティングSOC(%)を定量化した。この結果を表1に示した。
【0085】
【0086】
表1を参照すれば、例1の急速充電特性が例2の急速充電特性より優れたことが分かる。したがって、例1の活物質を傾斜部に使用する場合、リチウム析出不均一を解消することができると予想される。
【0087】
本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能であるはずである。