(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】建物浸水防止装置及び建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20240918BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04B1/64 A
E04B1/70 C
E04B1/70 D
(21)【出願番号】P 2023103346
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2022186054
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519021141
【氏名又は名称】丸山 芳之
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 芳之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095999(JP,A)
【文献】特開2002-364088(JP,A)
【文献】特開2007-239181(JP,A)
【文献】特開2023-032291(JP,A)
【文献】特開2021-067158(JP,A)
【文献】特開平10-008578(JP,A)
【文献】特開2023-167052(JP,A)
【文献】特開2022-146381(JP,A)
【文献】特開2016-132869(JP,A)
【文献】特開2017-008654(JP,A)
【文献】特開2021-134637(JP,A)
【文献】特開2001-132115(JP,A)
【文献】特開2008-031698(JP,A)
【文献】特開2022-167731(JP,A)
【文献】実開平02-018807(JP,U)
【文献】特開平07-300908(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001963(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64
E04B 1/68
E04B 1/684
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と土台の間の隙間又は前記隙間と屋外を繋ぐ通気路に配置された、複数の換気孔が形成された隔壁部材に取り付けられる建物浸水防止装置であって、
前記隔壁部材の前記複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞ぐための防水部材と、
前記防水部材が前記隔壁部材の前記屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞いだ状態で、前記防水部材を前記隔壁部材に固定する固定用部材と、
を備え
、
前記固定用部材は、
前記隔壁部材と前記防水部材とを貫通するボルトと、
前記ボルトのうちの、前記防水部材よりも屋外側に取り付けられるナットと、
を備え、
前記ボルトは、前記複数の換気孔のうちの一部の換気孔に挿入される、
建物浸水防止装置。
【請求項2】
前記隔壁部材は、前記通気路を形成する換気孔付き土台水切りの隔壁部分である、
請求項1に記載の建物浸水防止装置。
【請求項3】
前記隔壁部材は、前記隙間の屋外側の開口に配置される換気孔付き防鼠部材である、
請求項1に記載の建物浸水防止装置。
【請求項4】
前記ボルトの頭部は、軸回りの第1回転角において前記換気孔に挿入可能で、前記第1回転角と90度異なる第2回転角において前記換気孔に挿入不能な形状を有する、
請求項
1に記載の建物浸水防止装置。
【請求項5】
前記複数の換気孔は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向に並び、
前記ボルトが挿入される前記一部の換気孔は、他の換気孔より前記第1方向に長く、
前記防水部材は、前記複数の換気孔を塞ぐ閉塞位置と、前記閉塞位置から前記第1方向に離れた、前記複数の換気孔を開放する開放位置との間を移動可能に構成される、
請求項
1に記載の建物浸水防止装置。
【請求項6】
建物の基礎と土台の間の隙間又は前記隙間と屋外を繋ぐ通気路に配置された、複数の換気孔が形成された隔壁部材に取り付けられる建物浸水防止装置であって、
前記隔壁部材の前記複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞ぐための防水部材と、
前記防水部材が前記隔壁部材の前記屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞いだ状態で、前記防水部材を前記隔壁部材に固定する固定用部材と、
を備え、
前記隔壁部材は、前記隙間に配置される換気孔付き基礎パッキンである、
建物浸水防止装置。
【請求項7】
前記固定用部材は、前記防水部材を貫通し、前記換気孔付き基礎パッキンの換気孔に挿入されるピンを備える、
請求項
6に記載の建物浸水防止装置。
【請求項8】
建物の基礎と土台の間の隙間又は前記隙間と屋外を繋ぐ通気路に配置された、複数の換気孔が形成された隔壁部材に取り付けられる建物浸水防止装置であって、
前記隔壁部材の前記複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞ぐための防水部材と、
前記防水部材が前記隔壁部材の前記屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞いだ状態で、前記防水部材を前記隔壁部材に固定する固定用部材と、
を備え、
前記通気路を形成する土台水切りの内壁面と、前記隔壁部材の前記屋外側の面とが対向し、
前記固定用部材は、
前記防水部材を貫通し、前記隔壁部材に挿入されるボルトと、
前記ボルトの
うちの、前記防水部材よりも屋外側に取り付けられるナットと、
を備え、
前記ボルトの頭部が、前記土台水切りの前記内壁面に突き当たる、
建物浸水防止装置。
【請求項9】
建物の基礎と土台の間の隙間又は前記隙間と屋外を繋ぐ通気路に配置された、複数の換気孔が形成された隔壁部材に取り付けられる建物浸水防止装置であって、
前記隔壁部材の前記複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞ぐための防水部材と、
前記防水部材が前記隔壁部材の前記屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞いだ状態で、前記防水部材を前記隔壁部材に固定する固定用部材と、
を備え、
前記通気路を形成する土台水切りの
前記土台から最も離れた壁部の内壁面と、前記隔壁部材の前記屋外側の面とが対向し、
前記固定用部材は、弾性部材で形成され、弾性変形した状態で前記土台水切りの前記内壁面と前記防水部材の間に配置される、
建物浸水防止装置。
【請求項10】
請求項1ないし
9の何れかに記載の建物浸水防止装置を備える建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物浸水防止装置及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
防鼠型換気孔付き土台水切り、換気孔付き防鼠部材等を設置した建物の土台水切り周辺部分からの浸水被害防止対策が普及していない。
従来から、基礎パッキン方式を採用した建物の浸水被害防止対策は、建物周囲に土のうを積んだり、止水パネル(特許文献1)を設置したりする他、水で浮く部材を備えた特殊な土台水切り(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-096114号公報
【文献】特許6534605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、止水パネルを設置しても、水がパネルの高さを超えた場合、建物への浸水を防ぐことができない。
また、水によって浮く部材で防鼠型換気孔を閉鎖する土台水切りでは、既存建物での土台水切りの取り換え工事に相応の導入費用が必要となる。
【0005】
従って、昨今頻発している建物の浸水被害を懸念して、基礎パッキン方式の建物の浸水防止対策を導入しようと考えても、導入費用、導入工事等を要することに躊躇して、土台水切り換気孔、防鼠部材等からの浸水防止対策が進んでいないものと思料する。
【0006】
建物への浸水は、建物の土台・基礎周辺の換気孔からが最も多いとされる。
このことを裏付ける文献として、東京大学工学部の教科書でもある「建築水理学(桑村仁著、技報堂出版株式会社発行)」がある。
この文献には、「浸水口のうち、地面に近いものほど、また開口面積の大きいものほど、屋内浸水を誘引する(208頁)。」、「1階の床面積34.8平方メートルで、法令規定の床下換気孔を有す木造建物の床下換気孔からの浸水を計算すると、わずか1分余りで屋内が限界水位(床から1.0メートル)に達する。浸水経路の抵抗等でもう少し時間的余裕があるかもしれない(213頁)。」旨、一階床部付近の浸水口、即ち、土台水切り換気孔等からの浸水防止対策の重要性が問題提起されている。
【0007】
しかし、現状では、既存建物の防鼠型換気孔付き土台水切り、防鼠部材等へ用いる浸水防止装置は公開されていないため、効果的な対策が進んでいない。
また、昨今の建物浸水被害の状況をみれば、基礎パッキン方式を採用した建物への浸水防止装置を広範に普及する必要性があることから、機能面以上に費用対効果を優先して追求し、取替工事を伴わず、かつ、従来のものにない相当安価な建物浸水防止装置の開発が必要であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、既存建物であっても換気孔からの浸水防止対策を容易に実現することが可能な建物浸水防止装置及び建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の建物浸水防止装置は、建物の基礎と土台の間の隙間又は前記隙間と屋外を繋ぐ通気路に配置された、複数の換気孔が形成された隔壁部材に取り付けられる建物浸水防止装置であって、前記隔壁部材の前記複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞ぐための防水部材と、前記防水部材が前記隔壁部材の前記屋外側の面に当接して前記複数の換気孔を塞いだ状態で、前記防水部材を前記隔壁部材に固定する固定用部材と、を備える。
【0010】
上記態様において、前記隔壁部材は、前記通気路を形成する換気孔付き土台水切りの隔壁部分であってもよい。
【0011】
上記態様において、前記隔壁部材は、前記隙間の屋外側の開口に配置される換気孔付き防鼠部材であてもよい。
【0012】
上記態様において、前記固定用部材は、前記隔壁部材と前記防水部材とを貫通するボルトと、前記ボルトの前記防水部材よりも屋外側に取り付けられるナットと、を備えてもよい。
【0013】
上記態様において、前記ボルトは、前記複数の換気孔のうちの一部の換気孔に挿入されてもよい。
【0014】
上記態様において、前記ボルトの頭部は、軸回りの第1回転角において前記換気孔に挿入可能で、前記第1回転角と90度異なる第2回転角において前記換気孔に挿入不能な形状を有してもよい。
【0015】
上記態様において、前記複数の換気孔は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向に並び、前記ボルトが挿入される前記一部の換気孔は、他の換気孔より前記第1方向に長く、前記防水部材は、前記複数の換気孔を塞ぐ閉塞位置と、前記閉塞位置から前記第1方向に離れた、前記複数の換気孔を開放する開放位置との間を移動可能に構成されてもよい。
【0016】
上記態様において、前記隔壁部材は、前記隙間に配置される換気孔付き基礎パッキンであってもよい。
【0017】
上記態様において、前記固定用部材は、前記防水部材を貫通し、前記換気孔付き基礎パッキンの換気孔に挿入されるピンを備えてもよい。
【0018】
上記態様において、前記通気路を形成する土台水切りの内壁面と、前記隔壁部材の前記屋外側の面とが対向し、前記固定用部材は、前記防水部材を貫通し、前記隔壁部材に挿入されるボルトと、前記ボルトの前記防水部材よりも屋外側に取り付けられるナットと、を備え、前記ボルトの頭部が、前記土台水切りの前記内壁面に突き当たってもよい。
【0019】
上記態様において、前記通気路を形成する土台水切りの内壁面と、前記隔壁部材の前記屋外側の面とが対向し、前記固定用部材は、弾性部材で形成され、弾性変形した状態で前記土台水切りの前記内壁面と前記防水部材の間に配置されてもよい。
【0020】
また、本発明の他の態様の建物は、上記の建物浸水防止装置を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、既存建物であっても換気孔からの浸水防止対策を容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】態様1の実施例の上方から見た概略図である。
【
図4】態様1の実施例の固定用部材等の概略図である。
【
図5】態様4の実施例の下方から見た概略図である。
【
図6】態様5の実施例の土台水切り(内部)、防水部材の概略図である。
【
図7】態様2の実施例の断面概略図(7-1)、正面概略図(7-2)である。
【
図8】態様3の実施例1の断面概略図(5-1、5-2)である。
【
図9】態様3の断面概略図、実施例2(9-2)、実施例3(9-1)である。
【
図10】態様3の断面概略図、実施例1(10-1、10-2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記課題を解決して上記目的を達成するため、本発明に係る建物浸水防止装置は、土台水切りの防鼠型換気孔、防鼠部材の換気孔、基礎パッキンの換気機能部を塞ぐことができる形に成形した防水部材と、同部材を土台水切り、防鼠部材、基礎パッキンへ手動で簡便に固定するための固定用部材からなることを特徴とする。
【0024】
以上のとおり、本発明は、当業者(建築・防災・行政関係)から従来には提案されていない、土台水切り周辺の換気機能部分を防水部材により、手動で塞ぎ、建物内への浸水を防止する装置である。また、発明者がこれまで提案している同種の装置より、「原材料費、加工費、導入費等を相当安価に抑えること」を実現した建物浸水防止装置を提供するものである。
【0025】
本発明の概要を説明する。
本建物浸水防止装置は、換気機能部分を塞ぐための防水部材が平板を基本とした単純構造であるため、廃棄物となる端材樹脂等を原材料として作成することができる。
また、防水部材は、ねじ式等の固定用部材で、既存建物の土台水切り、防鼠部材、基礎パッキンへ簡便に設置できるものとした。
このように防水部材と固定用部材のみから構成する装置であるため、原材料費、加工費、導入費等を相当安価に抑えることができる装置である。
【0026】
さらに、防水部材は土台水切り、防鼠部材、基礎パッキンへ固定したままでも日常生活や景観等の支障にならないため、台風シーズンや、大雨洪水予報等により、自治会、自治体等が協力して、早めに防水部材を固定し、洪水等に備えた防災対策を行うことができる。
なお、浸水対策を早めに講じることで躊躇なく非難行動ができることにつながるものと思料する。
また、本発明では、防水部材と固定用部材が土台水切りの内側に配置されるため、紫外線などの曝露による劣化や、外部からの衝撃による破損などを抑制できるというメリットもある。
【0027】
以下、本発明の態様を列挙する。
(態様1)
防鼠型換気孔付き土台水切りを設置する建物に用いる建物浸水防止装置であって、
前記換気孔を塞ぎ同換気孔からの浸水を防止する形に成形した防水部材と、
同防水部材を前記換気孔を塞ぐ状態で前記土台水切りへ固定する固定用部材と、
からなる建物浸水防止装置。
(態様2)
換気孔付き防鼠部材を設置した建物の浸水防止装置であって、
前記防鼠部材の換気孔を塞ぎ同換気孔からの浸水を防止する形に成形した防水部材と、
同防水部材を前記換気孔を塞ぐ状態で前記防鼠部材へ固定する固定用部材と、
からなる建物浸水防止装置。
(態様3)
防鼠型換気機能部を備えた基礎パッキンを設置した建物の浸水防止装置であって、
前記防鼠型換気機能部を塞ぎ同換気機能部からの浸水を防止する形に成形した防水部材と、
同防水部材を前記換気機能部を塞ぐ状態で前記基礎パッキンへ固定する固定用部材と、
からなる建物浸水防止装置
(態様4)
態様1または2に記載の建物浸水防止装置であって、
前記固定用部材が固定用ネジであることを特徴とする建物浸水防止装置。
(態様5)
態様1に記載の建物浸水防止装置であって、
前記防水部材が前記換気孔を塞がない状態で前記換気孔付き土台水切りに固定する機能を前記換気孔付き土台水切りに備えてあることを特徴とする建物浸水防止装置。
(態様6)
態様1ないし5の何れか1項に記載の建物浸水防止装置であって、
前記防水部材の主原材料が端材の樹脂を接合したものであることを特徴とする建物浸水防止装置。
(態様7)
態様1ないし6の何れか1項に記載の建物浸水防止装置を適用した建物。
(態様8)
態様1ないし6の何れか1項に記載の建物浸水防止装置を適用した建物浸水防止方法。
【0028】
態様1ないし5に記載の発明は、防水部材、固定用部材ともに、耐水性、耐久性を有する、金属製、樹脂製等からなる成形品である。
なお、態様6の発明は、従来であれば、廃棄処分されていた「端材の樹脂」を主の原材料として、接着、溶接、接合して防水部材を製造するものである。
【0029】
防水部材は、隔壁部材の複数の換気孔が開口した屋外側の面に当接して複数の換気孔を塞ぐための部材である。
防水部材の形状のサイズ(幅、長さ、厚さ)について説明する。
幅とは、防水部材を土台水切りに固定した際に、屋内側から屋外側の方向に該当する距離をいう。また、防鼠部材、基礎パッキンへ固定した際は、上下方向の距離をいう。
この幅については、換気孔、換気機能部を隙間なく塞ぐことが可能な幅(距離)を有するものとする。
長さは、製造、輸送等の取扱上、例えば、土台水切りと同程度の2メートル程度として良いが、長さに限定はない。
なお、予め、導入する建物の土台水切り等(出隅、入隅の位置、玄関等で水切りを設置していない部分等)に合わせ、切断加工し、土台水切り等へ固定できる長さにしておく必要がある。
全体の長さは、建物の周囲に設置した土台水切り等の総延長距離にほぼ等しくなる。
厚さは、材質にもよるが、1ミリメートル未満から、数ミリメートル程度までとするが、厚さに限定はない。
【0030】
固定用部材は、防水部材が隔壁部材の屋外側の面に当接して複数の換気孔を塞いだ状態で、防水部材を隔壁部材に固定するための部材である。
固定用部材は、ねじ止め式部材、ネジ、反発型固定用部材等とするため、何れも原材料費等を大幅に削減することができる。
【0031】
土台水切りは、態様1については、既存の防鼠型換気孔付き土台水切りとし、態様5については、同水切りの一部の換気孔の幅を長く開孔したものとする。換気孔付き土台水切りの換気孔が形成された隔壁部分は、隔壁部材の一例である。
また、態様2、3については、防鼠型換気孔が付いていない、いわゆる一般的土台水切りである。
【0032】
態様1の発明は、防鼠型換気孔付きの土台水切りを設置する建物において、浸水被害発生予測時等に、同換気孔を塞ぐ形に成形した「防水部材」を「固定用部材」で土台水切りの所定位置へほぼ水平状態で固定し、換気孔を塞ぎ同部分からの建物内への洪水等の浸水を防止する建物浸水防止装置を提供する。
【0033】
態様1の防水部材の特徴は、土台水切りへ固定するための固定用部材を貫通させる開口部分を設けている。
この開口部分は、土台水切りの換気孔の配置が土台水切りによって異なっていても対応できるようにするためのものである。
開口部分の形状は問わない。
例えば、円形とした場合、直径は、換気孔と隣接換気孔の間の部分の長さに、固定用部材のT字状部分を備えたボルトの太さを足し、同ボルトの位置を決めるための余裕部分(2ミリメートル程度)を加えたものとする。このように製品化することで、換気孔の幅、間隔が異なる各種の土台水切りへ対応することが可能となる。
仮に、対象とする土台水切りの換気孔と隣接換気孔の間の部分を2ミリメートルと想定し、固定用部材のボルトの太さが2ミリメートルとすれば、2ミリメートルと2ミリメートルと余裕部分2ミリメートルの合計で直径6ミリメートルとなる。
この開口部分を貫通した固定用部材のボルトが、さらに換気孔を貫通した状態で土台水切りへ防水部材をほぼ水平状態で固定することになる。
なお、この開口部分は、特定の土台水切りの仕様に合わせた防水部材であれば、固定用部材が貫通する大きさよりやや大きい開口部でよく、上記ほどの開口部分は必ずしも必要でない。
【0034】
態様2の発明は、基礎パッキン方式を採用し、土台水切りに防鼠型換気孔を備えていない建物で、土台に防鼠部材を設置している建物の浸水防止装置である。防鼠部材は、隔壁部材の一例である。
態様1と同様に、防鼠部材の換気孔を防水部材で塞ぐため、防水部材を固定用部材により防鼠部材へ固定するものである。
各部材の材質、サイズ、防水部材の防鼠部材への固定方法等は、態様1と同様である。ただし、防水部材を固定した状態は、同部材が垂直に近い状態となる。
【0035】
態様3の発明は基礎パッキン方式を採用し、同基礎パッキンに防鼠型換気機能部を備えているため(すなわち、換気孔付き基礎パッキン)、土台水切りに防鼠型換気孔を備えていない建物へ用いる建物浸水防止装置である。換気孔付き基礎パッキンは、隔壁部材の一例である。
防水部材は、基礎パッキンの換気機能部へピン型固定用部材等で固定する。
防水部材を固定した状態は、同部材が垂直に近い状態となる。
【0036】
態様4の発明は、防水部材を固定用ネジ(ビス、ボルト)で防鼠型換気孔付き土台水切り、又は防鼠部材へ直付けで固定するものである。
固定用ネジをビスとした場合、ネジ用下穴を必ずしも設けておく必要はない。
換気孔をネジ(ビス、ボルト)受け穴としても良いし、土台水切り、又は防鼠部材へネジ受け用の下穴を設けてビス、ボルトのネジで固定しても良い。
【0037】
態様5の発明は、平時でも、防水部材を防鼠型換気孔付き土台水切りへ固定したままにしておけることを特徴とする。
平時でも、換気孔を塞がない状態で、土台水切りへ固定したままにしておくため、土台水切りの一部の換気孔の幅を長く開孔して、同開孔部分で防水部材の固定用部材が収まることで、防水部材で換気孔を塞ぐことなく、換気状態を実現し固定したままにしておくことができる。
【0038】
次に、固定用部材について説明する。
態様1、2、5の固定用部材の特徴は共通する。
何れも、ねじ溝が刻んである端と反対の端にT字状部分を備えたボルトと、ワッシャー状の部品と、防水部材を土台水切り、又は防鼠部材へ押圧して固定するためのナットからなる。
各部品の材質は、耐水性、耐久性を有する金属製等が良いが、材質は問わない。
【0039】
ボルトは、換気孔を貫通する必要があるため、太さは、換気孔を貫通可能なものであれば限定はないが、断面の直径は、2ミリメートル程度で良い。
長さは、T字状部分を除いて、10ミリメートル程度以上あれば良い。
なお、防鼠部材用は、土台水切り内部に収まる長さである必要がある。
【0040】
ワッシャー状の部品は、防水部材の開口部分の直径よりも大きく、防水部材の外側に密着して開口部分からの浸水を防止する形状のものとする。
仮に、防水部材の開口部分の直径が、6ミリメートルであれば、4ミリメートル程度大きい10ミリメートル程度とすれば、防水部材の開口部分からの浸水を防止することができる。
このワッシャー状の部品は、ナットと一体とした形状、又はナットが兼ねてもよい。
【0041】
ナットは、ワッシャー状の部品の機能を備えたものとした場合、防水部材の開口部分を塞ぐことが可能な大きさのものとする。そうでない場合は、ボルトに合えばよい。
このナットで防水部材を土台水切り、又は防鼠部材へ押圧して固定する。
なお、押圧して固定する方法は、ねじ式以外の方法でも良く、例えば、ボルトの外周をナット状の部品で挟むようにして固定する既存部品等を使ったものでもよい。
【0042】
態様3の固定用部材は、ピン型、反発型、嵌め込み型等とする。
ピン型は、防水部材の開口部を貫通して、基礎パッキンの換気機能部の横穴部分へ差し込んで、ピンの頭部分で防水部材を基礎パッキンへ押圧して固定する。
さらに、ピンの中程にナットを入れ、同ナットで土台水切り側のピン長さを調整し、ピンの頭を土台水切りの垂直内壁に当て、ナットで防水部材を基礎パッキン側へ押圧して固定する方法もある。
反発型は、樹脂製等の復元反発作用を有する部材で、土台水切り内側と防水部材の間に入れて、防水部材を基礎パッキンに押圧して固定する。
嵌め込み型は、ゴム材質等の変形性を利用した部材で、土台水切り内側と防水部材の間に嵌め込んで、防水部材を基礎パッキンに押圧して固定する。
【0043】
態様4の固定用部材は、固定用ネジで、防水部材を土台水切り、又は防鼠部材へ直付けするものである。
固定用ネジは、ビス、ボルトの何れでも良い。
ビスの場合は、換気孔をネジ受け穴として、同孔へねじ込んでも良いし、換気孔以外の部分へねじ込んでも良い。
ボルトの場合は、換気孔の短辺の長さ、または土台水切り、防鼠部材へ設けた下穴のサイズに合うものとする。
なお、何れも、平ワッシャー(平座金)を用いても良い。
【0044】
態様5の固定用部材は、態様1と同じもので、片方の先端部分がT字状で、片方にねじ溝が刻んであるボルトである。
この固定用部材で、防水部材を防鼠型換気孔付き土台水切りに固定して、洪水予報等の際は、換気孔を塞ぎ、平時は、換気孔の幅を長くした開孔部分に固定用部材を移動させ、防水部材で換気孔を塞がない状態で土台水切りへ固定しておく。
【0045】
土台水切りについて説明する。
態様1のものは、防鼠型換気孔付き土台水切りである。
態様2、3のものは、防鼠型換気孔を備えていない一般型の土台水切りである。
態様5の土台水切りは、防鼠型換気孔付き土台水切りの固定用部材が貫通する換気孔の幅を数ミリメートル屋内外方向に長く開孔したものとする。
この長く開孔した部分で固定用部材を貫通したまま、防水部材を土台水切りへ固定することにより、平時に換気孔を塞ぐことなく固定したままにしておくことができる。
【0046】
態様6の発明は、態様1ないし5の何れか1項に記載の発明の防水部材について、従来から廃棄されてきた「製品加工で生じた端材の樹脂」を接着、溶接等で接合して、平板を作り、それを原材料とする。
また、接合の際は、不燃樹脂等を片面、又は両面に接合してもよく、端材樹脂を主原料とするものである。
以上が建物浸水防止装置(態様1ないし6)に関する説明である。
【0047】
次に、態様7の発明は、上記の建物浸水防止装置を適用した建物を提供する。
本装置を効果的なものとするには、氾濫流や漂流物によって建物浸水防止装置の損壊、流失を防ぐことが重要である。
そのため、建物への氾濫流等の直撃を防ぐため、建物敷地、特に建物に近接する部分の水流を防ぐよう、ブロック塀等を設け、門扉も水流を通し難いものとするのがよい。
【0048】
また、従来の建物では、防鼠型換気孔付き土台水切りを、化粧モルタル等で基礎と強固に接合しているものもあるが、そうでないものが多数ある。
このように強固に接合されていない土台水切りは、基礎との接合部分をL字アングル等を使用して補強するなどして、接合を強固にし、水密性を高め、同部分からの浸水防止対策を図っておく必要がある。
【0049】
態様8の発明は、建物浸水防止装置を使った建物浸水防止方法である。
日頃の防水部材等の保管は、建物の外に収納ロッカー等を設け、固定用の工具、粘着テープ等とともに保管し、保管している旨を外部表示しておけば、家人不在等であっても、近隣住民等の協力で防水部材を固定することができる。
【0050】
また、本発明は、防災対策の一つとして、実施できる建物浸水防止方法である。本発明を広範に普及するため、行政が主導して、導入計画、導入実施等を進め、補助金・助成金制度の導入や、装置を導入した場合の建物損害保険の加入上の優遇措置等を導入することなどが普及促進、ひいては防災対策に効果的である。
【0051】
本発明は、土台水切り換気孔、防鼠部材換気孔、基礎パッキン換気機能部からの浸水を防止する装置であるが、従来の提案より、装置の形状、固定方法を見直し、原材料費、加工費等の大幅な削減を可能とすることを見出し完成させた。
【0052】
態様1ないし6の発明は、土台水切りの換気孔等の換気機能部分からの建物内への浸水防止を図り、相当に安価で導入できる建物浸水防止装置である。
態様7の発明は、建物浸水被害に強い建物の実現を図ることができる。
態様8の発明は、地域、行政、団体、企業等が協力して、浸水防止対策を広範に普及促進して防災対策を推進することができる。
【0053】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態、本発明の技術的範囲については、以下の実施形態及び図示に限定されるものではない。なお、図示では各部材等が分かりやすいように隙間表示している部分も、実際は、水密性確保等で各部材等は接している。
【0054】
まず、態様1に記載の発明の実施例について説明する。
【0055】
図1のとおり、いわゆる基礎パッキン方式を採用した建物では、基礎1aと土台1bの間に換気層(隙間)3aがあり、基礎パッキン8aが設置されている。土台1bには土台水切り2が設けられており、土台水切り2によって、換気層3aと屋外を繋ぐ通気路が形成されている。換気層3aの空気の流れは、土台水切り2の防鼠型換気孔2aから吸排する。
なお、外壁1d内側に通気層3bを設けている建物では、換気孔2aが通風孔を兼ねている場合(
図1)と兼ねていないものがある。
この土台水切り2、換気孔2aは、通常、玄関廻り等以外の建物全周に備わっている。この換気孔2aから、洪水等が建物内へ浸水することになる。
【0056】
以下、
図1ないし4で説明する。
換気孔2aは、常時、換気(通気)するためのものであり、閉じたままにしておけない。
そこで、浸水被害予測時等に、換気孔2aの外側に防水部材4を固定して、換気孔2aを塞ぎ、同部からの浸水を防ぐのが本発明の基本である。
防水部材4を土台水切り2へ固定状態とするのは、浸水被害予測時の他、寒期の乾燥時期等である。寒期の乾燥時期にしばらくの間、換気孔2aを閉じても床下の乾燥状態は維持でき、寒気流入を防ぐことで暖房効果が期待できる。
図1、2、3、4のように、防水部材4は、固定用部材5により、防鼠型換気孔付き土台水切り2へ手動で固定する。
【0057】
防鼠型換気孔付き土台水切り2は、既存品であっても、本発明用に限定した強度、水密性の向上等を図ったものであっても良い。また、上述のとおり、換気孔2aは、床下換気用のみでも良いし、外壁1d内側3bの通気用を兼ねたものでも良い。
この実施例により、浸水被害予測時等に前もって、防水部材4を固定しておくことで浸水被害の予防、軽減を図ることができる。
【0058】
次に、防水部材4、固定用部材5について説明する。
最初に、防水部材4の詳細を説明する。
材質は、耐水性、耐久性を有するものであれば、金属、樹脂等の材質を限定しない。
【0059】
加工性、コスト面からすれば、樹脂製が優位である。
また、浸水時に金属製よりは沈みにくいため、固定状態が優位である。
【0060】
樹脂製で、厚さが1ミリメートル未満等で、巻いて保管できるものであれば、数メートルの長尺ものとすることができ、保管場所、保管方法上、優位であるし、分割しないことで継ぎ部分が少ない分、水密性が一層高くなる。
例えば、建物を上部から見て、基礎が四角形の建物の場合で、巻いて保管可能な長尺ものを使用するとして、4つの角(出隅)に合わせた長さのもの(ただし、玄関廻り等の土台水切りを設置していない部分を除いた長さ)を4本準備しておけば、途中で連結等して継ぐ部分がなく、水密性が良いものとなる。
【0061】
幅は、換気孔2aを塞ぎ、同部から浸水しない幅とする。土台水切りは、大半が量産品であるため、各量産品の土台水切り、換気孔の規格サイズに合わせ、換気孔の幅(一般的には、長辺)より数ミリメートル程度、幅を広くし、かつ、土台水切りへ支障なく固定することができる幅でよい。
幅を12、15、17、20ミリメートル程度のものを量産すれば、ほとんどの既存水切りへ対応可能と思料する。
【0062】
長さは、土台水切りと同様の2メートル程度とすれば、製造、輸送上等、取り扱いやすくて良いが、長さに制限はない。また、各建物に導入した場合は、出隅、入隅等に直近のものは、当該建物に合った長さに予め加工しておく必要がある。
【0063】
厚さについて、制限はない。1ミリメートル未満のものでも良いし、数ミリメートル以上のものでも良い。強度、耐候性を備える厚さがあれば良く、過度に厚くする必要はない。
【0064】
換気孔の幅、換気孔の間のサイズが異なる多種の土台水切りへ固定できるよう、固定用部材5が貫通するための開口部分4aを設けておくのがよい。
なお、特定の土台水切り用に製造する場合の開口部分4は、固定用部材5が貫通可能な大きさでもよい。
開口部分4aの位置は、防水部材4の幅の中程とする。
同部分は、円形とすれば加工しやすいが、形状は問わない。
円形とした場合の直径は、固定用部材5のT字状部分を備えたボルト5aが換気孔2aを貫通した状態で土台水切り2へ固定するための、ボルト5aの太さ、換気孔2aと隣接換気孔2aの間の部分、ボルト5aが換気孔2aを貫通する際の余裕部分(2ミリメートル程度)を足した分の直径とする。
仮に、ボルト5aが2ミリメートル、換気孔2aの間の部分が2ミリメートルとすれば、直径6ミリメートルの開口部分4aを設けておくのが、土台水切りを特定しない場合であっても、ボルト5aが貫通しやすくて良い。
【0065】
また、防水部材4の固定時に上部となる面(換気孔2aと接する面)に、パッキン部材、又は吸水シート等を接着しておけば、水密性が一層高まり、浸水防止効果はさらに高いものとなって良い。
なお、防水部材4には、建物へ固定する際の位置等を予め明示して、固定のための準備をしておくのが良い。
【0066】
次に、
図4等で、態様1の固定用部材5を説明する。
固定用部材5は、ボルト5a、ワッシャー状の部品5b、ナット5cで構成する。
材質は、耐水性、耐久性を備えたものであれば金属、樹脂等限定しない。
なお、防水部材4の開口部分4aを塞ぐ、ワッシャー状の部品5bは、ナットが兼ねても良いし、単独のワッシャー状の部品を用いても良い。
【0067】
ボルト5aは、設置時に上方となる部分が、T字状である。この部分を固定時に換気孔2aの下方から上方へ貫通させ、約90度回転することで、換気孔2aと隣接換気孔2aの間の部分にT字状部分の両端をひっかけて、抜けないようにして、防水部材4を土台水切り2へ固定するためのものである。
したがって、ボルト5aのT字状部分は、換気孔2aを貫通することができるよう、換気孔2aの長辺より短いサイズとする。
すなわち、ボルト5aのT字状の頭部は、軸回りの第1回転角において換気孔2aに挿入可能で、第1回転角と90度異なる第2回転角(
図3に示す状態)において換気孔2aに挿入不能である。
【0068】
ボルト5aの、長さ(設置時、垂直方向)は、土台水切り2の厚さ、防水部材4の厚さ、ワッシャー状の部品5bの厚さ、ナット5cの厚さを足したものへ、1センチメートル程度以上の余裕部分を加えたものでよい。
長さ合計は、例えば、T字状部分を除いて、土台水切り2の厚さが1ミリメートル、防水部材4の厚さが2ミリメートル、ナット5c(ワッシャー状部品5bを兼ねたもの)の厚さが3ミリメートル、余裕部分10ミリメートルを、合計して16ミリメートル程度の長さとなる。
【0069】
ボルト5aの太さは、換気孔2aの短辺を貫通可能なものであればよい。
換気孔2aの短辺を5ミリメートル程度とすれば、2ミリメートル前後でよい。
【0070】
ナット5c(ワッシャー状の部品5bを兼ねた)の外側の径(六角ナットの場合は経の短辺)は、防水部材4の開口部分4aを塞ぐものである必要がある。
例えば、開口部分4aの直径が、6ミリメートルであれば、一回り大きくなるよう10ミリメートルとする。こうすれば、ボルト5aが換気孔2aのどの位置へ収まっても、開口部分4aの全体を塞ぐことができ同部分からの浸水を防ぐことができる。
【0071】
ナット5cの形状に限定はないが、手動で締め外しするには、蝶ナットが良いし、電動工具で締め外しする場合には六角ナットでよい。
【0072】
なお、防水部材4を、固定用部材5で固定する方法は、説明しているねじ止め式以外の従来から提案されている締め付け型等の固定技術を用いても良い。
【0073】
防水部材4を土台水切り2へ固定する部分の間隔は、防水部材4の材質、厚さ、硬度等によるが、概ね50センチメートルから概ね1メートルの間隔で固定すれば、防水部材4による換気孔2aの水密性が確保できる。
なお、固定する間隔は、狭い方が土台水切り2への押圧度が当然高まって、水密性が向上するため、浸水しないよう余裕をもって間隔を狭くする方が良い。
以上が、態様1の発明の実施例である。
【0074】
次に、態様2を
図7で説明する。
図7-1は、防鼠部材9の外側に防水部材4を固定用部材5で固定した状況の概略図である。
図7-2は、土台水切り8の記載を省略し、
図7-1の状態を正面(建物外側)から見た状態を示した概略図である。
態様2は、防鼠型換気孔が付いてない土台水切り8を備え、土台1bへ防鼠部材9を固定し、防鼠部材換気孔9aからの建物への浸水を防止するものである。防鼠部材9は、基礎1aと土台1bの隙間の屋外側の開口を塞ぐように配置される
防水部材4を防鼠部材9へ固定用部材5で固定する方法等は、態様1と同様である。
防水部材4を防鼠部材9へ固定した際に、防水部材4が垂直に近い状態となる点で、態様1では水平に近い状態と大きく違う。
【0075】
次に、態様3を
図8ないし
図10で説明する。
近年、防鼠型換気機能部を備えた基礎パッキン10を設置した建物が普及している。
この建物の場合、防鼠型換気孔付き土台水切り2、及び土台1bに防鼠部材9を備えてなく、このような建物へ用いる浸水防止装置である。
上記の基礎パッキン10には、換気機能部10a(縦16ミリメートル程度、横数ミリメートル)の横方向の換気部分が設けられている。
【0076】
図8-1、8-2、10-1、10-2で示した、実施例1は、この換気機能部10aへ、防水部材4を貫通した状態のピン型固定用部材10bを差し込んで、防水部材4で換気機能部10aを塞ぎ、同部からの浸水を防止するものである。
防水部材4は、態様1と同じである。ただし、固定時に下端が基礎1a上部に乗るため、
図8-1のように、下端を数ミリメートルL字状として固定度を高めてもよい。
ピン型固定用部材10bは、換気機能部10aのサイズに合ったものとして、基礎パッキン10への固定度を確保する。材質は、金属製、樹脂製等でよい。樹脂製の場合、換気機能部10aへ差し込んで、換気機能部10a中で膨張する機能を有したものなどが固定度が高まってさらに良い。
さらに、
図8-1、10-2のように、ピン型固定用部材10b(ボルト)の中程にねじ溝を設け、同溝へ入れたナット10cを防水部材4の外側に接する状態にして、土台水切り8の内側(垂直内壁)にピン型固定用部材10bの頭部分を押し当て、ナット10cを回してピンの位置を調整することで、防水部材4を基礎パッキン10へ押圧するのが、防水部材4の固定度(水密性)が高まって良い。
【0077】
実施例2は、
図9-1のように、土台水切り8の内側(内壁)を利用して、樹脂製材質等の復元作用の反発を利用した反発型固定用部材10dを土台水切り8の内側と防水部材4の間に入れ、防水部材4を基礎パッキン10に押圧して固定して、浸水を防止するものである。
反発型固定用部材10bのサイズは、防水部材4を基礎パッキン10に押圧して、固定できるサイズとする。
【0078】
実施例3は、
図9-1のように、土台水切り8の内側(内壁)を利用して、ゴム材質等の変形性を利用した嵌め込み型固定用部材10eを、土台水切り8の内側(内壁)と防水部材4の間に嵌め込んで、防水部材4を基礎パッキン10に押圧して固定し、浸水を防止するものである。
嵌め込み型固定用部材10eのサイズは、防水部材4を基礎パッキン10に押圧して、固定できるサイズとする。
【0079】
すなわち、実施例2及び3において、固定用部材10d,10eは、弾性材料で形成され、弾性変形した状態で土台水切り8の内壁面と防水部材4の間に配置される。これに限らず、固定用部材10d,10eは、例えばバネ等の弾性部材であってもよい。
【0080】
実施例1ないし3とも、固定用部材10b等で防水部材4を固定する間隔に制限はないが、防水部材4の材質、硬度等を考慮し、例えば、50センチメートル、1メートル間隔として良い。
【0081】
次に、態様4を、
図5で説明する。
態様4の特徴は、固定用部材を、固定用ネジ6とし、これで防水部材4を土台水切り2(態様1)、又は、防鼠部材9(態様2)へ直付けすることにある。
その他は、態様1、2に同じである。
【0082】
固定用ネジ6は、ビス状、またはボルト状の何れでもよい。材質は、金属製、樹脂製でよい。
サイズについて、長さは、防水部材4の厚さ、土台水切り2、又は防鼠部材9の厚さに余裕部分を加えたものとし、太さは、換気孔2、又は防鼠部材換気孔9aをねじ受け穴とする場合は、各換気孔の短辺に合う太さで良い。
【0083】
ねじ受け穴は、土台水切り2、又は防鼠部材9の各換気孔以外の部分に下穴を設けても良い。
【0084】
水密性を図るため、平ワッシャー(平座金)を使用するのが良い。
固定用ネジ6で防水部材4を土台水切り2、又は防鼠部材9へ固定する部分の間隔は、態様1と同様、防水部材4の材質、厚さ、硬度等によるが、概ね50センチメートルから概ね1メートルの間隔で水密性が確保できる間隔とする。
以上が態様4の説明である。
【0085】
次に、態様5を、
図6で説明する。
図6は、固定用部材5を防水部材4へ取り付けた状態であるが、この実施例は、態様1と同様である。
態様1と違う点は、土台水切りの換気孔の一部(固定用部材5で防水部材4を固定する位置の換気孔)の幅を屋内側へ数ミリメートル長く開孔したものである。すなわち、ボルト5aが挿入される一部の換気孔7bの延伸方向(第1方向)の長さを、他の換気孔7aよりも長くしている。
なお、この開孔部の長さは、本装置を導入する土台水切りの防水部材4が収まる幅によって決定する。必要以上に幅を長くすると、防水部材4を屋外側へ移動させた際に隙間となり水密性が確保されない。
態様1と同様に、固定用部材5を防水部材4の開口部分4aを貫通した状態でナット5cを入れた状態として、T字状部分を開孔部付き換気孔7bを貫通し、固定用部材5を90度回転して平時固定対応土台水切り7へ固定して、換気孔を塞ぐ状態とする。この状態で換気孔7a、開孔部付き換気孔7bからの浸水を防止する。防水部材4が換気孔7a,7bを塞ぐ位置を「閉塞位置」という。
平時には、防水部材4を開孔部付き換気孔7bで水平に屋内側へ移動させ、屋内側終点まで固定用部材5を移動することで、防水部材4で換気孔7a、開孔部付き換気孔7bの換気孔7a相当幅を塞ぐことなく、同部分からの換気が確保出来る状態で固定しておくことができる。防水部材4が換気孔7a,7bを開放する位置を「開放位置」という。
【0086】
固定する間隔は、態様1等と同様、防水部材4の材質、厚さ、硬度等によるが、概ね50センチメートルから概ね1メートルの間隔で水密性が確保できるよう固定間隔を決める。
【0087】
態様6を説明する。
これは、態様1ないし5の何れか1項に記載の建物浸水防止装置の防水部材を端材の樹脂を主原料として製造したものである。
プラスチック樹脂を製品加工した後の端材を活用すれば、原材料費等の削減、廃棄物の有効活用で環境保護上等大いに有効である。例えば、幅が、1センチメートル程度の樹脂端材であっても接合又は接着すれば数センチメートルの幅を有し、また、長さが、数十センチメートルの端材であっても接合等すれば数メートルの長さのものとなり、防水部材4の素材(原材料)とすることができる。
【0088】
また、端材を接合等する場合、難燃性樹脂を片面又は両面に接合等することで防火対策上有効なものとなる。
なお、防水部材4は、土台水切りへ固定時に周囲からほぼ見えないため、素材の色が揃ってなくても良く、また、分割した防水部材4の場合でも、固定方法からして隣接する各防水部材4の厚さを同一にする必要がないため、多種多様な端材を廃棄処分せずに素材として利用することが可能である。
【0089】
態様7の発明は、態様1ないし6の何れか1項の建物浸水防止装置を適用した建物を提供する。
建物浸水被害を防止するには、氾濫流や漂流物によって建物浸水防止装置の損壊、流失を防ぐことが重要であり、建物敷地、特に建物に近接する部分の水流を防ぐよう、ブロック塀等を設け、門扉も水流を通し難いものとするのがよい。
【0090】
従来の建物では、土台水切りを、化粧モルタルで基礎と強固に接合しているものもあるが、そうでないものが多数あるため、接合部分をL字アングル等で補強するなどして、同部分の水密性を高めておく必要がある。
【0091】
態様8の発明は、建物浸水防止装置を使った建物浸水防止方法である。
日頃、防水部材等の保管は、建物外に収納ロッカー等を設け、固定用工具、粘着テープ等とともに保管して、保管の旨を外部表示しておけば、家人不在であっても、近隣住民等の協力で防水部材を浸水防止状態に固定することができる。
また、装置導入のための公的補助金制度、損害保険加入上の特典等を設けるなどで装置の導入普及につながり、ひいては浸水被害による防災、減災効果等が期待できる。
【0092】
本発明の建物浸水防止装置は、上述した実施形態に限定されず、各部材の材質、固定位置、固定方法等などは特許請求の範囲に記載の範囲で種々の変更ができる。
また、発明者のこれまでの提案と組み合わせることも可能である。
本発明の基本は、原材料費、加工費等を大幅に抑制して、建物浸水防止装置を普及することにある。
本発明は、特許請求の範囲において、洪水ハザードマップ等を参考にし、当該建物の立地条件、周囲の環境、建物自体の状態等を総合して、行政等が協力して建物浸水防止方策に活用するのがよい。
【符号の説明】
【0093】
1a 基礎
1b 土台
1c 柱
1d 外壁
1e 胴縁
2 防鼠型換気孔付き土台水切り
2a 換気孔
3a 換気層
3b 通気層
4 防水部材
4a 開口部分
5 固定用部材
5a T字状部分を備えたボルト
5b ワッシャー状の部品
5c ナット
6 固定用ネジ
7 平時固定対応土台水切り
7a 換気孔
7b 開孔部付き換気孔
8 防鼠型換気孔が付いてない土台水切り
8a 基礎パッキン
9 防鼠部材
9a 防鼠部材換気孔
10 防鼠型換気機能部を備えた基礎パッキン
10a 換気機能部
10b ピン型固定用部材
10c ナット
10d 反発型固定用部材
10e 嵌め込み型固定用部材