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特許7556672学習支援装置、学習支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】学習支援装置、学習支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/04 20060101AFI20240918BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20240918BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20240918BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G09B7/04
G06Q50/20 300
G09B5/02
G09B19/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019011226
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020118892
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518135412
【氏名又は名称】株式会社リクルート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 脩太郎
(72)【発明者】
【氏名】長永 健介
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】嵯峨根 多美
【審判官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142586(JP,A)
【文献】特開2018-17993(JP,A)
【文献】特開2014-59452(JP,A)
【文献】特開2016-110074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
G09B 17/00-19/26
G06Q 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置であって、
前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースと、
前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得する正誤情報取得部と、
前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から少なくとも解答が誤答であった1つ以上の問題を含む1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題にそれぞれ対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出する講義抽出部と、
前記講義抽出部により抽出された前記講義が複数ある場合に、抽出された複数の前記講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って優先順位付けをする優先順位決定部と、
を備える学習支援装置。
【請求項2】
前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち、解答が誤答であった1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を抽出する、請求項1に記載の学習支援装置。
【請求項3】
複数の学習者に関する前記正誤情報を集計して前記複数の問題の各々の正答率または誤答率を算出する集計処理部をさらに備え、
前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち前記正答率が所定値未満または前記誤答率が所定値以上である問題に対応づけられた講義を抽出する、
請求項1に記載の学習支援装置。
【請求項4】
複数の学習者に関する前記正誤情報を集計して前記複数の問題の各々の正答率または誤答率を算出する集計処理部をさらに備え、
前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち前記正答率が低い順または前記誤答率が高い順から所定数の問題に対応づけられた講義を抽出する、
請求項1に記載の学習支援装置。
【請求項5】
前記優先順位決定部によって前記講義に付けられた順位を含むレコメンド情報を生成して出力するレコメンド情報出力部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の学習支援装置。
【請求項6】
一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置が実行する学習支援方法であって、
前記学習支援装置は、前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースを備え、
前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得するステップ(a)と、
前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から少なくとも解答が誤答であった1つ以上の問題を含む1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題にそれぞれ対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出し、抽出した前記講義が複数ある場合に、抽出した複数の前記講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って優先順位付けをするステップ(b)と、
を含む学習支援方法。
【請求項7】
一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置に実行させるプログラムであって、
前記学習支援装置は、前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースを備え、
前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得するステップ(a)と、
前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から少なくとも解答が誤答であった1つ以上の問題を含む1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題にそれぞれ対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出し、抽出した前記講義が複数ある場合に、抽出した複数の前記講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って優先順位付けをするステップ(b)と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介して学習者に講義動画を配信する学習支援装置、学習支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等の通信ネットワークを介して、講義が録画された動画(以下、講義動画ともいう)を学習者に配信する学習支援システムの利用が拡大している。このような学習支援システムにおいては、学習者は自分の学習到達度に応じた講義動画を選択して視聴することで、効率良く、且つ効果的な学習を行うことができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザにより操作可能な端末と、ネットワークを介して端末と通信可能な学習管理サーバとを備える学習システムが開示されている。この学習システムが備える学習管理サーバは、複数の学習カテゴリのいずれかにそれぞれ対応させて、ユーザの学習水準に関する学習水準情報を生成するための複数の学習水準試験情報が予め記憶された学習水準試験情報記憶手段を有し、上記端末から送信された操作情報に応じて、複数の学習カテゴリからいずれかを選択し、選択された学習カテゴリに対応する指定学習水準試験情報を学習水準試験情報記憶手段に記憶された複数の学習水準試験情報から選択し、選択された指定学習水準試験情報を上記端末に送信すると共に、該指定学習水準試験情報に応じた試験解答情報を上記端末から受信し、受信した試験解答情報に基づいて、学習水準情報を生成し、この学習水準情報に基づいて、上記複数の学習情報のうちの指定学習情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-321768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、学習カリキュラムを構成する複数の単元には互いに関連性があるため、学習者の理解度を高め、学習内容を定着させるためには、それぞれの単元を学習するために作成された複数の講義動画を視聴する順序が重要となる。しかしながら、学習水準試験の結果に基づいて、視聴すべき講義動画を自動的に抽出しても、学習者にとっては、抽出された講義動画をどの順序で視聴すると良いのかを判断することが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、一連の学習カリキュラムに沿って作成された複数の講義動画の中から抽出された講義動画を、学習者が学習効果の高い順序で視聴することができる学習支援装置、学習支援方法、およびプログラムを提供することを目的の1つとする。本発明の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様である学習支援装置は、一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置であって、前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースと、前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得する正誤情報取得部と、前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出する講義抽出部と、前記講義抽出部により抽出された前記1つ以上の講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って順位付けをする優先順位決定部と、を備えるものである。
【0008】
上記学習支援装置において、前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち、解答が誤答であった1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を抽出しても良い。
【0009】
上記学習支援装置は、複数の学習者に関する前記正誤情報を集計して前記複数の問題の各々の正答率または誤答率を算出する集計処理部をさらに備え、前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち前記正答率が所定値未満または前記誤答率が所定値以上である問題に対応づけられた講義を抽出しても良い。
【0010】
上記学習支援装置は、複数の学習者に関する前記正誤情報を集計して前記複数の問題の各々の正答率または誤答率を算出する集計処理部をさらに備え、前記講義抽出部は、前記複数の問題のうち前記正答率が低い順または前記誤答率が高い順から所定数の問題に対応づけられた講義を抽出しても良い。
【0011】
上記学習支援装置は、前記講義抽出部によって前記1つ以上の講義に付けられた順位を含むレコメンド情報を生成して出力するレコメンド情報出力部をさらに備えても良い。
【0012】
本発明の別の態様である学習支援方法は、一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置が実行する学習支援方法であって、前記学習支援装置は、前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースを備え、前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得するステップ(a)と、前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出するステップ(b)と、前記ステップ(b)において抽出された前記1つ以上の講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って順位付けをするステップ(c)と、を含むものである。
【0013】
本発明のさらに別の態様であるプログラムは、一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された複数の講義動画を配信するシステムにおいて用いられる学習支援装置に実行させるプログラムであって、前記学習支援装置は、前記学習カリキュラムにおける学習者の学習到達度を測定するためのテストに含まれる複数の問題と前記複数の講義とをそれぞれ対応づけると共に、前記複数の講義の各々に対して予め設定された講義動画の視聴順を格納するデータベースを備え、前記複数の問題の各々に対する学習者の解答の正誤を表す正誤情報を取得するステップ(a)と、前記正誤情報に基づいて前記複数の問題の中から1つ以上の問題を抽出し、前記データベースを参照することにより、抽出された前記1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を前記複数の講義の中から抽出するステップ(b)と、前記ステップ(b)において抽出された前記1つ以上の講義に対し、前記データベースに格納された前記視聴順に従って順位付けをするステップ(c)と、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テストの結果に基づいて抽出された1つ以上の問題に対応する1つ以上の講義をデータベースを参照することによって抽出すると共に、抽出された講義に対し、学習者が視聴すべき優先順位を付けるので、学習者は、各講義に付けられた優先順位を参照することで、学習効果の高い順序で講義動画を視聴することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る学習支援装置が用いられる学習支援システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る学習支援装置の主要構成を示すブロック図である。
図3図2に示す学習カリキュラムデータベースに格納される情報を例示した表である。
図4】本発明の実施形態に係る学習支援装置の動作を示すフローチャートである。
図5】ある学習者について作成された到達度テストの結果を例示する表である。
図6】レコメンド情報を例示する表である。
図7】本発明の実施形態の変形例における到達度テストの集計結果を例示する表である。
図8】本発明の実施形態の別の変形例における到達度テストの集計結果を例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
実施の形態
以下においては、学校教育における教科学習への学習支援に本発明を適用する例を説明するが、本発明は、学校教育における教科学習以外にも、幼児教育、大学教育、社会人教育、社内研修、資格試験対策講座、カルチャーセンターにおける趣味講座等における様々な学習支援に適用することが可能である。
【0018】
(1)実施形態の構成
図1は、本実施形態に係る学習支援装置が用いられる学習支援システム1の概略構成を示す図である。学習支援システム1は、一連の学習カリキュラムに沿って構成された複数の講義がそれぞれ録画された動画(以下、講義動画という)を配信することによって学習を支援するシステムである。同図に示すように、学習支援システム1は、講義動画を配信する学習支援サーバ10と、各学習者が操作する端末であって、講義動画を受信して視聴する際に用いられる端末20a、20b、…とを含む。これらの学習支援サーバ10と各端末20a、20b、…とは、通信ネットワークNを介して接続される。
【0019】
通信ネットワークNは、学習支援サーバ10と各端末20a、20b、…との間で相互に情報を送受信可能な通信網を含む。通信ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN、専用線、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0020】
図2は、学習支援サーバ10の主要構成を示すブロック図である。学習支援サーバ10は、例えば、演算処理能力の高いコンピュータによって構成され、所定のプログラムを実行することにより、学習者の学習進捗状況を管理すると共に、学習進捗状況に応じた講義動画を各端末20a、20b、…に配信するサーバ機能を実現するものである。ここで、学習支援サーバ10を構成するコンピュータは、必ずしも1台である必要はなく、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。
【0021】
図2に示すように、学習支援サーバ10は、通信インタフェース110と、記憶部120と、プロセッサ130とを備える。
【0022】
通信インタフェース110は、通信ネットワークNに接続し、通信ネットワークN上の他の端末と通信をするためのハードウェアモジュールである。通信インタフェース110は、例えば、ISDNモデム、ADSLモデム、ケーブルモデム、光モデム、ソフトモデム等の変調復調装置である。
【0023】
記憶部120は、例えば、ディスクドライブまたは半導体メモリ(ROM、RAMなど)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からなる物理デバイスの記憶領域が提供する論理デバイスである。記憶部120は、複数の物理デバイスを1つの論理デバイスにマッピングして構築してもよいし、1つの物理デバイスを複数の論理デバイスにマッピングして構築してもよい。記憶部120は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムを含む各種プログラムおよびこれらのプログラムの実行中に使用される各種データを格納する。具体的には、記憶部120は、プロセッサ130に実行させる学習支援プログラムPRと、複数の講義動画の音声および動画データ(講義動画データ)DTと、学習支援プログラムPRの実行中に使用される各種情報を格納するデータベースとして、学習カリキュラムデータベースDB1と、学習者情報データベースDB2と、クラス情報データベースDB3とを記憶している。
【0024】
学習カリキュラムデータベースDB1は、学習者の学習到達度を測定するために実施されるテスト(到達度テスト)に含まれる複数の問題に関する情報と複数の講義に関する情報とを対応づけて格納する。
【0025】
以下においては、一例として、高校に入学した直後の生徒を対象に数学の学習支援を行う場合における学習カリキュラムデータベースDB1の内容を説明する。この場合、到達度テストとして、中学3年生までに学習した数学の内容が定着しているか否かを判定するための問題が設定される。また、各問題に対応づけられる講義も、中学1年~中学3年で学習する内容となる。つまり、未到達の内容を復習させることで学習支援を行うものである。
【0026】
図3は、学習カリキュラムデータベースDB1に格納される情報を例示した図である。図3に示すように、学習カリキュラムデータベースDB1は、到達度テストに関する情報a1(到達度テストコード、年度、学年、教材コード、実施回数、教材名)と、到達度テストに含まれる各問題に関する情報a2(シリアル番号、大問番号、中問番号、小問番号、必須/選択フラグ、解答個数、正解、配点、出題の趣旨、設問概要)と、講義に関する情報a3(講座コード、講義コード、講義名、視聴順)とを含む。
【0027】
各問題に関する情報a2において、シリアル番号によって特定される各問題は、講座コードおよび講義コードによって特定される1つの講義に対応づけられている。例えば、シリアル番号1の問題は、中1数学(基礎)第4講に対応づけられている。ここで、問題と講義との対応関係は必ずしも1対1対応でなくても良く、1つの講義に対して複数の問題が対応づけられていることもある。例えば、シリアル番号5、6の各問題は共に、中1数学(基礎)第13講に対応づけられている。
【0028】
講義に関する情報a3のうちの視聴順は、講義動画を視聴する際に推奨される順番を表しており、例えば、各到達度テストに含まれる複数の問題それぞれ対応付けられている複数の講義に対して、視聴が推奨される順序に従って連番となるように設定されている。例えば、中学数学の到達度テストに関して、中1数学(基礎)講座の第1講~最終講、中2数学(基礎)講座の第1講~最終講、および中3数学(基礎)講座の第1講~最終講に対し、1から順に昇順の番号が視聴順として割り当てられてもよい。
【0029】
ここで、学習カリキュラムデータベースDB1に格納される情報は図3に例示するものに限定されない。即ち、学習支援システム1において提供する学習支援の内容(学校教育における各教科、社内研修、資格試験対策講座、趣味講座等)、学習者の属性(幼稚園児、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、主婦、シニア層等)、学習期間(3か月、1年間、3年間等)といった各種条件に応じて適宜設定すれば良い。
【0030】
学習者情報データベースDB2は、学習者個人に関する情報(以下、学習者情報という)を格納する。学習者情報は、具体的には、学習者の識別情報(例えば会員コード)、氏名、所属する学校の名称や識別情報(例えば高校会員コード)、所属する学年およびクラス、住所、受講中の講座、受講済みの講義、到達度テストの結果、端末20a、20b、…から学習支援サーバ10にアクセスする際の認証用のパスコード等の情報を含む。
【0031】
クラス情報データベースDB3は、学校等の組織が当該組織に所属する学習者による学習支援システム1の利用を一括して申し込んでいる場合に、学習者の情報をクラスまたは学年といったグループごとに管理するための情報(以下、クラス情報という)を格納する。クラス情報は、具体的には、グループに関する情報(学校コード、クラスコード等)、グループに所属する学習者に関する情報(学習者の識別コード等)、学習者の到達度テストの結果およびこの結果を集計して分析した情報等を含む。
【0032】
プロセッサ130は、算術演算、論理演算、ビット演算等を処理する算術論理演算ユニット(CPUなど)および各種レジスタから構成され、記憶部120に格納されている各種プログラムを実行することにより学習支援サーバ10の各部を中枢的に制御する。また、プロセッサ130は、学習支援プログラムPRを実行することにより、端末20a、20b、…に対して講義動画を配信する学習支援機能を実現する。
【0033】
詳細には、プロセッサ130が学習支援プログラムPRを実行することにより実現される機能部は、学習者情報管理部131と、動画配信部132と、正誤情報取得部133と、講義抽出部136と、優先順位決定部137と、レコメンド情報出力部138と、集計処理部139とを含む。
【0034】
学習者情報管理部131は、学習者情報データベースDB2に格納される学習者情報を管理すると共に、学習者が操作する端末20a、20b、…から通信ネットワークNを介して当該学習支援サーバ10にアクセスがあった場合に、学習者情報に基づいて認証を行う。
【0035】
動画配信部132は、認証に成功した端末20a、20b、…からの要求に従い、指定された講義に関する講義動画データを記憶部120から読み出し、要求元の端末に送信する。
【0036】
正誤情報取得部133は、学習者が実施した到達度テストの結果である正誤情報を取得する。ここで、正誤情報とは、到達度テストに含まれる各問題の正誤を表す情報のことである。本実施形態において、正誤情報取得部133は、解答取得部134および採点処理部135を有する。解答取得部134は、端末20a、20b、…において入力された到達度テストの解答を通信ネットワークNを介して取得する。採点処理部135は、解答取得部134が取得した解答を、学習カリキュラムデータベースDB1を参照して採点することにより、各問題の正誤を表す正誤情報を生成する。
【0037】
なお、正誤情報取得部133の構成は、解答取得部134および採点処理部135を有する構成に限定されない。例えば、正誤情報取得部133は、到達度テストの解答を学習者自身または学習者の指導者が採点した結果、即ち、正誤情報そのものを通信ネットワークNを介して取得することとしても良い。あるいは、正誤情報取得部133は、当該学習支援サーバ10に接続された入力装置を用いて入力された正誤情報を直接取得することとしても良い。
【0038】
講義抽出部136は、正誤情報取得部133が取得した正誤情報に基づき、到達度テストに含まれる複数の問題の中から1つ以上の問題を抽出すると共に、学習カリキュラムデータベースDB1を参照することにより、抽出した1つ以上の問題に対応づけられた1つ以上の講義を抽出する。
【0039】
優先順位決定部137は、講義抽出部136が抽出した講義に対し、学習カリキュラムデータベースDB1に格納された視聴順に従って、学習者が視聴すべき優先順位を付ける。
【0040】
レコメンド情報出力部138は、講義動画の視聴を推奨する講義およびその優先順位を含むレコメンド情報を生成して出力する。
【0041】
集計処理部139は、複数の学習者の正誤情報をクラスまたは学年といったグループごとに集計し、各問題の正答率(又は誤答率)を算出する。
【0042】
再び図1を参照すると、端末20a、20b、…は、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPC、タブレット端末、スマートフォン、PDAなど、通信ネットワークNを介して他の通信機器とデータの授受が可能な端末装置を利用することができる。学習者は、端末20a、20b、…を操作して学習支援サーバ10にアクセスし、到達度テストの結果に応じて抽出された講義動画を視聴するなどして、学習支援を受けることができる。
【0043】
(2)実施形態の動作
次に、学習支援サーバ10の動作を説明する。図4は、学習支援装置の動作を示すフローチャートである。
本実施形態において、学習者は、講義動画の視聴に先立って到達度テストを受験する。到達度テストは、学習者が自宅等において個別に受験しても良いし、学校等において複数の学習者が一斉に受験しても良い。
【0044】
また、到達度テストの形式も特に限定されない。例えば、学習者(受験者)が学習支援サーバ10から各自の端末20a、20b、…に到達度テストをダウンロードし、端末20a、20b、…の画面上で解答を入力する形式であっても良い。この場合、到達度テストの解答は、端末20a、20b、…から学習支援サーバ10に、通信ネットワークNを介して送信される。あるいは、学習者が紙に印刷された問題を解いて、解答をマークシートに記入する方式であっても良い。この場合、マークシートを学習支援システム1の運営者に送付すると、運営者の側でマークシートに記入された解答を学習支援サーバ10に入力する。
【0045】
まず、ステップS1において、解答取得部134が、学習者が受験した到達度テストの解答を取得する。
【0046】
続くステップS2において、採点処理部135が、ステップS1において取得された解答を、学習カリキュラムデータベースDB1に格納された正解と対比することにより採点する。
【0047】
図5は、ある学習者について作成された到達度テストの結果を例示する表であり、図3に示す学習カリキュラムデータベースDB1から、各問題に関する情報a2および講義に関する情報a3を抽出すると共に、解答欄b1、結果欄b3、および優先順位欄b6を追加することにより作成されたものである。
【0048】
図5に示すように、解答取得部134により取得された解答は、解答欄b1に入力される。採点処理部135は、解答欄b1に入力された値(数値または符号)と、正解欄b2に予め格納されている正解の値(同上)とを対比し、両者が一致する場合には正答と判定し、結果欄b3に正答であることを示すフラグまたは符号(例えば「○」印)を入力する。
【0049】
反対に、採点処理部135は、解答欄b1に入力された値と正解欄b2に予め格納されている正解の値とが一致しない場合、誤答と判定し、結果欄b3に誤答であることを示すフラグまたは符号(例えば「X」印)を入力する。例えば図5の場合、シリアル番号7、8、13、14、15、45、46、47の問題が誤答となっている。
【0050】
また、採点処理部135は、解答欄b1に値が入力されていない場合、結果欄b3に、無回答であることを示すフラグまたは符号(例えば「-」印)を入力する。例えば図5の場合、シリアル番号49、50の問題が無回答となっている。
【0051】
さらに、採点処理部135は、配点欄b4に格納されている各問題の配点を参照して、正答であった問題の点数を加算することにより、到達度テストの得点を算出する。
【0052】
続くステップS3において、講義抽出部136が、到達度テストに含まれる複数の問題の中から、採点結果が誤答および無回答であった問題を抽出する。例えば図5の場合、シリアル番号7、8、13、14、15、45、46、47、49、50の計10個の問題が抽出される。
【0053】
続くステップS4において、講義抽出部136が、ステップS3において抽出された問題に対応づけられた講義を抽出する。例えば図5の場合、上述したシリアル番号7、8、13、14、15、45、46、47、49、50の問題に対応づけられた講義が抽出される。このうち、シリアル番号46および47の問題は、同じ講義(中3数学(基礎)第12講)に対応づけられているため、誤答および無回答の問題は計10個であるが、抽出される講義は計9個となる。
【0054】
続くステップS5において、優先順位決定部137が、ステップS4において抽出された講義に対し、学習カリキュラムデータベースDB1に格納された視聴順に従って優先順位付けを行う。
【0055】
詳細には、図5の視聴順欄b5に示すように、抽出された各講義には、推奨される視聴順が予め設定されている。優先順位決定部137は、抽出された講義に対し、予め設定された視聴順と同じ並び順となるように優先順位を付け、優先順位欄b6に入力する。例えば、抽出された講義のうち、視聴順が最も小さい(早い)講義は、視聴順23の「中3数学(基礎)第2講」である。従って、この講義に対して優先順位1が付けられる。他の講義についても同様に、視聴順24、32、33、40、46、48、67、68の各講義に対し、この順に優先順位2、3、4、…が付けられる。なお、シリアル番号46および47の問題については同じ講義が対応づけられているため、当然ながら同じ優先順位4が付けられる。
【0056】
続くステップS6において、レコメンド情報出力部138は、抽出された講義および各講義の優先順位を含むレコメンド情報を生成して出力する。このレコメンド情報は、電子情報として学習支援サーバ10から学習者の端末20a、20b、…に送信しても良いし、端末20a、20b、…から閲覧可能な状態で学習支援サーバ10に格納しておいても良い。あるいは、レコメンド情報をプリントアウトしたハードコピーを、学習支援システム1の運営者側から学習者または学習者が所属する学校等に送付することとしても良い。
【0057】
図6は、レコメンド情報を例示する表である。図6に示すように、レコメンド情報は、到達度テストに含まれる各問題の番号、設問概要、出題の趣旨、各問題の正解、学習者の解答に対する正誤の結果、配点、各問題に対応する講義、および、当該学習者に対して受講が推奨される講義およびその優先順位等の情報を含む。また、レコメンド情報を電子情報として学習者に提供する場合には、対応講義欄c1に表示される各講義名または優先順位欄c2に表示される優先順位の数字にリンクを挿入し、各講義の講義動画データに直接アクセスできるようにしても良い。
【0058】
学習者は、このようなレコメンド情報を参照することにより、各問題の出題の意図を把握すると共に、自身の学習の未到達箇所や弱点を知ることができる。また、学習者は、優先順位欄c1に順位が入力されている講義の動画を、入力されている順位に沿って視聴することにより、自身のレベルに合った学習を無理なく効率的に進めることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、到達度テストの結果に基づいて学習者が正答できなかった問題を抽出すると共に、学習カリキュラムデータベースDB1を参照することにより抽出された問題に対応づけられた講義を抽出し、これらの講義に対し、予め設定された視聴順に従って優先順位を付けるので、学習者は学習効果の高い順序で講義動画を視聴することが可能となる。
【0060】
変形例
次に、本発明の実施形態の変形例を説明する。
上記実施形態においては、学習者が個別に端末20a、20b、…を操作して講義動画を視聴する場合を想定し、学習者が正答できなかった問題に対応する講義を抽出することとした。しかし、学習支援システム1は、学校等の組織において複数の学習者が同時に同じ講義動画を視聴する集団学習に適用することも可能である。この場合、複数の学習者が受験した到達度テストの集計結果に基づいて問題及び講義を抽出すれば良い。
【0061】
詳細には、学習支援サーバ10において、集計処理部139が、正誤情報取得部133により取得された複数の学習者の正解情報を集計して、各問題の正答率(または誤答率)を算出する。図7は、集計処理部139による到達度テストの集計結果を例示する表であり、ある高校の第1学年の各クラス(1組~8組)および学年全体の正答率を示している。
【0062】
講義抽出部136は、複数の問題の中から正答率が所定値未満である問題(または誤答率が所定値以上である問題)を抽出し、さらに、抽出した問題と対応づけられた講義を抽出する。例えば図7においては、各クラスおよび学年全体において正答率が25%未満のセルに網掛けを付している。講義抽出部136は、クラスごとに、または学年全体に対し、図7において網掛けが付されたセルと同じ行の講義を抽出する。
【0063】
これに応じて、優先順位決定部137は、抽出された講義に対し、予め設定されている視聴順に従って優先順位を付ける。優先順位の付け方は上記実施形態と同様である。例えば1年8組においては、シリアル番号9、15、45~50の問題の正答率が25%未満であるから、これらの問題に対応づけられた講義が抽出される。そして、抽出された講義のうち、視聴順が最も小さい講義は、視聴順26の「中3(基礎)第5講」であるから、この講義に対して優先順位1が付けられる。他の講義についても同様に、視聴順32、33、34、48、67、68の各講義に対し、この順に優先順位2、3、…が付けられる。
【0064】
本変形例によれば、学校のクラス等において集団学習を行う場合であっても、より多くの学習者にとって学習効果の高い順序で講義動画を学習者に視聴させることが可能となる。
【0065】
次に、本発明の実施形態の別の変形例を説明する。
集計処理部139により複数の学習者の正解情報が集計された場合、講義抽出部136は、この集計結果に基づいて所定数の講義を抽出することとしても良い。図8は、本変形例における到達度テストの集計結果を例示する表である。
【0066】
本変形例において、講義抽出部136は、正答率が低い順から(または誤答率が高い順から)所定数の問題を抽出し、さらに、抽出した問題と対応付けられた講義を抽出する。例えば図8においては、各クラスおよび学年全体において正答率が低い方から3個(7組のみ4個)のセルに網掛けを付している。講義抽出部136は、クラスごとに、または学年全体に対し、図8において網掛けが付されたセルと同じ行の講義を抽出する。
【0067】
これに応じて、優先順位決定部137は、抽出された講義に対し、予め設定されている視聴順に従って優先順位を付ける。優先順位の付け方は上記実施形態と同様である。あるいは、更なる変形例として、正答率が低い順に優先順位をつけても良い。例えば図8に示す抽出問題表示欄d1には、学年全体で正答率が低かったシリアル番号48、49、50の問題が、正答率が低かった順(シリアル番号49、50、48の順)に表示されている。
【0068】
本変形例によれば、学校のクラス等において限られた時間内に集団学習を行う場合であっても、より多くの学習者のレベルに合った講義動画を学習者に視聴させることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…学習支援システム
10…学習支援サーバ
20a、20b、…端末
110…通信インタフェース
120…記憶部
130…プロセッサ
131…学習者情報管理部
132…動画配信部
133…正誤情報取得部
134…解答取得部
135…採点処理部
136…講義抽出部
137…優先順位決定部
138…レコメンド情報出力部
139…集計処理部
DB1…学習カリキュラムデータベースDB
DB2…学習者情報データベースDB
DB3…クラス情報データベース
N…通信ネットワーク
図1
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図8