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特許75566743D印刷のための不飽和結晶性ポリエステルを含む組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】3D印刷のための不飽和結晶性ポリエステルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/52 20060101AFI20240918BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240918BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240918BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240918BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20240918BHJP
   C08F 283/01 20060101ALI20240918BHJP
   C08J 3/16 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C08G63/52
B33Y70/00
B33Y40/00
B29C64/314
C08J3/03 CFD
C08F283/01
C08J3/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019082683
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2019199598
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】15/982,627
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】シバンティ・イー・スリスカンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・エム・ファルジア
(72)【発明者】
【氏名】ゲリーノ・ジー・サクリパンテ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジー・ザルツ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-226569(JP,A)
【文献】特開2017-048281(JP,A)
【文献】特開昭61-097325(JP,A)
【文献】特開昭47-039187(JP,A)
【文献】特開昭52-052989(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021159(WO,A1)
【文献】特開2016-117807(JP,A)
【文献】3D printing of new biobased unsaturated polyesters by microstereo-thermal-lithography,Biofabrication,Vol.6 (2014),035024,doi:10.1108/13552540310477454
【文献】Stereo-thermal-lithography:a new principle for rapidprototyping,Rapid Prototyping Journal,Vol.9 No.3 (2003),150-156,doi:10.1108/13552540310477454
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
B33Y
B29C
C08J
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(3D)印刷に使用するための不飽和ポリエステル樹脂であって、
フマル酸であるエチレン性不飽和モノマーと、
式IIで表され、かつmが2~5である第1のジオールモノマーと、
式IIで表され、かつmが6~10である第2のジオールモノマーと、を含む、不飽和ポリエステル樹脂で、
【化1】

前記不飽和ポリエステル樹脂に含まれる酸成分は、前記フマル酸のみであり、
前記エチレン性不飽和モノマーが、前記不飽和ポリエステル樹脂の49~51モルパーセント(モル%)で存在し、
前記第1のジオールモノマーと前記第2のジオールモノマーとのモル比が、75:25~50:50である、不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記第1のジオールモノマーが、前記不飽和ポリエステル樹脂の30~45モルパーセント(モル%)で存在する、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記第2のジオールモノマーが、前記不飽和ポリエステル樹脂の25~40モルパーセント(モル%)で存在する、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、50℃~70℃の結晶化温度(Tc)を有する、寵求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、75℃~110℃の溶融温度(Tm)を有する、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記不飽和ポリエステル樹脂が、120℃において200~600ポアズの粘度を有する、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記不飽和ポリエステル樹脂の酸価が、3~20mgKOH/gである、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂。
【請求項8】
組成物であって、
不飽和ポリエステル樹脂を熱開始剤と接触させることによって調製された架橋ポリエステル樹脂を含み、
前記不飽和ポリエステル樹脂が、
フマル酸であるエチレン性不飽和モノマーと、
式IIで表され、かつmが2~5である第1のジオールモノマーと、
式IIで表され、かつmが6~10である第2のジオールモノマーと、を含み、
【化2】

前記不飽和ポリエステル樹脂に含まれる酸成分は、前記フマル酸のみであり、
前記熱開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、有機過酸化物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、22’-アゾビスイソブチルアミド脱水物2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、組成物で、
前記エチレン性不飽和モノマーが、前記不飽和ポリエステル樹脂の49~51モルパーセント(モル%)で存在し、
前記第1のジオールモノマーと前記第2のジオールモノマーとのモル比が、75:25~50:50である、組成物。
【請求項9】
前記熱開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、有機過酸化物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、22’-アゾビスイソブチルアミド脱水物2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4- ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のジオールモノマーが、前記架橋ポリエステル樹脂の30~45モルパーセント(モル%)で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2のジオールモノマーが、前記架橋ポリエステル樹脂の25~40モルパーセント(モル%)で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
樹脂エマルジョンを作製する方法であって、
フマル酸であるエチレン性不飽和ジカルボン酸、式IIで表され、かつmが2~5である第1のジオール、および式IIで表され、かつmが6~10である第2のジオールを含む混合物を共重合することであって、それによって不飽和ポリエステル樹脂を形成する、150℃~205℃の範囲の温度で行われる、共重合することと、
前記不飽和ポリエステル樹脂を、界面活性剤を含む溶液で分散させて、前記樹脂エマルジョンを形成することと、を含む、方法であり、
【化3】

前記不飽和ポリエステル樹脂に含まれる酸成分は、前記フマル酸のみである、方法。
【請求項13】
前記方法が、前記樹脂エマルジョンを熱開始剤と接触させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記不飽和ポリエステル樹脂を前記熱開始剤と接触させることが、溶媒の非存在下で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、有機過酸化物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、22’-アゾビスイソブチルアミド脱水物2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元(3D)印刷に関する。具体的には、本開示は、不飽和ポリエステル樹脂をベースにした3D印刷用の新たな材料に関する。
【0002】
積層造形法(3D印刷)のための選択的レーザ焼結(SLS)技術は、ラスター化レーザを使用して、ポリマー粉末の床上を「走査」し、それを焼結して、層状に固体形状を形成する。SLSに使用される材料は、典型的には粉末化ポリマーであり、単独または複合形態のいずれかである。下流用途の様々なニーズを満たす仕様および能力を選択することで、SLSプロセスを介した3D印刷用の新たな材料の開発が推進される。
【0003】
選択的レーザ焼結(SLS)3D印刷技術は、ポリマー粉末の連続層を焼結するための電源としてレーザを使用することによって、プラスチック部品を製造する。この技術を広範囲の工業的範囲から制限する問題は、適用可能なポリマーの種類が狭いことである。今日まで、主にPA-11またはPA-12などの結晶性ポリアミド(PA)からなる少数の市販のポリマーのみが、この技術にうまく適用されており、一部は、PA-6、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、およびポリエーテルアミド(PEBA)などの他の材料への使用を限定している。非晶質樹脂、エラストマー、またはポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)のような他のより可撓性の材料、ならびに3D部品の材料特性を広げるのに極めて重要な高性能材料は、使用することができない。これは、材料が結晶質でなければならず、かつおおよそ30℃~50℃の温度差の鋭い融点および再結晶点を有しなければならないという制限された要件に起因する。
【0004】
SLSシステムでは、COレーザビームを使用して、薄層に堆積したポリマー粒子を選択的に溶融または焼結させる。最上層の粉末層中のポリマー粒子の局部的な完全合体、ならびにその下の層中の以前に焼結した粒子との接着が必要である。SLS処理での通常の使用に対して知られている結晶性または半結晶性ポリマーについて、これは、結晶化温度(Tc)が、処理中に可能な限り長く、または少なくともいくつかの焼結層について抑制されるべきであることを示唆する。したがって、処理温度は、所与のポリマーの溶融(Tm)と結晶化(Tc)との中間で正確に制御されなければならない。過冷却ポリマー溶融物のこの準安定熱力学的領域は、所与のポリマーについての「焼結ウィンドウ」と呼ばれる。TcとTmの開始点間の焼結ウィンドウは、約30℃~40℃である。図1は、PA-12 SLS粉末の示差走査熱量測定(DSC)スペクトルを示す。(出典:Schmidら、「Polymer Powders for Selective Laser Sintering(SLS)」;ETH-Zurich、2014。)
【0005】
現在使用されているポリアミド(PA-6、PA-11、およびPA-12)よりも剛性または可撓性の高い材料が必要とされている。さらに、より低い電力要件が3Dプリンタに必要とされるように、より低い温度(TcおよびTm)を有するポリマー材料が必要とされている。
【0006】
本開示は、三次元(3D)印刷に使用するための不飽和ポリエステル樹脂を提供し、(1)式Iを有するエチレン性不飽和モノマーであって、
【0007】
【化1】
【0008】
式中、各pおよびqは、独立して0~8であり、zは、1~5である、エチレン性不飽和モノマーと、(2)第1のジオールモノマーと、(3)第2のジオールモノマーと、を含む。
【0009】
いくつかの態様では、実施形態は、不飽和ポリエステルを熱開始剤と接触させることによって調製された架橋ポリエステル樹脂を含む組成物を提供し、ここで、不飽和ポリエステル樹脂は、(1)マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、イタコン酸、3-ヘキサン二酸、2-ヘプテン二酸、2-オクテン二酸、グルタコン酸、2-デセン二酸、トラウマト酸、ムコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ならびにこれらのエステル類、および無水物類、および混合物から誘導されたエチレン性不飽和モノマー、(2)第1のジオールモノマー、および(3)第2のジオールモノマーを含み、熱開始剤が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、有機過酸化物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、2-2’-アゾビスイソブチルアミド脱水物2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の様々な実施形態を、図面を参照しながら、以下、本明細書に記載する。
図1】Schmid,M.,Amado,A.,Wegener,K.による30th International Conference of the Polymer Processing Society,Cleveland,OH,USA,June 8-12,2014から複製されたPA-12 SLS粉末の示差走査熱量測定(DSC)スペクトルである。
図2】Wisanrakkit and Gilham、J.Appl、Poly.Sci、42、2453(1991)から複製された様々な種類のポリマーのヤング率(E)/温度の関係を示す図である。
図3】本開示の特定の実施形態による結晶性ポリエステル樹脂1の示差走査熱量測定(DSC)データを示す。
図4A】本開示の特定の実施形態による結晶性ポリエステル樹脂から調製されたエマルジョン凝集粒子のデジタル顕微鏡画像を示す。
図4B】本開示の特定の実施形態による結晶性ポリエステル樹脂から調製されたエマルジョン凝集粒子のデジタル顕微鏡画像を示す。
図4C】本開示の特定の実施形態による結晶性ポリエステル樹脂から調製されたエマルジョン凝集粒子のデジタル顕微鏡画像を示す。
図4D】本開示の特定の実施形態による結晶性ポリエステル樹脂から調製されたエマルジョン凝集粒子のデジタル顕微鏡画像を示す。
図5A】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5B】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5C】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5D】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5E】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5F】本開示の特定の実施形態による焼結不飽和CPE粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5G】市販のPA-12粉末のデジタル顕微鏡画像である。
図5H】市販のPA-12粉末のデジタル顕微鏡画像である。
【0011】
本明細書の実施形態は、選択的レーザ焼結(SLS)3-D印刷技術において使用するための不飽和ポリエステル樹脂を提供する。
【0012】
SLS印刷に最適な材料は結晶質であり、鋭い融点を有する。本開示は、非常に類似したDSCプロファイルを有するが、より低い温度にシフトした市販のPA-12と同様に、不飽和結晶性ポリエステル(CPE)(「不飽和ポリエステル」または「不飽和ポリエステル樹脂」と交換可能に使用される)を提供する。CPEのより低い粘度は、改善された仕上げを有する印刷物体を可能にし、研磨または化学的表面処理を排除する。不飽和CPEを、熱開始剤で架橋して、熱硬化性樹脂を形成することができる。架橋不飽和CPEは、その未架橋対応物と比較して、より大きい強度および改善された機械的性質を有する。図2は、架橋ポリマーと未架橋ポリマーの典型的なヤング率(E)/温度の関係の概略図を示す。
【0013】
実施形態の不飽和CPEは、式Iの二酸(エチレン性不飽和モノマー)、および式IIの少なくとも2つの脂肪族ジオールから誘導することができる。
【0014】
式IIIの不飽和ポリエステルを調製するための一般的合成スキームを以下に示す。
【0015】
【化2】
【0016】
実施形態において、実施形態の不飽和CPEは、フマル酸、および式IIの少なくとも2つの脂肪族ジオールから誘導され得る。
【0017】
実施形態では、実施形態の不飽和CPEは、フマル酸、および2つの脂肪族ジオール、例えば1,4-ブタンジオール(1,4-BD)および1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)から誘導され得る。フマル酸、ならびに1,4-BDおよび1,6-HDから不飽和ポリエステルを調製するための合成スキームを以下に示す。
【0018】
【化3】
【0019】
エチレン性不飽和モノマーの例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、イタコン酸、3-ヘキサン二酸、2-ヘプテン二酸、2-オクテン二酸、グルタコン酸、2-デセン二酸、トラウマト酸、ムコン酸メサコン酸、シトラコン酸、ならびにこれらのエステル類および無水物類、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
エチレン性不飽和モノマーは、少なくとも2つの異なる脂肪族ジオール(すなわち、第1のジオールモノマーおよび第2のジオールモノマー)と反応して、式IIIの不飽和ポリエステルを形成する。
【0021】
2つの脂肪族ジオールは、分子中の炭素原子数が異なり、ここで第1のジオールモノマーは、2~5個の炭素原子を含み(m1=2~5)、第2のジオールモノマーは、6~10個の炭素原子を含む(m2=6~10)。実施形態において、第1のジオールモノマーは、2~4個の炭素原子、または3~4個の炭素原子を含有する。実施形態において、第2のジオールモノマーは、6~9個の炭素原子、または6~8個の炭素原子を含有する。脂肪族ジオールの例としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、2,2,3-トリメチルヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、キシレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オキシド、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)、ヘキサン-2,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
実施形態では、任意の脂肪族ジオールの炭素鎖は、任意の炭素原子で任意選択で置換されていてもよい。そのような任意選択の置換は、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0023】
第1のジオールモノマー(式II、式中、m1=2~5)および第2のジオールモノマー(式II、式中、m2=6~10)のモル比を変え、これらのモノマーをエチレン性不飽和モノマー(式I)と反応させることによって、様々な溶融温度および再結晶温度を有する一連の不飽和ポリエステル樹脂(式III)を作製することができる。第1のジオールモノマーと第2のジオールモノマーとのモル比は、80:20~約60:50、75:25~65:35、および好ましくは70:30であり得る。
【0024】
第1のモノマーと第2のモノマーとのモル比が高いほど、得られる不飽和ポリエステル樹脂の融点は低い。
【0025】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約50℃~約70℃の結晶化温度(Tc)を有する。
【0026】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約75℃~約110℃の溶融温度(Tm)を有する。
【0027】
低融点不飽和ポリエステル樹脂は、第1のモノマー含有量を増加させることによって得ることができるが、不飽和ポリエステル樹脂の再結晶温度は、58℃を超えることが望ましい。再結晶温度が58℃未満である場合、トナー粒子は、高温にさらされると互いに固着し、ブロッキング(または凝集)を引き起こす。ブロッキングは、高温にさらされたトナーが軟化してトナー粒子が凝集する現象である。
【0028】
不飽和ポリエステル樹脂は、エチレン性不飽和モノマー(二酸)の少なくとも25モルパーセント(実施形態において、少なくとも30モルパーセント、少なくとも35モルパーセント、少なくとも40モルパーセント、少なくとも45モルパーセント、または少なくとも50モルパーセント)から誘導されて、不飽和ポリエステル樹脂を熱開始剤の存在下で熱的に硬化(架橋)させることができるようにすることが望ましい。実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、30モルパーセント~95モルパーセント、40モルパーセント~90モルパーセント、50モルパーセント~85モルパーセント、60モルパーセント~80モルパーセント、65モルパーセント~80モルパーセント、または70モルパーセント~80モルパーセントのエチレン性不飽和モノマーから誘導される。
【0029】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、10モルパーセント~50モルパーセント、20モルパーセント~45モルパーセント、または30モルパーセント~45モルパーセントの第1のモノマーから誘導される。
【0030】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、5モルパーセント~50モルパーセント、10モルパーセント~50モルパーセント、または25モルパーセント~40モルパーセントの第2のモノマーから誘導される。
【0031】
120℃における不飽和CPE樹脂の粘度は、100~600ポアズ、または200~500ポアズであり得る。不飽和CPE樹脂の酸価は、3~20、または5~20KOH/gであり得る。
【0032】
実施形態では、エチレン性不飽和モノマー(例えば、フマル酸)、第1のモノマー(例えば、1,4-ブタンジオール)、第2のモノマー(例えば、1,6-ヘキサンジオール)およびこれらの混合物を含む(またはそれらから誘導される)不飽和ポリエステル樹脂を含む3D印刷に使用する組成物が提供される。さらなる実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂は、49モルパーセント~51モルパーセントのエチレン性不飽和モノマー(例えば、フマル酸)、25モルパーセント~45モルパーセントの第1のモノマー(例えば、1,4-ブタンジオール)、および10モルパーセント~30モルパーセントの第2のモノマー(例えば、1,6-ヘキサンジオール)から誘導され得る。さらなる実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂は、49モルパーセント~51モルパーセントのエチレン性不飽和モノマー(例えば、フマル酸)、30モルパーセント~40モルパーセントの第1のモノマー(例えば、1,4-ブタンジオール)、および10モルパーセント~30モルパーセントの第2のモノマー(例えば、1,6-ヘキサンジオール)から誘導され得る。
【0033】
不飽和ポリエステル樹脂は、SLSプロセス中に熱開始剤と組み合わされるとき、硬化されて、剛性架橋不飽和CPEを形成することができる。硬化不飽和ポリエステル樹脂は、エマルジョン凝集(EA)法によって作製することができ、球形からポテト様の形態を有する粒子が得られる。
【0034】
エマルジョン凝集(EA)は、サブミクロンサイズの成分から均一サイズの粒子を「成長」させるボトムアップアプローチである。EAプロセスは、最適な印刷品質に必要な所望のサイズおよび狭い粒径分布をもたらすことができる。EAプロセスを通じて、ナノサイズの粒子を操作し、様々な複合設計のミクロンサイズの材料に設計することができる。米国特許第5,585,215号、米国特許第5,650,256号、米国特許第5,501,935号、米国特許第5,418,108号を参照されたく、これらの全体は、参照により本明細書に組み入れられる。結果として、体積平均直径が、約3ミクロン~約100ミクロンの凝集体としてコア粒子、または体積平均直径が、約4ミクロン~約90ミクロンの実施形態、または体積平均直径が、約10ミクロン~約80ミクロンの実施形態が得られる。
【0035】
不飽和CPE粒子は、Sysmex FPIA 3000 Flow Particle Image Analyzerにより測定して、約0.910~約0.940、約0.950~約0.970、または約0.975~約0.990の円形度を有することができる。平均粒径は、Coulter Counter(Multisizer III)により測定して、狭いサイズ分布(体積と数の両方)を伴って、5~120ミクロン、6~80ミクロン、または10~60ミクロンの範囲である。理想的には、熱開始剤は、EAプロセス中に使用されるエマルジョン凝集合体温度未満の半減期を有する。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂の融点より約20℃~約30℃、約10℃~約15℃高い硬化温度で熱開始剤を用いて硬化させることができる。
【0036】
好適な熱開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの水溶性開始剤、有機過酸化物を含む有機可溶性開始剤、およびVAZO 64(商標)、[2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)またはAIBNとしても知られる2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのVazo過酸化物を含むアゾ化合物]、VAZO 88(商標)、[1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)または1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)]、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル(Sigma-Aldrichから入手のVazo(商標)67)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。使用され得る他の好適な水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、2-2’-アゾビスイソブチルアミド脱水物、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)-2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0037】
実施形態において、組成物は、本質的に不飽和ポリエステル樹脂からなる。実施形態では、組成物は、組成物の75~100重量%、80~100重量%、または90~95重量%の不飽和ポリエステル樹脂からなる。
【0038】
実施形態において、組成物は本質的に、不飽和CPE樹脂からなる。実施形態では、組成物は、組成物の75~100重量%、80~100重量%、または90~95重量%の不飽和CPE樹脂からなる。
【0039】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約10メガパスカル~約100メガパスカルの範囲の降伏応力を有する。
【0040】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約1%~約10%の範囲の降伏歪みを有する。
【0041】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約0.5~約5ギガパスカルの範囲のヤング率を有する。
【0042】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約10%~約100%の範囲の破断歪みを有する。
【0043】
実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂は、約10メガパスカル~約100メガパスカルの範囲の破断応力を有する。
【0044】
実施形態において、硬化不飽和ポリエステル樹脂は、約10メガパスカル~約100メガパスカルの範囲の降伏応力を有する。
【0045】
実施形態において、硬化不飽和ポリエステル樹脂は、約1%~約10%の範囲の降伏歪みを有する。
【0046】
実施形態において、硬化不飽和ポリエステル樹脂は、約0.5~約5ギガパスカルの範囲のヤング率を有する。
【0047】
実施形態において、硬化不飽和ポリエステル樹脂は、約10%~約100%の範囲の破断歪みを有する。
【0048】
実施形態において、硬化不飽和ポリエステル樹脂は、約10メガパスカル~約100メガパスカルの範囲の破断応力を有する。
【0049】
実施形態において、触媒は、スズ系である。そのような触媒は、スズ(II)またはスズ(IV)の酸化状態に基づいていてもよい。実施形態において、スズ系触媒は、モノ-またはジアルキルスズ系である。モノアルキルスズ類は、スズ原子に酸化物および/または水酸化物基をさらに含んでもよい。実施形態では、スズ系触媒は、FASCAT(登録商法)4100として市販されている、モノブチルスズオキシド、モノブチルスズヒドロキシドオキシド、およびブチルスズ酸の混合物を含む。エステル交換化学において使用される他のスズ系触媒は、当該技術分野において周知であり、かつ本明細書中のオクタブチルテトラチオシアネートスタノキサンなどのポリエステル樹脂を調製するために同様に使用され得る。
【0050】
実施形態では、この方法は、不飽和ポリエステルを熱開始剤で硬化させて機械的に堅牢な材料を形成することを含み、ここで機械的に堅牢な材料は、架橋不飽和ポリエステルである。典型的には、3D物体が選択的レーザ焼結(SLS)で構築されているときに硬化が起こる。
【0051】
実施形態において、本方法は、不飽和ポリエステル樹脂を接触させることを溶媒の非存在下で行うことを含む。実施形態では、この方法は、不飽和ポリエステル樹脂を使用して無溶媒転相エマルジョン(SFPIE)ラテックスを調製することを含む。ラテックスは、不飽和ポリエステルを界面活性剤および塩基と共に分散させることによって調製することができる。ラテックス粒径は、約50~約500ナノメートル、または約80~約300ナノメートルの範囲内であり得る。
【0052】
特定の界面活性剤またはこれらの組み合わせの選択、ならびに使用される各々の量は、当業者の理解の範囲内である。好適な界面活性剤としては、イオン性または非イオン性界面活性剤が挙げられる。付加的に、重合プロセスでは、1種類以上の界面活性剤を使用することができる。
【0053】
好適なアニオン性界面活性剤としては、硫酸塩およびスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルスルフェート類およびスルホネート類、Aldrich、およびDaiichi Kogyo Seiyaku Co.,Ltdから入手されるNEOGEN R(商標)およびNEOGEN SC(商標)から入手可能なアビエチン酸などの酸類、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、Dow Chemical CompanyからのDOWFAX(商標)2A1、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、および/またはTayca Corporation(Japan)からのTAYCA POWER BN2060が挙げられ、これらは、分岐状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0054】
好適なカチオン性界面活性剤は、アンモニウム類、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、C12、C15、C17-トリメチルアンモニウムブロミド、これらの組み合わせなどを含む。他の好適なカチオン性界面活性剤としては、臭化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、塩化オデシルベンジルトリエチルアンモニウム、Alkaril Chemical Companyから入手可能なMIRAPOLおよびALKAQUAT、Kao Chemicalsから入手可能なSANISOL(塩化ベンザルコニウム)、これらの組み合わせなどを含む。好適なカチオン性界面活性剤は、Kao Corp.から入手可能なSANISOL B-50を含み、これは、主に塩化ベンジルジメチルアルコニウムである。
【0055】
好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコール類、酸類、およびエーテル類、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、これらの組み合わせなどが挙げられる。IGEPAL CA-210(商標)、IGEPAL CA-520(商標)、IGEPAL CA-720(商標)、IGEPAL CO-890(商標)、IGEPAL CO-720(商標)、IGEPAL CO-290(商標)、IGEPAL CA-210(商標)ANTAROX 890(商標)、およびANTAROX 897(商標)などのRhone-Poulencから市販の界面活性剤を使用することができる。
【0056】
塩基の例としては、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンおよびその誘導体、ジフェニルアミンおよびその誘導体、ポリ(エチレンアミン)、およびその誘導体、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書に開示される架橋不飽和ポリエステル(または硬化不飽和ポリエステル)は、一般に除去可能であり、複雑な三次元物体を作製するときの一時的な支持体として役立つ支持体材料として使用することができる。好適な支持体材料は、当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第8,460,451号は、SLA(ステレオリソグラフィ)プリンタ用の支持体材料を記載しており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される発明は、SLA(ステレオリソグラフィ)プリンタに使用され得るが、それは特に、SLS(選択的レーザ焼結)印刷と共に使用するために設計され、それは追加の支持体材料の必要性を排除する。
【0058】
支持体材料は、ポリエステル樹脂材料と同じまたは異なるプリントヘッドを介して送達されてもよい。支持体材料は、しばしば液体として供給され、典型的には周囲温度で固体であり、かつ高い適用温度で液体である、疎水性化学物質を含む。しかしながら、ポリエステル樹脂材料とは異なり、支持体材料は、その後除去されて、完成した三次元部品を提供する。
【0059】
支持体材料の除去は、ポリエステル樹脂材料から支持体材料を十分に除去するための好適な有機担体の使用と共に、支持体材料を、その融点より高い温度に加熱することを含むいくつかのプロセスによって達成することができる。
【0060】
実施形態では、三次元物品を印刷する方法は、本明細書に開示されるような、不飽和結晶性ポリエステルの連続層を三次元物品を形成する構築材料として焼結するためのレーザを利用することを含む。実施形態において、不飽和結晶性ポリエステルは、微粒子形態である。実施形態において、不飽和結晶性ポリエステルの微粒子は、凝集剤を使用して、不飽和結晶性ポリエステルのラテックスナノ粒子を制御凝集することによって調製することができる。このプロセスは、エマルジョン凝集として知られている。実施形態では、三次元物品を印刷する方法は、少なくとも1層の構築材料を支持体材料で支持することをさらに含む。さらに、本明細書に記載の方法の実施形態では、構築材料および/または支持体材料は、三次元物品の画像に従って選択的に堆積され、画像は、コンピュータ可読フォーマットである。
【0061】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために提示されている。これらの実施例は、例示のみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図していない。また、部およびパーセンテージは、特に指示がない限り、重量によるものである。本明細書に使用される際、「室温」は、約20℃~約25℃の温度を指す。
【0062】
一般的な樹脂合成
実施例1および2は、本明細書に開示されている実施形態によるポリエステル樹脂の調製および特徴付けを記載している。
【0063】
実施例1(結晶性不飽和ポリエステル(CPE)-樹脂1)
機械式撹拌機、蒸留装置、および底部排出バルブを備えた2リットルのBuchi反応器に、フマル酸(5.00モル)、1,4-ブタンジオール(1.27モル)、および1,6-ヘキサンジオール(3.83モル)を入れた。混合物を窒素下で1時間かけて165℃に加熱した。バッチ温度が120℃に達したときに、撹拌を開始した。次にバッチ温度が191℃に達するまで、反応温度を毎分0.5℃上昇させた。粘度測定は、Brookfield粘度計を用いて120℃(100rpm)で行い、次いで粘度が315Paに達するまで定期的にサンプリングした。反応混合物を金属容器に排出し、一晩室温に冷却させた。
【0064】
実施例2(結晶性不飽和ポリエステル(CPE)-樹脂2)
結晶性不飽和ポリエステル(CPE)樹脂2は、温かい樹脂を一晩反応器内に放置し、翌日ラテックス変換を同じ反応器内で開始したことを除いて、本明細書で議論した条件を使用して実施例1の手順によって調製した(ラテックス合成手順については実施例5参照)。
【0065】
図2は、本実施形態による不飽和ポリエステル樹脂特性を確認する結晶性ポリエステル樹脂1の示差走査熱量測定(DSC)データを示す(DSCデータは、10℃/分の速度で0℃~150℃~0℃のQ2500示差走査熱量計(TA Instruments)で得られた。
【0066】
1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)および1,4-ブタンジオール(1,4-BD)の量が異なることを除いて、追加の結晶性不飽和ポリエステル樹脂を上記の方法に従って調製した。表2は、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)と1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)の異なるモル比から得られた不飽和ポリエステル樹脂の特性を示す。表2に示される樹脂中の粘度および酸価の変動は、実験装置および実験誤差、ならびに各バッチにおける条件(例えば、装置の変動、加熱時間、反応速度、測定誤差等)におけるわずかな差に起因する。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例3-5は、樹脂1および2からの不飽和結晶性ポリエステル(CPE)ラテックスの調製を記載する(実施例1および2)。ラテックス1-3は、不飽和結晶性ポリエステルの無溶媒乳化重合から生成されたポリマー粒子からなるラテックスエマルジョンである。
【0069】
実施例3(樹脂1から調製されたラテックス1)
1Lのガラス製反応器に、TAYCA POWER BN2060界面活性剤(分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)10.03g、トリメチルアミン(TEA)6.93g、および結晶性不飽和ポリエステル樹脂1(実施例1に従って調製)200.00gを加えた。反応器を、制御された速度で105℃に加熱する。一度樹脂が溶融し始めると、低速(<50RPM)で混合を開始した。反応器温度が100℃で、DI水を、1.0g/分の速度で反応器に供給した。粘度が増加するにつれて、徐々に、混合速度を、165RPM、次いで200RPMに増加させた。ラテックスが形成されたら、DI水を2.0g/分に増加された速度で反応器に供給し、これを3.0g/分および250RPMまで徐々に増加した。合計300gのDI水を添加した。次いで十分に冷却し、反応器温度を25℃に下げた。生成物を、貯蔵タンクに集め、および25μmのスクリーンで篩過した。次いで、粒径をNanotrac(登録商標)U2275E粒度分析器によって測定した。72.5nm±19.9nmの狭い粒径が達成された。
【0070】
実施例4(樹脂1から調製したラテックス2)
実施例4は、TAYCA POWER BN2060界面活性剤(分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)10.04g、トリメチルアミン(TEA)4.52gおよび結晶性不飽和ポリエステル樹脂1、200.00g(実施例1に従って調製された)を1Lのガラス製反応器に添加したことを除いて、実施例3の手順により調製した。合計320gのDI水を添加した。次いで、粒径をNanotrac(登録商標)U2275E粒度分析器によって測定した。171.1nm±59.3nmの狭い粒径が達成された。
【0071】
実施例5(樹脂2から調製されたラテックス3)
樹脂は、479.55gのフマル酸、94.57gの1,4-ブタンジオール(BD)および373.54gの1,6-ヘキサン-ジオール(HD)を、(実施例2に従って調製された)2Lのブチグラス反応器に添加することによって、最初に合成された。温かい樹脂を反応器中に一晩放置し、翌日ラテックス変換を同じ反応器中で開始した。800gの樹脂(予想収率)に、40gのTAYCA POWER BN2060界面活性剤(分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)および18gのトリメチルアミン(TEA)を添加した。反応器を、制御された速度で115℃に加熱した。一度樹脂が74℃で溶融し始めると、低速で混合を開始した。100.8℃の反応器温度で、4.0g/分の速度でDI水を反応器に供給した。DI水の添加を停止し、2.5g/分の速度で再開し、再び停止し、次いで0.2g/分の増分で2.0g/分~5.0g/分まで最終の8g/分の速度まで徐々に増加させた。合計1200gのDI水を、添加した。次いで十分に冷却し、反応器温度を、25℃に下げた。次いで生成物を、排出し、25μmのスクリーンで篩過した。次いで、粒径を、Nanotrac(登録商標)U2275E粒度分析器によって測定した。120.1nm±31.5nmの狭い粒径が達成された。
【0072】
表3は、ラテックス1~3の調製に使用した試薬の量、および得られたラテックスの粒径を要約している。
【0073】
【表3】
【0074】
微粒子形成
実施例6(ラテックス1(実施例3)からのエマルジョン凝集(EA)粒子(CPEミクロスフェア1)の調製))
2Lガラス反応器に、実施例3からの230.29gのCPEラテックス1および456.07gのDI水を添加した。続いて、53.67gの0.3M硝酸を用いて、pHを、6.42~3.04に調整し、1.44gのALS(硫酸アルミニウム)を、3,000-4,000RPMで均質化しながらスラリーに添加した。反応器を、1本のP4シャフトで131RPMに設定し、66℃に加熱してCPE粒子を凝集させた。粒径は、Coulter(小口径サイズ)で、定期的にサンプリングした。スラリーを、0.3Mの硝酸で、pH1.6に徐々に下げた。粒径が約9.6ミクロンに達したとき、pHが3.0に達するまで、27.08gの4%NaOHでスラリーをpH調整することによって、粒子の凍結を開始した。次に反応器温度を、1時間かけて84℃に上げ、RPMを90に下げた。84℃の合体温度に達したら、スラリーを、4時間合体させた。次いで、スラリーを、室温まで冷却し、DI水で3回洗浄し、遠心分離により単離し、凍結乾燥した。最終乾燥粉末を、水分分析、デジタル顕微鏡、SEM、DSCおよびTGAに供した。SEMにより測定した最終粒径は、30-80μmであった。
【0075】
実施例7(ラテックス2(実施例4)からのエマルジョン凝集(EA)粒子(CPEミクロスフェア2)の調製)
2Lガラス反応器に、実施例4からの209.39gのCPEラテックス2および477.00gのDI水を添加した。続いて、35.72gの0.3M硝酸を用いてpHを、5.87~3.02に調整し、1.44gのALS(硫酸アルミニウム)を、3,000-4,000RPMで均質化しながらスラリーに添加した。反応器を、1本のP4シャフトで125RPMに設定し、70℃に加熱してCPE粒子を凝集させた。粒径は、Coulter(大口径サイズ)で定期的にサンプリングした。スラリーを、0.3Mの硝酸でpH1.62まで徐々に下げた。次に反応器温度を、1時間かけて84℃に上げ、RPMを80に下げた。スラリーのpHを、66.92gの0.3M硝酸で、pH0.89に徐々に下げた。スラリーを、84℃で5時間合体させた。次いで、スラリーを、室温まで冷却し、DI水で3回洗浄し、遠心分離により単離し、凍結乾燥した。最終乾燥粉末を、水分分析およびデジタル顕微鏡検査に供した。デジタル顕微鏡により測定した最終粒径は、47-75μmであった。
【0076】
実施例8(ラテックス3(実施例5)からのEA粒子(CPEミクロスフェア3)の調製)
2Lガラス反応器に、実施例5からの184.99gのCPEラテックス3および431.00gのDI水を添加した。続いて、40.98gの0.3M硝酸を用いて、pHを5.91~3.00に調整し、1.44gのALS(硫酸アルミニウム)を、3,000-4,000RPMで均質化しながらスラリーに添加した。反応器を、1本のP4シャフトで135RPMに設定し、70℃に加熱してCPE粒子を凝集させた。粒径は、Coulter(大口径サイズ)で定期的にサンプリングした。スラリーを、0.3Mの硝酸でpH1.52に徐々に下げた。RPMを、150に上げた。75℃の反応器温度およびおおよそ8ミクロンの粒径で、10%EP33(19.34g)シェルを添加し、0.3M硝酸でpH2.34に調整した。粒径が約8.8ミクロンに達したとき、反応器温度を、1時間かけて84℃に上げた。84℃で、3.08gのキレート剤(Versene100)を、反応器に添加した。スラリーのpHを、80.92gの1M硝酸で徐々にpH1.01に下げた。スラリーを、84℃で4時間合体させた。次いで、スラリーを、室温まで冷却し、DI水で3回洗浄し、遠心分離により単離し、凍結乾燥した。最終乾燥粉末を、水分分析およびデジタル顕微鏡検査に供した。
【0077】
実施例9(ラテックス3(実施例5)からのEA粒子(CPEミクロスフェア4)の調製)
2Lガラス反応器に、実施例5からの206.14gのCPEラテックス3および484.00gのDI水を添加した。続いて、35.01gの0.3M硝酸を用いて、pHを5.88~3.06に調整し、1.44gのALS(硫酸アルミニウム)を、3,000-4,000RPMで均質化しながらスラリーに添加した。反応器を、1本のP4シャフトで135RPMに設定し、70℃に加熱してCPE粒子を凝集させた。粒径は、Coulter(大口径サイズ)で定期的にサンプリングした。スラリーを、1Mの硝酸でpH1.30に徐々に下げた。RPMを、140に上げた。75℃の反応器温度およびおおよそ8.3ミクロンの粒径で、3.08gのキレート剤(Versene100)を添加した。次に反応器温度を、1時間かけて84℃に上げ、RPMを96に下げた。スラリーのpHを、46.43gの1M硝酸で、徐々にpH1.12に下げた。スラリーを、84℃で4時間合体させた。次いで、スラリーを、室温まで冷却し、DI水で3回洗浄し、遠心分離により単離し、凍結乾燥した。最終乾燥粉末を、水分分析およびデジタル顕微鏡検査に供した。デジタル顕微鏡により測定した最終粒径は、74-115μmであった。
【0078】
表4は、CPEラテックスからCPEミクロスフェアを調製するエマルジョン凝集プロセスを要約する。実施例6ラテックス1、実施例7ラテックス2、実施例8ラテックス3、および実施例9ラテックス3のデジタル顕微鏡画像を、それぞれ図4A~Dに示す。
【0079】
【表4】
【実施例
【0080】
SLS印刷
乾燥粉末材料CPEミクロスフェア1、CPEミクロスフェア3、CPEミクロスフェア4(それぞれ実施例6、8および9)を、乾燥粉末のベースライン性能を決定したSharebot SnowWhite SLSプリンタ(「SnowWhite」)での予備焼結試験に供した。SnowWhiteは、COレーザを使用して熱可塑性樹脂粉末を層ごとに焼結させる専門的な3Dプリンタである。レーザは、コンピュータ支援設計(CAD)モデルを使用して生成された所望の物体の断面を走査することによって材料を選択的に溶融する。第1の層が走査された後、粉末床は下げられ、新しい粉末材料がその上に転がされ、次の層が部品が完成するまで走査される。他の積層造形技術と比較した粉末ベースのシステムの主な利点は、印刷用支持体の排除と材料の再利用性である。
【0081】
SnowWhiteで印刷する手順は、以下のとおりである。30mm×30mm×0.1mmの正方形を、予備スクリーニング物体として印刷した。
1.0.5重量%のR812シリカと粒子を、CPEにブレンドして、12,000RPMで10秒間の流れを改善する。(この工程は実施例6についてのみ行われたことに留意されたい)。
2.粒子を、150ミクロンのスクリーンを通して篩過した。
3.篩過された粒子を、バーコーター(40ミルギャップ/厚さおおよそ1mmの粉末層)を使用してアルミニウム板上に塗布した。
4.試料をSnowWhiteチャンバ内に載置した。多層物体が印刷されなかったため、モーターは無効になった。ビルドチャンバの温度制御も無効になった。粉末床温度は、各材料についてTmより、おおよそ5℃低くなるように調整した。最適印刷条件を決定するために、レーザ速度とレーザ出力を変更した。
5.部品を取り出す前に、チャンバと粉末床を、室温まで冷却した。
【0082】
表5は、各不飽和CPE粉末試料(実施例6、8および9)および市販のPA-12粉末(ADVANC3D Materials(登録商法)GmbHから入手したAdSint PA12)について試験したレーザ出力およびレーザ速度レベルを示す。COレーザは、温度範囲が、<190℃の14ワットレーザである。この温度は、Sharebot SnowWhiteプリンタで使用されているレーザの温度である。設定温度は、各レーザ出力設定に関連付けられていない。部分収縮は、印刷された正方形の長さと幅を平均し、この値を30mmで割ってそのパーセント差を求めることによって測定された。CPEミクロスフィア3およびCPEミクロスフィア4の場合、負の収縮値は、未焼結の粉末が、部品に付着しているためである。比較すると、市販のPA-12粉末は最小の部分収縮を示し、これは、CPE粒子がレーザにさらされたときに互いにくっついただけであることを示している。印刷品質は、1-5の任意の尺度で測定され、5が最高の印刷品質、1が最低の印刷品質であった。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例11
焼結不飽和CPE粉末および市販のPA-12粉末のデジタル顕微鏡画像を、図5に示す。a~hとして標識された画像は、表5に示される実施例に対応する。CPEミクロスフェア1(実施例6)粉末は、低密度であり、それは凝集性であり、平坦化するのが困難であった。焼結部品の表面の間隙は、不十分な粉体コーティングの結果であった(図5A)。より高いレーザ出力では、粒子は、焼結の代わりに溶融した(図5B)。CPEミクロスフェア3(実施例8)は、流動性が非常に低く、凝集粒子が互いにくっつき、うまくコーティングされなかった。これは、光学顕微鏡写真で観察された粒子の粗い表面に基づいて予想された(表3)。CPEミクロスフェア4(実施例9)は、焼結不飽和CPE粉末の実施例6および8と比較して改善された流動性を示す。CPEミロスフェア4の焼結物体は壊れやすく、破片に砕けた(図5E)か、または不均一なコーティングにより高いレーザ粉末で有意な間隙が生じた。(図5F)。比較すると、市販のPA-12粉末は、よく流動し、焼結して隙間のない均一な部品を形成した(図5G)。図5Hは、焼結PA-12のデジタル顕微鏡画像を示し、粒子が均一に充填されていることを実証している。これらの結果は有望であり、不飽和結晶性ポリエステルのEA粒子を焼結できることを実証している。本発明の実施形態から印刷された実施例は、商業標準(PA-12)の印刷品質と厳密には一致しなかったが、実施例は、本実施形態の組成物が、満足な品質の物体を印刷し、かつ形成するために使用できることを示す。
【0085】
粒子の分布および形状における改善は、印刷品質を向上させる。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H