(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ジンバル装置、及びそれを備えたカメラシステム
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20240918BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240918BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B15/00 P
H04N5/222 100
(21)【出願番号】P 2019233855
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】村上 匡亮
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215934(JP,U)
【文献】米国特許第10506334(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0113462(US,A1)
【文献】特開2019-045690(JP,A)
【文献】特開2019-045691(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204705(JP,U)
【文献】特開2015-177539(JP,A)
【文献】特開2018-200376(JP,A)
【文献】意匠登録第1618304(JP,S)
【文献】スタパ齋藤,スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」サンコーの手持ちジンバルがイケてる!!,ケータイWatch,日本,2015年02月09日,https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/stapa/687357.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを取り付けて使用するジンバル装置であって、
カメラの光軸を所定の方向に向けて固定する取付面を備えたカメラマウント部
を有し、上記カメラマウント部は、カメラの筐体の前縁を平行に向けて取り付けるように、前縁が直線状に構成され、
さらに、
上記カメラマウント部を、第1の軸線を中心に回動させる第1モータと、
上記カメラマウント部と上記第1モータを連結する第1連結部材と、
上記カメラマウント部を、第2の軸線を中心に回動させる第2モータと、
上記第1モータと上記第2モータを連結する第2連結部材と、
上記カメラマウント部を、第3の軸線を中心に回動させる第3モータと、
上記第2モータと上記第3モータを連結する第3連結部材と、
上記第3モータに連結され、上記ジンバル装置を支持するための支持部と、
上記第1、第2、第3モータを制御する制御部と、
を有し、
上記第1、第2、第3の軸線は、互いに異なる方向に向けられると共に、上記第1、第2、第3の軸線のうちの少なくとも1本は、上記カメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、
上記カメラマウント部には、その前縁と、上記カメラマウント部に取り付けられたカメラの光軸が直交するように、カメラが固定されると共に、上記カメラマウント部の前縁は、上記平行軸線に対して斜めに向くように形成されていることを特徴とするジンバル装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記第1、第2、第3モータのうち、少なくとも2つを同時に回動させることにより、上記カメラをピッチング運動させる請求項1記載のジンバル装置。
【請求項3】
上記第1の軸線は上記カメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、上記制御部は、少なくとも上記第1モータ及び上記第2モータを同時に回動させることにより、上記カメラをピッチング運動させる請求項2記載のジンバル装置。
【請求項4】
上記第1の軸線は上記カメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、上記カメラマウント部の前縁と、上記第1の軸線との為す角は15度乃至75度である請求項1乃至3の何れか1項に記載のジンバル装置。
【請求項5】
上記第1の軸線は上記カメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、上記第2の軸線は、上記カメラマウント部に向けて上方に向くように、水平面に対して傾斜している請求項1乃至4の何れか1項に記載のジンバル装置。
【請求項6】
カメラを支持するジンバル装置を備えたカメラシステムであって、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のジンバル装置と、
このジンバル装置に取り付けられたカメラと、
を有することを特徴とするカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンバル装置に関し、特に、カメラを取り付けて使用するジンバル装置、及びそれを備えたカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-45690号公報(特許文献1)には、ジンバル装置が記載されている。このジンバル装置は、L字形の第一、第二、第三アームでジンバル機構部を構成し、カメラを取り付ける装着ステージを三つの軸それぞれで片持ちさせ、一対のハンドルがベース部から同一方向に突出している。この基本状態において、ジンバル装置は、ジンバル機構部をベース部に対してハンドルと同じ側に位置させると共に、ベース部におけるハンドルの突出方向とは反対側の面が設置面に当接し、自立するように構成されている。また、第一、第二、第三アーム及びベース部を連結するように、第一、第二、第三モータが夫々設けられている。
【0003】
ジンバル装置に取り付けられたカメラを所望の向きに向ける際は、各モータを回動させ、各L字形のアーム間の相対的な角度を変化させる。ここで、特許文献1に記載されているような一般的な構造のジンバル装置においては、カメラの質量が各アーム及びモータ等の質量に対して十分に小さい場合には、第一、第二、第三モータの各回転軸の延長線が、夫々、装着ステージに取り付けられたカメラの重心点近傍を通る。換言すれば、各モータの回転軸の延長線の交点が、カメラの重心点と概ね一致するように調整されている。カメラの取り付けをこのように調整しておくことにより、カメラが如何なる向きに向けられた場合にも、カメラがその姿勢を維持するために各モータが発生する必要があるトルクを極めて小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、ズーム機能を備えたカメラをジンバル装置に取り付けた場合には、カメラの重心点の位置が変化してしまうという問題がある。一般に、ズーム機能を備えたカメラのレンズ鏡筒は、設定された画角に応じて光軸方向に伸縮されるので、このレンズ鏡筒の伸縮と共にカメラ全体の重心点の位置も光軸方向に移動してしまう。このため、或る画角において、各モータの回転軸の延長線の交点がカメラの重心点と一致するように調整されていたとしても、カメラの画角を変化させることにより、重心点が移動されると、延長線の交点とカメラの重心点が一致しなくなる。このような場合には、カメラが静止している状態であっても、モータは、カメラがその姿勢を維持できるように、トルクを生成し続ける必要がある。
【0006】
この結果、ジンバル装置のモータは、カメラの方向を変えるために必要なトルクに加え、カメラの姿勢を維持するために必要なトルクも発生させることが要求され、モータに対する要求トルクが大きくなる。このため、より高出力なモータが必要となり、或いは、同一出力のモータを採用してもジンバル装置の応答性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、取り付けられたカメラの重心移動に対し、より低出力なモータで対応することができるジンバル装置、及びそれを備えたカメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、カメラを取り付けて使用するジンバル装置であって、カメラの光軸を所定の方向に向けて固定する取付面を備えたカメラマウント部を有し、カメラマウント部は、カメラの筐体の前縁を平行に向けて取り付けるように、前縁が直線状に構成され、さらに、カメラマウント部を、第1の軸線を中心に回動させる第1モータと、カメラマウント部と第1モータを連結する第1連結部材と、カメラマウント部を、第2の軸線を中心に回動させる第2モータと、第1モータと第2モータを連結する第2連結部材と、カメラマウント部を、第3の軸線を中心に回動させる第3モータと、第2モータと第3モータを連結する第3連結部材と、第3モータに連結され、ジンバル装置を支持するための支持部と、第1、第2、第3モータを制御する制御部と、を有し、第1、第2、第3の軸線は、互いに異なる方向に向けられると共に、第1、第2、第3の軸線のうちの少なくとも1本は、カメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、カメラマウント部には、その前縁と、カメラマウント部に取り付けられたカメラの光軸が直交するように、カメラが固定されると共に、カメラマウント部の前縁は、平行軸線に対して斜めに向くように形成されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、カメラを取り付けたカメラマウント部と第1モータが第1連結部材によって連結され、第1モータと第2モータが第2連結部材によって連結され、第2モータと第3モータが第3連結部材によって連結される。第1、第2、第3モータは制御部によって制御されると共に、各モータがカメラマウント部を夫々回動させる第1、第2、第3の軸線は、互いに異なる方向に向けられている。また、第1、第2、第3の軸線のうちの少なくとも1本は、カメラマウント部の取付面と平行に向けられ、この平行軸線は、カメラマウント部の前縁に対して斜めに向けられている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、平行軸線が、カメラマウント部の前縁に対して斜めに向けられているので、カメラの光軸方向の重心移動に対し、より低出力なモータで対応することができる。即ち、特許文献1に記載されているような、従来のジンバル装置においては、カメラマウント部に連結された第1モータの回転軸が、カメラの光軸に直交する方向に向けられている。このため、カメラの重心点が光軸方向に移動すると、この移動によって発生するモーメントを打ち消すために、第1モータのみがトルクを発生する。従って、カメラの重心点が移動した場合には、第1モータは、カメラの姿勢を維持するために、重心の移動距離とカメラの重量を乗じたトルクを余分に発生させる必要がある。
【0011】
これに対して、上記のように構成された本発明によれば、平行軸線がカメラの光軸と直交する軸線に対して斜めに向けられている。このため、カメラの重心点の移動により発生するモーメントを打ち消すためのトルクを発生するモータが1つに集中せず、打ち消すためのトルクが複数のモータによって分担される。これにより、各モータ出力の余裕度が大きくなり、カメラの重心移動に対し、より低出力なモータで対応することが可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御部は、第1、第2、第3モータのうち、少なくとも2つを同時に回動させることにより、カメラをピッチング運動させる。
また、本発明において、好ましくは、第1の軸線はカメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、制御部は、少なくとも第1モータ及び第2モータを同時に回動させることにより、カメラをピッチング運動させる。
【0013】
さらに、本発明において、好ましくは、第1の軸線はカメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、カメラマウント部の前縁と、第1の軸線との為す角は15度乃至75度である。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、第1の軸線はカメラマウント部の取付面と平行に向けられた平行軸線であり、第2の軸線は、カメラマウント部に向けて上方に向くように、水平面に対して傾斜している。
【0015】
さらに、本発明は、カメラを支持するジンバル装置を備えたカメラシステムであって、本発明のジンバル装置と、このジンバル装置に取り付けられたカメラと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のジンバル装置、及びそれを備えたカメラによれば、取り付けられたカメラの重心移動に対し、より低出力なモータで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態によるカメラシステムの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるカメラシステムの上面図である。
【
図3】従来のジンバル装置における各モータの回転軸と、カメラの姿勢角の関係を模式的に表す説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるジンバル装置における各モータの回転軸と、カメラの姿勢角の関係を模式的に表す説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態によるカメラシステムの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態によるカメラシステムを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるカメラシステムの外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態によるカメラシステムの上面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のカメラシステム1は、ジンバル装置2と、このジンバル装置2に取り付けられたカメラ4から構成されている。
本実施形態のカメラシステム1は、ジンバル装置2の把持部に設けられたジョイスティックを操作することにより、カメラ4を所望の方向に向けることができる。また、ジンバル装置2の種々の動作モードを選択することにより、カメラ4の視野の振れを抑制しながら、撮影者の意図に沿った撮影をすることができる。
【0020】
カメラ4は、本実施形態においては、動画撮影用のデジタルビデオカメラであり、ズーム機能を備えている。また、カメラ4は、ズーム機能により画角を変化させると、そのレンズ鏡筒4aが伸縮するように構成されており、これに伴いカメラ4の重心位置も、カメラ4の光軸Aに沿って移動される。なお、本実施形態においてカメラ4は、動画撮影用のデジタルビデオカメラであるが、動画撮影用、静止画撮影用の任意のカメラに本発明を適用することができる。
【0021】
図1に示すように、ジンバル装置2は、カメラ4を取り付けるためのカメラマウント部6と、このカメラマウント部6を、第1の軸線A1を中心に回動させる第1モータ8と、第2の軸線A2を中心に回動させる第2モータ10と、第3の軸線A3を中心に回動させる第3モータ12と、を有する。さらに、ジンバル装置2は、カメラマウント部6と第1モータ8を連結する第1連結部材14と、第1モータ8と第2モータ10を連結する第2連結部材16と、第2モータ10と第3モータ12を連結する第3連結部材18と、撮影者によって把持される支持部である把持部20と、を有する。
【0022】
また、
図1は、ジンバル装置2の基本状態を示しており、この基本状態においては、第1の軸線A1、第2の軸線A2、及び第3の軸線A3は、互いに異なる方向に向けられると共に、互いに直交している。さらに、基本状態においては、カメラ4のレンズ鏡筒4aはワイド端(レンズ鏡筒4aが最も短くなった状態)に設定され、この状態におけるカメラ4の重心は点G1に位置する。なお、以下では、カメラ1の質量に対して、第1乃至第3連結部材、及び第1乃至第3モータの質量は十分小さく、無視できるものとして説明する。
【0023】
図2に示すように、カメラマウント部6は、カメラ4を固定するようになった平面の取付面6aを備えたプレート状の部材である。また、本実施形態においては、
図1に示す基本状態において、取付面6aは、第1の軸線A1、及び第2の軸線A2と平行に向けられ、第3の軸線A3と直交するように向けられている。従って、本実施形態において、第1の軸線A1及び第2の軸線A2は、基本状態において取付面6aと平行に向けられた平行軸線である。
【0024】
また、カメラマウント部6は、その前縁6bと、カメラ4の筐体の前縁4bが平行になるよう、カメラ4を取り付けるように構成されている。これにより、カメラ4は、その光軸Aと、カメラマウント部6の前縁が直交するように、カメラマウント部6に取り付けられる。また、この状態では、カメラマウント部6の取付面6aと、カメラ4の光軸Aは、平行に向けられる。
【0025】
第1モータ8は、第1連結部材14と第2連結部材16を相対的に回動させるように設けられ、第1連結部材14を介してカメラマウント部6に連結されている。第1モータ8は、第1連結部材14を介してカメラマウント部6及びそれに取り付けられたカメラ4を、基本状態において、第1の軸線A1を中心に回動させるように構成されている。本実施形態において、第1連結部材14はL字形に屈曲して形成されており、これにより、カメラマウント部6の取付面6aは、第1の軸線A1よりも、
図1における下方に位置し、取付面6aに取り付けられたカメラ4の重心点G1は、ほぼ第1の軸線A1上に位置している。
【0026】
第2モータ10は、第2連結部材16と第3連結部材18を相対的に回動させるように設けられ、第2連結部材16を介して第1モータ8に連結されている。これにより、第2モータ10は、第2連結部材16、第1モータ8、及び第1連結部材14を介して、カメラマウント部6及びそれに取り付けられたカメラ4を、基本状態において、第2の軸線A2を中心に回動させる。本実施形態において、第2連結部材16は水平面内において屈曲して延びるように形成されており、これにより、第2の軸線A2は、水平面内において第1の軸線A1と直角に交わるように向けられる。また、カメラマウント部6に取り付けられたカメラ4の重心点G1は、概ね第1の軸線A1と第2の軸線A2の交点に位置している。
【0027】
第3モータ12は、第3連結部材18と把持部20を相対的に回動させるように設けられ、第3連結部材18を介して第2モータ10に連結されている。これにより、第3モータ12は、第3連結部材18、第2モータ10、第2連結部材16、第1モータ8、及び第1連結部材14を介して、カメラマウント部6及びそれに取り付けられたカメラ4を、基本状態において、第3の軸線A3を中心に回動させる。本実施形態において、第3の軸線A3は鉛直方向に向けられている。また、第3連結部材18は鉛直面内において屈曲して延びるように形成されており、これにより、第3の軸線A3は、水平方向に向けられた第1の軸線A1、及び第2の軸線A2と夫々直角に交わる。即ち、第1の軸線A1、第2の軸線A2、及び第3の軸線A3は互いに直交している。また、カメラマウント部6に取り付けられたカメラ4の重心点G1は、概ね、第1の軸線A1、第2の軸線A2、及び第3の軸線A3の交点に位置している。
【0028】
把持部20は、第3モータ12に取り付けられた丸棒状の部材であり、第3モータ12の下側から下方に向かって鉛直方向に延び、撮影者によって把持される。また、把持部20の側面には操作部20aが設けられており、この操作部20aを操作することにより、カメラマウント部6に取り付けられたカメラ4を所望の方向に向けることができる。また、操作部20aを操作することにより、ジンバル装置2の作動モードを選択することができ、保持モード、追随モード等を設定することができる。
【0029】
さらに、把持部20には、第1モータ8、第2モータ10、及び第3モータ12を制御する制御部20bが内蔵されている。制御部20bは、各モータに内蔵されたロータリーエンコーダ(図示せず)、及び把持部20に内蔵されたジャイロセンサ(図示せず)等の検出信号に基づいて、カメラ4を所定の方向に向けるために必要な、各モータの回転角を計算する。制御部20bは、計算された各モータの回転角に基づいて、各モータに制御信号を送り、カメラマウント部6に取り付けられたカメラ4の姿勢を制御するように構成されている。
【0030】
また、本実施形態において、把持部20は、鉛直方向に向けられた丸棒状の部材から構成されているが、把持部20を種々の形状に構成することができる。例えば、把持部を、水平方向に向けられたベース部材と、その両端に設けられたハンドル部から構成される形態とすることもできる。或いは、把持部を、ジンバル装置2を種々の支持構造物に取り付けるための支持部として構成することもできる。
【0031】
ここで、上記のように、カメラ4の重心点G1(より厳密には、カメラ4及びカメラ4と一体となって回動する部分の重心点)は、各モータが回転する各軸線の交点と、ほぼ一致している。このため、カメラ4の重心に作用する重力が、各モータの軸線の周りに作用させる力のモーメントは実質的にゼロとなり、各モータが実質的にトルクを出力することなく、カメラ4は、任意の姿勢を維持することができる。
【0032】
また、本実施形態のジンバル装置2において、第3モータ12が、制御部20bによって回動されることにより、カメラ4をヨーイング(鉛直軸を中心とした回動)させることができる。一方、カメラ4をローリング(カメラ4の光軸Aを中心とした回動)させる場合、及びピッチング(水平面内でカメラ4の光軸Aに直交する軸線を中心とした回動)させる場合には、主として第1モータ8及び第2モータ10が、制御部20bによって同時に回動される。
【0033】
なお、従来のジンバル装置においては、基本状態において、何れか1つのモータの回転軸が、カメラの光軸に直交する軸線上に配置されており、このモータだけを回動させることにより、カメラをピッチングさせることができる。これに対して、本実施形態のジンバル装置2においては、
図2に示すように、基本状態において、カメラマウント部6の前縁6bが、第1の軸線A1、第2の軸線A2に対して斜めに(非平行、且つ非直角に)向けられており、この前縁6bと平行にカメラ4を取り付けるように構成されている。
【0034】
このため、カメラマウント部6の取付面6aに平行な(水平方向に向けられた)第1の軸線A1及び第2の軸線A2は、何れも、カメラ4の光軸Aと直交する軸線ARに対して斜めに向けられる。この結果、本実施形態のジンバル装置2においては、カメラマウント部6の取付面6aに取り付けられたカメラ4をピッチングさせる場合には、第1モータ8及び第2モータ10が同時に回動される。同様に、本実施形態のジンバル装置2においては、第1の軸線A1及び第2の軸線A2が、何れも、カメラ4の光軸Aに対して斜めに向けられている。このため、本実施形態のジンバル装置2においては、カメラ4をローリングさせる場合にも、第1モータ8及び第2モータ10を同時に回動させる。
【0035】
一方、カメラ4のズーム機能を使用して、レンズ鏡筒4aの画角をテレ端側に変更した場合にはレンズ鏡筒4aが伸長される。これに伴い、カメラ4の重心点G1は光軸A方向に距離L移動し、重心点G2(
図2)へ移る。このように、重心点が基本状態におけるG1からG2へ移動されると、重心点G2と、第1乃至第3の軸線の交点が一致しなくなる。この状態においては、重心点G2に作用する重力は、第1の軸線A1及び第2の軸線A2の周りに力のモーメントを発生する。この結果、重心点がG2に移動された状態では、カメラ4の姿勢を維持するために、第1モータ8及び第2モータ10がトルクを発生する必要がある。換言すれば、カメラ1の重心点がG1に位置する状態では、カメラ1の姿勢を維持するために各モータに要求される出力トルクは極小にされていたが、重心点がG2に移動されることにより、姿勢維持のために要求される出力トルクが増大する。
【0036】
即ち、重力によって発生する力のモーメントを打ち消すために、第1モータ8は、カメラ4の重量に、第1の軸線A1から重心点G2までの距離L1を乗じたトルクを発生する。また、第2モータ10は、カメラ4の重量に、第2の軸線A2から重心点G2までの距離L2を乗じたトルクを発生する。これらのトルクは、カメラ4の重量に、重心点の移動距離Lを乗じたトルクよりも小さくなる。このように、カメラ4の姿勢を維持するために必要なトルクの負担が、第1モータ8、第2モータ10に分散され、各モータが生成すべきトルクが軽減される。
【0037】
これに対し、従来のジンバル装置においては、何れか1つのモータの回転軸が、カメラの光軸に直交する軸線(
図2における軸線ARに対応)上に配置されており、カメラの光軸方向の重心点移動に基づいて発生した力のモーメントは、その1つのモータが発生するトルクのみによって打ち消される。即ち、従来のジンバル装置においては、カメラの重心点が移動された状態においては、カメラの姿勢を維持するために、カメラの重量に、重心点の移動距離(
図2における距離Lに対応)を乗じたトルクを、1つのモータで発生させる必要がある。
【0038】
このため、従来のジンバル装置においては、カメラの重心点が移動された場合に、カメラの姿勢を維持するために発生させるトルクが1つのモータに集中してしまう。この結果、カメラの姿勢維持に使用されるモータに、大型の強力なモータを採用する必要がある。また、カメラの姿勢維持に使用されるモータとして、他のモータと同一のものを採用した場合には、姿勢維持に使用されるモータが生成可能なトルクに余裕が少なくなり、ジンバル装置の応答性が低下してしまう。
【0039】
また、上述したように、第1モータ8は、基本状態においてカメラマウント部6を第1の軸線A1を中心に回動させ、第2モータ10は、基本状態においてカメラマウント部6を第2の軸線A2を中心に回動させ、第3モータ12は、基本状態においてカメラマウント部6を第3の軸線A2を中心に回動させる。これらの関係は、ジンバル装置2が基本状態から外れることにより変化するが、基本状態から外れた状態においても、同様に、各モータが生成すべきに出力トルクを軽減する効果が発揮される。
【0040】
以上の説明は、上記のようにカメラ1の質量に対して、第1乃至第3連結部材、及び第1乃至第3モータの質量が十分小さく、無視できる場合のものであるが、実際には各連結部材及び各モータには質量があり、これらが無視できない場合もある。しかしながら、各連結部材及び各モータの質量が無視できない場合であっても、これらの質量も含めて、基本状態を維持するために各モータに要求される出力トルクが極小となるように、ジンバル装置2を設計することが可能である。或いは、基本状態を維持するために要求される各モータの出力トルクを極小にできるよう、ジンバル装置2を調整可能に設計することも可能である。なお、これらの場合には、カメラ4自体の重心点は必ずしも第1乃至第3の軸線上には位置せず、第1乃至第3の軸線は必ずしも交差しない。
【0041】
さらに、上記のように第1乃至第3の軸線上に、カメラ4自体の重心点が位置しない場合であっても、ズーム機能の使用等によりカメラ4の重心が移動されると、カメラ4の姿勢を維持するために各モータに要求される出力トルクが極小値よりも増大することは同様である。しかしながら、このような場合であっても、本実施形態のジンバル装置2のように、第1の軸線A1及び第2の軸線A2を、カメラ4の光軸Aと直交する軸線ARに対して斜めに配置することにより、カメラ4の姿勢を維持するために要求されるトルクを複数のモータに振り分けることができ、各モータのトルク負担を軽減する効果を得ることができる。即ち、第1乃至第3の軸線上に、カメラ4自体の重心点が位置しない場合においても、上記で説明した本実施形態のジンバル装置2と同様の効果を得ることができる。
【0042】
次に、
図3及び
図4を参照して、制御部20bによる各モータの制御を説明する。
図3は、従来のジンバル装置における各モータの回転軸と、カメラの姿勢角の関係を模式的に表す説明図である。
図4は、本発明の第1実施形態によるジンバル装置2における各モータの回転軸と、カメラ4の姿勢角の関係を模式的に表す説明図である。
【0043】
まず、
図3に示すように、従来のジンバル装置においては、第1モータ8’の回転軸がカメラのピッチ軸yの方向に向けられ、第2モータ10’の回転軸がカメラの光軸と一致したロール軸xの方向に向けられ、第3モータ12’の回転軸がカメラのヨー軸zの方向に向けられている。このため、カメラを角度vだけピッチングさせる場合には第1モータ8’を角度v回動させれば良い。同様に、カメラを角度uだけローリングさせる場合には第2モータ10’を角度u回動させ、角度wだけヨーイングさせる場合には第3モータ12’を角度w回動させる。
【0044】
これらのロール軸x回りの角度uの回動、ピッチ軸y回りの角度vの回動、及びヨー軸z回りの角度wの回動に夫々対応する回転行列R
x(u)、R
y(v)、R
z(w)は、次の数式(1)~(3)のように表すことができる。
【0045】
従って、カメラ側から順にピッチ軸用、ロール軸用、ヨー軸用のモータが設けられた従来のジンバル装置において、ロール軸x、ピッチ軸y、ヨー軸z回りの回動が同時に行われた場合のカメラの回動を表す回転行列R
gcは、数式(4)により計算することができる。
【0046】
次に、本実施形態のジンバル装置2においては、
図2に示すように、カメラ4の光軸Aが、第1の軸線A1(ピッチ軸y)及び第2の軸線A2(ロール軸x)に対して斜めに向けられている。このため、単に第1モータ8を回動させ、第1の軸線A1の周りにカメラを回動させても、カメラ4は純粋なピッチング運動(ローリング、ヨーイングを含まないピッチング)をしない。本実施形態においては、制御部20b(
図1)は、カメラ4に純粋なピッチング運動をさせる場合には、第1モータ8に加え、第2モータ10、第3モータ12をも作動させる。以下では、カメラ4が、ヨー軸z回りに角度a回動して取り付けられている場合における制御部20bによる各モータの制御を説明する。
【0047】
上記のように、本実施形態のジンバル装置2においては、
図4に示すように、カメラ4の光軸Aがヨー軸z周りに角度a回動された状態にあり、光軸Aがロール軸x、ピッチ軸yに対して斜めにされている。なお、角度aの絶対値は90゜未満とする。この状態におけるカメラの姿勢を表す回転行列R
gは、ヨー軸z周りの角度aの回転行列R
z(a)を数式(4)に右側から乗じることにより、求めることができる。即ち、数式(5)により、カメラの姿勢を表す回転行列R
gを求めることができる。
【0048】
ここで、カメラ4を角度bだけピッチングさせるために必要な各モータの回転角度u、v、wは、角度bのピッチングを表す回転行列R
pitch=R
y(b)の各要素を、回転行列R
gの各要素と等置することにより、数式(6)に基づいて求めることができる。
【0049】
数式(6)において、r
31、r
32に注目すると、
数式(7)(8)よりcos u sin vを消去すると、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、sin a≠0、cos a≠0である。数式(9)をsin uについて解くと、
が得られ、数式(10)をuについて解くと、
となる。なお、数式(11)は、0゜<|a|<90゜から導かれる数式(10)の解のうち、基本状態のu=0を含む-90゜<u<+90゜の条件を満足する解を選択した。
【0050】
次に、数式(8)をsin vについて解くと、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、sin a≠0、cos u≠0である。数式(12)のsin uに数式(10)を代入すると共に、cos uに三角関数の公式
を代入して整理すると、
となる。数式(13)より、b=-90゜のときv=-90゜であり、b=+90゜のときv=+90゜であることがわかる。
【0051】
一方、数式(6)において、r
33に注目すると、
の関係が成り立つ。数式(14)を、上記のbとvの関係を満足するようにvについて解くと、
が得られる。
【0052】
次に、数式(6)において、r
11、r
12に注目すると、
の関係が得られる。数式(16)(17)からcos wcos vを消去すると、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、sin a≠0、cos u≠0である。さらに、数式(18)に、上述した三角関数の公式、及び数式(10)を代入し、sin wについて解くと、
となる。数式(19)をwについて解くと、
となる。ただし、b=0の場合において、基本状態でu=0、v=0となり、解がw=-aを含む(この場合において、カメラ4をヨー軸z周りに角度aだけ回動させることにより、カメラ4が被写体に向けられる)条件を満足するように解を選択した。
【0053】
以上のように、カメラ4を角度bピッチング運動させる場合には、制御部20bは各モータに信号を送り、第1モータ8を数式(15)によって計算される角度v、第2モータ10を数式(11)によって計算される角度u、第3モータ12を数式(20)によって計算される角度w回動させる。このように、本実施形態のジンバル装置2は、カメラ4に純粋なピッチング運動をさせるために、第1乃至第3モータを上記のように回動させる。例えば、把持部20に設けられた操作部20aによって、カメラ4がピッチング運動するよう操作がなされた場合には、制御部20bは数式(15)(11)(20)に従って回転角を計算し、各モータに制御信号を送る。
【0054】
次に、カメラ4を角度cだけローリングさせるために必要な各モータの回転角度u、v、wは、角度cのローリングを表す回転行列R
roll=R
x(c)の各要素を、回転行列R
gの各要素と等置することにより、数式(21)に基づいて求めることができる。
【0055】
数式(21)において、r
31、r
32に注目すると、
数式(22)(23)よりcos u sin vを消去すると、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、sin a≠0、cos a≠0である。数式(24)をsin uについて解くと、
が得られ、数式(25)をuについて解くと、
となる。なお、数式(26)は、0゜<|a|<90゜から導かれる数式(25)の解のうち、基本状態のu=0゜を含む、-90゜<u<+90゜の条件を満足する解を選択した。
【0056】
次に、数式(22)をsin vについて解くと、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、cos a≠0、-90゜<u<+90゜より、cos u≠0である。数式(27)のsin uに数式(25)を代入すると共に、cos uに三角関数の公式
を代入して整理すると、
となる。数式(28)より、c=-90゜のときv=-90゜であり、c=+90゜のときv=+90゜であることがわかる。
【0057】
一方、数式(21)において、r
33に注目すると、
の関係が成り立つ。数式(29)を、上記のcとvの関係を満足するようにvについて解くと、
が得られる。
【0058】
次に、数式(21)において、r
21、r
22に注目すると、
の関係が得られる。数式(31)(32)からsin wcos vを消去すると、
となる。なお、0゜<|a|<90゜より、sin a≠0、cos a≠0である。さらに、数式(33)に、上述した三角関数の公式、及び数式(25)を代入し、cos wについて解くと、
となる。数式(34)をwについて解くと、
となる。ただし、c=0の場合において、基本状態でu=0、v=0となり、解がw=-aを含む(この場合において、カメラ4をヨー軸z周りに角度aだけ回動させることにより、カメラ4が被写体に向けられる)条件を満足するように解を選択した。
【0059】
即ち、カメラ4を角度cだけローリング運動させる場合には、制御部20bは各モータに信号を送り、第1モータ8を数式(30)によって計算される角度v、第2モータ10を数式(26)によって計算される角度u、第3モータ12を数式(35)によって計算される角度w回動させる。このように、本実施形態のジンバル装置2は、カメラ4に純粋なローリング運動をさせるために、第1乃至第3モータを上記のように回動させる。例えば、把持部20に設けられた操作部20aによって、カメラ4がローリング運動するよう操作がなされた場合には、制御部20bは数式(30)(26)(35)に従って回転角を計算し、各モータに制御信号を送る。
【0060】
なお、カメラ4を所定の角度ヨーイング運動させる場合には、制御部20bは第3モータ12のみをその角度だけ回動させる。
【0061】
このように、制御部20bは、各軸周りの回転行列を合成して、座標変換をすることにより、カメラ4を所望の方向に向けるために必要な各モータの回転角度を計算し、各モータに制御信号を出力する。具体的には、各モータの回転軸が、ピッチ軸、ロール軸、ヨー軸方向に夫々向けられている基本的なジンバル装置の回転行列Rgcに、カメラ4の光軸Aの傾きを表す回転行列を乗じることにより、本実施形態のジンバル装置2における回転行列Rgを計算し、カメラ4の姿勢を計算する。さらに、カメラ4を所望の方向に向けるために必要な第1モータ8、第2モータ10、第3モータ12の回転角度は、回転行列Rgに基づいて計算される。
【0062】
図3に示すように、従来のジンバル装置では、カメラから近い順に、カメラをピッチ軸y周りに回動させる第1モータ8’、ロール軸x周りに回動させる第2モータ10’、ヨー軸z周りに回動させる第3モータ12’が配置され、カメラの光軸Aはロール軸xと平行にされていた。このような基本的なジンバル装置に対し、本実施形態のジンバル装置2では、
図4に示すように、カメラ4の光軸Aが角度aだけ、第1モータ8の方を向くように斜めにされている。即ち、本実施形態においては、水平面内において、カメラ4の光軸Aとロール軸x(第2モータ10の回転軸)の為す角が角度aとなるように、光軸Aが斜めにされている。
【0063】
この角度aは約45度程度に設定するのが良く、これにより、カメラ4の重心点が光軸A方向に移動した場合における第1モータ8と第2モータ10の発生トルクの負担を均等に近くすることができ、各モータの負担を軽減することができる。好ましくは、角度aは約15度乃至約75度に設定し、より好ましくは、約40度乃至約50度に設定する。また、カメラ4の光軸Aは、第1モータ8の方を向くように斜めにされるのが良い。これにより、
図2に示すように、カメラ4の後方に空間ができるため、ファインダーを覗く撮影者の視界が、第2モータ10や、第2連結部材16によって妨げられるのを防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態のジンバル装置2は、カメラ4から近い順に、カメラ4をピッチ軸y、ロール軸x、ヨー軸z周りに回動させるモータが配置され、ロール軸xに対してカメラ4の光軸Aが斜めにされている。これに対して、変形例として、各モータの回転軸を配置する順序は、適宜変更することができる。例えば、カメラ4から近い順に、ロール軸x、ピッチ軸y、ヨー軸z周りにカメラ4を回動させるモータを配置しても良い。
【0065】
本発明の第1実施形態のジンバル装置2によれば、平行軸線である第1の軸線A1、第2の軸線A2が、取付面6aと平行、且つカメラ4の光軸Aと直交する軸線ARに対して斜めに向けられているので、カメラ4の光軸A方向の重心移動に対し、より低出力なモータで対応することができる。
【0066】
また、本実施形態のジンバル装置2によれば、制御部20bは、第1、第2、第3モータを同時に回動させることにより、カメラ4をピッチング運動させる。このため、カメラ4の重心が光軸A方向に移動されたとき、カメラ4の姿勢を維持するためのトルクが複数のモータに分散され、各モータの負担を軽減することができる。
【0067】
さらに、本実施形態のジンバル装置2によれば、第1の軸線A1及び第2の軸線A2がカメラマウント部6の取付面6aと平行に向けられた平行軸線であり、制御部20bは、主として第1モータ8及び第2モータ10を同時に回動させることにより、カメラ4をピッチング運動させる。このため、第3の軸線A3は鉛直方向に向けられるので、第1モータ8、第2モータ10、第1連結部材14、第2連結部材16、及び第3連結部材18を駆動すべき第3モータ12の負担が軽減され、各モータの負担を分散させることができる。
【0068】
また、本実施形態のジンバル装置2によれば、第1の軸線A1はカメラマウント部6の取付面6aと平行に向けられた平行軸線であり、取付面6aと平行、且つカメラ4の光軸Aと直交する軸線ARと、第1の軸線A1との為す角は約45度である。このため、カメラ4の重心が光軸A方向に移動されたとき、カメラ4の姿勢を維持するためのトルクが第1モータ8と第2モータ10でほぼ均等に分散され、各モータの負担を軽減することができる。
【0069】
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態によるカメラシステム100を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態によるカメラシステムの外観を示す斜視図である。本実施形態のカメラシステムは、そのジンバル装置の第2の軸線が向けられている方向が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0070】
図5に示すように、本実施形態のカメラシステム100は、ジンバル装置102と、このジンバル装置102に取り付けられたカメラ104から構成されている。
図5に示すように、ジンバル装置102は、カメラ104を取り付けるためのカメラマウント部106と、このカメラマウント部106を、第1の軸線A1を中心に回動させる第1モータ108と、第2の軸線A2を中心に回動させる第2モータ110と、第3の軸線A3を中心に回動させる第3モータ112と、を有する。さらに、ジンバル装置102は、カメラマウント部106と第1モータ108を連結する第1連結部材114と、第1モータ108と第2モータ110を連結する第2連結部材116と、第2モータ110と第3モータ112を連結する第3連結部材118と、撮影者によって把持される支持部である把持部120と、を有する。また、カメラ104は、カメラマウント部106の取付面106aに固定される。
【0071】
また、
図5は、ジンバル装置102の基本状態を示しており、この基本状態においては、第1の軸線A1、第2の軸線A2、及び第3の軸線A3は、互いに異なる方向に向けられている。また、第1実施形態においては、第1乃至第3の軸線は互いに直交していたが、本実施形態においては、第2の軸線A2がカメラマウント部106に向けて上方に向くように、水平面に対して傾斜している。これにより、カメラ104を第2の軸線A2を中心に回動させる第2モータ110が、カメラ104よりも下方に位置するため、カメラ104の後方に撮影者の視界を遮るものがなく、撮影者はファインダーを容易に覗くことができる。
【0072】
さらに、本発明の第1実施形態のジンバル装置2においては、第1の軸線A1及び第2の軸線A2が、カメラマウント部6の取付面6aに平行な平行軸線であった。これに対し、本実施形態のジンバル装置102においては、第1の軸線A1のみが、カメラマウント部106の取付面106aに平行な平行軸線である。本実施形態においても、カメラ104は斜めに取り付けられるため、取付面106aと平行、且つカメラ104の光軸Aと直交する軸線ARは、平行軸線である第1の軸線A1に対して斜めに向けられている。
【0073】
このため、カメラ104の重心点が光軸A方向に移動された場合において、重心点に作用する重力に基づく力のモーメントを打ち消すトルクが、第1モータ108のみによって負担されることはなく、主として、第1モータ108及び第2モータ110によって負担される。これにより、本実施形態においても、カメラ104の重心点が移動された場合において、カメラ104の姿勢を維持するために必要なトルクの負担が1つのモータに集中せず、トルク負担を軽減することができる。
【0074】
また、本実施形態においても把持部120には制御部(図示せず)が内蔵され、この制御部により第1乃至第3モータが制御されている。本実施形態における各モータの回転角の制御についても、第1実施形態と同様に、回転行列を合成することにより計算することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態において、ジンバル装置は撮影者が把持して使用するように構成されていたが、台座等の任意の構造物に取り付けて使用するタイプのジンバル装置に本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、把持部はカメラの下方に配置されていたが、カメラを上方から吊り下げるタイプのジンバル装置に本発明を適用することもできる。さらに、上述した実施形態においては、制御部は把持部に内蔵されていたが、制御部は、ジンバル装置の任意の位置に内蔵させることができると共に、複数の部材に分散して内蔵することもできる。また、上述した実施形態においては、カメラはカメラマウント部の取付面に取り付けられていたが、カメラとカメラマウント部を一体としたカメラシステムを構成することもできる。
【0076】
また、上述した実施形態において、レンズ鏡筒は、画角がワイド端側に設定されたときレンズ鏡筒が最も短くなり、テレ端側に設定されたとき最も長くなるように構成されていた。これに伴い、カメラの重心は、レンズ鏡筒がワイド端側に設定されたとき最も撮影者の近くに位置し、テレ端側に設定されたとき最も撮影者から離れて位置していた。また、ジンバル装置は、レンズ鏡筒がワイド端側に設定された基本状態において、カメラの姿勢を維持するために必要な各モータの出力トルクが極小になるように構成されていた。しかしながら、設定画角と重心位置の関係が上記とは異なるカメラにも本発明を適用することもでき、また、フォーカス調整によって重心位置が移動するカメラにも本発明を適用することもできる。さらに、上述した実施形態においては、カメラの重心が最も撮影者の近くに位置する状態で、姿勢を維持するために必要な出力トルクが極小になるように構成されていたが、これ以外の重心位置で出力トルクが極小になるように、本発明のジンバル装置を構成することもできる。例えば、カメラの重心が移動する範囲の中間点において、姿勢を維持するために必要な出力トルクが極小になるように本発明を構成することも好適である。
【符号の説明】
【0077】
1 カメラシステム
2 ジンバル装置
4 カメラ
4a レンズ鏡筒
4b 前縁
6 カメラマウント部
6a 取付面
6b 前縁
8 第1モータ
10 第2モータ
12 第3モータ
14 第1連結部材
16 第2連結部材
18 第3連結部材
20 把持部(支持部)
20a 操作部
20b 制御部
100 カメラシステム
102 ジンバル装置
104 カメラ
106 カメラマウント部
106a 取付面
108 第1モータ
110 第2モータ
112 第3モータ
114 第1連結部材
116 第2連結部材
118 第3連結部材
120 把持部(支持部)