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▶ メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/26 20060101AFI20240918BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20240918BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240918BHJP
   C10M 105/54 20060101ALI20240918BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20240918BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07D301/26
C08G65/22
C09K5/04 D
C10M105/54
C10M107/38
C10N30:00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019558540
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 GB2018051124
(87)【国際公開番号】W WO2018197897
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】1706721.6
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ヘンリー・マレー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ポール・シャラット
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】松元 麻紀子
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080484(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0282137(US,A1)
【文献】McBee, E. T.; Pierce, O. R.; Kibourne, H. W.,1,3,3,3-Tetrafluoropropylene oxide,Journal of the American Chemical Society,1953年,vol.75,pp.4091-4092
【文献】Cramer, Christopher J.; Hillmyer, Marc A.,Perfluorocarbenes Produced by Thermal Cracking. Barriers to Generation and Rearrangement,Journal of Organic Chemistry,1999年,vol.64, no.13,pp.4850-4859
【文献】Schuster, Paul et al.,Biotransformation of 2,3,3,3-tetrafluoropropene (HFO-1234yf),Toxicology and Applied Pharmacology,2008年,vol.233, no.2,pp.323-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/26
C08G 65/22
REGISTRY/CAplus(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールを、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物溶液と反応させることを含む、テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを調製するための方法であって、前記2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールが、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オール及び2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-3-オールからなる群から選択され、前記2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールまたは2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-3-オールが、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンまたは3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンを、水溶液中で硫酸と反応させることを含むプロセスにおいて調製される、方法。
【請求項2】
前記3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンまたは3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンが、1234yfまたは1234zeを、酢酸および硫酸の溶液中でN-ブロモスクシンイミドと反応させることを含むプロセスにおいて調製される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン、および2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンである化合物、ならびに2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどのテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンおよび1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどの他の関連するテトラフルオロプロペンエポキシド由来のフッ素化ポリエーテルポリマーを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はまた、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンおよび2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オール、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンなどのテトラフルオロプロペンから、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロンなどの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンを調製する方法、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンなどの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンから、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールなどの2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールを調製する方法、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールからテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを調製する方法、ならびに2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンおよび1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどの他の関連するテトラフルオロプロペンエポキシド由来の部分フッ素化ポリエーテルポリマーの調製に関する。
【0003】
ポリエーテルは、重要な商業的価値を持つ重要なクラスの材料である。それらは一般に、発泡体、封止剤、界面活性剤、エラストマー、および生物医学的構成要素などの製品の製造に使用される。
【0004】
フッ素化エポキシドの重合は、当該技術分野で知られている。フッ素化エポキシドの開環重合により、油性またはグリース状のオリゴマーが生成される可能性があり、これを真空ポンプ油および高性能の潤滑剤に利用することができる。
【0005】
3,3,3-トリフルオロ-1,2-エポキシプロパンの重合は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,2010,132,16520 to 16525,Makromol.Chem.,Rapid Commun.,13,363 to 370,JP05-051445 and JP09-110980に記載されている。
【0006】
ヘキサフルオロプロピレンオキシドの重合は、例えば、EP0062325およびWO2010/101337に記載されている。
【発明の開示】
【0007】
本明細書における以前に公開された文献の列挙もしくは考察は、文献が技術水準の一部であるか、または技術常識であることの認識として必ずしも解釈されるべきではない。
【0008】
これまで、テトラフルオロプロペンエポキシドの重合は報告されていない。
【0009】
2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンおよび1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどのテトラフルオロプロペンエポキシドを得る方法、およびこれらのエポキシドを重合する方法が望ましい。
【0010】
本発明は、式[OCRRCRの部分フッ素化ポリエーテルであって、式中、nは、20~60など、5~100であり、Rは、FまたはHであり、Rは、CFであり、Rは、FまたはHであり、Rは、Hである、部分フッ素化ポリエーテルと、ポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)およびポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)などの他のポリ(テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)などのポリエーテルの調製のための方法と、を提供する。
【0011】
テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンは、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素によって調製することができ、これは次に、3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンから調製され得る。
【0012】
2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンは、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素によって調製することができ、これは次に、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンから調製され得る。
【0013】
本発明はまた、化合物3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンを提供する。
【0014】
本発明はまた、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、および3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンなどの他の3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンの調製のための方法を提供する。
【化1】
【0015】
3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンは、ブロモ酸化反応においてアシル化剤および約3未満のpKaを有する酸の存在下でテトラフルオロプロペンを臭素化剤と反応させることによって調製され得る。
【0016】
「約3未満のpKaを有する酸」という用語には、硫酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、またはそれらの混合物などの酸が含まれる。
【0017】
「アシル化剤」という用語とは、ハロゲン化アシルまたは無水アシルなどの化合物にアシル基を付加することができる任意の化合物を意味する。本発明の方法で使用され得るアシル化剤の例には、酢酸、塩化アセチル、または無水酢酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
「臭素化剤」という用語には、N-ブロモスクシンイミドまたは臭素など、二重結合を介して臭素を付加するための供給源として機能し得る任意の化合物の意味が含まれる。
【0019】
例えば、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンは、ブロモ酸化反応において酢酸および硫酸の存在下で2,3,3,3-テトラフルオロプロペンをN-ブロモスクシンイミドと反応させることによって調製され得る。
【0020】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、1234yfとしても知られている。以下、特に明記しない限り、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、1234yfと呼ばれるであろう。
【0021】
1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、1234zeとしても知られている。以下、特に明記しない限り、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、1234zeと呼ばれるであろう。1234zeの記載には、1234zeの2つの(E)および(Z)幾何異性体も含まれる。本明細書で使用される場合、「1234ze」は、100%のE異性体(0%のZ異性体)から100%のZ異性体(0%のE異性体)を含む任意の組成物を意味する。使用され得る1234ze材料の例には、材料の大部分がE異性体、例えば50%超のE異性体、より好ましくは>90%のE異性体、さらにより好ましくは>99%のE異性体であるものが含まれる。
【0022】
本発明では、1234yfまたは1234zeなどのテトラフルオロプロペンのブロモ酸化は、バッチ式でまたは連続的に実施することができる。静的ミキサ、管状反応器、撹拌タンク反応器、または撹拌気液分離容器などの任意の好適な装置を使用してもよい。
【0023】
ブロモ酸化反応からの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパン生成物は、1つ以上の精製工程に供され得る。精製は、例えば、1つ以上の蒸留、凝縮、もしくは相分離工程による所望の生成物もしくは試薬の分離、ならびに/または水もしくは水性塩基でのスクラビング、および例えば、分子ふるい、ゼオライト、もしくは他の乾燥剤での乾燥によって達成され得る。1234yfまたは1234zeなどの未反応のテトラフルオロプロペンは、反応に戻して再利用することができる。
【0024】
ブロモ酸化反応は、典型的には、出発テトラフルオロプロペンの少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%、例えば少なくとも約90%など、少なくとも約40%を、3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンに変換する。
【0025】
ブロモ酸化反応は、典型的には、大気圧の液相で行われる。約60~約100℃、例えば約80℃などの約70~約90℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用することができる。典型的には、反応圧力が大気圧よりも高い場合または低い場合は、より低い温度またはより高い温度がそれぞれ使用される。
【0026】
任意の好適な溶媒を使用してもよいし、または任意の溶媒の非存在下で反応を行ってもよい。好ましくは、溶媒は不要であり、これは、試薬が溶媒として機能する可能性があるが、追加の溶媒は使用されないことを意味する。好適な溶媒とは、反応物が溶解する溶媒を意味する。溶媒はブロモ酸化反応に対して安定的でなければならず、教示された範囲内の温度、圧力などで反応物または生成物のいずれかと反応するべきではない。
【0027】
室温および圧力では、1234yfおよび1234zeなどのテトラフルオロプロペンは気体である。それらは、酢酸などのアシル化剤、硫酸、および液体または蒸気のいずれかとしてのN-ブロモスクシンイミドなどの臭素化剤を含む溶液に供給され得る。
【0028】
本発明はまた、化合物2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールを提供する。
【0029】
本発明はまた、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンからの2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールの調製、および3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンなどの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンからの、2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパンなどの他の2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの調製のための方法を提供する。
【化2】
【0030】
2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールは、水溶液中で3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンを酸性種で加水分解することによって調製され得る。
【0031】
「酸性種」という用語には、約5未満または約3未満のpKaなど、7未満のpKaを有する化合物または分子の意味が含まれる。
【0032】
2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールは、水溶液中で3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンを酸性種、例えば硫酸で加水分解することによって調製され得る。
【0033】
酸の水溶液は、典型的には、水で希釈された酸の濃縮溶液、例えば脱イオン水から調製される。そのような調製は、当業者に周知であろう。
【0034】
本発明では、3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンの加水分解は、バッチ式でまたは連続的に実施され得る。静的ミキサ、管状反応器、撹拌タンク反応器、または撹拌気液分離容器などの任意の好適な装置を使用してもよい。
【0035】
加水分解反応からの2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オール生成物は、1つ以上の精製工程に供され得る。精製は、例えば、1つ以上の蒸留、凝縮、もしくは相分離工程による所望の生成物(複数可)もしくは試薬の分離、ならびに/または水もしくは水性塩基でのスクラビング、および例えば、分子ふるい、ゼオライト、もしくは他の乾燥剤での乾燥によって達成され得る。未反応のままの任意の3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンは、反応に戻して再利用することができる。
【0036】
加水分解反応は、典型的には、出発3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンの少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約60%、例えば約80%を、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールに変換する。
【0037】
加水分解反応は、典型的には、大気圧の液相で行われる。反応が還流することを可能にする任意の温度と圧力との組み合わせを使用してもよい。例えば、大気圧で約60℃~約400℃、例えば、約330℃などの約100℃~約350℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用してもよい。典型的には、反応圧力が大気圧よりも高い場合または低い場合は、より低い温度またはより高い温度がそれぞれ使用される。
【0038】
任意の好適な溶媒を使用し得るか、または任意の溶媒の非存在下で反応を行うことができる。好ましくは、溶媒は不要であり、これは、試薬が溶媒として機能する可能性があるが、追加の溶媒は使用されないことを意味する。好適な溶媒とは、反応物が溶解する溶媒を意味する。溶媒は加水分解反応に対して安定的でなければならず、教示された範囲内の温度、圧力などで反応物または生成物のいずれかと反応するべきではない。
【0039】
当業者であれば、適切な条件下で、ブロモ酸化および加水分解工程を同時に実施して、必要な2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オール生成物を形成することができることを理解するであろう。
【0040】
本発明の一態様では、3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンのブロモ酸化によって2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールを調製する方法は、以前に記載されるように調製された3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンを使用する。
【0041】
本発明は、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールをアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物溶液と反応させることを含む、テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを調製するための方法を提供する。例えば、本発明は、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールからの2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの調製、および2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-3-オールなどの2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールからの、1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどの他のテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの調製のための方法を提供する。
【化3】
【0042】
テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンは、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素によって調製され得る。
【0043】
2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンは、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素によって調製され得る。本発明はまた、2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンである化合物を提供する。
【0044】
典型的には、脱臭化水素は、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールまたは2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-3-オールを、水溶液中でアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、例えば脱イオン水と反応させることを含む。
【0045】
本発明では、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素は、バッチ式でまたは連続的に実施され得る。静的ミキサ、管状反応器、撹拌タンク反応器、または撹拌気液分離容器などの任意の好適な装置を使用してもよい。好ましい実施形態では、テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンは、生成される際に蒸留によって反応器から除去される。これにより、収率を最大化し、インサイチュでの重合を防止することができる。
【0046】
2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素はまた、有機種が主に一方の相に可溶性であり、無機種が別の相に可溶性である、多相反応器システムを使用して実施され得る。反応は、クラウンエーテルもしくはクリプタンドなどの相間移動触媒、またはアリコート336などの界面活性剤で促進され得る、相間での反応物の移動によって発生する。そのような接触方法は、エポキシド生成物の望ましくないインサイチュ重合を防止するのに役立つと考えられている。
【0047】
脱臭化水素反応からの粗テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン生成物は、1つ以上の精製工程に供され得る。精製は、例えば、1つ以上の蒸留、凝縮、もしくは相分離工程による所望の生成物(複数可)もしくは試薬の分離、ならびに/または水もしくは水性塩基でのスクラビング、および例えば、分子ふるい、ゼオライト、もしくは他の乾燥剤での乾燥によって達成され得る。未反応のままの任意の2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールは、反応に戻して再利用することができる。
【0048】
脱臭化水素反応は、典型的には、液相で行われる。約60~約120℃、例えば約90℃または約100℃などの約80~約110℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用してもよい。典型的には、反応圧力が大気圧よりも高い場合または低い場合は、より低い温度またはより高い温度が使用される。
【0049】
反応は、典型的には、水性環境で行われる。任意の好適な追加の溶媒を使用し得るか、または任意の追加の溶媒の非存在下で反応を行うことができる。好ましくは、追加の溶媒は不要であり、これは、試薬が溶媒として機能する可能性があるが、追加の溶媒は使用されないことを意味する。好適とは、反応物(複数可)が少なくとも部分的に溶解する溶媒の意味を含む。追加の溶媒は脱臭化水素に対して安定的でなければならず、教示された範囲内の温度、圧力などで反応物または生成物のいずれかと反応するべきではない。
【0050】
本発明はまた、アルカリ水溶液またはアルカリ土類金属の水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウムでの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンの処理による、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンなどの3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンから直接形成された、2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどのテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの調製のための方法を提供する。
【0051】
本発明では、3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンのアルカリ加水分解は、バッチ式でまたは連続的に実施され得る。静的ミキサ、管状反応器、撹拌タンク反応器、または撹拌気液分離容器などの任意の好適な装置を使用してもよい。
【0052】
加水分解反応からのテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン生成物は、1つ以上の精製工程に供され得る。精製は、例えば、蒸留、凝縮、または相分離の工程のうちの1つ以上による所望の生成物(複数可)または試薬の分離によって達成され得る。未反応のままの任意の3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンは、反応に戻して再利用することができる。
【0053】
加水分解反応は、典型的には、液相で行われる。約60~約120℃、例えば約90℃または約100℃などの約80~約110℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用してもよい。典型的には、反応圧力が大気圧よりも高い場合または低い場合は、より低い温度またはより高い温度が使用される。
【0054】
反応は、典型的には、水性環境で行われる。任意の好適な追加の溶媒を使用し得るか、または任意の追加の溶媒の非存在下で反応を行うことができる。好ましくは、追加の溶媒は必要とされず、それは、試薬(複数可)が溶媒として機能する可能性があるが、追加の溶媒が使用されないことを意味する。好適とは、反応物が少なくとも部分的に溶解する溶媒の意味を含む。追加の溶媒は加水分解に対して安定的でなければならず、教示された範囲内の温度、圧力などで反応物または生成物のいずれかと反応するべきではない。
【0055】
本発明の一態様では、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールの脱臭化水素によってテトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを調製する方法は、2-ブロモ-テトラフルオロプロパン-3-オールまたは以前に記載されるように調製された3-アセトキシ-2-ブロモ-テトラフルオロプロパンを使用する。
【0056】
本発明はまた、1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンまたは2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどのテトラフルオロプロペンオキシドの重合を介した部分フッ素化ポリエーテルポリマーの調製のためのプロセスを提供する。
【化4】
【0057】
1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンおよびポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)については、RはHであり、RはCFであり、RはHであり、RはFであり、nは、20~60などの5~100である。2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンおよびポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンについては、RはFであり、RはCFであり、RはHであり、RはHであり、nは、20~60などの5~100である。
【0058】
本発明はまた、1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンまたは2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンなどのテトラフルオロプロペンオキシドの重合によって得ることができる部分フッ素化ポリエーテルポリマーを提供する。例えば、本発明は、ポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)およびポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)を提供する。
【0059】
テトラフルオロプロペンオキシドの重合は、好ましくは、開環重合であり、約200~約250000の分子量のポリマーを生成する。オリゴマー、二量体、三量体も得ることができる。
【0060】
開環重合は、典型的には、カチオン、アニオン、または有機金属媒介重合を使用して行われるが、他の重合方法を使用してもよく、それらは当業者に知られているであろう。
【0061】
カチオン媒介重合の例は、HSO、HOSOCF、およびHClOなどの酸の使用によるものである。
【0062】
アニオン媒介重合の例には、tert-COLi、tert-COK、tert-CORb、およびtert-COCなどのアルカリ金属tert-ブトキシド、水酸化カリウム、塩化アルミニウムまたは塩化鉄などの金属塩化物、およびフッ化セシウムまたはフッ化カリウムなどの金属フッ化物の使用が含まれる。
【0063】
有機金属媒介重合の例には、Zn(C、(CZnOCH、[Zn(OCH(CZnOCH]、(Zn(OCHおよび[CZnMP][ZnMP(MPはCHOCHCH(CH)O-である)などの有機亜鉛化合物、ならびにトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、またはトリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物の使用が含まれる。
【0064】
また、Thomas et al,inJ.Am.Chem.Soc.,2010,132,16520-16525によって記載されている二金属コバルト触媒などの部位選択的、エナンチオ選択的、またはアイソ選択的触媒を使用して、立体特異的に重合反応を行うことも可能である。
【0065】
本発明では、重合は、バッチ式でまたは連続的に実施され得る。静的ミキサ、管状反応器、撹拌タンク反応器、または撹拌気液分離容器などの任意の好適な装置を使用してもよい。
【0066】
典型的には、重合は、窒素雰囲気下など、酸素の非存在下で行われる。
【0067】
1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンまたは2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンのいずれかの重合からの生成物は、1つ以上の精製工程に供され得る。精製は、例えば、1つ以上の蒸留、凝縮、もしくは相分離工程による所望の生成物(複数可)もしくは試薬の分離、ならびに/またはアセトンもしくはメタノールとの塩酸などの酸/溶媒混合物での処理、その後の水での洗浄によって達成され得る。未反応のままの任意のエポキシドは、反応に戻して再利用することができる。
【0068】
典型的には、重合は、塩酸などの酸を少量(約0.1%~約10%など)含む、メタノールまたはアセトンなどの好適な溶媒で処理することによって終了される。次に、沈殿したポリマーを濾過して洗浄し、乾燥させる。沈殿は、脱イオン水などの水の添加によって支援され得る)。
【0069】
重合反応は、典型的には、出発酸化物の少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約40%、例えば約80%の部分フッ素化ポリエーテルポリマーに変換する。
【0070】
重合反応は、典型的には、大気圧の液相で行われる。約-50℃~約100℃、例えば、約80℃または0~5℃などの約-5℃~約90℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用してもよい。典型的には、反応圧力が大気圧より高い場合または低い場合は、より低いまたはより高い温度が使用される。
【0071】
任意の好適な溶媒を使用し得るか、または任意の溶媒の非存在下で反応を行うことができる。好適とは、反応物が溶解する溶媒を意味する。追加の溶媒は、重合反応に対して安定的でなければならず、教示された範囲内の温度、圧力などで反応物または生成物のいずれかと反応するべきではない。
【0072】
当業者であれば、これらの部分フッ素化ポリエーテルが、互いに、および/またはフルオロオレフィンの他のエポキシド、例えば、1,1,1-トリフルオロ-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,2-エポキシプロパン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドと共重合され得ることを理解するであろう。
【0073】
部分フッ素化ポリエーテルは、2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンまたは1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを形成する反応と、部分フッ素化ポリエーテルを形成する反応とが、同じ反応容器中で起こるプロセスを介して得られ得る。
【0074】
例として、2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンまたは1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンを形成するための、2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールまたは2-ブロモ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン-3-オールの、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム(例えば、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液)による閉環は、ポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)またはポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)へのインサイチュ重合によって達成され得る。そのような「ワンポット」反応では、約-50℃~約100℃、例えば、約80℃または0~5℃などの約-5℃~約90℃の温度を使用することができる。より低い温度およびより高い温度を使用してもよい。典型的には、反応圧力が大気圧よりも高い場合または低い場合は、より低い温度またはより高い温度が使用される。
【0075】
1234yfまたは1234ze由来の本発明のポリマー種は、1234yfおよび1234zeに可溶性であることが見出されており、潤滑剤組成物での使用、例えば、これらのHFO流体を含む冷媒組成物との使用に好適である。
【0076】
本発明はまた、熱的および機械的安定性、潤滑性、粘度、流動点、酸化防止、および防食特性のために、潤滑剤組成物および/または熱伝達組成物における有効量での部分フッ素化ポリエーテルポリマーの使用を提供する。
【0077】
本発明はまた、潤滑油組成物ならびにエアコン、冷凍および熱伝達システムなどの熱伝達組成物を必要とする用途において、本発明のプロセスを使用して得られる部分フッ素化ポリエーテルポリマーを含む、潤滑剤組成物および熱伝達組成物の使用を提供する。部分フッ素化ポリエーテルポリマーは、一般に、潤滑剤材料および/または熱伝達化合物もしくは組成物と混和性である。そのような潤滑剤組成物は、本発明に従って得られる部分フッ素化ポリエーテルを、1つ以上の既知の潤滑剤材料と組み合わせて含むことができる。同様に、そのような熱伝達組成物は、本発明に従って得られる部分フッ素化ポリエーテルを、1つ以上の既知の熱伝達化合物または組成物と組み合わせて含むことができる。例として、本発明に従って得られる部分フッ素化ポリエーテルは、例えば熱伝達組成物において、1234yfと組み合わせて使用され得る。例えば、ポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)は、1234yfを含む組成物に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】KOHの添加が完了してから1時間後に撮影された、実施例4aの反応混合物の試料のGC質量スペクトル分析を示す。
図2】2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンが溶出し、反応の進行中に間隔を空けて試料採取されたGC質量スペクトルトレースの領域を示す。
図3】実施例4bで得られた2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの19FNMRスペクトルを示す。
図4】実施例4bで得られたポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の19FNMRスペクトルを示す。
図5a】CF基に関連する共振を含む1234yfにおける実施例4bで得られたポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の19FNMRスペクトルの領域を示し、参考のため、1234yfのスペクトルおよびポリマーのみが含まれている。
図5b】E-1234zeにおける実施例4bで得られたポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の19FNMRスペクトルを示す。
図6a】実施例5aおよび5bで使用されるようなトリフルオロメチル領域における1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの19FNMRスペクトルを示す。
図6b】実施例5aで得られたトリフルオロメチル領域におけるポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の19FNMRスペクトルを示す。
図6c】実施例5bで得られたトリフルオロメチル領域におけるポリ(1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の19FNMRスペクトルを示す。
【0079】
これより、以下の非限定的な例によって本発明を例示する。
【実施例
【0080】
実施例1:テトラフルオロプロペンのブロモ酸化によるアセトキシ-ブロモ-テトラフルオロプロパンを形成:3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンの合成
N-ブロモスクシンイミド(57.2g、0.322mol)を、コンデンサおよび温度計を取り付けた500mLのフラスコに添加した。過剰の濃縮酢酸(247mL)および濃縮硫酸(0.1当量、0.0322mol)を室温で添加した。混合物を撹拌し、80℃まで加熱した。次に、反応が非常に淡黄色に変わるまで、1234yfを圧力シリンダからフローコントローラを介して5日間にわたって断続的に溶液へと泡立てた。反応物が60℃まで冷却されたら、分液漏斗に移し、脱イオン水で希釈した。透明な油を分離し、水層をエーテルで2回洗浄した。合わせた有機物を、飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で濾過し、濃縮して、21%の収率のアセチルブロモヒドリン(25.94g、0.103mol)を得た。C13NMR(DMSO):δ=168.9、120.9、98.6、63.0、20.5、F19NMR(DMSO):δ=0.5、-58.1MS:m/z43.0、73.0、173.0、253.0
【0081】
実施例2:アセトキシ-ブロモ-テトラフルオロプロパンの加水分解によるブロモ-テトラフルオロプロパノールの形成:2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン-3-オールの合成。
濃縮硫酸(3.4mL、0.0638mol)および脱イオン水(34.4mL)を、コンデンサを取り付けた50mLの3つ口丸底フラスコに添加した。室温で撹拌しながら、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(12.84g、0.051mol)を添加した。反応物を24時間加熱還流した。冷却したら、内容物を分液漏斗に移し、エーテルで2回抽出し、合わせた有機物を飽和NaHCOで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、収率68%のアルコール(7.3g、0.0346mol)を得た。C13NMR(DMSO):δ=120.6、101.1、64.0、F19NMR(DMSO):δ=0.03、-58.2、MS:m/z69.0、159.9、189.9、209.9。
【0082】
参考例3:ブロモフルオロプロパノールの閉環によるフッ素化エポキシプロパンの形成:1,1,1-トリフルオロ-1,2-エポキシプロパンの合成
2-ブロモ-1,1,1-トリフルオロプロパン-3-オール(10g、0.0524mol)を、蒸留装置を取り付けた2つ口丸底フラスコに入れ、次に95°Cまで加熱した。水酸化ナトリウム(3g、0.0754mol)を、撹拌しながら0℃で水(12g)に溶解した。溶液が均一になったら、滴下漏斗を介して素早く撹拌しながら、2-ブロモ-1,1,1-トリフルオロプロパン-3-オールに滴下した。ヘッド温度が60°Cに到達すると、透明な液体をレシーバフラスコ(4.2g)に収集した。GC面積%:1,1,1-トリフルオロ-1,2-エポキシプロパン(52%)、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン+エチルエーテル(26%)、3-アセトキシ-2-ブロモ-1,1,1-トリフルオロプロパン(7%)、アセトン(2%)、不明(13%)。
【0083】
実施例4a:1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブロモプロパノールの閉環による2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの形成
1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブロモプロパノール(20g、0.095mol)を、ジエチルエーテル(40g)と共に3つ口丸底フラスコに入れた。この溶液を撹拌し、氷浴中で0~5℃の間まで冷却し、次に、水酸化カリウム水溶液(13gの水中に6.26gのKOH)を、約1時間かけて滴下した。混合物をさらに7時間撹拌した。KOHの添加が完了してから1時間後に試料を回収し、GC-MSによって分析した。反応混合物中の2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの存在は、ジエチルエーテル溶媒の前に溶出した種の質量スペクトル分析に基づいて確認された。図1を参照されたい。
【0084】
実施例4b:1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブロモプロパノールに閉環による2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの形成、およびポリ(3,3,3,2-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンへのインサイチュ重合
1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブロモプロパノール(8g、0.038mol)を、石油エーテル(40~60、21g)および2~3滴のアリコート336と共に3つ口丸底フラスコに入れた。溶液を還流(45℃)させた後、水酸化ナトリウム水溶液(20gの水中に1.6gのNaOH)を約1時間かけて滴下した。混合物をさらに6時間還流状態に保ち、GC-MSおよび19F NMR分光法による分析のために有機層の試料を定期的に回収した。図2は、2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンが溶出したGCトレースの領域を示す。実験の終わりに、石油エーテル溶液中の未反応の2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンが、反応混合物からの蒸留によって得られ、19F NMR分光法によって分析された。2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの19F NMRスペクトルを図3に示す。
【0085】
これらの方法によって、所望の生成物2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンが形成され、石油エーテル層に蓄積されるが、一般的な高温/塩基性条件下で重合し始め、インサイチュでポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)を形成する。
【0086】
ポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)生成物は、水洗およびジクロロメタンへの抽出の後、反応混合物の蒸留残渣から、収率3.24g(66%)の粘稠な黄色の油として得られた。ポリマー生成物の19F NMRスペクトルを図4に例示し、図4は、ポリマー材料に特徴的な広く複雑な信号を示す。
【0087】
得られたポリマー油は、1234yfおよびE-1234zeに可溶性であることがわかり、1234yfおよび/またはE-1234zeを含む熱伝達組成物におけるその有用性を確認した。
【0088】
1234yfのポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の溶液を調製し、19F NMR分光法によって分析し、これらの種におけるCF-基に関連する共鳴を含む、それらのNMRスペクトルの領域を図5aに例示する。参考のために、1234yfおよびポリマーのみのスペクトルも含まれている。
【0089】
E-1234zeのポリ(2,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の溶液を調製し、図5bに示されるように、19F NMR分光法で分析した。
【0090】
実施例5:1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパンの重合
5a:カリウムt-ブトキシド開始剤
開始剤(2g)を秤量して、溶媒(THF、52g)および1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン(30g)と共に100ml容量のオートクレーブに入れた。オートクレーブを密閉し、内容物を7時間撹拌しながら100℃まで加熱した。冷却後、内容物を回収し、溶媒を真空で除去した。残留油をジクロロメタンに溶解し、溶液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空で除去すると、粘稠な黄色の油が得られた。油の19F NMRスペクトルを、比較のために出発材料のスペクトルと共に図6bに例示する。
【0091】
5b:硫酸開始剤
1,3,3,3-テトラフルオロ-1,2-エポキシプロパン(23g)を、開始剤(98wt%、1ml)を含むドライアイスコンデンサを備えた50mlの丸底フラスコに添加した。得られた混合物を7時間撹拌し、次に過剰のエポキシドを留去した。得られた油性残留物を水で洗浄し、ジエチルエーテルに抽出した。エーテル溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、エーテルを真空で除去して、粘稠な赤色の油を得た。油の19F NMRスペクトルを、比較のために出発材料のスペクトルと共に図6cに例示する。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c