IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ティラドの特許一覧

<>
  • 特許-熱交換器のタンク構造 図1
  • 特許-熱交換器のタンク構造 図2
  • 特許-熱交換器のタンク構造 図3
  • 特許-熱交換器のタンク構造 図4
  • 特許-熱交換器のタンク構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】熱交換器のタンク構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240918BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F28F9/02 301B
F28D1/053 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020092990
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188803
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】塚原 政仁
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-061580(JP,U)
【文献】実開昭61-128588(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0308263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00-1/06
F28F 9/00-9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その底面(1)の反対側に開口(2)が設けられているタンク本体(3)のフランジ部(4)及び前記開口(2)が、シールパッキン(5)を介して、ヘッダプレート(6)に被着され、
前記ヘッダプレート(6)の周縁から前記底面(1)方向へ突設された爪部(7)が前記開口(2)側に塑性変形されて、前記フランジ部(4)の外側面(4a)に略直交するカシメ面(4b)に当接してカシメ部(7a)を形成することにより、タンク本体(3)がヘッダプレート(6)に固定される熱交換器のタンク構造において、
前記フランジ部(4)のカシメ面(4b)は、前記フランジ部(4)の外側面(4a)からタンク本体(3)の外側面(3a)に向けてシールパッキン(5)に近づく角度(α)の勾配で形成され、
前記カシメ部(7a)と前記外側面(4a)とのなす角度(θ)が鋭角に形成され、
前記カシメ部(7a)は、その内側の先端部のみに板厚方向の外側に突出する凹部(9)が形成された熱交換器のタンク構造。
【請求項2】
その底面(1)の反対側に開口(2)が設けられているタンク本体(3)のフランジ部(4)及び前記開口(2)が、シールパッキン(5)を介して、ヘッダプレート(6)に被着され、
前記ヘッダプレート(6)の周縁から前記底面(1)方向へ突設された爪部(7)が前記開口(2)側に塑性変形されて、前記フランジ部(4)の外側面(4a)に略直交するカシメ面(4b)に当接してカシメ部(7a)を形成することにより、タンク本体(3)がヘッダプレート(6)に固定される熱交換器のタンク構造において、
前記フランジ部(4)のカシメ面(4b)は、前記フランジ部(4)の外側面(4a)からタンク本体(3)の外側面(3a)に向けてシールパッキン(5)に近づく角度(α)の勾配で形成され、
前記カシメ部(7a)は、その内側の先端部のみに板厚方向の内側に突出する凸部(8)が形成された熱交換器のタンク構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱交換器のタンク構造において、
前記カシメ部(7a)は、ヘッダプレート(6)の周方向に間欠的に4以上形成され、各カシメ部(7a)間に欠切部(7b)が設けられた熱交換器のタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク本体と、その開口をシールパッキンを介して閉塞するヘッダプレートと、を有するラジエータ等の熱交換器に用いるタンク構造であって、シールパッキンの液密性を向上するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来型の熱交換器は、図5に示す如く、タンク本体3と、その開口2にシールパッキン5を介して固定したヘッダプレート6とを有する。
ここで、図5はタンク本体3とヘッダプレート6の右側のみを図示しており、左側は左右対称であるため、省略している。
タンク本体3の開口2の外周には、タンク本体3の外側面3aから小フランジ状にフランジ部4がタンク本体3の外方に向けて突設され、そのフランジ部4及び開口2がヘッダプレート6に被嵌されている。
フランジ部4は、外側面4aとそれに直交するカシメ面4bとを有する。
ヘッダプレート6は、多数の偏平チューブ10が挿通され、その外周に環状溝が形成されると共に、その環状溝の外縁からタンク本体3の底面1側に立ち上がる外周壁部6aを有する。その外周壁部6aの先端には、タンク本体3側に突設された爪部7が形成されている。その爪部7が、タンク本体3の外側面3a側に塑性変形されることにより、前記フランジ部4のカシメ面4bにカシメられ、カシメ部7aを形成する。
それによって、タンク本体3が、シールパッキン5を介して、液密にヘッダプレート6に固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図5において、例えば、タンク本体3の熱交換器に外圧が加わると、そのフランジ部4が外方に移動する。すると、ヘッダプレート6の外周壁部6aが、同図(B)の鎖線に示す如く、外方へ押し広げられ、爪部7のカシメ部7aの先端が角度β分、左上がり傾斜する変形が起こる(図示を省略した左側では、逆に爪部7のカシメ部7aの先端が右上がり傾斜する。)。それにより、カシメによる固定が緩み、タンク本体3が浮き上がり、シールパッキン5の圧縮率が低下して、タンク本体3とヘッダプレート6とのシール性が損なわれるおそれがある。
タンク本体3に内圧がかかる時も、タンク本体3がその底面1側に引っ張られ、そのフランジ部が左上がりに傾斜する。それにより、カシメ部7aには、左上がり傾斜する変形が起こる。
そこで本発明は、熱交換器のタンク構造において、タンクの内圧又外圧に対して、カシメ部7aの変形を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明は、その底面1の反対側に開口2が設けられているタンク本体3のフランジ部4及び前記開口2が、シールパッキン5を介して、ヘッダプレート6に被着され、
前記ヘッダプレート6の周縁から前記底面1方向へ突設された爪部7が前記開口2側に塑性変形されて、前記フランジ部4の外側面4aに略直交するカシメ面4bに当接してカシメ部7aを形成することにより、タンク本体3がヘッダプレート6に固定される熱交換器のタンク構造において、
前記フランジ部4のカシメ面4bは、前記フランジ部4の外側面4aからタンク本体3の外側面3aに向けてシールパッキン5に近づく角度αの勾配で形成された熱交換器のタンク構造である。
【0005】
発明は前記カシメ部7aと前記外側面4aとのなす角度θが鋭角に形成された熱交換器のタンク構造である。
【0006】
発明において、前記カシメ部7aは、その内側の先端部に板厚方向の外側に突出する凹部9が形成された熱交換器のタンク構造である。
発明において、前記カシメ部7aは、その内側の先端部に板厚方向の内側に突出する凸部8が形成された熱交換器のタンク構造である。
【0007】
明において、
前記カシメ部7aは、ヘッダプレート6の周方向に間欠的に4以上形成され、各カシメ部7a間に欠切部7bが設けられた熱交換器のタンク構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、前記フランジ部4のカシメ面4bは、前記フランジ部4の外側面4aからタンク本体3の外側面3aに向けてシールパッキン5に近づく角度αの勾配で形成されたものである。
この構成により、タンク本体3に圧力が加わったとき、タンク本体3のフランジ部4がカシメが緩む方向に傾斜したとしても、前記フランジ部4のカシメ面4bは前記角度αの勾配で形成されているため、前記フランジ部4のカシメ面4bが爪部7に当接するまでは、前記爪部7のカシメ部7aの変形を抑制できる。それ故、タンク本体3がシールパッキン5から浮き上がることを防いで、シールパッキン5の圧縮率の低下を防ぎ、タンク本体3とヘッダプレート6間の液密性を確保できる。
【0009】
発明は、カシメ部7aと外側面4aとのなす角度θが鋭角になるように形成されたものである。
この構成においては、ヘッダプレート6のカシメ部7aの先端が、シールパッキン5に近づく方向に向けてカシメ固定されている。それ故、より効果的に、タンク本体3の浮き上がりを防止でき、カシメ部7aの変形を抑制できる。
【0010】
本発明は、カシメ部7aの外側に突出する凹部9が、カシメ部7aの先端部に形成されたものである。
このような凹部9によっても、カシメ部7aの剛性を高め内圧に対する保持力を高めることができる。
【0011】
本発明は、カシメ部7aの内側の先端部に板厚方向の内側に突出する凸部8が形成されたものである。すなわち、図2に示す如く、カシメ部7aの先端部に凸部8がフランジ部4のカシメ面4b側に突出して形成されている。
この構成により、カシメ工程で爪部7を外側面4aに対し直角方向に曲折した状態で、凸部8の先端が前記角度αの勾配を有するカシメ面4bに部分的に当接することができ、前記直角方向に曲折した場合でも、良好なカシメ部7aを形成することができる。
【0012】
発明は、カシメ部7aがヘッダプレート6の周方向に間欠的に4以上形成され、各カシメ部7a間に欠切部7bが設けられたものである。このように、各カシメ部7a間に欠切部7bを設けることにより、カシメ部7aの製作を精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のタンク構造を示し(A)はその全体を示す縦断面図であって、(B)のA-A矢視断面図、(B)は同正面図、(C)は(A)のC部拡大図である。
図2】本発明の第2実施例であってタンク構造の要部を示し、そのカシメ工程の説明図であり、(A)はその要部縦断面図、(B)は同正面図、(C)は同斜視図である。
図3】本発明の第3実施例であって、(A)はその要部縦断面図、(B)は同正面図、(C)は同斜視図である。
図4】本発明の他の実施例を示す要部縦断面図。
図5】従来のタンク構造における要部拡大図であって、(A)はそのカシメ工程を示し、B)はタンクに内圧が加わったときの作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、従来の構造と同一の部品には、同一の符号を付し、その説明の重複を可能な限り省略する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の第1実施例のタンク構造を示し、一例として、エンジン冷却水冷却用のラジエータとして最適なものに関する。
同図(A)はその全体を示す縦断面図であって(B)のA-A矢視断面図、(B)は同正面図、(C)は(A)のC部拡大図である。
この例は、樹脂製のタンク本体3と、その開口2がシールパッキン5を介して被嵌されるヘッダプレート6とを有する。
タンク本体3は、その底面1と外側面3aとを有する断面溝形に形成され、その開口2の外周縁に小フランジ状のフランジ部4が外方に向けて突設されている。タンク本体3の開口2を被蔽するヘッダプレート6は、その底面に多数のチューブ挿通孔がタンク本体3の長手方向に定間隔に並列され、そこに偏平チューブ10の端部が挿通され、その挿通部がろう付固定されている。それと共に、各偏平チューブ10間にフィン11が配置され、それらの接触部間も同時にろう付されて熱交換器のコアを構成する。
【0016】
ヘッダプレート6の底面の外周には、シールパッキン5を配置する環状溝が形成されており、その環状溝の外周縁からタンク本体3側へ立ち上がる外周壁部6aが形成されている。その外周壁部6aの先端に多数の爪部7が並列されている。タンク本体3のフランジ部4には、ヘッダプレート6の外周壁部6aの内面に接する外側面4aと、爪部7がカシメられて当接するカシメ面4bと、を有する。このカシメ面4bは、図1(C)に示す如く、フランジ部4の外側面4aからタンク本体3の外側面3aに向けてシールパッキン5に近づく角度αの勾配で形成されている。カシメ面4bの勾配の角度αは、10°前後に形成すると好適である。
【0017】
そして、ヘッダプレート6の環状溝にシールパッキン5を配置し、タンク本体3がヘッダプレート6に押圧された状態で、爪部7を折り曲げて、その爪部7の先端をカシメ面4bの勾配に沿って当接する。この状態で、爪部7のカシメ部7aとフランジ部4の外側面4aとのなす角度θが鋭角になるようにカシメ固定される。
すなわち、カシメ部7aの先端はシールパッキン5に近づく方向に向いている。このカシメ部7aの先端の向きは、タンク本体3の浮き上がり方向とは逆の向きであるため、タンク本体にかかる内圧又は外圧に対してカシメ部7aの変形を効果的に抑制でき、タンク本体3とヘッダプレート6間の液密性を確保できる。
【実施例2】
【0018】
図2は、本発明の第2実施例である。
この実施例は、カシメ部7aの先端部に板厚方向の内側(フランジ部4のカシメ面4b側)に突出する凸部8が形成されたものである。フランジ部4のカシメ面4bの勾配の角度αは、第1実施例と同じである。
この構造では、図2(A)及び同図(C)に示す如く、爪部7を外側面4aに対し直角方向に曲折した状態で、凸部8の先端を角度αの勾配を有するカシメ面4bに部分的に当接することができる。外側面4aに対し直角方向に曲折した場合でも、良好なカシメ部7aを形成することができる。
【実施例3】
【0019】
次に、図3は本発明の第3実施例である。
この実施例は、カシメ部7aの先端部に板厚方向の外側に凹部9が形成されている。
フランジ部4のカシメ面4bの勾配の角度αと、爪部7のカシメ部7aとフランジ部4の外側面4aとのなす角度θは、第1実施例と同じである。
カシメ部7aの先端部に凹部9が形成されることで、カシメ部7aの先端の剛性が強まり、カシメ部7aの変形を防止できる。
【0020】
次に、図4に記載の実施例は、請求項1に記載の構成のみを有する。
ヘッダプレート6に形成された爪部7は、外側面4aに対し直角方向に曲折してカシメ部7aが形成される。その爪部7の先端には、第2実施例の凸部8や第3実施例の凹部9は形成されていない。フランジ部4のカシメ面4bの勾配の角度αは、他の実施例と同じである。
このように、カシメ部7aと外側面4aとのなす角度θが鋭角でない場合に、タンク本体3のフランジ部4がカシメ部7aの緩む方向に傾斜したとしても、フランジ部4のカシメ面4bは角度αの勾配で形成されているため、フランジ部4のカシメ面4bが爪部7に当接するまでは、前記爪部7のカシメ部7aの変形を抑制できる。
【0021】
(変形例)
図1の第1実施例では、欠切部7bに間欠的に多数のカシメ部7aが形成されたが、カシメ部7aは外周壁部6aの各側面に1つずつ配置され、各外周壁部6aの間に4つの欠切部7bが存在してもよい。
即ち、カシメ部7aはタンク本体3のフランジ部4の長手方向両側及び両端に4つ形成されたものであってもよい。
また、凸部8によりカシメ部7aの剛性が高まり、タンクの内圧に対する支持力を大きくし、耐圧性を高めることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 底面
2 開口
3 タンク本体
3a 外側面
4 フランジ部
4a 外側面
4b カシメ面
5 シールパッキン
6 ヘッダプレート
6a 外周壁部
7 爪部
7a カシメ部
7b 欠切部
8 凸部
9 凹部
10 偏平チューブ
11 フィン
θ 角度
α 角度
β 角度
図1
図2
図3
図4
図5