(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240918BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240918BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B6/46 536Q
A61B6/03 560D
A61B6/50 500C
A61B6/50 511G
(21)【出願番号】P 2020126579
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 亨
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067832(JP,A)
【文献】特開2017-189337(JP,A)
【文献】特開2019-136444(JP,A)
【文献】特開2005-028121(JP,A)
【文献】特開2017-196410(JP,A)
【文献】特開2017-189338(JP,A)
【文献】特開2016-189946(JP,A)
【文献】特開2013-176550(JP,A)
【文献】特開2006-223739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動きのある対象物を異なるタイミングで撮影した第1の画像および第2の画像を取得する画像取得部と、
前記第1の画像と前記第2の画像との位置合わせ処理を行う画像処理部と、を有し、
前記画像処理部は、
前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなるように、
推定された画素の空気の含有比率に基づいて、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換する変換処理を実行し、
前記変換処理によって変換された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を取得する第1の位置合わせ処理を実行することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、さらに、
前記対象物の周囲の領域である周囲領域について、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記周囲領域内の画素の対応関係を取得する第2の位置合わせ処理を実行し、
前記対象物の領域内の画素の対応関係と前記周囲領域内の画素の対応関係とに基づいて、前記対象物の領域と前記周囲領域の間の滑り量の分布を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、画素値を変換する前の前記第1の画像および前記第2の画像を用いて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記周囲領域内の画素の対応関係を取得する前記第2の位置合わせ処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、さらに、
前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係に基づいて、前記第1の画像の状態と前記第2の画像の状態の間での前記対象物の動き量の分
布を取得することを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなり、かつ、前記対象物の領域内の画像特徴が強調されるように、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換する前記変換処理を実行することを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなるように、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換し、さらに、
変換後の前記第1の画像および/または前記第2の画像に対し、所定のウィンドウを用いたウィンドウ変換を行うことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、
前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量に基づいて設定した第1のウィンドウを用いて、前記第1の画像に対するウィンドウ変換を行うと共に、
前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量に基づいて設定した第2のウィンドウを用いて、前記第2の画像に対するウィンドウ変換を行うことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記画像取得部は、前記第1の画像と前記第2の画像の間の状態で撮影された中間状態の画像を取得し、
前記画像処理部は、
前記中間状態の画像、前記第1の画像、および前記第2の画像の間での前記対象物の領域の画素値の統計量の差が小さくなるように、前記中間状態の画像、前記第1の画像、および前記第2の画像のうち少なくとも2つの画像の画素値を変換し、
変換された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記中間状態の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係である第1の対応関係と、前記中間状態の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係である第2の対応関係とを取得し、
前記第1の対応関係と前記第2の対応関係を統合することにより、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を示す前記第1の位置合わせ処理の結果を生成することを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、
前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を示す前記第1の位置合わせ処理の結果を取得した後、
前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の体積変化を算出し、
前記対象物の体積変化に基づいて、前記第1の画像および/または前記第2の画像の変換後の画素値を補正し、
補正された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を修正することを特徴とする請求項1~8のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、画素値の類似度に基づいて前記第1の画像と前記第2の画像の間の画素の対応付けを行うことを特徴とする請求項1~9のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記対象物は肺であり、前記第1の画像および前記第2の画像は異なる呼吸時相で撮影された画像であることを特徴とする請求項1~10のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第1の画像および前記第2の画像は異なる造影条件で撮影された画像であることを特徴とする請求項1~10のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1の画像および前記第2の画像はCTデータであることを特徴とする請求項1~12のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記第1の画像と前記第2の画像とは、互いに撮影時刻が異なる画像であることを特徴とする請求項1~13のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記画像処理部は、前記第1の画像と前記第2の画像のうち、空気領域に対応する領域の画素値を変換しないことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
動きのある対象物を異なるタイミングで撮影した第1の画像および第2の画像を取得するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像との位置合わせ処理を行うステップと、を有し、
前記位置合わせ処理において、
前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなるように、
推定された画素の空気の含有比率に基づいて、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換する変換処理を実行し、
前記変換処理によって変換された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を取得する第1の位置合わせ処理を実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の情報処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置などの医用画像撮影装置により、患者が撮像されている。そして撮像された医用画像を詳細に観察することで、患者の体内における様々な種類の臓器の解剖学的構造やその機能情報を得て、その情報を診断や治療に活用している。
【0003】
人体を構成する様々な種類の臓器の中には、周囲の組織に対して相対的に動く臓器がある。例えば、肺は呼吸運動によって動くし、心臓は血液を体内に循環させるために動く。そして、同じ臓器であってもその構造や病変の有無等により、臓器内または表面上の位置(以下、臓器内位置と称する)によって、周囲の組織に対する相対的な動き(移動の方向や移動の量)が異なることが知られている。ここで、医用画像から、対象とする臓器の臓器内位置による移動の方向や移動の量(以下、移動情報と称する)の違いを可視化(すなわち移動の方向や量の分布を可視化)したいというユーザ(医師等)の要望がある。異常な動きを有する臓器内位置を認識し、疾患や病変の発見に役立てるためである。例えば、肺の表面の各位置における肺の呼吸運動による移動情報を可視化することで、肺の表面における胸膜との癒着位置を医用画像から特定したいという要望がある。
【0004】
特許文献1では、肺を撮像した時系列の3次元画像(ボリュームデータ)に対して画像間の位置合わせを行い、肺の表面における胸膜の癒着と関連の深い、呼吸運動による表面位置の滑り量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動きのある臓器を異なるタイミングで撮影した医用画像においては、画像ごとに臓器の濃度値(画素値)が変動する可能性がある。臓器の状態によって組織内に含まれる空気や血液の量が変化したり、時間的な経過によって造影条件(例えば、造影剤の有無や造影剤の血中濃度の違いなど)が変化したりするからである。そのような濃度値の変動(相違)は、画像間の位置合わせ(すなわち画素同士の対応付け)の失敗や精度低下の原因となり得るため、問題である。特に、画素の濃度値の類似度に基づいて画像間の画素の対応付けを行うアルゴリズムの場合は、その問題が顕著となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、動きのある対象物を撮影した画像間で画素の対応付けを高精度に行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、動きのある対象物を異なるタイミングで撮影した第1の画像および第2の画像を取得する画像取得部と、前記第1の画像と前記第2の画像との位置合わせ処理を行う画像処理部と、を有し、前記画像処理部は、前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなるように、推定された画素の空気の含有比率に基づいて、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換する変換処理を実行し、前記変換処理によって変換された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を取得する第1の位置合わせ処理を実行することを特徴とする情報処理装置を含む。
【0009】
本開示は、動きのある対象物を異なるタイミングで撮影した第1の画像および第2の画像を取得するステップと、前記第1の画像と前記第2の画像との位置合わせ処理を行うステップと、を有し、前記位置合わせ処理において、前記第1の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量と前記第2の画像における前記対象物の領域の画素値の統計量との差が小さくなるように、推定された画素の空気の含有比率に基づいて、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、少なくとも一方の画像の画素値を変換する変換処理を実行し、前記変換処理によって変換された画素値に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像の間での前記対象物の領域内の画素の対応関係を取得する第1の位置合わせ処理を実行することを特徴とする情報処理方法を含む。
【0010】
本開示は、上記情報処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動きのある対象物を撮影した画像間で画素の対応付けを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態に係る情報処理システムの機器構成を示す図である。
【
図2】第一実施形態における全体の処理手順を示すフロー図である。
【
図3】被検体の3DCTデータを説明する図である。
【
図4】第二実施形態における全体の処理手順を示すフロー図である。
【
図5】
図4のステップS2040の処理手順を示すフロー図である。
【
図6】第三実施形態における全体の処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本明細書に開示の情報処理装置の好ましい実施形態について詳説する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本明細書に開示の情報処理装置の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、本明細書の開示は下記実施形態に限定されるものではなく、本明細書の開示の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本明細書の開示の範囲から除外するものではない。即ち、後述する実施例及びその変形例を組み合わせた構成も全て本明細書に開示の実施形態に含まれるものである。
【0014】
本明細書では、「画像」の語を「2次元画像」と「3次元画像(ボリュームデータとも呼ばれる)」の両方を包含する概念として用いる。また、撮影時刻が異なる複数の画像で構成された時系列データ(複数の2次元画像の組または複数の3次元画像の組)を「画像」と呼ぶ場合もある。また、「画素」の語を、2次元画像を構成する最小要素と、3次元画像を構成する最小要素(ボクセルとも呼ばれる)の両方を包含する概念として用いる。
【0015】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る情報処理システムは、医療機関における医師や技師などのユーザに対して、検査対象である被検体の胸膜の癒着状態の把握、診断を支援する機能を提供する。具体的には、肺の移動情報として、被検体の肺の運動に関する特徴量の一種である胸膜の滑り状態を容易に視認できる観察画像を生成する機能を提供する。より具体的には、呼吸により運動する被検体の肺を撮影した時系列の3DCTデータ(4DCTデー
タ、4次元CT画像)から、該被検体の肺の胸膜部分(肺輪郭部分)の動きを計測し、該部分の滑り状態を滑り量マップとして視覚化する。なお、「滑り」とは、動きのある対象物(肺など)とその周囲領域との相対的な移動であり、「滑り量マップ」は、対象物の領域と周囲領域の間(境界)の滑り量の分布を表す情報である。
【0016】
ところで、肺のように動きのある対象物を異なるタイミングで撮影して得た時系列データにおいては、対象物の濃度値(輝度値、画素値)が画像間で変動し得る。例えば、肺の場合であれば、被検体の呼吸状態(主に換気量)に依存して、肺野内の濃度値に違いがでる。濃度値の違いは画像間の位置合わせ処理の失敗や精度低下を招く可能性があるため、本実施形態では、画像間の対象物の濃度値の違いを補正したうえで位置合わせ処理を行う。具体的には、2つの画像の間での対象物領域の画素値の統計量の差が小さくなるように、一方または両方の画像の画素値を変換(補正)し、変換された画素値に基づいて2つの画像の間での対象物領域内の画素の対応関係を取得する、という処理を行う。これにより、動きのある対象物を撮影した画像間で画素の対応付けを高精度に行うことができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる情報処理システムの全体構成を示す図である。情報処理システムは、情報処理装置10、検査画像データベース30、検査画像撮影装置40を含み、これらの装置は、通信手段を介して互いに通信可能に接続されている。本実施形態においては、通信手段はLAN(Local Area Network)50で構成されるが、WAN(Wide Area Network)であってもよい。また、通信手段の接続方法は有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0018】
検査画像データベース30は、複数の患者に関する複数の検査画像とその付帯情報を保持する。検査画像とは、例えばCTやMRI等の画像診断装置で撮影した医用画像であり、2次元画像や3次元画像、または3次元画像の動画像である4次元画像などが対象となりうる。また、各画像はモノクロームやカラーなどの様々な様態の画像が対象となりうる。本実施形態における検査画像データベース30は、被検体の肺を撮影した4DCTデータを保持する。検査画像データベース30は、検査画像の付帯情報として、患者名(患者ID)や検査日情報(検査画像を撮影した日付)、検査画像の撮影モダリティ名などを保持する。また、各々の検査画像およびその付帯情報には、他との識別を可能にするために、固有の番号(検査画像ID)が付され、それに基づいて情報処理装置10による情報の読み出しが行える。
【0019】
情報処理装置10は、検査画像データベース30が保持する情報を、LAN50を介して取得する。検査画像取得部100は、検査画像撮影装置40が撮影し、検査画像データベース30が保持している被検体の検査画像を取得する。領域抽出部110は、検査画像取得部100が取得する検査画像を解析し、被検体の肺領域を抽出する。平均濃度値算出部120は、検査画像取得部100が取得する検査画像と、領域抽出部110が抽出する被検体の肺領域に基づいて、被検体の肺領域における検査画像の濃度値(画素値)の統計量として平均値を算出する。濃度値補正部130は、平均濃度値算出部120が算出する被検体の肺領域の濃度値の平均値に基づいて、検査画像取得部100が取得する検査画像の濃度値を補正した補正画像を算出する。変位場算出部140は、検査画像取得部100が取得する検査画像および、濃度値補正部130が算出する補正画像に基づいて、被検体の呼吸による変位場を算出する。マップ生成部150は、領域抽出部110が算出する被検体の肺領域および変位場算出部140が算出する被検体の変位場に基づいて、被検体の呼吸による肺輪郭の滑り量のマップを生成する。表示制御部160は、マップ生成部150が算出する滑り量マップを表示装置60に表示するための制御を行う。本実施形態では、検査画像取得部100によって、対象物の画像を取得する画像取得部が構成されている。また、領域抽出部110、平均濃度値算出部120、濃度値補正部130、変位場算出部140、マップ生成部150によって、画像の位置合わせ処理等を行う画像処理部が構
成されている。
【0020】
情報処理装置10は、プロセッサ(CPU、GPUなど)、メモリ(RAM、ROMなど)、ストレージ(HDD、SSDなど)、通信IF、入出力IFなどを備えるコンピュータにより構成することができる。その場合、
図1に示される各部の機能は、ストレージに格納されたプログラムをプロセッサが読み込み、実行することによって、実現される。なお、
図1に示す情報処理システムの構成はあくまで一例である。例えば、情報処理装置10が不図示の記憶部を有し、検査画像データベース30の機能を具備しても良い。また、情報処理装置10は、汎用のコンピュータ(パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータなど)で構成してもよいし、専用のコンピュータで構成してもよい。また、CT装置やMRI装置などのイメージングシステムが具備するコンピュータ(コンソールとも呼ばれる)に必要な機能を実装することによって、
図1の情報処理システムを実現してもよい。
【0021】
次に
図2を用いて、本実施形態における情報処理装置10による全体の処理手順を詳細に説明する。また、以下では、例として、検査画像として時系列の3DCTデータ(4DCTデータ、4次元CT画像)を用いる場合を例として説明するが、本発明の実施はこれに限定されるものではない。動きのある対象物を異なるタイミングで撮影することにより得られた複数の画像であればよい。例えば、異なる呼吸時相で被検体の肺を撮影した複数の3次元画像(ボリュームデータ)であれば、一回の検査で撮像した時系列画像(動画像)でなくてもよい。また、CT画像ではなく、MRI画像であってもよいし、超音波画像であってもよい。
【0022】
(ステップS1000):4DCTデータの取得
ステップS1000において、検査画像取得部100は、検査画像データベース30から被検体の肺を撮影した4DCTデータを取得する。本実施形態における4DCTデータとは、時系列の3次元ボリュームデータであり、被検体の呼吸による動態を撮影したデータである。より具体的には被検体の吸気位(例えば最大吸気位)と呼気位(例えば最大呼気位)を含む2時相以上の複数の3DCTデータで構成される4DCTデータを取得する。本実施形態では具体例として、3時相の3DCTデータを取得する場合を例として説明する。ここでは各時相の3DCTデータをI_t(1≦t≦3)と表す。また、本実施形態の説明では、各3DCTデータをI_t(x,y,z)と画像内の位置を引数とし、当該位置の画素値を返す関数としても表記する。また、本実施形態では、吸気位の3DCTデータがI_1、呼気位の3DCTデータがI_3、その中間の時相の3DCTデータがI_2である場合を例として説明する。
【0023】
図3A~
図3Cは、本実施形態において検査画像取得部100が取得する3時相の3DCTデータを概念的に示す図である。
図3Aの画像200は3DCTデータI_1のコロナル断面の画像であり、対象部位である肺野202の輪郭204が描出されている。
図3Bの画像210は3DCTデータI_2のコロナル断面の画像、
図3Cの画像220は3DCTデータI_3のコロナル断面の画像である。各画像の肺野202、212、222は、夫々の画像を撮影した時点での被検体の呼吸状態の違いにより画像の濃度値が異なる。なお
図3A~
図3Cは、白に近いほど高い濃度値を示すものとする。すなわち、吸気位の3DCTデータI_1の肺野202に比べて、呼気位の3DCTデータI_3の肺野222は濃度値が高くなっている。またその間の呼吸状態である3DCTデータI_2の肺野212は、肺野202と肺野222の濃度値の間の値となっている。
【0024】
なお、本実施形態では、上述のように吸気位と呼気位の2時相を含む3時相の3DCTデータを使用する場合を例として説明するが、本発明の実施はこれに限らない。被検体の呼吸による肺野の運動が捉えられるのであれば、他の呼吸状態の時相の3DCTデータを
使用しても良い。ここで、呼吸周期よりも十分に早い周期で撮影を行い、得られた複数の画像の中から所望の呼吸時相の画像を処理対象画像として抽出してもよい。また、ユーザによる操作を受け付け、それにより処理対象画像を選択してもよい。あるいは、患者の呼吸と同期させて、所望の呼吸時相のタイミングで撮影を行ってもよい。またMRIや超音波画像などの他のモダリティで撮影した時系列画像を取得する場合も、本発明の一実施形態となりうる。
【0025】
(ステップS1010):肺野領域抽出
ステップS1010において領域抽出部110は、ステップS1000で取得した複数の3DCTデータの夫々について、肺野領域を抽出する処理を実行する。3DCTデータから肺野の領域を抽出する処理は公知の画像処理手法を用いて実現できる。例えば、画素値に任意の閾値処理を施す手法でもよいし、グラフカット法をはじめとする既知のセグメンテーション手法を用いてもよい。また、Deep Learningなどのニューラルネットワークを利用したセグメンテーション(セマンティック・セグメンテーション)手法を用いてもよい。また、不図示の図形描画ソフトを用いて、ユーザが手動で肺の領域を抽出してもよいし、公知の画像処理手法で抽出した肺の領域をユーザが手動で修正した領域でもよい。本実施形態では、画素値に任意の閾値処理を施す手法を用いて、ステップS1000で取得した全ての時相の3DCTデータについて肺野領域を抽出する。具体的には、画素値が所定の閾値範囲内にあるか否かで3DCTデータ内の全画素を二値化した後、孤立点除去や平滑化などの後処理を行い、肺野領域を抽出する。そして、各時相の肺野領域の抽出結果を、マスク画像M_t(1≦t≦3)として算出する。マスク画像M_tは、3DCTデータのI_t(1≦t≦3)の夫々に関する肺野領域を表す情報であり、3DCTデータの対応する位置が肺野である場合には画素値が1、それ以外の場合には画素値が0となるデータである。なお、本実施形態の説明では、マスク画像M_tをM_t(x,y,z)と画像内の画素位置を引数とし、当該位置の画素値、すなわち当該位置が肺野の領域であるか否かの値を返す関数としても表記する。本実施形態では、M_tは3DCTデータI_tと同程度に離散化されたボリュームデータとして保持する。
【0026】
なお、上記の説明では、3DCTデータの肺野領域の抽出結果としてマスク画像を算出する場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、肺野内の画素の集合を算出しても良いし、それらを囲む輪郭位置の座標値を算出するようにしても良い。
【0027】
(ステップS1020):平均濃度値算出
ステップS1020において平均濃度値算出部120は、ステップS1000で取得した複数の3DCTデータの夫々について、ステップS1010で抽出した肺野内の領域における平均濃度値を算出する処理を実行する。具体的には、式(1)に示す演算を複数の3DCTデータの夫々について実行する。式(1)において、Ωは、3DCTデータの画像全体(全画素)を表す。C_ave_tは、3DCTデータI_tの平均濃度値である。
【数1】
【0028】
以上の処理では、各時相の3DCTデータの肺野内の画素の統計量として、平均濃度値を算出する場合を例として説明したが、統計量は平均濃度値に限らず、肺野内の画素群の画素値から取得ないし計算される代表値であれば何を用いてもよい。例えば、各時相の3DCTデータの肺野内の画素の最頻値や中央値や最大値や最小値などを算出するようにし
ても良い。また、これらの値を肺野内の領域だけから算出する場合に限らず、各時相の3DCTデータ全体の平均濃度値を算出するようにしても良い。逆に、肺野内の全画素の統計量ではなく、一部の画素の統計量を算出してもよい。
【0029】
(ステップS1030):濃度値補正
ステップS1030において濃度値補正部130は、ステップS1000で取得した複数の3DCTデータの夫々について、ステップS1020で取得した各3DCTデータにおける肺野内の平均濃度値に基づいて濃度値を補正(変換)する処理を実行する。より具体的には、全ての3DCTデータの肺野内の平均濃度値が、基準とする時相(例えば、吸気位)の3DCTデータの肺野内の平均濃度値と同一となるように、各時相の3DCTデータ全体の濃度値に対して式(2)に示す補正処理を行う。式(2)において、C_ave_1は基準時相(例えば、吸気位)の平均濃度値であり、C_ave_tは補正前の3DCTデータI_tの平均濃度値であり、I’_tは補正後の3DCTデータである。
【数2】
【0030】
式(2)の処理によって、I_t(第1の画像)における肺野領域(第1対象物領域)とI_1(第2の画像)における肺野領域(第2対象物領域)との間の画素値の統計量の差が小さくなるように、I_tの画素値が変換される。この変換された画像I’_tが、画像間の肺野領域の画素の位置合わせ(画素の対応関係の取得)に利用される。
【0031】
なお、基準とした時相(吸気位)の3DCTデータは式(2)の処理は行わずにI’_1=I_1とすることができる。また、上記では、各時相の3DCTデータ全体の濃度値を補正する場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、前記各時相の3DCTデータの肺野内の画素だけを上記同様の方法で補正するようにしても良い。また、基準とする時相は吸気位でなくてもよい。
【0032】
上記の説明では、基準とする時相を設けて、各時相の3DCTデータの肺野内の平均濃度値が、基準とする時相の3DCTデータの肺野内の平均濃度値と同一となるように補正を行う場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、基準とする時相を設けず、各時相の3DCTデータの肺野内の平均濃度値があらかじめ設定した所定の基準濃度値Crefに揃うように、全ての時相の3DCTデータを補正しても良い。その場合、式(2)のC_ave_1には、基準濃度値Crefを代入すればよい。
【0033】
(ステップS1040):肺野内の画像間位置合わせ
ステップS1040において、変位場算出部140は、濃度値補正後の複数の3DCTデータI’_t(1≦t≦3)に基づいて、吸気位の3DCTデータI_1と呼気位の3DCTデータI_3との間の肺野内の位置合わせ処理を実行する。本実施形態ではI’_1とI’_2の間の位置合わせとI’_2とI’_3の間の位置合わせを夫々実行し、それらの結果を統合することで、I’_1とI’_3の間の位置合わせ結果を得る。このように、吸気位の画像と呼気位の画像の間の位置合わせを直接計算するのではなく、中間の状態(時相)の画像を用いて間接的に計算することは、位置合わせの精度向上に有利である。すなわち、吸気位と呼気位の間では肺の移動量(位置の違い)が大きいため、画素同士の対応関係を把握することが困難であったり、対応画素の探索に失敗する可能性が高まる。その点、中間状態の画像を間に挟むことにより、移動量(位置の違い)が比較的小さい画像同士の位置合わせ処理になるため、位置合わせの容易化並びに精度向上を図ることができる。なお、中間状態の画像の数を増やすほど位置合わせは容易になるが、逆に処理時間の増大を招くため、精度と処理時間のバランスを考慮して、中間状態の画像の数を決定するとよい。
【0034】
位置合わせ処理の結果として、変位場算出部140は、変位場D_inner(x,y,z)を取得する。複数の変位場を統合する方法は公知のいずれの方法を用いても良い。D_inner(x,y,z)は、吸気位の3DCTデータI_1における肺野内の任意の三次元位置(x,y,z)を、それに対応する呼気位の3DCTデータI_3における三次元位置(x’,y’,z’)に変換するための変位量を算出する関数である。すなわち、変位場D_inner(x,y,z)は、2つの画像の間での対象物領域(肺野領域)内の画素の対応関係を表すものである。
【0035】
なお、上記のI’_1とI’_2との間の位置合わせ、およびI’_2とI’_3との間の位置合わせは、公知のいずれの画像間位置合わせ方法を用いて実行しても良い。2つの画像の間の位置合わせ方法には、例えば、画素値(濃度値)の類似度に基づいて画素の対応付けを行う方法、エッジやテクスチャに基づいて領域の対応付けを行う方法など、様々な方法がある。本実施形態では、画素値(濃度値)の類似度に基づいて画素の対応付けを行う方法を採用する。高速な処理が可能だからである。例えば、第1の画像と第2の画像の位置合わせを行う場合であれば、第1の画像の肺野領域に変形を加え、第2の画像と変形後の第1の画像の間の画素値(濃度値)の類似度を評価する、という処理を繰り返し、最も類似度が高くなる最適解を見つければよい。この方法において、3次元領域の変形は例えばFFD(Free Form Deformation)を用いて表現することができ、画素値(濃度値)の類似度はSSD(Sum of Square Difference)などで評価すればよい。
【0036】
なお、この位置合わせを行う際には、描出される肺野内の画像特徴を強調する画像処理を各画像に施し、その結果を用いて位置合わせするのが望ましい。例えば、肺野に含まれる空気や実質組織の濃度値の違い、すなわち肺野内の画像特徴を強調されるようにウィンドウ変換を行うようにしても良い。ウィンドウ変換とは、元画像のレンジの一部分のみを抽出し所定の濃度分解能に変換する処理である。抽出する範囲(ウィンドウと呼ばれる)の中心(ウィンドウレベル)と広さ(ウィンドウ幅)を変えることで、元画像中の所望の画像特徴を強調することができる。医用画像のように幅広いレンジの画像(例えば10~16ビットの画像)から表示用の画像(例えば8ビットの画像)を生成する場面などに利用される。
【0037】
例えば、空気を-1000、水を0とする一般的なCTデータの場合、ウィンドウ中心の濃度値を-700、ウィンドウ幅を1000などに設定することで肺野内の画像特徴を強調することができる。本実施形態では、このようなウィンドウ変換を行うことで肺野内の画像特徴を強調した画像を生成し、その画像に対して位置合わせ処理を行う。これにより、肺野内の位置合わせの精度向上を図ることができる。
【0038】
なお、前記のウィンドウ変換の設定は、予め所定の設定を情報処理装置10が保持するようにしても良いし、ユーザによる操作によって設定が行えるようにしても良い。また、ステップS1000で取得した3DCTデータや、検査画像データベース30が保持する付帯情報に基づいて設定するようにしても良い。
【0039】
なお、上記の説明では、ステップS1030で各3DCTデータの濃度値の補正処理を行い、ステップS1040でウィンドウ変換を行う場合を例として説明したが、これらの処理を統合した処理をステップS1040で実行するようにしても良い。すなわち、ステップS1030の処理を省略し、ステップS1040で実行するウィンドウ変換のウィンドウ中心を、各3DCTデータの夫々に関して変更して設定するようにできる。具体的には、C_ave_t(1≦t≦3)に基づき、各3DCTデータの肺野内の濃度値が同一となるようにウィンドウ中心を設定するようにできる。
【0040】
(ステップS1050):肺野外の画像間位置合わせ
ステップS1050において、変位場算出部140は、ステップS1000で取得した複数の3DCTデータI_t(1≦t≦3)に基づいて、吸気位の3DCTデータI_1と呼気位の3DCTデータI_3との間の肺野外の位置合わせ処理を実行する。肺野外とは、肺野(対象物領域)の周囲の領域である。本実施形態では、I_1とI_2の間の位置合わせとI_2とI_3の間の位置合わせを夫々実行し、それらの結果を統合することで、I_1とI_3の間の位置合わせ結果を得る。具体的な処理方法はステップS1040で説明した方法と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、肺野外の画素は呼吸による濃度値の変化が小さいため、画素値を変換する前の3DCTデータを用いるとよい。
【0041】
以上の処理により、変位場算出部140は、変位場D_outer(x,y,z)を取得する。D_outer(x,y,z)は、吸気位の3DCTデータI_1における被検体の肺野外の任意の三次元位置(x,y,z)を、それに対応する呼気位の3DCTデータI_3における三次元位置(x’,y’,z’)に変換する変位量を算出する関数である。すなわち、変位場D_outer(x,y,z)は、2つの画像の間での周囲領域内の画素の対応関係を表すものである。
【0042】
なお、上記のI_1とI_2との間の位置合わせ、およびI_2とI_3との間の位置合わせは公知のいずれの画像間位置合わせ方法を用いて実行しても良い。肺野領域の位置合わせ処理で例示したものと同じ方法を用いてもよい。なお、この位置合わせを行う際に、各画像に描出される肺野外の画像特徴を強調する画像処理を施し、その結果を用いて位置合わせするのが望ましい。例えば、肺野周辺の組織の濃度値の違い、すなわち肺野外の画像特徴が強調されるようにウィンドウ変換を行うようにしても良い。ウィンドウ中心の濃度値を0、ウィンドウ幅を400などに設定することで肺野外の軟部組織の画像特徴を強調することができる。これ以外にもウィンドウ中心の濃度値を200、ウィンドウ幅を2000などに設定することで肺野外の骨の画像特徴を強調することができる。本実施形態では、上記に例示したウィンドウ変換を行うことで肺野外の画像特徴を強調した画像を生成し、その画像に対して位置合わせ処理を行う。
【0043】
なお、前記のウィンドウ変換の設定は予め所定の設定を情報処理装置10が保持するようにしても良いし、ユーザによる操作によって設定が行えるようにしても良い。また、ステップS1000で取得した3DCTデータや、検査画像データベース30が保持する付帯情報に基づいて設定するようにしても良い。
【0044】
なお、以上の説明では、3DCTデータI_t(1≦t≦3)に基づき、肺野外の画像特徴を強調した画像を生成して、変位場D_outer(x,y,z)を算出する場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、ステップS1040と同様に濃度値変換後の3DCTデータI’_t(1≦t≦3)に基づき、肺野外の画像特徴を強調した画像を生成して、変位場D_outer(x,y,z)を算出するようにしても良い。
【0045】
(ステップS1060):滑り量マップの算出
ステップS1060において、マップ生成部150は、被検体の肺表面(肺輪郭)上での呼吸による滑り量のマップを生成する処理を実行する。この処理は、ステップS1010で算出した吸気位の肺野マスク画像M_1、ステップS1040で算出した変位場D_inner(x,y,z)、および、ステップS1050で算出した変位場D_outer(x,y,z)に基づいて実行する。より具体的には、特許文献1に記載の方法により実施することができる。すなわち、肺野マスク画像M_1の輪郭部分におけるD_out
er(x,y,z)とD_inner(x,y,z)の二つの変位場の違いを算出し、それを3次元のマップである滑り量マップS(x,y,z)として生成する。本実施形態では、滑り量マップS(x,y,z)は吸気位の3DCTデータの画像座標系での位置を引数として、当該位置における滑り量を返す関数である。より具体的には3DCTデータと同程度に離散化されたボリュームデータとして保持する。マップ生成部150は、必要に応じて、生成した滑り量マップS(x,y,z)を、不図示の記憶部、あるいは、検査画像データベース30に、被検体の検査画像と対応付けて保存する処理を行う。
【0046】
(ステップS1070):滑り量マップの表示
ステップS1070において、表示制御部160は、ステップS1060で算出した滑り量マップS(x,y,z)を表示装置60に表示させるための制御を行う。具体的には滑り量マップを観察するための画像(観察画像)を生成し、その画像を表示装置60に表示させるように制御を行う。観察画像は、例えば、被検体の3次元の肺野輪郭形状上に、滑り量マップをグレースケールやカラーマップなどで階調変換したサーフェースレンダリング画像として生成するようにできる。なお、上述の方法は本発明の一例に過ぎず、如何なる方法で滑り量マップを表示しても、または表示自体を行わなくても、本発明の一実施形態となりうる。
【0047】
以上に説明した方法により、本実施形態おける情報処理装置10の処理が実行される。これによれば、呼吸状態の異なる3DCTデータ間の位置合わせを高い精度で実行できるため、被検体の胸膜の癒着状態の把握、診断の支援に有効な滑り量マップをユーザに提供できる。
【0048】
(変形例1-1):体積変化による濃度値補正をさらに加えた変形例
第一実施形態のステップS1040の説明では、画素値変換後の画像I’_tを用いて肺野内の位置合わせを実行する具体的な一例について説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、第一実施形態で説明したS1040の処理を実行した後に、その処理結果である変位場D_inner(x,y,z)をさらに修正する処理を実行するようにできる。例えば、前記処理により算出した変位場D_inner(x,y,z)に基づいて、肺野内の局所的な体積変化を算出し、それに基づいて肺野内の各位置の画素値をさらに補正する。具体的には局所的に体積が膨張する部分の濃度値を低くし、逆に局所的に体積が収縮する部分の濃度値を高くするようにできる。そして、その補正した画像に基づいて、さらに位置合わせ処理を実行することで変位場D_inner(x,y,z)を修正するようにしても良い。また、この処理により修正された変位場に基づいて、さらに上記同様の処理を繰り返して変位場を修正するようにしても良い。これによれば、第一実施形態で説明した肺野内の位置合わせに加え、さらに被検体の肺野領域の局所的な体積変化を推定し、それに基づいた濃度値補正を行うことができるため、より高精度な位置合わせが行える効果がある。
【0049】
(変形例1-2):画素値補正方法のバリエーション
本発明の第一実施形態では、ステップS1020で複数の3DCTデータの夫々の肺野の平均濃度値を算出し、ステップS1030では、その差異を吸収するように、各画像の濃度値をシフトさせる補正を行う場合を例として説明した。しかし、本発明の実施はこれに限らない。例えば、ステップS1020では、各3DCTデータについて、肺野の平均濃度値C_ave_tに加えて濃度値の分散C_div_tも算出するようにできる。この場合、ステップS1030では全ての3DCTデータの肺野の平均濃度値と濃度値の分散が、吸気位のそれらと同一になるように、濃度値を線形変換(シフトおよびスケーリング)により補正する処理を実行するようにしても良い。なお、平均値と分散値を所望の値に一致させるための線形変換は公知の方法により実施できる。以上の方法によれば、各時相の3DCTデータについて、平均濃度値だけでなく、濃度値の分散についても吸気位の
3DCTデータと一致させることができるため、より吸気位の3DCTデータに近似した画像に補正することができる。これにより、肺野内の位置合わせをより正確に実行できる効果がある。
【0050】
また濃度値の補正の方法は上記の方法に限らない。例えば、各3DCTデータについて、肺野内の平均濃度値を吸気位の3DCTデータの肺野内の平均濃度値と一致させつつ、空気領域を表す濃度値(一般的なCTデータの場合は-1000)を変化させないように、濃度値を線形変換するようにしても良い。
【0051】
本発明の実施は、上記のように補正対象の領域に対して一様な線形変換によって濃度値の補正を行う場合に限らない。例えば、肺野内の各画素の濃度値に基づいて当該画素の空気・組織実質の混合比率を推定し、空気の含有比率に応じて濃度値の補正の大きさを変えるようにしても良い。これにより、実際の被検体の肺における呼吸に伴う局所的な換気量の変化を反映した補正が行える効果がある。
【0052】
また、上記の方法以外にも、ステップS1010で算出した各3DCTデータの肺野領域の体積の違いに基づいて濃度値の補正を行うようにしても良い。例えば、吸気位の3DCTデータにおける肺野の体積と、補正対象とする3DCTデータの肺野の体積との差異が大きいほど、濃度値の補正量を大きくするようにできる。この方法によれば、呼吸による被検体の肺野の空気の排出によって体積が減少するに従い、肺野内での実質組織の含有比率が高くなるという現象を反映した、より高精度な濃度値の補正が行える効果がある。また濃度値の補正方法は上記の方法に限らない。例えば、肺野をさらに複数の部分領域に分割し、分割した部分領域毎に異なる補正を行うようにしても良い。例えば、肺を構成する複数の肺葉の夫々を部分領域として分割し、それぞれの肺葉毎に濃度値の平均を算出し、その平均値に基づいて統合肺野の濃度値を補正するようにしても良い。あるいは、左右の肺の夫々を部分領域として分割して前記同様の補正を行うようにしても良い。これによれば、肺葉毎や左右肺毎の換気量の違いを考慮した精度の高い補正が行える効果がある。
【0053】
(変形例1-3):2時相の場合、または4時相以上の場合
本発明の第一実施形態では、ステップS1000で3時相の3DCTデータを取得する場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、ステップS1000では吸気位と呼気位の2時相の3DCTデータだけを取得するようにしても良い。この場合、ステップS1030の処理では、吸気位と呼気位の3DCTデータの濃度値を補正する。そして、ステップS1040では、それらの画像間の位置合わせにより、吸気位と呼気位の間の肺野内の変位場を算出する。また、ステップS1050では、ステップ1000で取得した2時相の3DCTデータ間の位置合わせにより肺野外の変位場を算出する。以上に説明した方法により2時相の3DCTデータを入力とした場合の処理が実施される。
【0054】
また、本発明の実施は上記の方法に限らず、ステップS1000で4時相以上の3DCTデータを取得するようにしても良い。この場合でも第一実施形態と同様の処理で被検体の滑り量マップを算出することができる。
【0055】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態について説明する。第一実施形態では、濃度値を補正した画像を生成し、その画像を用いて肺野内の位置合わせ処理を実行する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施はこれに限らない。第二実施形態では、濃度値を補正した画像を生成するのではなく、肺野内の位置合わせ処理の中で画素単位での濃度値補正を行う場合を例として説明する。
【0056】
本発明の第二実施形態に係る情報処理システムの全体構成は第一実施形態の情報処理システムの全体構成の説明として示した
図1と同様である。ここでは詳細な説明は省略する。
【0057】
図4を用いて、本実施形態における情報処理装置10による全体の処理手順を詳細に説明する。
【0058】
(ステップS2000)から(ステップS2020)
ステップS2000からステップS2020は、第一実施形態のステップS1000からステップS1020と同様の処理を行う。ここでは詳細な説明は省略する。
【0059】
(ステップS2040)
ステップS2040において、変位場算出部140は、ステップS2000で取得した複数の3DCTデータI_t(1≦t≦3)に基づいて、吸気位の3DCTデータI_1と呼気位の3DCTデータI_3との間の肺野内の位置合わせ処理を実行する。本実施形態ではI_1とI_2の間の位置合わせとI_2とI_3の間の位置合わせを夫々実行し、それらの結果を統合することで、I_1とI_3の間の位置合わせ結果を得る。上記の処理結果として変位場算出部140は、変位場D_inner(x,y,z)を取得する。複数の変位場を統合する方法は公知のいずれの方法を用いても良い。ここで、D_inner(x,y,z)は、吸気位の3DCTデータI_1における被検体の肺野内の任意の三次元位置(x,y,z)を、それに対応する呼気位の3DCTデータI_3における三次元位置(x’,y’,z’)に変換する座標変換関数である。
【0060】
本実施形態では上記のI_1とI_2との間の位置合わせ、およびI_2とI_3との間の位置合わせ処理をFFD(Free Form Deformation)法を用いて行う場合を例として説明する。ただし、本発明の実施はこれに限らず、例えばLDDMM(large deformation diffeomorphic metric
mapping)法など他の変形位置合わせ手法を用いても良い。
【0061】
本処理について、
図5の処理フローに沿って詳しく説明する。なお、以下の説明ではI_1とI_2の間の位置合わせ結果として変位場D_inner12(x,y,z)を算出する例について説明する。なお、ステップS2040が実行するI_2とI_3との間の位置合わせ処理も、以下に詳述する処理と同様にして実行できる。
【0062】
(ステップS20400):初期化
ステップS20400において、変位場算出部140は、変位場D_inner12(x,y,z)を初期化する処理を実行する。具体的にはFFDの全ての制御点の制御量をゼロベクトルに初期化する。なお、本実施例では、FFDの制御点の数をN個とし、それぞれの制御点に3次元の制御量パラメータを設定する場合を例として説明する。すなわち、全体で3N個の制御量パラメータにより変位場を表現する場合を例として説明する。本実施形態では制御量パラメータをVと表記する。ここで、VはFFDの制御量を格納する3N次元のベクトル形式のデータである。また本ステップにおいて変位場算出部140は、I_1とI_2の間の画像類似度を算出する処理を実行する。画像類似度の算出方法は公知のいずれの方法を用いても良いが、本実施形態では一例として式(3)に示すSSD(Sum of Square Difference)により画像類似度E_orgを算出するものとする。
【数3】
【0063】
式(3)において、「+C_ave_1-C_ave_2」の部分が、3DCTデータI_1とI_2の間の濃度値を揃えるための濃度値補正項である。このように本実施形態の位置合わせ処理では、画像間の類似度を算出する計算の中で、画素ごとの濃度値補正を同時に行う。なお、Wは、画像のウィンドウ変換の関数である。本実施形態では、肺野内の画像特徴を強調して画像類似度を算出するために、肺野に含まれる空気や実質組織の濃度値の違い、すなわち肺野内の画像特徴を強調されるウィンドウ変換を行う。一例としてウィンドウ中心の濃度値を-700、ウィンドウ幅を1000とした場合の変換を行う。
【0064】
以下ステップS20401からステップS20405までの処理を繰り返して実行する。
【0065】
(ステップS20401):制御点インデックスiの初期化
ステップS20401において変位場算出部140は、ステップS20403からステップS20404までの処理の対象とする制御点のインデックス値iを1に初期化する。
【0066】
(ステップS20403):制御量変動後の類似度の算出
ステップS20403において変位場算出部140はインデックスiの制御点の制御量を微小に変動させた場合の変位場を算出する。そして算出した変位場に基づいてI_1とI_2との間の画像類似度を算出する。
【0067】
具体的には、まず、制御量パラメータVのi番目の次元の要素値を微小に変動させた変動後の制御量パラメータV’_iを生成する。ここでは、δだけパラメータ値を増加させる変動を与える。
【0068】
次に変位場算出部140は、前記変動を与えた制御量パラメータV’_iに基づいて変位場D_inner12_i(x,y,z)を算出する。この処理はFFD法を用いた公知の方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
さらに変位場算出部140は、前述の方法で算出した変位場D_inner12_i(x,y,z)に基づいて3DCTデータI_2を変形させた場合のI_1との間の類似度を算出する。具体的には、式(4)の処理により画像類似度E_iを算出する。
【数4】
【0070】
なお、dx_iは、D_inner12_i(x,y,z)のx軸方向の変位量を表す。同様にdy_iはy軸方向の変位量、dz_iはz軸方向の変位量を表す。濃度値補正項およびウィンドウ変換の効果については、式(3)で述べたものと同様である。
【0071】
以上の処理により、i番目の制御量パラメータを変動させた場合の画像類似度E_iが算出される。
【0072】
(ステップS20404):インデックスのインクリメント
ステップS20404において変位場算出部140は、制御量パラメータのインデックス値iをインクリメントする処理を実行する。
【0073】
(ステップS20405):判定(i>3N)
ステップS20405において変位場算出部140は、制御量パラメータのインデックス値iが制御量パラメータの総数3Nを超えたか否かを判定する。もし超えた場合には処理をステップS20406に進め、そうでない場合には処理をステップS20403に戻す。
【0074】
以上に説明したステップS20403からステップS20405までの処理により、制御量パラメータVの全ての次元の要素値を変動させた場合の画像類似度E_i(1≦i≦3N)が求められる。
【0075】
(ステップS20406):変位場の更新
ステップS20406において変位場算出部140は、画像類似度E_orgおよびE_i(1≦i≦3N)に基づいて変位場D_inner12(x,y,z)を更新する処理を実行する。具体的には、画像類似度E_orgおよびE_i(1≦i≦3N)に基づいて制御量パラメータVを更新し、それに基づいて変位場D_inner12(x,y,z)を更新する処理を実行する。
【0076】
画像類似度E_orgおよびE_i(1≦i≦3N)に基づく制御量パラメータVの更新は、例えば最急降下法により行うことができる。すなわち、制御量パラメータVを構成する3N個の各要素の値の変動に対する画像類似度の変動量E_i-E_orgを求め、その大きさに比例して制御量パラメータVの各要素の値を補正する。そして、補正後の制御量パラメータVに基づいてD_inner12(x,y,z)を更新する。
【0077】
(ステップS20407):変位場更新後の類似度算出
ステップS20407において変位場算出部140は、ステップS20406で修正された変位場D_inner12(x,y,z)に基づいて、I_1とI_2との間の画像類似度を算出し、E_orgを更新する処理を実行する。画像類似度の算出方法は式(3)に示す計算方法と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0078】
(ステップS20408):収束判定
ステップS20408において変位場算出部140は、ステップS20407で算出した類似度に基づいて、ステップS2040の処理を終了するか否かの判定を行う。具体的には、画像類似度E_orgが所定の閾値よりも大きい場合にはステップS2040の処理を終了し、そうでない場合には処理をステップS20401に戻す。
【0079】
以上に説明したステップS20400からステップS20408の処理により、ステップS2040の処理が実行される。
【0080】
次に情報処理装置10はステップS2050からステップS2070の処理として、第一実施形態のステップS1050からステップS1070と同様の処理を実行する。詳細な説明は省略する。
【0081】
以上の処理により、本発明の第二実施形態における処理が実行される。この方法によれば、第一実施形態と比べて濃度値補正後の画像I’_tを生成して不図示のメモリに保持する必要がないため、より効率的に位置合わせ処理を実施できる効果がある。
【0082】
(変形例2-1)
本実施形態の説明では、ステップS20400において画像類似度E_orgの算出方法の一例として、式(3)に示すように、I_1の画素値と濃度値補正後のI_2の画素値とを同一のウィンドウ変換関数Wで変換する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施はこれに限らない。例えば、式(5)に示すようにI_1の画素値とI_2の画素値とを、異なるウィンドウ変換関数を用いて変換するようにしても良い。例えば、I_1用のウィンドウ変換関数W_1のウィンドウ中心をC_ave_1とし、I_2用のウィンドウ変換関数W_2のウィンドウ中心をC_ave_2に夫々設定しても良い。また、W_1のウィンドウ幅をI_1の肺野内部の濃度値の分散に基づいて設定し、W_2のウィンドウ幅をI_2の肺野内部の濃度値の分散に基づいて設定するようにしても良い。
【数5】
【0083】
また、ステップS20403において画像類似度E_iの算出方法の一例として式(4)に示す計算を行う場合を例として説明したが、式(5)と同様に、ウィンドウ変換関数W_1およびW_2を用いる式(6)の計算によりE_iを算出してもよい。
【数6】
【0084】
以上に説明した方法によれば、I_1およびI_2の夫々に肺野の内部の濃度値の分布の違いに応じたウィンドウ変換が行われるため、ステップS2040の処理として、より精度の高い位置合わせが行える効果がある。
【0085】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態は、肺の移動情報として、被検体の肺の滑り量マップを生成する第一実施形態とは異なり、肺の移動情報として、被検体の肺の動き量マップを生成する。
【0086】
本実施形態に係る情報処理システムの全体構成は第一実施形態の情報処理システムの全体構成の説明として示した
図1と同様である。ここでは詳細な説明は省略する。
【0087】
図6を用いて、本実施形態における情報処理装置10による全体の処理手順を詳細に説明する。
【0088】
(ステップS3000)から(ステップS3040)
ステップS3000からステップS3040において情報処理装置10は、第一実施形態の情報処理装置が実行するステップS1000からステップS1040と同様の処理を実行する。ここでは詳細な説明は省略する。
【0089】
(ステップS3060)
ステップS3060において、マップ生成部150は、被検体の肺表面(肺輪郭)上での呼吸による動き量のマップを生成する処理を実行する。この処理は、ステップS3010で算出した吸気位の肺野マスク画像M_1、ステップS3040で算出した変位場D_inner(x,y,z)に基づいて実行する。より具体的には、肺野マスク画像M_1の輪郭部分における変位場D_inner(x,y,z)の変位量を算出し、それを3次元のマップである動き量マップS(x,y,z)として生成する。本実施形態では、動き量マップS(x,y,z)は吸気位の3DCTデータの画像座標系での位置を引数として、当該位置における動き量を返す関数である。より具体的には、3DCTデータと同程度に離散化されたボリュームデータとして保持する。この動き量マップS(x,y,z)は、2つの時相(状態)の間での肺の動き量の分布を表すものである。マップ生成部150は、必要に応じて、生成した動き量マップS(x,y,z)を、不図示の記憶部、あるいは、検査画像データベース30に、被検体の検査画像と対応付けて保存する処理を行う。
【0090】
(ステップS3070)
ステップS3070において表示制御部160は、ステップS3060で算出した動き量マップS(x,y,z)を表示装置60に表示させるための制御を行う。具体的な制御方法は、第一実施形態のステップS1070で説明した滑り量マップの表示制御と同様にして行うことができる。詳細な説明は省略する。
【0091】
以上に説明した方法により、本実施形態の情報処理装置10の処理が実行される。これによれば、呼吸状態の異なる3DCTデータ間の位置合わせを高い精度で実行できるため、被検体の胸膜の癒着状態の把握、診断の支援に有効な動き量マップをユーザに提供できる。
【0092】
(変形例3-1)
本実施形態の説明では、ステップS3060において動き量マップを生成する場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限らない。例えば、ステップS3060の処理として肺の換気量マップを算出するようにしても良い。この場合、ステップS3040で算出した肺野内の変位場D_inner(x,y,z)に基づいて肺野内の各位置での体積の変化量の大小を可視化するようにしても良い。例えば、吸気位から呼気位への変位を表す変位場D_inner(x,y,z)を算出する本実施では、正常な肺機能を有する被検体であれば、肺野内における変位量は体積が大きく収縮する変位となる。これに対し、局所的な体積の収縮が小さい場合などには、当該箇所の肺の換気機能の障害が疑われる。本発明の実施の一例としては、そのような個所の存在をユーザが視認できるように、肺野内の変位場から局所的な体積の変化の状態を可視化する画像を生成してもよい。
【0093】
また、異なる呼吸時相で撮像した肺の3次元画像間の位置合わせを行ういずれの目的に対しても、ステップS3000からステップS3040までの処理を実施することができる。これによると、呼吸時相の違いによる肺野内の濃度値の変化に起因する位置合わせの誤差を軽減した、正確な位置合わせを行うことができる。
【0094】
[その他の実施形態]
上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の構成および範囲は上述した実施形態に限定されるものではない。複数の実施形態の処理を組み合せてもよいし、複数の変形例の処理を組み合わせてもよい。
【0095】
上述した実施形態では、肺野の画像の位置合わせに本発明を適用した場合の処理例を説明したが、本発明の適用対象は肺野の画像に限られず、動きがあり且つ画像の濃度値が変動し得る対象物であれば、本発明の位置合わせ処理を好ましく適用できる。例えば、造影条件の異なる心臓の画像の位置合わせに本発明を適用することができる。具体的には、造
影をした状態(造影剤を導入した状態)の心臓を撮影した画像と、同部位を非造影で(造影剤を導入しない状態で)撮影した画像との間の位置合わせに関して、本発明を適用してもよい。また、造影剤の血中濃度が所定値より高い状態の心臓を撮影した画像と、造影剤の血中濃度が所定値より低い状態の心臓を撮影した画像との位置合わせに関して、本発明を適用してもよい。また、肺や心臓以外の臓器の画像に対して本発明を適用してもよい。
【0096】
また、開示の技術は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェイス機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、1つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0097】
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0098】
10:情報処理装置
100:検査画像取得部
110:領域抽出部
120:平均濃度値算出部
130:濃度値補正部
140:変位場算出部
150:マップ生成部