(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/37 20200101AFI20240918BHJP
D06F 33/57 20200101ALI20240918BHJP
D06F 103/22 20200101ALN20240918BHJP
【FI】
D06F33/37
D06F33/57
D06F103:22
(21)【出願番号】P 2020154506
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】下野 暢之
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124295(JP,A)
【文献】特開2019-063381(JP,A)
【文献】特開2002-224489(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/37
D06F 33/57
D06F 103/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤タンクに収容された液剤の自動投入機能を有する洗濯機であって、
前記液剤タンクの液剤残量が所定量以下になったときに少量判定を検知する検知手段と、
洗濯運転における液剤の自動投入を行う場合の液剤投入量を、当該運転ごとの洗濯物の容量および洗濯コース設定に基づいて算出するとともに、前記少量判定が検知された後の前記液剤タンクの残量を、液剤の自動投入が行われるたびに前記液剤タンクの残量から前記液剤投入量を減算することで更新しながら管理する制御部とを有しており、
前記液剤タンクの残量をユーザに通知する残量通知として、前記検知手段が少量判定を検知した時点で液剤少量通知を行い、さらに、前記制御部が管理する前記液剤タンクの残量に基づいて、前記液剤少量通知後の残量通知を行
い、
前記制御部が、前記検知手段により十分量判定が検知された後、さらに少量判定が検知されると、洗浄通知用のタイマー計測を開始し、
前記少量判定が維持されたまま前記タイマー計測の開始から一定期間が経過すると、洗浄通知を行うことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記液剤少量通知後の残量通知として、前記制御部が管理する前記液剤タンクの残量が前記洗濯機の最大容量における洗剤使用量以下となった場合に液剤無し通知を行うことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗濯機であって、
前記残量通知を、インターネットを介して所定の通信端末に送信可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の洗濯機であって、
前記残量通知を、当該洗濯機の運転終了後、洗濯槽の開閉部が開かれた時点で当該洗濯機の発話によって行うことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤や柔軟剤などの液剤の自動投入機能を有する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や柔軟剤などの液剤を洗濯槽へ自動投入する機能を備えた洗濯機が知られている。液剤の自動投入機能を有する洗濯機では、洗濯槽へ自動投入される液剤は、予め液剤タンク(洗剤タンクや柔軟剤タンク)に収容されている。また、このような洗濯機では、通常、液剤タンクにおける残量通知を行っている。特許文献1には、液剤タンク内にフロートスイッチを設け、フロートスイッチによって残量通知を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の洗濯機は、液剤タンク内の液面低下に伴ってフロートが所定位置まで下降したときに液剤の少量判定を行い、この少量判定に伴って残量通知を行うものとなっている。しかしながら、1つのフロートスイッチでは、フロートが所定位置まで下降したときに少量判定を行うものであり、すなわち、この少量判定はフロートが所定位置まで下降したかの1段階でしか行うことができない。このため、ユーザにとっての適切なタイミングでの残量通知が困難となる。例えば、残量通知されるときの残量を少なめに設定すると、ユーザは残量通知がされた時点ですぐに補充が行えるとは限らず、次回の洗濯に支障を来す恐れがある。
【0005】
このような不都合を解消するには、液剤の残量通知を複数段階で行うことが好ましいが、複数段階での残量通知を行うためにフロートスイッチの数を増やしたり、フロートスイッチが複数段階のフロート位置を検出できるようにすることは、洗濯機のコストアップにもつながる。尚、液剤タンクにおける残量検知を、フロートスイッチ以外のセンサ類で行うことも可能であるが、他のセンサによる残量検知であっても、複数段階の位置検出には同様の問題が生じる。
【0006】
また、液剤が少量となった状態で長時間が経過すると、液剤の揮発などにより粘性が増加しやすくなり、次回の洗濯時に必要な液剤量が投入されなくなるなど、洗濯に支障を来す虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で液剤の残量に関する様々な管理や通知が行える洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である洗濯機は、液剤タンクに収容された液剤の自動投入機能を有する洗濯機であって、前記液剤タンクの液剤残量が所定量以下になったときに少量判定を検知する検知手段と、液剤の自動投入を行う場合の液剤投入量を算出するとともに、前記少量判定が検知された後の前記液剤タンクの残量を、液剤の自動投入が行われるたびに前記液剤タンクの残量から前記液剤投入量を減算することで更新しながら管理する制御部とを有しており、前記液剤タンクの残量をユーザに通知する残量通知として、前記検知手段が少量判定を検知した時点で液剤少量通知を行い、さらに、前記制御部が管理する前記液剤タンクの残量に基づいて、前記液剤少量通知後の残量通知を行うことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、検知手段による少量判定時に残量通知(液剤少量通知)を行うだけでなく、検知手段による少量判定後の残量監視により、さらなる残量通知を行うことができる。すなわち、検知手段の数を増やすことなく、1つの液剤タンクに対して1つの検知手段を設けるのみで複数段階の残量通知を行うことができる。
【0010】
また、上記洗濯機では、前記液剤少量通知後の残量通知として、前記制御部が管理する前記液剤タンクの残量が少量判定よりも更に少ない所定量以下となった場合に洗剤無し通知を行う構成とすることができる。
【0011】
また、上記洗濯機では、前記残量通知を、インターネットを介して所定の通信端末に送信可能である構成とすることができる。
【0012】
また、上記洗濯機では、前記残量通知を、当該洗濯機の運転終了後、洗濯槽の開閉部が開かれた時点で当該洗濯機の発話によって行う構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、洗濯機の発話による残量通知を、確実にユーザに聞かせることができる。
【0014】
また、上記洗濯機では、前記制御部が、前記検知手段により十分量判定が検知された後、さらに少量判定が検知されると、洗浄通知用のタイマー計測を開始し、前記少量判定が維持されたまま前記タイマー計測の開始から一定期間が経過すると、洗浄通知を行う構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、洗剤の固形化が生じやすい状態が一定期間続いた適切なタイミングで、ユーザに対しての洗浄通知を行うことができる。
【0016】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様である洗濯機は、液剤タンクに収容された液剤の自動投入機能を有する洗濯機であって、前記液剤タンクの液剤残量が所定量以下になったときに少量判定を検知する検知手段を有しており、前記検知手段により十分量判定が検知された後、さらに少量判定が検知されると、洗浄通知用のタイマー計測を開始し、前記少量判定が維持されたまま前記タイマー計測の開始から一定期間が経過すると、洗浄通知を行うことを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、洗剤の固形化が生じやすい状態が一定期間続いた適切なタイミングで、ユーザに対しての洗浄通知を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の洗濯機は、検知手段による少量判定と、制御部による少量判定後の処理により、1つの液剤タンクに対して1つの検知手段を設けるのみで液剤の残量に関する様々な管理や通知を行うことができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態を示すものであり、洗濯機の外観例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の洗濯機にて使用される液剤投入ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図3A】洗剤タンクにおける検知手段を模式的に表した図面であり、洗剤が十分にある状態を示している。
【
図3B】洗剤タンクにおける検知手段を模式的に表した図面であり、洗剤が少量判定されるときの状態を示している。
【
図4】洗剤の残量通知手法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まずは、本発明が適用される洗濯機1の外観例、および洗濯機1に使用される液剤投入ユニット10の基本構成について簡単に説明する。
図1は、洗濯機1の外観例を示す斜視図である。
図2は、液剤投入ユニット10の外観を示す斜視図である。尚、本実施の形態において、液剤とは、液剤洗剤と柔軟剤などの衣類処理剤とを指す。また、
図1で示す洗濯機1はドラム型洗濯機を例示しているが、本発明において洗濯機の種類は特に限定されるものではない。本発明が適用される洗濯機は、液剤の自動投入機能を有する洗濯機であれば、縦型洗濯機であってもよい。
【0021】
図1に示すように、洗濯機1では、正面側(ドア2(洗濯槽の開閉部)の配置されている側)から見て上部左側付近において、洗濯機1の内部に液剤投入ユニット10が配置される。洗濯機1の上面には、蓋3および蓋4が配置されている。蓋3を開くと、液剤投入ユニット10の洗剤投入部131および柔軟剤投入部132(
図2参照)が露出し、ユーザが洗剤(粉末洗剤を含む)や柔軟剤を手動投入することができる。また、蓋4を開くと、洗剤タンク110および柔軟剤タンク120(
図2参照)が露出し、ユーザが洗剤タンク110または柔軟剤タンク120を洗濯機1に対して抜き差しできるようになる。これにより、ユーザが洗剤タンク110または柔軟剤タンク120を取り外して液剤補充を行うことができる。
【0022】
図2に示すように、液剤投入ユニット10は、ケース本体100に、洗剤タンク110、柔軟剤タンク120、および手動投入用ケース130を装着可能となっている。洗剤タンク110および柔軟剤タンク120は、洗濯機1の洗濯槽へ自動投入される液剤を収容するための液剤タンクであり、洗剤タンク110には液体洗剤が収容され、柔軟剤タンク120には柔軟剤などが収容される。手動投入用ケース130は、ユーザが洗剤や柔軟剤を手動投入するためのケースであり、洗剤投入部131および柔軟剤投入部132を有している。
【0023】
液剤投入ユニット10の後方には、弁機構140が取り付けられている。弁機構140は、液剤投入ユニット10に対して供給される水道水を流入させるための水道供給口141を有している。また、弁機構140の内部には、複数の電磁弁が備えられており、これら複数の電磁弁の開閉を適宜制御することにより、液剤投入ユニット10に対して異なる経路で水道水を供給できるようになっている。
【0024】
また、液剤投入ユニット10は、洗濯機1に装着された状態において、水道供給口141を洗濯機1の上面後部付近で露出させている。これにより、水道供給口141は、水道蛇口とホースで繋がれ、水道水の供給を受けることができるようになっている。
【0025】
洗濯機1において洗濯槽への液剤の自動投入が行われる場合、液剤投入ユニット10では、水道供給口141から図示しない液剤交換室に給水され、この給水に伴って液剤タンク(洗剤タンク110または柔軟剤タンク120)から液剤が液剤交換室に引き込まれる。液剤交換室に引き込まれた液剤は、水道水と共に洗濯槽へ投入される。このとき、液剤の投入量は、洗濯物の容量や洗濯コースなどによって決定される量の液剤が投入できるようになっている。尚、液剤の自動投入における具体的な投入方法は、本発明において特に限定されるものではなく、公知の如何なる方法であっても適用可能である。
【0026】
続いて、本発明の特徴である液剤タンクの残量検知方法について説明する。以下に説明する残量検知方法は、洗剤タンク110の残量検知、または柔軟剤タンク120の残量検知の何れにも適用できるものであるが、ここでは洗剤タンク110の残量検知を例示して説明を行う。
【0027】
図3Aおよび
図3Bは、洗剤タンク110において少量判定を行う検知手段を模式的に表した図面であり、
図3Aは洗剤が十分にある状態、
図3Bは洗剤が少量判定されるときの状態を示している。
【0028】
図3Aおよび
図3Bに示すように、洗剤タンク110は、磁石を内包したフロート150およびリードスイッチ151から構成されるフロートスイッチを検知手段として有している。すなわち、洗剤タンク110のタンク内には液体洗剤の液面の変動に伴って上下動するフロート150が配置されており、洗剤タンク110のタンク外(例えばタンク底面の下部)にはリードスイッチ151が固定配置されている。
【0029】
洗剤タンク110の洗剤が十分にある状態(
図3Aの状態)では、フロート150がリードスイッチ151から離れた位置となり、リードスイッチ151の出力はOFFとなる。一方、洗濯時の洗剤の使用に伴い、洗剤タンク110内の洗剤が減少して所定量以下になると、フロート150がリードスイッチ151に近づき、リードスイッチ151の出力はONとなる。
【0030】
図3Bは、リードスイッチ151の出力がOFFからONに切り替わるときの状態を示している。すなわち、
図3Bの例では、洗剤タンク110内の液面の高さがH1のときに、リードスイッチ151の出力がOFFからONに切り替わる。これにより、洗濯機1では、洗剤タンク110における洗剤残量が、液面高さH1に対応する所定量となったときに洗剤の少量判定を検知することができ、洗濯機1のユーザに対して洗剤の補充を促すための洗剤少量通知を行うことができる。
【0031】
尚、洗剤タンク110の洗剤の少量判定を行う検知手段として、上述したフロートスイッチは一例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、検知手段としては、例えば、液体検出センサ(タンク内の所定位置に配置され、検出部がタンク内の液剤に触れているか否かで出力が切り替わる)や光学センサ(タンクの側面などに配置され、タンク内の液面が所定高さを超えているか否かで出力が切り替わる)などの他のセンサ類も使用可能である。但し、本発明で使用される検知手段は、洗剤タンク110の洗剤量が所定量以上か否かによって出力が2値の間で切り替わる(出力の切り替わりが1段階のみ)簡易なものである。
【0032】
このため、本実施の形態に係る洗濯機1は、検知手段の出力による少量判定に、制御的な手法を組み合わせて、複数段階の残量通知を行うことを特徴とする。
図4は、本実施の形態に係る洗剤の残量通知手法を説明するフローチャートである。尚、以下の残量検知手法における制御は、洗濯機1において図示しない制御部によって行われる。
【0033】
洗濯機1において洗濯が行われる場合、洗濯槽に投入された洗濯物の容量を測定する容量センシングが行われる(ST1)。このとき、洗濯機1においては、洗剤基準量(洗濯物30L当りの洗剤量)、洗剤投入コース設定(多め、少なめなど)、および洗剤の自動投入設定が予め設定されているものとする。
【0034】
容量センシングが終了すると、洗剤基準量、洗剤投入コース設定、および容量センシングによる布量から、自動投入による洗剤投入量Xnが算出される(ST2)。さらに、算出された洗剤投入量Xnに基づき、洗濯槽への洗剤自動投入制御が実施される(ST3)。
【0035】
洗剤自動投入制御が終了した時点で、検知手段による少量判定の有無が確認される(ST4)。すなわち、検知手段として上述したフロートスイッチが用いられる場合、リードスイッチ151の出力がONであれば洗剤の少量判定有りとなり、出力がOFFであれば洗剤の少量判定無しとなる。洗剤の少量判定が無ければ(ST4でNo)、洗剤タンク110には十分な洗剤が残っている。この場合、洗濯機1は、特に洗剤残量に関する通知などは行わず、設定された洗濯運転(ST11)を実行した後、処理を終了する。
【0036】
一方、洗剤の少量判定が有れば(ST4でYes)、前回の洗濯実行時における少量判定の有無が確認される(ST5)。このため、洗濯機1では、検知手段による少量判定の有無が確認されるたびにその判定結果がメモリ(不揮発性メモリ)に記憶される。すなわち、検知手段による少量判定がされた後、洗剤タンク110への洗剤補充が行われない限りは少量判定の判定結果がメモリに保存され続けるが、洗剤タンク110への洗剤補充がなされて洗剤タンク110内の残量が少量判定となる所定量を超えれば少量判定は解除される。
【0037】
前回の判定では少量判定がされておらず、今回の判定で少量判定がされた場合は(ST5でNo)、今回のST3の洗剤自動投入によって、洗剤タンク110の洗剤量が少量判定となる所定量を下回ったことになる。尚、検知手段により少量判定が出されるときの所定量は、洗剤タンク110の満量に対して十分に少ない洗剤量であり、かつ、少量判定が出された時点で直ちに洗剤補充の必要が生じないように、洗剤基準量(平均的な1回の洗濯に使用する洗剤量)で複数回の洗濯が行える量とすることが好ましい。例えば、洗剤タンク110の満量が600mlであり、洗剤基準量が30mlである場合、少量判定となる所定量は140ml程度とすることが考えられる。
【0038】
ST5の判定でNoの場合、洗濯機1は、ユーザに対して洗剤の残量が少量となったことの通知(洗剤少量通知)を行う(ST6)。さらに、洗濯機1の制御部では、洗剤タンク110の残量Ynをメモリにて管理しており、この残量Ynを予め決められた残量値Y0に設定する(ST7)。ここでの残量値Y0は、少量判定となる所定量(例えば、140ml)であってもよく、あるいは、少量判定となる所定量からST2で算出された洗剤投入量Xnを減算したものであってもよい。また、洗剤タンク110において、洗剤タンク110から吸い出すことのできない限界吸込残量がある場合には、この限界吸込残量を少量判定となる所定量から減算して残量値Y0としてもよい。
【0039】
ST6での洗剤少量通知においては、その通知方法が特に限定されるものではないが、例えば、洗濯機1がIoT(Internet of Things)機器である場合には、洗濯機1からインターネットを介して、ユーザの持つスマートフォン(所定の通信端末)などに洗剤少量通知(例えば、ノーティフィケーション通知)を行うようにしてもよい。あるいは、洗濯機1の発話機能によって、ユーザに通知を行ってもよい。
【0040】
尚、洗濯機1は、洗剤タンク110の残量を示す表示ランプを備えており、この表示ランプは、検知手段によって少量判定がされている間は、表示ランプが点滅状態に維持される(検知手段によって少量判定がされていない間は、表示ランプが点灯状態に維持される)。ST7の後は、洗濯機1は、設定された洗濯運転(ST11)を実行した後、処理を終了する。
【0041】
ST5の判定でYesの場合には、今回のST3の洗剤自動投入の前に、洗剤タンク110の洗剤量が既に少量判定となる所定量を下回っていたことになる。この場合は、洗剤タンク110の残量Ynの更新を行う(ST8)。具体的には、前回の洗濯時にメモリに記憶された残量Yn-1から今回の洗濯における洗剤投入量Xnを減算したものを、新たな残量Ynとして更新する。すなわち、少量判定がされた後、洗剤の補充がされないまま洗剤自動投入での運転が続けられた場合、洗剤自動投入を行うたびにメモリに保存されている残量Ynから洗剤投入量Xnが減算されていく。
【0042】
ST8で残量Ynが更新された後は、さらに、更新後の残量Ynが所定量以下になったか否かが判定される(ST9)。ここで、残量Ynが所定量以下でない場合は(ST9でNo)、洗濯機1は、設定された洗濯運転(ST11)を実行した後、処理を終了する。この場合にも、ST6と同様の洗剤少量通知を行って、ユーザに洗剤の補充を促してもよい。
【0043】
一方、残量Ynが所定量以下である場合は(ST9でYes)、洗剤タンク110において洗剤無しと判定され、洗濯機1は、ユーザに対して洗剤タンク110内の洗剤が無くなったことの通知(洗剤無し通知)を行う(ST10)。所定量としては、洗剤基準量としてもよく、または、洗濯機1の最大容量における洗剤使用量としてもよい。
【0044】
ST10での洗剤無し通知においては、洗濯機1がIoT機器である場合には、洗濯機1からインターネットを介して、ユーザの持つスマートフォンなどに洗剤無し通知(例えば、ノーティフィケーション通知で、洗剤少量通知のときよりも表現を強めとする)を行うようにしてもよい。また、洗剤タンク110の残量を示す表示ランプは、ST9で残量が所定量以下となったことが検知された時点で、点滅から急速点滅に変更されてもよい。ST10の後は、洗濯機1は、設定された洗濯運転(ST11)を実行した後、処理を終了する。
【0045】
以上のように、本実施の形態に係る洗濯機1では、検知手段による少量判定時に残量通知(洗剤少量通知)を行うだけでなく、検知手段による少量判定後の残量監視により、さらなる残量通知(例えば、洗剤無し通知)を行うことができる。すなわち、検知手段の数を増やすことなく、1つの液剤タンクに対して1つの検知手段を設けるのみで複数段階の残量通知を行うことができる。これにより、ユーザに洗剤が少量となったことを通知するだけでなく、次回分の洗剤が不足している状態を通知することができるため、ユーザが洗剤を補充する期間を与えることができ、ユーザにとって利便性の高い残量通知を行うことができる。また、実際に投入した洗剤の量を減算して残量を管理するので、ユーザによって洗濯物の量が異なっても、それぞれのユーザは、少量通知からあと何回洗濯が可能かを容易に推測できるため、ユーザを不安にさせることを防止できる。
【0046】
〔実施の形態2〕
図4のフローでは、ST6またはST10で行う残量通知を、洗剤の少量判定や洗剤無しが判定された時点で行っている。すなわち、ST6またはST10の残量通知が、洗濯機1における洗濯運転(ST11)の前に行われている。
【0047】
しかしながら、これらの残量通知を洗濯機1の発話によって行う場合には、洗濯機1における洗濯運転後、ユーザが洗濯物を取り出すために洗濯機1のドア2を開いた時点(もしくは、ユーザが音声用の操作ボタンを押した時点)で残量通知を行うようにしてもよい。この場合、洗濯機1の発話による残量通知を、確実にユーザに聞かせることができる。
【0048】
〔実施の形態3〕
図4のフローにおいて、ST9で洗剤無しが判定された場合、洗濯機1は、この判定結果をメモリに記憶し、洗剤タンク110の洗剤補充が行われて少量判定が解除されるまで洗剤無しの判定結果を維持する。そして、洗濯機1は、洗剤無しの判定結果が記憶されている場合には、洗剤自動投入制御を受け付けないようにしてもよい。具体的には、洗剤自動投入が設定された運転モードが選択されたときに洗濯機1の発話によって案内を行ったり、洗剤自動投入を設定するキー操作自体を不可としたりすることが考えられる。
【0049】
これにより、洗剤無しの状態で洗剤自動投入が設定された運転が行われ、洗剤が投入されることなく洗濯が実行されるといった不都合を回避することができる。
【0050】
〔実施の形態4〕
図4のフローでは、検知手段による洗剤の少量判定後も、洗剤タンク110内の残量Y
nが更新され続ける。そして、ST2で洗剤投入量X
nが算出されたとき、この洗剤投入量X
nがその時点での残量Y
nよりも多かった場合は、その旨を発話などでユーザに報知してもよい。これにより、ユーザは、洗剤タンク110内の洗剤残量が必要な洗剤投入量よりも少ないことを認識でき、自動投入から手動投入に切り替えたり、不足の洗剤を手動投入によって追加したりすることができる。
【0051】
〔実施の形態5〕
洗剤タンク110内の洗剤が長期間放置されると、水分の蒸発や溶剤成分の揮発などによって洗剤が固形化し、洗剤タンク110における洗剤吸出し口や洗濯機1内における洗剤供給径路が詰まる虞がある。また、洗剤の固形化は、洗剤タンク110内の洗剤が少量である場合に発生しやすい。本実施の形態5に係る洗濯機1は、洗剤タンク110の洗剤残量検知に基づき、適切なタイミングで洗浄通知(タンク洗浄通知および経路洗浄通知)を行うものである。すなわち、洗剤タンク110における検知手段(例えばフロートスイッチ)が少量判定を行った後、所定の期間、洗剤補充が行わなければ、これを検知して洗浄通知を行う。尚、このような洗浄通知は、当然ながら、洗剤タンク110だけでなく柔軟剤タンク120に対しても行える。以下に、洗剤タンク110を例として、洗浄通知の制御方法を例示する。
【0052】
まず、洗剤タンク110に対する洗浄通知制御は、検知手段(例えばフロートスイッチ)がタンク内の洗剤残量に対して十分量判定(フロートスイッチの出力がOFF)を一度検知した後に制御が開始される。これは、洗剤タンク110が使用されていない状態では、検知手段は少量判定(フロートスイッチの出力がON)を検知することになるため、そのような状態で洗浄通知が出されることを防ぐためである。
【0053】
検知手段により十分量判定が検知された後、さらに少量判定が検知されると、洗濯機1における制御部は、洗浄通知用のタイマー計測を開始する。そして、少量判定が維持されたまま、タイマー計測の開始から一定期間(例えば14日)が経過すると、タンク洗浄や経路洗浄をユーザに対して促す洗浄通知を行う。洗剤残量が少量になると、面積当たりの揮発量が増加し、洗剤が固形化しやすくなる。このため、洗剤量が少量になってから一定期間後に洗浄通知を行うことで、洗剤の固形化が生じにくいタイミングでの洗浄通知が抑制され、適切なタイミングでの洗浄通知を行うことができる。
【0054】
洗浄通知用のタイマーは、ユーザの操作によって経路洗浄が行われた場合や洗剤タンク110に洗剤補充が行われた場合にリセットされる。この場合の経路洗浄は、洗濯機1が洗剤供給径路の自動洗浄を行う洗浄モードを有しており、ユーザの操作によってその洗浄モードが選択実行された場合に、経路洗浄が行われたと判定できる。また、洗剤タンク110への洗剤補充は、検知手段が十分量判定を検知することで洗剤補充が行われたと判定できる。洗剤タンク110への洗剤補充が行われると、面積当たりの揮発量が減少し、洗剤が固形化しにくくなるため、洗浄通知用のタイマーがリセットされる。
【0055】
また、本実施の形態5に係る洗濯機1では、検知手段により十分量判定が検知され続けている場合であっても、最初の十分量判定検知から所定期間(例えば、3か月)経過すると経路洗浄を促す通知を行うようにしてもよい。これは、十分量判定が長期にわたって検知され続ける場合は、洗剤を長期にわたって放置している可能性があり、長期間の放置によって洗剤が固形化する恐れがあるためである。尚、十分量判定が長期にわたって検知され続ける場合の洗浄通知は、洗浄通知が出されるまでの所定期間を洗濯機1の周囲環境温度などに応じて変更させてもよい。例えば、夏場などの周囲環境温度が高い時期は所定期間を短く(例えば3か月)、冬場などの周囲環境温度が低い時期は所定期間を長く(例えば4か月)してもよい。
【0056】
さらには、十分量判定が長期にわたって検知され続ける場合の洗浄通知は、所定期間が経過した時点で直ちに行うのではなく、所定期間の経過後、最初に少量判定が検知された時点で洗浄通知を行うようにしてもよい。これにより、洗剤タンク110の残量が十分量であるタイミング(タンクなどの洗浄が行いにくいタイミング)で洗浄通知が出されることを防止できる。
【0057】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 洗濯機
2 ドア(洗濯槽の開閉部)
3 蓋
4 蓋
10 液剤投入ユニット
100 ケース本体
110 洗剤タンク
120 柔軟剤タンク
130 手動投入用ケース
131 洗剤投入部
132 柔軟剤投入部
140 弁機構
141 水道供給口
150 フロート(検知手段)
151 リードスイッチ(検知手段)