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  • 特許-巻回体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】巻回体
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/18 20060101AFI20240918BHJP
   B65H 75/28 20060101ALI20240918BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B65H75/28
B65H75/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160821
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053926
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-281637(JP,A)
【文献】特表2015-530335(JP,A)
【文献】特開2018-199566(JP,A)
【文献】特開昭62-211276(JP,A)
【文献】実公昭45-027585(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00-75/32
B65H 19/00-19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状芯材に長尺可撓性シートが巻き付けられてなる巻回体であって、
前記長尺可撓性シートの巻き始め端部の表面と、当該巻き始め端部から離れた円柱状芯材外周面とを接合する薄膜テープと、
前記薄膜テープの表面側に位置し、前記長尺可撓性シートの巻き始め端部を覆う帯状軟質フォームとを備え
該長尺可撓性シートの厚みが1.5~10mm、
該薄膜テープの厚みが0.01~0.5mm、
該帯状軟質フォームの厚みが0.2~25mm、
である巻回体。
【請求項2】
前記長尺可撓性シートの巻き始め端部の側面と、前記円柱状芯材外周面と、前記薄膜テープとによって囲まれた領域に空隙を有することを特徴とする請求項1記載の巻回体。
【請求項3】
前記帯状軟質フォームは、前記長尺可撓性シートの厚みに対し、0.5~5倍の厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の巻回体。
【請求項4】
前記帯状軟質フォームは、密度0.04g/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の巻回体。
【請求項5】
前記長尺可撓性シートの巻き始め端部から、薄膜テープが円柱状芯材外周面に接する地点までの距離は、2~50mmであることを特徴とする請求項1に記載の巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な巻回体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等の各部位を被覆する長尺可撓性シートは、円柱状芯材に巻き付けられた巻回体の形態で施工現場に搬入され、施工の際には、必要な長さを巻き出して使用されている。このような巻回体では、図1に示すように、シート巻き始め端部の外側に位置する2巻き目以降の部分に段差が生じ、施工の際、巻き出したシートにしわが生じやすい。
【0003】
このような不具合を改善する手法として、特許文献1には、芯材に凹部を設け、当該凹部内に軟質樹脂を埋設することが記載されている。但し、特許文献1記載の巻回体では、芯材に凹部加工を施す手間がかかり、凹部加工によって芯材の強度が低下するおそれもある。
【0004】
特許文献2や特許文献3には、図2図3に示すように、シート巻き始め端部付近の空隙を緩衝材で埋めることによって、段差に起因するしわを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-75521号公報
【文献】特開平6-341214号公報
【文献】特開2004-217349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図2の手法では、シート巻き始め端部のエッジ部が緩衝材によって十分に保護されていない。そのため、当該エッジ部に起因するしわが生じるおそれがある。また、図3の手法では、シート巻き始め端部の外側に、緩衝材による盛り上がりが生じ、その盛り上がりに起因して、巻き出したシートにしわが生じるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、円柱状芯材に長尺可撓性シートが巻き付けられてなる巻回体において、そのシートを巻き出した際のしわ発生を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、薄膜テープと帯状軟質フォームを用いた特定構造の巻回体に想到し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.円柱状芯材に長尺可撓性シートが巻き付けられてなる巻回体であって、
前記長尺可撓性シートの巻き始め端部の表面と、当該巻き始め端部から離れた円柱状芯材外周面とを接合する薄膜テープと、
前記薄膜テープの表面側に位置し、前記長尺可撓性シートの巻き始め端部を覆う帯状軟質フォームとを備え
該長尺可撓性シートの厚みが1.5~10mm、
該薄膜テープの厚みが0.01~0.5mm、
該帯状軟質フォームの厚みが0.2~25mm、
である巻回体。
2.前記長尺可撓性シートの巻き始め端部の側面と、前記円柱状芯材外周面と、前記薄膜テープとによって囲まれた領域に空隙を有することを特徴とする1.記載の巻回体。
3.前記帯状軟質フォームは、前記長尺可撓性シートの厚みに対し、0.5~5倍の厚みを有することを特徴とする1.に記載の巻回体。
4.前記帯状軟質フォームは、密度0.04g/cm以下であることを特徴とする1.に記載の巻回体。
5.前記長尺可撓性シートの巻き始め端部から、薄膜テープが円柱状芯材外周面に接する地点までの距離は、2~50mmであることを特徴とする1.に記載の巻回体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円柱状芯材に長尺可撓性シートが巻き付けられてなる巻回体において、そのシートを巻き出した際のしわ発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、従来の巻回体の一例を示す拡大断面図である。
図2図2は、従来の巻回体の一例を示す拡大断面図である。
図3図3は、従来の巻回体の一例を示す拡大断面図である。
図4図4は、本発明の巻回体の一例を示す断面図である。
図5図5は、本発明の巻回体の一例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1:円柱状芯材
1a:円柱状芯材外周面
2:長尺可撓性シート
21:巻き始め端部
21a:長尺可撓性シート巻き始め端部の表面
21b:長尺可撓性シート巻き始め端部の側面
3:薄膜テープ
4:帯状軟質フォーム
41:帯状軟質フォーム巻き始め部
42:帯状軟質フォーム巻き終わり部
5:空隙
6:緩衝材
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明巻回体は、円柱状芯材に長尺可撓性シートが巻き付けられてなる巻回体である。本発明巻回体の一例を図4(断面図)、図5(拡大断面図)に示す。
【0015】
円柱状芯材は、長尺可撓性シートが巻き付け可能なものであればよく、例えば、紙製、樹脂製、金属製等の材質のものが使用できる。円柱状芯材としては、その内部に空洞を有する円筒状のものが好ましい。円柱状芯材の直径(円筒状芯材の場合は外径)は、好ましくは10~200mm、より好ましくは30~150mmである。円柱状芯材の幅(円柱の高さ)は、好ましくは100~1000mm、より好ましくは200~800mmである。
【0016】
長尺可撓性シートとしては、例えば、建築物の壁、天井、床、柱、梁等の各部位を被覆するためのシートが使用できる。このような長尺可撓性シート(以下単に「シート」ともいう)の具体例としては、例えば装飾シート、防水シート、耐熱シート、熱発泡性シート等が挙げられる。シートの厚みは、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは0.3~6mmである。シートの幅は、円柱状芯材の幅と同じであるか、それ以下であればよく、好ましくは100~1000mm、より好ましくは200~800mmである。シートの長さは、好ましくは3~50m、より好ましくは10~30mである。このようなシートは、例えば接着剤層、粘着剤層、離型材層、保護層等が積層されてなるものであってもよい。
【0017】
本発明巻回体は、シートの巻き始め端部の表面と、当該巻き始め端部から離れた円柱状芯材外周面とを接合する薄膜テープと、薄膜テープの表面側に位置し、シートの巻き始め端部を覆う帯状軟質フォームとを備えたものである。
【0018】
本発明巻回体では、図5に示すように、シートの巻き始め端部のエッジ部(巻き始め端部の表面21aと巻き始め端部の側面21bとの交点)から円柱状芯材外周面にわたり、薄膜テープによって緩やかな傾斜が形成される。そして、この緩やかな傾斜の上(外側)に、帯状軟質フォームを介して、シートが巻き付けられる。このような本発明巻回体では、図3に示すような急激な盛り上がりを生じることなく、帯状軟質フォームがシートの巻き始め端部の近傍を覆う。2巻き目のシートも、図3に示すような急激な盛り上がりを生じずに、帯状軟質フォームの上(外側)に巻き付けられる。2巻き目のシートの上(外側)には、3巻き目以降のシートが巻き付けられ、3巻き目以降のシートも急激な盛り上がりを生じない。本発明では、このような独自の構成により、シートを巻き出した際のしわ発生を抑制することができる。
【0019】
本発明巻回体は、図5に示すように、長尺可撓性シートの巻き始め端部の側面21bと、円柱状芯材外周面1aと、薄膜テープ3とによって囲まれた領域に空隙5を有することが望ましい。空隙の断面形状は、くさび型の三角形に近似する形状である。このような空隙が形成されることにより、しわ抑制の効果を十分に発揮することができる。
【0020】
薄膜テープとしては、長尺可撓性シートよりも厚みが薄く、シートの巻き始め端部の表面と、円柱状芯材外周面とを接合可能なものであればよく、例えば、紙製、樹脂製、金属製等のものが使用できる。
【0021】
薄膜テープの裏面側には、例えば、接着剤層、粘着剤層等が設けられていることが望ましい。このような薄膜テープを使用すれば、シートを円柱状芯材に固定することができ好適である。
【0022】
薄膜テープの厚みは、シート厚みよりも薄く、シート厚みの1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。具体的に、薄膜テープの厚みは、好ましくは0.01~0.5mm、より好ましくは0.02~0.2mmである。薄膜テープの幅は、シートの幅と同じであるか、それ以上であればよく、好ましくは100~1200mm、より好ましくは200~1000mmである。
【0023】
薄膜テープの長さは、図5に示すように、薄膜テープによって緩やかな傾斜が形成されることを考慮して設定すればよい。薄膜テープによる傾斜は、本発明の効果が奏される限り、湾曲していてもよい。薄膜テープの長さは、好ましくは10~200mm、より好ましくは20~100mmである。
【0024】
薄膜テープは、シート巻き始め端部から傾斜を形成しつつ、シート巻き始め端部から離れた円柱状芯材外周面に接する。ここで、シート巻き始め端部から、薄膜テープが円柱状芯材外周面に接する地点までの距離(図5のL)は、好ましくは2~50mm、より好ましくは3~40mmである。
【0025】
帯状軟質フォームとしては、弾力と柔軟性を有する樹脂フォームが好ましく使用でき、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等が挙げられる。このような樹脂フォームとしては、架橋型、非架橋型等が挙げられ、本発明では非架橋型が好適である。
【0026】
このような帯状軟質フォームとしては、少なくとも薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆う長さを有する帯状のものが使用できる。帯状軟質フォームの長さの上限は、特に限定されないが、巻回体製造時の作業性等の観点から、1巻き分の長さよりも小であることが望ましい。帯状軟質フォームの長さは、好ましくは10~600mm、より好ましくは30~450mmである。
【0027】
本発明巻回体では、図4に示すように、帯状軟質フォームの巻き始め部41や、帯状軟質フォームの巻き終わり部42において、シート巻き付けにより帯状軟質フォームが適度に圧縮され、シートは急激な盛り上がりを生じない。そのため、本発明巻回体では、帯状軟質フォームに起因するしわ発生も十分に抑制することができる。
【0028】
帯状軟質シートの幅は、シートの幅と同じであるか、それ以上であればよく、好ましくは100~1200mm、より好ましくは200~1000mmである。
【0029】
帯状軟質フォームは、シートの厚みに対し、0.5~5倍の厚みを有することが望ましく、0.8~3倍の厚みを有することがより望ましく、1~2.5倍の厚みを有することがさらに望ましい。帯状軟質フォームの厚みは、好ましくは0.2~25mm、より好ましくは0.5~10mm、さらに好ましくは1~5mmである。また、帯状軟質フォームは、その密度が0.04g/cm以下であることが望ましく、0.005~0.035g/cmであることがより望ましく、0.01~0.03g/cmであることがさらに望ましい。このような条件を満たす帯状軟質フォームの使用により、シート巻き始め端部に起因するしわを十分に抑制することができ、さらに帯状軟質フォームに起因するしわも十分に抑制することができる。
【0030】
本発明巻回体は、例えば、以下の手順で製造することができる。
(1)円柱状芯材に、シートの巻き始め端部を固定する。
(2)シートの巻き始め端部の表面と、当該巻き始め端部から離れた円柱状芯材外周面とを薄膜テープで接合する。
(3)少なくとも薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆うように帯状軟質フォーム設置し、当該帯状軟質フォームを介して、シートを巻き付ける。
【0031】
上記(1)工程において、シートの巻き始め端部を円柱状芯材に固定するには、例えば、シートの巻き始め端部の裏面を接着剤層や粘着剤層等で固定する方法、あるいは、接着剤層や粘着剤層を有する薄膜テープを用いて固定する方法等を採用することができる。このうち、後者の方法によれば、上記(1)工程と(2)工程を同時に行うことができ、作業効率の点で好適である。
【0032】
上記(3)工程においては、円柱状芯材の直径、シートの長さ、巻回体の重量等を勘案し、所望の巻き数でシートを重ねて巻き付けることができる。
【0033】
また、予め薄膜テープと帯状軟質フォームが一体化された積層体を用いることにより、上記(2)工程と上記(3)工程を同時に行うことができる。ここで、接着剤層や粘着剤層を有する薄膜テープを用いれば、上記(1)工程と上記(2)工程と上記(3)工程を同時に行うことも可能である。
【0034】
本発明巻回体のシートを施工現場で使用する際には、施工に必要なシート長さを考慮して、円柱状芯材に巻き付けられたシートを適宜巻き出せばよい。
【実施例
【0035】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0036】
円柱状芯材として、外径82mm、幅450mmの紙管、シートとして、厚み1.5mm、幅450mm、長さ5mの熱発泡性シート、薄膜テープとして、裏面に粘着剤層を有する紙製薄膜テープ(厚み0.08mm、幅450mm、長さ50mm)、帯状軟質フォームとして下記に示すものを用いて、以下の試験を行った。
【0037】
・帯状軟質フォーム1(架橋型ポリエチレンフォーム、密度0.035g/cm、厚み5mm、幅450mm、長さ100mm)
・帯状軟質フォーム2(非架橋型ポリエチレンフォーム、密度0.022g/cm、厚み5mm、幅450mm、長さ100mm)
・帯状軟質フォーム3(非架橋型ポリエチレンフォーム、密度0.022g/cm、厚み3mm、幅450mm、長さ100mm)
・帯状軟質フォーム4(非架橋型ポリエチレンフォーム、密度0.022g/cm、厚み1mm、幅450mm、長さ100mm)
【0038】
(実施例1)
実施例1は、図4及び5に示す態様である。実施例1では、薄膜テープを用いて、シート端部と円柱状芯材を接合し(L=8mm)、薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆うように、帯状軟質フォーム1を挟み込みながら、シートを巻き付けて巻回体を得た。
【0039】
(実施例2)
実施例2は、図4及び5に示す態様である。実施例2では、薄膜テープを用いて、シート端部と円柱状芯材を接合し(L=8mm)、薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆うように、帯状軟質フォーム2を挟み込みながら、シートを巻き付けて巻回体を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例3は、図4及び5に示す態様である。実施例3では、薄膜テープを用いて、シート端部と円柱状芯材を接合し(L=8mm)、薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆うように、帯状軟質フォーム3を挟み込みながら、シートを巻き付けて巻回体を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例4は、図4及び5に示す態様である。実施例4では、薄膜テープを用いて、シート端部と円柱状芯材を接合し(L=8mm)、薄膜テープからシートの巻き始め端部にわたる部分を覆うように、帯状軟質フォーム4を挟み込みながら、シートを巻き付けて巻回体を得た。
【0042】
(比較例1)
比較例1は、図1に示す態様である。比較例1では、両面粘着テープを用いて、シート端部の裏面を円柱状芯材に貼り付けた後、シートを巻き付けて巻回体を得た。
【0043】
(評価)
上記方法で得られた各巻回体をそれぞれ室温にて7日間静置後、シートを巻き出し、その外観を確認した。評価は、しわ発生が抑制されていたものを「AA」、しわが多数発生していたものを「D」とする5段階(優:AA>A>B>C>D:劣)で行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】




図1
図2
図3
図4
図5