IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田建設工業株式会社の特許一覧

特許7556726設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム
<>
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図1
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図2
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図3
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図4
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図5
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図6
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図7
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図8
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図9
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図10
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図11
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図12
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図13
  • 特許-設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240918BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240918BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240918BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/13
G06F30/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020161074
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054083
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】関根 章義
(72)【発明者】
【氏名】林 保宏
(72)【発明者】
【氏名】滝 悟
(72)【発明者】
【氏名】岩間 貴昭
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-150655(JP,A)
【文献】特開2020-035283(JP,A)
【文献】特開2014-010675(JP,A)
【文献】国際公開第2018/236288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/28
G06Q 50/08
G06Q 50/16
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅の住戸の平面形状と、当該住戸の平面形状の内部に配置する部屋の構成とに応じて、各部屋の種別に対応付けて予め定められた大きさの領域を、前記住戸の平面形状内に配置する領域配置部と、
所定の規則に基づいて、配置された前記領域を前記住戸の平面形状内に収まる範囲で拡張する領域拡張部と、
前記部屋の種別に対応付けて予め定められた、前記領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記領域について評価値を算出する評価部と、
を備え
前記領域拡張部は、さらに、前記集合住宅の建築物の平面形状内に配置された、前記住戸を含む区画の種別に対応付けられた区画領域を、前記建築物の平面形状内に収まる範囲で拡張し、
前記評価部は、さらに、前記区画の種別に対応付けて予め定められた、前記区画領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記区画領域について評価値を算出し、
前記部屋の種別は、居間又は寝室を含む居室と、廊下とを少なくとも含み、
前記領域の面積に関する評価基準は、前記住戸の平面形状に占める廊下の割合である廊下率が低いほど評価が高くなり、
前記区画の種別は、住戸と、共用廊下、共用階段又は共用エレベータを含む共用部とを少なくとも含み、
前記区画領域の面積に関する評価基準は、前記建築物の平面形状に占める共用部の割合である共用部率が低いほど評価が高くなる
設計支援装置。
【請求項2】
前記住戸の平面形状内に配置される領域について、前記領域間に要求される所定の隣接関係を満たしているか判断する関係性確認部
をさらに備える請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記隣接関係は、前記領域間の通路幅の下限を定める情報を含む
請求項2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記部屋の種別の各々について面積の目標が予め定められており、
前記評価部は、前記領域の面積と、当該領域に対応する前記部屋の種別に対して定められた目標とに基づいて、前記評価値を算出する
請求項1から3の何れか一項に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記部屋の種別は居間、台所、寝室を含み、前記住戸の平面形状は前記集合住宅の隣接する住戸との間の内壁と外壁とを含み、
前記領域配置部は、次の(1)から(3)までの条件を満たすように前記領域を前記住戸の平面形状内にランダムに配置する
(1)前記住戸の平面形状内の前記外壁の一端側の角に前記居間を配置し、前記外壁の他端側に面するように前記寝室を配置する
(2)前記台所は前記居間に隣接させる
(3)前記寝室は前記居間に隣接させる
請求項1から4の何れか一項に記載の設計支援装置。
【請求項6】
集合住宅の住戸の平面形状と、当該住戸の平面形状の内部に配置する部屋の構成とに応じて、各部屋の種別に対応付けて予め定められた大きさの領域を、前記住戸の平面形状内に配置するステップと、
所定の規則に基づいて、配置された前記領域を前記住戸の平面形状内に収まる範囲で拡張するステップと、
前記部屋の種別に対応付けて予め定められた、前記領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記領域について評価値を算出するステップと、
前記集合住宅の建築物の平面形状内に配置された、前記住戸を含む区画の種別に対応付けられた区画領域を、前記建築物の平面形状内に収まる範囲で拡張するステップと、
前記区画の種別に対応付けて予め定められた、前記区画領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記区画領域について評価値を算出するステップと、
をコンピュータが実行し、
前記部屋の種別は、居間又は寝室を含む居室と、廊下とを少なくとも含み、
前記領域の面積に関する評価基準は、前記住戸の平面形状に占める廊下の割合である廊下率が低いほど評価が高くなり、
前記区画の種別は、住戸と、共用廊下、共用階段又は共用エレベータを含む共用部とを少なくとも含み、
前記区画領域の面積に関する評価基準は、前記建築物の平面形状に占める共用部の割合である共用部率が低いほど評価が高くなる
設計支援方法。
【請求項7】
集合住宅の住戸の平面形状と、当該住戸の平面形状の内部に配置する部屋の構成とに応じて、各部屋の種別に対応付けて予め定められた大きさの領域を、前記住戸の平面形状内に配置するステップと、
所定の規則に基づいて、配置された前記領域を前記住戸の平面形状内に収まる範囲で拡張するステップと、
前記部屋の種別に対応付けて予め定められた、前記領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記領域について評価値を算出するステップと、
前記集合住宅の建築物の平面形状内に配置された、前記住戸を含む区画の種別に対応付けられた区画領域を、前記建築物の平面形状内に収まる範囲で拡張するステップと、
前記区画の種別に対応付けて予め定められた、前記区画領域の面積に関する評価基準に基づいて、拡張した前記区画領域について評価値を算出するステップと、
をコンピュータに実行させ
前記部屋の種別は、居間又は寝室を含む居室と、廊下とを少なくとも含み、
前記領域の面積に関する評価基準は、前記住戸の平面形状に占める廊下の割合である廊下率が低いほど評価が高くなり、
前記区画の種別は、住戸と、共用廊下、共用階段又は共用エレベータを含む共用部とを少なくとも含み、
前記区画領域の面積に関する評価基準は、前記建築物の平面形状に占める共用部の割合である共用部率が低いほど評価が高くなる
設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内に配置される部屋のゾーニング情報に基づいて、データベースとして蓄えられた多数の間取りプランの中から所望の間取りプランを選択する間取り設計支援装置が提案されていた(例えば、特許文献1)。本装置は、建物の外形の形状及び寸法に関する情報、及び建物内に配置される部屋の種類、位置、及び広さに関する情報を含んだ複数の間取りプランを格納したデータベース、同様な情報をゾーニング情報として入力する入力手段、建物の外形の形状及び寸法が近似する間取りプランを抽出する抽出処理手段、部屋の配置状態が近似する間取りプランPLを選択する選択処理手段、及び表示手段を有するとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-77218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数の間取りプランの中から所望の間取りプランを選択する場合、ゾーニング情報に適合する間取りプランを予めデータベースに蓄積しておく必要がある。しかしながら、様々な間取りプランを準備しておくのは手間がかかり、また、ゾーニング情報に適合する間取りプランが蓄積されていなければ、対応できないという問題があった。
【0005】
本発明は、汎用的に間取りのプランニングを支援するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る設計支援装置は、建築物又は住戸の平面形状と、当該平面形状の内部に配置する部屋の構成とに応じて、各部屋の種別に対応付けて予め定められた大きさの領域を、平面形状内に配置する領域配置部と、所定の規則に基づいて、配置された領域を平面形状内に収まる範囲で拡張する領域拡張部とを備える。
【0007】
定められた規則の下で領域を拡張することにより、建物又は住戸に与えられた面積を十分に生かした間取りを提案し得るようになる。すなわち、汎用的に間取りのプランニングを支援するための技術を提供することができるようになる。
【0008】
また、平面形状内に配置される領域について、領域間に要求される所定の隣接関係を満たしているか判断する関係性確認部をさらに備えるようにしてもよい。また、隣接関係は、領域間の通路幅の下限を定める情報を含むようにしてもよい。このようにすれば、一般的に行き来できる領域同士の関係性を最低限満たすような設計を提案できるようになる。なお、通路幅の下限でなく固定値を定めるようにしてもよい。
【0009】
また、領域の面積に関し、種別に対応付けて予め定められた評価基準に基づいて、拡張した領域について、評価値を算出する評価部をさらに備えるようにしてもよい。このようにすれば、生成された設計について、一定の基準で客観的な評価を行うことができる。すなわち、機械的に複数のプランを生成するような場合において、ユーザに提案すべきプラ
ンを選別する指標を得ることができる。
【0010】
また、種別は、居間又は寝室を含む居室と、廊下とを少なくとも含み、評価基準は、平面形状に占める廊下の割合である廊下率が低いほど評価が高くなるものであってもよい。また、種別は、住戸と、廊下、階段又はエレベータを含む共用部分とを少なくとも含み、評価基準は、平面形状に占める共用部分の割合である共用部率が低いほど評価が高くなるものであってもよい。このように、住宅の間取りや、集合住宅におけるフロア計画などのプランニングに適用することができる。
【0011】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。該プログラムはネットワーク上で実行されるようにすることも可能である。また、当該プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汎用的に間取りのプランニングを支援するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、設計支援装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、領域の種別に対する設定の一例を説明するための図である。
図3図3は、領域の種別の各々に対して設定される、目標面積の一例を表す図である。
図4図4は、設計支援装置が実行する処理の一例を示す処理フロー図である。
図5図5は、設定読出処理の一例を示す処理フロー図である。
図6図6は、設計処理の一例を示す処理フロー図である。
図7図7は、ゾーニングのパターンの一例を説明するための図である。
図8図8は、ゾーニングのパターンの一例を説明するための図である。
図9図9は、建築物又は住戸の平面形状、および配置された基準位置の一例を示す図である。
図10図10は、配置された領域の一例を示す図である。
図11図11は、関係性の要件の一例を示す図である。
図12図12は、拡張処理を説明するための図である。
図13図13は、領域の拡張後の間取りの一例を示す図である。
図14図14は、出力される間取りのリストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
<装置構成>
図1は、本発明に係る設計支援装置の一例を示すブロック図である。設計支援装置1は、一般的なコンピュータであり、住宅の間取りのプランニングを支援する。例えば、設計支援装置は、建築物又は住戸の平面形状と、当該平面形状の内部に配置する領域の種別が対応付けられた基準位置とを取得する。基準位置は、例えばランダムに決定されたものであってもよく、リビングや寝室等の領域について予めゾーニングした上でランダムに決定されたものであってもよい。また、種別に対応付けて予め定められた大きさの領域を、基準位置に基づいて平面形状内に配置する。そして、種別に対応付けて予め定められた規則に基づいて、配置された前記領域を前記平面形状内に収まる範囲で拡張する。例えば、規
則は、居室を広くし、水廻りや廊下を小さくするように定められる。汎用的な規則の下で、いわば販売面積を最大化するように領域を拡大することで、望ましい設計を自動的に行うことができる。
【0016】
本発明に係る設計支援装置1は一般的なコンピュータであり、通信I/F(Interface
)11と、記憶装置12と、入出力I/F(Interface)13と、プロセッサ14と、バ
ス15とを備える。
【0017】
通信I/F11は、例えば有線のネットワークカード又は無線の通信モジュール等であり、図示していないネットワークを介し他のコンピュータとの間で情報を送受信する。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置及びHDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)である。主記憶装置は、プロセッサが読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、プロセッサの作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサが実行するプログラムやBIM(Building Information Modeling
)等の規格に従って表される設計データを記憶する。入出力I/F13は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置や、プリンタ等の出力装置と接続される。入出力I/F13を介して、ユーザの操作を受け付けたり、ユーザへ情報を出力したりする。
【0018】
プロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、プ
ログラムを実行することにより本実施の形態に係る各処理を行う。具体的には、プロセッサ14は、条件取得部141、領域配置部142、関係性確認部143、領域拡張部144、整合性確認部145、及び評価部146として機能する。
【0019】
条件取得部141は、建築物又は住戸の平面形状と、当該平面形状に配置される基準位置とを取得する。基準位置には、例えば居室や廊下、収納といった領域の種別が対応付けられているものとする。平面形状及び基準位置は、例えば、入出力I/F13を介してユーザから入力を受け、又はランダムに決定され、記憶装置12に記憶されているものとする。なお、基準位置は、ゾーニングに基づく領域の大まかな配置パターンにおいて定められた範囲内でランダムに決定されたものであってもよい。
【0020】
領域配置部142は、種別に対応付けて予め大きさが定められている領域を、基準位置に従って平面形状内に配置する。本実施形態では、各領域は矩形であり、居室や廊下、収納といった領域の種別によっては、例えば、短辺及び長辺の少なくとも一方について最小値が定められ、記憶装置12にこれらの情報が記憶されているものとする。領域配置部142は、各領域を、例えば最小値である初期的な大きさで配置する。
【0021】
関係性確認部143は、領域の種別同士に対して要求される所定の隣接関係を満たしているか判断する。所定の隣接関係は、例えば、居室と廊下との間などについて、隣接する必要がある旨や、領域間の最小の通路幅が規定され、記憶装置12にこれらの情報が記憶されているものとする、
【0022】
領域拡張部144は、所定の規則に基づいて、配置された領域を平面形状内に収まる範囲で拡張する。所定の規則には、例えば、領域の種別に対応付けて拡張の要否が規定され、記憶装置12に記憶されているものとする。なお、領域の種別に応じて、予め定められた段階に従って面積を拡張するようにしてもよいし、無段階に面積を拡張するようにしても良い。また、領域の種別によって異なる優先度を規定しておき、優先度に従って拡張するようにしても良い。なお、トイレや浴室、キッチン等、領域の種別によっては領域を拡張しないようにしてもよい。
【0023】
整合性確認部145は、拡張後の各領域について、例えば上述の関係性を保っているか判断する。
【0024】
評価部146は、所定の評価基準に基づいて、拡張した前記領域について評価値を算出する。例えば、評価基準は、平面形状に占める廊下の割合である廊下率が低いほど評価が高くなるものであっても良い。また、住戸の平面形状についてフロア計画を行う場合は、種別として、住戸と、廊下、階段又はエレベータを含む共用部分とを少なくとも含み、評価基準は、平面形状に占める共用部分の割合である共用部率が低いほど評価が高くなるものであっても良い。
【0025】
以上のような構成要素が、バス15を介して接続されている。なお、設計支援装置1は、例えば通信I/F11や入出力I/F13のような一部の構成要素を備えていなくてもよい。また、設計支援装置1は、いわゆるクラウド上に設けられ、インターネット等の図示していないネットワークを介して他のコンピュータに対し本実施形態に係る処理の結果を出力するものであってもよい。また、これらの機能は、複数のコンピュータに分散して実行されても良いし、複数のコンピュータによって並列に実行されても良い。
【0026】
<制約(規則)、関係性、得点計算>
図2は、領域の種別に対し予め設定される、制約(規則)、隣接の関係性に関する要件、評価に関する得点計算の一例を説明するための図である。図2の表は、「種別」に対応付けて、「制約(規則)」、「関係性」、「拡張の優先度」、「加減点要素」の各属性が定義されている。このような情報が、予め記憶装置12に記憶されているものとする。種別のフィールドには、「居室」、「水廻り」、「玄関」、「廊下」、「収納」が登録されている。「居室」は、さらに「居間(LD、リビングダイニング)」、「主寝室(MBR)」、「寝室(BR)」の各種別に細分される。「水廻り」は、さらに「台所(K、キッチン)」、「風呂(UB)」、「トイレ(WC)」の各種別に細分される。「収納」は、さらに「下足入」又は「SIC(シューズインクローゼット)」、「クローゼット」又は「WIC(ウォークインクローゼット)」、「納戸」又は「物入」の各種別に細分される。
【0027】
各種別に対する「制約(規則)」として、短辺の最小値、奥行の最小値、幅又は奥行の固定寸法、短辺及び長辺の段階的な固定寸法等が、予め定められ得る。なお、図2においては具体的な数値は省略している。また、各種別に対する「関係性」として、他の種別に係る領域との間の接続関係及び接続幅の最小値、付随して配置される領域および当該領域と他の種別に係る領域との必要な接続関係、各種別に係る領域を1住戸に対して設ける数又は面積の最小値等が、予め定められ得る。また、各種別に対する「拡張の優先度」として、優先順位を表す数字が予め定められ得る。例えば優先度に従い、初期的な大きさで配置された各領域が拡張される。また、各種別に対する「加減点要素」として、異なる種別に係る領域間の距離に応じた加点又は減点、各種別に係る領域の面積や、全体の面積に対する各種別に係る領域の面積の割合、別途定められる各種別に係る領域の面積の目標値に対する、各種別に係る領域の面積の割合といった評価値の算出方法が、予め定められ得る。
【0028】
<与条件>
上述のような住宅の間取りは、一戸建ての間取りに適用しても良いし、集合住宅の個々の住戸の間取りに適用しても良い。なお、本実施形態においては、住戸の平面形状(換言すれば、平面図上の外形)は予め定められているものとする。図3は、1LDK、2LDK、3LDKといった間取りのバリエーションについて、領域の種別の各々に対して設定される、目標面積の一例を表す図である。図3の表は、「間取り」及び「住戸面積」ごとに、領域の種別の各々について、目標となる面積(図3の例においては数値は省略)が定
義されている。このような情報は、例えば、集合住宅の個々の住戸の間取りを設計する際に、該当する間取りの種類(換言すれば、居室の数)及び住戸全体の面積に応じた目標値が読み出され、例えば後述する拡大処理や評価処理において用いられる。このような情報が、予め記憶装置12に記憶されているものとする。
【0029】
<処理>
図4は、設計支援装置が実行する処理の一例を示す処理フロー図である。設計支援装置1の条件取得部141は、設定読出処理を行う(図4:S1)。本ステップでは、設計する建築物に関する設定や、図2等に示した動作の条件等が読み出される。本ステップの詳細は、図5に示す。
【0030】
図5は、設定読出処理の一例を示す処理フロー図である。条件取得部141は、プランニングの処理対象となる住戸の部屋構成、及び建築物又は住戸の平面形状を記憶装置12から読み出す(図5:S11)。住戸の部屋構成は、例えば、2LDKや3LDK等のように住戸に設ける部屋を表す情報である。また、住戸の形状は、住戸の平面形状のほか、住戸の周囲の壁が内壁であるか外壁であるかを示す情報を含むものとする。また、条件取得部141は、各部屋の大きさに関する制約を取得する(図5:S12)。本ステップでは、例えば図2の制約(規則)のフィールドに登録された、各領域の大きさに関する情報を記憶装置12から読み出す。また、条件取得部141は、領域の間の関係性に関する条件を記憶装置12から読み出す(図5:S13)。本ステップでは、例えば図2の関係性のフィールドに登録された、領域間の接続関係に関する条件を記憶装置12から読み出す。また、条件取得部141は、拡張処理の規則を取得する(図5:S14)。本ステップでは、例えば図2の拡張の優先度のフィールドに登録された、拡張の優先順位を表す数字を記憶装置12から読み出す。なお、S11~S14の処理は、順序を入れ替えて実行してもよいし、並列に実行してもよい。その後、図4の処理に戻る。
【0031】
そして、設計支援装置1は、設計処理を行う(図4:S2)。本ステップでは、S1において読み出された情報を用いて、住戸内に部屋を配置すると共に、部屋の大きさを決定する。本ステップの詳細は、図6に示す。
【0032】
図6は、設計処理の一例を示す処理フロー図である。設計支援装置1の領域配置部142は、所定の条件に基づいて住戸内に部屋を配置する(図6:S21)。本ステップでは、S11で取得された住戸の平面形状内に、S11で取得された部屋構成に応じた領域を、領域配置部142は例えばランダムに配置する。また、部屋構成ごとにゾーニングのパターンを表す情報を予め定めておき、領域配置部142は、パターンで定められた範囲内でランダムに領域を配置するようにしてもよい。
【0033】
図7及び図8は、ゾーニングのパターンの一例を説明するための図である。図7は、部屋構成が1LDK及び2LDKの場合のパターンを示す。図8は、部屋構成が3LDKの場合のパターンを示す。なお、太線は住戸の平面形状の外周を示す。太い実線は隣接する住戸との間の内壁を、太い破線はベランダ側の外壁を、太い二点鎖線は共用廊下との外壁又は内壁をそれぞれ示すものとする。2LDK及び3LDKについては、建物の平面形状における角に位置し、共用廊下のほかに2面以上を外壁で囲われた角住戸と、両隣に他の住戸が存在し、共用廊下のほかに1面が外壁で囲われた中住戸とで異なるパターンが定義されている。また、同一の部屋構成であっても、複数のパターンが定義されていてもよい。各パターンには、リビング(LD)やキッチン(K)、寝室(BR)等の領域を配置すべき大まかな範囲(図7及び図8の角丸長方形)が定義されている。S21においては、処理対象の住戸の部屋構成に応じて、いずれかのパターンを選択し、例えば予め定められた大まかな範囲内において各領域をランダムに配置すると共に、範囲の定められていない領域はランダムに配置するようにしてもよい。
【0034】
また、図7及び図8に示すゾーニングは、図2の関係性のフィールドに登録されるようなルールに基づいて定義されるものであってもよい。例えば、次のようなルールを満たす範囲で、ランダムに領域を配置するようにしてもよい。
・角にLDを配置し、外壁の他端側に面するように主寝室(MBR)を配置する
・KはLDに隣接させる
・少なくとも1つのBR(MBR、BR2、BR3)はLDに隣接させ、他のBRは外壁に面する位置を優先して配置する
以上のように、ゾーニングした上でランダムに部屋を配置すれば、ある程度、妥当な範囲で自動設計を行うことができるようになる。
【0035】
なお、配置はユーザの操作により指定される位置に基づいて決定するようにしてもよい。例えば条件取得部141は、予め記憶されている建築物又は住戸の平面形状を規定する情報を読み出し、入出力I/F13を介してユーザに提示する。そして、ユーザは領域内の位置をクリックまたはタップすることにより、平面形状内における座標を指定し、条件取得部141は入出力I/F13を介して基準位置を取得する。
【0036】
図9は、建築物又は住戸の平面形状、および配置された基準位置の一例を示す図である。図9の例では、矩形で住戸の平面形状が表されている。また、平面形状の内部には、基準位置を示す点が配置されている。また、各点の近傍には、各点に対応付けられた、領域の種別を示す情報を便宜的に表示している。S21においては、ランダムに、若しくは所定の制約の下でランダムに、又はユーザの指示に基づいて、まずこのような情報が決定されるようにしてもよい。
【0037】
図10は、配置された領域の一例を示す図である。図10の例では、図9において配置された基準位置を含むように、対応する領域が配置されている。各領域は、例えば図2に規定された最小の大きさになっている。また、各領域は住戸の外壁に沿って配置されるようにしてもよい。なお、短い直線は、各領域間に設けられる通路の位置を表している。S21においては、図10に示すような配置が生成される。また、S21においては、配置のパターンを複数生成するようにしてもよい。
【0038】
そして、設計支援装置1の関係性確認部143は、配置された領域が所定の関係性を満たすか判断する(図6:S22)。本ステップでは、関係性確認部143は、図2に示した「関係性」のフィールドに規定された要件を満たすか判断する。
【0039】
図11は、関係性の要件の一例を示す図である。図2の関係性を図示すると、例えば図11のように表すことができる。図11においては、各種別に係る領域を矩形で示している。また、接続が必要な領域間、または接続し得る領域間の関係を、双方向の矢印で示している。ここで、接続とは領域間が行き来できるように通じていることをいうものとする。また、各接続部分には、接続幅の最小値が定められている場合がある。
【0040】
図6のS22においては、領域間の関係性として、接続が必要とされる領域間が正しく接続されているか、接続されている場合に必要とされる接続幅が確保されているか、が判断される。なお、S22において関係性の要件を満たしていないと判断された場合、S21に戻って領域を配置し直しても良い(図示せず)。また、S21において複数の配置のパターンを生成し、要求される関係性を満たすとS22において判断されたパターンを、以降の処理で用いるようにしてもよい。また、S21とS22の処理を併せて実行し、要求される関係性を満たす範囲でランダムに領域を配置するようにしてもよい。
【0041】
また、設計支援装置1の領域拡張部144は、配置された領域を処理の規則に従って拡
張する(図6:S23)。本ステップでは、最小の大きさが規定された領域について無段階に、又は予め段階的な大きさが規定された領域について段階的に、S21で配置された領域の大きさを拡張する。なお、図2に示した拡張の優先度のフィールドに示したような値に基づいて、各領域に優先度の差をつけて拡張するようにしてもよい。本ステップにおける拡張処理に伴い、拡張の対象でない廊下や玄関の面積は、所定の最小幅等を満たす範囲で縮小される。また、ある領域の拡張に伴い、隣接する領域の位置は拡張の対象でない領域へスライドさせてもよい。このように、住戸の面積を十分に生かして、要求される部屋を住戸内に当てはめる。
【0042】
図12は、拡張処理を説明するための図である。図12においては、拡張される領域に、外向きの矢印が表示されている。拡張される領域は、例えば図2に示した拡張の優先度のフィールドに数値が登録された領域である。また、図2の制約(規則)のフィールドにおいて、短辺若しくは長辺が、又は幅若しくは奥行が、固定されていない領域。換言すれば、最小寸法が規定されている辺、又は寸法が固定されていない辺について、拡張するようにしてもよい。また、加減点要素に示す評価基準に基づいて、得点が高くなるように領域同士の距離を変更したり、面積を大きくするように、領域を拡張するようにしてもよい。
【0043】
図13は、領域の拡張後の間取りの一例を示す図である。図13においては、建物又は住戸の外形を示す平面形状の範囲内に収まる範囲で、図12に示した矢印のある領域が可能な限り拡張され、拡張に伴い位置が調整されている。
【0044】
そして、設計支援装置1の整合性確認部145は、拡張後の領域について整合性を有するか確認する(図6:S24)。本ステップでは、整合性確認部145は、S23において拡張された後の間取りについて、図2に示した制約及び関係性を満たすか確認する。なお、整合性を有しないと判断された場合は、S21に戻り再度配置を行うようにしてもよいし、S23に戻り各領域の優先度を変えて拡張し直すようにしてもよい(図示せず)。また、複数の配置のパターンに基づいて間取りを生成し、要求される関係性を満たすとS24において判断された間取りを、以降の処理で用いるようにしてもよい。また、S23とS24の処理を併せて実行し、要求される関係性を満たす範囲で領域を拡張するようにしてもよい。
【0045】
また、設計支援装置1の評価部146は、所定の評価基準に従い設計された間取りの評価値を算出する(図6:S25)。例えば、評価部146は、基準となる得点に対し、図2に示した加減点要素に基づいて点数を増減すると共に、図3に示した目標の大きさに満たない場合、減点するようにしてもよい。また、目標の大きさに満たない場合、目標値や優先度を修正してS21又はS23の処理に戻り、処理を繰り返すようにしてもよい(図示せず)。このようにして、生成された間取りの評価を表す値を算出する。以上で設計処理を終了し、図4の処理に戻る。
【0046】
また、評価部146は、生成された間取りを出力する(図4:S3)。例えば、評価部146は、入出力I/F13を介して、ユーザに、生成された間取りと評価値とを提示してもよいし、所定のファイルに出力してもよい。また、複数の間取りを出力するようにしてもよい。
【0047】
図14は、出力される間取りの一例を示す図である。図14の表は、No、居室面積、面積評価、収納評価、評価合計(A)、及び総合評価(100-A)の各属性を含む。また、居室面積は、LDの畳数、MBRの畳数及び収納、BR2の畳数及び収納、並びにBR3の畳数及び収納の各属性を含む。面積評価は、LD、MBR、BR2、及びBR3の各属性を含む。収納評価は、共用、SIC、MBR、BR2、及びBR3の各属性を含む
。そして、Noのフィールドに通し番号が付された各レコードに、生成された間取りの居室面積及びその評価が登録される。居室面積のフィールドには、各領域の面積が「帖」等の所定の単位で登録される。また、面積評価及び収納評価のフィールドには、例えば図2に示した加減点要素に基づいて点数が登録される。また、評価合計(A)のフィールドには、面積評価及び収納評価の合計値が登録される。また、総合評価(100-A)のフィールドには、100点(満点)から評価合計(A)の値を減じた評価値が登録される。なお、図14の例では基準を満たさない場合に減点を行う例を示したが、加点や、加減点による評価を行うようにしてもよい。このような評価が、生成される間取りの各々について出力される。また、各レコードを選択することにより、例えば図13に示したような、各レコードに対応する間取りを表示するようにしてもよい。以上で、設計支援処理を終了する。
【0048】
<効果>
本実施形態に係る設計支援処理によれば、所定の規則の下で領域を拡張することにより、一般的に好ましく建物の面積を十分に生かした間取りを提案することができる。すなわち、汎用的に間取りのプランニングを支援するための技術を提供することができるようになる。
【0049】
<その他>
図4等に示した処理の詳細は一例であり、間取りの設計処理の詳細等は、上述の例には限定されない。例えば図6に示す設計処理は、既存の間取りを複数学習させ、部屋構成や住戸の位置と、住戸内の部屋の配置の特徴との関係に基づいて間取りを生成するものであってもよい。この場合も、所定の規則の下で領域を拡張する処理により、住戸の平面形状に応じて、面積を十分に生かした間取りを生成することができる。
【0050】
建物又は住戸の外形の平面形状は、単純な矩形でなく、柱を含んでいたり、壁面同士の接続に直角でない部分を含むものであってもよい。このような場合、図4のS4における処理は、建物又は住戸の外壁部分については平面形状に収まらない拡張を行ってもよい。
【0051】
また、さらに建物が有する梁の情報を含み、梁が居室の中心(重心)に位置しないように領域を配置するようにしてもよい。このような制約によれば、居室に照明を取り付ける際に不都合のない設計を行うことができる。
【0052】
なお、上述した実施形態は例示であり、本発明は上述した構成には限定されない。また、本発明の対象は、上述した処理を実行するコンピュータプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0053】
なお、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0054】
1 :設計支援装置
11 :通信I/F
12 :記憶装置
13 :入出力I/F
14 :プロセッサ
141 :条件取得部
142 :領域配置部
143 :関係性確認部
144 :領域拡張部
145 :整合性確認部
146 :評価部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14