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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
B43K24/08 110
B43K24/08 150
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020162447
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055074
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】柳原 集
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196147(JP,A)
【文献】特開2018-034444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
5/00- 8/24
21/00-21/26
24/00-24/18
27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の前方に先口が着脱自在に連結され、
前記軸筒内に収容した筆記体が前記先口に係止させたコイルスプリングで後方へ弾発され、
前記軸筒内に設けた複数のカム溝に沿って摺動可能な摺動突起を有する固定カムと、前記固定カムの前方で前記カム溝を摺動して回転し該カム溝の前端部に設けた係止部に係止される係止突起を有した回転カムとを有し、
前記固定カムと前記回転カムとが、前記固定カムの摺動突起に形成した軸心方向に対する傾斜面で構成された凹凸状の噛合部に、前記回転カムに形成した前記噛合部にかみ合う被噛合部をかみ合わせて縦列配置され、
前記固定カムを押動することにより前記回転カムを摺動させると共に、前記回転カムの回転に伴い、前記軸筒内に収容した前記筆記体の筆記先端を前記先口から出没させる構造のノック式筆記具であって、
前記先口の内周面が先窄み形状に形成され、前記先口の内周面に第一係止部が形成され、前記第一係止部の後方に該第一係止部より大径の第二係止部が形成され、
前記先口の第一係止部に第一コイルスプリングを係止可能とし、前記先口の第二係止部に第二コイルスプリングを係止可能とし、且つ、前記第一係止部に係止された第一コイルスプリングに挿通される第一筆記体又は前記第二係止部に係止された第二コイルスプリングに挿通される第二筆記体を、選択的に前記軸筒内に収容可能とし、
前記先口の第一係止部に係止された第一コイルスプリングに第二筆記体を挿通させた状態、又は、前記先口の第二係止部に係止された第二コイルスプリングに第一筆記体を挿通させた状態において、前記固定カムを押動して前記回転カムを摺動させた際に、前記第一コイルスプリング又は前記第二コイルスプリングが全圧縮されることにより、前記固定カムの前進が規制され、前記筆記体の筆記先端が前記先口から出没不能となることを特徴としたノック式筆記具。
【請求項2】
前記第一筆記体の先端より前記第二筆記体の先端が小径であることを特徴とした請求項1に記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定カムを押動することにより、回転カムが摺動及び回転して、筆記体の筆記先端が軸筒の前方に連結した先口より出没される構造のノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開平11-78361号公報に記載のノック式筆記具のように、固定カムを押動することにより、回転カムが摺動及び回転して、ボールペンレフィルなどの筆記体の筆記先端を、軸筒の前方に連結した先口より出没させる構造のノック式筆記具はよく知られており、こうしたノック式筆記具は、軸筒の前方に連結された先口を着脱したり、後軸に対して前軸を着脱することで、軸筒内に収容したボールペンレフィルなどの筆記体の交換を可能としている。
【0003】
ところで筆記具は、その軸筒内に収容する筆記体の種類が多いことから、コスト的な観点で汎用性を求めた場合には、共通の軸筒とそれに連結する同じく共通の先口に対して、複数の筆記体を選択的に収容できる構造が好ましく、それは筆記色など筆跡の色違いだけではなく、筆跡の太さを左右する筆記先端の違いなどで筆記体の外径が異なっていても、少なくとも二種類の筆記体を、共通の軸筒とそれに連結する同じく共通の先口に対して収容可能とすることで、利点が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-78361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、共通の軸筒とそれに連結する同じく共通の先口に対して、筆記体の外径が異なる複数の筆記体が収容できるようにすることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.
軸筒の前方に先口が着脱自在に連結され、
前記軸筒内に収容した筆記体が前記先口に係止させたコイルスプリングで後方へ弾発され、
前記軸筒内に設けた複数のカム溝に沿って摺動可能な摺動突起を有する固定カムと、前記固定カムの前方で前記カム溝を摺動して回転し該カム溝の前端部に設けた係止部に係止される係止突起を有した回転カムとを有し、
前記固定カムと前記回転カムとが、前記固定カムの摺動突起に形成した軸心方向に対する傾斜面で構成された凹凸状の噛合部に、前記回転カムに形成した前記噛合部にかみ合う被噛合部をかみ合わせて縦列配置され、
前記固定カムを押動することにより前記回転カムを摺動させると共に、前記回転カムの回転に伴い、前記軸筒内に収容した前記筆記体の筆記先端を前記先口から出没させる構造のノック式筆記具であって、
前記先口の内周面が先窄み形状に形成され、前記先口の内周面に第一係止部が形成され、前記第一係止部の後方に該第一係止部より大径の第二係止部が形成され、
前記先口の第一係止部に第一コイルスプリングを係止可能とし、前記先口の第二係止部に前記第一コイルスプリングより大径の第二コイルスプリングを係止可能とし、且つ、前記第一係止部に係止された第一コイルスプリングに挿通される第一筆記体又は前記第二係止部に係止された第二コイルスプリングに挿通される第二筆記体を、選択的に前記軸筒内に収容可能とし、
前記先口の第一係止部に係止された第一コイルスプリングに第二筆記体を挿通させた状態、又は、前記先口の第二係止部に係止された第二コイルスプリングに第一筆記体を挿通させた状態において、前記固定カムを押動して前記回転カムを摺動させた際に、前記第一コイルスプリング又は前記第二コイルスプリングが全圧縮されることにより、前記固定カムの前進が規制され、前記筆記体の筆記先端が前記先口から出没不能となることを特徴としたノック式筆記具。
2.
前記第一筆記体の筆記先端より前記第二筆記体の筆記先端が小径であることを特徴とした前記1項に記載のノック式筆記具。」である。
【0007】
本発明のノック式筆記具によれば、共通の先口とそれを連結する同じく共通の軸筒に対して、筆記先端の違いなどで外径が異なる二種類の筆記体を収容可能とすることができる。
【0008】
また、第一筆記体の筆記先端より第二筆記体の筆記先端が小径であっても、第二筆記体の筆記先端は第一コイルスプリングより大径の第二コイルスプリングに挿通されることから、挿通時に、第二筆記体の筆記先端が、小径の第一コイルスプリングに比較して第二コイルスプリングと接触し難く、組立性が向上する。
【0009】
また、先口の第一係止部に係止された第一コイルスプリングに第二筆記体を挿通させた状態、又は、先口の第二係止部に係止された第二コイルスプリングに第一筆記体を挿通させた状態において、固定カムを押動して回転カムを摺動させた際に、第一コイルスプリングと第二コイルスプリングとが全圧縮されることにより、固定カムの前進が規制され、筆記体の筆記先端が先口から出没不能となるようにすることにより、組立時に、ノック操作することで、部材の組違いを認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のボールペンにおいて、先口に係止した第一コイルスプリングに第一ボールペンレフィルを挿通させた第一状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。
図2図2は、第一状態のボールペンの軸筒から先口を外した状態の一部を示す図である。
図3図3は、本実施形態のボールペンにおいて、先口に係止した第二コイルスプリングに第二ボールペンレフィルを挿通させた第二状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。
図4図4は、第二状態のボールペンの軸筒から先口を外した状態の一部を示す図である。
図5図5は、第一状態のボールペンであり、第一ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させた状態の縦断面図である。
図6図6は、第二状態のボールペンであり、第二ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させた状態の縦断面図である。
図7図7は、第一状態及び第二状態におけるボールペンのカム動作を模式的に示した図であり、図7Aは筆記先端が没入した状態で、図7Bは筆記先端が突出した状態の図である。
図8図8は、先口に係止した第一コイルスプリングに第二ボールペンレフィルを挿通させた第三状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。
図9図9は、先口に係止した第二コイルスプリングに第一ボールペンレフィルを挿通させた第四状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。
図10図10は、第三状態のボールペンであり、第二ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させようとした状態の縦断面図である。
図11図11は、第四状態のボールペンであり、第一ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させようとした状態の縦断面図である。
図12図12は、第三状態及び第四状態におけるボールペンのカム動作を模式的に示した図であり、図12Aは筆記先端が没入した状態で、図12Bは筆記先端を先口から突出させようとした状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本実施形態のノック式のボールペンについて説明をする。本実施形態では、ペン先の繰出機構として回転カム機構を用いたノック式のボールペンについて説明を行うが、本発明は以下のノック式のボールペンに限定されるものではなく、万年筆やマーキングペンあるいはシャープペンシルなどのノック式の筆記具に採用することもできる。
本施例では、筆記先端がある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。なお、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0012】
図1は、本実施形態のノック式のボールペンにおいて、先口に係止した第一コイルスプリングに第一ボールペンレフィルを挿通させた第一状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。図2は、第一状態のボールペンの軸筒から先口を外した状態の一部を示す図である。
第一状態のボールペン1Aは、軸筒2の前方に先口3が着脱自在に連結して本体4を構成し、軸筒2内に収容した第一ボールペンレフィル5A(第一筆記体)が先口3に係止した第一コイルスプリング6Aで後方へ弾発され、軸筒2内に設けた複数のカム溝2aに沿って摺動可能な摺動突起7aを有する固定カム7を有し、固定カム7の前方でカム溝2aを摺動して回転し該カム溝2aの前端部に設けた係止部2bに係止される係止突起8aを有した回転カム8とを有している。固定カム7と回転カム8とは、固定カム7に形成した軸心方向に対する傾斜面で構成された凹凸状の噛合部7bに、回転カム8に形成した前記噛合部7bにかみ合う被噛合部8bをかみ合わせて縦列配置されている。
第一状態のボールペン1Aは、固定カム7を押動することにより回転カム8を摺動させると共に、回転カム8の回転に伴い、軸筒2内に収容した第一ボールペンレフィル5Aの筆記先端51Aを先口3から出没させる。
【0013】
図3は、本実施形態のノック式のボールペンにおいて、先口に係止した第二コイルスプリングに第二ボールペンレフィルを挿通させた第二状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。図4は、第一状態のボールペンの軸筒から先口を外した状態の一部を示す図である。
第二状態のボールペン1Bは、軸筒2の前方に先口3が着脱自在に連結されて本体4を構成し、軸筒2内に収容した第二ボールペンレフィル5B(第二筆記体)が先口3に係止した第二コイルスプリング6Bで後方へ弾発されている。他の点は、前記第一状態のボールペン1Aと同様であるため説明を省略する。
ボールペン1Bは、固定カム7を押動することにより回転カム8を摺動させると共に、回転カム8の回転に伴い、軸筒2内に収容した第二ボールペンレフィル5Bの筆記先端51Bを先口3から出没させる。
【0014】
なお、先口3は、先端開口部3aの後方となる内周面3bが段階的な先窄み形状に形成され、内周面3bに第一係止部3cが形成され、第一係止部3cの後方に該第一係止部3cより大径の第二係止部3dが形成されている。
図1に示す第一状態のボールペン1Aは、先口3の第一係止部3cに、第一コイルスプリング6Aを係止させており、第一コイルスプリング6Aに、第一ボールペンレフィル5Aを挿通させてある。図3に示す第二状態のボールペン1Bは、先口3の第二係止部3dに、第二コイルスプリング6Bを係止させており、第二コイルスプリング6Bに、第二ボールペンレフィル5Bを挿通させてある。
図2及び図4に示すように、第二状態のボールペン1Bの第二コイルスプリング6Bは、第一状態のボールペン1Aの第一コイルスプリング6Aの径より大きく、自然長が長い。
これにより、第一ボールペンレフィル5Aの筆記先端51Aより小径の第二ボールペンレフィル5Bの筆記先端51Bが、挿通時に、第二コイルスプリング6Bに接触し難く、組立性が向上する。
なお、本発明において第二コイルスプリングの径が第一コイルスプリングの径より大径であるとは、外径と内径とが両方共に大きい状態を言う。
【0015】
次に図5から図7を用いて、先口から筆記先端を突出させる動作について説明を行う。
図5は、第一状態のボールペンであり、第一ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させた状態の縦断面図である。図6は、第二状態のボールペンであり、第二ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させた状態の縦断面図である。図7は、第一状態及び第二状態におけるボールペンのカム動作を模式的に示した図であり、図7Aは筆記先端が没入した状態で、図7Bは筆記先端が突出した状態の図である。
第一状態のボールペン1A(第二状態のボールペン1B)は、軸筒2の後方に、ノック操作により作動する従来の回転カム機構が設けられている。回転カム機構は、軸筒2の内面22aの円周上に等間隔で形成したカム溝2aと、軸筒2の後端に形成した後端開口部22cから突出した筒状の前記固定カム7と、固定カム7の前方に配した筒状の前記回転カム8とで構成してある。
固定カム7は、先端に凹凸状の噛合部7bを有し、外面には、カム溝2bに係合する複数の摺動突起7aを、噛合部7bの頂部7cに位置するよう円周上に等間隔で設けてある。
回転カム8の外周面には、カム溝2aに係合する複数の係止突起8aを有し、係止突起8aの後端に前記固定カム7の噛合部7bにかみ合う傾斜面8bで構成した被噛合部8cを設けてある。
【0016】
図7Aに示すように、本実施形態のカム機構は、固定カム7の摺動突起7a及び回転カム8の係止突起8aをカム溝2aに係合させた際、固定カム7の噛合部7bの頂部7cが、回転カム8の被噛合部8cの傾斜面8bの中間点に位置するようにしてある。
【0017】
図1に示す第一状態のボールペン1Aは、軸筒2の後端開口部22cから突出した固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動すると、固定カム7が、軸筒2の内面22aに形成した深いカム溝221aと浅いカム溝222aに係合した摺動突起7aに導かれて前進し、固定カム7に連接した回転カム8は、深いカム溝221aに係合した係止突起8aに導かれて前進する(図7参照)。
係止突起8aが、深いカム溝221aの先端に達して該カム溝から離脱すると、固定カム7の噛合部7bの頂部7cは、回転カム8の被噛合部8cの傾斜面8bの中間に位置する。このとき、回転カム8は、先口3に係合した第一コイルスプリング6Aで後方へ弾発された第一ボールペンレフィル5Aに当接しているので、後方へ後退しようとして右側から左側に回転し(図において、被噛合部8cの傾斜面8bが右下がりのため)、回転カム8の被噛合部8cは固定カム7の噛合部7bを滑って、係止突起8aの被噛合部8cが浅いカム溝222aの先端の係止斜面223aに係止され、図5に示したように、先端開口部3aから筆記先端51Aを突出させた状態で維持することができる。
また再度、固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動することにより、係止突起8aの被噛合部8cと浅いカム溝222aの係止斜面223aとの係止状態が解かれ、第一コイルスプリング6Aに弾発された回転カム8が後退しようとして右側から左側に回転し(図において、被噛合部8cの傾斜面8bが右下がりのため)、回転カム8の係止突起8aが深いカム溝221aを後退して図7Aの状態となり、図1に示したように、先端開口部3aに筆記先端51Aが没入した状態となる。
図1に示す第一状態のボールペン1Aは、ノック機構を作動させる際、第一コイルスプリング6Aが全圧縮されることなく、被噛合部8cが深いカム溝221aから脱して、回転カム8が回転することができる。
【0018】
図3に示す第二状態のボールペン1Bは、軸筒2の後端開口部22cから突出した固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動すると、固定カム7が、軸筒2の内面22aに形成した深いカム溝221aと浅いカム溝222aに係合した摺動突起7aに導かれて前進し、固定カム7に連接した回転カム8は、深いカム溝221aに係合した係止突起8aに導かれて前進する(図7参照)。
係止突起8aが、深いカム溝221aの先端に達して該カム溝から離脱すると、固定カム7の噛合部7bの頂部7cは、回転カム8の被噛合部8cの傾斜面8bの中間点に位置する。このとき、回転カム8は、先口3に係合された第二コイルスプリング6Bで後方へ弾発された第二ボールペンレフィル5Bに当接しているので、後方へ後退しようとして右側から左側に回転し(図において、被噛合部8cの傾斜面8bが右下がりのため)、回転カム8の被噛合部8cは固定カム7の噛合部7bを滑って、係止突起8aの被噛合部8cが浅いカム溝222aの先端の係止斜面223aに係止され、図6に示したように、先端開口部3aから筆記先端51Bを突出させた状態で維持することができる。
また再度、固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動することにより、係止突起8aの被噛合部8cと浅いカム溝222aの係止斜面223aとの係止状態が解かれ、第二コイルスプリング6Bに弾発された回転カム8が後退しようとして右側から左側に回転し(図において、被噛合部8cの傾斜面8bが右下がりのため)、回転カム8の係止突起8aが深いカム溝221aを後退して図7Aの状態となり、図3に示したように、先端開口部3aに筆記先端51Bが没入した状態となる。
図3に示す第一状態のボールペン1Bは、ノック機構を作動させる際、第二コイルスプリング6Bが全圧縮されることなく、被噛合部8cが深いカム溝221aから脱して、回転カム8が回転することができる。
【0019】
図8は、先口に係止した第一コイルスプリングに第二ボールペンレフィルを挿通させた第三状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。図9は、先口に係止した第二コイルスプリングに第一ボールペンレフィルを挿通させた第四状態のボールペンであり、筆記先端を没入させた状態の縦断面図である。図10は、第三状態のボールペンであり、第二ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させようとした状態の縦断面図である。図11は、第四状態のボールペンであり、第一ボールペンレフィルの筆記先端を先口から突出させようとした状態の縦断面図である。図12は、第三状態及び第四状態におけるボールペンのカム動作を模式的に示した図であり、図12Aは筆記先端が没入した状態で、図12Bは筆記先端を先口から突出させようとした状態の図である。
【0020】
図8及び図10に示す第三状態のボールペン1Cは、先口3の第一係止部3cに、第一コイルスプリング6Aを係止させており、第一コイルスプリング6Aに、第二ボールペンレフィル5Bを挿通させてある。図9及び図11に示す第四状態のボールペン1Dは、先口3の第二係止部3dに、第二コイルスプリング6Bを係止させており、第二コイルスプリング6Bに、第一ボールペンレフィル5Aを挿通させてある。
【0021】
図8に示す第三状態のボールペン1Cは、軸筒2の後端開口部22cから突出した固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動すると、固定カム7が、軸筒2の内面22aに形成した深いカム溝221aと浅いカム溝222aに係合した摺動突起7bに導かれて前進し、固定カム7に連接した回転カム8は、深いカム溝221aに係合した係止突起8aに導かれて前進する(図12参照)。このとき、図10に示す第三状態のボールペン1Cのように、第一コイルスプリング6Aが全圧縮されることで、ノック操作が中断され、図12Bに示すように、係止突起8aの被噛合部8bの傾斜面8cが深いカム溝221aの先端に達せず、結果、回転カム8が回転することも、第二ボールペンレフィル5Bの筆記先端51Bが先口3から突出した状態を維持することもできない。
【0022】
図9に示す第四状態のボールペン1Dは、軸筒2の後端開口部22cから突出した固定カム7のノック部7dを軸筒2の前方へ押動すると、固定カム7が、軸筒2の内面22aに形成した深いカム溝221aと浅いカム溝222aに係合した摺動突起7bに導かれて前進し、固定カム7に連接した回転カム8は、深いカム溝221aに係合した係止突起8aに導かれて前進する(図12参照)。このとき、図11に示す第四状態のボールペン1Dのように、第二コイルスプリング6Bが全圧縮されることで、ノック操作が中断され、図12Bに示すように、係止突起8aの噛合部8cの傾斜面8bが深いカム溝221aの先端に達せず、結果、回転カム8が回転することも、第一ボールペンレフィル5Aの筆記先端51Aが先口3から突出した状態を維持することもできない。
【0023】
第一ボールペンレフィル5A及び第二ボールペンレフィル5Bは、共に第一コイルスプリング6A及び第二コイルスプリング6Bのいずれにも当接できる当接部52A,53A,52B,53Bが設けられており、軸筒2内に収容することも可能になっているが、先口3に、各ボルペンレフィルに対応するコイルスプリングが適正に係止されていないことで、ノック操作中に、各コイルスプリングが全圧縮されてしまい、回転カムの動作が完了する前にノック操作が中断され、筆記体の筆記先端が先口から突出した状態を維持することができない構造になっており、部材の組違いを認識することができる。
【0024】
本実施形態では、先口3の第一係止部3cに第一コイルスプリング6Aが係止され、第一コイルスプリング6Aの後端に第一ボールペンレフィル5Aの当接部52Aが当接している位置よりも(図1参照)、先口3の第一係止部3cに第一コイルスプリング6Aが係止され、第一コイルスプリング6Aの後端に第二ボールペンレフィル5Bの当接部53Bが当接している位置(図8参照)の方が前方にあり、結果、図8に示した第三状態のボールペン1Cは、筆記先端51Bが没入状態でも、既に第一コイルスプリング6Aが図1の状態より大きく圧縮されており、ノック操作時において、回転カム機構のカム動作が完了する前に、第一コイルスプリング6Aが全圧縮され、ノック操作が中断する構造になっている。
また、先口3の第二係止部3dに第二コイルスプリング6Bが係止され、第二コイルスプリング6Bの後端に第二ボールペンレフィル5Bの当接部52Bが当接している位置よりも(図3参照)、先口3の第二係止部3dに第二コイルスプリング6Bが係止され、第二コイルスプリング6Bの後端に第一ボールペンレフィル5Aの当接部53Aが当接している位置(図9参照)の方が前方にあり、結果、図9に示した第三状態のボールペン1Cは、筆記先端51Bが没入状態でも、既に第二コイルスプリング6Bが図3の状態より大きく圧縮されており、ノック操作時において、回転カムのカム動作が完了する前に、第二コイルスプリング6Bが全圧縮され、ノック操作が中断する構造となっている。
【符号の説明】
【0025】
1A…第一状態のボールペン、1B…第二状態のボールペン、
1C…第三状態のボールペン、1D…第四状態のボールペン、
2…軸筒、2a…カム溝、2b…係止部、
22a…内面、221a…深いカム溝、222a…浅いカム溝、223a…係止斜面、
22c…後端開口部、
3…先口、3a…先端開口部、3b…内周面、3c…第一係止部、3d…第二係止部、
4…本体、
5A…第一ボールペンレフィル、51A…筆記先端、52A…当接部、53A…当接部、
5B…第二ボールペンレフィル、51B…筆記先端、52B…当接部、53B…当接部、
6A…第一コイルスプリング、
6B…第二コイルスプリング、
7…固定カム、7a…噛合部、7b…摺動突起、7c…頂部、7d…ノック部、
8…回転カム、8a…係止突起、8b…傾斜面、8c…被噛合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12