(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/12 20060101AFI20240918BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240918BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240918BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240918BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20240918BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20240918BHJP
C09D 175/12 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L75/12
C08G18/10
C08K3/013
C08K3/26
C08L75/08
C09D175/08
C09D175/12
(21)【出願番号】P 2020165478
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠介
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/181703(WO,A1)
【文献】特開2008-184554(JP,A)
【文献】特開2010-139973(JP,A)
【文献】特開2004-182997(JP,A)
【文献】特開2005-016291(JP,A)
【文献】特開2006-095358(JP,A)
【文献】特開2013-018925(JP,A)
【文献】特開2016-176004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/12
C08G 18/10
C08K 3/013
C08K 3/26
C08L 75/08
C09D 175/08
C09D 175/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなる硬化性組成物であって、 前記第1液及び/または前記第2液に充填剤を含み、 前記充填剤が、中実粒子、中空粒子、及び鱗片状粒子を含
み、
前記中実粒子は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、及び樹脂粒子から選ばれる1種または2種以上であり、
前記中実粒子は、軽質炭酸カルシウムを含み、
前記鱗片状粒子は、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、タルク、含水カオリンクレー、及び焼成カオリンクレーから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記充填剤中に、鱗片状粒子を3重量%以上50重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記充填剤中に、中空粒子を0.01重量%以上10重量%以下含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記中空粒子のメジアン径が、10~80μmであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2液型の硬化性組成物として、イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなるものが知られている。このような硬化性組成物は、強度、伸張性、耐久性等において優れた物性を発揮することが可能であるため、例えば、建築物、土木構造物等の表面被覆材に適用されている。中でも、建築物の屋上、ベランダ等における防水性を高める塗膜防水材として好ましく使用されている。このような塗膜防水材は、一般的にコテ、ヘラ、ローラー、刷毛等で施工されることが多く、良好な作業性が求められている。特に、建築物等の立ち上り部分では、作業性に加え、塗膜の硬度、強度、伸び等を確保する必要がある。
【0003】
このような問題に対し、例えば、特許文献1(特開2008-222792号公報)には、ポリイソシアネートにN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンを反応させて得られる特定のウレタンプレポリマーを含む第1成分と、水を含む第2成分を混合するウレタン樹脂組成物が開示されており、十分な塗膜硬度、強度、伸び等を確保できることが記載されている。また、無機充填剤を配合することで粘性を付与し、立ち上り部分にも適用可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無機充填剤の配合により、塗膜物性を確保しつつ、粘性を付与した場合、塗付時に糸引き等の問題を生じ、作業性に支障をきたす場合があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなる硬化性組成物において、作業性に優れ、十分な塗膜物性を有する硬化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなる硬化性組成物において、特定の充填剤を含むことに想到し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなる硬化性組成物であって、
前記第1液及び/または前記第2液に充填剤を含み、
前記充填剤が、中実粒子、中空粒子、及び鱗片状粒子を含み、
前記中実粒子は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、及び樹脂粒子から選ばれる1種または2種以上であり、
前記中実粒子は、軽質炭酸カルシウムを含み、
前記鱗片状粒子は、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、タルク、含水カオリンクレー、及び焼成カオリンクレーから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする硬化性組成物。
2.上記充填剤中に、鱗片状粒子を3重量%以上50重量%以下含むことを特徴とする1.に記載の硬化性組成物。
3.上記充填剤中に、中空粒子を0.01重量%以上10重量%以下含むことを特徴とする1.または2.に記載の硬化性組成物。
4.上記中空粒子のメジアン径が、10~80μmであることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなる硬化性組成物において、第1液及び/または第2液に特定の充填剤を配合することにより、作業性に優れ、優れた塗膜物性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、イソシアネート基含有化合物を有する第1液と、活性水素含有化合物を有する第2液とからなるものである。このような硬化性組成物は、流通時において第1液と第2液が別包装の形態であり、使用時(塗付時)にこれらを混合して用いるものである。
【0012】
(第1液)
第1液におけるイソシアネート基含有化合物は、第2液の活性水素含有化合物との反応性を有する化合物である。イソシアネート基含有化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が使用できる。具体的には、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(pure-MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化反応等により誘導体化したものが挙げられる。また、イソシアネートとポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーも使用可能である。イソシアネート基含有化合物としては、これらの1種または2種以上を用いることができる。このうち、本発明では、第1液が少なくともイソシアネート基末端プレポリマーを含む場合に適している。イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーにおける、イソシアネート基含有量(NCO基含有率)は、好ましくは1~10重量%(より好ましくは2~5重量%)である。
【0013】
(第2液)
第2液における活性水素含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。このうち、水酸基含有化合物としては、例えば各種ポリオール等が使用できる。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール、低分子量ジオール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0014】
アミノ基含有化合物としては、第1級または第2級のアミノ基を1分子中に2個以上有する化合物等が挙げられる。このようなアミノ基含有化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このうち、本発明では、第2液が少なくとも芳香族ポリアミンを含む場合に適している。芳香族ポリアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレン-ビス(2-アルキルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジアルキルアニリン)、1,3,5-アルキル-2,4-ジアミノベンゼン、メチルチオトルエンジアミン、テトラアルキルジアミノジフェニルメタン、t-ブチルトルエンジアミン等が挙げられる。
【0015】
上記活性水素含有化合物の配合量は、第1液中のイソシアネート基と、第2液中の活性水素(水酸基、アミノ基等)との当量比率(NCOの当量数/活性水素の当量数)が、好ましくは0.5~3(より好ましくは1.1~2.5)となる範囲内である。
【0016】
(充填剤)
本発明は、上記第1液及び/または上記第2液に充填剤を含むことを特徴とする。硬化性組成物の態様としては、上記第1液と上記第2液の両方に充填剤を含む態様、上記第1液または上記第2液のいずれか一方に充填剤を含む態様が挙げられる。本発明では、少なくとも上記第2液に充填剤を含む態様が好適である。本発明では、このような充填剤が、中実粒子、中空粒子、及び鱗片状粒子を含むことを特徴とする。これにより、塗装作業性に優れ、十分な塗膜物性を有することができる。
【0017】
本発明では、中実粒子を含むことにより、塗膜強度を高めることができる。なお、本発明における中実粒子とは、中空部分を有しない粒子のことをいい、後述の中空粒子とは異なるものである。また、中実粒子は、その形状が粒状と認識されるものであり、後述の鱗片状粒子とは異なるものである。
【0018】
中実粒子の平均粒子径は、好ましくは0.001~50μm(より好ましくは0.005μm~30μm)である。このような範囲を満たす場合、上記効果を十分に得ることができる。このような中実粒子としては、無機質粒子、有機質粒子のいずれも使用することができる。中実無機質粒子としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(「合成または沈降性炭酸カルシウム」ともいう)、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル等、中実有機質粒子としては、各種樹脂粒子等が挙げられ、これらは何らかの表面処理がされたものも使用することができる。また、これらは1種または2種以上で使用できる。なお、本発明において、平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置等によって測定することができる。
【0019】
本発明では、中実無機質粒子を含むことが好ましく、中でも軽質炭酸カルシウムを含むことが好ましく、特に軽質炭酸カルシウムとして、樹脂酸(ロジン酸)や有機酸により表面処理された表面処理軽質炭酸カルシウムを含むことが好ましい。また、軽質炭酸カルシウムの平均粒子径は、好ましくは0.001~0.5μm(より好ましくは0.005~0.3μm)である。このような軽質炭酸カルシウムを含むことにより、硬化組成物に適度な粘性(チクソトロピー性等)を付与することができ、塗装作業性に優れ、塗装時にタレ等を生じることなく仕上げることが可能となる。
【0020】
本発明では、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを併用して含むこともできる。重質炭酸カルシウムの平均粒子径は、好ましくは0.1~50μm(より好ましくは0.5~30μm)である。また、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合比は重量比で、好ましくは100:0~10:90(より好ましくは80:20~20:80、さらに好ましくは70:30~30:70)である。このような範囲の場合、硬化性組成物における充填剤の分散性、混合性に優れ、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0021】
上記中実粒子の含有量は、充填剤中に、好ましくは50重量%以上97重量%以下(より好ましくは55重量%以上95重量%、さらに好ましくは60重量%以上90重量%以下)である。このような範囲を満たす場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0022】
本発明の充填剤は、上記中実粒子に加えて、中空粒子と鱗片状粒子を併用することを特徴とする。中空粒子と鱗片状粒子を併用して含むことにより、塗付時の糸引き等を効率的に抑制することができ、よりいっそう塗装作業性を高めることができる。また、塗付後(低ずり速度領域)においても十分な粘性(高粘度)を得ることができるため、立ち上り部分等に塗装した場合であっても、タレ等を生じることなく仕上げることが可能となる。さらには、塗膜強度等をよりいっそう高めることができる。
【0023】
本発明における中空粒子とは、中空部分を有する粒子のことをいい、上記中実粒子、後述の鱗片状粒子とは異なるものである。本発明の中空粒子は、様々な大きさの粒子が混合されていることが好ましく、その粒度分布として、メジアン径が好ましくは10~80μm(より好ましくは20~70μm、さらに好ましくは30~60μm)である。このような範囲を満たす場合、上記メジアン径を中心として、それよりも大きな中空粒子と小さな中空粒子をバランスよく含むことができる。これにより、塗付時の糸引き等の抑制効果が高まり塗装作業性をよりいっそう高めることができ、均一な仕上がり性が得られる。また、形成塗膜の引張強度、引裂き強度及び伸び性等を高めることができる。ここで、上記メジアン径とは、粒子をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置等によって測定することができる。
【0024】
また、中空粒子は、最小径が、好ましくは1μm以上(より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上)であり、最大径が、好ましくは120μm以下(より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは90μm以下)である。さらに、中空粒子の真密度は、好ましくは0.05~0.9g/cm3(より好ましくは0.1~0.8g/cm3)である。このような範囲を満たす場合、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0025】
このような中空粒子としては、無機質粒子、有機質粒子のいずれも使用することができる。中空無機質粒子としては、例えば、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、セラミックバルーン等が挙げられ、中空有機質粒子としては、各種樹脂バルーン等が挙げられ、これらは何らかの表面処理がされたものも使用することができる。また、これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、中空無機質粒子を含むことが好ましく、中でも、ガラスバルーンを使用することが好ましい。
【0026】
上記中空粒子の含有量は、充填剤中に、好ましくは0.01重量%以上10重量%以下(より好ましくは0.05重量%以上5重量%、さらに好ましくは0.1重量%以上3重量%以下)である。このような範囲を満たす場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0027】
本発明における鱗片状粒子とは、鱗片状(薄片状あるいはフレーク状ともいう)の粒子のことをいい、上記中実粒子、中空粒子とは異なるものである。鱗片状粒子の平均粒子径は、好ましくは0.001~10μm(より好ましくは0.005μm~5μm)である。また、また、アスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は、好ましくは1~100(より好ましくは2~80)である。このような範囲を満たす場合、上記効果を十分に得ることができる。なお、上記平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置等によって測定することができる。また、上記厚みは、顕微鏡法等によって測定することができる。
【0028】
このような鱗片状粒子としては、無機質粒子、有機質粒子のいずれも使用することができる。鱗片状無機質粒子としては、例えば、金属及び酸化物等の鱗片状粒子、鱗片状鉱物、鱗片状ガラス等が挙げられる。具体的に、金属及び酸化物等の鱗片状粒子としては、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の金属、これらの金属を含有する合金、及びこれらの金属の酸化物等が挙げられる。また、鱗片状鉱物としては、例えば、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母等の雲母類、タルク、含水カオリンクレー、焼成カオリンクレー等の珪酸アルミニウム類等が挙げられ、鱗片状有機質粒子としては、各種樹脂フレーク等が挙げられ、これらは何らかの表面処理がされたものも使用することができる。これらは1種または2種以上使用することができる。
【0029】
本発明では、鱗片状無機質粒子を含むことが好ましく、さらには白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母等の雲母類、タルク、含水カオリンクレー、焼成カオリンクレー等が好適であり、特に含水カオリンクレーが好適である。含水カオリンクレーの平均粒子径は、好ましくは0.01~5μm(より好ましくは0.05~3μm、さらに好ましくは0.05~1μm)である。このような範囲を満たす場合、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0030】
上記鱗片状粒子の含有量は、充填剤中に、好ましくは3重量%以上50重量%以下(より好ましくは5重量%以上45重量%、さらに好ましくは8重量%以上40重量%以下)である。このような範囲を満たす場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0031】
上記充填剤の配合量は、第1液中のイソシアネート基含有化合物(固形分)100重量部に対して、好ましくは10~500重量部(より好ましくは30~400重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0032】
第2液は、さらに可塑剤を含むことが好ましい。これにより、硬化性組成物の粘性を調整し、安定した作業性を確保することができるとともに、塗膜強度の点においても有効に作用する。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0033】
上記可塑剤の配合量は、第1液中のイソシアネート基含有化合物(固形分)100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは30~100重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0034】
上記第1液、上記第2液は、上述の成分の他、例えば、着色顔料、骨材、分散剤、消泡剤、劣化防止剤、希釈剤、増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、造膜助剤、触媒、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含むものであってもよい。
【0035】
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、上記第1液と上記第2液を混合して得られるものであり、第1液と上記第2液との混合比率は、第1液中のイソシアネート基と、第2液中の活性水素(水酸基、アミノ基等)との当量比率(NCOの当量数/活性水素の当量数)が、好ましくは0.5~3(より好ましくは1.1~2.5)となる範囲内であればよい。このような範囲の場合、強度、伸張性、耐久性等の点で好適である。
【0036】
第1液、第2液との具体的な混合割合(重量比)は、第1液及び第2液の組成によって適宜設定することができるが、好ましくは第1成分100重量部に対して、第2液が50~500重量部(より好ましくは100~300重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0038】
原料としては以下のものを使用した。
・イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(NCO%:3重量%)
・活性水素化合物1[芳香族ポリアミン(ジエチルトルエンジアミン)]
・活性水素化合物2[ポリオール化合物(ポリオキシプロピレングリコール)]
・中実粒子1[軽質炭酸カルシウム(表面ロジン樹脂処理)、平均粒子径0.1μm]
・中実粒子2[重質炭酸カルシウム、平均粒子径2.5μm]
・中空粒子1[ガラスバルーン、メジアン径45μm(最小径3μm、最大径85μm)、真密度0.37g/cm3]
・中空粒子2[ガラスバルーン、メジアン径65μm(最小径5μm、最大径120μm)、真密度0.15g/cm3]
・鱗片状粒子[含水カオリンクレー、平均粒子径0.2μm]
・顔料[酸化チタン]
・可塑剤[フタル酸ジイソノニル]
【0039】
(実施例1~5、比較例1~3)
表1に示す混合比率で、第1液と第2液を混合したものを硬化性組成物とした。なお、第1液のイソシアネート基と第2液の活性水素基との当量比率はNCO/活性水素=1.5であり、混合時の環境は、常温(23℃、50%RH環境下)とした。各硬化性組成物について以下の評価を実施した。結果は、表1に示す。
【0040】
<塗装作業性評価>
防水材用プライマーが塗装されたスレート板(300mm×300mm)を垂直に立てて、コテを用いて硬化性組成物を塗り付け量2.6kg/m2で塗装した。このときの、作業性を評価した。
・塗装作業性評価1
塗装時のタレ性を目視で評価した。評価基準は、タレを生じないものを「A」、著しいタレを生じたものを「D」とする4段階評価とした(優:A>B>C>D:劣)。
・塗装作業性評価2
塗装時のコテ離れ時の糸引き性を目視で評価した。評価基準は、糸引きのないものを「A」、著しい糸引きが発生したものを「D」とする4段階評価とした(優:A>B>C>D:劣)。
【0041】
<塗膜強度評価>
JIS A6021:2011の「建築用塗膜防水材」で規定する試験方法に従い、引張強度、引裂き強度を測定した。
・引張強度
評価基準は、3.0N/mm2以上のものを「◎」2.3N/mm2以上3.0N/mm2未満のものを「○」、2.3N/mm2未満のものを「×」とした。
・引裂き強度
評価基準は、14.0N/mm以上のものを「○」、14.0N/mm未満のものを「×」とした。
【0042】