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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】メタンの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20240918BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240918BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240918BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240918BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20240918BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20240918BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240918BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C01B3/02 H
C25B9/00 G
C25B11/081
C25B13/07
C25B3/03
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020172584
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064073
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】奥 良彰
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105220172(CN,A)
【文献】特開2019-203193(JP,A)
【文献】特開2001-192877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び水を含有するガスからメタンを製造するメタンの製造装置であって、
固体電解質膜と、前記固体電解質膜上に複数の電極から構成される電極群とを有する反応器を備え、
前記複数の電極は水素化触媒から形成され、
前記固体電解質膜は、イットリア安定化ジルコニア、酸化セリウム及びガリウム酸ランタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、メタンの製造装置。
【請求項2】
前記水素化触媒は、プラチナである、請求項1に記載のメタンの製造装置。
【請求項3】
前記固体電解質膜は、イットリア安定化ジルコニアを含む、請求項1又は2に記載のメタンの製造装置。
【請求項4】
内燃機関をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタンの製造装置。
【請求項5】
熱電発電装置をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタンの製造装置。
【請求項6】
メタンの製造方法であって、
反応器中に、二酸化炭素及び水を含有するガスを供給する、ガス供給工程と、
前記反応器中において、複数の電極からなる電極群を有する固体電解質膜を用いて水を電気分解して水素を生成する、水素生成工程と、
前記反応器中において、記水素と二酸化炭素とを水素化触媒存在下で反応させてメタンを生成する、メタン生成工程と、
メタンを含むガスを反応器から排出する、ガス排出工程と
を含み、
前記複数の電極は水素化触媒から形成され、
前記固体電解質膜は、イットリア安定化ジルコニア、酸化セリウム及びガリウム酸ランタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、メタンの製造方法。
【請求項7】
前記水素生成工程において、熱電発電装置から供給される電力により電気分解を行う、請求項6に記載のメタンの製造方法。
【請求項8】
前記水素生成工程と前記メタン生成工程とを同時に行う、請求項6又は7に記載のメタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギーを利用して水の電気分解を行い、生じた水素と二酸化炭素とを反応させてメタンを製造する方法が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】鎌田博之、「二酸化炭素(CO2)の再資源化に向けた触媒技術」、IHI技法、2019年3月発行、第59巻、第1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のメタンの製造方法では、水の電気分解による水素を生成する装置と、水素と二酸化炭素との反応によりメタンを生成する装置とが必要であったり、水の電気分解による水素を生成する工程と、水素と二酸化炭素との反応によりメタンを生成する工程とがそれぞれ別に行われたりすることが多く、メタンの製造が効率的に行うことができない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要とせず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、再生可能エネルギーを利用し、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要とせず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、内燃機関からの二酸化炭素を含む排気ガスを利用し、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要せず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のメタンの製造装置及び製造方法を提供する。
[1] メタンの製造装置であって、
固体電解質膜と、前記固体電解質膜上に複数の電極から構成される電極群とを有する反応器を備え、
前記複数の電極は水素化触媒を含む、メタンの製造装置。
[2] 前記水素化触媒はプラチナである、[1]に記載のメタンの製造装置。
[3] 前記固体電解質膜は、イットリア安定化ジルコニアを含む、[1]又は[2]に記載のメタンの製造装置。
[4] 内燃機関をさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載のメタンの製造装置。
[5] 熱電発電装置をさらに備える、[1]~[4]のいずれかに記載のメタンの製造装置。
[6] メタンの製造方法であって、
反応器中に、二酸化炭素及び水を含有するガスを供給する、ガス供給工程と、
前記反応器中において、複数の電極からなる電極群を有する固体電解質膜を用いて水を電気分解して水素を生成する、水素生成工程と、
前記反応器中において、水素と二酸化炭素とを水素化触媒存在下で反応させてメタンを生成する、メタン生成工程と、
メタンを含むガスを反応器から排出する、ガス排出工程と
を含む、メタンの製造方法。
[7] 前記水素生成工程において、熱電発電装置から供給される電力により電気分解を行う、[6]に記載のメタンの製造方法。
[8] 前記水素生成工程と前記メタン生成工程とを同時に行う、[6]又は[7]に記載のメタンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の目的は、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要とせず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することができる。
本発明の別の目的は、再生可能エネルギーを利用し、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要とせず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することができる。
本発明のさらに別の目的は、内燃機関からの二酸化炭素を含む排気ガスを利用し、水の電気分解による水素の生成と、水素と二酸化炭素との反応によるメタンの生成とを複数の装置を必要せず、同時に行うことができるメタンの製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るメタンの製造装置の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るメタンの製造装置の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るメタンの製造装置の概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るメタンの製造装置の概略断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るメタンの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
<メタンの製造装置>
本発明の一態様に係るメタンの製造装置について、図1を参照しながら説明する。メタンの製造装置100は、反応器101を備え、反応器101は、固体電解質膜102と、固体電解質膜102上に配置された複数の電極103、104からなる電極群105とを有する。
【0011】
反応器101は、入口106をさらに有することができる。入口106から、後述する二酸化炭素及び水を含有するガスは、入口106から反応器101内に供給することができる。
【0012】
メタンの製造装置100において、二酸化炭素及び水を含有するガスは電極群105と接触することにより、水の電気分解が起こり、水素と酸素とが生じ、電気分解により生じた水素と二酸化炭素とが水素化触媒存在下で反応し、メタンと水とが生じる。生成した水は、電気分解され、水素と酸素とを生じさせる。
【0013】
本発明のメタンの製造装置は、水の電気分解とメタンの生成とを複数の装置を用いずに行うことができるため、水の電気分解とメタンの生成とを行うための装置や施設を分けて設置したり、生じた水素を貯蔵及び移送するための装置や施設を設置したりする必要がないため、装置にかかる費用や設置スペースの観点から有利である。
【0014】
反応器101は、出口107をさらに有することができる。生成したメタンを含有するガスは出口107から取出すことができる。
【0015】
反応器101は、二酸化炭素と水素との反応を行い易くするために反応器中のガスを加熱するための加熱装置を備えていてもよい。
【0016】
固体電解質膜102は、固体電解質物質を少なくとも1種含むことができる。固体電解質物質としては、例えばイットリア安定化ジルコニア(ZrO-Y;以下、YSZとも表記することもある)、酸化セリウム(CeO)及びガリウム酸ランタン(LaGaO)等が挙げられる。固体電解質物質としては、好ましくはYSZである。
【0017】
固体電解質膜102がYSZを含む場合、電気分解によって反応器101の内部と外部において酸素分圧の差が生じることにより、YSZ内で酸素イオンの移動が起こり、結果、電気分解が促進され易くなるため有利である。また、固体電解質膜102がYSZを含む場合、電気分解により生じた酸素を固体電解質膜102を通じて反応器外に排出し易くなり、酸素と水素とが反応しにくくなるため安全性の観点から有利である。
【0018】
固体電解質膜102は、例えば基板上に形成された固体電解質物質を含む印刷膜であることができる。基板は、例えばシリコン基板(以下、Si基板とも表記する)であることができる。基板の厚みは、例えば10μm以下であってよく、基板上に後述するマイクロヒーターが形成される場合、熱の伝わりやすさの観点から好ましくは2μm以下である。
【0019】
固体電解質膜102がYSZを含む場合、YSZを機能させ易くする観点から基板上にマイクロヒーターが形成されていてもよい。基板上にマイクロヒーターが形成される場合、マイクロヒーターは絶縁膜に挟まれた状態で形成することができる。マイクロヒーターの形状は、例えば基板の平面視において(基板の厚み方向からみて)波状に形成することができる。絶縁膜としては、例えばSiO印刷膜やAl印刷膜等が挙げられる。
【0020】
固体電解質膜102は、片側面が反応器101の外部に露出するように設置されていてよい。固体電解質膜102の片側面が反応器101の外部に露出することで、水の電気分解により生じた酸素を反応器101の外部へ排出し易くすることができる。
【0021】
電極群105は、複数の電極から構成される。複数の電極は、水の電気分解において陽極及び陰極として機能する観点から好ましくは単独または複数の一対の電極である。図1において、電極103は陰極側の電極として、電極104は陽極側の電極として機能することができる。電極群105を構成する複数の電極は、図1のように固体電解質膜102の両側に電極103、104として形成されていてもよく、あるいは複数の電極全てが固体電解質膜102の反応器101内側となる片側に形成されていてもよい。複数の電極がいずれも固体電解質膜102の反応器101内側となる片側に形成される場合、複数の電極は例えば櫛形電極として形成されていてよい。図1に示す通り、陽極側となる電極104が反応器101の外側面に設けられることにより、酸素を反応器101から排出し易くなる傾向にある。
【0022】
電極群105を構成する複数の電極は水素化触媒を含む。電極が水素化触媒を含むことにより、水の電気分解により陰極側に生じた水素と二酸化炭素とが水素化触媒と接触し易くなり、メタンを効率的に生成することができる。また、メタンと共に生じた水は、生じた直後に電極と接触し易くなるため水の電気分解もまた効率的に行われることができる。
【0023】
水素化触媒としては、例えばロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。水素化触媒としては、高温における二酸化炭素のメタンへの転換率の観点から好ましくはプラチナである。
【0024】
電極群105を構成する複数の電極が全て水素化触媒を含んでいてもよく、陰極側の電極だけが水素化触媒を含んでいてもよい。電極群105を構成する複数の電極が全て水素化触媒を含む場合、電極103、104がいずれも固体電解質膜102の反応器101内側の片側に形成されるときに水素と二酸化炭素との反応において有利となる。電極群105を構成する複数の電極は、好ましくは水素化触媒から形成される。
【0025】
電極103、104は、例えば多孔質電極であってよく、好ましくは多孔質プラチナ電極である。電極103、104が多孔質電極であることにより、酸素の排出の観点から有利である。電極103、104は、例えば印刷により形成された印刷電極であることができる。電極103、104は好ましくは多孔質印刷電極であり、より好ましくは多孔質プラチナ印刷電極である。
【0026】
電極103、104の厚みは例えば50nm以上20μm以下であることができる。電極103、104が印刷電極である場合、電極103、104の厚みは例えば100nm以上1000nm以下であることができる。
【0027】
固体電解質膜102は、電極103、104を覆う多孔質膜を有していてよい。多孔質膜としては、例えばAl、SiO、MgO、アモルファスガラス等が挙げられる。多孔質膜の厚みとしては、例えば50nm以上20μm以下であってよい。多孔質膜は、例えば印刷により形成された印刷膜であることができる。
【0028】
固体電解質膜102、電極103、104、基板、マイクロヒーター、絶縁膜、多孔質膜の形状や大きさは所望されるメタンの生成容量や反応器の形状、用途に応じて適宜変更することができる。
【0029】
二酸化炭素及び水を含有するガスの供給源108として、例えば内燃機関をさらに備えることができる。内燃機関としては、例えば火力発電や自動車における内燃機関等が挙げられる。反応器101は、例えば入口106に接続された配管109を通じて内燃機関からの排気ガスを吸入することができる。配管109には、バルブや流量計が設置されていてよい。排気ガスは通常、二酸化炭素及び水を含有するため本発明の装置に供給する二酸化炭素及び水を含有するガスとして好適である。本発明の製造装置において排気ガスを利用することは、環境汚染防止の観点から有利である。
【0030】
二酸化炭素及び水を含有するガスの温度は、特に限定されず、例えば室温であってもよいし、室温以下の温度または室温以上の温度であってもよい。二酸化炭素及び水を含有するガスの温度が比較的低い場合でも固体電解質膜102を加熱することにより、二酸化炭素と水素とを反応させ易くすることができる。
【0031】
電極群105に供給する電力の供給源110として、例えば熱電発電装置、回生エネルギー発電装置等をさらに備えることができる。供給源110が熱電発電装置である場合、内燃機関で生じる熱により発電することができる。内燃機関は、上述の供給源108として用いる内燃機関を利用することができる。内燃機関で生じる熱の温度は、例えば300℃以上650℃以下であってよく、好ましくは400℃以上600℃以下である。
【0032】
熱電発電に用いられる材料としては、例えばアンチモン・テルル系(Sb-Te系)、ビスマス・テルル系(Bi-Te系)、鉛・テルル系(Pb-Te系)、スクッテルド型アンチモン化合物、シリコン・ゲルマニウム系(Si-Ge系)等が挙げられる。供給源108が内燃機関である場合、内燃機関により生じる熱の温度の観点から好ましくはアンチモン・テルル系(Sb-Te系)、ビスマス・テルル系(Bi-Te系)である。
【0033】
回生エネルギー発電装置としては、例えば自動車や電車等の回生ブレーキが挙げられる。回生ブレーキにより発電した電力をリチウムイオンバッテリー等に蓄え、電極群105に供給する電力の供給源110として用いることができる。
【0034】
反応器101は、例えば出口107からメタン含有ガスを排出することができる。配管111には、バルブや流量計が設置されていてよい。排出されたメタン含有ガスは、例えば出口107に接続された配管111を通じて接続されたメタン分離装置112等に供給することができる。メタン分離装置112としては、例えば特開2007-297605号広報に記載のメタン分離装置等が挙げられる。
【0035】
本発明のメタンの製造装置は、再生可能エネルギーからメタンを直接的に製造することができると共に、小型化し易いため、例えば自動車や火力発電所に備えることができる。本発明のメタンの製造装置を備える燃料電池車や火力発電所によれば、生成したメタンを燃料として用いることができ、排気がクリーンであるため、燃費向上や環境汚染防止の観点から有利である。
【0036】
図2は、本発明のメタンの製造装置の別の一実施態様を示す。図2中、図1中の符号と同一の符号で表される構成要素は、上述の説明が適用される。図2(a)に示すメタンの製造装置は、円筒型の反応器101を備える。図2(b)は反応器101の横断面を示す。反応器101の外側の壁は、電極103、104を備える固体電解質膜102で構成される。入口106より供給された二酸化炭素及び水を含むガスが電極103に接触することにより、水の電気分解及びメタンの生成が起こり、出口107よりメタン含有ガスが取り出される。水の電気分解により生じた酸素は、固体電解質膜102を通じて反応器101外に排出される。円筒型を有することにより、ガスの流れが良好となり、ガスが滞留しにくい傾向となるため、効率的にメタンの生成を行うことができる。
【0037】
図3は、本発明のメタンの製造装置の他の一実施態様を示す。図3中、図1中の符号と同一の符号で表される構成要素は、上述の説明が適用される。図3(a)に示すメタンの製造装置は、円筒型の反応器101を備える。図3(b)は反応器101の横断面を示す。反応器101内に、円筒型の電極103、104を備える固体電解質膜102が配置される。入口106より供給された二酸化炭素及び水を含むガスが電極103に接触することにより、水の電気分解及びメタンの生成が起こり、出口107よりメタン含有ガスが取り出される。水の電気分解により生じた酸素は、固体電解質膜102を通じて反応器101外に排出される。円筒型を有することにより、効率的にメタンの生成を行うことができる。図3に示す装置によれば、ガスの流れが良好となり、ガスが滞留しにくい傾向となるためメタンの生成が効率的となり、また、生じた酸素は収集することができ、局所的に排出することができる。
【0038】
図4は、本発明のメタンの製造装置のさらに他の一実施態様を示す。図4中、図1中の符号と同一の符号で表される構成要素は、上述の説明が適用される。図4(a)に示すメタンの製造装置は、円筒型の反応器101を備える。図4(b)は反応器101の横断面を示す。反応器101の外側の壁が、電極103、104を備える固体電解質膜102で構成されるとともに、反応器101内に、円筒型の電極103、104を備える固体電解質膜102が配置される。入口106より供給された二酸化炭素及び水を含むガスが電極103に接触することにより、水の電気分解及びメタンの生成が起こり、出口107よりメタンを含むガスが取り出される。水の電気分解により生じた酸素は、固体電解質膜102を通じて反応器101外に排出される。図4に示す装置によれば、反応器の外側と内側に電極を備えた固体電解質膜102を有することによりガスと電極及び水素化触媒との接触面積が大きくなり、かつガスが滞留しにくくなるため、メタンを効率的に製造することができる。
【0039】
<メタンの製造方法>
本発明の一態様に係るメタンの製造方法について、図5を参照しながら説明する。メタンの製造方法は、反応器中に、二酸化炭素及び水を含有するガスを供給するガス供給工程S10と、反応器中において、電極群を有する固体電解質膜を用いて水を電気分解し、水素を生成する水素生成工程S20と、反応器中において、水素と、二酸化炭素とを水素化触媒存在下で反応させ、メタンを生成するメタン生成工程S30と、メタンを含むガスを反応器から排出するガス排出工程S40とを含む。
【0040】
メタンの製造方法は、上記工程の全て又はいずれかを組み合わせて同時に行ってよく、あるいは各工程を工程S10から工程S40の順に連続的に行ってもよい。また、いずれかの工程を組み合わせて同時に行い、残りの工程を連続的に行ってもよい。水素生成工程S20とメタン生成工程S30とを同時に行うことがメタンを効率的に生成し易くなる観点から好ましい。
【0041】
上記のガス供給工程S10からガス排出工程S40を連続的に行う場合、例えば反応器中に二酸化炭素及び水を含有するガスを充填した後、二酸化炭素及び水を含有するガスの供給を停止し、反応器を密閉状態とし、次いで、反応器内で、水の電気分解を行い、メタンを生成させた後、反応器からメタンを含むガスを排出させることができる。各工程は、単独で又は複数の工程を組み合わせて連続して2回以上行ってもよい。
【0042】
ガス供給工程S10において、反応器に供給する二酸化炭素及び水を含有するガスの温度は、特に限定されず、例えば室温であってもよいし、室温以下の温度または室温以上の温度であってもよい。二酸化炭素及び水を含有するガスの温度が比較的低い場合には、メタン生成工程S30において二酸化炭素と水素とを反応させ易くする観点から、固体電解質膜を加熱することができる。
【0043】
二酸化炭素及び水を含有するガスとして、例えば火力発電や自動車のエンジンなどの内燃機関からの排気ガスを供給することができる。排気ガスは通常、二酸化炭素及び水を含有するため、本発明の製造方法に好適である。
【0044】
反応器についての説明及び好ましい範囲は、上述のメタンの製造装置における説明が適用される。
【0045】
水素生成工程S20において、水を電極群と接触させ、水素を生成させる。電気分解させる水は、二酸化炭素及び水を含有するガス中の水だけでなく、後述のメタン生成工程S30において生じた水も含まれる。
【0046】
電極群を有する固体電解質膜は、反応器内部に設置することができる。固体電解質膜の一部又は全部を反応器外に露出させることで、水の電気分解により生じた酸素を反応器の外部へ排出し易くすることができる。電極群は、複数の電極から構成される。複数の電極は、水の電気分解において陽極および陰極として機能する観点から好ましくは1以上の一対の電極である。水の電気分解により生じた酸素は、反応器外部に排出することができる。水の電気分解において陽極側となる電極が反応器の外側面に設けられることにより、酸素を反応器外部へ排出し易くすることができる。
【0047】
電極群に供給する電力は、例えば熱電発電装置等により供給することができる。熱電発電装置、熱電発電に用いる材料の説明及び好ましい範囲は、上述のメタンの製造装置における説明が適用される。
【0048】
電極群に供給する電力を熱電発電装置より供給する場合、内燃機関で生じる熱により発電することができると共に内燃機関から生じる排気ガスを二酸化炭素及び水を含有するガスとして供給することができるため好適である。
【0049】
電極群、電極群を構成する複数の電極、固体電解質膜及び内燃機関についての説明及び好ましい範囲は、上述のメタンの製造装置における説明が適用される。
【0050】
メタン生成工程S30において、反応器中において、水素と、二酸化炭素とを水素化触媒存在下で反応させ、メタンを生成させる。
【0051】
水素化触媒についての説明及び好ましい範囲は、上述のメタンの製造装置における説明が適用される。水素化触媒は、上述の複数の電極に含ませてよく、上述の複数の電極を形成してもよい。
【0052】
二酸化炭素と水素とを反応させる温度は、例えば300℃以上650℃以下であってよく、好ましくは350℃以上600℃以下、より好ましくは400℃以上550℃以下である。上記温度範囲を維持するために、反応器中の雰囲気を加熱することができる。上記温度範囲であれば、二酸化炭素及び水を含むガスとして排気ガスを用い易くなる傾向にある。
【0053】
ガス排出工程S40において、生成したメタンを含むガスを排出することができる。排出したガスは、メタン分離装置へ供給することができる。
【0054】
本発明の製造方法によれば、効率的にかつ低コストで、環境を汚染することなくメタンを製造することができる。本発明の製造方法は、内燃機関を備える自動車や火力発電所等において有利に用いられる。
【符号の説明】
【0055】
100 メタンの製造装置、101 反応器、102 固体電解質膜、103,104 電極、105 電極群、106 入口、107 出口、108 二酸化炭素及び水を含有するガスの供給源、109 配管、110 電力の供給源、111 配管、112 メタン分離装置。
図1
図2
図3
図4
図5