(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】転圧管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 3/026 20060101AFI20240918BHJP
E01C 19/23 20060101ALI20240918BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
E02D3/026
E01C19/23
G01C15/00 102C
(21)【出願番号】P 2020176935
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-352044(JP,A)
【文献】特開2002-363963(JP,A)
【文献】特開2003-239287(JP,A)
【文献】特開2015-161082(JP,A)
【文献】特開2002-129546(JP,A)
【文献】特開2015-168991(JP,A)
【文献】中国実用新案第207457813(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/026
E01C 19/23
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場で転圧作業を行う作業機械の位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記施工現場に対応づけられて予め設定された複数の区画のそれぞれの転圧回数を、前記位置情報取得装置で取得された前記作業機械の位置情報に基づいて取得し、
前記複数の区画と、前記複数の区画のそれぞれに対応する転圧回数とを重ねて表示装置に表示させる制御装置とを備えた転圧管理システムにおいて、
前記複数の区画のそれぞれの転圧作業の施工品質に係る情報である施工品質情報を取得する転圧品質情報取得装置を備え、
前記制御装置は、
前記複数の区画のそれぞれの前記施工品質情報が、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質に達しているか否かを判定し、
前記複数の区画のうち前記施工品質情報が前記基準転圧品質に達していないと判定した区画については、前記表示装置に表示される前記区画及び前記転圧回数に未達成情報を重ねて表示させる
とともに、
前記表示装置に表示される前記複数の区画の大きさに応じて予め定めた距離にある複数の前記未達成情報を抽出して1つの未達成情報にまとめ、抽出した複数の前記未達成情報の中心位置の区画及び転圧回数に1つにまとめた前記未達成情報を重ねて表示することを特徴とする転圧管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の転圧管理システムにおいて、
前記転圧品質情報取得装置は、前記複数の区画のそれぞれの施工品質情報として締固め度を取得する締固め度取得装置であり、
前記制御装置は、
前記複数の区画のそれぞれの前記締固め度が、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質である基準締固め度に達しているか否かを判定し、
前記複数の区画のうち前記締固め度が前記基準締固め度に達していないと判定した区画については、前記表示装置に表示される前記区画及び転圧回数に前記締固め度に関する未達成情報を重ねて表示することを特徴とする転圧管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の転圧管理システムにおいて、
前記転圧品質情報取得装置は、前記複数の区画のそれぞれの施工品質情報として層厚を取得する層厚取得装置であり、
前記制御装置は、
前記複数の区画のそれぞれの前記層厚が、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質である基準層厚に達しているか否かを判定し、
前記複数の区画のうち前記層厚が前記基準層厚に達していないと判定した区画については、前記表示装置に表示される前記区画及び転圧回数に前記層厚に関する未達成情報を重ねて表示することを特徴とする転圧管理システム。
【請求項4】
請求項1記載の転圧管理システムにおいて、
前記制御装置は、前記複数の区画のそれぞれについて、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質を前記施工品質情報が達成しているか否かを判定し、前記施工現場の全ての区画について前記施工品質情報が前記基準転圧品質を達成していると判定した場合には、転圧作業が完了したことを前記表示装置に表示することを特徴とする転圧管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
転圧工事の分野においては、転圧管理システムなどを用いて施工品質の管理を行っている。転圧管理システムは、例えば、工事区域を一定サイズの管理ブロックに分割し、転圧機械に搭載した全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)などからの測位結果を利用して、それぞれの管理ブロックに対して転圧機械が通過した回数を集計することで、工事区域について既定の回数を転圧したか否かを管理するものある。
【0003】
転圧工事では、転圧回数と締固め度及び層厚との関係をそれぞれ予め実験的に測定することで、既定の締固め度及び層厚を得るために必要な転圧回数を決定するので、本来的には必要な転圧回数に達していれば、施工後には既定の締固め度及び層厚を満足するはずである。しかしながら、地盤や土の盛られ方は均一ではないため、必要な転圧回数に達したとしても既定の締固め度や層厚を満足しない場合がある。
【0004】
そこで、例えば、加速度センサなどを用いて締固め度を判定したり、或いは、GNSSの高さデータなどを用いて層厚を判定したりして、規定の締固め度や層厚を満足しているかどうかを表示することで、施工品質の向上を図る技術が知られている。例えば、特許文献1には、盛立工事現場を移動して転圧する振動ローラから送信される三次元座標による位置情報を取り込んで出来形情報を得る現場管理システムにおいて、前記盛立工事現場を予め所定の単位面積に分割された基盤形状として設定しておき、前記振動ローラから送信される前記単位面積ごとの前記三次元座標による位置情報と転圧情報を取得し、その位置情報の標高データと転圧情報の転圧回数データに基づいて前記単位面積ごとに、任意標高に対応した転圧完了結果を出力する盛立工事における転圧管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、転圧回数と締固め度とを別々の異なる画面に表示するため、転圧回数と締固め度との両方を満足しているかどうかを転圧作業中にリアルタイムで確認することは困難であり、既定の転圧回数や締固め度に達していない区画の見落としにより、未完了区画が発生するおそれがある。未完了区画が発見された場合、転圧機械のオペレータは、転圧機械を未完了区画まで移動させて追加の転圧を行う必要があるため、作業効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、未完了区画の見落としを抑制することで、作業効率の低下を抑制しつつ施工品質を向上することができる転圧管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、施工現場で転圧作業を行う作業機械の位置情報を取得する位置情報取得装置と、前記施工現場に対応づけられて予め設定された複数の区画のそれぞれの転圧回数を、前記位置情報取得装置で取得された前記作業機械の位置情報に基づいて取得し、前記複数の区画と、前記複数の区画のそれぞれに対応する転圧回数とを重ねて表示装置に表示させる制御装置とを備えた転圧管理システムにおいて、前記複数の区画のそれぞれの転圧作業の施工品質に係る情報である施工品質情報を取得する転圧品質情報取得装置を備え、前記制御装置は、前記複数の区画のそれぞれの前記施工品質情報が、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質に達しているか否かを判定し、前記複数の区画のうち前記施工品質情報が前記基準転圧品質に達していないと判定した区画については、前記表示装置に表示される前記区画及び前記転圧回数に未達成情報を重ねて表示させるとともに、前記表示装置に表示される前記複数の区画の大きさに応じて予め定めた距離にある複数の前記未達成情報を抽出して1つの未達成情報にまとめ、抽出した複数の前記未達成情報の中心位置の区画及び転圧回数に1つにまとめた前記未達成情報を重ねて表示するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、未完了区画の見落としを抑制することで、作業効率の低下を抑制しつつ施工品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】転圧管理システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】締固め度に係る試験施工情報を示す図である。
【
図4】転圧管理システムの処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】表示部に表示される施工現場マップの一例を示す図である。
【
図6】表示部に表示される施工現場マップの一例を示す図であり、フラグをまとめる前の表示を示す図である。
【
図7】表示部に表示される施工現場マップの一例を示す図であり、フラグをまとめた後の表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を
図1~
図8を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る転圧管理システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0013】
図1において、転圧管理システムは、作業機械の一種である振動ローラやタイヤローラなどの転圧機械100と、転圧機械100のオペレータが情報の確認や入力を行うタブレットなどの情報端末200とを備えている。
【0014】
転圧機械100は、転圧機械100に働く加速度を検出する加速度センサ101と、施工現場で転圧作業を行う転圧機械100の位置情報を取得する位置情報取得装置としての全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)103と、転圧機械100の動作を制御するコントローラ104と、転圧機械100における各種情報の伝達を行うCAN(Controller Area Network)102とを備えている。
【0015】
GNSS103は、施工現場に設定された3次元座標系(施工現場座標系)における転圧機械100の座標を位置情報として取得する。加速度センサ101で取得された加速度の情報、及び、GNSS103で取得された位置情報は、CAN102を介してコントローラ104に送信される。
【0016】
コントローラ104は、各種情報を記憶する記憶部104aと、転圧機械100と外部との通信を行う通信部104bとを有している。
【0017】
記憶部104aは、CAN102を介して送信される加速度の情報を位置情報と対応させて記憶する。
【0018】
通信部104bは、例えば、無線LANなどにより情報の授受を行う通信機能部であり、記憶部104aに記憶された加速度の情報や位置情報などを情報端末200に送信する。
【0019】
情報端末200は、転圧機械100の通信部104bから送信された加速度の情報や位置情報などを受信する通信部201と、種々の情報を入力するためのデータ入力部203と、通信部201を介して転圧機械100から受信した情報と、データ入力部203から入力された情報とを記憶する記憶部202と、記憶部202に記憶された情報に基づいて転圧進捗状況判定処理(後述)を実行する転圧進捗状況判定部204と、施工現場における転圧作業に際して事前に行う試験施工の結果(試験施工情報)を入力する試験施工データ入力部205と、試験施工データ入力部205から入力された試験施工情報を記録する試験施工データ記録部206と、転圧進捗状況判定部204の判定結果と、試験施工データ記録部206に記憶された試験施工情報とに基づいて表示判定処理を行う表示判定部207と、表示判定部207の判定結果に基づいてオペレータに提示するための各種情報を表示する表示部208とを備えている。
【0020】
データ入力部203からは、例えば、施工現場において工事の対象となる工事区域を示す3次元座標が入力される。
【0021】
記憶部202には、通信部201を介して転圧機械100から受信した情報と、データ入力部203から入力された工事区域の3次元座標とが記憶される。
【0022】
転圧進捗状況判定部204は、転圧進捗状況判定処理として、工事区域の各位置における転圧機械100による転圧回数を判定する回数判定処理、工事区域の各位置における締固め度を判定する締固め判定処理、及び、工事区域の各位置における層厚を判定する層厚判定処理を行うものであり、回数判定処理を行う回数判定部204aと、締固め度判定処理を行う締固め度判定部204bと、層厚判定処理を行う層厚判定部204cとを有している。
【0023】
回数判定部204aは、記憶部202に記憶された転圧機械100の位置情報に基づいて、施工現場の各位置における転圧回数を判定する。転圧回数の判定は、例えば、国土交通省が「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」に規定する方法に従う。転圧回数は、施工現場に予め設定した複数の区画のそれぞれについて、転圧機械100の転圧機能部(例えば、ローラ)の通過回数をカウントすることで算出する。ここで、施工現場に設定する区画とは、施工品質の管理を行う単位ブロック(管理ブロック)のことであり、施工範囲(締固めを行う域内)を転圧作業に使用する締固め機械の種類に応じて予め定めたサイズの正方形の領域に分割したものである。例えば、「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」(国土交通省)においては、タイヤローラにおける管理ブロックは一辺が0.50メートルの正方形に規定されている。
【0024】
すなわち、回数判定部204aは、転圧機械100の位置情報に基づいて、施工現場における転圧機械100の通過範囲および進行方向を算出し、各管理ブロックにおける転圧機械100の通過回数を転圧回数として算出する。転圧機械100の通過範囲は、予め記憶されている転圧機械100の設計情報、及び、転圧機械100に対するGNSS103の取付位置情報から算出可能である。また、転圧機械100の進行方向は、位置情報の移動方向から算出可能である。
【0025】
締固め度判定部204bは、記憶部202に記憶された転圧機械100の加速度の情報、及び、対応する位置情報に基づいて、施工現場の各位置(管理ブロック)における締固め度を判定する。例えば、転圧機械100として振動ローラを考える場合、振動ローラから地盤に付与される衝撃の反力により振動ローラに生じる加速度は、軟らかい地盤では小さくなり、固い地盤では大きくなる。すなわち、締固め度が高い地盤では加速度が大きくなり、締固め度が小さい地盤では加速度が小さくなる傾向にある。そこで、このような原理を用いて地盤の締固め度を判定する。なお、加速度以外の情報に基づいた締固め度の算出方向を用いても良い。
【0026】
層厚判定部204cは、記憶部202に記憶された転圧機械100の位置情報(標高データ)と、予め記憶された転圧作業前(盛り土前)の標高データとに基づいて、施工現場の各位置(管理ブロック)における層厚を判定する。具体的には、「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」(国土交通省)に規定されているように、締固め施工時の管理ブロックの標高とこの管理ブロックの直下にある下層施工時の管理ブロックの標高の差分をもって層厚としている。管理ブロックの標高は、管理ブロック内の平均値を用いる。
【0027】
試験施工データ記録部206に記録される試験施工情報は、施工現場における作業開始前に、試験用に設定した試験ヤードにおいて実際の施工内容と同等の転圧作業(実際に使う盛り土材料と転圧機械による転圧作業)を試験的に行った結果に基づいて得られるものであり、転圧回数に対する締固め度、及び、転圧回数に対する層厚をそれぞれ示すものである。すなわち、施工現場における転圧作業において、各管理ブロックにおける転圧回数を試験施工データと比較することで、締固め度及び転圧回数をそれぞれ推定することができる。
【0028】
図2は、層厚に係る試験施工情報を示す図である。また、
図3は、締固め度に係る試験施工情報を示す図である。
【0029】
図2に示すように、転圧回数(n)が増加するのに応じて、試験施工情報である層厚の実験値hr(n)が減少する。層厚判定部204cで判定されるような各管理ブロックの層厚の計測値h(n)は、実験値に近い値であり、転圧回数(n)から層厚を精度良く推定することができる。
【0030】
同様に、
図3に示すように、転圧回数(n)が増加するのに応じて、試験施工情報である締固め度の実験値pr(n)が減少する。締固め度判定部204bで判定されるような各管理ブロックの締固め度の計測値p(n)は、実験値に近い値であり、転圧回数(n)から締固め度を精度良く推定することができる。
【0031】
表示判定部207は、各管理ブロックにおける転圧回数を視覚的に判別容易な方法で表示部208に表示する。具体的には、例えば、転圧回数に応じて色を規定し、施工現場および管理ブロックを模した施工現場マップを表示部208に表示する際に、各管理ブロックを転圧回数に応じて色分けすることによりオペレータに転圧回数を提示する。また、表示判定部207は、転圧進捗状況判定部204の判定結果と、試験施工データ記録部206に記憶された試験施工情報とに基づいて表示判定処理を行う。具体的には、各管理ブロックについて、転圧進捗状況判定部204で得られる現在の締固め度および層厚が、試験施工データ記録部206に記憶された試験施工情報と現在の転圧回数とから算出される締固め度及び層厚の推定値をそれぞれ満足しているか否かを判定し、判定結果を施工現場マップに重ねて表示する。
【0032】
図4は、転圧管理システムの処理内容を示すフローチャートである。
【0033】
図4において、転圧進捗状況判定部204は、まず、記憶部202から転圧機械100の加速度の情報および位置情報などの観測データを読み込む(ステップS100)。
【0034】
続いて、回数判定部204aは、各メッシュ(各管理ブロック)の転圧回数を計算して表示判定部207に出力し(ステップS110)、表示判定部207は、転圧回数を表示部208に表示する(ステップS120)。
【0035】
図5は、表示部に表示される施工現場マップの一例を示す図である。
【0036】
図5に示すように、施工現場マップには、各管理ブロックの転圧回数が視覚的に判別容易な方法で表示されている。なお、
図5においては、図示の都合上、転圧回数の違いをハッチングの種類の違いで表現している。また、施工現場における工事対象の領域(工事区域)とその他の領域との境界を点線で示している。
【0037】
続いて、
図4において、締固め度判定部204bは、各メッシュ(各管理ブロック)の締固め度を計算して表示判定部207に出力し(ステップS130)、表示判定部207は、締固め度が十分であるか否かを判定する(ステップS140)。ここで、ステップS140の判定では、締固め度判定部204bで得られる現在の締固め度と、試験施工データ記録部206に記憶された試験施工情報と現在の転圧回数とから算出される締固め度との差分の絶対値が予め定めた値よりも小さいか否かを判定している。
【0038】
ステップS140での判定結果がNOの場合には、該当する管理ブロックが工事区域内であるか否かを判定し(ステップS141)、判定結果がYESの場合には、締固め度が不十分である旨を示すフラグ(記号)を当該管理ブロックに対応して生成する(ステップS142)。
【0039】
ステップS140での判定結果がYESの場合、ステップS141での判定結果がNOの場合、及び、ステップS142での処理が終了した場合には、続いて、層厚判定部204cは、各メッシュ(各管理ブロック)の層厚を計算して表示判定部207に出力し(ステップS150)、表示判定部207は、層厚が十分であるか否かを判定する(ステップS160)。ここで、ステップS160の判定では、層厚判定部204cで得られる現在の層厚と、試験施工データ記録部206に記憶された試験施工情報と現在の転圧回数とから算出される層厚との差分の絶対値が予め定めた値よりも小さいか否かを判定している。
【0040】
ステップS160での判定結果がNOの場合には、該当する管理ブロックが工事区域内であるか否かを判定し(ステップS161)、判定結果がYESの場合には、層厚が不十分である旨を示すフラグ(記号)を当該管理ブロックに対応して生成する(ステップS162)。
【0041】
ステップS140での判定結果がYESの場合、ステップS141での判定結果がNOの場合、及び、ステップS142での処理が終了した場合には、続いて、表示判定部207は、表示部208に表示される施工現場マップのサイズ指定(例えば、データ入力部203を介したオペレータからのサイズ指定)が縮小表示であるか否かを判定し(ステップS170)、判定結果がNOの場合には、締固め度に係るフラグ(記号)及び層厚に係るフラグ(記号)を、表示部208の施工現場マップに表示された転圧回数に重ねて表示させる(ステップS190)。
【0042】
図5に示すように、締固め度が不十分である旨を示すフラグ(記号)、層厚が不十分である旨を示すフラグ(記号)、及び、締固め度と層厚の両方が不十分である旨のフラグ(記号)が、各管理ブロックについて転圧回数に重ねて表示される。
【0043】
また、
図4において、ステップS170での判定結果がYESの場合には、締固め度に係るフラグ(記号)及び層厚に係るフラグ(記号)のうち、近い位置にある同種のフラグを1つのフラグ(記号)にまとめ(ステップS180)、まとめたフラグ(記号)と、まとめなかったフラグ(記号)とを含めて、表示部208の施工現場マップに表示された転圧回数に重ねて表示させる(ステップS190)。
【0044】
図6及び
図7は、表示部に表示される施工現場マップの一例を示す図であり、
図6はフラグをまとめる前の表示を、
図7はフラグをまとめた後の表示をそれぞれ示している。
【0045】
図6に示すように、縮小表示した場合において、締固め度や層厚に係るフラグが密集している場合には、全ての区画に対してフラグを表示してしまうと画面が混雑してしまい、見づらくなる。そこで、
図7に示すように、フラグが密集している場所では、画面の拡大率に応じた条件に従って(例えば、予め定めた距離よりも近い)フラグを抽出し、抽出したフラグ同士をまとめ、まとめたフラグに対して代表管理ブロックと代表エリアとを設定して表示する。代表管理ブロック及び代表エリアの設定には、例えば、クラスター分析などの数学的の手法を用いる。すなわち、フラグのある管理ブロック同士の距離が拡大率に応じて予め定めた規定値よりも短ければ、該当する複数のフラグで形成されるクラスター(グループ)を1つのフラグにまとめ、まとめたフラグ(クラスター)の中心位置(例えば、重心)を代表管理ブロックに設定し、まとめたフラグの広がりに応じて、例えば、まとめたフラグを全て含んで面積が最小となる楕円形(又は、円形)の代表エリアを設定する。また、代表管理ブロックに1つにまとめたクラスター(グループ)を重ねて表示する。なお、代表管理ブロックは、代表エリアの中心であってもよい。
【0046】
続いて、完了条件を達成したか否か、すなわち、締固め度判定部204bで取得した締固め度、及び、層厚判定部204cで取得した層厚が、それぞれ、予め定めた完了基準値を満たしたか否かを判定し(ステップS200)、判定結果がYESの場合には、工事完了を示す表示(
図8参照)を表示部208に表示し(ステップS210)、処理を終了する。また、ステップS200での判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0047】
転圧管理システムは、ステップS100~S210の処理を繰り返す。
【0048】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0049】
従来技術においては、転圧回数と締固め度とを別々の異なる画面に表示するため、転圧回数と締固め度との両方を満足しているかどうかを転圧作業中にリアルタイムで確認することは困難であり、既定の転圧回数や締固め度に達していない区画の見落としにより、未完了区画が発生するおそれがある。未完了区画が発見された場合、転圧機械のオペレータは、転圧機械を未完了区画まで移動させて追加の転圧を行う必要があるため、作業効率が低下してしまう。
【0050】
これに対して本実施の形態においては、施工現場で転圧作業を行う作業機械(例えば、転圧機械100)の位置情報を取得する位置情報取得装置(例えば、GNSS103)と、前記施工現場に対応づけられて予め設定された複数の区画(管理ブロック)のそれぞれの転圧回数を、前記位置情報取得装置で取得された前記作業機械の位置情報に基づいて取得し、前記複数の区画と、前記複数の区画のそれぞれに対応する転圧回数とを重ねて表示装置(例えば、表示部208)に表示させる制御装置(例えば、情報端末200)とを備えた転圧管理システムにおいて、前記複数の区画のそれぞれの転圧作業の施工品質に係る情報である施工品質情報を取得する転圧品質情報取得装置(例えば、加速度センサ101、GNSS103、転圧進捗状況判定部204)を備え、前記制御装置は、前記複数の区画のそれぞれの前記施工品質情報が、前記転圧回数に対応して予め定められた基準転圧品質に達しているか否かを判定し、前記複数の区画のうち前記施工品質情報が前記基準転圧品質に達していないと判定した区画については、前記表示装置に表示される前記区画及び前記転圧回数に未達成情報(例えば、フラグ)を重ねて表示させるように構成したので、未完了区画の見落としを抑制することで、作業効率の低下を抑制しつつ施工品質を向上することができる。
【0051】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0052】
100…転圧機械、101…加速度センサ、103…GNSS、104…コントローラ、104a…記憶部、104b…通信部、200…情報端末、201…通信部、202…記憶部、203…データ入力部、204…転圧進捗状況判定部、204a…回数判定部、204b…度判定部、204c…層厚判定部、205…試験施工データ入力部、206…試験施工データ記録部、207…表示判定部、208…表示部