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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】背凭れ、及び椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A47C7/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020179345
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070333
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】野村 元気
(72)【発明者】
【氏名】内山 絵理
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198518(JP,A)
【文献】国際公開第2011/117937(WO,A1)
【文献】特開2014-079519(JP,A)
【文献】特開昭61-005814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40-48
B60N 2/64-66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に開口する開口部を有する背フレームと、
前記背フレームの前面側に張設され、着座者の上半身を受ける荷重支持面を形成する張材と、
前記張材の後方であって、前後方向から見て前記開口部の内側に配置されたランバーサポートと、
前記背フレームと一体に形成されるとともに、前後方向から見て前記開口部の内側に向けて突出し、前記ランバーサポートを支持する支持部と、を備え
前記ランバーサポートは、前記支持部に一体で形成された一対のランバーサポート板を有し、
それぞれの前記ランバーサポート板は、幅方向のいずれか一方に配置された基端部が前記支持部に支持され、前記幅方向の他方に配置された先端部側が前後方向に変位するよう弾性変形可能に形成され
前記ランバーサポート、前記背フレーム及び前記支持部は、樹脂材料により一体に成形されている
背凭れ。
【請求項2】
それぞれの前記ランバーサポート板は、
前記支持部から前方に延びる前方延出部と、
前記前方延出部から前記幅方向に延びるとともに、前記基端部が前記前方延出部に連続し、前記先端部が前記前方延出部から前記幅方向に離間して配置された板状部と、を備える
請求項1に記載の背凭れ。
【請求項3】
それぞれの前記ランバーサポート板の前記板状部は、それぞれの前記ランバーサポート板の前記前方延出部から前記幅方向で互いに接近する向きに延びている請求項2に記載の背凭れ。
【請求項4】
前記支持部は、
前記背フレームの前記幅方向の中央部に配置され、上下方向に延びる支持部本体と、
前記支持部本体に対して前記幅方向の両側に前記支持部本体と一体に形成され、前後方向から見て、それぞれの前記ランバーサポート板の周囲を囲む枠部と、を備え、
前記前方延出部は、前記枠部に接続されている
請求項3に記載の背凭れ。
【請求項5】
前記ランバーサポート板は、上下方向の全長にわたって前記支持部に接続されている請求項1から4のいずれか一項に記載の背凭れ。
【請求項6】
前記支持部の上端は前記背フレームの上部に接続され、
前記支持部の下端は前記背フレームの下部に接続されている請求項1から5のいずれか一項に記載の背凭れ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の背凭れを備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ、及び椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の着座感を向上させるため、背凭れにランバーサポート(ランバーサポート装置)を備えることが行われている。例えば、特許文献1には、背凭れに装着されたランバーサポートを備える構成の椅子が開示されている。この構成において、背凭れは、前後に開口した背フレームと、背フレームに張設されたメッシュ材と、背フレームの内側に背フレームと一体に形成された背支柱と、を備えている。ランバーサポートは、メッシュ材を介して着座者を後ろから支えるパッド体と、パッド体が高さ調節自在に取付けられたランバーガイド体とを備えている。ランバーガイド体は、背支柱と背フレームとに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-83954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献に開示されたような構成では、背支柱が一体に形成された背フレームと、ランバーガイド体と、パッド体と、が別々に必要である。このため、ランバーサポートを備えた背凭れを構成する部品点数が多く、部品コスト、及び組立の工数がかかり、コスト上昇に繋がる。
本発明は、ランバーサポートを備えた背凭れの部品点数を抑えるとともに組立の容易化を図り、低コスト化を図ることができ、しかも着座感に優れる背凭れ、及び椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る背凭れは、前後方向に開口する開口部を有する背フレームと、前記背フレームの前面側に張設され、着座者の上半身を受ける荷重支持面を形成する張材と、前記張材の後方であって、前後方向から見て前記開口部の内側に配置されたランバーサポートと、前記背フレームと一体に形成されるとともに、前後方向から見て前記開口部の内側に向けて突出し、前記ランバーサポートを支持する支持部と、を備え、前記ランバーサポートは、前記支持部に一体で形成された一対のランバーサポート板を有し、それぞれの前記ランバーサポート板は、幅方向のいずれか一方に配置された基端部が前記支持部に支持され、前記幅方向の他方に配置された先端部側が前後方向に変位するよう弾性変形可能に形成されている。
【0006】
このように、背フレームと、支持部と、一対のランバーサポート板とが一体に形成されている。これにより、ランバーサポートを備えた椅子の背凭れを構成する部品点数を抑えるとともに、組立の工数を抑えることができる。また、ランバーサポート板は、着座者の上半身の荷重を受けることで弾性変形し、先端部側が前後方向に変位する。これにより、ランバーサポート板自体も、少ない部品点数で、良好な着座感を得ることができる。したがって、ランバーサポートを備えた背凭れの部品点数を抑えるとともに組立の容易化を図り、低コスト化を図ることが可能となる。
【0007】
本発明の一態様に係る背凭れにおいて、それぞれの前記ランバーサポート板は、前記支持部から前方に延びる前方延出部と、前記前方延出部から前記幅方向に延びるとともに、前記基端部が前記前方延出部に連続し、前記先端部が前記前方延出部から前記幅方向に離間して配置された板状部と、を備えるようにしてもよい。
この構成によれば、板状部は、幅方向で前方延出部側の基端部が固定端となり、幅方向の反対の先端部が自由端となる。着座者の上半身を受けると、板状部は、前方延出部側の基端部を中心として、先端部側が前後方向に変位するように弾性変形する。また、板状部と支持部との間に前方延出部が配置されることによって、支持部が板状部の前面よりも後方に位置することになる。これにより、着座者の背中に支持部が直接当たることが抑えられる。このようにして、良好な着座感を得ることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様に係る背凭れにおいて、それぞれの前記ランバーサポート板の前記板状部は、それぞれの前記ランバーサポート板の前記前方延出部から前記幅方向で互いに接近する向きに延びているようにしてもよい。
この構成によれば、一対のランバーサポート板の板状部は、幅方向の外側に固定端となる基端部が配置され、幅方向の内側に自由端となる先端部が配置されることになる。これにより、着座者の背中の中央部側に、前後方向に変位しない板状部の基端部が当たることがなく、着座者の背中から受ける荷重によって、板状部の先端部が前後方向に変位する。これによって、着座感をさらに高めることが可能となる。
【0009】
本発明の一態様に係る背凭れにおいて、前記支持部は、前記背フレームの前記幅方向の中央部に配置され、上下方向に延びる支持部本体と、前記支持部本体に対して前記幅方向の両側に前記支持部本体と一体に形成され、前後方向から見て、それぞれの前記ランバーサポート板の周囲を囲む枠部と、を備え、前記前方延出部は、前記枠部に接続されているようにしてもよい。
この構成によれば、各ランバーサポート板の板状部を支持する前方延出部が幅方向の外側に配置されている場合であっても、ランバーサポート板を、枠部を介して幅方向の中央部に配置した支持部本体で支持することができる。また、枠部は、ランバーサポート板の外側を囲むように形成されているので、背フレームと、支持部と、一対のランバーサポート板とを、金型を用いて容易に一体成形することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る背凭れにおいて、前記ランバーサポート板は、上下方向の全長にわたって前記支持部に接続されているようにしてもよい。
この構成によれば、着座者の荷重によってランバーサポート板に捻れモーメントが作用するのを抑えることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る背凭れにおいて、前記支持部の上端は、前記背フレームの上部に接続され、前記支持部の下端は前記背フレームの下部に接続されているようにしてもよい。
この構成によれば、支持部の上端と下端とが背フレームに接続されることになる。これにより、支持部を背フレームに強固に一体化することができ、ランバーサポート板に作用する着座者による荷重を確実に受けることができる。また、支持部が、背フレームの補強要素としても機能することになり、背凭れの強度を高めることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る椅子は、上記したような背凭れを備える。
このような構成によれば、ランバーサポートを備えた背凭れの部品点数を抑えるとともに組立の容易化を図り、低コスト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ランバーサポートを備えた背凭れの部品点数を抑えるとともに組立の容易化を図り、低コスト化を図ることができ、しかも着座感に優れる背凭れ、及び椅子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る椅子を斜め後方から見た斜視図である。
図2】上記椅子の背フレーム及びランバーサポートを斜め前方から見た斜視図である。
図3】上記背フレームに張材を取り付けるための張材フレームを斜め前方から見た斜視図である。
図4】上記椅子の背フレーム及びランバーサポートを前方から見た図である。
図5】上記椅子の第一変形例の構成を示す模式図である。
図6】上記椅子の第二変形例の構成を示す模式図である。
図7】上記椅子の第三変形例の構成を示す模式図である。
図8】上記椅子の第四変形例の構成を示す模式図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る椅子を斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る背凭れ、及び椅子について、図面を参照して説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る椅子1を斜め後方から見た斜視図である。
【0017】
この図1に示すように、椅子1は、支持構造2と、支持構造2上に支持され、着座者が着座する座体3と、座体3に着座した着座者の背中を支持する背凭れ4と、を備えている。
以下の説明において、便宜上、座体3に着座した着座者が前を向く方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称する。また、椅子1が設置される床面F側とその反対側を結ぶ方向を「上下方向」と称する。また、椅子1の幅方向、つまり前後方向と直交する水平方向を「幅方向」と称する。また、図中において、前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示し、左方を矢印LHで示す。
【0018】
支持構造2は、床面F上に設置される。支持構造2は、キャスタ21A付きの多岐脚21と、多岐脚21の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱22と、を有している。
【0019】
座体3は、座フレーム31と、座フレーム31に張設された座面張材32と、を有している。座面張材32の上面は、着座者の荷重を受ける座部荷重支持面32fとされている。座体3は、支持構造2の上端部に設けられた支基(不図示)に下方から支持されている。
【0020】
背凭れ4は、シェル4Sと、張材41と、を備えている。張材41の前面は、着座者の荷重を受ける荷重支持面とされている。
【0021】
図2は、上記椅子1の背フレーム40及びランバーサポート50を斜め前方から見た斜視図である。
シェル4Sは、背フレーム40と、支持部45と、ランバーサポート50と、を有している。背フレーム40は、座体3の下側に備えられた支基(不図示)に連結されている。背フレーム40は、支基(不図示)により前後方向に傾動可能に支持されている。背フレーム40は、側辺部42と、下辺部43と、上辺部44と、を有する枠状に形成されている。背フレーム40は、背凭れ4の外周部を構成する。背フレーム40は、例えば所定の強度を有する樹脂等により一体に形成されている。
【0022】
側辺部42は、背フレーム40の幅方向両側に配置されている。側辺部42の下端部は、座体3の下側で支基(不図示)に連結されている。側辺部42は、支基(不図示)から後方に延び、座体3の後方で上方に向かって延びている。下辺部43は、幅方向に延び、背凭れ4の下部において幅方向両側の側辺部42同士を接続している。上辺部44は、幅方向に延び、背凭れ4の上部において側辺部42の上端部同士を接続している。背フレーム40は、側辺部42、下辺部43、及び上辺部44によって前後方向に貫通する開口部40sが画成されている。
【0023】
図3は、上記背フレーム40に張材41を取り付けるための張材フレーム41Fを斜め前方から見た斜視図である。
図1に示すように、張材41は、背フレーム40の前面側に、開口部40sを覆うように張設されている。図3に示すように、張材41の外周部は、枠状の張材フレーム41Fに、タッカー(不図示)等によって張設されている。張材41が張設された張材フレーム41Fは、ネジ(不図示)等によって、図2に示す背フレーム40の前面40fに固定されている。
【0024】
図4は、上記椅子1の背フレーム40及びランバーサポート50を前方から見た図である。
図1図2図4に示すように、支持部45は、背フレーム40と一体に形成されるとともに、正面視において開口部40sの内側に突出している。支持部45は、支持部本体46と、枠部47と、を有している。
【0025】
支持部本体46は、背凭れ4の幅方向の中央部に配置されている。支持部本体46は、上下方向に延びている。支持部本体46の上端は、背フレーム40の上部に配置された上辺部44に接続されている。支持部本体46の下端は背フレーム40の下部に配置された下辺部43に接続されている。
【0026】
枠部47は、支持部本体46の幅方向の両側に、支持部本体46と一体に形成されている。枠部47は、正面視において、幅方向の内側に開口するC字状に形成されている。具体的に、図2図4に示すように、枠部47は、上枠部47aと、下枠部47bと、側枠部47cと、を有している。上枠部47a、及び下枠部47bは、上下方向に間隔をあけて配置されている。上枠部47a、及び下枠部47bは、支持部本体46から幅方向の外側に延びている。側枠部47cは、上下方向に延び、上枠部47a、及び下枠部47bの幅方向の外側の端部同士を接続している。枠部47を構成する上枠部47a、下枠部47b、及び側枠部47cは、支持部本体46とともに、後述するランバーサポート板51の外側を囲むように形成されている。
【0027】
ランバーサポート50は、張材41の後方であって、正面視で背フレーム40(開口部40s)の内側に配置されている。ランバーサポート50は、背フレーム40の内側において、着座者の背中周辺と同等の高さに配置されている。ランバーサポート50は、幅方向に間隔をあけて配置された一対のランバーサポート板51を有している。各ランバーサポート板51は、前方延出部52と、板状部53と、を一体に有している。なお、ランバーサポート板51は、少なくとも背フレーム40よりも薄肉になっていることが好ましい。
【0028】
前方延出部52は、支持部本体46に対して幅方向の外側に配置されている。前方延出部52は、枠部47の側枠部47cから前方に延びている。前方延出部52は、上下方向に連続する板状で、幅方向に交差する面に沿っている。前方延出部52は、上下方向の全長にわたって側枠部47cに接続されている。
【0029】
板状部53は、前方延出部52から幅方向の内側に延びている。板状部53の基端部53aは、幅方向の外側で前方延出部52に接続されている。板状部53の基端部53aは、上下方向のほぼ全長にわたって前方延出部52に接続されている。板状部53は、幅方向に連続する板状で、前後方向に交差する面に沿って形成されている。板状部53は、前方延出部52から幅方向の内側に延びている。板状部53の幅方向の内側の先端部53bは、基端部53aに対して幅方向の内側に離間して配置されている。板状部53の前面53fは、張材41(図1参照)の後方に、張材41に近接又は当接した状態で配置されている。
【0030】
このようにして、ランバーサポート板51は、支持部45と一体に形成されている。本実施形態において、ランバーサポート板51の板状部53は、それぞれのランバーサポート板51の前方延出部52から幅方向で互いに接近する向きに延びている。ランバーサポート板51の板状部53の基端部53aは、幅方向の外側で前方延出部52を介して、支持部45に支持されている。板状部53の先端部53bは、基端部53aに対して幅方向の内側に配置されている。ランバーサポート板51の板状部53は、基端部53a側が固定端とされ、先端部53b側が自由端とされた片持ち梁状をなしている。
【0031】
上述した椅子1において、着座者が背凭れ4に凭れ掛かると、ランバーサポート板51には張材41を介して着座者の着座荷重が作用する。すると、ランバーサポート板51の板状部53は、基端部53aを中心とした上下方向に沿う軸線回りに前方延出部52に対して後方に弾性変位する。すなわち、ランバーサポート板51は、先端部53b側が前後方向に変位するよう弾性変形する。これにより、着座者の背中周辺を後方からサポートできる。なお、ランバーサポート板51は、先端部53b側が前後方向に変位するよう弾性変形する構成であれば、全体が弾性変形(撓み変形)する構成であってもよい。
【0032】
上述したように、本実施形態のシェル4Sは、背フレーム40、支持部45及びランバーサポート50が樹脂材料により一体に形成されている。シェル4Sは、例えば金型を構成するコアとキャビティとの離型方向を前後方向に設定した状態で射出成形することで形成される。なお、本実施形態において、「一体に形成」とは、同一材料により一体形成する場合に限らず、二色成形等のように異種材料を同一の金型内で成形する場合等も含む。
【0033】
このように、本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1は、背凭れ4を構成する背フレーム40と、支持部45と、一対のランバーサポート板51とが一体に形成されている構成とした。
このような構成によれば、ランバーサポート50を備えた椅子1の背凭れ4を構成する部品点数を抑えるとともに、組立の工数を抑えることができる。また、ランバーサポート板51は、着座者の上半身の荷重を受けることで弾性変形し、先端部53b側が前後方向に変位する。これにより、ランバーサポート板51自体も、少ない部品点数で、良好な着座感を得ることができる。したがって、ランバーサポート50を備えた背凭れ4の部品点数を抑えるとともに組立の容易化を図り、低コスト化を図ることが可能となる。
【0034】
本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1において、それぞれのランバーサポート板51は、支持部45から前方に延びる前方延出部52と、前方延出部52から幅方向に延びる板状部53と、を備える構成とした。
このような構成によれば、着座者の上半身を受けると、ランバーサポート板51の板状部53が、前方延出部52側の基端部53aを中心として、先端部53b側が前後方向に変位するように弾性変形する。また、板状部53と支持部45との間に前方延出部52が配置されることによって、支持部45が板状部53の前面53fよりも後方に位置することになる。これにより、着座者の背中に支持部45が直接当たることが抑えられる。このようにして、良好な着座感を得ることが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1において、一対のランバーサポート板51の板状部53は、それぞれのランバーサポート板51の前方延出部52から幅方向で互いに接近する向きに延びている構成とした。
このような構成によれば、ランバーサポート板51の板状部53は、幅方向の外側に固定端となる基端部53aが配置され、幅方向の内側に自由端となる先端部53bが配置されることになる。これにより、着座者の背中の中央部側に、前後方向に変位しない板状部53の基端部53aが当たることがなく、着座者の背中から受ける荷重によって、板状部53の先端部53bが前後方向に変位する。そのため、一対のランバーサポート板51が幅方向の内側に向かうに従い後方に向けて配置されることで、着座者の背中を包み込むように支持する。これによって、着座感をさらに高めることが可能となる。
【0036】
本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1において、支持部45は、支持部本体46と、ランバーサポート板51の周囲を囲むように形成された枠部47と、を備え、前方延出部52は、枠部47に接続されている構成とした。
このような構成によれば、前方延出部52が板状部53に対して幅方向の外側に配置されている構成において、幅方向の中央部に配置した支持部本体46でランバーサポート板51を支持することができる。また、枠部47は、ランバーサポート板51の外側を囲むように形成されているので、背フレーム40と、支持部45と、一対のランバーサポート板51とを、金型を用いて容易に一体成形することができる。この際、枠部47の内側を通して金型(コア)が進入することで、枠部47に対して前方延出部52の前方への突出量を調整し易い。そのため、ランバーサポート板51を支持部45と一体に形成した場合であっても、板状部53を支持部45から前方に膨出させ易い。よって、着座者の荷重をランバーサポート板51で支持し易くなる。
【0037】
本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1において、ランバーサポート板51は、上下方向の全長にわたって支持部45に接続される構成とした。
このような構成によれば、着座者の荷重等に起因する例えば幅方向に沿う軸線回りの捻れモーメントがランバーサポート板51に作用するのを抑えることができる。
【0038】
本実施形態に係る背凭れ4、及び椅子1において、支持部45の上端と下端とが背フレーム40に接続される構成とした。
このような構成によれば、支持部45を背フレーム40に強固に一体化することができ、ランバーサポート板51に作用する着座者による荷重を確実に受けることができる。また、支持部45が、背フレーム40の補強要素としても機能することになり、背凭れ4の強度を高めることができる。なお、上述した各実施形態や変形例では、背フレーム40が枠状である構成について説明したが、この構成に限られない。背フレーム40は、支持部45やランバーサポート50が配置される開口部40sを有していればよい。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0040】
(第一変形例)
例えば、上述した実施形態では、背凭れ4の幅方向の中央部に配置した支持部本体46に、枠部47を介してランバーサポート板51を支持するようにしたが、これに限られない。
図5は、上記椅子1の第一変形例の構成を示す模式図である。
例えば、図5に示すように、一対のランバーサポート板51の幅方向の両側に配置した支持部45Bで、各ランバーサポート板51を支持するようにしてもよい。
【0041】
(第二変形例)
図5の第一変形例では、支持部45Bは、その上端と下端とがそれぞれ背フレーム40に接続されているが、支持部45Bは、その上端、及び下端の何れか一方のみが背フレーム40に接続されていてもよい。
図6は、上記椅子1の第二変形例の構成を示す模式図である。
例えば、図6に示すように、支持部45Cの下端のみが背フレーム40に接続されるようにしてもよい。この場合、支持部45Cは、背フレーム40の下辺部43から上方に延びている。この場合、ランバーサポート板51の板状部53の基端部53aは、上下方向のほぼ全長が支持部45Cに接続されるのが好ましい。着差者による荷重がランバーサポート板51に作用した場合に、ランバーサポート板51に捩りモーメントが作用するのを抑えるためである。
【0042】
(第三変形例)
上述した実施形態及び変形例では、支持部45、45B、45Cが、それぞれ上下方向に延びているが、これに限られない。
図7は、上記椅子1の第三変形例の構成を示す模式図である。
図7に示すように、支持部45Dは、背フレーム40の側辺部42から幅方向内側に延びるように形成してもよい。図示の例のように、支持部45Dの上下方向の寸法を、ランバーサポート板51の上下方向の寸法よりも大きくすることで、ランバーサポート板51に対して支持部45Dの剛性を大きくすることができる。これにより、ランバーサポート板51の変位を促した上で、支持部45Dの捻じれ変形等を抑制できる。
【0043】
(第四変形例)
上述した実施形態では、一対のランバーサポート板51は、幅方向の外側に基端部53aが配置され、幅方向の内側に先端部53bが配置されている構成としたが、これに限られない。
図8は、上記椅子1の第四変形例の構成を示す模式図である。
図8に示すように、一対のランバーサポート板51Eは、前方延出部52及び板状部53の基端部53aを幅方向の内側に配置し、先端部53bを幅方向の外側に配置するようにしてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかる背凭れ、及び椅子の第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図9は、本発明の一実施形態に係る椅子1Fの背フレーム40F及びランバーサポート50Fを前方から見た図である。
【0045】
この図9に示すように、椅子1Fの背凭れ4Fは、背フレーム40Fと、ランバーサポート50Fと、支持部45Fと、を有している。張材41の前面は、着座者の荷重を受ける荷重支持面41fとされている。
【0046】
背フレーム40Fは、側辺部42と、下辺部43と、上辺部44と、を有している。背フレーム40Fは、背凭れ4Fの外周部に沿って延びている。背フレーム40Fは、例えば所定の強度を有する樹脂等により一体に形成されている。
【0047】
ランバーサポート50Fは、背凭れ4Fの一部に配置されている。ランバーサポート50Fは、支持部45Fによって支持されている。支持部45Fは、背フレーム40Fと一体に形成されている。支持部45Fは、支持部本体46と、側方延出部49と、を有している。
【0048】
支持部本体46は、背凭れ4Fの幅方向の中央部に配置されている。支持部本体46は、上下方向に延びている。支持部本体46の上端は、背フレーム40Fの上部に配置された上辺部44に接続されている。支持部本体46の下端は背フレーム40Fの下部に配置された下辺部43に接続されている。
【0049】
側方延出部49は、支持部本体46の幅方向の両側に、支持部本体46と一体に形成されている。側方延出部49は、支持部本体46から幅方向の両側に延びる板状に形成されている。
【0050】
ランバーサポート50Fは、背凭れ4Fの幅方向に間隔をあけて配置された一対のランバーサポート板51Fを有している。ランバーサポート板51Fは、ヒンジ部57と、サポート板本体58と、を一体に有している。
【0051】
ヒンジ部57は、背凭れ4Fの幅方向の外側に配置されている。ヒンジ部57は、支持部45Fを構成する側方延出部49の前面に配置されている。ヒンジ部57は、上下方向に延びるヒンジ軸周りに、サポート板本体58を回動自在に支持している。
【0052】
サポート板本体58の基端部58aは、幅方向の外側でヒンジ部57に接続されている。サポート板本体58の基端部58aは、上下方向のほぼ全長にわたってヒンジ部57に接続されている。サポート板本体58は、幅方向に連続する板状で、前後方向に交差する面に沿って形成されている。サポート板本体58は、ヒンジ部57から幅方向の内側に延びている。サポート板本体58の幅方向の内側の先端部58bは、基端部58aに対して幅方向の内側に配置されている。なお、サポート板本体58と側方延出部49との間にサポート板本体58を前方に付勢する付勢部材等が介在していてもよい。
【0053】
このようにして、ランバーサポート板51Fのサポート板本体58の基端部58aは、幅方向の外側でヒンジ部57を介して、支持部45Fに支持されている。ランバーサポート板51Fのサポート板本体58の先端部58bは、基端部58aに対して幅方向の内側に配置されている。ランバーサポート板51Fのサポート板本体58は、基端部58a側が固定端とされ、先端部58b側が自由端とされた片持ち梁状をなしている。ランバーサポート板51Fは、張材41を介して着座荷重が入力されることで、基端部58aを中心として側方延出部49に接近する方向(前後方向)に回動する。
【0054】
このように、本実施形態に係る椅子1Fにおいて、ランバーサポート板51Fは、幅方向の外側に配置された基端部58aが支持部45Fに支持され、幅方向の内側に配置された基端部58a側が前後方向に変位する構成とした。
このような構成によれば、着座者の背中の中央部側に、前後方向に変位しないサポート板本体58の基端部58aが当たることがなく、着座者の背中から受ける荷重によって、サポート板本体58の先端部58bが前後方向に変位する。これによって、着座感を高めることが可能となる。
【0055】
上述した実施形態に係る椅子の一部又は全部は、以下のように付記することができる。
[付記1]
前後方向に開口する開口部を有する背フレームと、
前記背フレームの前面側に張設され、着座者の上半身を受ける荷重支持面を形成する張材と、
前記背フレームと一体に形成され、前記ランバーサポートを支持する支持部と、
前記張材の後方であって、前後方向から見て前記背フレームの内側に配置されたランバーサポートと、を備え、
前記ランバーサポートは、一対のランバーサポート板を有し、
それぞれの前記ランバーサポート板は、前記幅方向の外側に配置された基端部が前記支持部に支持され、前記幅方向の内側に配置された先端部側が前後方向に変位可能に形成されている背凭れ。
【0056】
[付記1]の構成によれば、一対のランバーサポート板は、幅方向の外側に固定端となる基端部が配置され、幅方向の内側に自由端となる先端部が配置されることになる。これにより、着座者の背中の中央部側に、前後方向に変位しない基端部が当たることがなく、着座者の背中から受ける荷重に応じて、先端部側が前後方向に変位する。これによって、着座感を高めることが可能となる。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、1F…椅子
4、4F…背凭れ
40、40F…背フレーム
40s…開口部
41…張材
45、45B、45C、45D、45F…支持部
46…支持部本体
47…枠部
50、50F…ランバーサポート
51、51E、51F…ランバーサポート板
52…前方延出部
53…板状部
53a…基端部
53b…先端部
53f…前面
58a…基端部
58b…先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9