(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】不織布の製造方法及び不織布の製造装置
(51)【国際特許分類】
D06J 1/04 20060101AFI20240918BHJP
D04H 13/00 20060101ALI20240918BHJP
D06C 7/02 20060101ALI20240918BHJP
A61F 13/514 20060101ALN20240918BHJP
A61F 13/511 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
D06J1/04
D04H13/00
D06C7/02
A61F13/514 310
A61F13/511 100
(21)【出願番号】P 2020187347
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 吉彦
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/112517(WO,A1)
【文献】特開2019-208712(JP,A)
【文献】特開2019-112747(JP,A)
【文献】特開2009-153556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06J 1/04
D04H 13/00
D06C 7/02
A61F 13/514
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状を有する可撓性支持体と、該可撓性支持体に噛み合い可能な押し込み部材とにより、熱融着性ウェブを挟持して賦形する工程と、
前記熱融着性ウェブを前記可撓性支持体上で加熱流体により融着処理する工程とを有
し、
前記可撓性支持体は、表面に間欠的に突起が形成されおり、前記押し込み部材は、表面に前記突起が入り込むことができる凹部又は穴を有する、不織布の製造方法。
【請求項2】
前記可撓性支持体が樹脂若しくは金属、又はこれら両方からなり、ネット
、又は開口パンチングシートである、請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記押し込み部材が樹脂若しくは金属、又はこれら両方からなり、凹凸ロール、ネット、ベルト
、板ばね、又はプレートである、請求項1又は2記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記熱融着性ウェブに孔を開ける、請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記加熱流体の風速が10m/秒以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記可撓性支持体と前記押し込み部材との位置合わせを平面方向において行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
凹凸形状を有する可撓性支持体と、該可撓性支持体に噛み合い可能な押し込み部材と、該可撓性支持体上で熱融着性ウェブの融着処理が可能な加熱流体吹き付け機構とを有する、不織布の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法及び不織布の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品に用いられるような不織布の製造方法に関して、風合いに優れた不織布を製造するための技術がこれまで多く提案されてきた。
例えば、特許文献1には、多数の突起を有し通気性を有する台座の上に繊維ウェブを定着させ、次いで台座上の繊維ウェブに熱風を吹き付けて突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに繊維を融着させる、不織布の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、所定の凸部、凹部、及び開孔を有する支持体上に繊維ウェブを載置し、凹部に沿って繊維ウェブを押し込み部材によって押し込む押し込み工程と、次いで熱風を吹き付けて繊維ウェブ中の繊維同士を融着する熱融着工程とを有する不織布の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-136791号公報
【文献】特開2019-112747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の不織布の製造方法は、台座を別の部材と噛み合わせて繊維ウェブを賦形するのではなく、熱風の風圧で繊維ウェブを押し込んで賦形するものである。このような賦形の工程では、熱風を高速で吹き付けることを要する。即ち、熱風の風速の範囲には一定の制約があり、賦形できる凹凸の厚みには限度があった。
また、特許文献2に記載の不織布の製造方法は、具体的にはドラム形状の支持体を用いたものであり、ドラム形状の支持体と押し込み部材とによる噛み合い賦形で、より高低差のある凹凸形状を繊維ウェブに形成することができる。その一方で、凹凸形状はドラムの一部として形成されている場合が多い。故に、凹凸パターンの変更にはドラム交換を伴うことが多く、パターンの自由な変更を困難にしていた。
更に、台座や支持体は硬質なものであり、熱膨張等によって支持体と押し込み部材との噛み合い位置が合わず、支持体と押し込み部材とが衝突して破損しやすいことが挙げられた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、凹凸賦形のパターン変更の自由度が高く、且つ支持体と押し込み部材とが衝突した際に破損しにくい、不織布の製造方法に関する。
また、本発明は、前記不織布の製造方法を好適に実施できる、不織布の製造装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凹凸形状を有する可撓性支持体と、該可撓性支持体に噛み合い可能な押し込み部材とにより、熱融着性ウェブを挟持して賦形する工程と、前記熱融着性ウェブを前記可撓性支持体上で加熱流体により融着処理する工程とを有する、不織布の製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、凹凸形状を有する可撓性支持体と、該可撓性支持体に噛み合い可能な押し込み部材と、該可撓性支持体上で熱融着性ウェブの融着処理が可能な加熱流体吹き付け機構とを有する、不織布の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の不織布の製造方法によれば、凹凸賦形のパターン変更の自由度が高く、且つ支持体と押し込み部材とが衝突した際に破損しにくいものである。
また、本発明の不織布の製造装置は、本発明の不織布の製造方法を好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の不織布の製造方法に用いられる装置の好ましい実施形態を模式的に示す概略正面図である。
【
図2】本発明の不織布の製造方法に用いられる装置の別の好ましい実施形態を模式的に示す概略正面図である。
【
図3】可撓性支持体の突起と押し込み部材の凸部との配置関係の一例を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の不織布の製造方法及び不織布の製造装置について、図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、不織布の製造時の搬送方向をMD方向(Machine Direction)といい、該搬送方向に直交する幅方向をCD方向(Cross Direction)という。また、MD方向とCD方向とを含む面の方向を平面方向といい、該平面方向の接線の法線方向を厚み方向という。
【0011】
(賦形工程)
本発明の不織布の製造方法は、凹凸形状を有する可撓性支持体と、該可撓性支持体に噛み合い可能な押し込み部材とにより、熱融着性ウェブを挟持して賦形する工程(以下、「賦形工程」という。)を有する。
例えば
図1に示すように、可撓性支持体21をベルトコンベア状に湾曲させて、熱融着性ウェブ11の加工を行うことができる。可撓性支持体21は複数の突起24を所定の間隔で有しており、凹凸形状の表面を備える。可撓性支持体21と、これに対向するように配置された押し込み部材31とが、同一速度で回転しながら、可撓性支持体21及び押し込み部材31の間で、上流側から搬送される熱融着性ウェブ11を挟持する。このベルトコンベア方式においては、両端のロール22,22に環状の可撓性支持体21を引っ掛け、可撓性支持体21を回転させる。押し込み部材31が可撓性支持体21の凹凸形状に噛み合いながら、熱融着性ウェブ11を挟み込む(可撓性支持体21の突起24,24間の位置で熱融着性ウェブ11を押し込む)。噛み合いにより、熱融着性ウェブ11が凹凸賦形されながら、熱融着性ウェブ11の構成繊維が厚み方向に配向し、厚みの大きな不織布10を製造することができる。
【0012】
(可撓性支持体)
可撓性支持体における「可撓性」とは、線状又は平面状の物体を曲率半径100mmにて180°曲げた後に、再度線状又は平面状に伸ばす操作を100回繰り返しても、破損又は亀裂の発生が生じない性質をいう。この曲げ伸ばしの操作を100回行うことで、対象物が可撓性を有するか否かを判定することができる。このとき、破損や亀裂の発生が生じる性質を、本明細書では「非可撓性」という。
可撓性支持体では突起間の基材部分が柔軟性を有する。このような可撓性支持体は、突起で熱融着性ウェブをしっかり保持しながら、押し込み部材による熱融着性ウェブの押し込みを可撓性支持体の基材が柔軟に受け止めるので、立体的に厚みがより大きく、底の深い賦形を可能にする。
【0013】
可撓性支持体21は、可撓性を有するが故に、平面や曲面等、様々な形に沿わせることができる。即ち、様々な形態の加工ラインを構築し、様々なパターンの不織布の製造に対応できる。例えば、
図1に示すようにベルトコンベア方式としてもよく、
図2に示すようにドラム23の周表面に固定してもよい。
図2に示すドラム方式の場合、ドラム23が可撓性を有していなくても、可撓性支持体21が可撓性を有することで、ドラム23を交換することなく可撓性支持体21を取り換えることができる。これにより可撓性支持体21表面にある突起24の形状や大きさを容易に変更でき、凹凸賦形のパターン変更が容易となる。
但し、ドラム23の回転に伴う遠心力の影響で熱融着性ウェブ11が可撓性支持体21から浮き上がらないようにする観点及び後述の不織布化融着処理工程の区間を長くできる観点から、ドラム方式(
図2に示す形態)よりも、ベルトコンベア方式(
図1に示す形態)の方が好ましい。
また、押し込み部材31と可撓性支持体21とによって熱融着性ウェブ11を挟持する点において、可撓性支持体21の裏面側(熱融着性ウェブ11と接触する面と反対側)にガイドロールやドラム等のバックアップロール(図示せず)を有することが好ましい。バックアップロールがあることで、可撓性支持体21が厚み方向に変位しにくくなり、後述の噛み合い量Dが安定する。
【0014】
本発明に用いられる可撓性支持体21が可撓性を有することで、不織布10の製造ラインのパターン変更もしくは微調整の自由度がより高くなる。例えば、可撓性支持体21を
図1に示すようなベルトコンベア状にすると、後述の不織布化融着処理工程の区間を長くすることができ、製造ラインに合わせて融着処理の時間を長く取ることができる。こうすることで、低風速により時間を掛けてゆっくりと融着処理を行うことができ、製造される不織布10の繊維層の厚みが増す。即ち、所望の不織布10を製造しやすくなる。また、熱風による繊維のより分けも抑えられ、得られる不織布10の繊維間距離も高く維持され、風合いよく、液や空気等の流体の透過性も高まる。加えて、可撓性支持体21と押し込み部材31との噛み合い時に、突起24の位置ずれが生じても、可撓性支持体21が変形することで、突起24と押し込み部材31との衝突による力を軽減できる。その結果、可撓性支持体21及び押し込み部材31の破損を防止することができる。同時に、衝突部分における熱融着性ウェブ11の切れも防止できる。
押し込み部材31が可撓性支持体21に噛み合う際に、押し込み部材31の先端が突起24に接触すると、突起24が平面方向に倒れる力が加わる。従来のように、突起が非可撓性の支持体に固定されていると、突起が曲がったり折れたりする。或いは押し込み部材が曲がったり折れたりすることもある。一方、本発明のように、突起24が可撓性支持体21に固定されている場合は、可撓性支持体21が変形することで突起24の折れ曲がりや破損を防止することができる。可撓性支持体21と押し込み部材31との噛み合いを解き、可撓性支持体21が押し込み部材31に接触しない状態になると、突起24に力が加わらなくなり、可撓性支持体21の弾性力により突起24の位置は元に戻る。また、可撓性支持体21が可撓性を有することに加えて、突起24も可撓性を有することが好ましく、突起24と可撓性支持体21との接合部も可撓性を有することがより好ましく、押し込み部材31も可撓性を有することが更に好ましい。
突起24の折れ曲がりや破損を防止する観点から、突起24の変形量は、0.8mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、熱融着性ウェブ11を変形させるために適度な剛性を有する観点から、突起24の変形量は10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。
更には、突起24の変形量が上記範囲であると、製造された不織布10を可撓性支持体21から引き剥がす際、可撓性支持体21表面の突起24が傾く等、可撓性支持体21が不織布10を引き剥がす方向に変形し、不織布10を剥がしやすくなる。
【0015】
(突起の変形量の測定方法)
突起24の変形量は、以下のようにして測定することができる。
先端角90度の金属製ブロックを、先端の傾斜面が厚み方向に対して45度の角度を有するように、引張試験機(商品名:オートグラフAG-1kNIS、株式会社島津製作所製)のロードセルに固定する。このとき、ロードセルの中心軸に金属製ブロックの先端が位置するように、金属製ブロックをロードセルに固定する。ロードセルは引張試験機の可動フレームに固定される。金属製ブロックの傾斜面は平滑面とする。引張試験機の下側に可撓性支持体21をセットし、50mm角の窓枠を有する150mm角の平板(厚み:10mm)を対象とする突起24が窓枠の中心になるように可撓性支持体21の上にかぶせ、可撓性支持体21が浮かないように窓枠周辺に錘を載せる。錘による荷重は約0.05kg/cm2となるようにする。このとき、可撓性支持体21の厚み方向とロードセルの圧縮方向とが一致するように可撓性支持体21をセットする。ロードセルの中心軸から約1mmずらした位置に可撓性支持体21の突起24が位置するようにセットし、傾斜角45度を有する金属製ブロックを10mm/分の速度で圧縮方向に変位させ、金属製ブロックの先端を突起24にあてる。荷重0.1Nになる変位点をゼロ点とし、圧縮荷重が1Nとなった時の圧縮方向の変位量(mm)を測定する。
突起24の倒れる方向に対して可撓性支持体21の平面方向がランダムとなるようにして可撓性支持体21をセットし直し、異なる突起24について同様に測定し、5個の変位量の測定結果の平均値を、突起24の変形量とする。尚、参考としてロードセルは約100Nの定格容量のものを用いる。
【0016】
(熱融着性ウェブ)
加工対象である熱融着性ウェブ11は、繊維同士が接合される前の熱融着性繊維の集合体である。即ち、不織布化する前の素材である。このようなウェブを用いることで、不織布10の製造過程において繊維の移動が行われやすく、立体的に深いパターンで厚みの大きな不織布10を製造しやすくなる。
熱融着性ウェブは、不織布のシートとしての一体性を保つための熱融着や交絡等が繊維間になく、繊維の移動の自由度が確保されている。いわゆる、未融着の状態である。熱融着性ウェブは、シートとしての一体性が保持されず繊維の移動の自由度が高い状態にある限り、繊維同士の圧着や若干の融着があってもよい。なお、機械交絡や水流交絡がされたものは、熱融着性ウェブに含まれない。
【0017】
本発明における熱融着性ウェブ11は、1層のみからなる単層ウェブでもよく、厚み方向に2層以上積層させた積層ウェブでもよい。
また、賦形工程において、熱融着性ウェブ11に孔を開けることが好ましい。不織布化前に孔を開け、より分けられた繊維が孔の周辺に集積することにより、製造される不織布10の孔の周辺で厚みを大きくすることができ、潰れても排泄液が戻りにくい不織布10となる。
排泄液の透過性を高める観点から、熱融着性ウェブ11に開ける孔は、直径0.5mm以上の円形が好ましく、直径1.0mm以上の円形がより好ましく、直径2.0mm以上の円形が更に好ましい。また、不織布10を表面シートとして吸収性物品に組み込んで使用する際に、不織布10よりも非肌面側のシート(サブレイヤーや吸収体コアラップ等)と肌とを接しにくくする観点から、熱融着性ウェブ11に開ける孔は、直径10mm以下の円形が好ましく、直径8mm以下の円形がより好ましい。孔の形状が円形でない場合は、これらの円形の面積の上下限値の範囲内の孔であることが好ましい。
また、熱融着性ウェブ11に開ける孔は、厚み方向に貫通していてもよく、貫通していなくてもよい。即ち、熱融着性ウェブ11の一方の表面が厚み方向に窪み、もう一方の表面では遮蔽されていてもよい。熱融着性ウェブ11に孔を開ける方法については、後述する。
【0018】
(不織布化融着処理工程)
本発明の不織布の製造方法は、熱融着性ウェブを可撓性支持体上で加熱流体により融着処理する工程(以下、「不織布化融着処理工程」という。)を有する。熱融着とは、熱融着性ウェブ11が溶融することで、熱融着性ウェブ11の構成繊維が融着処理前の繊維形態を有しなくなることを意味する。例えば、熱融着性ウェブ11の構成繊維の外周面の少なくとも一部分が溶融し、他の繊維の外周面との境界が判別できなくなり、融着処理前の繊維形態を有しなくなる。複合繊維等、熱融着性ウェブ11の構成繊維が2種以上の樹脂からなる場合は、特定の樹脂が溶融せずに繊維形態を保っていても、他の樹脂が溶融し、熱融着性ウェブ11の構成繊維の外周面同士の境界が判別できなくなり、融着処理前の繊維形態を有しなくなる。これらは繊維融着部の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、商品名:JCM-600、日本電子株式会社製)により観察することで可能である。
不織布化融着処理工程においては、熱融着性ウェブ11には可撓性支持体21上で加熱流体41が吹き付けられ、熱処理が行われる。具体的には、
図1及び2に示すように、熱融着性ウェブ11が可撓性支持体21上で搬送される間、所定温度に加熱された加熱流体41が厚み方向にエアスルー方式で熱融着性ウェブ11に吹き付けられる。このようにして、熱融着性ウェブ11の構成繊維同士の交点を熱融着で接合して不織布化し、不織布10を製造することができる。
【0019】
(加熱流体)
加熱流体41は、熱融着性ウェブ11を不織布化できる限り、特に限定されない。例えば、熱風や水蒸気が挙げられる。但し、熱融着性ウェブ11表面の繊維油剤を流れにくくする観点から、熱風が好ましい。
特許文献1に記載のように、熱風の風速は20m/秒以上100m/秒以下とすることが従来では一般的であった。一方で本発明では、可撓性支持体21を用いることにより、前述の通り、融着処理の時間を長くする(熱処理の区間を長く取る)ことが可能である。そのため、賦形工程にて熱融着性ウェブ11を厚み方向に押し込んだ後、不織布化融着処理工程ではそのまま可撓性支持体21上で、従来よりも低速の風速で繊維同士の熱融着を行うことも可能である。また、加熱流体41によって熱融着性ウェブ11が圧密化することなく、嵩高な不織布10を得ることができる。
製造される不織布10の厚みを大きくする観点から、加熱流体41の風速は10m/秒以下が好ましく、5m/秒以下がより好ましく、2m/秒以下が更に好ましい。また、熱融着性ウェブ11の不織布化を十分に行う観点から、加熱流体41の風速は0.1m/秒以上が好ましく、0.2m/秒以上がより好ましく、0.3m/秒以上が更に好ましい。
【0020】
加熱流体41の温度は、熱融着性ウェブ11の構成繊維の樹脂の最も低い融点以上であることが好ましく、該融点との温度差が60℃以下であることが好ましい。これにより繊維融着部の形成による賦形形状の安定化ができ、且つ、可撓性支持体21と良好に剥離することができる。
繊維融着部を良好に形成する観点から、熱処理の区間の長さは1m以上が好ましく、3m以上がより好ましい。また、可撓性支持体21の軽量化の観点から、熱処理の区間の長さは30m以下が好ましく、20m以下がより好ましい。
繊維融着部を良好に形成する観点から、加熱流体41の吹き付け時間は0.2秒以上が好ましく、0.5秒以上がより好ましい。また、可撓性支持体21の軽量化の観点から、加熱流体41の吹き付け時間は20秒以下が好ましく、12秒以下がより好ましい。
【0021】
本発明の不織布の製造方法は、賦形工程及び不織布化融着処理工程以外に、他の工程を有していてもよい。
【0022】
(ウェブ離型工程)
本発明の不織布の製造方法は、賦形工程の後且つ不織布化融着処理工程の前に、押し込み部材31側から熱融着性ウェブ11に向けて流体42を吹き付け、熱融着性ウェブ11を離型する工程(以下、「ウェブ離型工程」という。)を有することが好ましい。より具体的には、可撓性支持体21と押し込み部材31とによる噛み合いの出口において、流体42を吹き付けて熱融着性ウェブ11を押し込み部材31から離型する。ウェブ離型工程があることで、賦形工程から不織布化融着処理工程への移行を滑らかにすることができる。特に、押し込み部材31から離型した熱融着性ウェブ11が、可撓性支持体21に保持されることが好ましい。
熱融着性ウェブ11の繊維同士の融着は不織布化融着処理工程で行われるが、ウェブ離型工程において熱融着性ウェブ11の繊維同士の仮融着を行ってもよい。押し込み部材31の凸部32間を通すように流体42を押し込み部材31側から吹き付けて仮融着を行うと、賦形された熱融着性ウェブ11の形を崩すことなく、融着処理と剥離処理とをより良好に行うことができる。この仮融着の際の流体42の温度は、熱融着性ウェブ11の構成繊維の樹脂の最も低い融点以上であることが好ましく、該融点との温度差が30℃以下であることが好ましい。また、流体42の風速は0.5m/秒以上3m/秒以下が好ましく、流体42による処理時間は0.01秒以上0.1秒以下が好ましい。これらの数値範囲を満たすことで、押し込み部材31に熱融着性ウェブ11の構成繊維が貼り付きにくく、噛み合い状態での凹凸形状を保つことができる。
【0023】
(積層工程)
本発明の不織布の製造方法は、不織布化融着処理工程の後に、不織布10に別の熱融着性ウェブや不織布を積層する工程を有してもよい。例えば、融着処理された不織布10を原料不織布として別の不織布と厚み方向に積層させ、2層以上からなる積層不織布を製造してもよい。
【0024】
(エンボス融着処理工程)
本発明の不織布の製造方法は、熱融着性ウェブ11を押し込み部材31から離型した後において、エンボスによる融着処理を行う工程(以下、「エンボス融着処理工程」という。)を有してもよい。エンボス融着処理工程は、前述の不織布化融着処理工程の前にあっても後にあってもよく、前後両方にあってもよい。エンボス融着処理工程においては、加熱と挟持により繊維同士が融着される。
前述の不織布化融着処理工程においては繊維の交点で熱融着がなされるため、1つの繊維融着部につき2本の繊維が熱融着されることが多い。一方、エンボス融着処理工程においては、1つの融着部につき数本から数十本の繊維が熱融着される。
エンボス融着処理工程における加熱方法は、発熱体や熱媒体を用いる方法や超音波法を用いる方法が挙げられる。本発明の不織布の製造方法は、毛羽を抑える観点及び液の吸収性能を上げる観点から、不織布化融着処理工程の後にエンボス融着処理工程を有することが好ましい。
【0025】
(追加融着処理工程)
本発明の不織布の製造方法は、可撓性支持体21上で行う前記不織布化融着処理工程に加え、熱融着性ウェブ11を可撓性支持体21から剥離させた後、追加の融着処理を行う工程(以下、「追加融着処理工程」という。)を有することが好ましい。追加融着処理工程における追加の融着処理は、不織布化融着処理工程における加熱流体41と同様の加熱流体(図示せず)を用いることができる。支持体にはフラット状のネット(コンベア)等を用いることができる。これにより毛羽を防止し、強度を向上させた、適度な圧縮硬さの不織布10をより好適に製造することができる。
追加融着処理工程における加熱流体の温度は、熱融着性ウェブ11の構成繊維の樹脂の最も低い融点以上であることが好ましく、該融点との温度差が50℃以下であることが好ましい。追加融着処理工程における加熱流体の風速は5m/秒以下が好ましく、3m/秒以下がより好ましく、1m/秒以下が更に好ましい。また、熱融着性ウェブ11の不織布化を十分に行う観点から、追加融着処理工程における加熱流体の風速は0.1m/秒以上が好ましく、0.2m/秒以上がより好ましく、0.3m/秒以上が更に好ましい。
【0026】
次に、本発明の不織布の製造方法に用いられる材料や装置について、詳細を説明する。
【0027】
(可撓性支持体の材質)
可撓性を可撓性支持体21に付与する観点から、可撓性支持体21は、樹脂若しくは金属、又はこれら両方からなることが好ましい。また、これらの材質を用いることで、不織布化融着処理工程において加熱流体41が吹き付けられても、可撓性支持体21が熱により変形することを防止できる。
可撓性支持体21を構成する樹脂としては、加熱流体41の温度よりも融点が高い樹脂や、架橋した硬化性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂としてはポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレンが挙げられ、硬化性樹脂としては塩化ビニル、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、合成ゴムが挙げられる。この他にカーボン材質も挙げられる。可撓性支持体21の材質に樹脂を採用することで、可撓性支持体21の軽量化を図ることができる。また、金属と比べて耐久性が低い樹脂を採用しても、本発明では新しい可撓性支持体21へ容易に交換することができる。
可撓性支持体21を構成する金属としては、種々の公知の金属を用いることができる。可撓性支持体21の材質に金属を採用することで、耐久性の高い可撓性支持体21となる。
【0028】
(可撓性支持体の開口)
可撓性支持体21は開口を有していてもよく、有していなくてもよい。開口を有していない場合、不織布化融着処理工程においては、可撓性支持体21とこれに対向するように配置されたネット等(図示せず)とで熱融着性ウェブ11を挟んだ状態で、加熱流体41を吹き付けて融着処理を行うことが好ましい。こうすることで、賦形された熱融着性ウェブ11の形を崩すことなく、融着処理を行うことができる。
但し、不織布化融着処理工程において加熱流体41を貫通させる観点から、可撓性支持体21は開口を有することが好ましい。可撓性支持体21の開口の程度は、可撓性支持体21の表面において開口が占める面積の割合(以下、「開口率」という。)で判断することができる。加熱流体41の透過性を高める観点から、可撓性支持体21の開口率は30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。また、可撓性支持体21の強度を保つ観点から、可撓性支持体21の開口率は90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。
【0029】
(可撓性支持体の形態)
このような開口率を有する可撓性支持体21の形態としては、ネット、チェーン、又は開口パンチングが挙げられる。これらいずれかの形態を採用することで、可撓性支持体21上で熱融着性ウェブ11の形状を固定しやすくするのと同時に、加熱流体41を貫通させやすくすることができる。開口率を大きくする観点からは、可撓性支持体21の形態としてはネットが好ましい。可撓性支持体21の強度を高める観点からは、可撓性支持体21の形態としては開口パンチングが好ましい。
【0030】
(可撓性支持体表面の凹凸形状)
可撓性支持体21の表面には、突起24を間欠的に設けることで、凹凸形状を形成することができる。突起24の形成方法には、種々のものを用いることができる。例えば、樹脂一体成型、鋳物、研削加工等により、可撓性支持体21の表面に突起24を形成することができる。これらの方法の場合、突起24は可撓性支持体21と一体化したものとなる。
また、表面が平坦な可撓性支持体21に、ネジ止め、ナット止め、リベット止め、スポット溶接、接着剤、グルーガン等で突起24を取り付けてもよい。取り付ける突起24の具体例としては、金属製の剣先ボルト、樹脂製の剣先ボルト、金属リベット、樹脂リベット等が挙げられる。
或いは、3Dプリンター等を用いて、可撓性支持体21の表面に突起24を形成してもよい。
【0031】
(押し込み部材)
押し込み部材31は、可撓性支持体21に噛み合い可能である。即ち、押し込み部材31を可撓性支持体21に対向するように配置させたときに、押し込み部材31の表面に存在する凹部や穴に突起24が入り込むことができる構造となっている。押し込み部材31が可撓性支持体21に噛み合い可能となっていることで、賦形工程で熱融着性ウェブ11を厚み方向に十分に押し込むことができ、不織布化融着処理工程では加熱流体41による過度な押し込みを防止できる。
押し込み部材31による押し込みは、可撓性支持体21の基材の位置まで厚み方向に行われることが好ましい。こうすることで、熱融着性ウェブ11において可撓性支持体21に接する側が密となり、製造される不織布10の表面の毛羽立ちを抑えることができる。更に、不織布化融着処理工程においても熱融着性ウェブ11は可撓性支持体21側へ押され、毛羽立ちは一層抑えられる。
【0032】
(押し込み部材の形態)
可撓性支持体21に噛み合い可能な押し込み部材31の形態としては、リングロール、凹凸ロール、ネット、ベルト、チェーン、板ばね(弾性板状体)、又は可動式の荷重プレートが挙げられる。
図1及び2では、押し込み部材31はリングロールの形態である。中でも、MD方向に不連続な凹凸形状に熱融着性ウェブ11を賦形することを可能とし、可撓性支持体21との噛み合い量の調整を容易とする観点から、凹凸ロールが好ましい。凹凸ロールの表面に凹凸形状を形成する方法としては、可撓性支持体21にて突起24を間欠的に設ける方法と同様に、凸部32を間欠的に設ける方法が挙げられる。
【0033】
(押し込み部材の材質)
押し込み部材31は、樹脂若しくは金属、又はこれら両方からなることが好ましい。押し込み部材31を構成する樹脂及び金属の具体例は、可撓性支持体21で挙げたものと同様である。
【0034】
(連続接触及び間欠接触)
熱融着性ウェブ11は、可撓性支持体21及び押し込み部材31に対して、連続接触していてもよく、間欠接触していてもよい。接触の形態が連続接触に該当するか間欠接触に該当するかは、可撓性支持体21及び押し込み部材31で熱融着性ウェブ11を挟持していない状態であっても、噛み合い時における可撓性支持体21の突起24の頂部から押し込み部材31の凸部32の頂部までの厚み方向の距離(噛み合い量D)を用いて以下のように判断することができる(
図3参照)。
【0035】
押し込み部材31側における「連続接触」は、突起24の頂部から可撓性支持体21に向かって、押し込み部材31の凸部32の頂部が一方向に途切れなく、噛み合い量Dの半分以上厚み方向に食い込んでいる状態を意味し、この状態にあるか否かで判断することができる。かかる状態で可撓性支持体21及び押し込み部材31が熱融着性ウェブ11を挟持すると、熱融着性ウェブ11と押し込み部材31とが連続的に接触する。例えば、押し込み部材31としてリングロールを採用した場合、熱融着性ウェブ11はMD方向に押し込み部材31と連続接触する。押し込み部材31の凸部32以外の部分については、押し込み部材31の凸部32,32間に空間があることで、熱融着性ウェブ11が押し込み部材31と接触しない場合と接触する場合とがある。
押し込み部材31側における「間欠接触」は、押し込み部材31の凸部32が噛み合い量Dの半分以上厚み方向に食い込む部分が、一方向において途切れる状態(押し込み部材31が食い込む程度が噛み合い量Dの半分未満となる部分が存在する状態)を意味し、この状態にあるか否かで判断することができる。かかる状態で可撓性支持体21及び押し込み部材31が熱融着性ウェブ11を挟持すると、熱融着性ウェブ11と押し込み部材31とが間欠的に接触する。例えば、押し込み部材31としてCD方向に連続した凸部を有するギアロールを採用した場合、押し込み部材31の凸部32の頂部がMD方向に途切れており、凸部32,32間の空間では食い込みの程度が噛み合い量Dの半分未満となるため、熱融着性ウェブ11はMD方向に押し込み部材31と間欠接触する。また、押し込み部材31としてリングロールを採用した場合は、熱融着性ウェブ11が押し込み部材31とMD方向に連続接触し、CD方向に間欠接触する(
図3参照)。このようにすると、押し込み部材31が設定位置からCD方向にずれを生じて可撓性支持体21の突起24と接触した際に、損傷が軽減される点で好ましい。また、押し込み部材31として先端がギア状のリングロールを採用した場合は、熱融着性ウェブ11にはMD方向とCD方向との両方で押し込み部材31に間欠接触する。このようにすると、賦形後に熱融着性ウェブ11を押し込み部材31から離型する際に熱融着性ウェブ11が可撓性支持体21側に保持されやすくなり賦形状態を保つ点で好ましい。押し込み部材31の凸部32以外の部分については、連続接触の場合と同様である。
本発明では、熱融着性ウェブ11が押し込み部材31に対して、MD方向又はCD方向のどちらか一方に連続接触し、もう一方に間欠接触することが好ましい。
【0036】
可撓性支持体21側における「連続接触」は、凸部32の頂部から押し込み部材31に向かって、可撓性支持体21の突起24の頂部が一方向に途切れなく、噛み合い量Dの半分以上厚み方向に食い込んでいる状態を意味し、この状態にあるか否かで判断することができる。かかる状態で可撓性支持体21及び押し込み部材31が熱融着性ウェブ11を挟持すると、熱融着性ウェブ11と可撓性支持体21とが連続的に接触する。例えば、MD方向に連続した突起24を配置した可撓性支持体21を用いる場合、熱融着性ウェブ11はMD方向に可撓性支持体21と連続接触する。可撓性支持体21の突起24以外の部分については、可撓性支持体21の突起24,24間に空間があることで、熱融着性ウェブ11が可撓性支持体21と接触しない場合と接触する場合とがある。
可撓性支持体21側における「間欠接触」は、可撓性支持体21の突起24が噛み合い量Dの半分以上厚み方向に食い込む部分が、一方向において途切れる状態(押し込み部材31が食い込む程度が噛み合い量Dの半分未満となる部分が存在する状態)を意味し、この状態にあるか否かで判断することができる。かかる状態で可撓性支持体21及び押し込み部材31が熱融着性ウェブ11を挟持すると、熱融着性ウェブ11と可撓性支持体21とが間欠的に接触する。例えば、格子状に突起24を配置した可撓性支持体21を用いる場合、熱融着性ウェブ11はMD方向とCD方向の両方において可撓性支持体21と間欠接触する(
図3参照)。可撓性支持体21の突起24の頂部以外の部分については、連続接触の場合と同様である。
本発明では、熱融着性ウェブ11が可撓性支持体21に対して、MD方向とCD方向の両方に間欠接触することが好ましい。
【0037】
噛み合い量Dを、突起24の形状及び大きさに応じて適宜設定することで、熱融着性ウェブ11には賦形工程で孔を開けることができる。例えば、
図1及び2に示すように突起24が円錐状の場合、突起24の底面の直径が2mmであれば噛み合い量Dを2mm以上とすることで、熱融着性ウェブ11に孔を開けることができる。また、
図3に示すように突起24が円柱状の場合、突起24の頂部の直径が1.6mmであれば噛み合い量Dを3mm以上、突起24の頂部の直径が2mmであれば噛み合い量Dを5mm以上とすることで、熱融着性ウェブ11に孔を開けることができる。
【0038】
(位置合わせ)
可撓性支持体21は可撓性を有することから、不織布10の製造に長期間使用すること等により、MD方向に伸びたり、CD方向に縮んだりすることがある。その結果、押し込み部材31の凸部32の平面方向の位置が、突起24との噛み合いに最適な位置でなくなることがある。このような位置ずれを制御して適切な噛み合いを維持する観点から、賦形工程において、可撓性支持体21と押し込み部材31との位置合わせを平面方向において行うことが好ましい。
これらの位置合わせには、可撓性支持体21を平面方向に位置合わせする方法、及び押し込み部材31を平面方向に位置合わせする方法、並びにこれらを組み合わせる方法がある。平面方向の位置合わせは、可撓性支持体21及び押し込み部材31並びにこれら両方に対して、MD方向の調整機構による方法、及びCD方向の調整機構による方法、並びにこれら両方を行う方法がある。可撓性支持体21は可撓性であることに起因してMD方向に伸びたりCD方向に縮んだりしやすいため、噛み合い箇所における位置ずれが生じやすい。そのため、少なくとも可撓性支持体21に調整機構を設けることで、可撓性支持体21と押し込み部材31との平面方向の位置合わせを行うことが好ましい。
【0039】
可撓性支持体21の平面方向の位置合わせの一例としては、可撓性支持体21をドラム、チェーン、タイミングベルト等に固定し、画像やレーザー等を用いて突起24の位置を検出後、突起24が凸部32と噛み合うように押し込み部材31の平面方向の位置を合わせることが挙げられる。可撓性支持体21とドラム、チェーン、タイミングベルト等との固定位置は、可撓性支持体21の両サイド(可撓性支持体21のCD方向両端部)でもよく、MD方向に多列状であってもよい。また、可撓性支持体21の平面方向の位置合わせは、手動で行ってもよく、調整機構を用いて行ってもよい。MD方向の調整機構としては、ギアによる噛み合い駆動やMD方向の張力を調整する機構が挙げられる。CD方向の調整機構としては、可撓性支持体21のサイド固定部のCD位置を調整する機構や、可撓性支持体21の軸加熱による熱膨張等の調整機構が挙げられる。さらに、CD方向の蛇行修正装置やガイドロールに規制ガイド溝(又はレール)を設ける方法も挙げられる。
押し込み部材31の平面方向の位置合わせも、手動で行ってもよく、調整機構を用いて行ってもよい。MD方向の調整機構としては、ギアによる噛み合い駆動が挙げられる。CD方向の調整機構としては、押し込み部材31の軸加熱による熱膨張等の調整機構や、CD方向に移動するスプラインが挙げられる。中でも、突起24と押し込み部材31との衝突による力を軽減し、可撓性支持体21及び押し込み部材31の破損を防止する観点から、押し込み部材31の調整機構としてCD方向に移動するスプラインを用いることが好ましい。また、可撓性支持体21及び押し込み部材31の両方に調整機構を設けることが好ましく、その場合はCD方向の調整機構を双方に設けることがより好ましい。
但し、位置合わせの自動化の観点から、突起24の位置の検出結果を調整機構にフィードバックして位置合わせを行うことが好ましい。
【0040】
(不織布の製造装置)
本発明の不織布の製造方法は、例えば
図1及び2に示すような、不織布の製造装置にて実現することができる。具体的には、凹凸形状を有する可撓性支持体21と、可撓性支持体21に噛み合い可能な押し込み部材31と、可撓性支持体21上で熱融着性ウェブ11の融着処理が可能な加熱流体吹き付け機構とを有する不織布の製造装置にて、実現することができる。
加熱流体吹き付け機構としては、エアスルー機等、通常用いられるものを使用することができる。
【0041】
(不織布の用途)
前述の通り、本発明の不織布の製造方法は、厚みの大きな不織布を製造することができる。不織布の厚みを大きくすることで繊維間距離が増し、排泄液が不織布表面に残りにくくなる。更には、孔の開いた不織布とすることで、潰れても排泄液が戻りにくくなる。
従って、本発明によって製造される不織布は、吸収性物品に用いることが好ましい。吸収性物品としては、大人用や子供用のおむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティーライナー、吸収性パッド等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0043】
(実施例1)
カード機により上層(目付15g/m2)と下層(目付15g/m2)とからなる未融着の熱融着性ウェブを形成した。上層には、繊度が1.1dtex、繊維長が44mmで、親水性油剤が塗布された、芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の同芯タイプの熱可塑性複合短繊維を用いた。下層には、繊度が3.3dtexであること以外は上層の構成繊維と同様の、熱可塑性複合短繊維を用いた。
線ピッチ1.7mm、線直径0.5mmのポリエステル平織メッシュに、突起として高さ9mmのM2ボルトをナット止めにより複数固定した可撓性支持体と、押し込み部材として複数のリングがCD方向に並んだリングロールとを用いて、上記の熱融着性ウェブを噛み合い賦形した。なお、可撓性支持体におけるM2ボルトは、MD方向及びCD方向に5.1mmピッチの格子間隔で複数設ける配置とした。噛み合い賦形の際、上層ウェブを可撓性支持体に、下層ウェブをリングロールに、それぞれ接触させ、噛み合い量(押し込み深さ)を6mmとして、M2ボルトによってリングロールを押し込みながら熱融着性ウェブを貫通させ、熱融着性ウェブに凹凸形状を形成した。
上記の賦形工程の後、不織布化融着処理工程として、可撓性支持体21上で下層ウェブ側から温度136℃の熱風を、風速1.5m/秒、吹き付け時間1秒にて吹き付け、熱融着性ウェブの構成繊維同士の交点を融着した。
熱融着性ウェブを可撓性支持体から剥離した後、毛羽防止のための追加融着処理工程として、フラットコンベアネット上で熱融着性ウェブの下層ウェブ側から温度136℃の熱風を、風速0.5m/秒、吹き付け時間6秒にて吹き付け、実施例1の不織布を製造した。実施例1の不織布では、厚み方向に貫通する孔を形成した。
賦形工程の際、熱風による可撓性支持体の熱膨張によってCD方向に支持体とリングロールとの位置ずれが生じたが、可撓性支持体とリングロールとの擦れによるM2ボルトの損傷や熱融着性ウェブの切れは見られなかった。
【0044】
(実施例2)
M2ボルトの高さを6mmとし、上層のみを賦形工程に供した後に下層を積層して不織布化融着処理工程に供した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の不織布を製造した。実施例2の不織布では、上層で厚み方向に窪み、下層で遮蔽された孔を形成した。
賦形工程の際、可撓性支持体とリングロールとの擦れによるM2ボルトの損傷や熱融着性ウェブの切れは見られなかった。
【0045】
(実施例3)
M2ボルトをポリエステル平織メッシュにナット止めせずにメッシュの隙間に挟持した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の不織布を製造した。実施例3の不織布では、厚み方向に貫通する孔を形成した。
賦形工程の際、可撓性支持体とリングロールとの擦れによるM2ボルトの損傷や熱融着性ウェブの切れは見られなかった。
【0046】
(実施例4)
M2ボルトに代えて高さ15mmのM1.6ボルトを用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例4の不織布を製造した。実施例4の不織布では、厚み方向に貫通する孔を形成した。
賦形工程の際、可撓性支持体とリングロールとの擦れによるM1.6ボルトの損傷や熱融着性ウェブの切れは見られなかった。
【0047】
(実施例5)
ポリエステル平織メッシュに代えてステンレス平織メッシュを用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例5の不織布を製造した。実施例5の不織布では、厚み方向に貫通する孔を形成した。
賦形工程の際、可撓性支持体とリングロールとの擦れによるM1.6ボルトの損傷や熱融着性ウェブの切れは見られなかった。
【0048】
(比較例1)
可撓性支持体の代わりに、突起として高さ8mmの2mm角柱が一体成型されたアルミニウム合金を非可撓性の支持体として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の不織布を製造した。比較例1の不織布では、上層、下層ともに厚み方向に窪みを有し、凹部が形成された不織布が得られた。
賦形工程の際、熱風による非可撓性支持体の熱膨張によってCD方向に支持体とリングロールとの位置ずれが生じ、非可撓性の支持体とリングロールとの擦れによる2mm角柱の損傷や熱融着性ウェブの切れが見られた。
【0049】
(突起の変形量の測定)
実施例1~5及び比較例1で用いた支持体について、前述の方法に従い、突起の変形量を測定した。
結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
表1に示すように、可撓性支持体を用いた実施例1~5では、非可撓性の支持体を用いた比較例1と比べて、いずれも突起の変形量が大きく、突起が破損しにくいものであった。
また、実施例1~5の中では、突起の高さが大きいほど突起の変形量が大きい傾向にあり、突起の破損が一層しにくいものであった。
更に、突起をナット止めにより固定した実施例1及び2よりも、突起をメッシュの隙間に挟持した実施例3~5において、突起の移動の自由度が高かったが故に突起の変形量は大きく、破損しにくいものであった。
加えて、実施例4及び5では、金属製のメッシュを用いた実施例5よりも、ポリエステル製のメッシュを用いた実施例4において、突起の変形量が大きく、剛性が低い材質を可撓性支持体に用いることで突起がより一層破損しにくくなる傾向にあった。
【0052】
10 不織布
11 熱融着性ウェブ
21 可撓性支持体
22 ロール
23 ドラム
24 突起
31 押し込み部材
32 凸部
41 加熱流体
42 流体
D 噛み合い量