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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】建具用スペーサ
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
E06B1/56 B
E06B1/56 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020187408
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076816
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-05-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和2年10月2日 ウェブサイトのアドレス http://www.ykkap.co.jp/ https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=9051380000&pg=1&v=YKKAPDC1&d=pro ウェブサイトの掲載日 令和2年10月5日 ウェブサイトのアドレス http://www.ykkap.co.jp/ https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/cv.do?c=9054200000&pg=1&v=YKKAPDC1&d=pro 発行日 令和2年10月5日 刊行物 かんたんドアリモ 玄関引戸 業務用カタログ、 第7頁、第133頁 発行日 令和2年10月5日 刊行物 かんたんドアリモ 受発注用カタログ、第116頁、第146頁、第266頁 開催日 令和2年10月21日 集会名 MADOショップ東北・関東信越コラボミーティング YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和2年10月28日 集会名 埼玉MADOショップエリア部会(埼玉支社) YKK AP株式会社主催、オンライン会議 開催日 令和2年11月5日 集会名 リフォーム新商品プレゼン YKK AP株式会社主催、オンライン会議 ウェブサイトの掲載日 令和2年11月6日 ウェブサイトのアドレス http://potal.ykkap.co.jp/vivisimo/Default.php http://potal.ykkap.co.jp/wps/myportal/ProductSearch/List/Detail/4b6am5omctr5/!ut/p/z1/hY_LCsIwEEW_qElqbazLKEipCYJgG7ORtKQP-0iIQdCvN4pb6-wucy5zBgrIoZjkvWuk6_QkB5_PAl9SEuI02SN6wDRBhOX5LiNhxKIYFv8A4dfoxxAEsw8w0_cGC8u2rIHCSNcG3VRryJcllmOsx8pZ77DxTDwo55nwXSBTGSU-WFUrqyxo9c1BbrSTA3j0vTSg0uBqvLyYPU9Xf4A1_gIzH5qRP6k6FUF_JC-v42AI/dz/d5/L2dBISEvZ0FBIS9nQSEh/
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 高大
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-336449(JP,A)
【文献】特許第3223993(JP,B2)
【文献】特開2019-183631(JP,A)
【文献】特開2017-160736(JP,A)
【文献】特開2013-253437(JP,A)
【文献】特開2015-145570(JP,A)
【文献】特開2019-173518(JP,A)
【文献】特許第4621628(JP,B2)
【文献】意匠登録第1466853(JP,S)
【文献】意匠登録第1417669(JP,S)
【文献】意匠登録第1156428(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のスペーサ本体を有し、開口部に建具を装着した際に生じる隙間に対して挿入される建具用スペーサであって、
前記スペーサ本体には、少なくとも一方の端部の外縁部に滑り止め部が設けられ、かつ板厚方向に貫通する2つのネジ挿通部が幅方向に並設され、
前記2つのネジ挿通部は、一方が挿入方向に沿って延在して前記スペーサ本体の端部に開口するスリットであり、かつ他方が両端の閉じた挿通長孔であり、
前記スペーサ本体の一方の表面には幅方向に沿って延在する突条部が設けられ、前記スペーサ本体の他方の表面には前記突条部に対応し、かつ前記突条部が収容可能となる凹条部が設けられていることを特徴とする建具用スペーサ。
【請求項2】
前記滑り止め部は、複数の凹凸部を形成することによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建具用スペーサ。
【請求項3】
前記スペーサ本体は、少なくとも前記一方の端部の両側に挿入方向に沿って延在する側方外縁部を有し、
前記滑り止め部は、前記側方外縁部の少なくとも一方を前記側方外縁部の相互間隔が前記一方の端部側よりも減少するように凹状に形成することによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建具用スペーサ。
【請求項4】
前記滑り止め部は、表面よりも摩擦係数の大きな部材を設けることよって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建具用スペーサ。
【請求項5】
前記スペーサ本体は、挿入方向に沿って延在する側方外縁部を両側に有し、
前記2つのネジ挿通部は、前記側方外縁部からの距離が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の建具用スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に建具を装着した際に生じる隙間に対して挿入される建具用スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
躯体等の開口部に枠体を取り付ける場合には、取り付けの作業性を考慮して開口部よりも枠体の外形寸法を小さく構成し、開口部との間に生じた隙間にスペーサを挿入することが良く行われる。この種のスペーサとしては、平板状を成し、互いに板厚寸法が異なるものが複数種類用意してあり、適宜重ね合わせた状態で挿入することにより様々な寸法の隙間に対応できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-253437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、隙間とスペーサの板厚寸法とを合致させるには、隙間に対して板厚の異なるスペーサを抜き差して調整する必要がある。ここで、スペーサを隙間に挿入する作業は外部から力を加えれば良いため比較的容易に行うことが可能である。これに対して隙間からスペーサを引き抜く作業は、スペーサを強く把持した状態で操作する必要があり、挿入する作業に比べて難しい。特に、調整作業が進んで隙間とスペーサの板厚寸法が近接した状況下では、スペーサに作用する摩擦力が大きくなるため、また、スペーサが互いに重ね合わされた状況下では、スペーサの表面を把持することができないため、隙間から引き抜く作業が一層難しくなり、建具の取り付け作業に影響を及ぼす懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、建具の取り付け作業を容易化することのできる建具用スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具用スペーサは、板状のスペーサ本体を有し、開口部に建具を装着した際に生じる隙間に対して挿入される建具用スペーサであって、前記スペーサ本体には、少なくとも一方の端部の外縁部に滑り止め部が設けられ、かつ板厚方向に貫通する2つのネジ挿通部が幅方向に並設され、前記2つのネジ挿通部は、一方が挿入方向に沿って延在して前記スペーサ本体の端部に開口するスリットであり、かつ他方が両端の閉じた挿通長孔であり、前記スペーサ本体の一方の表面には幅方向に沿って延在する突条部が設けられ、前記スペーサ本体の他方の表面には前記突条部に対応し、かつ前記突条部が収容可能となる凹条部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば一方の端部が基端側となるようにスペーサ本体を隙間に挿入すれば、滑り止め部を介してスペーサ本体を把持したり、スペーサ本体の挿入姿勢を面方向に沿ってずらすことができるため、スペーサ本体を隙間から引き抜く作業が容易となり、建具の取り付け作業が煩雑化する事態を招来するおそれがなくなる。しかも、スペーサ本体が互いに重ねた状態で隙間に挿入された状態であっても、それぞれの滑り止め部が外部に露出された状態のままとなるため、隙間から引き抜く際の作業性が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具用スペーサを示すもので、(a)は一方の表面側から見た図、(b)は他方の表面側から見た図である。
図2図1に示した建具用スペーサを示すもので、(a)は側方から見た図、(b)は側方から見た断面図、(c)は2つの建具用スペーサを重ねた状態を側方から見た断面図である。
図3図1に示した建具用スペーサを適用した建具の縦断面図である。
図4図3に示した建具の横断面図である。
図5図3に示した建具を躯体に取り付ける以前の状態を示す分解縦断面図である。
図6図3に示した建具を躯体に取り付ける以前の状態を示す要部分解横断面図である。
図7図3に示した建具を躯体に装着した状態の縦断面図である。
図8図3に示した建具を躯体に装着した状態の要部横断面図である。
図9】建具用スペーサの変形例を示すもので、(a)は変形例1を一方の表面側から見た図、(b)は変形例2を一方の表面側から見た図である。
図10】建具用スペーサの変形例3を一方の表面側から見た図である。
図11】建具用スペーサの変形例4を一方の表面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具用スペーサの好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Xで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、上枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である建具用スペーサを示したものである。ここで例示する建具用スペーサ10は、図3及び図4に示すように、障子を取り外した後の既設の枠体Aが残った躯体Bの開口部BOに対して新たな建具の枠体20を取り付ける際に適用するもので、互いに板厚の異なるものが複数種類用意してある。なお、複数種類の建具用スペーサ10は、例えば、板厚が1mm、3mm、5mmと異なるが、形状は互いにほぼ同一である。このため、以下においては板厚3mmの建具用スペーサ10を代表として説明し、相違点については都度説明を追加することとする。
【0011】
図1及び図2に示すように、建具用スペーサ10は、PP(ポリプロピレン)等の硬質樹脂によって成形した板状のスペーサ本体11を有している。本実施の形態で例示するスペーサ本体11は、長手に沿って互いにほぼ平行に延在する2つの側方外縁面(側方外縁部)11aと先端面(外縁部)11b及び基端面(外縁部)11cとを有した略長方形状を成している。スペーサ本体11の大きさは、例えば側方外縁面11aの長さが70mm程度で、幅が35mm程度である。スペーサ本体11の先端部(先端面11b側の部分)には、ガイド面11dが設けてある。ガイド面11dは、スペーサ本体11の一方の表面11eに設けた平面であり、先端に向けて漸次板厚が小さくなるように傾斜している。
【0012】
このスペーサ本体11には、ネジ挿通部としてスリット12及び挿通長孔13が設けてあるとともに、滑り止め部として複数の凹凸部14が設けてある。
【0013】
スリット12及び挿通長孔13は、スペーサ本体11を板厚方向に貫通したもので、幅方向に互いに並設してある。スリット12は、スペーサ本体11の先端部から基端部(基端面11c側の部分)に向けて延在するもので、一定の幅を有するように形成してある。スリット12の開口端部には、スペーサ本体11の先端に向けて漸次幅が広くなるように挿入ガイド部12aが設けてある。挿通長孔13は、スペーサ本体11の長手に沿って延在するもので、スペーサ本体11の基端部においてスリット12の閉塞側端部に隣接して設けてある。図からも明らかなように、挿通長孔13の幅は、スリット12の幅とほぼ同じである。
【0014】
凹凸部14は、板厚方向に沿って凹部14a及び凸部14bが直線状に延在するもので、スペーサ本体11の2つの側方外縁面11aにおいて基端部側となる部分に互いに等間隔となるように設けてある。凹凸部14を設ける範囲は、例えばスペーサ本体11の基端面11cから20mm程度である。凹凸部14を設けるピッチは、例えば凸部14bの相互間隔及び凹部14aの相互間隔がそれぞれ2mm程度である。凹部14aから凸部14bまでの突出寸法は、例えば0.5mm程度である。
【0015】
スペーサ本体11の一方の表面11eには、位置合わせ用の突条部11fが複数設けてある。これらの突条部11fは、幅方向に沿って延在するもので、相互間に大きな間隙を確保した位置に設けてある。スペーサ本体11の表面11eからの突条部11fの突出高さは、例えば0.5mm程度である。スペーサ本体11の他方の表面11gには、突条部11fに対応して凹条部11hが設けてある。凹条部11hは、図2(c)に示すように、スペーサ本体11を互いに同じ向きで重ね合わせた場合に突条部11fを収容するためのものである。凹条部11hの深さは、突条部11fの突出高さよりもわずかに大きく、例えば0.6mm程度である。なお、図中の符号11jは、スペーサ本体11の他方の表面11gに設けた肉抜き加工の凹状部分である。但し、板厚が1mmのスペーサには、突条部11fは設けてあるが、凹条部11h及び肉抜き加工の凹状部分11jは設けていない。なお、上述の具体的な数値はあくまでも一つの例を示すために記載するものであり、本願発明を限定するためのものではない。
【0016】
以下、図3図8を適宜参照しながら、上述の建具用スペーサ10を適用して建具の枠体20を躯体Bに取り付ける手順について説明する。なお、以下においては便宜上、既設の枠体Aについては「既設」という用語を付与し、新設の枠体20については「新設」という用語を付与して両者を区別することとする。
【0017】
上述したように、新設枠体20を取り付ける躯体Bには、図3及び図4に示すように、障子を取り外した後の既設枠体A及び四周に額縁Cが残った状態である。図からも明らかなように、既設上枠A1及び既設縦枠A2の内周側となる見込み面a1は、額縁Cの内周側となる見込み面c1とほぼ同一の平面上に位置している。また、既設上枠A1、左右の既設縦枠A2及び既設下枠A3の内周側となる見込み面a1には、内周側に向けて戸当り用の当接片部a2が突出した状態にある。
【0018】
一方、新設枠体20については、図5及び図6に示すように、新設上枠21、左右の新設縦枠22及び新設下枠23を四周枠組みした状態とし、さらに新設上枠21及び左右の新設縦枠22にそれぞれ固定用ブラケット30を長手に沿って所定ピッチで複数個ずつ取り付けておく。新設上枠21及び新設縦枠22は、それぞれ室内側に配置される内方枠要素20aと、室外側に配置される外方枠要素20bとの間に断熱材20cが介在した断熱タイプのものである。四周枠組みして構成した新設枠体20の外形寸法は、既設枠体Aの内周側となる見込み面a1によって構成される長方形状の空間よりも小さく、かつ当接片部a2によって構成される長方形状の空間よりも大きくなるように設定してある。
【0019】
新設上枠21及び新設縦枠22に取り付ける固定用ブラケット30は、それぞれ外周側となる見込み面に固定してあり、そこから内周側に屈曲した後、さらに室内に向けて見込み方向に延在している。固定用ブラケット30において新設枠体20の室内に臨む見付け面から突出した延在片部31は、既設枠体Aの当接片部a2によって構成される長方形状の空間に挿入できるように設定してある。
【0020】
次いで、図7及び図8に示すように、上記のように構成した新設枠体20を室外側から既設枠体Aの内部に装着し、新設下枠23を既設下枠A3の見込み面a1に載置させるとともに、新設枠体20の室内に臨む見付け面をそれぞれ既設枠体Aの当接片部a2に当接させた状態に配置する。より正確に説明すると、新設上枠21及び新設縦枠22については固定用ブラケット30の見付け方向に延在した部分を介して既設枠体Aの当接片部a2に当接している。新設下枠23については、スペーサとなるクッション材Dを介して既設下枠A3の当接片部a2に当接している。
【0021】
上述したように、新設枠体20は、外形寸法が既設枠体Aの内部空間よりも小さいため、新設枠体20を既設枠体Aに装着する作業を容易に行うことが可能である。しかしながら、既設上枠A1と新設上枠21との間、及び既設縦枠A2と新設縦枠22との間には、隙間S1が構成された状態となっている。また、固定用ブラケット30の延在片部31は、既設上枠A1の当接片部a2及び既設縦枠A2の当接片部a2をそれぞれ迂回して室内側に延在したものであるため、既設上枠A1の見込み面a1や既設縦枠A2の見込み面a1との間にさらに大きな隙間S2が構成された状態となっている。
【0022】
これらの隙間S1,S2に対しては、上述した建具用スペーサ10を適宜調整しながら複数枚ずつ挿入することで、躯体Bに対する新設枠体20の相対移動を阻止することが可能となる。例えば、既設枠体Aと新設枠体20との間の隙間S1については、室外側から室内側に向けて建具用スペーサ10を挿入すれば良い。同様に、固定用ブラケット30の延在片部31と既設枠や額縁Cとの間の隙間S2については、新設上枠21や新設縦枠22の延在方向に沿って建具用スペーサ10を挿入すれば良い。調整作業の段階においては、スペーサ本体11のすべてを隙間S1,S2に挿入する必要はなく、ガイド面11dを超えた位置まで挿入すれば十分である。
【0023】
ここで、建具用スペーサ10を隙間S1,S2に挿入して躯体Bに対する新設枠体20の相対移動を阻止するには、建具用スペーサ10を抜き差しする調整作業が必要となる。上述したように、本実施の形態の建具用スペーサ10によれば、抜き差しする際に手指で把持するスペーサ本体11の基端部側に位置する側方外縁面11aに滑り止め部となる凹凸部14が設けてある。従って、一旦隙間S1,S2に挿入した建具用スペーサ10を引き抜く際にも確実に把持することができ、調整作業を容易に行うことが可能である。しかも、凹凸部14は、スペーサ本体11の側方外縁面11aに設けてあるため、複数の建具用スペーサ10が重ね合わされた状態で隙間S1,S2に挿入された状態であっても、互いに覆い隠されることなく外部に露出された状態となる。これにより、建具用スペーサ10を引き抜く際の作業性が損なわれることはなく、調整作業を容易に実施することが可能である。
【0024】
調整作業が終了した後においては、既設枠体Aと新設枠体20との間の建具用スペーサ10をそのままにした状態で、固定用ブラケット30の延在片部31を介して既設枠体Aや額縁Cにネジ部材40を螺合すれば、図3及び図4に示すように、相対移動を阻止した状態のまま新設枠体20を躯体Bに取り付けることができる。
【0025】
新設枠体20よりも室内側に位置する固定用ブラケット30や建具用スペーサ10については、カバー部材50を取り付けることによって覆い隠せば良い。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、建具用スペーサ10のスペーサ本体11にスリット12を設けるようにしている。従って、固定用ブラケット30の延在片部31と既設枠体Aや額縁Cとの間においては、一方のネジ部材40を予め少し螺合した仮止め状態で調整作業を行うことが可能である。しかしながら、スペーサ本体11には必ずしもスリット12や挿通長孔13を設ける必要はない。さらに、スペーサ本体11の表面に位置合わせ用の突条部11fを設けるようにしているため、建具用スペーサ10を重ね合わせた場合に不用意に位置ずれが招来されるおそれがない。しかしながら、スペーサ本体11には必ずしも突条部11fや凹条部11hを設ける必要はない。
【0027】
また、上述した実施の形態では、滑り止め部として直線状に延在する凹凸部14を設けるようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、スペーサ本体11に点状の凸部14bや凹部14aを複数設けて滑り止め部を構成しても良いし、しぼ加工と称される不規則な凹凸状のしわ加工を施すことによって滑り止め部を構成することも可能である。
【0028】
また、滑り止め部は、図9(a)に示す変形例1の建具用スペーサ110や図9(b)に示す変形例2の建具用スペーサ210のように、側方外縁面11aを相互間隔が減少するように凹状に形成することによって構成しても良い。すなわち、変形例1では、基端部側に位置する側方外縁面11aに湾曲凹状部110bを設けることで滑り止め部を構成している。変形例2では、基端部側に位置する側方外縁面11aに直線状の傾斜面210bを設けるとともに、最も基端側となる部分に突起部分210cを設けることで滑り止め部を構成している。傾斜面210bは、基端に向けて相互間隔が漸次減少するように傾斜したものである。これら変形例1及び変形例2によれば、凹状に形成した湾曲凹状部110bや傾斜面210bを把持することで基端部側に手指を引っ掛けることができ、スペーサ本体111,211を隙間から引き抜く作業を容易に実施することができる。なお、変形例2においては、必ずしも傾斜面210bを設ける必要はなく、単に基端部側に突起部分210cを設けるようにしても良い。
【0029】
さらに、滑り止め部は、必ずしも外形形状によるものに限らず、例えば、図10に示す変形例3の建具用スペーサ310のように、側方外縁面11aの基端部側に位置する部分にスペーサ本体311の表面よりも摩擦係数の大きな滑り止め部材312を設けることによって構成することも可能である。滑り止め部材312としては、スペーサ本体311と一体に成形しても良いし、スペーサ本体311を成形した後に貼り付けるようにしても構わない。
【0030】
またさらに、滑り止め部を設ける位置は、必ずしもスペーサ本体11の両側にある側方外縁面11aである必要はなく、少なくとも一方の側方外縁面11aであっても良いし、図11に示す変形例4の建具用スペーサ410のように、側方外縁面11aの相互間となる基端面11cであっても良い。すなわち、この変形例4では、スペーサ本体411の基端面11cに実施の形態と同様の凹凸部14を設けることによって滑り止め部が構成してある。この変形例4においても、重ね合わせた建具用スペーサ410が相互に凹凸部14を覆うことはない。因に、変形例4のように、スペーサ本体411の基端面11cにのみ滑り止め部を設けた建具用スペーサにあっては、滑り止め部を手指で把持することはできない。しかしながら、滑り止め部に手指等を当接させた状態で基端面11cの延在方向に沿って外力を加えれば、建具等に対してスペーサ本体411の挿入姿勢が変更されることになるため、互いに重ね合わされた状態であってもスペーサ本体411を引き抜く作業が容易となる。なお、変形例1~変形例4において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0031】
また、上述した実施の形態では、既設枠体Aが残った躯体Bに対して新設枠体20を取り付ける際に建具用スペーサ10を適用する例を示しているが、必ずしもこれに限らない。例えば、既設枠体Aの無い躯体Bに枠体20を取り付ける場合にももちろん適用することは可能であり、またいわゆるダブルサッシの内窓のように、外窓の額縁に対して枠体を取り付ける場合にも適用することが可能である。これらの場合の枠体としては、必ずしも内方枠要素20aと、室外側に配置される外方枠要素20bとの間に断熱材20cが介在した断熱タイプのものである必要はない。
【0032】
さらに、上述した実施の形態では、略長方形状の外形を有するスペーサ本体を例示しているが、必ずしもスペーサ本体の外形が長方形状である必要はない。
【0033】
以上のように、本発明に係る建具用スペーサは、板状のスペーサ本体を有し、開口部に建具を装着した際に生じる隙間に対して挿入される建具用スペーサであって、前記スペーサ本体の少なくとも一方の端部の外縁部には、滑り止め部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、例えば一方の端部が基端側となるようにスペーサ本体を隙間に挿入すれば、滑り止め部を介してスペーサ本体を把持したり、スペーサ本体の挿入姿勢を面方向に沿ってずらすことができるため、スペーサ本体を隙間から引き抜く作業が容易となり、建具の取り付け作業が煩雑化する事態を招来するおそれがなくなる。しかも、スペーサ本体が互いに重ねた状態で隙間に挿入された状態であっても、それぞれの滑り止め部が外部に露出された状態のままとなるため、隙間から引き抜く際の作業性が損なわれることがない。
【0034】
また本発明は、上述した建具用スペーサにおいて、前記滑り止め部は、複数の凹凸部を形成することによって構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、凹凸部によって把持した手指とスペーサ本体との間に大きな摩擦力を発生させることができ、スペーサ本体を隙間から引き抜く作業が容易化する。
【0035】
また本発明は、上述した建具用スペーサにおいて、前記スペーサ本体は、少なくとも前記一方の端部の両側に挿入方向に沿って延在する側方外縁部を有し、前記滑り止め部は、前記側方外縁部の少なくとも一方を前記側方外縁部の相互間隔が前記一方の端部側よりも減少するように凹状に形成することによって構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、凹状に形成した部分を把持することで一方の端部側に手指を引っ掛けることができ、スペーサ本体を隙間から引き抜く作業が容易化する。
【0036】
また本発明は、上述した建具用スペーサにおいて、前記滑り止め部は、表面よりも摩擦係数の大きな部材を設けることよって構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、把持した手指とスペーサ本体との間に大きな摩擦力を発生させることができ、スペーサ本体を隙間から引き抜く作業が容易化する。
【0037】
また本発明は、上述した建具用スペーサにおいて、板厚方向に貫通するネジ挿通部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ネジ挿通部を介してネジ部材を螺合させることで、スペーサ本体が隙間から脱落する事態を確実に防止することができるようになる。
【符号の説明】
【0038】
10,110,210,310,410 建具用スペーサ、11,111,211,311,411 スペーサ本体、11a 側方外縁面、11e,11g 表面、12 スリット、13 挿通長孔、14 凹凸部、20 新設枠体、110b 湾曲凹状部、210b 傾斜面、210c 突起部分、312 滑り止め部材、BO 開口部、S1,S2 隙間
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