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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ポリウレア樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20240918BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08G18/65 023
D06N3/14 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020196155
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2021088705
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019213054
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】増渕 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 哲也
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-005280(JP,A)
【文献】特開平05-032756(JP,A)
【文献】特開2015-034266(JP,A)
【文献】特開2013-166852(JP,A)
【文献】特開2016-027118(JP,A)
【文献】特開2014-185320(JP,A)
【文献】国際公開第02/070584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/65
D06N 3/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(a)、ポリカーボネートジオール(b)及び鎖延長剤(c)の反応生成物であり、
前記ポリイソシアネート化合物(a)が、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以下である有機ポリイソシアネート化合物であり、
前記有機ポリイソシアネート化合物が、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)であり、
前記ポリカーボネートジオール(b)が、下記式(1)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有し、
前記(b)ポリカーボネートジオールにおいて、下記式(1)で表される繰り返し単位の内、20モル%以上が下記式(2)で表される繰り返し単位であり、かつ、下記式(1)で表される繰り返し単位の内、20モル%以上が下記式(3)で表される繰り返し単位であり、
前記ポリカーボネートジオール(b)において、1分子中に含まれるカーボネート基含有量が41.5~45.7質量%であり、かつ数平均分子量が900~3100g/molであり、
前記鎖延長剤(c)が脂環式ジアミンである、ポリウレア樹脂。
【化1】
(式中、R1は、炭素数2~20の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化2】
【化3】
【請求項2】
請求項1に記載のポリウレア樹脂をフィルム状に成型した、厚みが10μm~500μmのポリウレア樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のポリウレア樹脂を使用した合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレア樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂は、合成皮革、人工皮革、接着剤、家具用塗料、自動車塗料等の幅広い領域で使用されており、イソシアネ-トと反応させるポリオール成分としてポリエーテルやポリエステルが用いられている(例えば、特許文献1~2参照)。しかしながら、近年、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐黴性、耐油性等、樹脂の耐性への要求が高度化してきている。
【0003】
耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性等に優れたソフトセグメントとして、1,6-ヘキサンジオールのポリカーボネートジオールが市販されているが、これはポリマー鎖中のカーボネート結合が化学的に極めて安定であるため、上述のような特徴を示すものである。しかしながら1,6-ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオールは常温で固体状であり結晶性が高いため、得られる熱可塑性ポリウレタンの柔軟性に劣るという欠点を有している。得られる熱可塑性ポリウレタンの柔軟性を改良する目的で、例えば、特許文献3には1,6-ヘキサンジオールと1,4-ブタンジオールとを共重合したポリカーボネートジオールが提案されている。また、例えば、特許文献4では、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオールが提案されている。これら共重合ポリカーボネートジオールを用いた熱可塑性ポリウレタンは、柔軟性、低温特性も優れており近年注目されている。
【0004】
また、例えば、特許文献5には1,3-プロパンジオールを主たるジオール原料として製造されるポリカーボネートジオール及び熱可塑性ポリウレタンが提案されている。1,3-プロパンジオールを主たるジオール原料として製造されるポリカーボネートジオールは、常温で液状であり非晶性であるため、得られる熱可塑性ポリウレタンは柔軟性に優れる。また、カーボネート基密度も高いため、耐摩耗性、耐薬品性に優れるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-95836号公報
【文献】特開2001-123112号公報
【文献】特開平5-51428号公報
【文献】特開平6-49166号公報
【文献】国際公開第2002/070584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3及び4に記載の1,6-ヘキサンジオールと1,4-ブタンジオール又は1,5-ペンタンジオールとから得られる共重合ポリカーボネートジオール用いた熱可塑性ポリウレタンは、耐摩耗性や耐薬品性については改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献5に記載の熱可塑性ポリウレタンは、使用されるポリカーボネートジオールのカーボネート基密度が高いため、分子運動性が低く、柔軟性については改善の余地があり、ガラス転移温度も高くなるため低温特性にも課題が有る場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来のポリカーボネートジオールを用いた熱可塑性ポリウレタンでは達成できなかった柔軟性、強度、耐摩耗性、耐薬品性、低温特性の優れたポリウレア樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の有機ポリイソシアネート化合物と特定構造のポリカーボネートジオールと、特定の鎖延長剤とを組み合わせることにより、上記課題を解決しうるポリウレア樹脂が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を含むものである。
[1]
ポリイソシアネート化合物(a)、ポリカーボネートジオール(b)及び鎖延長剤(c)の反応生成物であり、
前記ポリイソシアネート化合物(a)が、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以下である有機ポリイソシアネート化合物であり、
前記ポリカーボネートジオール(b)が、下記式(1)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有し、
前記ポリカーボネートジオール(b)において、1分子中に含まれるカーボネート基含有量が41.5~45.7質量%であり、かつ数平均分子量が900~3100g/molであり、
前記鎖延長剤(c)がジアミン類である、ポリウレア樹脂。
【化1】
(式中、R1は、炭素数2~20の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
[2]
前記(b)ポリカーボネートジオールにおいて、式(1)で表される繰り返し単位の内、20モル%以上が下記式(2)で表される繰り返し単位であり、かつ、式(1)で表される繰り返し単位の内、20モル%以上が下記式(3)で表される繰り返し単位である、[1]に記載のポリウレア樹脂。
【化2】
【化3】
[3]
前記ポリイソシアネート化合物(a)が、脂環族ポリイソシアネートである、[1]又は[2]に記載のポリウレア樹脂。
[4]
前記鎖延長剤(c)が、脂環式ジアミンである、[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレア樹脂。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレア樹脂をフィルム状に成型した、厚みが10μm~500μmのポリウレア樹脂フィルム。
[6]
[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレア樹脂を使用した合成皮革。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、柔軟性、強度、耐摩耗性、耐薬品性、低温特性の優れたポリウレア樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[ポリウレア樹脂]
本実施形態のポリウレア樹脂は、ポリイソシアネート化合物(a)、ポリカーボネートジオール(b)及び鎖延長剤(c)の反応生成物であり、
前記ポリイソシアネート化合物(a)が、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以下である有機ポリイソシアネート化合物であり、
前記ポリカーボネートジオール(b)が、下記式(1)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有し、
前記ポリカーボネートジオール(b)において、1分子中に含まれるカーボネート基含有量が41.5~45.7質量%であり、かつ数平均分子量が900~3100g/molであり、
前記鎖延長剤(c)がジアミン類である。
【化4】
(式中、R1は、炭素数2~20の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【0014】
本実施形態のポリウレア樹脂は、特定の有機ポリイソシアネート化合物と特定構造のポリカーボネートジオールと、特定の鎖延長剤とを組み合わせることにより、柔軟性、強度、耐摩耗性、耐薬品性、低温特性に優れる。
【0015】
<(a)ポリイソシアネート化合物>
本実施形態のポリウレア樹脂に用いる(a)成分は、1分子中にイソシアネート基を2.5未満有する有機ポリイソシアネート化合物である。このような有機ポリイソシアネート化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3′-ジメチル-4,4′-ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、粗製MDI等の公知の芳香族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香脂環族ジイソシアネート;4,4′-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。中でも、本実施形態に用いるポリイソシアネート化合物(a)は、脂環族ポリイソシアネートであることが好ましい。脂環族ポリイソシアネートであると、得られるポリウレア樹脂は、強度、耐摩耗性、耐薬品性に優れる傾向にある。得られるポリウレア樹脂の強度、耐摩耗性の観点から、特にジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)が好ましく、その中でも耐候性に優れるイソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)が特に好ましい。
【0016】
また、有機ポリイソシアネート化合物において、1分子中の平均イソシアネート基数は、1.9~2.5であることが好ましく、2.0~2.3であることがより好ましい。
【0017】
なお、本実施形態において、有機ポリイソシアネート化合物における1分子中の平均イソシアネート基数(平均官能基数)は、JIS K7301-1995記載の方法により求められるイソシアネート基含有率(質量%)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン基準の数平均分子量を測定により求められる有機ポリイソシアネートの数平均分子量から、下記式により求めることができる。
平均官能基数=有機ポリイソシアネートの数平均分子量×イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42
【0018】
なお、イソシアネート基含有率及び有機ポリイソシアネートの数平均分子量の具体的な分析方法は以下のとおりである。
【0019】
(物性1)イソシアネート基含有率
ポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施する。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率の測定方法を示す。
(1)試料1gを200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させる。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置する。
(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得る。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量を求める。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量を求める。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率を以下の計算方法により算出する。
イソシアネート基含有率(質量%)=(ブランク滴定量-試料滴定量)×42/[試料質量(g)×1,000]×100%。
【0020】
(物性2)有機ポリイソシアネートの数平均分子量
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートの数平均分子量は、以下の装置及び条件を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン基準の数平均分子量を測定する。
装置:東ソー(株)製 HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製 TSKgelSuperH1000(商品名)×1本、TSKgelSuperH2000(商品名)×1本、TSKgelSuperH3000(商品名)×1本、
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0021】
(物性3)平均イソシアネート官能基数
ポリイソシアネート組成物を試料として、平均イソシアネート官能基数は、ポリイソシアネート1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数であり、(物性2)で測定した有機ポリイソシアネートの数平均分子量と(物性1)で測定したイソシアネート基含有率から以下のとおり算出する。
平均官能基数=有機ポリイソシアネートの数平均分子量×イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42
【0022】
<(b)ポリカーボネートジオール>
本実施形態のポリウレア樹脂に用いる(b)ポリカーボネートジオールは、下記式(1)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有し、ポリカーボネートジオール(b)において、1分子中に含まれるカーボネート基含有量が41.5~45.7質量%であり、かつ数平均分子量が900~3100g/molである。
【0023】
【化5】
(式中、R1は、炭素数2~20の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【0024】
(b)ポリカーボネートジオールを製造する際の原料のジオールとして、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールなどの側鎖を持たないジオール、2-メチル-1、8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチルー1,5-ペンタンジオール、2-ブチルー2-エチルー1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルー1,3-プロパンジオールなどの側鎖を持ったジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパンなどの環状ジオールから、1種類又は2種類以上のジオールを使用することができる。
【0025】
また、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを少量用いることにもできる。この1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物を余り多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまうおそれがある。したがって1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物は、脂肪族及び/又は脂環族ジオールの合計量に対し、0.01~5質量%にするのが好ましい。より好ましくは0.01~1質量%である。
【0026】
本実施形態に用いる(b)ポリカーボネートジオールとして特に好ましいのは、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとを原料としたポリカーボネートジオールである。具体的には、前記(b)ポリカーボネートポリオールにおいて、式(1)で表される繰り返し単位の内、1,4-ブタンジオール由来の下記式(2)で表される繰り返し単位の割合が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは20モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは35モル%以上65モル%以下であり、かつ式(1)で表される繰り返し単位の内、1,6-ヘキサンジオール由来の下記式(3)で表される繰り返し単位の割合が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは20モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは35モル%以上65モル%以下であるポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
本実施形態に用いる(b)ポリカーボネートジオールの製造方法は、特に限定されない。例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9~20(1994年)に記載される種々の方法で製造することができる。
【0030】
製造方法の一例としては、特に限定されないが、例えば、後述のカーボネート原料と前述のジオール原料とを混和し、常圧又は減圧下、エステル交換触媒の存在下、100~200℃で反応させ、生成するカーボネート原料由来のアルコールを除去して、低分子量ポリカーボネートジオールを得て、次いで、減圧下、160~250℃で加熱して、未反応のカーボネート原料とジオールとを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る方法が挙げられる。
【0031】
本実施形態に用いる(b)ポリカーボネートジオールの合成に使用するカーボネート原料としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。これらの内から1種又は2種以上のカーボネートを原料として用いることができる。入手のしやすさや重合反応の条件設定のしやすさの観点より、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネートを用いることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態に用いる(b)ポリカーボネートジオールの製造は、通常触媒を添加して実施される。本実施形態で使用する触媒は、通常のエステル交換反応触媒から自由に選択することができる。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウムなどの金属、塩、アルコキシド、有機化合物が用いられる。特に好ましいのは、チタン、スズ、鉛の化合物である。また、触媒の使用量は、通常はポリカーボネートジオール質量の0.00001~0.1%である。
【0033】
本実施形態のポリウレア樹脂に用いる(b)ポリカーボネートジオールにおいて、1分子中に含まれるカーボネート基含有量が41.5~45.7質量%であり、より好ましくは42.2~44.3質量%であり、さらに好ましくは42.8~43.8質量%である。
【0034】
カーボネート基含有量はポリカーボネートジオール1分子中に含まれるカーボネート基の量であり、具体的には下記式(I)で求められる。
カーボネート基含有量(%)=(カーボネート基分子量)×(1分子中の繰り返し単位数)/( ポリカーボネートジオールの数平均分子量)×100 (I)
(ここでカーボネート基(-O-C=O-O-)の分子量は60.01である。)
【0035】
ポリカーボネートジオール1分子中に含まれるカーボネート基含有量が前記下限値以上であると、得られるポリウレア樹脂の耐薬品性、耐摩耗性が向上する。また、ポリカーボネートジオール1分子中に含まれるカーボネート基含量が前記上限値以下であると、得られるポリウレア樹脂の柔軟性、低温特性が向上する。
【0036】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオール1分子中に含まれるカーボネート基含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
本実施形態に用いる(b)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は900~3100g/molであり、好ましくは1400~2600g/molであり、より好ましくは1800~2200g/molである。(b)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が前記下限値以上であると、得られるポリウレア樹脂の柔軟性が向上する。また、(b)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が前記上限値以下であると、得られるポリウレア樹脂の耐磨耗性、耐薬品性が向上する。
【0038】
(b)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、カーボネート原料とジオール原料とを混和し、常圧又は減圧下、エステル交換触媒の存在下、100~200℃で反応させ、生成するカーボネート原料由来のアルコールを除去して、低分子量ポリカーボネートジオールを得て、次いで、減圧下、160~250℃で加熱して、未反応のカーボネート原料とジオールとを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る方法を挙げることができる。ここで、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させることにより留出する、ジオールの留出量により調整することができる。
【0039】
なお、本実施形態において、(b)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
<(c)鎖延長剤>
本実施形態のポリウレア樹脂に用いる鎖延長剤(c)としては、ジアミン類である。具体的には、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、4,4‘-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ピペラジン、イソホロンジアミン(IPDA)、3,3’-ジクロロ-4,4‘-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)等のジアミン類が挙げられる。引張破断強度、耐摩耗性、耐薬品性、耐候性に優れるポリウレア樹脂を得る観点から、鎖延長剤(c)としては、脂環式ジアミンがより好ましく、具体的には4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン(IPDA)、3,3’-ジクロロ-4,4‘-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)が好ましい。
【0041】
<ポリウレア樹脂の合成方法>
本実施形態のポリウレア樹脂の合成方法には、ポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)と鎖延長剤(c)の3種を同時に反応させる方法と、予めポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)とを反応しプレポリマーとした後、鎖延長剤(c)を加えて鎖延長する方法が用いられる。
なお、本実施形態のポリウレア樹脂の合成原料としては、上記(a)~(c)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分、例えば、後述する(d)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール又はその塩や、公知のポリオールを併用してもよい。
【0042】
ポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)と鎖延長剤(c)との3種を同時に反応する場合、配合比はポリカーボネートジオール(b)の水酸基と鎖延長剤(c)のアミノ基の合計した当量と、ポリイソシアネート化合物(a)のNCO当量と比で、(水酸基とアミノ基との合計当量)/NCO当量=1/0.5~1/1.5になるように配合するのが好ましく、(水酸基とアミノ基との合計当量)/NCO当量=1/0.8~1/1.2になるように配合するのがより好ましい。ポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)と鎖延長剤(c)との3種を同時に反応する場合の、鎖延長剤(c)の配合量は、ポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)との合計質量に対して、好ましくは3~40質量%、より好ましくは5~25質量%である。
【0043】
予めポリイソシアネート化合物(a)とポリカーボネートジオール(b)とを反応しプレポリマーとした後、鎖延長剤(c)を加えて鎖延長する方法を用いる場合は、ポリカーボネートジオール(b)とポリイソシアネート化合物(a)とを、好ましくは配合比OH/NCO(当量比)=1/1.5~2.5、より好ましくは配合比OH/NCO(当量比)=1/1.8~2.2にてプレポリマーを合成し、その後鎖延長剤(c)を、得られたプレポリマーのNCOの1当量に対し、好ましくは0.5~1.5のアミノ基当量、より好ましくは0.8~1.2のアミノ基当量を添加して鎖延長する。
【0044】
また、本実施形態のポリウレア樹脂の合成方法としては、水系での合成も可能である。水系でのポリウレア樹脂の合成方法(水性ポリウレア樹脂の製造方法)は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド等)の存在下又は非存在下で、(a)1分子中にイソシアネート基を2つ以上含有する有機ポリイソシアネート化合物と、(b)ポリカーボネートジオールと、(d)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール又はその塩とを、好ましくは配合比OH/NCO(当量比)=1/1.5~2.5、より好ましくは配合比OH/NCO(当量比)=1/1.8~2.2にてプレポリマーを合成し、このプレポリマーを水に分散させた後、鎖延長剤(c)としてジアミンを加えて水性ポリウレア分散体とすることも可能である。また、得られた上記反応液を水中に攪拌しながら添加し分散させた後、必要に応じて溶媒を除去して水性ポリウレア分散体を得ることも可能である。
【0045】
(d)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール又はその塩は、水分散性ポリウレアを水中に自己乳化させること、及び水性ポリウレア分散体の分散安定性を付与することを目的として、カルボキシレート基又はスルホネート基導入のために使用される成分である。カルボキシル基含有ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールヘプタン酸、2,2-ジメチロールオクタン酸などが挙げられる。また、スルホン基含有ポリオールとしては、例えば、スルホン酸ジオール{3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸}及びスルファミン酸ジオール{N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)スルファミン酸}及びそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオールの塩としては、特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩、アミン塩[炭素数1~12の1級アミン(1級モノアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びオクチルアミン)塩、2級モノアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン)塩、3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン及びN,N-ジメチルエタノールアミン等の脂肪族3級モノアミン;N-メチルピペリジン及びN-メチルモルホリン等の複素環式3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、α―メチルベンジルジメチルアミン;及びN-ジメチルアニリン等の芳香環含有3級モノアミン)塩]、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム及びリチウムカチオン)塩、並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0046】
(d)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール又はその塩の量は、ポリウレア樹脂の質量に対してカルボキシル基及び/又はスルホン基が0.01~10質量%となる量が好ましい。(d)カルボキシル基及び/又はスルホン基含有ポリオール又はその塩の量は、ポリウレア樹脂の質量に対してカルボキシル基及び/又はスルホン基が、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。ポリウレア樹脂の質量に対してカルボキシル基及び/又はスルホン基が0.01質量%以上であることで、エマルジョン安定性がより優れる傾向にある。また、ポリウレア樹脂の質量に対してカルボキシル基及び/又はスルホン基が10質量%以下であることで、得られる塗膜の耐水性により優れる傾向にある。
【0047】
さらに、本実施形態に用いられるポリカーボネートジオール(b)と共に、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のポリオールを併用してもよい。公知のポリオールとして、今井嘉夫、ポリウレタンフオーム高分子刊行会1987年第12~23ページに記載の公知のポリエステル、ポリエーテル等のポリオールがある。
【0048】
本実施形態のポリウレア樹脂を製造する方法としては、従来公知のウレア化反応の技術が用いられる。例えばポリカーボネートジオール(b)とポリイソシアネート化合物(a)と鎖延長剤(c)とを常温から200℃で反応させることにより本実施形態のポリウレア樹脂を生成させることができる。
【0049】
これらの製造においては三級アミンや錫、チタンなどの有機 金属塩等に代表される公知の重合触媒「例えば、岩田敬治著(ポリウレタン樹脂)日本工業新聞社刊第23-3 2頁(1969年)に記載」を用いることも可能である。また、これらの反応は、溶媒を用いて行ってもよく、好ましい溶剤としてはジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセロソルブ等が挙げられる。
【0050】
また、本実施形態のポリウレア樹脂の製造に当り、イソシアネート基に反応する活性水素を一つだけ含有する化合物、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン等の一級アミン、及びジエチルアミン、ジnプロピルアミン等の二級アミン等を末端停止剤として使用することができる。
【0051】
本実施形態に用いられる添加剤としては、好ましくは熱安定剤及び光安定剤等の安定剤が挙げられる。熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、燐酸、亜燐酸、の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体特にヒンダードフェノール化合物、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物を用いることができる。
【0052】
ヒンダードフェノール化合物としてはIrganox1010(商品名:チバガイギ-社製)、Irganox1520(商品名:チバガイギ-社製)等が好ましい。二次老化防止剤としての燐系化合物はPEP-36、PEP-24G、HP-10(いずれも商品名:旭電化(株)製)Irgafos168(商品名:チバガイギー社製)が好ましい。また、硫黄化合物としてはジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)等のチオエーテル化合物が好ましい。
【0053】
光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。また、ヒンダードアミン化合物のようなラジカル捕捉型光安定剤も好適に用いられる。
【0054】
これらの安定剤は単独で用いても2種以上組み合わせて用いても構わない。これらの安定剤の添加量は、ポリウレア樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
【0055】
さらに、本実施形態のポリウレア樹脂には必要に応じて可塑剤の添加を行ってもよい。かかる可塑剤の例として、特に限定されないが、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類:トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリメチルヘキシルホスフェート、トリス-クロロエチルホスフェート、トリス-ジクロロプロピルホスフェート等の燐酸エステル類:トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸エステル類、ジペンタエリスリトールエステル類、ジオクチルアジペート、ジメチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノリエート等の脂肪酸エステル類:ピロメリット酸オクチルエステル等のピロメリット酸エステル:エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ系可塑剤:アジピン酸エーテルエステル、ポリエーテル等のポリエーテル系可 塑剤:液状NBR、液状アクリルゴム、液状ポリブタジエン等の液状ゴム:非芳香族系パラフィンオイル等を挙げられる。
【0056】
これら可塑剤は単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。可塑剤の添加量は要求される硬度、物性に応じて適宜選択されるが、ポリウレア樹脂100質量部当り0~50質量部が好ましい。
【0057】
また、本実施形態のポリウレア樹脂には無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加してもよい。無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、珪酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0058】
<用途>
本実施形態のポリウレア樹脂は各種物性に優れるため、射出成型部材(把持部品、ステアリングホイール、エアバッグの収納カバー、時計ベルト等)、押出し成形品(ホース、チューブ、シート等)や、溶剤に溶解して合成皮革用バインダー、表皮材、表面処理剤、繊維用コーティング剤、各種表面処理剤、及び各種接着剤等に使用することができる。特に、本実施形態のポリウレア樹脂は合成皮革に使用することが好ましい。
【0059】
<ポリウレア樹脂フィルム>
本実施形態のポリウレア樹脂フィルムは、上述のポリウレア樹脂をフィルム状に成型した、厚みが10μm~500μmのポリウレア樹脂フィルムである。
【0060】
本実施形態のポリウレア樹脂フィルムの具体例としては、特に限定されないが、例えば、上述のポリウレア樹脂の押出成形フィルムや、上述のポリウレア樹脂を溶剤に溶解して塗布乾燥して使用するキャストフィルムが挙げられる。本実施形態のポリウレア樹脂フィルムは、柔軟性、強度、耐摩耗性、耐薬品性、低温特性に優れるので、特に合成皮革用の表皮材、表面処理剤として好適に使用される。
【実施例
【0061】
以下実施例など用いて、本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例における、分析方法及び物性の評価は、以下の試験方法に従って実施した。
【0062】
<ポリカーボネートジオールの評価方法>
1)ポリカーボネートジオールの水酸基価(平均水酸基価数)
JIS K1557-1に準じてポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。
【0063】
2)ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)
JIS K1557-1によって水酸基価を決定し、下記の式(II)を用いてポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)を計算した。
数平均分子量(Mn)=56.1×2×1000÷水酸基価 (II)
【0064】
3)ポリカーボネートジオールの組成(共重合割合)
100mlのナスフラスコにポリカーボネートジオールのサンプルを1g取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、100℃で1時間反応した。反応液を室温まで冷却後、指示薬にフェノールフタレインを2~3滴添加し、塩酸で中和した。中和した液を、冷蔵庫で1時間冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、濾液を、GC(ガスクロマトグラフィー)を用いて分析した。GC分析は、カラムとしてDB-WAX(米国、J&W製)を付けたガスクロマトグラフGC-14B(日本、島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として、水素炎イオン化検出器(FID)を検出器として行い、各成分の定量分析を行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/分で250℃まで昇温した。
上記分析結果より検出された各アルコール成分のモル比から、ポリカーボネートジオールの組成(共重合割合)を求めた。
【0065】
4)ポリカーボネートジオールのカーボネート基含有量
カーボネート基含有量はポリカーボネートジオール1分子中に含まれるカーボネート基の量であり、具体的には下記式(III)で求めた。
カーボネート基含有量(%)=(カーボネート基分子量)×(1分子中の繰り返し単位数)/( ポリカーボネートジオールの数平均分子量)×100 (III)
(ここでカーボネート基分子量(-O-C=O-O-)は60.01である。)
また、1分子中の繰り返し単位数(n)は、下記式(7)の構造に基づき、下記式(IV)を用いて求めた。
【0066】
【化8】
(ここで、mは平均メチレン数、nは1分子中の繰り返し単位数、下線部分は末端基を表す。)
【0067】
上記、ポリカーボネートジオールの組成(共重合割合)により求められた、ポリカーボネートジオールの組成より、ポリカーボネートジオールを構成する各セグメントの構造を求めた。これより、構成する各セグメントのメチレン数を求め、その比率により平均メチレン数(m)を計算した。
1分子中の繰り返し単位数(n)=(数平均分子量(Mn)-末端基分子量)/(繰り返し単位分子量) (IV)
【0068】
<ポリウレア樹脂フィルムの評価方法>
5)引張り破断強度及び破断伸び
ガラス板上に固形分20質量%ポリウレア樹脂のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を塗布し、80℃で2時間加熱して膜厚40μmのフィルムを作成した。室温で24時間放置した後、このフィルムより、幅6.6mm、長さ60mmの試料を切り出した。23℃の恒温室において、Universal Testing Machine(Zwick Corp.製)を用いて、チャック間20mm、引張速度10mm/minで、上記試料フィルムの引張り破断強度(MPa)と破断時の伸び(%)及び100%伸長時の応力(100%モジュラス:MPa)とを測定した。100%伸長時の応力が低いほど柔らかく、柔軟性が良いと評価される。
【0069】
6)耐薬品性
上記5)と同様な操作で作成したフィルムを23℃のオレイン酸中に1週間浸漬させた後の膨潤率を測定した。膨潤率は、下記の数式(V)を用いて求めた。膨潤率(%)が低いほど耐薬品性に優れると評価される。
膨潤率(%)=[(試験後の質量-試験前の質量)/試験前の質量]×100 (V)
【0070】
7)耐磨耗性
上記5)と同様な操作で作成したフィルムについて、JIS K5600-5-8の方法に準じ、テーバー型磨耗試験機を用い耐磨耗性を測定した。磨耗試験前の塗膜板の質量と磨耗試験(500回転)後の塗膜板の質量との質量変化(mg)を測定し表記した。質量変化(mg)が少ないほど耐磨耗性に優れると評価される。
【0071】
8)低温特性(ガラス転移温度)の測定
上記5)と同様な操作で作成したフィルムを用い、幅10mm、長さ40mm、厚さ0.4mmの試験片を切り出した。粘弾性測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、[TA7000シリーズ、DMA7100])を用い、チャック間距離20mmに試験片をセッティングし、-100℃から100℃に5℃/分で昇温しながら粘弾性の測定を行った。tanδのピークを読み取り、ガラス転移温度(Tg)を求めた。ガラス転移温度(Tg)が低いほど低温特性に優れると評価される。
【0072】
<有機ポリイソシアネート化合物における1分子中の平均イソシアネート基数の測定方法>
有機ポリイソシアネート化合物における1分子中の平均イソシアネート基数(平均官能基数)は、JIS K7301-1995記載の方法により求められるイソシアネート基含有率(質量%)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン基準の数平均分子量を測定により求められる有機ポリイソシアネートの数平均分子量から、下記式により求めた。
平均官能基数=有機ポリイソシアネートの数平均分子量×イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42
イソシアネート基含有率及び有機ポリイソシアネートの数平均分子量の具体的な分析方法は以下のとおりとした。
【0073】
(物性1)イソシアネート基含有率
ポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率の測定方法を示す。
(1)試料1gを200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量を求めた。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量を求めた。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率を以下の計算方法により算出した。
イソシアネート基含有率(質量%)=(ブランク滴定量-試料滴定量)×42/[試料質量(g)×1,000]×100%。
【0074】
(物性2)有機ポリイソシアネートの数平均分子量
ポリイソシアネート組成物を試料として、ポリイソシアネート組成物中の変性ポリイソシアネートと未反応ポリイソシアネートとを含むポリイソシアネートの数平均分子量は、以下の装置及び条件を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン基準の数平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製 TSKgelSuperH1000(商品名)×1本、TSKgelSuperH2000(商品名)×1本、TSKgelSuperH3000(商品名)×1本、
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0075】
(物性3)平均イソシアネート官能基数
ポリイソシアネート組成物を試料として、平均イソシアネート官能基数は、ポリイソシアネート1分子が統計的に有するイソシアネート官能基の数であり、(物性2)で測定した有機ポリイソシアネートの数平均分子量と(物性1)で測定したイソシアネート基含有率から以下のとおり算出した。
平均官能基数=有機ポリイソシアネートの数平均分子量×イソシアネート基含有率(質量%)/100%/42
【0076】
[ポリカーボネートジオールの重合例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを144g(1.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを319g(2.7mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC1と称する。
【0077】
[ポリカーボネートジオールの重合例2]
上記重合例1と同じ装置を用い、1,4-ブタンジオールを189g(2.1mol)、1,6-ヘキサンジオールを271g(2.3mol)とした以外は、重合例1と同様に重合を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートポリオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC2と称する。
【0078】
[ポリカーボネートジオールの重合例3]
上記重合例1と同じ装置を用い、1,4-ブタンジオールを234g(2.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを236g(2.0mol)とした以外は、重合例1と同様に重合を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートポリオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC3と称する。
【0079】
[ポリカーボネートジオールの重合例4]
上記重合例1と同じ装置を用い、1,4-ブタンジオールを279g(3.1mol)、1,6-ヘキサンジオールを224g(1.9mol)とした以外は、重合例1と同様に重合を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートポリオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC4と称する。
【0080】
[ポリカーボネートジオールの重合例5]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを234g(2.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを271g(2.3mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で2.5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC5と称する。
【0081】
[ポリカーボネートジオールの重合例6]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを234g(2.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを260g(2.2mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で3.5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC6と称する。
【0082】
[ポリカーボネートジオールの重合例7]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを234g(2.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを236g(2.0mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で8時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC7と称する。
【0083】
[ポリカーボネートジオールの重合例8]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを234g(2.6mol)、1,6-ヘキサンジオールを236g(2.0mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で10時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC8と称する。
【0084】
[ポリカーボネートジオールの重合例9]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,4-ブタンジオールを207g(2.3mol)、1,6-ヘキサンジオールを236g(2.0mol)、1,10-デカンジオールを70g(0.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC9と称する。
【0085】
[ポリカーボネートジオールの重合例10]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,3-プロパンジオールを167g(2.2mol)、1,6-ヘキサンジオールを260g(2.2mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC10と称する。
【0086】
[ポリカーボネートジオールの重合例11]
上記重合例1と同じ装置を用い、1,4-ブタンジオールを99g(1.1mol)、1,6-ヘキサンジオールを378g(3.2mol)とした以外は、重合例1と同様に重合を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートポリオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC11と称する。
【0087】
[ポリカーボネートジオールの重合例12]
上記重合例1と同じ装置を用い、1,4-ブタンジオールを306g(3.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを130g(1.1mol)とした以外は、重合例1と同様に重合を行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートポリオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC12と称する。
【0088】
[ポリカーボネートポリオールの重合例13]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを423g(4.8mol)、1,5-ペンタンジオールを250g(2.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを284g(2.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC13と称する。
【0089】
[ポリカーボネートポリオールの重合例14]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを423g(4.8mol)、1,5-ペンタンジオールを250g(2.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを284g(2.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で3時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC14と称する。
【0090】
[ポリカーボネートポリオールの重合例15]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを423g(4.8mol)、1,5-ペンタンジオールを250g(2.4mol)、1,6-ヘキサンジオールを284g(2.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で10時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC15と称する。
【0091】
[ポリカーボネートジオールの重合例16]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた1Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを396g(4.5mol)、1,3-プロパンジオールを205g(2.7mol)、1,4-ブタンジオールを171g(1.9mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、反応温度を140~160℃とし、圧力を10kPaから2kPaに落としながら、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。
その後、単蒸留に切り替え、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、180℃で5時間反応させモノマーを溜出してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を表1に示す。該ポリカーボネートポリオールをPC16と称する。
【0092】
【表1】
【0093】
[実施例1]
窒素ガスでシールした撹拌機付き500mLのセパラブルフラスコに、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI、1分子中の平均イソシアネート基数:2.0)を15.74g(0.06モル)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を100g仕込み40℃に加温して溶液を得た。前記フラスコに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を140g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.0029gを加えたポリカーボネートポリオールPC1 40g(0.02モル)を、前記溶液の攪拌下、30分かけて滴下した。50℃、攪拌下、2時間反応を行い末端イソシアネートのプレポリマーを得た。前記フラスコ内の溶液の温度を室温に温度を下げたのち、鎖延長剤としてイソホロンジアミンを6.8g加え(0.04モル)、室温で1時間反応を行った後、反応停止剤としてエタノールを0.5g添加し、ポリウレア樹脂のDMF溶液(固形分約20質量%)を得た。ガラス板上に、得られた固形分20質量%ポリウレア樹脂のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を塗布し、80℃で2時間加熱して膜厚40μmのポリウレア樹脂のフィルムを作成した。室温で24時間放置した後、各種物性の評価に供した。評価結果を表2に示した。
【0094】
[実施例2~10]
ポリカーボネートジオールとしてPC2~PC10を用いた以外は、実施例1と同様にポリウレア樹脂のフィルムを得て、各種物性の評価に供した。評価結果を表2に示した。
【0095】
[比較例1~6]
ポリカーボネートジオールとしてPC11~PC16を用いた以外は、実施例1と同様にポリウレア樹脂のフィルムを得て、各種物性の評価に供した。評価結果を表2に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
[実施例14、参考例1~4、比較例7、8]
ポリカーボネートジオールとしてPC3を用い、表3記載のイソシアネート、表3記載の鎖延長剤を用いた以外は、実施例1と同様に(同モル量を使用)ポリウレア樹脂のフィルムを得て、各種物性の評価に供した。評価結果を表3に示した。
【0098】
参考例5
攪拌機、冷却管、窒素流入管、温度計を備えた1000mlの4口フラスコに、窒素雰囲気下、イソホロンジイソシアネート(IPDI、1分子中の平均イソシアネート基数:2.0)33.3g(0.15モル)、ポリカーボネートジオールPC3を100g(0.05モル)、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)6.7g(0.05モル)、トリエチルアミン(TEA)6.1g(0.05モル)、及びメチルエチルケトン(MEK)30mLを加え、80℃で2.5時間反応させて、末端イソシアネート(NCO末端)のプレポリマー溶液を得た。ついで、脱イオン水342gを添加し、35℃でプレポリマー溶液と混合してプレポリマー分散液を得た。脱イオン水2.0g中に鎖延長剤としてエチレンジアミン(EDA)1.5g(0.0025モル)を含む溶液を、プレポリマー分散液に添加して、30℃で1時間撹拌して混合物を得た。ついで、得られた混合物を80℃に加熱してMEKを除去して、固形分30質量%の水性ポリウレア分散体を得た。得られた水性ポリウレア分散体を、アルミニウム皿上に所定量注ぎ、室温で24時間放置した後、80℃で12時間熱処理を行い、膜厚40μmのポリウレア樹脂のフィルムを作成した。室温で24時間放置した後、このフィルムを用い、各種物性の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0099】
[比較例9]
ポリカーボネートジオールとしてPC14を用いた以外は、実施例16と同様にポリウレア樹脂のフィルムを得て、各種物性の評価に供した。評価結果を表3に示した。
【0100】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のポリウレア樹脂は各種物性に優れるため、射出成型部材(把持部品、ステアリングホイール、エアバッグの収納カバー、時計ベルト等)、押出し成形品(ホース、チューブ、シート等)や、溶剤に溶解して合成皮革用バインダー、表皮材、表面処理剤、繊維用コーティング剤、各種表面処理剤、及び各種接着剤等に使用することができる。