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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】建築材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/14 20060101AFI20240918BHJP
   C04B 41/83 20060101ALI20240918BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240918BHJP
   E04F 13/10 20060101ALI20240918BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20240918BHJP
   E04F 13/16 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B28B11/14
C04B41/83 A
E04F13/08 E
E04F13/10 A
E04F13/14 102B
E04F13/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020203342
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090805
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】玉村 耕造
(72)【発明者】
【氏名】小谷 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】原 光平
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-034437(JP,U)
【文献】特開平08-290418(JP,A)
【文献】実開昭51-119359(JP,U)
【文献】実開平3-061038(JP,U)
【文献】特開昭62-297106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00 - 19/00
E04F 13/00 - 13/30
C04B 41/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を板状に成形した繊維板(12)を用意し、その繊維板(12)を所定方向の折り線(14)に沿って折り曲げて破断させ、その破断面(12a)を意匠面とする、ことを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項2】
請求項1の建築材の製造方法において、
前記の繊維板(12)が、前記の繊維を流れ方向に配向させて板状に成形したものであり、
前記の折り線(14)が、上記の繊維板(12)に対して上記の繊維の配向方向に沿うように設定されたものである、ことを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の建築材の製造方法において、
前記の繊維板(12)が、ロックウール板,繊維強化セメント板,パーティクルボード,インシュレーションボード,MDF及びハードボードからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの建築材の製造方法において、
前記の繊維板(12)を折り曲げた際に引張応力が作用する側の表面に、当該折り曲げ箇所の折り線(14)に沿って予め破線状の切れ目(16)を入れる、ことを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項5】
請求項4の建築材の製造方法において、
前記の破線状の切れ目(16)は、前記の折り線(14)を挟んで互いに平行するように左右一対設けられると共に、当該折り線(14)の伸長方向において互いに左右で重ならないように千鳥状にて設けられることを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの建築材の製造方法において、
少なくとも繊維板(12)の破断面(12a)に、樹脂塗料(18)を塗装する、ことを特徴とする建築材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材等として用いられる新規建築材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外壁材や内壁材と言った壁材などに用いられる建築材において、表面が自然に侵食された彫の深い自然石調のものが好まれている。このような自然石調の建築材の製造方法として、従来では、下記の特許文献1(日本国・特開2012-144022号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
坏土混錬物よりなる可塑性原料を押出成型機に投入して複数列の凸条部を有した成形体を押出成形する。その際に、各凸条部に対して回転体の蛇行状の周回溝を押し付けて各凸条を蛇行させる。なお、周回溝は回転体の外周面を周回しており、また複雑に蛇行して延在している。
【0003】
かかる技術によれば、得られた成形体を所定長さにて切断し、乾燥させた後、焼成する事によって、各凸条が互いに非平行で且つ複雑に蛇行した自然石調の外観を持ったタイルを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-144022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術には次の問題がある。すなわち、得られたタイルの凸条の形状は回転体の外周面に形成された周回溝の形状が転写されたものである事から、当該タイルの表面には所定の周期で同じ形状の意匠が繰り返されるようになる。このため、自然石調の意匠を表現すべく、当該タイルを施工する際には、同じ意匠のタイルが近接しないように注意して施工しなければならない。また、かかる方法では、可塑性原料の混錬に始まり、成形、乾燥及び焼結と言った様々なプロセスを経て建築材となるタイルが完成することから、簡単且つ効率的に建築材を量産するのが難しいと言った問題もある。
それゆえに、本発明の主たる課題は、自然石に匹敵する複雑で高度な意匠性を有する建築材を簡単かつ効率的に量産することができる建築材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本発明は、例えば、図1~4に示すように、建築材の製造方法を次のように構成した。
すなわち、繊維を板状に成形した繊維板12を用意し、その繊維板12を所定方向の折り線14に沿って折り曲げて破断させ、その破断面12aを意匠面とすることを特徴とする。
【0007】
本発明では、繊維を板状に成形した繊維板12に対して、所定方向の折り線14で折り曲げて破断するだけで意匠面となる破断面12aを形成することが出来、その破断面12aは、自然の土砂が堆積して形成された地層から切り出した自然石のように、同一形状が一定周期で繰り返されることのない複雑で高度な意匠性を有したものとなる。
【0008】
本発明においては、上記の繊維板12が、上記の繊維を流れ方向に配向させて板状に成形したものであり、且つ、上記の折り線14が、上記の繊維板12に対して上記の繊維の配向方向に沿うように設定されたものであることが好ましい。
この場合、繊維板12を構成する繊維のアスペクト比の大小にかかわらず、意匠性に優れた破断面12aを効率よく量産することが出来るようになる。
【0009】
また、本発明においては、前記の繊維板12が、ロックウール板,繊維強化セメント板,パーティクルボード,インシュレーションボード,MDF及びハードボードからなる群より選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
この場合、建築材10の基材となる繊維板12の種類を適宜選択することによって、目的とする品質に合致した建築材10を提供することが出来るようになる。
【0010】
また、本発明においては、前記の繊維板12を折り曲げた際に引張応力が作用する側の表面に、当該折り曲げ箇所の折り線14に沿って予め破線状の切れ目16を入れるのが好ましい。とりわけ、その破線状の切れ目16は、上記の折り線14を挟んで互いに平行するように左右一対設けると共に、当該折り線14の伸長方向において互いに左右で重ならないように千鳥状にて設けるのが好ましい。
これらの場合、繊維板12を破断させる際に、この切れ目16によって繊維板12に形成される破断箇所を案内することが出来るのに加え、後述するように、繊維板12に形成される破断面12aの形状を制御することが出来る。
【0011】
さらに、本発明においては、少なくとも繊維板12の破断面12aに、樹脂塗料18を塗装するのが好ましい。
この場合、建築材10を施工した際に当該建築材10が提供する意匠面の耐久性を向上させることが出来るのに加え、その意匠面に対して塗装する樹脂塗料18の種類や配合成分に応じた機能を付与することも出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自然石に匹敵する複雑で高度な意匠性を有する建築材を簡単かつ効率的に量産することができる建築材の製造方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の建築材の製造方法を用いて製造された建築材の一例を示す図面代用写真である。
図2】本発明の建築材の製造方法における一実施形態の概略を示す説明図である。
図3】本発明の建築材の製造方法における切れ目の効果を示す説明図である。
図4】本発明の建築材の製造方法における他の実施形態の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の建築材の製造方法を用いて製造された建築材10の一例を示す図面代用写真である。この図が示すように、本発明で得られる建築材10は、繊維板12の破断面12aを自然石調の意匠面とするものであって、その破断面12aには必要の応じて様々な種類の樹脂塗料18を塗装することができる。図2は、本発明の建築材の製造方法における一実施形態(第1の実施形態)の概要を示すものであり、図中(a)は繊維板準備工程、図中(b)は破断準備工程、図中(c)は破断工程をそれぞれ示す。そして、本発明の建築材の製造方法では、この「繊維板準備工程」,「破断準備工程」および「破断工程」がこの順で実行される。
【0015】
繊維板準備工程では、建築材10の基材となる繊維板12を準備する。この繊維板12は、有機或いは無機の繊維を流れ方向に配向させて板状に成形した物である。ここで、繊維を流れ方向に配向させて板状に成形する方法としては、湿式法及び乾式法の何れであってもよい。また、経済的且つ効率的に建築材10を製造するためには、この繊維板12として、ロックウール板,繊維強化セメント板,パーティクルボード,インシュレーションボード,MDF及びハードボードからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0016】
また、用意した繊維板12は、必要に応じて所定の寸法に切り揃えられると共に、後述する破断工程で折り曲げた際に引張応力が作用する側の表面に、当該折り曲げ箇所の折り線14に沿う破線状の切れ目16が設けられる。図2に示す実施形態では、この切れ目16が、上記の折り線14を挟んで互いに平行するように左右一対設けられると共に、当該折り線14の伸長方向において互いに左右で重ならないように千鳥状にて設けられる。
【0017】
ここで、繊維板12の表面に切れ目16を設ける際には、上述のように、折り線14を挟んで互いに平行するように左右一対設けると共に、当該折り線14の伸長方向において互いに左右で重ならないように千鳥状にて設けるのが好ましい(図2(a)参照)。こうする事により、切れ目16によって破断箇所を案内することが出来るのみならず、図3(a)に示すように、折り線14の伸長方向に対する切れ目16の間隔を狭めることによって、破断面12aの凹凸のピッチが細かい柄を得ることが出来、逆に、図3(b)に示すように、折り線14の伸長方向に対する切れ目16の間隔を拡げることによって、破断面12aの凹凸のピッチが大きい柄を得ることが出来る。つまり、意匠面となる破断面12aに形成される凹凸模様の形状をある程度コントロールすることが出来るようになる。なお、このような模様のコントロールは、左右一対設けられる切れ目16同士の左右方向(幅方向)の距離を調整することによっても実行する事が出来る。
【0018】
そして、以上のような繊維板準備工程が完了し、用意された繊維板12は、続く破断準備工程へと供される。
【0019】
破断準備工程は、繊維板12を破断させて建築材10を形成させるための準備をする工程であり、図2に示す実施形態では、この繊維板12に、当該繊維板12の幅方向左右両端部から折り線14近傍までの上下両表面を長手方向全体に亘って覆う断面コ字状のクリップ部材20が取り付けられる。
そして、この破断準備工程が完了した後、破断工程が実行される。
【0020】
破断工程は、繊維板12を所定の折り線14に沿って折り曲げて破断させる工程であり、図2に示す実施形態では、図2(c)のように切れ目16が上面側に設けられているので、繊維板12に左右一対取り付けられたクリップ部材20の外縁を下側へと押し下げるようにして繊維板12を折り曲げて行く。そうすると、繊維板12が折り線14上で破断して破断面12aが形成され、この破断面12aを意匠面とする建築材10が完成する。
【0021】
ここで、本実施形態の建築材10では、破断したままの状態で建築材10として活用できるが、上述したように、(必要に応じて)少なくとも破断面12aに樹脂塗料18を塗装するようにしても良い。この樹脂塗料18として、例えば軒天塗料などの屋外用塗料を塗装すれば、建築材10の意匠面に耐候性や形態保持性などを付与する事が出来るようになる。
【0022】
また、繊維板12を破断して得られた建築材10は、所定の寸法にカットしても良いし、破断面12aが一面に揃うように積層して接着剤などを用いて一体化させても良い。つまり、本発明の建築材の製造方法で製造された建築材10は、施工性などを改善するために様々な後加工を施す事が出来る。
【0023】
以上のように構成された第1実施形態の建築材の製造方法によれば、繊維を流れ方向に配向させて板状に成形した繊維板12に対して、繊維の流れ方向に沿った折り線14で折り曲げて破断しているので、繊維板12を構成する繊維のアスペクト比が大きな場合であっても、意匠面となる破断面12aを効率よく綺麗に得ることが出来る。また、繊維板12の破断の際に、当該繊維板12をクリップ部材20で保持しているので、繊維板12の破断箇所以外の部分に応力が集中して損傷するのを防止する事が出来る。
【0024】
次に、図4に示す第2の実施形態の建築材の製造方法について説明する。上述した第1の実施形態の建築材の製造方法と異なる点は、繊維板12を破断する際に、クリップ部材20に替えて押圧板材22を用いている点である。なお、これ以外の点については、上述した第1実施形態と同じであるので、上述した第1の実施形態の説明を援用する。
【0025】
図4に示す第2の実施形態では、繊維板準備工程において、用意した繊維板12を折り曲げた際に引張応力が作用する側の表面に、当該折り曲げ箇所の折り線14に沿う破線状の切れ目16を設けた後、この切れ目16が下を向くように繊維板12を回転させてその上下が入れ替えられる(図4(a)参照)。なお、この図4に示す第2の実施形態においても、切れ目16は、上記の折り線14を挟んで互いに平行するように左右一対設けられると共に、当該折り線14の伸長方向において互いに左右で重ならないように千鳥状にて設けられる。
【0026】
続いて、破断準備工程では、繊維板12の上面から折り線14上に押圧板材22を押し当てる。
そして、破断工程では、繊維板12の幅方向左右両端部を持ち上げつつ、押圧板材22を下方へ移動させて繊維板12を上から押圧すると、繊維板12が破断して建築材10が完成する。
【0027】
以上のように構成された第2実施形態の建築材の製造方法によれば、繊維板12の繊維の流れ方向に沿った折り線14上に押圧板材22を押し当てて当該繊維板12を折り曲げるだけで、意匠面となる破断面12aを効率よく簡単に得ることが出来る。
【0028】
なお、この第2の実施形態でも、繊維板12を折り曲げた際に引張応力が作用する側の表面に、当該折り曲げ箇所の折り線14に沿う破線状の切れ目16を設けたが、当該実施形態では、破断工程における繊維板12破断の際に、その繊維板12の折り線14上を押圧板材22で押圧するため、破断面12aに形成される凹凸模様をコントロールする必要がなければ、当該切れ目16を省略するようにしてもよい。
【0029】
また、上述の第1の実施形態および第2の実施形態では、繊維板12として繊維を流れ方向に配向させて板状に成形したものを用いると共に、折り曲げ箇所の折り線14を繊維板12に対して繊維の配向方向に沿うように設定する場合を示してきたが、例えば、繊維板12を構成する繊維のアスペクト比が小さい場合などには、繊維板12において当該繊維を流れ方向に配向させずランダムに配向させるようにしても良いし、折り線14を繊維の配向方向に沿うよう設定しなくても良い。
【0030】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
10:建築材,12:繊維板,12a:破断面,14:折り線,16:切れ目,18:樹脂塗料.
図1
図2
図3
図4