IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-機器障害診断プログラム 図1
  • 特許-機器障害診断プログラム 図2
  • 特許-機器障害診断プログラム 図3
  • 特許-機器障害診断プログラム 図4
  • 特許-機器障害診断プログラム 図5
  • 特許-機器障害診断プログラム 図6
  • 特許-機器障害診断プログラム 図7
  • 特許-機器障害診断プログラム 図8
  • 特許-機器障害診断プログラム 図9
  • 特許-機器障害診断プログラム 図10
  • 特許-機器障害診断プログラム 図11
  • 特許-機器障害診断プログラム 図12
  • 特許-機器障害診断プログラム 図13
  • 特許-機器障害診断プログラム 図14
  • 特許-機器障害診断プログラム 図15
  • 特許-機器障害診断プログラム 図16
  • 特許-機器障害診断プログラム 図17
  • 特許-機器障害診断プログラム 図18
  • 特許-機器障害診断プログラム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】機器障害診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20240918BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G06F11/07 193
G06F11/34 147
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020214231
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100082
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小井▲土▼ 亜希
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-28780(JP,A)
【文献】特開2007-257184(JP,A)
【文献】特開2018-136656(JP,A)
【文献】特開平4-299740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の障害の各症状の有無に応じて、前記機器の障害への各処置を診断するためのフローチャートデータを、前記機器の障害の特定の症状に応じて、前記機器の障害への特定の処置を仮想で診断した旨の基本事例データに変換し、起こり得ない前記機器の障害の他症状又は前記機器の障害への他処置を特定するデータ作成ステップと、
前記基本事例データに基づいて、前記機器の障害の新たな症状に応じて、前記機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデルを構築するモデル構築ステップと、
前記障害推論モデルに基づいて、前記機器の障害の新たな症状に応じて、前記機器の障害への必要な処置を推論する処置推論ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための機器障害診断プログラム。
【請求項2】
前記データ作成ステップは、前記機器の障害の各症状の有無の分岐確率に基づいて、前記基本事例データの発生確率に比例する個数の前記基本事例データを重複で作成し、
前記モデル構築ステップは、前記基本事例データの発生確率に比例する個数の重複で作成された前記基本事例データに基づいて、前記障害推論モデルを構築する
ことを特徴とする、請求項1に記載の機器障害診断プログラム。
【請求項3】
前記データ作成ステップは、前記基本事例データにおいて、前記機器の障害の各症状の有無又は前記機器の障害への各処置が起きたときに、考慮すべき前記機器の障害の他症状又は起こり得る前記機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な前記機器の障害の他症状又は起こり得ない前記機器の障害への他処置を特定する基本補間データを追加し、
前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ及び前記基本補間データに基づいて、前記障害推論モデルを構築する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の機器障害診断プログラム。
【請求項4】
前記データ作成ステップは、前記機器の障害の各症状の有無又は前記機器の障害への各処置が起きた前記基本事例データに基づいて、前記基本補間データを追加する
ことを特徴とする、請求項3に記載の機器障害診断プログラム。
【請求項5】
前記データ作成ステップは、前記機器の障害の実際の症状に応じて、前記機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の蓄積事例データを、前記基本事例データと同一のデータ形式を有する追加事例データに変換し、起こり得ない前記機器の障害の他症状又は前記機器の障害への他処置を特定し、
前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ及び前記追加事例データに基づいて、前記障害推論モデルを更新する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の機器障害診断プログラム。
【請求項6】
前記データ作成ステップは、前記基本事例データでの前記機器の障害の各症状又は前記機器の障害への各処置に含まれない、前記追加事例データでの前記機器の障害の実際の症状又は前記機器の障害への実際の処置が、前記基本事例データで起こり得ないことを特定し、前記基本事例データと前記追加事例データとの結合処理データを作成する
ことを特徴とする、請求項5に記載の機器障害診断プログラム。
【請求項7】
前記データ作成ステップは、前記基本事例データと前記追加事例データとの結合処理データにおいて、前記機器の障害の各症状の有無及び実際の症状の有無、又は、前記機器の障害への各処置及び実際の処置が起きたときに、考慮すべき前記機器の障害の他症状又は起こり得る前記機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な前記機器の障害の他症状又は起こり得ない前記機器の障害への他処置を特定する追加補間データを追加し、
前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ、前記追加事例データ及び前記追加補間データに基づいて、前記障害推論モデルを更新する
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の機器障害診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機器の障害への必要な処置を推論する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の障害への必要な処置を推論する技術が、特許文献1、2に開示されている。特許文献1、2では、機器の障害の実際の症状に応じて、機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の蓄積事例データを作成する。そして、蓄積事例データに基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6667701号明細書
【文献】特開平9-016430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、蓄積事例データが存在しない機器の出荷直後において、機器の障害への必要な処置を推論することができない。そして、蓄積事例データが存在する機器のサービス期間等において、蓄積事例データに含まれない機器の障害の新たな症状が現れると、機器の障害への必要な処置を推論することができず、蓄積事例データに含まれる機器の障害の実際の症状が偏ると、機器の障害への必要な処置の推論への影響が大きい。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、機器の出荷直後及びサービス期間等において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、開発者及びサービススタッフ等の知見に基づいて、機器の障害の各症状の有無に応じて、機器の障害への各処置を診断するためのフローチャートデータを作成する。ただし、フローチャートデータは、従来技術の蓄積事例データと比べて、異なるデータ形式を有する。そこで、フローチャートデータについて、機器の障害の特定の症状に応じて、機器の障害への特定の処置を仮想で診断した旨の基本事例データに変換する。すると、基本事例データは、従来技術の蓄積事例データと比べて、同一のデータ形式を有する。そして、基本事例データに基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデルを構築する。
【0007】
具体的には、本開示は、機器の障害の各症状の有無に応じて、前記機器の障害への各処置を診断するためのフローチャートデータを、前記機器の障害の特定の症状に応じて、前記機器の障害への特定の処置を仮想で診断した旨の基本事例データに変換し、起こり得ない前記機器の障害の他症状又は前記機器の障害への他処置を特定するデータ作成ステップと、前記基本事例データに基づいて、前記機器の障害の新たな症状に応じて、前記機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデルを構築するモデル構築ステップと、前記障害推論モデルに基づいて、前記機器の障害の新たな症状に応じて、前記機器の障害への必要な処置を推論する処置推論ステップと、を順にコンピュータに実行させるための機器障害診断プログラムである。
【0008】
この構成によれば、機器の出荷直後において、基本事例データが存在し、基本事例データは、様々な偏りの少ない機器の障害の症状及び機器の障害への処置を含む。よって、機器の出荷直後において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。そして、基本事例データにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定するデータを追加し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。
【0009】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記機器の障害の各症状の有無の分岐確率に基づいて、前記基本事例データの発生確率に比例する個数の前記基本事例データを重複で作成し、前記モデル構築ステップは、前記基本事例データの発生確率に比例する個数の重複で作成された前記基本事例データに基づいて、前記障害推論モデルを構築することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0010】
この構成によれば、基本事例データ及び障害推論モデルにおいて、フローチャートデータでの機器の障害の各症状の有無の分岐確率を正確に反映させることができる。
【0011】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記基本事例データにおいて、前記機器の障害の各症状の有無又は前記機器の障害への各処置が起きたときに、考慮すべき前記機器の障害の他症状又は起こり得る前記機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な前記機器の障害の他症状又は起こり得ない前記機器の障害への他処置を特定する基本補間データを追加し、前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ及び前記基本補間データに基づいて、前記障害推論モデルを構築することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0012】
この構成によれば、基本事例データに対して、基本補間データを追加し、学習用データを増加することができる。そして、基本補間データにおいて、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。さらに、基本補間データにおいて、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係をなおさら顕著に表現することができる。
【0013】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記機器の障害の各症状の有無又は前記機器の障害への各処置が起きた前記基本事例データに基づいて、前記基本補間データを追加することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0014】
この構成によれば、フローチャートデータに戻るまでもなく、基本事例データを組み合わせるのみで、基本補間データを容易に追加することができる。
【0015】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記機器の障害の実際の症状に応じて、前記機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の蓄積事例データを、前記基本事例データと同一のデータ形式を有する追加事例データに変換し、起こり得ない前記機器の障害の他症状又は前記機器の障害への他処置を特定し、前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ及び前記追加事例データに基づいて、前記障害推論モデルを更新することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0016】
この構成によれば、機器のサービス期間等において、追加事例データが追加され、追加事例データは、様々な機器の障害の症状及び機器の障害への処置を含む。よって、機器のサービス期間等において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。そして、追加事例データにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定するデータを追加し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。
【0017】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記基本事例データでの前記機器の障害の各症状又は前記機器の障害への各処置に含まれない、前記追加事例データでの前記機器の障害の実際の症状又は前記機器の障害への実際の処置が、前記基本事例データで起こり得ないことを特定し、前記基本事例データと前記追加事例データとの結合処理データを作成することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0018】
この構成によれば、基本事例データと追加事例データとを、同一の形式のデータとして結合することができる。そして、基本事例データにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置(追加事例データでは、実際に起こる症状又は処置として含まれる。)を特定するデータを追加し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。
【0019】
また、本開示は、前記データ作成ステップは、前記基本事例データと前記追加事例データとの結合処理データにおいて、前記機器の障害の各症状の有無及び実際の症状の有無、又は、前記機器の障害への各処置及び実際の処置が起きたときに、考慮すべき前記機器の障害の他症状又は起こり得る前記機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な前記機器の障害の他症状又は起こり得ない前記機器の障害への他処置を特定する追加補間データを追加し、前記モデル構築ステップは、前記基本事例データ、前記追加事例データ及び前記追加補間データに基づいて、前記障害推論モデルを更新することを特徴とする機器障害診断プログラムである。
【0020】
この構成によれば、追加事例データに対して、追加補間データを追加し、学習用データを増加することができる。そして、追加補間データにおいて、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。さらに、追加補間データにおいて、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデルにおいて、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係をなおさら顕著に表現することができる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本開示は、機器の出荷直後及びサービス期間等において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の機器障害診断装置の構成を示す図である。
図2】本開示の初期学習の処理概要を示す図である。
図3】本開示の基本事例データの作成処理を示す図である。
図4】本開示の基本事例データの作成処理を示す図である。
図5】本開示の基本事例データの作成処理を示す図である。
図6】本開示の分岐等確率データの追加処理を示す図である。
図7】本開示の分岐等確率データの追加処理を示す図である。
図8】本開示の基本補間データの追加処理を示す図である。
図9】本開示の基本補間データの追加処理を示す図である。
図10】本開示のフローチャートデータの具体例を示す図である。
図11】本開示の障害推論モデルの具体例を示す図である。
図12】本開示の障害推論モデルの具体例を示す図である。
図13】本開示の障害推論モデルの具体例を示す図である。
図14】本開示の障害推論モデルの具体例を示す図である。
図15】本開示の追加学習の処理概要を示す図である。
図16】本開示の追加事例データの作成処理を示す図である。
図17】本開示の結合処理データの作成処理を示す図である。
図18】本開示の追加補間データの追加処理を示す図である。
図19】本開示の障害推論モデルの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0024】
(本開示の機器障害診断装置の構成)
本開示の機器障害診断装置の構成を図1に示す。機器障害診断装置Dは、フローチャートデータ1、蓄積事例データ2、データ作成部3、学習用データ4、モデル構築部5、障害推論モデル6、新規事例データ7及び処置推論部8を備える。フローチャートデータ1、蓄積事例データ2、学習用データ4、障害推論モデル6及び新規事例データ7は、データベースである。データ作成部3、モデル構築部5及び処置推論部8は、図2~9、15~18に示す機器障害診断プログラムをインストールされるコンピュータである。
【0025】
図2~9に示す初期学習の処理では、開発者及びサービススタッフ等の知見に基づいて、機器の障害の各症状の有無に応じて、機器の障害への各処置を診断するためのフローチャートデータ1を作成する。ただし、フローチャートデータ1は、後述の追加事例データと比べて、異なるデータ形式を有する。そこで、フローチャートデータ1について、機器の障害の特定の症状に応じて、機器の障害への特定の処置を仮想で診断した旨の基本事例データに変換する。すると、基本事例データは、後述の追加事例データと比べて、同一のデータ形式を有する。そして、基本事例データに基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデル6を構築する。
【0026】
図15~18に示す追加学習の処理では、消費者等の問合せ及びサービススタッフ等の処置に基づいて、機器の障害の実際の症状に応じて、機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の蓄積事例データ2を作成する。ただし、蓄積事例データ2は、上述の基本事例データと比べて、異なるデータ形式を有する。そこで、蓄積事例データ2について、機器の障害の実際の症状に応じて、機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の追加事例データに変換する。すると、追加事例データは、上述の基本事例データと比べて、同一のデータ形式を有する。そして、追加事例データに基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデル6を更新する。
【0027】
(本開示の初期学習の処理)
本開示の初期学習の処理概要を図2に示す。データ作成部3は、基本事例データFC、分岐等確率データBE及び基本補間データFIを、学習用データ4として作成する。モデル構築部5は、これらの学習用データ4に基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデル6を構築する。処置推論部8は、障害推論モデル6及び新規事例データ7(機器の障害の新たな症状が記載される。)に基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論する。
【0028】
本開示の基本事例データの作成処理を図3~5に示す。データ作成部3は、機器の障害の各症状の有無に応じて、機器の障害への各処置を診断するためのフローチャートデータ1を、機器の障害の特定の症状に応じて、機器の障害への特定の処置を仮想で診断した旨の基本事例データFCに変換する。なお、データ作成部3は、フローチャートデータ1において、文字種の違い及び表現のゆらぎ(意味は同じ)を整理し、機器の障害の各症状S1~S5及び機器の障害への各処置T1~T4を基本事例IDとして登録する。
【0029】
フローチャートデータ1において、以下の症状から処置へのフローが表現される。症状S1が存在しなければ、処置T1が実行され、症状S1が存在すれば、症状S2の有無が判断される。症状S2が存在しなければ、症状S4の有無が判断され、症状S2が存在すれば、症状S3の有無が判断される。症状S3が存在しなければ、症状S5の有無が判断され、症状S3が存在すれば、処置T2が実行される。症状S4が存在しなければ、処置T4が実行され、症状S4が存在すれば、症状S5の有無が判断される。症状S5が存在しなければ、処置T2が実行され、症状S5が存在すれば、処置T3が実行される。
【0030】
データ作成部3は、フローチャートデータ1において、以下のシナリオSC1~SC7を抽出する。そして、シナリオSC1~SC7において、以下の基本事例データFC1~FC7を作成する。ここで、基本事例データFC1~FC7において、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定する。
【0031】
シナリオSC1において、症状S1が存在し、症状S2が存在し、症状S3が存在し、処置T2が実行される。そこで、基本事例データFC1において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「YES」が記載され、症状S3に「YES」が記載され、処置T2に「1」が記載され、他症状S4、S5及び他処置T1、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0032】
シナリオSC2において、症状S1が存在し、症状S2が存在し、症状S3が存在せず、症状S5が存在せず、処置T2が実行される。そこで、基本事例データFC2において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「YES」が記載され、症状S3に「NO」が記載され、症状S5に「NO」が記載され、処置T2に「1」が記載され、他症状S4及び他処置T1、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0033】
シナリオSC3において、症状S1が存在し、症状S2が存在し、症状S3が存在せず、症状S5が存在し、処置T3が実行される。そこで、基本事例データFC3において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「YES」が記載され、症状S3に「NO」が記載され、症状S5に「YES」が記載され、処置T3に「1」が記載され、他症状S4及び他処置T1、T2、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0034】
シナリオSC4において、症状S1が存在し、症状S2が存在せず、症状S4が存在し、症状S5が存在せず、処置T2が実行される。そこで、基本事例データFC4において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「NO」が記載され、症状S4に「YES」が記載され、症状S5に「NO」が記載され、処置T2に「1」が記載され、他症状S3及び他処置T1、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0035】
シナリオSC5において、症状S1が存在し、症状S2が存在せず、症状S4が存在し、症状S5が存在し、処置T3が実行される。そこで、基本事例データFC5において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「NO」が記載され、症状S4に「YES」が記載され、症状S5に「YES」が記載され、処置T3に「1」が記載され、他症状S3及び他処置T1、T2、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0036】
シナリオSC6において、症状S1が存在し、症状S2が存在せず、症状S4が存在せず、処置T4が実行される。そこで、基本事例データFC6において、症状S1に「YES」が記載され、症状S2に「NO」が記載され、症状S4に「NO」が記載され、処置T4に「1」が記載され、他症状S3、S5及び他処置T1、T2、T3に「-(ハイフン)」が記載される。
【0037】
シナリオSC7において、症状S1が存在せず、処置T1が実行される。そこで、基本事例データFC7において、症状S1に「NO」が記載され、処置T1に「1」が記載され、他症状S2~S5及び他処置T2、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0038】
このように、機器の出荷直後において、基本事例データFCが存在し、基本事例データFCは、様々な偏りの少ない機器の障害の症状及び機器の障害への処置を含む。よって、機器の出荷直後において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。そして、基本事例データFCにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定するデータを追加し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係は、図10~14で後述する。
【0039】
本開示の分岐等確率データの追加処理を図6、7に示す。データ作成部3は、機器の障害の各症状の有無の分岐確率に基づいて、基本事例データFCの発生確率に比例する個数の基本事例データFCを重複で作成し、分岐等確率データBEとして作成する。
【0040】
フローチャートデータ1において、症状S1~S5の分岐確率は、図6、7ではそれぞれ1/2に等しくしているが、変形例としてそれぞれ1/2と異なっていてもよい。フローチャートデータ1において、症状S1~S5の分岐数は、図6、7ではそれぞれ2に等しくしているが、変形例としてそれぞれ3以上と決めていてもよい。
【0041】
シナリオSC1において、3種類の症状S1、S2、S3の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/8である。シナリオSC2において、4種類の症状S1、S2、S3、S5の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/16である。シナリオSC3において、4種類の症状S1、S2、S3、S5の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/16である。シナリオSC4において、4種類の症状S1、S2、S4、S5の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/16である。シナリオSC5において、4種類の症状S1、S2、S4、S5の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/16である。シナリオSC6において、3種類の症状S1、S2、S4の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/8である。シナリオSC7において、1種類の症状S1の有無が判断され、発生確率は(1/2)=1/2である。
【0042】
基本事例データFC1において、シナリオSC1の発生確率1/8に比例して、作成個数は16個×1/8=2個である。基本事例データFC2において、シナリオSC2の発生確率1/16に比例して、作成個数は16個×1/16=1個である。基本事例データFC3において、シナリオSC3の発生確率1/16に比例して、作成個数は16個×1/16=1個である。基本事例データFC4において、シナリオSC4の発生確率1/16に比例して、作成個数は16個×1/16=1個である。基本事例データFC5において、シナリオSC5の発生確率1/16に比例して、作成個数は16個×1/16=1個である。基本事例データFC6において、シナリオSC6の発生確率1/8に比例して、作成個数は16個×1/8=2個である。基本事例データFC7において、シナリオSC7の発生確率1/2に比例して、作成個数は16個×1/2=8個である。
【0043】
ここで、基本事例データFCの発生確率に比例する個数の基本事例データFCが「重複で作成されない」ときには、シナリオSC1~SC7の発生確率が等しいと考えることになり、症状S1~S5の分岐確率が意図した1/2と異なると考えることになる。
【0044】
一方で、基本事例データFCの発生確率に比例する個数の基本事例データFCが「重複で作成される」ときには、症状S1~S5の分岐確率が意図した1/2に等しいと考えることになり、シナリオSC1~SC7の発生確率が異なると考えることになる。
【0045】
このように、基本事例データFC及び障害推論モデル6において、フローチャートデータ1での機器の障害の各症状の有無の分岐確率を正確に反映させることができる。
【0046】
本開示の基本補間データの追加処理を図8、9に示す。データ作成部3は、基本事例データFC1~FC7において、機器の障害の各症状の有無又は機器の障害への各処置が起きたときに、以下の項目を特定する基本補間データFI1~FI14を追加する。つまり、基本補間データFI1~FI14において、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定する。ここで、機器の障害の各症状の有無又は機器の障害への各処置が起きた基本事例データFC1~FC7に基づいて、基本補間データFI1~FI14を追加する。以下では、基本補間データFIの一部について、詳細に説明する。
【0047】
基本補間データFI3において、症状S2の「YES」が起きたとすると、症状S2の「YES」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、症状S2の「YES」が起きた基本事例データFC1、FC2、FC3が抽出される。そして、症状S1、S3、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T2、T3が起こり得る処置に特定され、症状S4が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S2に「YES」が記載され、症状S1、S3、S5及び処置T2、T3に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S4及び処置T1、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0048】
基本補間データFI4において、症状S2の「NO」が起きたとすると、症状S2の「NO」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、症状S2の「NO」が起きた基本事例データFC4、FC5、FC6が抽出される。そして、症状S1、S4、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T2、T3、T4が起こり得る処置に特定され、症状S3が考慮不要な症状に特定され、処置T1が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S2に「NO」が記載され、症状S1、S4、S5及び処置T2、T3、T4に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S3及び処置T1に「-(ハイフン)」が記載される。
【0049】
基本補間データFI7において、症状S4の「YES」が起きたとすると、症状S4の「YES」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、症状S4の「YES」が起きた基本事例データFC4、FC5が抽出される。そして、症状S1、S2、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T2、T3が起こり得る処置に特定され、症状S3が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S4に「YES」が記載され、症状S1、S2、S5及び処置T2、T3に「(空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S3及び処置T1、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0050】
基本補間データFI8において、症状S4の「NO」が起きたとすると、症状S4の「NO」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、症状S4の「NO」が起きた基本事例データFC6が抽出される。そして、症状S1、S2が考慮すべき症状に特定され、処置T4が起こり得る処置に特定され、症状S3、S5が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T2、T3が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S4に「NO」が記載され、症状S1、S2及び処置T4に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S3、S5及び処置T1、T2、T3に「-(ハイフン)」が記載される。
【0051】
基本補間データFI12において、処置T2の「1」が起きたとすると、処置T2の「1」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、処置T2の「1」が起きた基本事例データFC1、FC2、FC4が抽出される。そして、症状S1、S2、S3、S4、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T1、T3、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、処置T2に「1」が記載され、症状S1、S2、S3、S4、S5に「 (空欄)(YES、NOも可)」が記載され、処置T1、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0052】
基本補間データFI13において、処置T3の「1」が起きたとすると、処置T3の「1」を通るフローチャートデータ1のフロー、又は、処置T3の「1」が起きた基本事例データFC3、FC5が抽出される。そして、症状S1、S2、S3、S4、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T1、T2、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、処置T3に「1」が記載され、症状S1、S2、S3、S4、S5に「 (空欄)(YES、NOも可)」が記載され、処置T1、T2、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0053】
基本補間データFI1~FI14において、1種類の症状の「YES又はNO」又は1種類の処置の「1」が起きたとしているが、変形例として、2種類以上の症状の「YES又はNO」及び/又は2種類以上の処置の「1」が起きたとしてもよい。
【0054】
このように、基本事例データFCに対して、基本補間データFIを追加し、学習用データ4を増加することができる。そして、基本補間データFIにおいて、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。さらに、基本補間データFIにおいて、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係をなおさら顕著に表現することができる。機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係は、図10~14で後述する。
【0055】
本開示のフローチャートデータの具体例を図10に示す。本開示の障害推論モデルの具体例を図11~14に示す。図11~14に示した障害推論モデル6は、図10に示したフローチャートデータ1について、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を確率論的に表現するベイジアンネットワーク等である。
【0056】
図11に示した障害推論モデル6において、「-(ハイフン)」が記載されていない基本事例データFC及び分岐等確率データBEは作成されているが、基本補間データFIは追加されていない。基本事例データFC及び分岐等確率データBEの「-(ハイフン)」がなく、基本補間データFIが追加されていないため、不足リンク箇所が多い。基本事例データFC及び分岐等確率データBEの「-(ハイフン)」がないため、過剰リンク箇所も多い。
【0057】
図12に示した障害推論モデル6において、「-(ハイフン)」が記載されている基本事例データFC及び分岐等確率データBEは作成されているが、基本補間データFIは追加されていない。基本事例データFC及び分岐等確率データBEの「-(ハイフン)」があるため、過剰リンク箇所が減る。基本補間データFIが追加されていないため、不足リンク箇所が残る。
【0058】
図13に示した障害推論モデル6において、「-(ハイフン)」が記載されている基本事例データFC及び分岐等確率データBEは作成されており、基本補間データFIは追加されているが、学習用データ4のデータ数は少ない。基本補間データFIの追加分があるため、不足リンク箇所が減る。学習用データ4のデータ数が少ないものの、フローチャートデータ1に近づいている。
【0059】
図14に示した障害推論モデル6において、「-(ハイフン)」が記載されている基本事例データFC及び分岐等確率データBEは作成されており、基本補間データFIは追加されており、学習用データ4のデータ数は多い。基本補間データFIの追加分があるため、不足リンク箇所が減る。学習用データ4のデータ数が多いため、フローチャートデータ1にかなり近づく。
【0060】
(本開示の追加学習の処理)
本開示の追加学習の処理概要を図15に示す。データ作成部3は、基本事例データFC及び分岐等確率データBEに加えて、追加事例データAC、結合処理データCP及び追加補間データAIを、学習用データ4として作成する。モデル構築部5は、これらの学習用データ4に基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論するための障害推論モデル6を更新する。処置推論部8は、障害推論モデル6及び新規事例データ7(機器の障害の新たな症状が記載される。)に基づいて、機器の障害の新たな症状に応じて、機器の障害への必要な処置を推論する。
【0061】
本開示の追加事例データの作成処理を図16に示す。データ作成部3は、機器の障害の実際の症状に応じて、機器の障害への実際の処置を現実に診断した旨の蓄積事例データ2を、基本事例データFCと同一のデータ形式を有する追加事例データACに変換し、起こり得ない機器の障害の他症状又は機器の障害への他処置を特定する。なお、データ作成部3は、フローチャートデータ1と蓄積事例データ2とを比較したうえで、文字種の違い及び表現のゆらぎ(意味は同じ)を整理し、機器の障害の既存の症状S1~S5及び機器の障害への既存の処置T1~T4を基本事例IDとして維持し、機器の障害の新規の症状S6及び機器の障害への新規の処置T5を追加事例IDとして登録する。
【0062】
追加事例データAC1において、蓄積事例データ2に基づいて、症状S5に「YES」が記載され、症状S6に「NO」が記載され、処置T3に「1」が記載され、他症状S1、S2、S3、S4及び他処置T1、T2、T4、T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0063】
追加事例データAC2において、蓄積事例データ2に基づいて、症状S4に「NO」が記載され、症状S6に「YES」が記載され、処置T4に「1」が記載され、他症状S1、S2、S3、S5及び他処置T1、T2、T3、T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0064】
追加事例データAC3において、蓄積事例データ2に基づいて、症状S3に「NO」が記載され、症状S5に「NO」が記載され、処置T5に「1」が記載され、他症状S1、S2、S4、S6及び他処置T1、T2、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。
【0065】
ここで、蓄積事例データ2が、フローチャートデータ1と矛盾することもあり得る。しかし、追加事例データACが、基本事例データFCと矛盾しても構わない。
【0066】
このように、機器のサービス期間等において、追加事例データACが追加され、追加事例データACは、様々な機器の障害の症状及び機器の障害への処置を含む。よって、機器のサービス期間等において、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。そして、追加事例データACにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定するデータを追加し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係は、図19で後述する。
【0067】
本開示の結合処理データの作成処理を図17に示す。データ作成部3は、基本事例データFC1~FC7又は分岐等確率データBEでの機器の障害の各症状S1~S5又は機器の障害への各処置T1~T4に含まれない、追加事例データAC1~AC3での機器の障害の実際の症状S6又は機器の障害への実際の処置T5が、基本事例データFC1~FC7又は分岐等確率データBEで起こり得ないことを「-(ハイフン)」で特定し、基本事例データFC1~FC7又は分岐等確率データBEと追加事例データAC1~AC3との結合処理データCPを作成する。
【0068】
このように、基本事例データFCと追加事例データACとを、同一の形式のデータとして結合することができる。そして、基本事例データFCにおいて、起こり得ない機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置(追加事例データACでは、実際に起こる症状又は処置として含まれる。)を特定するデータを追加し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係は、図19で後述する。
【0069】
本開示の追加補間データの追加処理を図18に示す。データ作成部3は、基本事例データFC1~FC7と追加事例データAC1~AC3との結合処理データCPにおいて、機器の障害の各症状の有無及び実際の症状の有無、又は、機器の障害への各処置及び実際の症状への処置が起きたときに、以下の項目を特定する追加補間データAI1~AI17を追加する。つまり、追加補間データAI1~AI17において、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定する。ここで、機器の障害の各症状の有無及び実際の症状の有無、又は、機器の障害への各処置及び実際の症状への処置が起きた基本事例データFC1~FC7と追加事例データAC1~AC3との結合処理データCPに基づいて、追加補間データAI1~AI17を追加する。
【0070】
図18では、本開示として、データ作成部3は、基本事例データFC1~FC7及び追加事例データAC1~AC3に基づいて、追加補間データAI1~AI17を追加している。図18以外に、変形例として、データ作成部3は、基本補間データFI1~FI14及び追加事例データAC1~AC3に基づいて、追加補間データAI1~AI17を追加してもよい。データ作成部3は、図18での本開示及び図18以外の変形例のいずれによっても、同様な追加補間データAI1~AI17を追加することができる。以下では、追加補間データAIの一部について、図18の本開示を用いて詳細に説明する。
【0071】
追加補間データAI6において、症状S3の「NO」が起きたとすると、症状S3の「NO」が起きた基本事例データFC2、FC3及び追加事例データAC3が抽出される。そして、症状S1、S2、S5が考慮すべき症状に特定され、処置T2、T3、T5が起こり得る処置に特定され、症状S4、S6が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S3に「NO」が記載され、症状S1、S2、S5及び処置T2、T3、T5に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S4、S6及び処置T1、T4に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI6において、基本補間データFI6に加えて、症状S6に「-(ハイフン)」が記載され、処置T5に「 (空欄)(1でもよい。)」が記載される。
【0072】
追加補間データAI8において、症状S4の「NO」が起きたとすると、症状S4の「NO」が起きた基本事例データFC6及び追加事例データAC2が抽出される。そして、症状S1、S2、S6が考慮すべき症状に特定され、処置T4が起こり得る処置に特定され、症状S3、S5が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T2、T3、T5が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S4に「NO」が記載され、症状S1、S2、S6及び処置T4に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S3、S5及び処置T1、T2、T3、T5に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI8において、基本補間データFI8に加えて、症状S6に「 (空欄)(YES又はNOでもよい。)」が記載され、処置T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0073】
追加補間データAI9において、症状S5の「YES」が起きたとすると、症状S5の「YES」が起きた基本事例データFC3、FC5及び追加事例データAC1が抽出される。そして、症状S1、S2、S3、S4、S6が考慮すべき症状に特定され、処置T3が起こり得る処置に特定され、処置T1、T2、T4、T5が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S5に「YES」が記載され、症状S1、S2、S3、S4、S6及び処置T3に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、処置T1、T2、T4、T5に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI9において、基本補間データFI9に加えて、症状S6に「 (空欄)(YES又はNOでもよい。)」が記載され、処置T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0074】
追加補間データAI10において、症状S5の「NO」が起きたとすると、症状S5の「NO」が起きた基本事例データFC2、FC4及び追加事例データAC3が抽出される。そして、症状S1、S2、S3、S4が考慮すべき症状に特定され、処置T2、T5が起こり得る処置に特定され、症状S6が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T3、T4が起こり得ない処置に特定される。さらに、症状S5に「NO」が記載され、症状S1、S2、S3、S4及び処置T2、T5に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S6及び処置T1、T3、T4に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI10において、基本補間データFI10に加えて、症状S6に「-(ハイフン)」が記載され、処置T5に「 (空欄)(1でもよい。)」が記載される。
【0075】
追加補間データAI13において、処置T3の「1」が起きたとすると、処置T3の「1」が起きた基本事例データFC3、FC5及び追加事例データAC1が抽出される。そして、症状S1、S2、S3、S4、S5、S6が考慮すべき症状に特定され、処置T1、T2、T4、T5が起こり得ない処置に特定される。さらに、処置T3に「1」が記載され、症状S1、S2、S3、S4、S5、S6に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、処置T1、T2、T4、T5に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI13において、基本補間データFI13に加えて、症状S6に「 (空欄)(YES又はNOでもよい。)」が記載され、処置T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0076】
追加補間データAI14において、処置T4の「1」が起きたとすると、処置T4の「1」が起きた基本事例データFC6及び追加事例データAC2が抽出される。そして、症状S1、S2、S4、S6が考慮すべき症状に特定され、症状S3、S5が考慮不要な症状に特定され、処置T1、T2、T3、T5が起こり得ない処置に特定される。さらに、処置T4に「1」が記載され、症状S1、S2、S4、S6に「 (空欄)(YES、NO、1も可)」が記載され、症状S3、S5及び処置T1、T2、T3、T5に「-(ハイフン)」が記載される。つまり、追加補間データAI14において、基本補間データFI14に加えて、症状S6に「 (空欄)(YES又はNOでもよい。)」が記載され、処置T5に「-(ハイフン)」が記載される。
【0077】
追加事例データAC1のみにおいて、症状S6の「NO」が起きており、追加補間データAI16において、追加事例データAC1の内容が反映される。追加事例データAC2のみにおいて、症状S6の「YES」が起きており、追加補間データAI15において、追加事例データAC2の内容が反映される。追加事例データAC3のみにおいて、処置T5の「1」が起きており、追加補間データAI17において、追加事例データAC3の内容が反映される。ただし、「 (空欄)(YES、NO又は1でもよい。)」が追加される。
【0078】
追加補間データAI1~AI17において、1種類の症状の「YES又はNO」又は1種類の処置の「1」が起きたとしているが、変形例として、2種類以上の症状の「YES又はNO」及び/又は2種類以上の処置の「1」が起きたとしてもよい。
【0079】
このように、追加事例データACに対して、追加補間データAIを追加し、学習用データ4を増加することができる。そして、追加補間データAIにおいて、考慮すべき機器の障害の他症状又は起こり得る機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を顕著に表現することができる。さらに、追加補間データAIにおいて、考慮不要な機器の障害の他症状又は起こり得ない機器の障害への他処置を特定し、障害推論モデル6において、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係をなおさら顕著に表現することができる。機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係は、図19で後述する。
【0080】
本開示の障害推論モデルの具体例を図19に示す。図19に示した障害推論モデル6は、図10に示したフローチャートデータ1及び図15に示した蓄積事例データ2について、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間の因果関係を確率論的に表現するベイジアンネットワーク等である。
【0081】
図19に示した障害推論モデル6において、「-(ハイフン)」が記載されている追加事例データAC及び結合処理データCPは作成されており、追加補間データAIは追加されており、学習用データ4のデータ数は多い。機器の障害の症状数及び機器の障害への処置数が増え、機器の障害の症状と機器の障害への処置との間のリンク数も増える。フローチャートデータ1が考慮されるとともに、蓄積事例データ2が考慮されるため、機器の障害の各症状の有無の分岐確率は、1/2から他の値へと重み付けが加わる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示の機器障害診断プログラムは、サービス期間等のみならず、機器の出荷直後においても、機器の障害への必要な処置を高精度に推論することができる。
【符号の説明】
【0083】
D:機器障害診断装置
1:フローチャートデータ
2:蓄積事例データ
3:データ作成部
4:学習用データ
5:モデル構築部
6:障害推論モデル
7:新規事例データ
8:処置推論部
FC:基本事例データ
BE:分岐等確率データ
FI:基本補間データ
AC:追加事例データ
CP:結合処理データ
AI:追加補間データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19