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特許7556786変性顔料を含有する放射線硬化型組成物及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】変性顔料を含有する放射線硬化型組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20240918BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240918BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/037
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020548978
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2019078861
(87)【国際公開番号】W WO2019179461
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】201810227975.6
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520348369
【氏名又は名称】チャンジョウ グリーン フォトセンシティブ マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU GREEN PHOTOSENSITIVE MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン,ビン
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】村守 宏文
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-836(JP,A)
【文献】特開2011-137083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00- 3/12
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料であって、
顔料と、顔料表面に被覆されている無機酸化物ナノ粒子とを含み、DBP吸油量が150~250ml/100g、粒子径が0.01~1μm、pH値が4.5~10である、ことを特徴とする変性顔料。
【請求項2】
前記無機酸化物は、シリカ、チタニア、酸化鉄、アルミナから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の変性顔料。
【請求項3】
DBP吸油量は200~250ml/100gであり、粒子径は0.1~0.8μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の変性顔料。
【請求項4】
DBP吸油量は215~235ml/100gである、ことを特徴とする請求項3に記載の変性顔料。
【請求項5】
粒子径は0.45~0.65μmである、ことを特徴とする請求項3に記載の変性顔料。
【請求項6】
pH値は5~9である、ことを特徴とする請求項1に記載の変性顔料。
【請求項7】
pH値は5.5~8である、ことを特徴とする請求項6に記載の変性顔料。
【請求項8】
前記顔料は、有機顔料又は無機顔料である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の変性顔料。
【請求項9】
前記有機顔料は、アゾ染料、チオインディゴ染料、インダントロン染料、イソインダントロン染料、アントアントロン染料、アントラキノン染料、イソビオラントロン染料、トリフェンジオキサジン染料、キナクリドン染料及びフタロシアニン染料から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項8に記載の変性顔料。
【請求項10】
前記無機顔料は、カーボン・ブラック、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化鉄及び硫化物から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項に記載の変性顔料。
【請求項11】
顔料を含む放射線硬化型グラビア印刷インクであって、
前記顔料は請求項1~10のいずれか1項に記載の変性顔料である、ことを特徴とする放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項12】
カチオン重合性化合物とカチオン性光開始剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項11に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項13】
前記カチオン重合性化合物は、オキセタン系化合物とエポキシ系化合物を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項14】
前記エポキシ系化合物は、脂環式エポキシ化合物である、ことを特徴とする請求項13に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項15】
前記エポキシ系化合物は、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項16】
前記オキセタン系化合物とエポキシ系化合物との質量比が2~5:1である、ことを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項17】
前記オキセタン系化合物とエポキシ系化合物との質量比が2~4:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項18】
前記カチオン性光開始剤は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項19】
前記変性顔料2~20重量%と
前記カチオン重合性化合物40~90重量%と
前記カチオン性光開始剤1~25重量%と
フィラー0~30重量%と
増感剤0~5重量%と、を含む、ことを特徴とする請求項1~1のいずれか1項に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項20】
前記変性顔料5~15重量%と、
前記カチオン重合性化合物45~80重量%と、
前記カチオン性光開始剤3~20重量%と、
フィラー0~20重量%と、
増感剤0~2重量%と、を含む、ことを特徴とする請求項19に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項21】
前記変性顔料5~15重量%と、
前記カチオン重合性化合物60~80重量%と、
前記カチオン性光開始剤5~15重量%と、
フィラー0~20重量%と、
増感剤0~2重量%と、を含む、ことを特徴とする請求項19記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項22】
前記フィラーをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項23】
前記増感剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項19に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項24】
前記増感剤がアントラセン系増感剤である、ことを特徴とする請求項23に記載の放射線硬化型グラビア印刷インク。
【請求項25】
請求項1124のいずれか1項に記載の放射線硬化型グラビア印刷インクの紙、プラスチック、フィルムへの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化、顔料及びインクの技術分野に属し、具体的には、放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷インクは、グラビア印刷液体インクとしても知られている着色コロイド分散系であり、適切な印刷方式で基材上に塗布されて、文字、パターンやさまざまな色を基材に付与することができる。
【0003】
グラビア印刷インクは、ほとんどが揮発性溶剤型インクであり、顔料、固形樹脂、揮発性溶剤、フィラー及び添加剤から構成される。環境保全及び省エネ意識の向上に伴い、水系インク、光硬化型インク、電子線硬化型インクなど、比較的「環境配慮型」インクは徐々に発展を遂げて、溶剤インクの代替品として使用されてきた。たとえば、出願番号200580017917.1、201510267026.7、201510994588.1の中国特許出願、公開番号US2009/0136759Aの米国特許出願では、揮発性溶剤不含のエネルギー硬化型グラビア印刷インクが開示されている。しかしながら、これら従来技術では、ほとんど彫刻版のドラム上のインクの拭き落としやすさ、印刷物の外観性、付着堅牢度、耐磨耗性、耐候性などを重点としているが、インクの保存安定性、生産効率の向上手法についての記載が少なく、効果的な解決策もなかった。
【0004】
顔料は、グラビア印刷インクの重要な成分であり、極めて小さな粒子でインク成膜物に分散されており、主として着色や隠蔽の役割を果たす。顔料は、インクへの添加量が大きいため、インクの保存安定性、粘度、硬化速度や印刷性能へ大きな影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、従来技術における顔料含有インクの保存安定性が悪いという問題を解決するために、放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料であって、顔料と、顔料表面に被覆されている無機酸化物ナノ粒子と、を含み、DBP吸油量が150~250ml/100g、粒子径が0.01~1μm、pH値が4.5~10である、変性顔料を提供する。
【0007】
さらに、上記無機酸化物は、シリカ、チタニア、酸化鉄、アルミナから選ばれる少なくとも1種である。
【0008】
さらに、上記変性顔料のDBP吸油量は、200~250ml/100g、好ましくは215~235ml/100gであり、粒子径は0.1~0.8μm、好ましくは0.45~0.65μmである。
さらに、上記変性顔料のpH値は5~9、好ましくは5.5~8である。
【0009】
さらに、上記顔料は、有機顔料又は無機顔料であり、好ましくは、有機顔料は、アゾ染料、チオインディゴ染料、インダントロン染料、イソインダントロン染料、アントアントロン(Anthanthrone)染料、アントラキノン染料、イソビオラントロン染料、トリフェンジオキサジン染料、キナクリドン染料及びフタロシアニン染料から選ばれるいずれか1種であり、好ましくは、無機顔料は、カーボン・ブラック、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化鉄及び硫化物から選ばれるいずれか1種である。
【0010】
本願の別の態様によれば、上記変性顔料の放射線硬化型インク組成物への応用を提供する。
さらに、上記放射線硬化型インク組成物はグラビア印刷インクとして使用される。
【0011】
本願のさらなる態様によれば、上記変性顔料である顔料を含む放射線硬化型グラビア印刷インクを提供する。
【0012】
さらに、上記放射線硬化型グラビア印刷インクは、カチオン重合性化合物とカチオン性光開始剤をさらに含む。
【0013】
さらに、上記カチオン重合性化合物は、オキセタン系化合物とエポキシ系化合物を含み、好ましくは、カチオン重合性化合物は、オキセタン系化合物とエポキシ系化合物から構成される。
【0014】
さらに、上記エポキシ系化合物は、脂環式エポキシ化合物、好ましくは、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物である。
【0015】
さらに、上記オキセタン系化合物とエポキシ系化合物との質量比が2~5:1、好ましくは、2~4:1である。
【0016】
さらに、上記カチオン性光開始剤は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである。さらに、上記放射線硬化型グラビア印刷インクは、変性顔料2~20重量%、好ましくは5~15重量%と、カチオン重合性化合物40~90重量%、好ましくは45~80重量%、より好ましくは60~80重量%と、カチオン性光開始剤1~25重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%と、フィラー0~30重量%、好ましくは0~20重量%と、増感剤0~5重量%、好ましくは0~2重量%と、を含む。
【0017】
さらに、上記放射線硬化型グラビア印刷インクはフィラーをさらに含む。
【0018】
さらに、上記放射線硬化型グラビア印刷インクは増感剤をさらに含み、好ましくは、前記増感剤がアントラセン系増感剤である。
【0019】
本願のさらなる態様によれば、上記のいずれか1種の放射線硬化型グラビア印刷インクの紙、プラスチック、フィルムへの応用を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の技術案を用いると、顔料表面を無機酸化物ナノ粒子で被覆処理することにより顔料の凝集を効果的に防止することができ、変性顔料は、親油性及び濡れ性が大幅に向上し、またインク分散系の安定性を促進し、さらにこの変性顔料を含有するインクの保存安定性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0022】
従来技術の欠陥及び技術発展のニーズに対して、本発明の主な目的は、放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料を提供することである。この変性顔料の放射線硬化型グラビア印刷インクを用いると、いかなる揮発性有機溶剤の使用も必要とせず、それにより、印刷物の良好な外観性、優れた付着力、無臭を確保しながら、インクの保存安定性を大幅に高め、そしてインクは優れた硬化速度を示す。
【0023】
本発明の前記放射線硬化型グラビア印刷インクに用いられる変性顔料は、顔料と、顔料表面に被覆されている無機酸化物ナノ粒子と、を含み、DBP吸油量が150~250ml/100g、粒子径が0.01~1μm、pH値が4.5~10である。
【0024】
発明者は、驚くべきことに、顔料表面を無機酸化物ナノ粒子で被覆処理することにより顔料凝集を効果的に防止することができることを見出した。変性顔料は、親油性及び濡れ性が大幅に向上し、またインク分散系の安定性を促進することができる。前記酸化物は、シリカ、チタニア、酸化鉄、アルミナから選ばれる少なくとも1種である。前記顔料は、有機顔料と無機顔料であり得る。適切な有機顔料には、アゾ(ビスアゾと縮合アゾを含む)、チオインディゴ、インダントロン、イソインダントロン、アントアントロン、アントラキノン、イソビオラントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドン及びフタロシアニン染料シリーズが含まれる。好ましくは、有機顔料は、フタロシアニン染料(特に銅フタロシアニン顔料)、アゾ顔料、インダントロン、アントアントロン及びキナクリドンである。適切な無機顔料は、カーボン・ブラック、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化鉄及び硫化物を含む。
【0025】
発明者は、実験を行ったところ、変性顔料の吸油量及び粒子径の大きさが印刷パターンの色調や印刷物の外観に直接影響することを見出した。GB/T5211.15~1988標準に準じて測定した結果、変性顔料のDBP吸油量は、150~250ml/100gが好適であり、好ましくは、200~250ml/100g、さらに好ましくは215~235ml/100gである。変性顔料の適切な粒子径の範囲は、0.01~1μm、好ましくは、0.1~0.8μm、さらに好ましくは0.45~0.65μmである。
【0026】
本分野における従来のグラビア印刷インクでは、通常、含む顔料のpH値を制限しない。ただし、本発明の研究者は、使用される顔料がpH≦4である場合に、インクが保存タンク内でゲル化しやすく、保存時間が短縮され、顔料がpH≧10である場合に、インクの硬化速度が明らかに低下することを発見した。したがって、発明者は、複数回の実験及び繰り返した検証を通じて、適切なpH範囲を決定し、つまり、前記変性顔料のpH値は、4.5~10、好ましくは、5~9、さらに好ましくは5.5~8である。
【0027】
顔料自体の性質、表面状態、加工条件、表面処理剤などの因素のいずれも顔料のpH値へ影響を与える。本発明では、変性顔料のpH値は国際GB/T1717-1986に準じて、変性顔料を蒸留水に分散させた溶液のpH値を測定して確定したものである。測定方法は、具体的には、ガラス容器において蒸留水を用いて10重量%(m/m)の顔料懸濁液を調製し、容器へ栓を付けて、1min激しく振とうした後、5min静置すると、栓を取り外し、懸濁液のpHを小数点以下1桁まで測定することを含む。
【0028】
以上から分かるように、本願では、顔料表面を無機酸化物ナノ粒子で被覆処理することにより顔料凝集を効果的に防止することができ、変性顔料のpH値を制御することで、この変性顔料を用いたグラビア印刷インクの安定性をさらに向上させ、また、変性顔料のDBP吸油量及び粒子径の範囲を制御することにより、この顔料印刷を用いて形成される印刷パターンの色調や印刷物の外観を改善する。
【0029】
本発明の変性顔料の上記のような優れた特性を鑑みて、本発明の目的は、また、上記変性顔料の放射線硬化型インク組成物への応用を提供することであり、前記インク組成物は特にグラビア印刷インク用として好適である。
【0030】
これに対応して、本発明は、上記変性顔料(A)を含む放射線硬化型グラビア印刷インクを提供する。グラビア印刷インクの全重量に対して、変性顔料の含有量は2~20重量%、好ましくは、5~15重量%である。
【0031】
特に好適には、上記変性顔料(A)に加えて、本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクは、カチオン重合性化合物(B)とカチオン性光開始剤(C)をさらに含む。
【0032】
以下、グラビア印刷インクに含まれるほかの成分についてより詳細に説明する。
【0033】
<カチオン重合性化合物(B)>
放射線硬化分野でよく使用されるカチオン重合性化合物は、オキセタン系化合物、エポキシ系化合物及びビニルエーテル系化合物を含む。
【0034】
本発明のグラビア印刷インクでは、優れた硬化速度を得る観点から、カチオン重合物性化合物としてオキセタン系化合物が使用されているのが有利である。また、印刷物の外観、基材への付着性などの物理的特性を考慮すると、好ましくは、オキセタン系化合物(B1)とエポキシ系化合物(B2)を組み合わせて使用する。
【0035】
使用され得るオキセタン系化合物(B1)は、単官能化合物であってもよいし、多官能化合物であってもよい。単官能の場合の例には、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどが含まれるが、これらに制限されない。多官能のものの例には、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどが含まれるが、これらに制限されない。さらに、出願番号が201610548580.7、201610550205.6、201710706339.7及び201710622973.2の中国特許出願で開示されたオキセタン系化合物(ここで全内容が参考として引用される)も組成物に使用され得る。
【0036】
全体としての応用性能から、さらに好ましくは、オキセタン系化合物(B1)は以下の化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0037】
【0038】
使用され得るエポキシ系化合物(B2)は、脂環式エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種であってもよく、好ましくは、脂環式エポキシ化合物である。
【0039】
本明細書に記載の「脂環式エポキシ化合物」とは、脂環式エポキシ基を有する化合物をいう。硬化速度をさらに向上させる点から、分子中に脂環式エポキシ基を2以上有する多官能脂環式エポキシ化合物、又は分子中に1つの脂環式エポキシ基を有するとともに、ビニル基などの不飽和二重結合基を有する脂環式エポキシ化合物が使用可能である。
【0040】
本発明のグラビア印刷インクに使用され得る脂環式エポキシ化合物としては、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物が好ましく、たとえば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート、エポキシシクロヘキサン、2-(3,4-エポキシシクロヘキサン)エチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシド、ビシクロノナジエンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルギ酸エステルとカプロラクトンの重合生成物、4-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,2-ビス(3,3’-エポキシシクロヘキシル)プロパン、2-(3,4-エポキシシクロヘキサン)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0041】
上記水素化エポキシ化合物として、飽和脂肪族環状炭化水素骨格上に直接又は間接的に結合されたグリシジルエーテル基を有する化合物が好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水素化エポキシ化合物は、好ましくは芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水素化物、より好ましくは芳香族グリシジルエーテル化合物の水素化物、さらに好ましくは芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水素化物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物などから選ばれることができる。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
【0042】
上記芳香族エポキシ化合物は、芳香環とエポキシ基を分子中に有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香環共役系を有するエポキシ化合物などであってもよい。より高い屈折率を実現するために、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物が好ましく、フルオレン骨格を有する化合物がより好ましく、それにより、屈折率がさらに顕著に向上し、さらに離型性がさらに向上する。また、芳香族エポキシ化合物中のエポキシ基がグリシジル基の化合物が好ましく、このエポキシ基がグリシジルエーテル基の化合物(即ち、芳香族グリシジルエーテル化合物)がより好ましい。また、より高い屈折率を実現できることから、芳香族エポキシ化合物の臭化物を使用することも好適であり、ただし、アッベ数がわずかに向上するので、好ましくは、用途に応じて使用する。
【0043】
上記芳香族エポキシ化合物の好ましい例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、臭素置換基を有する芳香族エポキシ化合物などが含まれる。その中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物がより好ましい。
【0044】
上記芳香族グリシジルエーテル化合物は、Epi-bis型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量Epi-bis型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック、アラルキル型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂などであることができる。
【0045】
Epi-bis型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノールなどのビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる樹脂であることができる。
【0046】
高分子量Epi-bis型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、上記Epi-bis型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂がさらに上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノールなどのビスフェノール類と付加反応してなる樹脂であることができる。
【0047】
上記芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい例は、日本エポキシ樹脂社製の828EL、1003、1007などのビスフェノールA型化合物、OSAKAGAS CHEMICALS社製のONCOATEX-1020、ONCOATEX-1010、OGSOLEG-210、OGSOLPGなどのフルオレン系化合物などを含むが、これらに制限されない。その中でも、OGSOLEG-210が特に好ましい。
【0048】
上記脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族エポキシ基を有する化合物、たとえば、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の好ましい例は、ポリヒドロキシ化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる樹脂などを含むが、これらに制限されない。前記ポリヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、単/多糖類(たとえば、グルコース、果糖、乳糖、マルトースなど)などから選ばれることができる。その中でも、中心骨格においてプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、アルキレンオキシド骨格を具有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂はより好適である。
【0049】
上記ビニルエーテル系化合物の例は、フェニルビニルエーテルなどのアリールビニルエーテル;n-ブチルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテルなどのシクロアルキルビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシ含有ビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテルなどを含むが、これらに制限されない。
【0050】
上記に加えて、異なる種類のカチオン重合性基を分子内に有する化合物もカチオン重合性化合物として使用可能である。たとえば、エポキシ基(たとえば、脂環式エポキシ基)とビニルエーテル基の両方を分子内に有するものの例としては、特開2009-242242号公報に記載の化合物;オキセタニル基とビニルエーテル基の両方を分子内に有するものの例としては、特開2008-266308号公報に記載の化合物が使用可能である。
【0051】
グラビア印刷インク中の成分(B)のカチオン重合性化合物の含有量は、基材の種類及び性能に応じて適宜調整することができ、40~90質量%が好適であり、好ましくは、45~80%、さらに好ましくは、60~80重量%である。オキセタン系化合物(B1)とエポキシ系化合物(B2)との質量比が、好ましくは、2~5:1、より好ましくは、2~4:1である。
【0052】
<カチオン性光開始剤(C)>
成分(C)のカチオン性光開始剤は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり得る。
【0053】
成本や、組み合わせて使用することによる効果たとえば光開始効率、硬化速度などの複数の要素を考慮すると、成分(C)は、好ましくは、ヨードニウム塩及び/又はスルホニウム塩類の光開始剤、たとえば、
から選ばれる少なくとも1種であるか、又は下式(I)、(II)、(III)及び/又は(V)に示される構造を有する化合物から選ばれる。
【0054】
【0055】
式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、C1-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C4-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキルを示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的に(optionally)-O-、-S-又は1,4-フェニレン基により置換されてもよい。
【0056】
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、C1-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C4-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、C6-C20の置換又は未置換のアリール基を示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的に-O-、-S-又は1,4-フェニレン基により置換されてもよい。
【0057】
5は、C6-C20の置換又は未置換アリール基、C6-C20の置換又は未置換アルキルアリール基、C1-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C4-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、置換又は未置換のフェニルチオフェニル基を示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的にカルボニル基、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基により置換されてもよい。
【0058】
6及びR7は、それぞれ独立して、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシルオキシ基、アリールチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換可能なアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示す。
【0059】
1、m2はそれぞれR6とR7の個数を示し、0、1、2、3又は4から選ばれる。
【0060】
-は、それぞれ独立して、M-、ClO4 -、CN-、HSO4 -、NO3 -、CF3COO-、(BM4)-、(SbM6)-、(AsM6)、(PM)、Al[OC(CF3)34 -、スルホン酸根イオン、B(C65)4 -又は[(Rf)bPF6-b-を示し、ただし、Mはハロゲン(たとえばF、Cl、Br、I)を示し、Rfは、それぞれ独立して、80%以上の水素原子がフッ素原子により置換されたアルキル基を示し、bは1~5の整数を示す。
【0061】
MtXn-はBF4 -、ClO4 -、FSO3 -、PF6 -、ASF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -、(C65)4-などの非求核性アニオンである。
【0062】
好ましい構造として、式(I)と(II)に示される構造の化合物において、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素、C1-C12の直鎖又は分岐アルキル基、C4-C10のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基を示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的に-O-により置換されてもよく、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素、C1-C10の直鎖又は分岐アルキル基、C4-C10のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、C6-C12の置換又は未置換アリール基を示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的に-O-、-S-又は1,4-フェニレン基により置換されてもよく、
5はC6-C10の置換又は未置換アリール基、C6-C10の置換又は未置換アルキルアリール基、置換又は未置換のフェニルチオフェニル基を示し、これら基のうちの非環状-CH2-は非強制的にカルボニル基、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基により置換されてもよく、
6及びR7は、C1-C10の直鎖又は分岐アルキル基、C1-C10の直鎖又は分岐アルコキシ基、C1-C10のアルキルカルボニル基及びハロゲンを示す。
【0063】
さらに好ましくは、上記ヨードニウム塩及びスルホニウム塩類光開始剤のカチオン部分として、下記構造が挙げられる。
【0064】
【0065】
【0066】
さらに好ましくは、上記ヨードニウム塩及びスルホニウム塩類光開始剤のアニオン部分として、Cl-、Br-、PF6 -、SbF6 -、AsF6 -、BF4 -、C49SO3 -、B(C65)4 -、C817SO3 -、CF3SO3 -、Al[OC(CF3)34 -、(CF3CF2)2PF4 -、(CF3CF2)3PF3 -、[(CF3)2CF22PF4 -、[(CF3)2CF23PF3 -、[(CF3)2CFCF22PF4 -、(CF3)2CFCF23PF3 -が挙げられる。
【0067】
同一構造を有する市販カチオン性光開始剤、たとえば、常州強力電子新材料股▲ふん▼有限公司製のPAG20001、PAG20002、PAG30201、PAG30101など、ドイツのBASF社製のIrgacure250など(これらに制限されない)も本発明の成分(C)に使用することができる。
【0068】
本発明のグラビア印刷インク中のカチオン性光開始剤(C)の含有量は、1~25質量%、好ましくは、3~20質量%、より好ましくは、5~15質量%である。
【0069】
<フィラー(D)>
非強制的には、本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクはフィラー(D)をさらに含有する。成分(D)のフィラーの種類については特に限定がなく、グラビア印刷インクによく使用されている種類のものが使用できる。代表的には、フィラーは、ナノ炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルカム・パウダー及びカオリンから選ばれる少なくとも1種である。
【0070】
グラビア印刷インク中の成分(D)の含有量は0~30質量%、好ましくは、0~20質量%である。
【0071】
<その他の任意成分>
上記成分(A)~(D)に加えて、製品の使用環境のニーズに応じて、本発明のグラビア印刷インクは、本分野でよく使用されている有機及び/又は無機助剤を任意に添加してもよく、これら助剤には、レベリング剤、分散剤、硬化剤、界面活性剤、消泡剤、保存性向上剤などが含まれるが、これらに制限されず、当業者であれば、容易に決定できる。助剤の全含有量は0~5質量%、好ましくは、0~3質量%である。
【0072】
さらに、グラビア印刷インクの感光度を高めるために、増感剤を系に添加してもよい。特に放射線源がLEDである場合、グラビア印刷インクに増感剤を添加する傾向がある。増感剤の種類としては、ピラゾリン系化合物、アクリジン系化合物、アントラセン系化合物、ナフタレン系化合物、クマリン系化合物、第三級アミン系化合物などとしてもよい。アントラセン系増感剤化合物としては、特に下記式(III)及び/又は(IV)で示される構造の化合物が好ましい。
【0073】
【0074】
一般式(III)中、R8はC1-C12アルキル基、C1-C12アリール基、C1-C8アルコキシ基又はアリールオキシ基、C3-C12シクロアルキル基、C4-C12のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基を示し、これら基のうちの1つ又は複数の水素はハロゲン、ヒドロキシ基により置換されてもよく、X1及びY1は互いに独立して水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミン基を示す。
【0075】
一般式(IV)中、R9はC1-C12アルキル基、C1-C12アリール基、C1-C8のアルコキシ基又はアリールオキシ、C3-C12シクロアルキル基、C4-C12アルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基を示し、これら基のうちの1つ又は複数の水素はハロゲン、ヒドロキシ基により置換されてもよく、n1及びn2は互いに独立して0~4の整数を示し、X2及びY2は同じであるか、又は異なり、互いに独立して水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミン基を示し、n1及びn2が2以上を示す場合、X2及びY2は互いに同じであるか、又は異なる。
【0076】
一例として、アントラセン系化合物は、以下に示す化合物のうちの1種又は複数種の組み合わせであることができる。
【0077】
【0078】
グラビア印刷インク中の増感剤の含有量は、0~5質量%、好ましくは、0~2質量%である。
【0079】
本発明のグラビア印刷インクは、紫外線、可視光、赤外線、電子ビーム、レーザなどのエネルギーを放射されると、重合反応を行うことで、速乾性を実現することができる。エネルギーを付与する光源として、主波長が250~450nmの領域であるものが好ましく、その例として、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノン・ランプ、メタル・ハライド・ランプ、ハイ・パワー・メタル・ハライド・ランプ、キセノン・ランプ、パルス発光キセノン・ランプ、重水素ランプ、LED灯、蛍光灯、Nd-YAG 3倍波レーザ、He-Cdレーザ、窒素レーザ、Xe-Clエキシマ・レーザ、Xe-Fエキシマ・レーザ、半導体励起固体レーザなどの各種の光源が含まれる。
【0080】
各配合成分を均一に混合すると、本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクが得られ、具体的な調製過程については、放射線硬化型組成物分野における慣用の方法を参照することができる。代表的には、調製過程は、顔料を変性処理し、次に、恒温恒湿・放射線源なしの条件下で、配合、予備分散、粉砕、ろ過(所定のサイズのろ過網でろ過して、所望の粒子径を有する産物を得る)を行うことを含む。
【0081】
本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクは、保存安定性に優れており、高速印刷が可能であり、生産効率が高く、複数種の基材、特に紙、プラスチック、フィルムなどの被印刷物の表面に適用でき、形成した印刷物は、外観が良好であり、付着力が強く、無臭であり、強い市場競争力を有する。
【0082】
以下、特定の実施例にて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の特許範囲を制限するものとして理解すべきではない。
【0083】
1、変性顔料の調製
(1)無機変性顔料
カーボン・ブラックa-1(三菱化学株式会社製、MA100)を60~70℃で3h乾燥させた後、乳鉢において平均粒子径が0.3μm程度になるまで研いた。その後、カーボンブラック100gを秤量して1Lフラスコに加え、脱イオン水800mlを加えて、撹拌して超音波分散させ、均一な懸濁液とした。
【0084】
懸濁液を恒温水浴鍋にて65℃程度に加熱して保温し、pH値を9に調整した。
【0085】
Na2SiO3・9H2O 11.8gを秤量して水110mlに溶解し、溶液とし、フラスコにゆっくりと滴下し、等速で撹拌しながら10%の塩酸を滴下してpH値を4~9の範囲に調整した。滴下終了後に、一定温度で30min撹拌した。
【0086】
反応終了後に、懸濁液をろ過して、脱イオン水で洗浄し、105℃で20min乾燥させ、TEM検出により、シリカで被覆されている黒色変性顔料A-1を得たことを確認した。
【0087】
測定した結果、変性顔料A-1は、DBP吸油量の値が220ml/100g、平均粒子径が0.46μm(TEM測定)、pH値が8であった。
【0088】
カーボンブラックa-1を別の種類の無機顔料に変更し、A-1の調製方法を参照して、同様な酸化物被覆による変性処理を行い、対応する変性顔料を得た。下表に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
(2)有機変性顔料
20質量%の塩化カルシウム溶液150gと、無水エタノール40gと、10質量%の塩酸溶液20gとを混合した後に、350r/minで30min撹拌し、次に、ナノシリカ30gを加えて30min超音波分散させ、分散液を得て、沈殿の発生がなくなるまで二酸化炭素ガスを分散液に導入し、8~10h静置後に、ろ過してろ過ケーキを得て、ろ過ケーキを3~5回脱イオン水で洗浄して、オーブンに入れ、105~110℃で一定(不変)の重量まで乾燥させ、インク吸収マトリックスを得た。
【0091】
インク吸収マトリックス10gとC.I.ピグメント・ブルー61(a-3)20gとを、5質量%の炭酸ナトリウム溶液400gに加え、45℃の恒温水浴下、350r/minで24h撹拌し、担持液を得た。
【0092】
チタン酸テトラブチル100gと、シラン・カップリング剤KH-560 1~2gと、脱イオン水200mlとを担持液に加え、均一に混合した後に、90℃の恒温水浴にて350r/minで5h撹拌し、チタニアで被覆されている有機顔料混合液を得た。
【0093】
被覆型有機顔料混合液を水熱反応釜に投入して、110℃で保温して5h反応させ、室温に冷却した後、ろ過してろ過ケーキを得て、ろ過ケーキを2回脱イオン水で洗浄した後、オーブンに入れ、105℃で一定の重量まで乾燥させ、乾燥産物を研磨機に投入して研いて、有機変性顔料A-3を得た。TEM検出により、この有機変性顔料A-3がコアシェル被覆構造であることを確認した。
【0094】
測定した結果、変性顔料A-3は、DBP吸油量値が225ml/100g、平均粒子径が0.56μm、pH値が5.5であった。
【0095】
a-3を別の種類の有機顔料に変更して、A-3の調製方法を参照して、同様な酸化物被覆による変性処理を行い、対応する変性顔料を得た。下表に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
2、放射線硬化型グラビア印刷インクの調製
表3に示される処方に従って、黄色光灯の条件下、高速撹拌機を用いて原料を等速で1時間撹拌した後、サンド・グラインダーを用いて研いて、次に、1μm粒子径のろ過網でろ過し、放射線硬化型グラビア印刷インクを得た。
特に断らない限り、各実施例の前記量は質量部である。
【0098】
【表3】
【0099】
表3には、各成分の具体的な定義は以下のとおりである。
変性顔料:「1、変性顔料の調製」に示される定義と同様である。
【0100】
【0101】
B2-1:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、江蘇泰特爾新材料科技有限公司(Jiangsu Tetra New Material Technology Co.,Ltd.)製;
B2-2:ジ((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート、江蘇泰特爾新材料科技有限公司製;
B2-3:4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシド;
【0102】
C-1:ビス(4-ジフェニルスルホニウム)フェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロリン酸塩)とジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸塩との混合塩、常州強力電子新材料股分有限公司製(Changzhou Tronly New Electronic Materials Co.,Ltd.);
【0103】
【0104】
D-1:シリカA-200、ドイツのエボニック・デグサ・スペシャルティ・ケミカル社製;
D-2:二酸化チタン・パウダーR706、米国デュポン社製;
D-3:炭酸カルシウムSW-01、日本宝理株式会社製;
【0105】
【0106】
E2:BYK 333、ドイツのエボニック・デグサ・スペシャルティ・ケミカル社製;
E3:安定化剤ヒンダードニトロキシル
【0107】
3、グラビア印刷インク性能の試験及び評価
波長395nmのLEDランプを放射線源として増設した松徳社製の溶剤フリー・グラビア印刷機(モデル:A380)を使用し、印刷した。
【0108】
実施例及び比較例のサンプルについて、QBT 1046-2012グラビア・プラスチック・フィルム表面印刷インクの業界標準を参照して、性能の試験及び評価を行った。
【0109】
(1)保存安定性試験
GB-T 6753.3-1986インク保存安定性試験方法を参照して、試験対象インクの保存安定性を測定した。具体的な方法としては、インクを50℃のオーブンに入れ、7日後にインクの粘度を測定した。評価等級は次のとおりである。
○:粘度上昇率が5%以下
◎:粘度上昇率が5%より大きく且つ10%未満
●:粘度上昇率が10%より大きい。
【0110】
(2)硬化乾燥速度試験
A380グラビア印刷機によって試験対象インクをPETフィルムに約10μmの厚さで転写した。波長395nm、強度15w/cm2のLED光源で照射した。塗膜乾燥時間試験標準GB/T 1728-1979に記載の指タッチ法で表面の硬化を評価し、つまり、指でコーティングに軽く触れて、表面が滑らかで、べたつかず、押されると指紋が付いていない場合、表面が乾燥したと判定する。
【0111】
乾燥速度は、表面乾燥効果を達成するための最大線速度(単位m/min)で表される。
評価結果を表4にまとめた。
【0112】
4、印刷物の性能試験及び評価
グラビア印刷インクが完全に硬化乾燥できる最低線速度の条件(実施例:180m/min、比較例:120m/min)で、グラビア印刷インクを約10μmの厚さでPETフィルム基材に印刷して、24時間放置後、付着堅牢度、印刷物の外観や残留臭など、印刷物、つまり硬化したコーティングの物理的特性を試験して評価した。
【0113】
(1)付着堅牢度試験
GB/T 13217.7-91グラビア印刷インク検定基準に準じて試験を行い、具体的な方法としては、25±1℃、湿度65%±5%の条件下で、GB 7707標準に準拠したテープをインクの印刷した面に貼り付けて、テープ・ローラーにて3回往復ロール・プレスした。5min放置した後に、試験片をディスクAにクランプし、試験片から露出したテープをディスクBに固定してから、装置を起動させ、ディスクAを0.6~1.0m/sの速度で回転してテープを剥離し、幅20mmの半透明のミリ方眼紙でテープ剥離後の部分をカバーした。インク層が占めるグリッド数と、剥がされてしまったインク層が占めるグリッド数を数えて、下記式により計算した。
A(%)=[A1/(A1+A2)]×100%
【0114】
(式中、Aはインクの付着堅牢度を表し、A1はインク層のグリッド数を表し、A2は剥がされてしまったインク層のグリッド数を表す。)
A≧90は、性能指標を満たすとされている。
【0115】
(2)印刷物の外観試験
GB/T 7707-2008装飾用グラビア印刷物標準に準拠して試験を行い、具体的な方法としては、印刷物をCY/T 3により規定される観察光源の下に置き、目視により確認した。印刷物については、整っていて清潔であり、明らかなインク汚れ、テーリング、印刷欠け、ドクター・スジがなく、エッジが滑らかであり、インク色が均一であり、明らかな水紋状、明らかな変形や印刷欠けがないものを合格とし、それ以外のいずれの場合も、不合格とした。
【0116】
(3)残留臭の試験
硬化させたばかりの製品を密封袋に入れ、室温で24時間密封袋に放置した後、袋の開口を開けて人間の臭覚で判断した。評価等級は次のとおりである。
○:明らかな臭いなし
×:刺激臭あり。
評価結果を表4にまとめた。
【0117】
【表4】
【0118】
表4の評価結果から、変性顔料を用いたグラビア印刷インクは、保存安定性が大幅に向上しており、インクの硬化速度を上げることに有利であることが分かった。コーティングの付着性がよく、印刷パターンがきれいで、エッジが滑らかで、インク色が均一で、製品には明らかな臭いがなかった。
【0119】
また、実施例2と実施例3の成分のうち開始剤をそれぞれ
に変更した場合、同じ調製及び試験の条件では、同じ技術的効果が得られた。
【0120】
5、性能のさらなる試験及び評価
本発明の前記変性顔料を含む放射線硬化型グラビア印刷インクを、それぞれ紙及びプラスチック・フィルム基材に適用し、その応用性能をさらに検証した。
【0121】
(1)紙基材
GB/T 26461-2011グラビア紙印刷インク評価基準における基材及び試験方法への要件を参照して、紙基材に応用された場合の本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクの性能を評価した。
【0122】
表5の処方に従ってグラビア印刷インク組成物を調製した。松徳社製の溶剤フリー・グラビア印刷機(モデル:A380)によってインクをGB/T 10335.1に準拠したオフセット用紙に印刷し、波長395nm、光源の強度15w/cm2のLEDランプを放射源として使用し、厚さが約10μmの印刷パターンを得た。
【0123】
上記の評価方法を参照して、インク組成物の保存安定性、硬化乾燥速度、コーティングの付着堅牢度、印刷物の外観及び臭気を評価した。
試験結果を表5にまとめた。
【0124】
【表5】
【0125】
また、上記表5の処方における開始剤を
に変更した場合、同じ調製及び試験の条件では、同じ技術的効果が得られた。
【0126】
(2)プラスチック・フィルム基材
QB/T 1046-2012グラビア・プラスチック・フィルム表面印刷インクの評価基準における基材及び試験方法への要件を参照して、各種のプラスチック・フィルム基材に応用された場合の本発明の放射線硬化型グラビア印刷インクの性能を別々に評価した。
【0127】
表6の処方に従ってグラビア印刷インク組成物を調製した。松徳社製の溶剤フリー・グラビア印刷機(モデル:A380)によってインクをPET、PVC、PP及びPEの基材に印刷し、波長395nm、光源の強度15w/cm2のLEDライトを放射源として使用し、厚さが約10μmの印刷パターンを得た。
【0128】
上記の評価方法を参照して、インク組成物の保存安定性、硬化乾燥速度、各種プラスチック・フィルム基材へのコーティングの付着堅牢度、印刷物の外観及び臭気を評価した。
試験結果を表6にまとめた。
【0129】
【表6】
【0130】
上記表6の処方における開始剤を
のうちの1種に変更した場合、同じ調製及び試験の条件下では、同じ技術的効果が得られた。
【0131】
したがって、表5及び表6の試験結果から、本発明の変性顔料を含有する放射線硬化型グラビア印刷インクは、さまざまな基材の表面に適用することができ、いずれの場合にも、優れた使用性を有する。
【0132】
表7における各実施例の放射線硬化型グラビア印刷インクについて、実施例1の調製及び試験のプロセスを繰り返し、試験結果を表8に示した。表7の実施例における各成分の量は、質量百分率である。
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】
以上は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者であれば、本発明に対してさまざまな変更及び変化を加えることができる。本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われるあらゆる修正、同等の置換、改良などは、本発明の特許範囲に含まれるべきである。