(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】基板の表面特性を改善する為の組成物、デバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240918BHJP
C08J 3/09 20060101ALI20240918BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240918BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240918BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20240918BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240918BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240918BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240918BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09D201/00
C08J3/09 CFH
C08J5/18
C08L27/12
C08L83/08
C09D5/02
C09D7/20
C09D183/04
G01N35/02 A
(21)【出願番号】P 2020557995
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 US2019032389
(87)【国際公開番号】W WO2020068174
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ラムセイ,ジョン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー,ウィリアム ハンプトン
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05628833(US,A)
【文献】特開平06-088025(JP,A)
【文献】特表2013-536302(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065854(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/145022(WO,A1)
【文献】特表2021-509776(JP,A)
【文献】特表2010-515566(JP,A)
【文献】特開2002-322299(JP,A)
【文献】特表2004-518115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C08J 3/09
C08J 5/18
C08L 27/12
C08L 83/08
C09D 5/02
C09D 7/20
C09D 183/04
G01N 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング試薬であって、当該コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプチルヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、コーティング試薬と、
25℃で0.7センチストークス未満の粘度を有するポリシロキサンである溶媒と、を含む組成物であって、
前記コーティング試薬は、前記溶媒の0.01体積%乃至5体積%の量で前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒は、オクタノール/水分配係数(log P)が4以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は水を含まないか又は水を2体積%以下の量で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は非水性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティング試薬は前記溶媒と混和性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記コーティング試薬は、トリシロキサンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
基板の表面上にフィルムを形成する方法であって、
基板の表面をコーティング試薬を有する組成物と接触させることであって、前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプチルヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、且つ溶媒であり、前記溶媒は、25℃で0.7センチストークス未満の粘度を有するポリシロキサンであり、前記コーティング試薬は、前記溶媒の0.01体積%乃至5体積%の量で前記組成物中に存在する、ことと、
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬のフィルムを形成することと、
を含み、
前記基板は、マイクロウェルデバイスである、方法。
【請求項9】
前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、前記基板の前記表面の少なくとも95%を覆う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロウェルデバイスは、それぞれ10アトリットル乃至100マイクロリットルの体積を有する複数のウェルを含むアレイを含み、前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記アレイを前記組成物で充填することを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、前記アレイの体積の少なくとも50%を満たす及び/又は湿潤する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記基板の前記表面上に前記組成物の少なくとも1つの層を提供することを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記基板の前記表面上に前記組成物を噴霧することを含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬の前記フィルムを形成することは、前記基板の前記表面上の前記組成物を乾燥することを含み、任意で前記乾燥することは圧力差(例えば、真空及び/又は空気圧)を用いて行われる、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬の前記フィルムを形成することは、前記組成物の少なくとも1つの構成成分を蒸発させることを含む、請求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記基板の前記表面の前記組成物を乾燥させる前に、前記組成物の少なくとも一部を前記基板から除去することを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記基板の前記表面上の前記組成物を乾燥することは、前記基板の前記表面上の目に見える組成物が存在しなくなるまで前記基板の前記表面を乾燥することを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フィルムは、1nm乃至300ミクロンの厚みを有し、及び/又は前記基板の前記表面の少なくとも50%に渡り均質な厚みを有する、請求項8から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記基板は複数のウェルを有し、及び前記基板の前記表面は、前記複数のウェル中のウェルの表面である第1の部分と、前記複数のウェル中の2つ以上のウェル間の表面である第2の部分とを含み、及び前記フィルムは、前記第2の部分上の前記コーティング試薬の厚み及び/又は濃度と比較して、より大きな厚み及び/又は濃度の前記コーティング試薬を前記第1の部分上に有する、請求項8から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フィルムは、前記基板の前記表面の疎水性を増大させる、請求項8から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
オイルを前記基板の前記表面上の前記フィルム上に添加することを更に含む、請求項8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記基板は、それぞれ10アトリットル乃至100マイクロリットルの体積を有する複数のウェルを含むマイクロウェルデバイスである、請求項8から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記基板は、プラスチック、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、ポリカーボネート、アクリル、フルオロポリマー、シリコーン、ガラス、ケイ素、及び/又は金属の表面を含む、請求項8から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記基板は、複数のウェルを含み、及び水性組成物が前記基板の前記表面上の前記フィルム上に添加された後、前記ウェルの10%未満がブリッジングされ及び/又は流体的に接続され、及び前記水性組成物を含む前記複数のウェルは、オイルでシーリングされ、任意で前記水性組成物は界面活性剤を含む、請求項8から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記フィルムは、水性組成物が前記表面に接着する及び/又は吸着するのを防止し又は前記表面に接着する及び/又は吸着する前記水性組成物の量を減少し、任意で前記水性組成物は界面活性剤を含む、請求項8から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記フィルムは、前記基板のオイルによるシーリング中の前記基板の水性はじきを、前記フィルムの非存在下でのシーリング中の前記基板の水性はじきと比較して改善する、請求項8から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記オイルは、ポリシロキサン構造に基づくシリコーンオイルを含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記フィルムは前記基板の表面特性を改善する、請求項8から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング試薬は、少なくとも1つの疎水性の部位を含み、及び任意で前記少なくとも1つの疎水性の部位は、前記基板の前記表面と結合及び/又は相互作用する、請求項8から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記基板の前記表面の前記フィルムは、前記基板の前記表面への生体分子の接着を、前記フィルムの非存在下での前記基板の前記表面への前記生体分子の接着と比較して減少させる、請求項8から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記基板の前記表面は、前記基板の前記表面を前記コーティング試薬を含む前記組成物と接触させる前に、水性組成物(任意で界面活性剤を含む)と接触している、請求項8から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記基板の前記表面を、前記コーティング試薬を含む前記組成物と接触させる前に、前記基板の前記表面に水性組成物(任意で界面活性剤を含む)を接触させることを更に含む、請求項8から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
基板の表面上にフィルムを含む前記基板であって、前記基板は、マイクロウェルデバイスであり、前記フィルムは、コーティング試薬及び溶媒を含む組成物を前記基板に塗布し、前記溶媒を除去した後に、残存するコーティング試薬を含み、前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプチルヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、前記溶媒は、25℃で0.7センチストークス未満の粘度を有するポリシロキサンであり、前記コーティング試薬は、前記溶媒の0.01体積%乃至5体積%の量で前記組成物中に存在する、基板。
【請求項35】
前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メチルトリ-n-オクチルシラン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項34に記載の基板。
【請求項36】
その表面上にフィルムを含むマイクロウェルデバイスであって、前記フィルムは、コーティング試薬及び溶媒を含む組成物を前記デバイスに塗布し、前記溶媒を除去した後に、残存するコーティング試薬を含み、前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプチルヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、前記溶媒は、25℃で0.7センチストークス未満の粘度を有するポリシロキサンであり、前記コーティング試薬は、前記溶媒の0.01体積%乃至5体積%の量で前記組成物中に存在する、マイクロウェルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本願は、2018年5月18日出願の米国仮特許出願番号第62/673,343号の利益を主張するものであり、この仮特許出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援の陳述
本発明は、米国防総省(DARPA)により付与された認可番号HR0011-12-2-0001に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、基板の表面特性を改善する為の組成物、デバイス、及び方法に関する。幾つかの実施形態では、本発明は、プラスチックマイクロ流体デバイス上におけるビーズ充填及び/若しくはマイクロウェルアレイ反応の不混和性オイルシーリングを改善する為の組成物、デバイス、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
デジタルアッセイは徐々に普及しつつあり、全反応体積を多数のより小さな及び「並行する」反応に区分化する若しくはセグメント化するという点において、伝統的なアナログアッセイとは異なる。典型的には、1若しくは0個の対象分子を含有するように、より小さな反応体積が選択される。反応が終了した後、陽性及び陰性反応の数を判定し、及びそのパーセンテージを用いて初期サンプル濃度を決定する。個々の分子の計数が可能となることにより、低濃度におけるノイズの読み出しは大幅に低減され、低濃度における変動が減少する。これによって、より正確な定量が可能となり、より低い検出限界(LOD)が可能となる。
【0005】
反応のセグメント化は、以下の2つの主要なカテゴリーに分類することができる:(1)不混和性オイル中の水性液滴、及び(2)マイクロタイタープレートに類似するがより小さな体積及びより大きな数及び密度の反応を伴うことの多い、基板中に形成された小体積反応ウェルのアレイ。固体アレイ中の反応を互いに単離することができる方法として、シリコーンゴムガスケットによるシーリング、機械的分離によるシーリング、又は不混和性のシーリングオイル(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)等の、幾つかの方法が存在する。
【0006】
油相中の水性液滴は標準的なマクロスケールエマルジョンプロトコルによって作ることができるが、液滴サイズが変化して定量の実用性を減少させる恐れがある。従って分析目的の為にはマイクロ流体法が典型的には好ましく、それは、マイクロ流体法がそのアッセイの為に最適化された液滴体積における液滴サイズのより小さな分布を生ずる為である。しかしながら、液滴の生成は各液滴生成器における逐次的なプロセスであり、スループットを制限し、且つかなりの準備時間又は多くの並列する液滴生成器の使用を必要とする場合も多い。固体アレイ法もまた予め決められたサイズの液滴を小さな変動で生成することができるが、セグメント化を並行してより簡単に行うことができ、短い時間で非常に多くの数の反応を起こすことが可能である。
【0007】
不混和性オイルによるシーリングは、シリコーンゴムガスケットを用いる場合と比較して、複雑性が低く、表面汚染に対する許容度が高く、及び製造コストが低いといった利点を提供する(非特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、表面特性及び水性緩衝剤と不混和性オイルとの組成について、注意深い検討が成されなければならない。不混和性オイルシーリングの方法は、アレイ基板を水溶液で溢れさせて反応ウェル及びそれらの上の空間の全てを満たすことを含み得る。次いで、シーリングオイルをウェル上に流して、前記水溶液の全てをウェルの上の空間から押し流すが、ウェル中の水溶液のその時点で単離された体積は残すようにする。水相の表面張力及びウェル(特にウェルの頂部の縁)の形状によってウェル中の液滴の「ピンニング」が引き起こされる。
【0008】
典型的には、大きな水接触角を有する疎水性表面及び比較的高い表面張力を有する水相(例えば、界面活性剤濃度が低い若しくはゼロのもの)では、水相が反応ウェルを流体的に接続する若しくは「ブリッジングする」のを防ぐ必要がある。アレイ基板の接触角が不十分である(例えば、それが、幾らかの濃度の界面活性剤若しくは他の表面張力低下実体を含有する)ならば、それは望ましくない水性ブリッジングをもたらし、その結果、ウェル-ウェル混線若しくは反応内容物のブレンディングが起こる可能性がある。このことは、互いに分離されることが意図された反応にとっては望ましくないことが多い。
【0009】
生憎、水性反応の不混和性オイルシーリングの為に理想的な特性である、高い水性接触角、所望の波長における光学純度、低いコスト、容易な射出成形、若しくはタイトな公差でのエンボス加工、及びマイクロメータスケールの限界寸法、温度安定性、及び低い蒸気透湿性をもった高分子材料はほとんどない。プラスチック表面はまた、好適な反応性化学基の欠如を含むそれらの特性に起因して、確実に官能化することが難しいという可能性もある。
【0010】
例えば環状オレフィン共重合体(COC)及び環状オレフィン重合体(COP)等の幾つかのポリマーは可視及び近可視波長において光学的に純粋であり、低コストであり、優れた射出成形特性、温度安定性、及び低い蒸気透湿性を有する。しかしながら、それらの未処理の(native)表面の水性接触角は典型的には約90°である。特に水相中に界面活性剤若しくは親水性ポリマーが存在する場合には、シーリングの為に好ましい疎水性値は90°超であり得る。界面活性剤は、水相の表面張力を下げると共に、ポリマー表面を被覆して(親水性ポリマーとなり得るように)、親水性にし得る。この効果は半永久的であり得、即ちその表面は、その後に界面活性剤を含まない及び/若しくはポリマーを含まない水若しくは緩衝剤で洗浄しても、少なくとも幾らかの親水性特性を保持し得る。
【0011】
COC及びCOPは比較的不活性であり及び従って官能化が困難である。プラズマ、UV、及び/若しくはオゾン処理後の共有結合性の官能化を通してこれらのプラスチックを永久的に変性する為の幾つかのプロセスの記述があるが、これらのプロセスは高価であり、マイクロ流体デバイスを結合して用いる大量生産において応用することは困難であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第9,329,174号
【文献】米国特許第2013/0345088号
【文献】米国特許第2012/0196774号
【非特許文献】
【0013】
【文献】カン等(Kan et al.)著、ラボ オン ア チップ(Lab Chip),2012年、12巻、p.977
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、コーティング試薬及び溶媒を含む組成物に関し、前記コーティング試薬は前記組成物中に、前記溶媒の約0.01体積%乃至約5体積%の量で存在する。
【0015】
本発明の別の態様は、基板の表面上にフィルムを形成する方法に関し、前記方法は基板の表面をコーティング試薬を含む組成物と接触させることと、前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬のフィルムを形成することと、を含む。
【0016】
本発明の更なる態様は、その表面上にフィルムを含む基板に関し、前記フィルムはコーティング試薬を含み、及び前記コーティング試薬はシラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換シロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素である。
【0017】
本発明の別の態様は、その表面上にフィルムを含むデバイスに関し、前記フィルムはコーティング試薬を含み、及び前記コーティング試薬はシラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換シロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素である。幾つかの実施形態では、前記フィルムは前記デバイス中の少なくとも1つのチャネルの表面上に存在する。幾つかの実施形態では、前記デバイスはマイクロ流体デバイスである。
【0018】
なお、1つの実施形態に関して記載された本発明の態様は、そのことに関する具体的な記載がされなくても、異なる実施形態に組み込んでよい。即ち、全ての実施形態及び/若しくは任意の実施形態の特徴は、任意の方式及び/若しくは組み合わせにおいて組み合わせることができる。出願人は任意の原出願クレームを変更し及び/又はそれに伴う任意の新クレームを出願する権利を有し、それには元々はその様にクレームされていなくても、任意の原出願クレームを補正して任意の他の1若しくは複数のクレームを従属させる及び/又は任意の他の1若しくは複数のクレームの任意の特徴を組み込むことができる権利が含まれる。本発明のこれらの及び他の目的及び/若しくは態様は、以下に記載の明細書中に詳細に説明される。本発明の更なる特徴、利点、及び詳細は、以下の図面、及び好ましい実施形態の詳細説明(このような説明は本発明の例示に過ぎない)を読むことによって当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】緩衝剤中の界面活性剤を使用せずに、プラスチックマイクロウェル中にビーズを磁気的に充填するように試みた後のデバイスの画像を示し、これによってビーズは表面に吸着している(アレイチャンバの下方中央エリアにおける薄灰色の縞)。
【
図2】未処理表面COPプラスチックを用いて非イオン性界面活性剤を含有する水性ELISAアッセイの為に調製したデバイスを、デュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104、パーフルオロポリエーテル(PFPE)オイルを用いてシーリングした後の画像を示す。ウェル間(白色のインゲン豆形のエリア等)及びアレイチャンバ頂部表面上(左上から右下角まで斜めに延びる砂時計形のエリア)の水性ブリッジングの大きな面積に留意のこと。
【
図3F】
図3は、未処理のCOP表面上のデュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104PFPEオイルの、A)3分、B)5分、及びC)10分後の側面像を示す。オイルが基板上に広がっていることに留意のこと。オイルがCOP表面上に広がり続けると、不規則な広がり(ブランチング)が見られる場合がある。ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)で処理されたCOP表面上の、デュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104PFPEオイルの、D)適用時、E)5分後、そしてF)10分超後の画像もまた示される。未処理のCOP表面上とは異なり、最初の適用時に見られたものを超える更なる広がりは、処理されたCOP表面上では検出されなかった。
【
図4D】
図4は、A)COP表面上の水の液滴(約5μL)及びB)ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)で処理されたCOP表面上の水の液滴(約5μL)の側面図を示す。また、C)未処理のCOP表面及びD)ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)で処理されたCOP表面上のトウィーン(Tween)20(非イオン性界面活性剤)を0.1体積%で含有する水性緩衝剤の液滴(約5μL)の側面画像も示す。表面処理は水に対するCOP表面の疎水性を増大させ得たが、この場合、界面活性剤を有する水性緩衝剤については接触角における違いを測定することはできなかった。
【
図5C】
図5は、コーティング試薬と溶媒とを含む組成物をマイクロ流体チップのアレイチャンバに充填するプロセス中に撮影した画像を示す。A)溶媒中に溶解されたコーティング試薬をチップ上のリザーバに加える。B)溶液が毛管作用を介して若しくは圧力差のもとで被覆すべきエリアを満たし始める。C)溶液が被覆すべきエリアを完全に満たす。
【
図6C】
図6は、
図5に示したチップ中の組成物を除去してチップ表面上にコーティング試薬の層を残すプロセス中に撮影した画像を示す。A)チップに圧力差を加えて溶媒媒体をデバイスから除去する。この例では部分真空が使用されている。B)明らかに乾燥状態となるまで溶媒がデバイスから完全に除去される。C)被覆されたデバイス。この例では、コーティング試薬は、肉眼では容易に観察されない薄く比較的均一なフィルムであるが、特定の照明条件下で特定の角度において薄膜干渉の効果が観察可能である場合もある。
【
図7】FEDコーティング法を用いたヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)による前処理後及びKRYTOX(登録商標)オイルによるシーリング後のアレイの画像を示す。
【
図8A】アレイの画像を示しており、未処理のCOP表面上の、KRYTOX(登録商標)オイルによりシーリングされた単分子酵素反応が示されている。
【
図8B】アレイの画像を示しており、ヘキサメチルジシロキサン溶媒中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサンで処理された表面上の、KRYTOX(登録商標)オイルによりシーリングされた単分子酵素反応が示されている。
【
図9A】PCRサイクル実施後のビーズが充填されたプラスチックマイクロウェルアレイの一部の画像を示す。
【
図9B】
図9Aと同じアレイの近接視の画像を示し、空のウェル、陰性ビーズを有するウェル、及び陽性ビーズを有するウェルが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して本発明を以下により詳細に記載する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具現化されてよく、ここに記述される実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろこれらの実施形態は、本開示が完全且つ完璧となり、発明の範囲を当業者に十分に伝達するように提供される。
【0021】
ここに本発明の明細書において使用される専門用語は単に特定の実施形態を記載する目的の為の用語であり、本発明を限定することを意図しない。本発明の明細書及び添付特許請求の範囲において使用される場合、その文脈が明確に指定しない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形をも含むことが意図される。
【0022】
特に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術の当業者によって通常理解される意味と同様の意味を有する。一般に使用されている辞書に定義される用語のような用語は、本出願及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と合致する意味を有するものと解釈すべきであり、及び本明細書において明確にそのように定義されない限り、理想化された若しくは過度に形式的な意味をもって解釈すべきではないということが更に理解されよう。ここに本発明の明細書において使用される専門用語は単に特定の実施形態を記載する目的の為の用語であり、本発明を限定することを意図しない。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はその全体が参照によって組み込まれる。用語の点で矛盾する場合は、本明細書が支配する。
【0023】
また本明細書で使用される場合、「及び/若しくは(又は)(and/or)」とは、代替の(「or」)において解釈される場合の組み合わせの欠如に加えて、関連の列挙項目の1以上の任意の及び全ての可能な組み合わせを指す又は包含する。
【0024】
文脈が特に指定しない限り、本明細書において記載される本発明の種々の特徴は任意の組み合わせで使用することができるということが明確に意図される。更に、本発明はまた、本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記述された任意の特徴若しくは特徴の組み合わせが除外され若しくは省略されることもできるということも企図している。例えば、複合物が成分A、B、及びCを含むと明細書に記載されている場合、A、B、若しくはC、又はそれらの組み合わせの何れかが省略され及び権利放棄されることが可能であるということが明確に意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、伝統的な語句「から本質的に成る(consisting essentially of)」(及び文法的な変形体)は、特許請求された発明の、記載された物質若しくは工程「及び基本的であり且つ新規である特性に実質的な影響を与えることのないもの」を包含すると解釈すべきである。ハーツ(Herz)の件、537 F.2d 549、551-52、190、米国特許審判決録(U.S.P.Q)461、463(関税特許控訴裁(CCPA)、1976年)(強調は原文中)を参照のこと。米国特許審査基準(MPEP)§2111.03も併せて参照のこと。このように、用語「から本質的になる」は、本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」と等価であると解釈すべきではない。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「例(example)」、「例示(exemplary)」、及びその文法的変形体は、本明細書において議論される非限定例及び/若しくは変形実施形態を指すことが意図され、及び本明細書で議論される1以上の実施形態に対する1以上の他の実施形態と比較した優先を示すことは意図されないということもまた理解されよう。
【0027】
用語「約(about)」は、量若しくは濃度等の測定可能な値を指すときに本明細書で使用される場合、その所定値と共に、その所定値の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更には±0.1%の変動を包含することを意味する。例えば、「約X」(ここでXは測定可能な値である)はXを、Xの±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更には±0.1%の変動と共に含むことを意味する。本明細書において測定可能な値の為に与えられる範囲は、任意の他の範囲及び/若しくはその中の個々の値を含み得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「増大する(increase)」、「増大するincreases」、「増大された(increased)」、「増大している(increasing)」、「改善する(improve)」、「高める(enhance)」、及び同様の用語は、所定のパラメータにおける少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、若しくはそれを超えるだけの上昇を示す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「減少する(reduce)」、「減少する(reduces)」、「減少された(reduced)」、「減少(reduction)」、「阻害する(inhibit)」、及び同様の用語は、所定のパラメータにおける少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、若しくは100%の低下を指す。
【0030】
「アルキル」は、本明細書で単独で若しくは別の基の一部として使用される場合、1乃至30個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖飽和炭化水素を指す。幾つかの実施形態では、アルキル基は1、2、若しくは3乃至4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30個の炭素原子を含有してよい。アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられるが、それらに限定されない。「低級アルキル」は本明細書で使用される場合、アルキルのサブセットであり、及び1乃至4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝鎖飽和炭化水素基を指す。低級アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、アルキル若しくは低級アルキルは、1以上の基、任意でポリアルキレンオキシド(PEG等)、ハロ(例えば、ハロアルキル)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ(これによりポリエチレングリコール等のポリアルコキシを生成する)、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、メルカプト、アルキル-S(O)m、ハロアルキル-S(O)m、アルケニル-S(O)m、アルキニル-S(O)m、シクロアルキル-S(O)m、シクロアルキルアルキル-S(O)m、アリール-S(O)m、アリールアルキル-S(O)m、ヘテロシクロ-S(O)m、ヘテロシクロアルキル-S(O)m、アミノ、カルボキシ、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ハロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホンアミド、ウレア、アルコキシアシルアミノ、アミノアシルオキシ、ニトロ、若しくはシアノ(m=0、1、2、若しくは3)から選択される1以上の基で置換されていてもよい。
【0031】
「アリール」は、本明細書で単独で若しくは別の基の一部として使用される場合、単環の炭素環式環系又は1以上の芳香族環を有する二環若しくはより高次の炭素環式縮合環系を指す。アリールの代表的な例としては、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチル等が挙げられる。幾つかの実施形態では、アリールは、1以上の基、任意で上記のアルキル及び低級アルキルに関連して記載したもののような1以上の基で置換されていてもよい。
【0032】
本発明の実施形態によれば、基板の表面(例えば、プラスチック基板表面)上にコーティング及び/若しくはフィルムを形成する為に使用されるコーティング試薬が提供される。基板の表面上にコーティング及び/若しくはフィルムを提供する為に及び/若しくは本発明の方法において、1以上の(例えば、1、2、3、4、5、若しくはそれより多くの)コーティング試薬を使用してもよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬を含む組成物が提供される。前記組成物は、例えば、溶液、コロイド、エマルション、ゲル、若しくは超臨界流体の形態等の任意の好適な形態であってよい。幾つかの実施形態では、前記組成物は液体である。組成物を使用して基板の表面上に前記コーティング試薬のコーティングを提供することもできる。幾つかの実施形態では、前記コーティングは前記基板の表面上でフィルムの形態であってよい。「フィルム」は本明細書で使用される場合、基板の表面上に提供される、本明細書において記載するようなコーティング試薬の層を指す。「フィルム」は本明細書で使用される場合、前記フィルムの少なくとも約50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、若しくは100重量%のコーティング試薬を含んでよく、及び/若しくは前記フィルムの約20重量%未満の溶媒を含んでよい。幾つかの実施形態では、フィルムは乾燥しており、並びに/又はフィルム上及び/若しくは前記基板の表面上に目に見える組成物及び/若しくは溶媒が存在しない。しかしながら、本発明の方法及び/若しくはデバイスは、前記フィルムを水性組成物及び/若しくはオイルと接触させることを含むことができる。本発明のデバイスは、本発明の方法によって形成されてよく、及び本発明のフィルムを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物はコーティング試薬及び溶媒を含む。前記コーティング試薬は前記組成物中に、前記溶媒の約0.01体積%若しくは0.1体積%乃至約1体積%、2体積%、3体積%、4体積%、若しくは5体積%の量で、例えば、溶媒の約0.01体積%乃至約2体積%、若しくは約0.1体積%乃至約1体積%の量で、存在してよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は組成物中に、前記溶媒の約0.01体積%、0.02体積%、0.03体積%、0.04体積%、0.05体積%、0.06体積%、0.07体積%、0.08体積%、0.09体積%、0.1体積%、0.2体積%、0.3体積%、0.4体積%、0.5体積%、0.6体積%、0.7体積%、0.8体積%、0.9体積%、1体積%、1.5体積%、2体積%、2.5体積%、3体積%、3.5体積%、4体積%、4.5体積%、若しくは5体積%の量で存在する。幾つかの実施形態では、前記コーティング試薬は前記組成物中に、前記溶媒の約1体積%の量で存在する。幾つかの実施形態では、基板の表面上に提供される前記コーティング試薬の濃度は、特定の厚みのフィルムを提供し得る。例えば、より多くのコーティング試薬を含む組成物は、より少ないコーティング試薬を含む組成物から調製されるフィルムの厚みと比較して、より厚みのあるフィルムを提供し得る。
【0034】
前記コーティング試薬は、少なくとも部分的に溶媒中に溶解されていてよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%が溶媒中に溶解されている。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は溶媒中に懸濁されていても、溶媒中でミセルを形成していても、及び/若しくは溶媒中でミセル中に存在していてもよい。
【0035】
本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用される溶媒は、蒸気圧が、20℃で少なくとも約25mmHg、例えば、20℃で少なくとも約30、40、50、75、100、250、500、若しくは750mmHg又はそれを超えてもよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、蒸気圧が20℃で約25mmHgから20℃で約40、50、75、100、250、500、若しくは750mmHgであってよい。幾つかの実施形態では、溶媒は蒸気圧が20℃で約1気圧よりも大きい。幾つかの実施形態では、溶媒は蒸気圧が25℃で約50mmHg未満である。蒸気圧は、例えばフラニンガム(Flaningam OL)著,ジャーナル オブ ケミカル アンド エンジニアリング データ(J Chem Eng Data),31巻,p.266-72(1986年)に記載される方法のような、当業者には既知の方法を用いて決定されてよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、標準的な環境室内温度及び圧力(即ち、それぞれ0℃及び1バール)で気体であり且つ標準的な環境室内温度及び圧力未満で液体であってよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用される溶媒は、任意で約25℃において、5マイクロリットルの前記溶媒が基板(例えば疎水性の基板、例えばCOP等)の表面上に置かれた時の前記表面上での接触角が約5°以下であってよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、任意で約25℃において、5マイクロリットルの前記溶媒が基板の表面上に置かれた時の前記表面上での接触角が約5°、4°、3°、2°、1°、0.5°若しくはそれ未満である。幾つかの実施形態では、溶媒は、任意で約25℃において、5マイクロリットルの前記溶媒が基板上に置かれた時の前記基板の表面上での接触角が約0°である。
【0037】
本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用される溶媒は、25℃における粘度が約0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、若しくは0.1センチストーク未満であってよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、25℃における粘度が約0.1、0.2、若しくは0.3乃至約0.4、0.5、0.6、若しくは0.7センチストークであってよい。粘度は、例えばマッツォーニ(Mazzoni SM)ら著、ハンドブック オブ エンバイロメンタル ケミストリー(Handbook Environ Chem),3巻、p.53-81,チャンドラ(Chandra G)編,ドイツ,ベルリン,シュプリンガー(Springer)(1997年)に記載される方法のような当業者に既知の方法を用いて決定されてよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用される溶媒は、水と不混和性であってよく、及び/若しくは非極性であってよい。幾つかの実施形態では、本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用される溶媒は、25℃における水への溶解度が約1.5mg/L未満若しくは約1mg/L未満である。溶媒は、25℃における水への溶解度が約0.01、0.1、若しくは0.5mg/L乃至約0.7、1、若しくは1.5mg/Lであってよい。溶媒の水への溶解度は、例えば、コチェトコフ(Kochetkov A)ら著,エンバイロメンタル トキシコロジー アンド ケミストリー(Environ Toxicol Chem),20巻,p.2184-88(2001年)に記載の方法のような当業者に既知の方法を用いて決定されてよい。
【0039】
本発明の溶媒は、疎水性であってよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、オクタノール/水分配係数(log P)が約1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9であってよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、オクタノール/水分配係数(log P)が約3、4、5、6、7、8、若しくはそれ以上であってもよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、オクタノール/水分配係数が約3若しくは4乃至約5、6、若しくは7であってよい。
【0040】
本発明の組成物中には、1以上の(例えば、1、2、3、4、5、若しくはそれより多くの)溶媒が任意の好適な量で存在してよい。例えば、幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物の約1体積%、5体積%、若しくは10体積%乃至約50体積%、75体積%、90体積%、95体積%、99体積%、若しくは99.99体積%の量で、溶媒を含んでいてよい。幾つかの実施形態では、組成物は、2つ以上の溶媒を含んでもよく、これらの溶媒は単一の液相液体を形成しなくてもよく、及び/又は分散溶液、コロイド、エマルション、ゲル、若しくは超臨界流体として機能してもよい。本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法において使用し得る代表的な溶媒としては、シクロメチコン類;ジメチコン類;ポリシロキサン類;ポリシラン類;フルオロシロキサン類;フルオロシラン類;パーフルオロカーボン類(例えば、パーフルオロヘキサン(C
6F
14);パーフルオロシロキサン類;パーフルオロ炭化水素類;環状フルオロカーボン類;四級シロキサン類;超臨界流体類;フラニンガム(Flaningam OL)著,ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング データ(J Chem Eng Data),31巻,p.266-72(1986年)に記載の溶媒;例えば、デュポン(DuPont)(商標)からVERTREL(登録商標)の商標で市販されている1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CF
3CHFCHFCF
2CF
3);デュポン(DUPONT)(商標)KRYTOX(登録商標)溶媒;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、本発明の組成物はシクロメチコンを含む。代表的なシクロメチコンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及び/若しくはドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、パーフルオロカーボン、任意でパーフルオロカーボンオイルを含む。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、例えば、PFPEオイルを含む。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、式Iで表される構造を有するPFPEを含んでよく:
【数1】
式中、yは1乃至9の整数である。
【0041】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、炭素を溶媒の約10重量%乃至約30重量%、酸素を溶媒の約5重量%乃至約15重量%、及びフッ素を溶媒の約60重量%乃至約80重量%の量で含む、溶媒(例えば、PFPE)を含んでいてよい。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、溶媒の約21.6重量%の炭素、溶媒の約9.4重量%の酸素、及び溶媒の約69.0重量%のフッ素を含む、溶媒(例えば、PFPE)を含んいてもよい。
【0042】
本発明の組成物中に1以上の(例えば、1、2、3、4、5、若しくはそれより多く)のオルガノシリコン(類)が存在していてもよい。オルガノシリコン類としては、シクロメチコン類、ジメチコン類、ポリシロキサン類、ポリシラン類、フルオロシロキサン類、フルオロシラン類、パーフルオロシロキサン類、及び四級シロキサン類が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、組成物は、任意で1以上のアルキル基及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)で置換された、シロキサン、例えばポリシロキサン、任意で直鎖状ポリジシロキサンを含んでもよい。幾つかの実施形態では、溶媒は、式IIの構造を有するオルガノシリコンであってもよく:
【数2】
式中、
各Rは水素及び置換若しくは非置換アルキルから独立して選択され;
R
1及びR
2はそれぞれ独立して結合、水素、及び置換若しくは非置換アルキルから選択され、任意でR
1及びR
2は共に環を形成し;
nは1乃至20の整数であり;
mは0若しくは1の整数である。
【0043】
式IIの化合物は、フッ素、塩素、臭素、及び/若しくはヨウ素等の1以上のハロゲンで置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、式IIの化合物は、少なくとも1つのフッ素で置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、式IIの化合物中のR1及びR2は、それぞれ結合であり及び共に環を形成し、任意でmは0である。幾つかの実施形態では、R、R1、及びR2の各々は、置換若しくは非置換アルキル、任意で置換若しくは非置換低級アルキルである。幾つかの実施形態では、R、R1、及びR2の各々は、置換低級アルキルであり、任意でR、R1、及びR2の各々は、それぞれが少なくとも1つのフッ素で置換されている置換低級アルキルである。1以上のアルキル基を含有する式IIの化合物は、ケイ素に結合された水素を含む化合物よりも反応性が低くなり得る。幾つかの実施形態では、R、R1、及びR2は、同一(例えば、全てがメチル若しくは全てがエチル)である。幾つかの実施形態では、前記組成物はヘキサメチルジシロキサン及び/若しくはオクタメチルトリシロキサンを含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物の別個の構成成分として水を加えない。当業者は認識する通り、本発明の組成物によって及び/若しくはその1以上の構成成分(例えば、溶媒)によって水(例えば、水蒸気)が物理的に及び/若しくは化学的に吸収される場合もある。幾つかの実施形態では、本発明の組成物及び/若しくは構成成分(例えば、溶媒、添加剤等)は無水物である。「無水物」とは本明細書で使用される場合、組成物及び/若しくは構成成分の含水量が、組成物及び/若しくは構成成分の2体積%未満、例えば、組成物及び/若しくは構成成分の約1.5体積%、1体積%、0.5体積%、0.1体積%、0.05体積%、0.01体積%、0.005体積%、若しくは0.001体積%未満であることを意味する。幾つかの実施形態では、組成物及び/若しくは構成成分は、含水量が組成物及び/若しくは構成成分の約0体積%、0.001体積%、0.01体積%、若しくは0.1体積%乃至約0.5体積%、1体積%、1.5体積%、若しくは2体積%であってよい。幾つかの実施形態では、本発明の組成物及び/若しくはその構成成分は、測定可能な水を含まない(即ち、0重量%の水)。幾つかの実施形態では、本発明の組成物及び/若しくはその構成成分(例えば、溶媒)は、水を吸収しない若しくは同じ条件下でエタノールによって吸収される量未満の量で水を吸収する。含水量は当業者に既知の方法、例えば限定されないがカールフィッシャー滴定等によって測定されてよい。
【0045】
コーティング試薬は、本発明の組成物中で溶媒と混和可能であってよい。コーティング試薬は、組成物が基板の表面上にフィルムを提供するのを補助し得る。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は、溶媒と混和可能であり及び/若しくは溶媒中への溶解性が高い。
【0046】
代表的なコーティング試薬としては、シラン類、シロキサン類、例えば、トリシロキサン類、テトラシロキサン類、ペンタシロキサン類、ヘキサシロキサン類、及びハロゲン(例えば、フッ素)置換シロキサン類、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素)置換トリシロキサン類、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素類が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は、式IIIの構造を有するシロキサンであってよく:
【数3】
式中、
各R
3は置換若しくは非置換アルキル及び置換若しくは非置換アリールから成る群から独立して選択され、及び少なくとも1つのR
3は、置換若しくは非置換C3-C30アルキル又は置換若しくは非置換アリールであり;及び
zは1乃至10の整数であり、任意で1乃至6である。
【0047】
幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、1、2、3、4、5、6、若しくは7個の置換若しくは非置換の低級アルキルであるR3を有し、任意でR3のうちの1つ以上は非置換である。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、1、2、3、4、5、6、若しくは7個のメチルであるR3を有する。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、1、2、3、4、5、6、若しくは7個の置換若しくは非置換C6-C20アルキルであるR3を有し、及び残りのR3は置換若しくは非置換の低級アルキルであり、任意でR3のうちの1つ以上は非置換である。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、1、2、3、4、5、6、若しくは7個の置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)であるR3を有し、及び残りのR3は置換若しくは非置換の低級アルキルであり、任意でR3のうちの1つ以上は非置換である。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は2、3、4、5、6、若しくは7個の同一であるR3を有する。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、フッ素、塩素、臭素、及び/若しくはヨウ素等の1以上のハロゲンで置換されている。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物は、少なくとも1つのフッ素で置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物においてzは1であって、トリシロキサンである。幾つかの実施形態では、式IIIの化合物においてzは2、3、若しくは4である。
【0048】
幾つかの実施形態では、コーティング試薬は式IV:Si(R)4の構造を有するシランであってもよく、式中、各Rは水素及び置換若しくは非置換アルキルから独立して選択される。式IVの化合物は、フッ素、塩素、臭素、及び/若しくはヨウ素等の1以上のハロゲンで置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、式IVの化合物は、少なくとも1つのフッ素で置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、式IVの化合物は、1、2、3、若しくは4個のメチルであるRを有する。幾つかの実施形態では、式IVの化合物は、1、2、3、若しくは4個の置換若しくは非置換C3-C30アルキルであるRを有し、及び残りのRは置換若しくは非置換の低級アルキル(例えば、メチル)であり、任意でRのうちの1つ以上は非置換である。幾つかの実施形態では、式IVの化合物は、2、3、若しくは4個の同一であるRを有する。更なる代表的なコーティング試薬としては、ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(例えば、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン及び/若しくはラウリルメチコン)、オクチルヘプタメチルトリシロキサン(例えば、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン)、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、オクタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物により親水性コーティング及び/若しくはフィルムが形成されてよい。幾つかの実施形態では、親水性コーティング及び/若しくはフィルムは、トリシロキサン、例えば親水性ポリエチレンオキシド基に連結されたトリシロキサン官能基を有するSILWET(登録商標)L-77を用いて調製されてよく、これは優れた湿潤特性を有する界面活性剤として機能し得、及び/若しくは水性組成物の表面張力をエタノールの表面張力付近まで減少させ得る。より高い極性の性質を有する溶媒(例えばアルコール)を使用して親水性コーティング試薬を溶媒和及び/若しくは分散させてもよい。幾つかの実施形態では、長い疎水性鎖を有するシロキサン、例えばジメチルシロキサン-エチレンオキシドブロックコポリマーが、コーティング試薬として使用されてもよく、及び/若しくはコーティング試薬を表面(例えば、プラスチック表面)に固定してもよく、及び/若しくはその耐久性をより高くしてもよい。望ましい官能基を有する他のシロキサンとしては、追加の官能化の為に官能化可能なコーティング(この場合、アミノ官能化)を提供し及び/又は特定の疎水性値及び/若しくは荷電特性を提供する為に使用され得る、20%アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体が挙げられるが、それらに限定されない。これは、プラスチック基板中及び/若しくはプラスチック基板上での、マイクロ流体のキャピラリー電気泳動、核酸アッセイ若しくは研究、及び/又はタンパク質アッセイ若しくは研究に適用可能である。
【0050】
コーティング試薬は、任意の好適な形態であってよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬はミセル、ナノ粒子、量子ドット、及び/若しくはマイクロ粒子の形態であり、及び/又はミセル、ナノ粒子、量子ドット、及び/若しくはマイクロ粒子に付着され、又はミセル中にある。コーティング試薬は、例えば、環状オレフィン重合体並びに/又は、アルカン類等の伝統的な非極性溶媒、塩素化溶媒、及び/若しくは芳香族溶媒によって悪影響を受ける他のプラスチックのような、基板の表面中及び/若しくは基板の表面上の材料と適合可能であり得る。幾つかの実施形態では、2つ以上のコーティング試薬を使用してもよい。幾つかの実施形態では、類似した及び/若しくは類似していない特性を有するコーティング試薬の混合物により、異なる特性が達成される場合もある。幾つかの実施形態では、バルクにおいては基板と適合性を有さないコーティング試薬が、そのコーティング試薬を不活性なマイクロ粒子若しくはナノ粒子に固定する及び/若しくは付着することによって適合性を有するようになる場合もある。例えば、バルク液体としてのオクタンは環状オレフィン重合体基板を溶解し得る若しくは溶媒和を開始し得るが、オクタンで官能化されたマイクロ若しくはナノ粒子は、基板表面を溶媒和する若しくは損傷することなく環状オレフィン重合体基板表面に適用することができる。
【0051】
本発明のコーティング試薬は、任意で、任意で界面活性剤を含む、流動する水性組成物に暴露中及び/若しくは暴露後に、基板の表面(例えば、プラスチック表面)に保持され及び/若しくは結合され得る。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は、プラスチックを損傷しない溶媒中に溶解され及び/若しくは懸濁されていてもよく、基板表面上で小さな接触角(例えば、約5°未満)を有し得(これによって、良好な湿潤が提供され得、及び/若しくは、任意でオイルシーリングの前に表面上ではじかれ及び/若しくは跳ね上がることのない、コーティング試薬の薄いフィルムが提供され得)、並びに/又は基板表面(例えば、プラスチック表面)及びアッセイ化学の両方と化学的適合性を有する。幾つかの実施形態では、本発明の溶媒は、コーティング試薬を溶解及び/若しくは懸濁することができ、基板表面(例えば、プラスチック表面)を湿潤する能力を有し、比較的高い蒸気圧(前記コーティング試薬と比較した場合)を有し、及び/又は基板若しくはその特性を損傷及び/若しくは不利に変更しないように基板との化学的適合性を有する。幾つかの実施形態では、溶媒及び/若しくはコーティング試薬は毒性が低く、低コストであり、適用が容易であり、化学的安定性を有し、及び/若しくは比較的不活性である。
【0052】
本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物を使用して基板の表面上にコーティング及び/若しくはコーティング試薬のフィルムを提供することができる。幾つかの実施形態では、コーティング及び/若しくはフィルムは、基板を包装する前、水性組成物(例えば、水性緩衝剤)を基板に加える前、及び/若しくは基板上で反応を行う前に、任意で溶液の形態の、コーティング試薬及び/若しくは組成物から形成されてよい。幾つかの実施形態では、任意で界面活性剤を含有する、水性組成物を基板に加えた後且つシーリングオイルを基板に加える前に、コーティング試薬及び/若しくは組成物を基板に加えてもよい。
【0053】
幾つかの実施形態では、コーティングは、基板の表面上でフィルムの形態であってよい。コーティング及び/若しくはフィルムはコーティング試薬を含んでよく、コーティング試薬は共有結合的に若しくは非共有結合的に表面に結合されてよい。コーティング試薬は少なくとも1つの疎水性の部位(例えば、アルキル部位)を含んでいてよく、及びその少なくとも1つの疎水性の部位は基板の表面と結合及び/若しくは相互作用してもよい。基板の表面は疎水性及び/若しくはポリマー性であってよい。幾つかの実施形態では、基板の表面はケイ素及び/若しくはガラスを含んでもよい。幾つかの実施形態では、基板の表面は、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ乳酸、ポリスルホン、ポリフラン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、フルオロポリマー、シリコーン、ガラス、ケイ素、金属、及び/若しくはそれらの任意の組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、基板の表面はCOC及び/若しくはCOPを含む。幾つかの実施形態では、基板の表面及び/若しくは基板は任意で所望の波長で(任意で約300nm乃至約750nmの範囲の波長に渡り)純粋であり、低コストの材料を含み、射出成形可能であり並びに/又はタイトな公差で及び/若しくはマイクロメートルスケールの限界寸法においてエンボス加工可能である材料を含み、温度安定性(任意で約-40℃乃至約130℃の範囲に渡り)を有する材料を含み、並びに/又は低い蒸気透湿性を有する材料を含む。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態によると、基板の表面上にフィルムを形成する方法であって、基板の表面をコーティング試薬と接触させることと、前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬のフィルムを形成することと、を含む方法が提供される。幾つかの実施形態では、コーティング試薬は、溶媒に希釈せずに純粋な試薬若しくはコーティング試薬の混合物として使用されてよい。幾つかの実施形態では、表面を、コーティング試薬を含む組成物と接触させる。「接触させる」とは本明細書で使用される場合、本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物を基板の表面上に置く、覆う、噴霧する、広げる、注ぐ、並びに/又は沈める等を指す。幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物は、そのコーティング試薬及び/若しくは組成物でコーティングすべき基板の表面の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%と接触する。幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物と接触させる表面及び/又は本発明のフィルムを含む表面は、基板の一部のみ及び/若しくは基板の全表面積の一部(例えば、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%)のみである。幾つかの実施形態では、本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物と接触させる表面は、本発明のフィルムを含む全表面積のほぼ全て(例えば、約100%)又は少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、若しくは97%である。
【0055】
幾つかの実施形態では、基板は、アレイチャンバ、任意でプラスチック表面を含むアレイチャンバを含む、マイクロウェル反応デバイスを含む。前記アレイチャンバは、それぞれ約10アトリットル乃至約100マイクロリットルの体積を有する複数のウェルを含むことができる。アレイチャンバの表面の全て若しくは一部が、本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物と接触されてよく及び/又は本発明のフィルムを含んでよい。アレイチャンバの表面を本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物と接触させる場合、その接触させることは、アレイチャンバをコーティング試薬及び/若しくは組成物で満たすことを含んでよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物は、アレイチャンバの体積及び/若しくは全表面積の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%を満たす及び/若しくは湿潤する。幾つかの実施形態では、本発明の基板、デバイス、及び/若しくは方法としては、限定されないが米国特許出願公開2015/0211048号、国際出願番号PCT/US2016/042913、国際出願番号PCT/US2016/043463、及び国際出願番号PCT/US2016/055407に記載されているようなもの(例えば、デバイス及び/若しくは方法)を挙げてよく、その各々の内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本発明のデバイス及び/若しくは方法を使用して、例えば、生体分子を伴うアッセイ、例えばPCR反応;空間アレイに基づくアッセイ、例えば再構成可能な多要素診断(reconfigurable multi-element diagnostic: ReMeDx)アッセイ、小型アレイ中のシングルプレックス反応(SiRCA)、及び単分子アレイ(Simoa)アッセイ;水性反応組成物を含むアッセイ;プラスチック基板上で行われるアッセイ、及び/若しくはその内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開番号第2013/176767号に記載のアッセイ等であるがそれらに限定されない、任意の好適な反応を行ってもよい。幾つかの実施形態では、本発明のデバイス及び/若しくは方法は、アレイ、例えばプラスチックアレイ(例えば、COPプラスチックアレイ)中にビーズを充填及び/若しくはシーリングするのに使用されてもよい。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムの存在は、アッセイ及び/若しくは反応を向上若しくは改善し得る。例えば、幾つかの実施形態では、アッセイ/反応に悪影響を与えることなく(例えば、PCR信号を失うことなく)、タンパク質ブロッカー(例えば、ウシ血清アルブミン)が反応組成物から(例えば、PCRマスターミックスから)除去され得、及び/又はタンパク質ブロッカーを含む場合の効率と比較してアッセイ/反応の効率を増大させ(例えば、信号を増大させ)得る。フィルムの存在は、核酸、酵素、界面活性剤、及び/若しくは他の化学試薬(例えばマグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロリド、サルフェート、アセテート、及びトリスイオン)の基板への吸着を減少させ得る。
【0057】
本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物の1以上の層が基板の表面上に提供され得る。幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物は、任意で均一な層及び/若しくは均質な層において、表面上に広げられる。「均質な」とは本明細書で使用される場合、任意で測定可能な値の平均から、±20%未満(例えば、±10%、±5%、若しくはそれ未満)だけ変化する測定可能な値を指す。
【0058】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、表面上でコーティング試薬及び/若しくは組成物を乾燥させることによって表面上に形成される。コーティング試薬及び/若しくは組成物は、当業者に既知の任意の方法、例えば、限定されないが、蒸発を用いて乾燥され得る。幾つかの実施形態では、組成物の少なくとも1つの構成成分(例えば、溶媒)が、任意で圧力差(例えば、真空及び/若しくは空気圧)を用いて、基板の表面から蒸発されてよい。コーティング試薬及び/若しくは組成物は、基板の表面に目に見えるコーティング試薬及び/若しくは組成物がなくなるまで乾燥されてよい。幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物を乾燥する前に、コーティング試薬及び/若しくは組成物の少なくとも一部(例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくはそれより多く)が基板から除去される。
【0059】
幾つかの実施形態では、コーティング試薬及び/若しくは組成物は、水溶液を加えた後に、任意でマイクロウェルアレイをビーズで充填した後に、及びシーリングオイルを充填する前に、マイクロ流体デバイスに加えられてよい。コーティング試薬及び/若しくは組成物は、シーリングオイルの基板上での流動に先立つ液体の栓として作用して、コーティング試薬が基板上で流動されて、シーリングオイルがそれに追従する前に基板をコーティングするようにしてもよい。幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、コーティング試薬をマイクロ流体デバイスに加える及び/若しくは流す前に、水溶液(任意で界面活性剤を含む)を含有してもよい。
【0060】
本発明のフィルムは、約1、10、50、100、若しくは500nm乃至約1、10、50、100、200、300、400、若しくは500ミクロンの厚みを有してよい。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、約1、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、若しくは1000nm又は約5、10、50、100、200、300、400、若しくは500ミクロンの厚みを有する。フィルムは、それが提供される基板のエリアの表面の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくは100%に渡り均質な厚みを有してよい。幾つかの実施形態では、フィルムは、基板の表面上のコーティング試薬の分子の層よりも大きな厚みを有する。
【0061】
幾つかの実施形態では、フィルムは、基板表面上の1以上の場所において、別の場所と比較して異なる厚みを有してよい。例えば、基板表面が表面の水平面よりも下に垂直方向に延長する1以上の凹み、例えば、複数のウェル及び/若しくは孔を含む場合、フィルムは、凹み(例えば、ウェル)の表面上で、表面(例えば、2以上のウェル間に延在する表面)の水平面上のフィルムの厚みと比較して大きな厚みを有し得る。幾つかの実施形態では、凹みの表面上のフィルムの厚みは、表面の水平面上のフィルムの厚みよりも、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、若しくはそれを超えるだけ大きくてもよい。
【0062】
幾つかの実施形態では、フィルムは、基板の予め定められたエリアにおいて使用されて、それらの場所のみで基板の特性を変えてもよい。1以上の本発明のコーティング試薬、組成物、及び/若しくはフィルムの1以上の適用を使用して、基板の異なる領域が異なる特性を有するように、基板を選択的にパターン化してもよい。非限定例としては、疎水性のフィルムを特定のチャネルの表面上に残してそれらをより疎水性とする一方で、異なるコーティング試薬及び/若しくは組成物を他のチャネルに加えてそれらを親水性にすることによって、毛管作用によるマイクロ流体デバイスの湿潤を制御することが挙げられる。コーティング試薬による基板のパターン化は、フォトリソグラフィ、噴霧、マスクのリフトオフ、ステンシルによる部分的オクルージョン、毛管作用、及び/若しくは圧力駆動フローが挙げられるがそれらに限定されない、当業者に既知の任意の方法によって達成され得る。
【0063】
本発明のフィルムにおけるコーティング試薬の濃度は、基板表面に渡って均質であってよい。幾つかの実施形態では、フィルムは、基板表面の1以上の場所において、別の場所と比較して異なる濃度のコーティング試薬を有していてよい。例えば、基板表面が、表面の水平面よりも下に垂直方向に延長する1以上の凹み、例えば複数のウェル及び/若しくは孔を有している場合、フィルムは、凹み(例えばウェル)表面上で、表面(例えば、2以上のウェル間に延長する表面)の水平面上のコーティング試薬濃度に比較してより大きなコーティング試薬濃度を有し得る。幾つかの実施形態では、凹みの表面上のコーティング試薬濃度は、前記表面の水平面上のコーティング試薬濃度よりも、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、若しくはそれを超えるだけ大きい。
【0064】
本発明のフィルムは、基板の少なくとも1つの表面特性を改善し得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルム及び/若しくは方法は基板の表面特性を改善し、それが、任意でフィルムを有さない基板表面と比較して、基板表面中の凹み及び/若しくはウェル中へのビーズの充填を改善し並びに/又は基板表面の凹み及び/若しくはウェル中の水性組成物のオイルシーリング(例えば、不混和性オイルシーリング)を改善する。幾つかの実施形態では、フィルムは、基板の表面の疎水性を改善し得る。幾つかの実施形態では、表面の疎水性は、フィルムの非存在下での及び/若しくは本発明の方法の前の表面の疎水性と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、若しくはそれを超えるだけ増大され得る。
【0065】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、基板の表面の疎フルオロカーボン性を増大し得る。「疎フルオロカーボン性」とは本明細書で使用される場合、フルオロカーボン(例えば、フルオロカーボンシーリングオイル)の、表面若しくはフィルムからはじかれる、若しくは湿潤しない、及び/又は前記表面若しくはフィルムと混合されない傾向を指す。例えば、より大きな疎フルオロカーボン性を有する基板表面は、フルオロカーボン液滴(例えば、約5μL)に対する接触角が、同じフルオロカーボン液滴に対してより小さな接触角を有する異なる基板表面よりも大きい。幾つかの実施形態では、表面の疎フルオロカーボン性は、フィルムの非存在下及び/若しくは本発明の方法の前の表面の疎フルオロカーボン性と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、若しくはそれを超えるだけ増大され得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、フィルムが提供される基板の表面をフルオロカーボン(例えば、フルオロカーボンシーリングオイル)が湿潤しない若しくは完全に湿潤しない程度まで、疎フルオロカーボン性を増大させる。例えば、
図3に示されるように、デュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104 PFPEオイルは、ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)を含む組成物から調製されたフィルムを含むCOP表面上に置かれた場合、最初の適用時に被覆される表面を超えて広がることはなく、及び従ってフィルムを含む基板の表面を完全には湿潤しない。それに対して、
図3に示されるように、未処理のCOP表面上ではPFPEオイルは広がってしまう。
【0066】
任意で界面活性剤を含む、水性組成物(例えば、水及び/若しくは水性緩衝剤)に暴露された時に、本発明のフィルムは基板の表面上に残存し得、これはフィルムがはじかれたり、跳ね上がったり、不連続となったり、及び/若しくは泡立ったりすることがないということを意味する。幾つかの実施形態では、フィルムは、任意で界面活性剤を含む水性組成物と約30分乃至約1、2、3、若しくは4時間以上接触され得、及び表面上に残存し得る。幾つかの実施形態では、任意で界面活性剤を含む、水性組成物に約30分乃至約1、2、3、若しくは4時間以上暴露された後、フィルムの少なくとも約50%、55%、60%。65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%が基板表面上に残存する。幾つかの実施形態では、界面活性剤が、例えば水性組成物の約0.001重量%、0.05重量%、0.01重量%、若しくは0.1重量%乃至約1重量%、5重量%、10重量%、若しくは15重量%の量で、本明細書で記載されるような水性組成物中に存在する。代表的な界面活性剤としては、親水性ポリマー、TWEEN(登録商標)(例えばTWEEN(登録商標)20)、ポロキサマー類(例えばポロキサマー188、ポロキサマー407)、BRIJ(登録商標)、SILWET(登録商標)(例えばSILWET L-77)、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルグルコピラノシド類、及び/若しくはCHAPS洗剤が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、水性組成物はドデシル硫酸ナトリウム、アルキルグルコピラノシド類、及び/若しくはCHAPSを含む。
【0067】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、任意で界面活性剤を含む、水性組成物若しくは組成物の構成成分が基板の表面に接着する及び/若しくは吸着するのを防ぎ得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、基板の表面に接着し及び/若しくは吸着する、任意で界面活性剤を含む、水性組成物の量を、例えばフィルムなしで表面に接着する及び/若しくは吸着する水性組成物の量と比較して、減少させる。フィルムは、不混和性のシーリングオイル等によるオイルシーリング中に表面に接着する水性組成物の量を減少させ得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、水性組成物中に存在する界面活性剤の吸着を防止し得、界面活性剤残渣の溶解を、それが水性組成物と相互作用できないように防止し若しくは許容し得、水性組成物の除去の改善を可能にする不混和性オイルとコーティングとの有利な相互作用を提供し得、及び/若しくは表面エネルギーを減少し、それによって水性組成物と表面との相互作用を減少し得る。
【0068】
本発明の方法は、オイル(例えば、不混和性のシーリングオイル)を、基板の表面上のフィルムと、任意で界面活性剤を含み得る水性組成物にフィルムを暴露させた後で、接触させる(例えば、加える)ことを含んでよい。オイルは、凹みを封止する為及び/又は複数の凹み及び/若しくはウェルを互いに対して封止する為に、フィルムを有する表面に接触されてよい。基板表面が複数の凹み及び/若しくはウェルを含み、水性組成物(任意で界面活性剤を含む)がそこに含まれる場合、凹み及び/若しくはウェルの約20%、15%、10%、若しくは5%未満が、凹み及び/若しくはウェルをオイルでシーリングした後で、水溶液によってブリッジングされ及び/又は水溶液によって流体的に接続され得る。
【0069】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、フィルムを含む基板の表面上の5μLのオイル液滴に対する接触角を増大し得る。幾つかの実施形態では、表面上でのオイル液滴の接触角は、フィルムの非存在下及び/若しくは本発明の方法の前の基板の表面上でのオイル液滴の接触角と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%若しくはそれを超えるだけ増大され得る。幾つかの実施形態では、オイル液滴はシーリングオイル液滴である。フィルムは、オイルが基板の表面を十分に湿潤するのを防止し及び/若しくは阻害し得る。5μLのオイル液滴は、本明細書中に上述したような基板の表面(例えば、COP若しくはCOC表面)上にある本発明のフィルム上の接触角が、約0.5°、1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、若しくは10°乃至約12°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、若しくは75°、任意で約25°若しくは30°であり得る。
【0070】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、フィルムを含む基板の表面上の5μLの水性液滴に対する接触角を増大し得る。幾つかの実施形態では、表面上での水性液滴の接触角は、フィルムの非存在下及び/若しくは本発明の方法の前の基板の表面上での水性液滴の接触角と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%若しくはそれを超えるだけ増大され得る。幾つかの実施形態では、水性液滴(例えば、水、水性緩衝剤、水性反応混合物等)は界面活性剤を含む。5μLの水性液滴は、本明細書中で上述したような基板の表面(例えば、COP若しくはCOC表面)上にある本発明のフィルム上の接触角が、約20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、90°、100°、110°、若しくは120°乃至約125°、130°、140°、150°、160°、若しくは170°、任意で約25℃であり得る。幾つかの実施形態では、水性液滴は、本明細書中で上述したような基板の表面(例えば、COP若しくはCOC表面)上にある本発明のフィルム上の接触角が、約90°乃至約100°、110°、120°、130°、140°、若しくは150°である。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、フィルムを含む基板の表面上の5μLの水性液滴に対する接触角を約90°を超えて増大させる。
【0071】
例えば、
図4に示されるように、ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)を含む組成物から調製されたフィルムを含むCOP表面上に水の液滴が置かれた場合、前記液滴の前記表面上での接触角は、未処理のCOP表面上の水の液滴に対する接触角と比較して、増大した。ヘキサメチルジシロキサン中の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(1体積%)を含む組成物から調製されたフィルムを含むCOP表面上に非イオン性界面活性剤を含有する水性緩衝剤の液滴を置いた場合には、前記液滴の前記表面上での接触角は、未処理のCOP表面上の前記緩衝剤の液滴に対する接触角と比較して、接触角において測定可能な差がなかった。
【0072】
本発明のフィルムは、オイル(例えば、不混和性のオイル)による基板のシーリング中における、基板の水性はじき(aqueous dewetting)を改善し得る。「不混和性のオイル」とは本明細書で使用される場合、水性組成物、例えば水性反応組成物と不混和性であるオイルを指す。代表的な不混和性のオイルとしては、フッ素化ポリマー、例えばパーフルオロポリエーテル類(例えば、ヘキサフルオロプロピレンエポキシドの低分子量フッ素エンドキャップホモポリマー)、鉱油等のアルカン系オイル、及び/若しくはフッ素化されていてもよいポリシロキサン類等のシリコーンオイルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
不混和性オイルとしては、PFPE、パーフルオロアルキルエーテル(PFAE)、及び/若しくはパーフルオロポリアルキルエーテル(PFPAE)が挙げられるがそれらに限定されない、不混和性のシーリングオイルを挙げることができる。幾つかの実施形態では、前記不混和性オイルは、デュポン(DUPONT)(商標)から商標KRYTOX(登録商標)で入手可能なPFPEオイルであり、例えばKRYTOX(登録商標)GPL103、KRYTOX(登録商標)GPL104、及び/若しくはKRYTOX(登録商標)GPL105が挙げられるがそれらに限定されない。幾つかの実施形態では、不混和性オイルは式Vにより表される構造を有し:
【数4】
式中、pは10乃至60の整数である。
【0074】
幾つかの実施形態では、不混和性オイル(例えば、PFPEオイル)は、オイルの約10重量%乃至約30重量%の量のカーボン、オイルの約5重量%乃至約15重量%の量の酸素、及びオイルの約60重量%乃至約80重量%の量のフッ素を含む。幾つかの実施形態では、不混和性オイル(例えば、PFPEオイル)は、それぞれオイルの、約21.6重量%のカーボン、約9.4重量%の酸素、及び約69.0重量%のフッ素を含む。幾つかの実施形態では、不混和性オイルは、オイル100部以上当たり約1部の水、任意でオイル1000部当たり約1部未満の水、を溶解することができる。幾つかの実施形態では、不混和性オイルと水との混合物は、それら2つの構成成分が互いに自由に溶解されない為、少なくとも一部が相分離する。幾つかの実施形態では、フィルムは、基板のオイル(例えば、不混和性のオイル)によるシーリング中の基板の水性はじきを、フィルムの非存在下でのシーリング中の基板の水性はじきと比較して、改善し得る。
【0075】
本発明のフィルムは、基板の表面への生体分子(例えば、タンパク質及び/若しくは核酸)の接着及び/若しくは結合を減少若しくは防止し得る。幾つかの実施形態では、フィルムは、生体分子の接着及び/若しくは結合を、フィルムの非存在下での基板の表面への生体分子の接着と比較して、減少若しくは防止する。フィルムの存在はまた、酵素、界面活性剤、及び/若しくは他の化学試薬(例えばマグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロリド、サルフェート、アセテート、及びトリスイオン)の基板への接着をも減少し得る。
【0076】
本発明の幾つかの実施形態によると、プラスチックマイクロ流体デバイスのウェル中の水相反応の不混和性オイルシーリングを改善する方法が提供される。本発明の方法において任意の好適なマイクロウェル反応デバイスを使用してよく、例えば、約10アトリットル乃至約100マイクロリットルの体積を有し及びほぼ平坦な基板上に形成されたウェル及び/若しくは孔を有するデバイスが挙げられる。本発明の方法において使用されるマイクロ流体デバイスは、プラスチックであってよく並びに/又は化学反応を互いに分離する及び/若しくはセグメント化する必要のあるプラスチック表面を含んでいてよい。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、プラスチックから作製されてよく及び本明細書で記載されるようなコーティング試薬の層で被覆されてよく、これによって、水相、任意で界面活性剤を含む水性反応、のブリッジによって互いに対して流体的に接続されるウェルの数が減少されることにより、水性反応の不混和性オイルシーリングが改善され得る。
【0077】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、ブロッキング剤(即ち、分子及び/若しくは粒子の被覆基板への望ましくない吸着を減少させるもの)として機能し及び/若しくは用いられ得、及びウェル及び/若しくは反応同士のシーリングを補助する為に使用されてもよく又は使用されなくてもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、本発明のフィルム及び/若しくはデバイスは、例えば米国特許出願公開第2015/0211048号及び国際出願番号PCT/US2016/042913号(その各内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、ビーズ(例えば、超常磁性のビーズ)を用いて、試薬及び/若しくは対象の目標分子を反応ウェルに送達する方法において使用される。かかる方法は、反応ウェルの少なくとも約80%以上(例えば、85%、90%、95%、97%、若しくは100%)に1つのビーズを提供し得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、ビーズがウェルに向かって案内されるのを補助する及び/若しくは許容する、並びに/又はウェルへ移動される時の抵抗を低下させる。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、本発明のフィルムを含まないデバイスに比較して、ウェル中に充填されるビーズのデバイスに加えられるビーズに対するより大きな比率を提供し及び/若しくは達成し得る。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、約1:1乃至約1:10の、ウェル中に充填されるビーズのアレイに添加されるビーズに対する比率を提供し及び/若しくは達成する。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、デバイス中のウェルの約50%、60%、若しくは70%乃至約75%、80%、90%、若しくは100%でビーズを獲得し及び/若しくは提供し、並びに/又はデバイス中に含まれるビーズの総数は、デバイス中のウェルの数と同じ若しくは約300%以内の量である。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、ウェルの少なくとも約95%若しくはウェルの約100%で、ビーズを獲得し及び/若しくは提供する。幾つかの実施形態では、本発明のデバイスは、デバイス中に含まれるビーズの総数が、デバイス中のウェルの数と同じ若しくは約300%以内である。
【0079】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、磁石を用いてウェルにビーズを充填し、表面上に本発明のフィルムを有する基板を含有する、反応ウェルアレイの表面上のクランプ(clump)若しくは細いライン中に、ビーズを収集することを含む。収集されたビーズは、基板の下で磁石を移動させることによって、アレイウェル上に輸送される。ビーズをウェル中に充填した後、及び任意で水性試薬溶液が加えられた後、過フッ素化オイル、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、パーフルオロアルキルエーテル(PFAE)、及び/若しくはパーフルオロポリアルキルエーテル(PFPAE)、をアレイチャンバに接触させ(例えば、加え及び/若しくは流入させ)て、ウェルを互いに封止する(例えば、分離する)。オイルは水性組成物をアレイチャンバから押し出すが、反応ウェル内部では水性組成物はピンニングされ及び捕捉される。このアプローチを使用して、ウェルの大部分(例えば、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、若しくは100%)は、互いに分離され得、及び/若しくはウェル間の水性移動による混戦が引き起こされることなく独立した反応が進行可能である。
【0080】
本発明のフィルムを有さないCOPプラスチック中に形成された反応ウェルアレイに、未処理の表面及び緩衝剤を用いて常磁性のビーズを磁気的に充填することは厄介であることが分かった。「未処理の(native)表面」は本明細書で使用される場合、本発明のコーティング試薬及び/若しくは組成物で変性及び/若しくは処理されておらず、及び本発明のコーティング及び/若しくはフィルムを欠いている表面を指す。COPチップに界面活性剤、親水性ポリマー、若しくは他のブロッキング試薬を添加しない場合、ウェルのシーリングは許容可能であったものの、ビーズは磁性的に容易に輸送することができず、このことがウェル中への非効率な充填につながった。ビーズは、
図1に示されるように、表面に吸着し及びアレイ基板上に分散された層を形成した。TWEEN(登録商標)20等の界面活性剤を緩衝剤に添加すると、ビーズは効率的にウェルに充填され及びプラスチック基板の表面上を自由に流動した。生憎、界面活性剤含有緩衝剤への暴露によって、不混和性オイルシーリング後にアレイの表面上及びアレイチャンバの上面上に水相の大きな斑点が残ってしまった。このことは、
図2に見ることができ、水相中に存在する蛍光染料が相間の界面をはっきりと示している。ビーズ充填後(であるがシーリング前)に界面活性剤を含まない緩衝剤を用いて界面活性剤を洗い流すことによってシーリングを改善する試みは不成功に終わり、水性ブリッジングが残存した。種々の親水性ポリマーを用いた試みもまた、ビーズ吸着(即ち、ビーズのプラスチック基板に対する若しくはビーズ同士の粘着)若しくは界面活性剤ありで見られるものと同様の水性ブリッジングの何れかに起因して、不成功に終わった。
【0081】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、溶媒中に溶解されたコーティング試薬を、任意で前記溶媒の約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、若しくは1体積%の量で、使用する。
図5及び6に示されるように、組成物(例えば、液体形態の)がプラスチックチップに加えられて、アレイチャンバが充填され、次いで、リザーバに適用された圧力差(例えば、真空若しくは空気圧)を用いて除去されて乾燥される。組成物は、コーティングが所望されるデバイスのエリアを部分的に若しくは完全に充填及び/若しくは湿潤し得る。次いで組成物がチップから除去されてよく、溶媒が蒸発した組成物のコーティングが残り、及びそれによってアレイの表面上の大部分に渡り均質に分布されたコーティング試薬のフィルムが残る。このアプローチは、充填、排出(evacuate)、及び乾燥(FED)法と称することもできる。別法として若しくは加えて、他の適用技術及び/若しくはこの技術の変形形態を使用することもできるが、組成物の修飾が必要となる場合もある。こうした技術及び/若しくは変形形態としては、チップを充填し及びその後組成物のバルクをチップから除去することなく溶媒を蒸発させることが挙げられるが、それらに限定されない。フィルムはまた、組成物若しくはコーティング試薬のみを、被覆すべき表面上に噴霧することによって適用されてもよい。他の方法としては、半導体微細加工産業において既知の方法、例えばスピンコーティング、浸漬塗工、展延塗工、蒸着、及び/若しくは化学蒸着が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、超臨界溶媒を使用して、任意で大きなバッチの自動化可能フォーマットにおいて、フィルムを付着させてもよい。組成物をチップ中に射出及び/若しくは噴霧し及びそれを除去する自動化フォーマットは、当業者に既知の方法を用いて商業的製造用途の為に実現することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、フィルムはアレイ及びアレイチャンバの平坦な表面上では比較的均一であるように見え得るが、FEDコーティング法の間、マイクロウェル中にはより多くの組成物及び/若しくはコーティング試薬が残され得る。幾つかの実施形態では、マイクロウェルがアレイの表面と接する場所においてエッジ効果が存在する場合があり、このことがオイルシーリングに役立ち得、及び/若しくは改善されたオイルシーリングを提供し得る。
【0083】
本発明の方法は、環境条件下で行われ得る。幾つかの実施形態では、本発明の方法は、環境条件よりも乾燥した条件において行われてもよく、これによって基板の表面上にあるフィルム上に吸収される水の量が減少され得る。吸収水は、フィルムを乱し得及び/若しくはフィルムの不均一な適用に寄与し得る液滴として残される場合がある。幾つかの実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物中の水分を除去若しくは排除する為の、及び/又は、限定されないが、モレキュラーシーブによる乾燥、乾燥雰囲気、及び/若しくは気体パージ等に本発明のフィルムを暴露する、1以上の工程を含んでいてよい。
【0084】
本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法は、分離されたウェルにセグメント化することを必要とする任意のプロセスにおいて使用してよい。本発明は、アレイに基づくシーリングに限定されず、例えば油中水液滴の適用等、他の分野における用途を有していてよい。例えば、液滴生成器が本明細書で記載されたようなコーティング試薬でコーティングされて、水性組成物又はフルオロカーボン系オイル若しくは組成物、例えば水相中に含有される細胞、細胞片、粒子、及び/若しくは他の材料等の成分の追加のブロッキングを含む水性組成物、の液滴生成器の表面への吸着を防いてもよい。
【0085】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法は、疎水性のマイクロ流体デバイスにおける水性組成物の為のブロッキング剤として有用であり得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルム及び/若しくはデバイス上で行われるPCR反応は、フィルムを含まないデバイス(例えば、未処理のプラスチックデバイス)よりも効率的であり得る。
【0086】
本発明の組成物、デバイス、及び/若しくは方法は、プラスチックマイクロ流体デバイス上での界面活性剤を含有する水性反応のマイクロアレイのシーリングを改善し得る。本発明は、磁石を用いたビーズのアレイへの充填(例えば、同時充填)が望ましいビーズに基づくアッセイの為に特に有用であり得る。幾つかの実施形態では、本発明のフィルムは、アルキル鎖等の疎水性官能基を含む疎水性のトリシロキサンを含み、及び/若しくはCOPプラスチックデバイスの表面上で使用されてもよい。プラスチック適合性の溶媒、例えばヘキサメチルジシロキサンを用いて適用される場合、水性反応ウェルのアレイの不混和性オイルシーリングを改善する薄い及び/若しくは安定な層が達成され得る。
【0087】
本発明のフィルムは、例えば後処理、包装工程、輸送、及び/若しくは貯蔵条件に対して、安定であり得る。幾つかの実施形態では、フィルムは凍結乾燥条件に対して安定である。「安定な」とは本明細書で使用される場合、フィルムが基板の表面上に残存することを意味し、これは、フィルムが、暴露条件以前よりも大きな程度まで、はじかれ、跳ね上がり、不連続となり、及び/若しくは泡立つことがないことを意味する。幾つかの実施形態では、安定なとは、フィルムが表面上で均質な及び/若しくは連続した状態を維持することを意味する。幾つかの実施形態では、フィルムは、任意で未開封の包装中で、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、若しくはそれより多くの日数、週数、月数、及び/若しくは年数に渡り安定である。幾つかの実施形態では、フィルムは、任意で界面活性剤を含む水溶液に暴露された後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、若しくはそれより多くの日数、週数、月数、及び/若しくは年数に渡り安定である。
【0088】
本発明を、以下の非限定例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0089】
実施例1
ヘキサメチルジシロキサン中に溶解された1%の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(ゲレスト(Gelest)社より市販、CAS No:139614-44-1)の溶液を調製した。国際出願番号PCT/US2016/042913及び国際出願番号PCT/US2016/043463に記載されるように、溶液約45μLをマイクロ流体のウェルアレイデバイスの試薬リザーバにピペッティングした。この溶液は、毛管作用によりチャネルを通って流れてマイクロアレイチャンバを満たした。アレイが完全に満たされた後、部分真空を適用して溶液をチップから排出し及び残存する溶媒を蒸発させ、アレイ表面上及びマイクロウェル中に3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサンの薄いフィルムが残った。
【0090】
このアレイをリン緩衝食塩水、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド(RGP)、0.1%Tween20、及び低濃度のストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ酵素を含有する発蛍光性の基質溶液で充填した。この充填を達成する為に、約45μLの溶液を試薬リザーバに加え、及び別のリザーバにおいて適用された部分真空を用いてチップを通して引っ張った。アレイが充填された後、約45μLのデュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104オイルをリザーバに加えて、部分真空を用いて、アレイチャンバ中の水溶液が無くなってオイルで満たされるまで、アレイを通して引っ張った。
図7及び8Bに示されるように、1以上の酵素分子が基質溶液で捕捉された反応ウェルにおいて、RGPを、蛍光顕微鏡法を用いて可視化が可能な蛍光レゾルフィン染料へと転換した。未処理のCOP表面(即ち、フィルムを有さない)を
図2及び
図8Aに示す。
【0091】
図7及び8Bに見られる通り、このコーティング及びコーティング手順を用いると、反応ウェルの大部分は流体的に互いに分離され、及び酵素分子の確率的な分布は、平均してウェルの大半が0、1、2、若しくは3つの酵素分子を含有する程度の低い酵素濃度であることが分かった。即ち、酵素分子によるウェルの占有は、ポアソン統計を用いてモデル化することが可能であった。
【0092】
実施例2
ヘキサメチルジシロキサン中に溶解された約1%の3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン(ゲレスト(Gelest)社より市販、CAS No:139614-44-1)の溶液を調製した。この溶液約45μLを、国際出願番号PCT/US2016/042913及び国際出願番号PCT/US2016/043463に記載されているようなマイクロ流体ウェルアレイデバイスの試薬リザーバへとピペッティングした。この溶液は、毛管作用によりチャネルを通って流れてマイクロアレイチャンバを満たした。アレイが完全に満たされた後、部分真空を適用して溶液をチップから排出し及び残存する溶媒を蒸発させ、アレイ表面上及びマイクロウェル中に3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサンの薄いフィルムが残った。
【0093】
このマイクロ流体デバイスを低濃度のTween20を含有するトリス系緩衝剤で満たした。フォワード及びリバースプライマーを含有する磁気マイクロビーズをデバイスに加え、アレイへと磁性的に輸送した。幅広の棒状磁石(アレイ幅の約2乃至3倍広い幅)を使用して、ビーズをマイクロウェル中に分散し及び充填した。プライマーを除くPCRに必要な全ての成分を含有するマスターミックス溶液をデバイスに加え、充填緩衝剤を置換した。実際には、ビーズをアレイに輸送する前に、ハイブリダイゼーション用緩衝剤中でビーズと共にサンプルをインキュベートして目標のDNAを捕捉及び精製することができる。或いは、特にサンプルが既にサンプルマトリックスから精製されている場合には、サンプルをマスターミックスの構成成分として添加することができる。デュポン(DuPont)(商標)KRYTOX(登録商標)GPL104シーリングオイルをチップに加えた。圧力差を使用してアレイ上でオイルを引っ張り、アレイウェル及び基板表面より上のエリアから水性マスターミックスを置換した。シーリング後、アレイを熱循環させてウェル中でリアルタイムPCR反応を行った。PCRの各サイクル後に撮られた蛍光顕微鏡法画像を用いて、デジタル及びアナログの両方の増幅データを生成し、インターカレーション染料の発光強度によって決定される場合の目標核酸濃度を決定した。
図9Aは、増幅後のSiRCAビーズで充填されたマイクロウェルアレイの一部を示している。
図9Bは、
図7Aのアレイの拡大図であり、ビーズを含有しないウェル(ダーク)、陰性ビーズを含有するウェル(明るい円形領域のみ)、及び陽性ビーズを含有するウェル(明るい円形及びスリット領域)を示している。増幅後に融点曲線をとって、増幅産物の同定を判定若しくは検証することもできる。PCR陽性ウェルの数及び/若しくはサイクル閾値を決定することができる。ポアソン統計及びリアルタイムPCR技術を単独で若しくは組み合わせて使用して、ビーズ当たりのPCRテンプレートの平均数、及び従って、サンプル中のPCRテンプレートの濃度を決定することができる。この技術は核酸アッセイの為に使用できるだけでなく、任意でビーズに基づく若しくは固体相の、イムノPCR若しくはELISA反応を用いて行われるタンパク質アッセイの為にも使用することができる。
【0094】
前記は本発明の例示であり、及び本発明を制限すると解釈すべきではない。本発明は下記の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の同等物は特許請求の範囲に含まれるものとする。本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、特許公開、及び他の文献は、その文献が提供される文及び/若しくは段落に関する教示についてその全体が参照により組み込まれる。
〔付記1〕
コーティング試薬と、
溶媒と、
を含む組成物であって、
前記コーティング試薬は、前記溶媒の約0.01%乃至約5体積%の量で前記組成物中に存在する、組成物。
〔付記2〕
前記コーティング試薬は少なくとも部分的に前記溶媒中に溶解されており、任意で前記コーティング試薬の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、若しくは100%が前記溶媒中に溶解されている、付記1に記載の組成物。
〔付記3〕
前記コーティング試薬は前記溶媒中に懸濁されている、付記1に記載の組成物。
〔付記4〕
前記溶媒は、蒸気圧が、25℃において約25mmHg超又は25℃において約50mmHg未満である、付記1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
〔付記5〕
前記溶媒は、25℃における粘度が約0.7センチストーク未満である、付記1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
〔付記6〕
前記溶媒は水と不混和性である、付記1乃至5の何れか1項に記載の組成物。
〔付記7〕
前記溶媒は非極性である、付記1乃至6の何れか1項に記載の組成物。
〔付記8〕
前記溶媒は、25℃における水への溶解度が約1.5mg/L若しくは1mg/L未満である、付記1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
〔付記9〕
前記溶媒は、シクロメチコン類(例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン)、ジメチコン類、ポリシロキサン類、ポリシラン類、フルオロシロキサン類、フルオロシラン類、パーフルオロカーボン類、パーフルオロシロキサン類、パーフルオロ炭化水素類、環状フルオロカーボン類、四級シロキサン類、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、付記1乃至8の何れか1項に記載の組成物。
〔付記10〕
前記溶媒はオルガノシリコンであり、任意でシロキサン(例えば、任意で1以上のアルキル基で置換された、ポリシロキサン、任意で直鎖ポリジシロキサン)である、付記1乃至9の何れか1項に記載の組成物。
〔付記11〕
前記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、付記1乃至10の何れか1項に記載の組成物。
〔付記12〕
前記溶媒は疎水性であり、任意で前記溶媒は、オクタノール/水分配係数(log P)が約4以上である、付記1乃至11の何れか1項に記載の組成物。
〔付記13〕
前記組成物は水を含まないか若しくは水を約2体積%以下の量で含む、付記1乃至12の何れか1項に記載の組成物。
〔付記14〕
前記組成物は非水性である、付記1乃至13の何れか1項に記載の組成物。
〔付記15〕
前記コーティング試薬は前記溶媒と混和性である、付記1乃至14の何れか1項に記載の組成物。
〔付記16〕
前記コーティング試薬は、シラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換シロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素である、付記1乃至15の何れか1項に記載の組成物。
〔付記17〕
前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、ラウリルメチコン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン、エチルヘプタメチルトリシロキサン、プロピルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタヘプタメチルトリシロキサン、ノニルヘプタメチルトリシロキサン、ウンデカヘプタメチルトリシロキサン、トリデカヘプタメチルトリシロキサン、テトラデシルヘプタメチルトリシロキサン、ペンタデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサデシルヘプタメチルトリシロキサン、ヘプタデシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルデシルヘプタメチルトリシロキサン、ノナデシルヘプタメチルトリシロキサン、デュオデシルヘプタメチルトリシロキサン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、任意で前記コーティング試薬は3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン及び/若しくは3-オクチルヘプタメチルトリシロキサンである、付記1乃至16の何れか1項に記載の組成物。
〔付記18〕
前記コーティング試薬は、ミセル、ナノ粒子、量子ドット、及び/若しくはマイクロ粒子の形態である、付記1乃至17の何れか1項に記載の組成物。
〔付記19〕
前記組成物は、溶液、コロイド、エマルション、若しくはゲルの形態である、付記1乃至18の何れか1項に記載の組成物。
〔付記20〕
基板の表面上にフィルムを形成する方法であって、
基板の表面をコーティング試薬を含む組成物と接触させることと、
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬のフィルムを形成することと、
を含む、方法。
〔付記21〕
前記コーティング試薬は、シラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換シロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素である、付記20に記載の方法。
〔付記22〕
前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,1,3,5,5-ペンタフェニル-1,3,5-トリメチルシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、メチルトリ-n-オクチルシラン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、付記20若しくは21に記載の方法。
〔付記23〕
前記コーティング試薬は、ミセル、ナノ粒子、量子ドット、及び/若しくはマイクロ粒子の形態である、付記20乃至22の何れか1項に記載の方法。
〔付記24〕
前記コーティング試薬は、溶液、コロイド、エマルション、若しくはゲル中にある、付記20乃至23の何れか1項に記載の方法。
〔付記25〕
前記コーティング試薬は、前記組成物の約0.01重量%乃至約5重量%の量で前記組成物中に存在する、付記20乃至24の何れか1項に記載の方法。
〔付記26〕
前記組成物は、付記1乃至19の何れか1項に記載の組成物である、付記20乃至25の何れか1項に記載の方法。
〔付記27〕
前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記基板の前記表面を前記組成物で覆うことを含む、付記20乃至26の何れか1項に記載の方法。
〔付記28〕
前記組成物は、前記基板の前記表面の少なくとも95%を覆う、付記27に記載の方法。
〔付記29〕
前記基板は、アレイチャンバを含むマイクロウェル反応デバイスを含み、任意で前記アレイチャンバは、それぞれ約10アトリットル乃至約100マイクロリットルの体積を有する複数のウェルを含み、及び前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記アレイチャンバを前記組成物で充填することを含む、付記20乃至28の何れか1項に記載の方法。
〔付記30〕
前記組成物は、前記アレイチャンバの体積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%を満たす及び/若しくは湿潤する、付記29に記載の方法。
〔付記31〕
前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記基板の前記表面上に前記組成物の少なくとも1つの層を提供することを含む、付記20乃至30の何れか1項に記載の方法。
〔付記32〕
前記基板の前記表面を前記組成物と接触させることは、前記基板の前記表面上に前記組成物を噴霧することを含む、付記20乃至31の何れか1項に記載の方法。
〔付記33〕
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬の前記フィルムを形成することは、前記基板の前記表面上の前記組成物を乾燥することを含み、任意で前記乾燥することは圧力差(例えば、真空及び/若しくは空気圧)を用いて行われる、付記20乃至32の何れか1項に記載の方法。
〔付記34〕
前記基板の前記表面上に前記コーティング試薬の前記フィルムを形成することは、前記組成物の少なくとも1つの構成成分(例えば、前記溶媒)を蒸発させることを含む、付記20乃至33の何れか1項に記載の方法。
〔付記35〕
前記基板の前記表面の前記組成物を乾燥させる前に、前記組成物の少なくとも一部を前記基板から除去することを更に含む、付記33乃至34の何れか1項に記載の方法。
〔付記36〕
前記基板の前記表面上の前記組成物を乾燥することは、前記基板の前記表面上の目に見える組成物が存在しなくなるまで前記基板の前記表面を乾燥することを含む、付記33乃至35の何れか1項に記載の方法。
〔付記37〕
前記フィルムは、約1nm乃至約300ミクロンの厚みを有する、付記20乃至36の何れか1項に記載の方法。
〔付記38〕
前記フィルムは、前記基板の前記表面の少なくとも約50%に渡り均質な厚みを有する、付記20乃至37の何れか1項に記載の方法。
〔付記39〕
前記基板は複数のウェルを有し、及び前記基板の前記表面は、前記複数のウェル中のウェルの表面である第1の部分と、前記複数のウェル中の2つ以上のウェル間の表面である第2の部分とを含み、及び前記フィルムは、前記第1の部分上で、前記第2の部分上の前記フィルムの厚みと比較して、より大きな厚みを有する、付記20乃至38の何れか1項に記載の方法。
〔付記40〕
前記基板は複数のウェルを含み、及び前記基板の前記表面は、前記複数のウェル中のウェルの表面である第1の部分と、前記複数のウェル中の2つ以上のウェル間の表面である第2の部分とを含み、及び前記フィルムは、前記第1の部分上で、前記第2の部分上の前記コーティング試薬の濃度と比較して、より大きな前記コーティング試薬の濃度を有する、付記20乃至39の何れか1項に記載の方法。
〔付記41〕
前記フィルムは、前記基板の前記表面の疎水性を増大させる、付記20乃至40の何れか1項に記載の方法。
〔付記42〕
オイルを前記基板の前記表面上の前記フィルム上に添加する(例えば、前記複数のウェルをシーリングする為に)ことを更に含む、付記20乃至41の何れか1項に記載の方法。
〔付記43〕
前記基板はマイクロウェル反応デバイスであり、任意で前記マイクロウェル反応デバイスは、それぞれ約10アトリットル乃至約100マイクロリットルの体積を有する複数のウェルを含む、付記20乃至42の何れか1項に記載の方法。
〔付記44〕
前記基板はプラスチック表面を含み、任意で前記表面は、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、ポリカーボネート、アクリル、フルオロポリマー、シリコーン、ガラス、ケイ素、及び/若しくは金属を含む、付記20乃至43の何れか1項に記載の方法。
〔付記45〕
前記フィルムは、任意で界面活性剤を含む、水性組成物(例えば、水及び/若しくは水性緩衝剤)に暴露された後、少なくとも約30分間、前記基板の前記表面上に残存する(例えば、はじかれ若しくは跳ね上がって前記フィルムが不連続となることがない)、付記20乃至44の何れか1項に記載の方法。
〔付記46〕
前記基板は、複数のウェルを含み、及び水性組成物が前記基板の前記表面上の前記フィルム上に添加された後、前記ウェルの約10%未満がブリッジングされ及び/若しくは流体的に接続され、及び前記水性組成物を含む前記複数のウェルは、オイルでシーリングされ、任意で前記水性組成物は界面活性剤を含む、付記20乃至45の何れか1項に記載の方法。
〔付記47〕
前記フィルムは、水性組成物が前記表面に接着する及び/若しくは吸着するのを防止し又は前記表面に接着する及び/若しくは吸着する前記水性組成物の量を減少し、任意で前記水性組成物は界面活性剤を含む、付記20乃至46の何れか1項に記載の方法。
〔付記48〕
前記フィルムは、前記基板のオイル(例えば、不混和性のオイル)によるシーリング中の前記基板の水性はじきを、前記フィルムの非存在下でのシーリング中の前記基板の水性はじきと比較して改善する、付記20乃至47の何れか1項に記載の方法。
〔付記49〕
前記オイルは、任意でフッ素化された、ポリシロキサン構造に基づくシリコーンオイル、及び/若しくはフッ素化ポリマー、任意でパーフルオロポリエーテル、任意で式Vにより表される構造を有するヘキサフルオロプロピレンエポキシドの低分子量のフッ素エンドキャップホモポリマーを含み:
【数5】
式中、pは10乃至60の整数である、付記42乃至48の何れか1項に記載の方法。
〔付記50〕
前記フィルムは前記基板の表面特性を改善する、付記20乃至49の何れか1項に記載の方法。
〔付記51〕
前記コーティング試薬は、少なくとも1つの疎水性の部位(例えば、アルキル部位)を含み、及び任意で前記少なくとも1つの疎水性の部位は、前記基板の前記表面と結合及び/若しくは相互作用する、付記20乃至50の何れか1項に記載の方法。
〔付記52〕
前記基板の前記表面の前記フィルムは、前記基板の前記表面への生体分子(例えば、タンパク質及び/若しくは核酸)の接着を、前記フィルムの非存在下での前記基板の前記表面への前記生体分子の接着と比較して減少させる、付記20乃至51の何れか1項に記載の方法。
〔付記53〕
前記基板の前記表面は、前記基板の前記表面を前記コーティング試薬を含む前記組成物と接触させる前に、水性組成物(任意で界面活性剤を含む)と接触している、付記20乃至52の何れか1項に記載の方法。
〔付記54〕
前記基板の前記表面を、前記コーティング試薬を含む前記組成物と接触させる前に、前記基板の前記表面に水性組成物(任意で界面活性剤を含む)を接触させることを更に含む、付記20乃至53の何れか1項に記載の方法。
〔付記55〕
前記基板の表面上にフィルムを含む基板であって、前記フィルムはコーティング試薬を含み、及び前記コーティング試薬はシラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換トリシロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素である、基板。
〔付記56〕
前記コーティング試薬は、3-ドデシルヘプタメチルトリシロキサン、3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、n-オクチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メチルトリ-n-オクチルシラン、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、付記55に記載の基板。
〔付記57〕
前記コーティング試薬は、ミセル、ナノ粒子、量子ドット、及び/若しくはマイクロ粒子に付着されるか又はそれらの形態である、付記55若しくは56に記載の基板。
〔付記58〕
その表面上にフィルムを含むデバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)であって、前記フィルムはコーティング試薬を含み、及び前記コーティング試薬はシラン、シロキサン(例えば、トリシロキサン)、任意でハロゲン(例えば、フッ素)置換トリシロキサン、及び/若しくはハロゲン(例えば、フッ素)置換炭化水素であり、及び任意で前記フィルムは、前記デバイス中の少なくとも1つのチャネルの表面上に存在する、デバイス。