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  • 特許-衣類乾燥機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20240918BHJP
   D06F 58/26 20060101ALI20240918BHJP
   F26B 11/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
D06F58/02 C
D06F58/26
F26B11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021003108
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108205
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠輔
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-151295(JP,U)
【文献】実開昭55-146098(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0211111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/02
D06F 58/26
F26B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が収容された収容室内に加熱空気を供給することによって前記衣類を乾燥させる衣類乾燥機において、
回転すると前記収容室内に空気が供給されることとなる送風ファンと、
前記収容室内に供給された前記空気が排出される排出通路と、
燃料ガスを燃焼させることによって前記排出通路内に炎を放出するガスバーナと、
前記ガスバーナが前記炎を放出する位置よりも下流の前記排出通路内に配置されて、前記収容室内に供給される空気と前記ガスバーナで生じた燃焼排気とを熱交換させることによって、前記収容室内に供給される前記加熱空気を生成する熱交換器と
を備えることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の衣類乾燥機において、
前記熱交換器は、前記ガスバーナが炎を放出する方向の延長線上に配置されている
ことを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか一項に記載の衣類乾燥機において、
前記送風ファンは、前記熱交換器よりも下流に配置されて、前記排出通路内の前記加熱空気を吸い出すことによって、前記収容室内および前記ガスバーナに空気を供給する
ことを特徴とする衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類が収容された収容室内に加熱空気を供給することによって、収容室内の衣類を乾燥させる衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類を収容した収容室内に加熱空気を供給することによって、収容室内の衣類を乾燥させる衣類乾燥機が知られている。加熱空気を生成する方法としては、電気ヒータを用いて空気を加熱することによって生成する方法が広く使用されているが、燃料ガスを燃焼させることによって加熱空気を生成する方法も広く使用されている。この方法では、ガスバーナを用いて燃料ガスを燃焼させることによって高温の燃焼排気を生成し、その燃焼排気を空気で希釈することによって適度な温度の加熱空気を生成して、収容室内に供給するようになっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-277292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、提案されている従来の技術では、燃焼排気を収容室内に供給しているため、何らかの理由で燃料ガスの燃焼状態が悪化して、好ましくない燃焼生成物の濃度が増加すると、収容室内の衣類にダメージを与える虞があるという問題があった。
【0005】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するために成されたものであり、収容室内の衣類にダメージを与える虞のない衣類乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の衣類乾燥機は次の構成を採用した。すなわち、
衣類が収容された収容室内に加熱空気を供給することによって前記衣類を乾燥させる衣類乾燥機において、
回転すると前記収容室内に空気が供給されることとなる送風ファンと、
前記収容室内から前記空気が排出される排出通路と、
前記排出通路内に向けて炎を放出する態様で燃料ガスを燃焼させるガスバーナと、
前記ガスバーナが前記炎を放出する位置よりも下流の前記排出通路内に配置されて、前記収容室内に供給される空気と前記ガスバーナで生じた燃焼排気とを熱交換させることによって、前記収容室内に供給される前記加熱空気を生成する熱交換器と
を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる本発明の衣類乾燥機においては、送風ファンを回転させると収容室内に空気が供給されるようになっており、収容室内で衣類を乾燥させた空気は排出通路に排出される。また、ガスバーナは、燃料ガスを燃焼させることによって排出通路内に炎を放出しており、ガスバーナが炎を放出する位置よりも下流の排出通路内には熱交換器が配置されている。そして熱交換器では、収容室内に供給される空気、ガスバーナで生じた燃焼排気と熱交換ることによって加熱空気に変換される。こうして生成した加熱空気を収容室内に供給することによって、収容室内の衣類を乾燥させる。
【0008】
こうすれば、衣類の乾燥時に糸屑や埃が発生して、加熱空気と一緒に排出通路内に流入しても、ガスバーナの炎で糸屑や埃を焼却することができる。このため、従来の衣類乾燥機のように、糸屑や埃を捕集するためのフィルタを搭載したり、糸屑や埃が溜まったフィルタを定期的に清掃したり交換したりする手間が不要となる。加えて、収容室内の衣類は、燃焼排気と熱交換して生成した加熱空気によって乾燥されるので、収容室内の衣類が燃焼排気に晒されることがない。このため、何らかの理由で燃料ガスの燃焼不良が発生した場合でも、燃焼排気中の好ましくない燃焼生成物(例えば、煤や、窒素酸化物などの酸化物)などによって収容室内の衣類がダメージを受ける虞を回避することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の衣類乾燥機においては、ガスバーナが炎を放出する方向の延長線上に、熱交換器を配置してもよい。
【0012】
こうすれば、炎からの輻射熱が効率よく熱交換器に伝わるので、効率よく加熱空気を生成することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の衣類乾燥機においては、熱交換器よりも下流に送風ファンを配置しておき、送風ファンで排出通路内の加熱空気を吸い出すことによって、収容室内およびガスバーナに空気を供給するようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、収容室内に加熱空気を供給する機能と、ガスバーナに燃焼用空気を供給する機能とを、1つの送風ファンで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の衣類乾燥機1の内部構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施例の衣類乾燥機1の大まかな内部構造を示す説明図である。本実施例の衣類乾燥機1は、直方体形状の本体ケース10の内部に、円筒形状の回転ドラム100が搭載された構造となっている。回転ドラム100は、両端が開口した円筒形状の胴部101に対して、奥側の端面を塞いで円板形状の奥板102が嵌め込まれた形状となっており、胴部101の手前側の端面には、円環形状のリング板12が嵌め込まれている。また、リング板12の内周側は曲げ加工されることによってバーリング形状に形成されており、バーリング形状の内周面には、一端側がフランジ状に拡径した大径の円筒パイプ13が組み付けられている。
【0017】
円筒パイプ13は、拡径したフランジ部分で本体ケース10に組み付けられている。リング板12は円筒パイプ13を介して本体ケース10に固定されているが、回転ドラム100はリング板12に対して回転可能となっている。更に、回転ドラム100の奥側の端面に嵌め込まれた奥板102の中心位置には、回転ドラム100の外側に向かって支持軸14が取り付けられている。このため回転ドラム100は、手前側がリング板12によって支えられ、奥側が支持軸14で軸支されることによって回転可能となっている。
【0018】
円筒パイプ13の内側は衣類投入口11iを形成しており、通常状態では衣類投入口11iは開閉扉15によって塞がれているが、開閉扉15を開くと衣類投入口11iから回転ドラム100内に衣類を投入可能となる。回転ドラム100の下方には電動モータ20が搭載されており、電動モータ20を回転させると、その回転トルクが伝動ベルト21によって回転ドラム100に伝わり、支持軸14で軸支された回転ドラム100が回転するようになっている。尚、本実施例の回転ドラム100は、本発明における「収容室」に対応する。
【0019】
また、回転ドラム100の奥板102には、支持軸14が取り付けられた中心位置を取り囲むようにして、複数の排出口103が形成されている。詳細には後述するが、本実施例の衣類乾燥機1は回転ドラム100を回転させながら、回転ドラム100内に加熱空気を供給することによって、回転ドラム100内の衣類を乾燥させており、衣類を乾燥させた加熱空気は排出口103から排出されるようになっている。更に、回転ドラム100の内側から見て奥板102の向こう側には、複数の排出口103を覆うようにして排出口カバー16が取り付けられており、排出口103から排出された加熱空気は排出口カバー16の内部の空間に流入する。
【0020】
また、排出口カバー16からは排出通路17が引き出されており、この排出通路17は、排出ファン18fが収容された排出ファン室18に接続されている。本実施例の衣類乾燥機1では、排出通路17の途中に直管部分が設けられており、直管部分にはガスバーナ30が搭載されている。このことと対応して排出通路17は、排出口カバー16と直管部分とを接続する上流側排出通路17aと、直管部分である中間排出通路17bと、中間排出通路17bと排出ファン室18とを接続する下流側排出通路17cとを備えている。更に、中間排出通路17b内には、ガスバーナ30よりも下流の位置に熱交換器40が搭載されている。中間排出通路17b内にガスバーナ30が搭載されている理由や、ガスバーナ30の下流に熱交換器40が搭載されている理由については後述する。
【0021】
排出ファン18fは、伝動ベルト22を介して電動モータ20に接続されており、電動モータ20を回転させると排出ファン18fが回転して、回転ドラム100内の加熱空気が排出口103から吸い出されるようになっている。そして、排出口103から吸い出された加熱空気は、上流側排出通路17a、中間排出通路17b、下流側排出通路17cを
経由して排出ファン室18に流入した後、本体ケース10の上面に開口した排気口19から衣類乾燥機1の外部に排気される。尚、本実施例の排出ファン18fは、本発明における「送風ファン」に対応する。
【0022】
ガスバーナ30は、中間排出通路17bの上流側の端部に搭載されており、ガスバーナ30にはガスパイプ31が接続されている。更に、ガスバーナ30の周囲には空気取入口30aが形成されている。このため、排出ファン18fを回転させると、空気取入口30aから中間排出通路17b内に空気が流入する。その状態でガスパイプ31からガスバーナ30に燃料ガスを供給して、図示しない点火プラグで燃料ガスに点火すると、ガスバーナ30で燃料ガスの燃焼が開始される。
【0023】
また、ガスバーナ30の下流には熱交換器40が搭載されている。熱交換器40は、中空で板形状のプレート体41が隙間を空けて重ねられた構造となっている。このため、ガスバーナ30で燃料ガスが燃焼することによって生成された燃焼排気は、プレート体41の間の隙間を通過して排出ファン室18に向かって流れていくことになる。また、熱交換器40は、隣接するプレート体41同士が連通することによって、全体として一続きの内部通路を形成しており、内部通路の一端側には通路入口42が形成され、内部通路の他端側は温風通路34に接続されている。そして温風通路34は、リング板12に形成された導入口35に接続されている。このため、排出ファン18fを回転させて回転ドラム100内の空気を吸い出すと、回転ドラム100内が負圧となり、その負圧によって、本体ケース10内の空気が通路入口42から吸い込まれ、熱交換器40および温風通路34を通過して、導入口35から回転ドラム100に流入する。また、本体ケース10の底面には複数の空気取入口10iが形成されており、本体ケース10内には空気取入口10iから外部の空気が供給されるようになっている。
【0024】
上述した構造を有する衣類乾燥機1では、次のようにして衣類を乾燥させる。先ず、開閉扉15を開いて、衣類投入口11iから回転ドラム100内に衣類を投入した後、開閉扉15を閉じ電動モータ20を回転させる。すると、回転ドラム100および排出ファン18fが回転すると共に、回転ドラム100内の空気が排出ファン18fによって吸い出され、排出通路17(上流側排出通路17a、中間排出通路17b、下流側排出通路17c)および排出ファン室18を通って、排気口19から排出される。また、回転ドラム100内の空気が吸い出されると、回転ドラム100が負圧になるため、通路入口42から吸い込まれた空気が熱交換器40および温風通路34を通って、導入口35から回転ドラム100に流入する。
【0025】
この段階では、回転ドラム100に流入する空気は加熱されていないが、ガスバーナ30で燃料ガスの燃焼を開始すると、燃焼によって生じた高温の燃焼排気が熱交換器40のプレート体41の間を通過する。その結果、熱交換器40では、通路入口42から流入した空気が、燃焼排気と熱交換することによって加熱空気となり、温風通路34を経由して導入口35から回転ドラム100内に流入する。そして、導入口35から流入した加熱空気は、回転ドラム100内を旋回することによって回転ドラム100内の衣類を乾燥させる。その後、加熱空気は、回転ドラム100の排出口103から流出し、排出口カバー16内を通って排出通路17へと排出される。
【0026】
図1中に示した白抜きの矢印は、熱交換器40で生成された加熱空気が、回転ドラム100内で衣類を乾燥させた後、排出通路17から排出される様子を表している。一方、図1中で斜線を付した矢印は、ガスバーナ30で生成された燃焼排気の流れを表している。ガスバーナ30は中間排出通路17bの上流側に搭載されているので、ガスバーナ30で生成された燃焼排気は中間排出通路17bを下流に向かって流れて行く。そして、熱交換器40のプレート体41の間の隙間を通過した後、中間排出通路17bから下流側排出通路17cを経由して排出ファン室18内に流入する。その後、排出ファン18fによって排気口19から衣類乾燥機1の外部に排出される。このように、本実施例の衣類乾燥機1では、燃焼排気は熱交換器40で熱交換した後、外部に排出されてしまうので、回転ドラム100内の衣類が燃焼排気に晒されることがない。このため、何らかの理由でガスバーナ30の燃焼状態が悪化して、燃焼排気中の好ましくない燃焼生成物(例えば、煤や、窒素酸化物などの酸化物)が増加した場合でも、衣類がダメージを受ける虞がない。
【0027】
また、衣類の乾燥時には、回転ドラム100を回転させながら、回転ドラム100内に加熱空気を供給することによって衣類を撹拌させるので、衣類同士が擦れ合うことによって糸屑などの埃が発生することがある。この糸屑や埃などが加熱空気と一緒に排出通路17に流入すると、排出通路17内に滞積して加熱空気を十分に排出できなくなり、衣類の乾燥に支障を来たす虞がある。このため、従来の衣類乾燥機では、排出通路17よりも上流の位置にフィルタを搭載しておき、加熱空気と一緒に流れてきた糸屑などを捕捉するようになっており、定期的にフィルタの清掃や交換などが必要となる。
【0028】
これに対して本実施例の衣類乾燥機1では、加熱空気を生成するためのガスバーナ30が、排出通路17(図1では中間排出通路17b)に搭載されている。このため、衣類の乾燥によって生じた糸屑などが、加熱空気と一緒に排出通路17内に流入しても、ガスバーナ30から排出通路17内に放出される炎で糸屑などを焼却することができる。その結果、フィルタなどを搭載する必要がなくなり、更に、定期的なフィルタの清掃や交換なども不要となる。また、ガスバーナ30で生成した燃焼排気は、排出通路17および排出ファン室18を経由して衣類乾燥機1の外部に排出されてしまうため、たとえ糸屑などを焼却する際に煤などが生じても、回転ドラム100内の衣類が煤で汚れる虞も生じない。
【0029】
また、本実施例の衣類乾燥機1では、直管形状に形成された中間排出通路17bの上流側にガスバーナ30が搭載されており、ガスバーナ30よりも下流の位置に熱交換器40が搭載されている。そしてガスバーナ30の炎は、下流に搭載された熱交換器40に向かって放出されるようになっている。こうすれば、炎の輻射熱が熱交換器40に直接届くので、熱交換器40を効率よく加熱することができる。また、燃焼によって生じた燃焼排気が、熱交換器40に達するまでの中間排出通路17bの内周面に接触して熱を奪われることも抑制されるので、この意味からも熱交換器40に効率よく熱を伝えることができる。その結果、熱交換器40で効率よく加熱空気を生成することが可能となる。
【0030】
加えて、本実施例の衣類乾燥機1では、排出ファン18fを回転させると排出通路17内が負圧となるので、ガスバーナ30での燃焼に使用する空気を空気取入口30aから取り入れることができる。更に、排出通路17内の負圧で回転ドラム100内の加熱空気が吸い込まれることで回転ドラム100内も負圧となり、この負圧によって熱交換器40の通路入口42から空気を吸い込むことで、回転ドラム100に加熱空気を供給することもできる。このように、ガスバーナ30に燃焼用空気を供給する機能と、回転ドラム100内に加熱空気を供給する機能とを、1つの排出ファン18fで実現することができるので、複数の送風ファンを搭載しておく必要がなく、小型で安価な衣類乾燥機1を実現することが可能となる。
【0031】
以上、本実施例の衣類乾燥機1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…衣類乾燥機、 10…本体ケース 10i…空気取入口、
11i…衣類投入口、 12…リング板、 13…円筒パイプ、
14…支持軸、 15…開閉扉、 16…排出口カバー、
17…排出通路、 17a…上流側排出通路、 17b…中間排出通路、
17c…下流側排出通路、 18…排出ファン室、 18f…排出ファン、
19…排気口、 20…電動モータ、 21…伝動ベルト、
22…伝動ベルト、 30…ガスバーナ、 30a…空気取入口、
31…ガスパイプ、 34…温風通路、 35…導入口、 40…熱交換器、
41…プレート体、 42…通路入口、 100…回転ドラム、
101…胴部、 102…奥板、 103…排出口。
図1