(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】排気ユニット
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20240918BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20240918BHJP
【FI】
F01N1/08 K
F01N13/08 A
(21)【出願番号】P 2021004212
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】作石 裕磨
(72)【発明者】
【氏名】横山 弘明
(72)【発明者】
【氏名】梅本 博
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0096805(US,A1)
【文献】特開2015-113776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0029135(US,A1)
【文献】特開昭59-183018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0227812(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218830(US,A1)
【文献】実開昭63-154718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を備える排気ユニットであって、
前記複数の部品として、第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材は、
板状に構成された本体部と、
前記本体部から立ち上がる筒状の立ち上がり部と、を備え、
前記第2部材は、前記第1部材の前記立ち上がり部と
摺動可能に接触した状態で位置し、
前記立ち上がり部は、前記第1部材及び前記第2部材の接触状態を緩和する緩和部、
を備える排気ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ユニットであって、
前記第2部材は、排気の流路となるパイプとして構成され、
前記本体部は、前記第2部材が挿通される挿通孔を備え、
前記立ち上がり部は、前記挿通孔を取り囲み、前記パイプと接触するバーリング部を備える
排気ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載を排気ユニットであって、
前記第2部材は、前記本体部を取り囲んで配置される筒状部材として構成され、
前記立ち上がり部は、前記本体部の外周に沿って配置され、前記第2部材の内周面と接触するように構成される
排気ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の排気ユニットであって、
前記緩和部は、前記立ち上がり部のうちの一部の部位の立ち上がり高さが、当該立ち上がり部の他の部位の立ち上がり高さよりも低く構成される
排気ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の排気ユニットであって、
前記緩和部は、前記立ち上がり部の一部を高さ方向に切り欠いた切り欠き部を備える
排気ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の排気ユニットであって、
前記緩和部は、前記立ち上がり部の一部を切り欠いた形状を有する切り欠き部を備え、
前記切り欠き部は、前記立ち上がり部の先端から前記本体部に向かうにつれて、切り欠かれた部位の幅が徐々に狭くなる
ように構成された排気ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の排気ユニットであって、
前記緩和部は、前記切り欠き部が前記本体部の領域まで延びるように構成される
排気ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の部品を備える排気ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、排気ユニットとしてのマフラが開示されている。このマフラでは、マフラの内部空間を区分するセパレータを備える。セパレータには、パイプが挿通される挿通孔を備える。そして、挿通孔の周囲には、バーリング加工による立ち上がり部が形成されている。パイプが熱変形により伸縮できるようにするため、パイプはセパレータに固定されることなく挿通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、パイプが熱変形により伸縮する際に、パイプとセパレータとの摩擦によって大きな摩擦音が発生する可能性がある。この問題は、排気によって熱変形する複数の部品が立ち上がり部で接触するように構成された排気ユニットであれば、同様に生じる可能性がある。
【0005】
本開示の1つの局面は、複数の部品を備える排気ユニットにおいて、複数の部品が立ち上がり部で接触する場合に、大きな摩擦音が発生することを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、複数の部品を備える排気ユニットである。排気ユニットは、複数の部品として、第1部材及び第2部材を備える。
第1部材は、本体部と、立ち上がり部と、を備える。本体部は、板状に構成される。立ち上がり部は、本体部から立ち上がる筒状の部位である。第2部材は、第1部材の立ち上がり部と接触した状態で位置する。立ち上がり部は、第1部材及び第2部材の接触状態を緩和する緩和部、を備える。
【0007】
このような構成によれば、緩和部が立ち上がり部での第1部材及び第2部材の接触状態、例えば第1部材及び第2部材が接触する力、を緩和するので、第1部材及び第2部材に熱変形が生じた際に、第1部材及び第2部材の間に生じる摩擦力の大きさを軽減することができる。よって、第1部材及び第2部材の間で、大きな摩擦音が発生することを抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、第2部材は、排気の流路となるパイプとして構成されてもよい。本体部は、第2部材が挿通される挿通孔を備えてもよい。立ち上がり部は、挿通孔を取り囲み、パイプと接触するバーリング部として構成されてもよい。
このような構成によれば、熱変形によって第1部材と第2部材との間の接触する力が大きくなろうとする際に、緩和部によって第1部材の熱変形で発生する摩擦力が緩和されやすくなる。よって、第1部材のバーリング部と第2部材との間の摩擦力によって生じる摩擦音を抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、第2部材は、本体部を取り囲んで配置される筒状部材として構成されてもよい。立ち上がり部は、本体部の外周に沿って配置され、第2部材の内周面と接触するように構成されてもよい。
このような構成によれば、第1部材と、第1部材の外側に配置される第2部材との間の摩擦力によって生じる摩擦音を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、緩和部は、立ち上がり部のうちの一部の部位の立ち上がり高さが、当該立ち上がり部の他の部位の立ち上がり高さよりも低く構成されてもよい。
このような構成によれば、立ち上がり高さを確保することで第1部材の強度を確保しつつ、緩和部が立ち上がり部の他の部位の立ち上がり高さよりも低く構成されるので、第2部材の熱変形時に第1部材の立ち上がり部が変形しやすく構成できる。よって、第1部材と第2部材との間の摩擦力を低減することができる。
【0011】
本開示の一態様では、緩和部は、立ち上がり部の高さが連続的に変化するように構成された波状部を備えてもよい。
このような構成によれば、緩和部を、高さが連続的に変化する波状部として構成できるので、緩和部での応力集中の発生を抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、緩和部は、立ち上がり部の一部を高さ方向に切り欠いた切り欠き部を備えてもよい。
このような構成によれば、緩和部を切り欠き部として構成できるので、緩和部を簡素な形状とすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、緩和部は、立ち上がり部の一部を切り欠いた形状を有する切り欠き部を備え、切り欠き部は、立ち上がり部の先端から本体部に向かうにつれて、切り欠かれた部位の幅が徐々に狭くなるように構成されてもよい。
このような構成によれば、緩和部は、先端から本体部に向かうにつれて切り欠き部の幅が徐々に狭くなるように構成されるので、緩和部での応力集中を抑制できる。よって、強度の維持及び摩擦力の抑制を両立しやすくすることができる。
【0014】
本開示の一態様では、緩和部は、切り欠き部の本体部側の端部における形状が曲線になるように構成されてもよい。
このような構成によれば、切り欠き部の本体部側の端部での応力集中の発生を抑制でき、加工による割れ等の不具合が生じることを抑制できる。
【0015】
本開示の一態様では、緩和部は、切り欠き部が本体部の領域まで延びるように構成されていてもよい。
このような構成によれば、第1部材と第2部材との間の摩擦力をより抑制することができる。
【0016】
本開示の一態様では、当該排気ユニットはマフラとして構成されてもよい。第1部材は、マフラにおける内部空間を仕切るセパレータとして構成されてもよい。第2部材は、セパレータに組み合わされる筒状の部材として構成されてもよい。
【0017】
このような構成によれば、マフラにて発生する大きな摩擦音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】セパレータとパイプとの間の摩擦力の発生状態を示す模式図である。
【
図4】伸縮量と弾性力との関係を示すグラフである。
【
図7】別形態の緩和部を示す端面図(その1)である。
【
図8】別形態の緩和部を示す端面図(その2)である。
【
図9】別形態の緩和部を示す端面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.実施形態の構成と本開示の構成と関係]
実施形態でのマフラ1は、本開示での排気ユニットに相当する。なお、排気ユニットは、内燃機関の排気が導入される排気システムの一部を構成する。実施形態でのセパレータ50A~50Jは、本開示での第1部材に相当し、実施形態でのインレットパイプ40、アウトレットパイプ45、及び外殻部材20は、本開示での第2部材に相当する。また、実施形態での第1穴部56A,56B,56C、第2穴部55A,55B,55Cは、本開示での挿通孔に相当し、実施形態での外殻部材20は、本開示での筒状部材に相当する。
【0020】
[1-2.構成]
実施形態のマフラ1は、例えば、
図1に示すように、第1方向17に延びる柱状に形成されており、第1方向17に直交する断面が略楕円形に構成される。一例として、マフラ1は、該断面における短軸が略上下方向に延びるように車両に搭載される。以後、車両に搭載された状態において、マフラ1の該断面における長軸に沿った一方の側を右側、他方の側を左側と記載する。
【0021】
この実施形態での第1方向17は、後述する第1穴部56A,56B,56C、第2穴部55A,55B,55Cの軸方向と実質的に一致する。なお、第1穴部56A,56B,56C及び第2穴部55A,55B,55Cにおける、第1方向に延びる断面の形状は、円形であったり、多角形状であったり、外周に凹凸を有する形状であったりしてもよい。
【0022】
マフラ1は、複数の部品を組み合わせて構成される。ここでの部品とは、例えば、排気による熱の影響を受ける部材、排気管の一部を構成する部材、排気管と接触する部材、排気管を保持する部材等が含まれうる。
【0023】
マフラ1は、排気音を低減させるため、車両のエンジン等の内燃機関からの排気の流路に設けられ、排気音を低減するための内部空間10を有する。マフラ1は、複数の部品として、外殻部材20と、インレットパイプ40と、アウトレットパイプ45と、第1セパレータ50Aと、第2セパレータ50Bと、第3セパレータ50Cとを備える。以下では、第1セパレータ50A、第2セパレータ50B、第3セパレータ50Cを、各セパレータ50とも表記する。
【0024】
内部空間10は、外殻部材20と各セパレータ50とによって、第1領域11、第2領域12、第3領域13、第4領域14に区分される。外殻部材20とともに形成される前述の複数の領域において、第1領域11は、第1エンドプレート25と第1セパレータ50Aとの間の領域であり、第2領域12は、第1セパレータ50Aと第2セパレータ50Bとの間の領域である。第3領域13は、第2セパレータ50Bと第3セパレータ50Cとの間の領域であり、第4領域14は、第3セパレータ50Cと第2エンドプレート30との間の領域である。
【0025】
[外殻部材]
外殻部材20は、内部空間10をマフラ1の外部から隔てる壁状の部材である。外殻部材20は、外周部21と、第1エンドプレート25と、第2エンドプレート30とを備える。
【0026】
外周部21は、内部空間10を囲み、第1方向17に延びる筒状の部位である。外周部21は、外周の長さが略一定であり、第1方向17に直交する断面は略楕円形である。
第1エンドプレート25及び第2エンドプレート30は、略楕円形の蓋状の部材である。第1エンドプレート25は、外周部21の一方側の端部に形成された開口を覆い、第2エンドプレート30は、外周部21の他方側の端部に形成された開口を覆う。
【0027】
第1エンドプレート25には、インレットパイプ40が挿通される第1孔部27が形成されている。また、第2エンドプレート30には、アウトレットパイプ45が挿通される第2孔部32が形成されている。
【0028】
[インレットパイプ及びアウトレットパイプ]
インレットパイプ40は、第1方向17に沿って略直線状に延びるパイプ状の部材であり、第1エンドプレート25を貫通して配置される。インレットパイプ40の太さは、略一定となっており、インレットパイプ40における第1方向17に直交する断面は、一例として、略円形に構成される。
【0029】
インレットパイプ40は、第1エンドプレート25から内部空間10に突出し、第1セパレータ50A、第2セパレータ50B、第3セパレータ50Cの第1穴部56A,56B,56Cを貫通する。
【0030】
この構成により、インレットパイプ40の外周面は、各セパレータ50の第1穴部56A,56B,56Cの縁部により支持される。また、インレットパイプ40の先端部42は、第4領域14に配置される。そして、インレットパイプ40に流入した排気は、インレットパイプ40を通過し、先端部42から第4領域14へと流出する。
【0031】
一方、アウトレットパイプ45もまた、第1方向17に沿って略直線状に延びるパイプ状の部材であり、第2エンドプレート30を貫通して配置される。アウトレットパイプ45の太さは、略一定となっており、アウトレットパイプ45における第1方向17に直交する断面は、一例として、略円形に構成される。
【0032】
アウトレットパイプ45は、第2エンドプレート30から内部空間10に突出し、各セパレータ50の第2穴部55A,55B,55Cを貫通する。つまり、アウトレットパイプ45の外周面は、各セパレータ50の第2穴部55A,55B,55Cの縁部により支持される。また、アウトレットパイプ45の先端部46は、第1領域11に配置され、第1エンドプレート25に対面する。そして、アウトレットパイプ45の先端部46からアウトレットパイプ45に流入した排気は、アウトレットパイプ45を通過し、マフラ1の外部へと流出する。
【0033】
なお以下では、インレットパイプ40及びアウトレットパイプ45を併せて、単にパイプ40,45とも表記する。
[セパレータ]
各セパレータ50は、内部空間10を仕切る板状の部材である。各セパレータ50は、第1方向17に沿って並び、且つ、後述する本体部51を構成する面が、第1方向17に略直交するように配置される。各セパレータ50は、それぞれ、第1及び第2エンドプレート25,30に対面して配置され、各セパレータ50は、第1エンドプレート25と第2エンドプレート30との間に位置する。また、各セパレータ50の縁部57(
図2参照)は、それぞれ、例えば溶接により、外周部21の内壁に接合される。
【0034】
なお、第2セパレータ50Bは第1セパレータ50Aと同様の構成である。また、第3セパレータ50Cは、第1セパレータ50Aと若干構成が異なるが、概ね同様の構成であり、かつ同様の機能を有する。したがって、以下では、各セパレータ50を代表して第1セパレータ50Aについて説明する。なお、第2セパレータ50B及び第3セパレータ50Cは第1セパレータ50Aと同様の機能を有していればよく、同様の構成である必要はない。
【0035】
第1セパレータ50Aは、
図2に示すように、本体部51と、立ち上がり部52と、縁部57と、を備える。
本体部51は、平面、或いは曲率半径が大きな曲面(すなわち平面に近い曲面)を有する板状に構成された部位である。本体部51は、第1及び第2エンドプレート25,30に対面し、略楕円形に構成される。本体部51には、第1穴部56A及び第2穴部55Aと、複数の孔58とが形成されている。第1穴部56A及び第2穴部55Aは、前述のようにパイプ40,45が挿通される部位である。
【0036】
複数の孔58は、第1領域11~第4領域14を連通させるための孔であり、第1領域11~第4領域14に存在する排気は、複数の孔58を介して、他の領域に流入し得る。
立ち上がり部52及び縁部57は、何れも、本体部51から立ち上がる筒状の部位である。縁部57は、本体部51を取り囲むように配置され、本体部51から垂直に立ち上がる壁面として構成される。
【0037】
なお、立ち上がり部52及び縁部57での「筒状の部位」とは、何らかの物体を取り囲むように配置された、1又は複数の壁面状に構成された部位を示す。「筒状の部位」は、何らかの物体の全周を取り囲む必要はなく、1又は複数に分割された部位によって、何らかの物体の一部を取り囲んでいればよい。本実施形態の構成では、立ち上がり部52は、第1穴部56A及び第2穴部55Aの少なくとも一部を取り囲んでいればよい。また、縁部57は、本体部51の少なくとも一部を取り囲んでいればよい。
【0038】
立ち上がり部52は、バーリング部53及び緩和部54Aを備える。バーリング部53は、例えば周知のバーリング加工等によって、第1穴部56A及び第2穴部55Aを打ち抜く際に、第1穴部56A及び第2穴部55Aの周囲にそれぞれ形成される。バーリング部53は、第1穴部56A及び第2穴部55Aを取り囲むように、本体部51から垂直に立ち上がる壁面として構成される。
【0039】
バーリング部53は、本体部51を補強する機能を備える。また、バーリング部53は、前述した、第1穴部56A,56B,56Cの縁部、及び第2穴部55A,55B,55Cの縁部に該当し、パイプ40,45と接触することでパイプ40,45を支持する機能を備える。なお、パイプ40,45は、第1穴部56A及び第2穴部55Aに圧入され、バーリング部53と接触することで、第1セパレータ50Aとの間で位置決めされる。
【0040】
ここで、本実施形態でのパイプ40,45は、溶接等によって第1セパレータ50Aに完全に固定されるわけではない。また、パイプ40,45は、第1穴部56A及び第2穴部55Aに圧入される必要はなく、バーリング部53と接触するように挿入されていてもよい。
【0041】
本実施形態の構成では、
図3に示すように、パイプ40,45に熱変形が生じるとパイプ40,45が伸縮し、本体部51及びバーリング部53が変形する。具体的には、内燃機関から供給される排気が高温の場合、パイプ40,45は膨張して伸びやすく、運転停止時などで高温の排気がパイプ40,45に供給されない場合、パイプ40,45は元の大きさに戻りやすい。
【0042】
この際、本体部51及びバーリング部53には弾性力が生じる。本体部51及びバーリング部53に弾性力が生じると、パイプ40,45とバーリング部53との間に摩擦力Fが生じ、摩擦力Fが弾性力に耐えられなくなると、本体部51及びバーリング部53が元の形状に戻ろうとする。この際、バーリング部53がパイプ40,45との間で擦れるために大きな摩擦音が発生する場合がある。
【0043】
バーリング部53とパイプ40,45との間で発生する摩擦音の大きさは、本体部51及びバーリング部53に生じる弾性力が大きくなるにつれて大きくなる傾向がある。つまり、
図4に示すように、摩擦力Fが弾性力に耐えられる限り、弾性力はパイプ40,45の伸縮量が大きくなるにつれて大きくなる。しかし、弾性力が大きくなるまでに、本体部51及びバーリング部53が元の形状に戻ってしまえば、弾性力が大きくならないため、摩擦音は大きくならない。
【0044】
換言すれば、セパレータ50Aは、
図4に示すように、伸縮量がより大きなΔbに到達してから弾性力が開放されるのではなく、伸縮量がより小さなΔaの時点で弾性力が開放されるように構成されればよい。
【0045】
このように構成するためには、最大の摩擦力Fが小さくなるようにすればよい。本実施形態では、バーリング部53とパイプ40,45との間の接触状態を緩和するように構成し、特に、バーリング部53とパイプ40,45との間の接触面における垂直抗力Nがより小さくするように構成する。
【0046】
具体的には、立ち上がり部52は、
図2に示すように、緩和部54A、を備える。緩和部54Aは、セパレータ50A及びパイプ40,45の接触状態を緩和するための加工が施された部位である。緩和部54Aでは、立ち上がり部52のうちの一部の部位の立ち上がり高さが、当該立ち上がり部52の他の部位の立ち上がり高さよりも低くなるように構成される。
【0047】
なお、緩和部54Aにおける接触状態を緩和するための加工は、立ち上がり部52が形成される際に同時に形成されてもよいし、立ち上がり部52が形成された後に別工程で形成されてもよい。
【0048】
本実施形態のバーリング部53では、接触状態を緩和するための加工として、立ち上がり部52(ここではバーリング部53)の一部を切り欠く加工が採用され、緩和部54Aは、この加工による切り欠き部として構成される。そして、緩和部54Aは、バーリング部53の先端(すなわち最も本体部51から遠い部位)から根元(すなわち最も本体部51に近い部位)に向かうにつれて、切り欠き部の幅が徐々に狭くなるように構成される。
【0049】
さらに、緩和部54Aは、切り欠き部の本体部51側の端部における形状が曲線になるように構成されている。切り欠き部の本体部51側の端部における応力集中の発生を抑制するためである。
このように緩和部54Aを設けることで、緩和部54Aを設けない場合よりも、バーリング部53とパイプ40,45との間の接触面における垂直抗力Nがより小さくなり、セパレータ50A及びパイプ40,45の接触状態を緩和できる。
【0050】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、複数の部品を備えるマフラ1である。マフラ1は、複数の部品として、各セパレータ50及びパイプ40,45を備える。
【0051】
各セパレータ50は、本体部51と、立ち上がり部52と、を備える。本体部51は、面状に構成される。立ち上がり部52は、本体部51から立ち上がる筒状の部位である。パイプ40,45は、各セパレータ50の立ち上がり部52と接触した状態で、各セパレータ50に対して位置決めされるように構成される。立ち上がり部52は、各セパレータ50及びパイプ40,45の接触状態を緩和するための加工が施された緩和部54A、を備える。
【0052】
このような構成によれば、緩和部54Aが立ち上がり部52での各セパレータ50及びパイプ40,45の接触状態を緩和できる。このため、各セパレータ50及びパイプ40,45に熱変形が生じた際に、各セパレータ50及びパイプ40,45の間に生じる摩擦力の大きさを軽減することができる。よって、各セパレータ50及びパイプ40,45の間で、大きな摩擦音が発生することを抑制することができる。
【0053】
(1b)本開示の一態様では、本体部51は、排気の流路となるパイプ40,45が挿通される第1穴部56A,56B,56C、及び第2穴部55A,55B,55Cを備える。立ち上がり部52は、第1穴部56A,56B,56C、及び第2穴部55A,55B,55Cを取り囲み、パイプ40,45と接触するバーリング部53を備える。
このような構成によれば、各セパレータ50と、各セパレータ50に挿通されるパイプ40,45との間の摩擦力によって生じる摩擦音を抑制することができる。
【0054】
(1c)本開示の一態様では、緩和部54Aは、立ち上がり部52のうちの一部の部位の立ち上がり高さが、当該立ち上がり部52の他の部位の立ち上がり高さよりも低く構成される。
このような構成によれば、立ち上がり高さを確保することで各セパレータ50の強度を確保しつつ、各セパレータ50とパイプ40,45との間の摩擦力を低減することができる。
【0055】
(1d)本開示の一態様では、緩和部54Aは、立ち上がり部52の一部を切り欠いた形状を有する切り欠き部を備え、切り欠き部は、先端から本体部51側に向かうにつれて、切り欠き部の幅が徐々に狭くなるように構成される。
このような構成によれば、強度の維持と摩擦力の抑制を両立しやすくすることができる。
【0056】
(1e)本開示の一態様では、緩和部54Aは、切り欠き部の本体部51側の端部における形状が曲線になるように構成される。
このような構成によれば、切り欠き部の本体部51側での応力集中の発生を抑制でき、加工による割れ等の不具合が生じることを抑制できる。
【0057】
(1f)本開示の一態様では、各セパレータ50は、マフラ1における内部空間10を仕切る各セパレータ50として構成される。パイプ40,45は、各セパレータ50に組み合わされる筒状の部材として構成される。
このような構成によれば、マフラ1にて発生する大きな摩擦音を抑制することができる。
【0058】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0059】
[2-1.第1変形例]
上記実施形態の緩和部54Aでは、切り欠き部が本体部51の領域まで到達しない程度に延びていたが、これに限定されるものではない。例えば、
図5に示す第1変形例のセパレータ50Dのように構成してもよい。セパレータ50Dでの緩和部54Bは、切り欠き部が本体部51の領域まで延びるように構成されてもよい。
【0060】
このような構成によれば、バーリング部53がより小さな力で変位できるように構成するので、各セパレータ50とパイプ40,45との間の摩擦力をより抑制することができる。
【0061】
[2-2.第2変形例]
上記実施形態では、緩和部54Aが、比較的幅が広い切り欠き部として構成されたが、これに限定されるものではない。例えば、
図6に示す第2変形例のセパレータ50Eのように構成してもよい。セパレータ50Eでの緩和部54Cは、立ち上がり部52の一部を高さ方向に切り欠いた切り欠き部として構成されてもよい。ここでの切り欠き部は、比較的幅が狭い溝部であるスリットとして構成される。
【0062】
より詳細には、スリットは、立ち上がり部52における周方向の長さ、すなわち切り欠き部の幅よりも、立ち上がり部52における高さ方向の長さ、すなわち切り欠き部の長さが長いものを示す。
このような構成によれば、緩和部54Cをスリットとして構成できるので、緩和部54Cを簡素な形状とすることができる。
【0063】
[2-3.緩和部の形状の変形例]
図7~
図9に示すように、緩和部54D~54Hの切り欠き部の幅、及び切り欠き部の長さについては任意に設定してもよい。例えば、
図7に示す緩和部54Dのように、切り欠き部の幅が比較的狭く設定されていてもよいし、
図8に示す緩和部54Fのように、切り欠き部の幅が比較的広く設定されていてもよい。また、
図9に示す緩和部54Hのように、切り欠き部の上端部分の幅が徐々に拡大するように構成されていてもよい。
【0064】
また或いは、
図7に示す緩和部54D及び
図8に示す緩和部54Fのように、切り欠き部の深さが比較的浅く設定されてもよいし、
図7の破線で示す緩和部54F及び
図8の破線で示す緩和部54Gのように、切り欠き部の深さが比較的深く設定されてもよい。
【0065】
[2-4.第3~第5変形例]
図10~
図12に示すように、緩和部54Cの位置は任意に設定することができる。なお、
図10~
図12では、スリットとして構成された緩和部54Cを例示しているが、緩和部54Cの形状は任意に設定でき、また、緩和部54C毎に異なる形状を採用してもよい。
【0066】
図10に示す第3変形例のセパレータ50Fでは、それぞれのバーリング部53に1つずつの緩和部54Cが配置され、これらの緩和部54Cが互いに最も遠くなる部位に配置される。
図11に示す第4変形例のセパレータ50Gでは、各バーリング部53の周上において対向する位置に、それぞれ緩和部54Cが配置される。
図11に示す例では、各バーリング部53に2つずつの緩和部54Cを備え、
図12に示す第5変形例のセパレータ50Hでは、各バーリング部53に4つずつの緩和部54Cを備える。
【0067】
[2-5.第6変形例]
図13の第6変形例のセパレータ50Iに示すように、立ち上がり部52は高さが一定である必要はない。すなわち、緩和部54Iは、立ち上がり部52の高さが連続的に変化するように構成された波状部として構成されてもよい。
このような構成によれば、緩和部54Iが、高さが連続的に変化する波状部として構成されるので、緩和部54Iを設けることによる応力集中の発生を抑制できる。なお、波状部として構成された緩和部54Iと、他の緩和部(例えば、緩和部54C等)とを組み合わせて採用してもよい。
【0068】
[2-6.第7変形例]
上記実施形態では、ある部材とこの部材に挿通される部材とで生じる摩擦音、すなわち、パイプ40,45とセパレータ50Aの立ち上がり部52との間の摩擦音を抑制する構成について説明したが、これらの組み合わせに限定されるものではない。例えば、本開示の一態様では、ある部材とこの部材の周囲に配置される部材とで生じる摩擦音を抑制する構成であってもよい。具体的には、第7変形例のセパレータ50Jと外殻部材20とで生じる摩擦音を抑制する構成であってもよい。
【0069】
この場合、例えば
図14に示すように、セパレータ50Jの縁部57は、本体部51の外周に沿って配置され、外殻部材20の内周面と接触するように構成されており、縁部57には、緩和部57Aを備えるとよい。緩和部57Aは、前述した緩和部54A~54Hと同様に、縁部57を切り欠いていればよく、任意の形状を採用できる。なお、この構成の場合、セパレータ50Jは、セパレータ50Jの周囲に配置される外殻部材20に対して、溶接等によって完全には固定されることなく配置される。
【0070】
このような構成によれば、各セパレータ50と、各セパレータ50の外側に配置される外殻部材20との間の摩擦力によって生じる摩擦音を抑制することができる。
なお、上記各変形例1~7のセパレータ50D~50Jは、前述の各セパレータ50としてマフラ1において適用することができる。
【0071】
[2-7.他の変形例]
(2a)上記実施形態では、マフラ1に本開示を適用したが、この構成に限られない。例えば、排気管と排気管を保持する部材等、排気を流通させるために必要となる部品の組み合わせに対して本開示を適用してもよい。
例えば、マフラ1の内部空間にパイプ全体が収納される構成であって、セパレータの貫通孔を貫通して設けられるパイプ等にも適用できる。また、運転停止時等でパイプが膨張していない場合には、本体部と挿通孔との間に隙間が存在していてもよい。また、パイプが膨張していない場合には、本体部が挿通孔に圧入されていなくてもよい。
【0072】
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0073】
(2c)上述したマフラ1の他、当該マフラ1を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。緩和部54A~54I,57Aは、任意に組わせて採用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…マフラ、10…内部空間、20…外殻部材、40…インレットパイプ、45…アウトレットパイプ、50,50A,50B,50C,50D,50E,50F,50G,50H,50I,50J…セパレータ、51…本体部、52…立ち上がり部、53…バーリング部、54A,54B,54C,54D,54E,54F,54G,54H,54I,57A…緩和部、55A,55B,55C…第2穴部、56A,56B,56C…第1穴部、57…縁部。