(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ガス加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20240918BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20240918BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F24C3/12 E
F24C3/02 H
F23N1/00 102A
(21)【出願番号】P 2021007351
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-218875(JP,A)
【文献】特開2003-166702(JP,A)
【文献】特開平02-044122(JP,A)
【文献】特開2014-066373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00 - 3/14
F23N 1/00 - 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親バーナと前記親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナと、
前記親バーナに燃料ガスを供給する親バーナガス供給通路と、
前記子バーナに燃料ガスを供給する子バーナガス供給通路と、
前記親バーナガス供給通路に介設されて、前記親バーナに供給される前記燃料ガスのガス流量を調節する親バーナガス流量調節手段と、
前記子バーナガス供給通路に介設されて、前記子バーナに供給される前記燃料ガスのガス流量を調節する子バーナガス流量調節手段と、
前記親バーナガス流量調節手段および前記子バーナガス流量調節手段を制御する制御手段と
を備えるガス加熱調理器において、
前記制御手段は、
前記子バーナには前記燃料ガスが供給されるが前記親バーナには前記燃料ガスが供給されない子バーナ単独燃焼状態と、前記子バーナおよび前記親バーナに前記燃料ガスが供給される同時燃焼状態とを、前記ガス加熱調理器の使用者によって設定された設定火力に応じて切り換えており、
前記同時燃焼状態で前記設定火力が増加するに従って、前記親バーナの前記ガス流量は増加させるが、前記子バーナの前記ガス流量は維持または減少させる
ことによって、前記同時燃焼状態で前記子バーナに供給される最大の前記ガス流量が、前記子バーナ単独燃焼状態で前記子バーナに供給される最大の前記ガス流量よりも小さくなるように制御する
ことを特徴とするガス加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス加熱調理器において、
少なくとも前記子バーナから流出する前記燃料ガスに点火することによって、前記親子バーナでの燃焼を開始する点火手段を備え、
前記制御手段は、
前記親子バーナの燃焼開始時には、前記子バーナおよび前記親バーナの前記ガス流量を、所定の子バーナ燃焼開始流量および所定の親バーナ燃焼開始流量に制御しており、
前記親子バーナの燃焼開始に先立つ前記子バーナへの点火時には、前記子バーナのガス流量を、前記子バーナ燃焼開始流量よりも大きな所定の子バーナ点火流量に制御する
ことを特徴とするガス加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス加熱調理器において、
前記親子バーナは、前記子バーナの上方に前記親バーナが形成されている
ことを特徴とするガス加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親バーナと、親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナを搭載するガス加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
親バーナと、親バーナよりも最大火力の小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナが知られている。この親子バーナを搭載したガス加熱調理器は、小さな火力しか必要としない間は、専ら子バーナに燃料ガスを供給することによって子バーナ単独で燃料ガスを燃焼させるが、必要とする火力が大きくなると、親バーナにも燃料ガスを供給することによって、子バーナおよび親バーナで同時に燃料ガスを燃焼させるようになっている。尚、子バーナが単独で燃料ガスを燃焼させる状態は「単独燃焼状態」と呼ばれることがあり、子バーナおよび親バーナが同時に燃料ガスを燃焼させる状態は「同時燃焼状態」と呼ばれることがある。そして、同時燃焼状態に切り換わった後は、必要とする火力が大きくなるに従って、子バーナおよび親バーナに供給する燃料ガスのガス流量を増加させることにより、子バーナおよび親バーナの火力を増加させる。このように親子バーナを搭載したガス加熱調理器は、子バーナの単独燃焼状態と、親バーナおよび子バーナの同時燃焼状態とを切り換えることで、広い火力範囲を実現することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した提案されているガス加熱調理器には、同時燃焼状態で大きな火力での加熱調理を行おうとすると、燃料ガスの燃焼によって生じた熱量を加熱調理に効率よく利用することができなくなるという問題があった。この理由は次のようなものである。子バーナは、親バーナが使用できない小火力での加熱調理を可能とするためのバーナであり、燃料ガスの燃焼によって生じた熱量を加熱調理に使用する効率は、親バーナに比べると小さくなっている。それにも拘わらず、同時燃焼状態で火力を大きくしようとすると、子バーナで燃焼する燃料ガスが増加するため、加熱調理に使用されない熱量が増加してしまうためである。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、親子バーナの同時燃焼状態で大きな火力で加熱調理する場合でも、燃焼によって生じた熱量を効率よく利用することが可能なガス加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のガス加熱調理器は次の構成を採用した。すなわち、
親バーナと前記親バーナよりも最大火力が小さな子バーナとが同軸上に配置された親子バーナと、
前記親バーナに燃料ガスを供給する親バーナガス供給通路と、
前記子バーナに燃料ガスを供給する子バーナガス供給通路と、
前記親バーナガス供給通路に介設されて、前記親バーナに供給される前記燃料ガスのガス流量を調節する親バーナガス流量調節手段と、
前記子バーナガス供給通路に介設されて、前記子バーナに供給される前記燃料ガスのガス流量を調節する子バーナガス流量調節手段と、
前記親バーナガス流量調節手段および前記子バーナガス流量調節手段を制御する制御手段と
を備えるガス加熱調理器において、
前記制御手段は、
前記子バーナには前記燃料ガスが供給されるが前記親バーナには前記燃料ガスが供給されない子バーナ単独燃焼状態と、前記子バーナおよび前記親バーナに前記燃料ガスが供給される同時燃焼状態とを、前記ガス加熱調理器の使用者によって設定された設定火力に応じて切り換えており、
前記同時燃焼状態で前記設定火力が増加するに従って、前記親バーナの前記ガス流量は増加させるが、前記子バーナの前記ガス流量は維持または減少させることによって、前記同時燃焼状態で前記子バーナに供給される最大の前記ガス流量が、前記子バーナ単独燃焼状態で前記子バーナに供給される最大の前記ガス流量よりも小さくなるように制御する
ことを特徴とする。
【0007】
かかる本発明のガス加熱調理器は、親バーナには燃料ガスを供給しないが、子バーナには燃料ガスを供給することで、子バーナだけで燃料ガスを燃焼させる子バーナ単独燃焼状態と、親バーナおよび子バーナに燃料ガスを供給することで、親バーナおよび子バーナで燃料ガスを燃焼させる同時燃焼状態とが可能となっており、使用者によって設定された設定火力が小さい間は子バーナ単独燃焼状態で燃料ガスを燃焼させるが、設定火力が大きくなると同時燃焼状態で燃料ガスを燃焼させるようになっている。そして、同時燃焼状態で燃料ガスを燃焼させている場合は、使用者によって設定された設定火力が増加するに従って、親バーナに供給する燃料ガスのガス量は増加させるが、子バーナに供給する燃料ガスのガス量は、減少させるか維持することによって、同時燃焼状態で子バーナに供給される最大のガス流量が、子バーナ単独燃焼状態で子バーナに供給される最大のガス流量よりも小さなガス流量に抑制する。
【0008】
前述したように子バーナは、大火力で使用するために設計されているわけではないから、大火力で使用すると、燃料ガスの燃焼によって生じた熱量を、親バーナに比べて効率よく利用することができない。このことから、親バーナおよび子バーナの同時燃焼状態では、使用者による設定火力が大きくなるほど、子バーナに供給する燃料ガスのガス流量を減少あるいは維持することによって、同時燃焼状態では、子バーナのガス流量がどんなに増加しても、子バーナ単独燃焼状態での子バーナの最大のガス流量よりも小さくなる。こうすれば、大火力時に子バーナが燃焼する燃料ガス量を抑制することができるので、主に親バーナで燃料ガスを燃焼させることになる。その結果、親バーナおよび子バーナの同時燃焼状態で大火力とした場合でも、燃料ガスの燃焼による熱量を効率よく利用することが可能となる。
【0009】
また、上述した本発明のガス加熱調理器においては、少なくとも子バーナから流出する燃料ガスに点火することによって、親子バーナでの燃焼を開始させるようにしてもよい。そして、燃焼開始時には、子バーナのガス流量は所定の子バーナ燃焼開始流量に制御し、親バーナのガス流量は所定の親バーナ燃焼開始流量に制御する。加えて、燃焼開始に先立って子バーナに点火する際には、子バーナのガス流量を、子バーナ燃焼開始流量よりも大きな所定の子バーナ点火流量に制御するようにしてもよい。
【0010】
こうすれば、点火時の子バーナへのガス流量を増やすことができるので、子バーナに確実に点火することができ、その結果、親子バーナの燃焼を確実に開始することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のガス加熱調理器においては、親バーナの下方に子バーナが形成された親子バーナを搭載してもよい。
【0012】
子バーナは親バーナの下方に形成されているので、子バーナの炎は親バーナの炎よりも、加熱しようとする調理容器の底面から離れた位置に形成されることになり、その結果、子バーナは親バーナに比べて効率よく調理容器を加熱することができない。従って、子バーナおよび親バーナの同時燃焼状態では、設定火力が大きくなるほど子バーナのガス流量を減少あるいは維持しておけば、大火力では主に親バーナで燃料ガスを燃焼させることになる。その結果、同時燃焼状態で大火力にしても、燃焼によって生じた熱量を効率よく利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例の親子バーナ10を搭載したガス加熱調理器1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】本実施例の親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。
【
図3】本実施例の親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示す分解組立図である。
【
図4】本実施例のガス加熱調理器1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図5】第1変形例のガス加熱調理器1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図6】本実施例および第2変形例のガス加熱調理器1が燃焼開始後に親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図7】第2変形例のガス加熱調理器1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【
図8】第3変形例のガス加熱調理器1が親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施例の親子バーナ10を搭載したガス加熱調理器1の外観形状を示した斜視図である。
図1に例示したガス加熱調理器1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガス加熱調理器1であり、箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0015】
コンロ本体2の内部には、後述する親バーナと子バーナとが上下二段に組み合わされた親子バーナ10が、左右に並べて2つ収容されており、これらの親子バーナ10は、上部が天板3に形成された挿通孔から突出した状態となっている。また、天板3上には、それぞれの親子バーナ10の上部が突出した箇所を囲むようにして五徳4が設置されており、五徳4上に鍋などの調理容器を置くことで、調理容器を下方から親子バーナ10で加熱することが可能となっている。更に、親子バーナ10には、中央を貫通した状態で温度センサ5が内蔵されている。温度センサ5は図示しない付勢バネによって上方に付勢されており、温度センサ5の上部が親子バーナ10の上面中央から突出した状態となっている。そして、五徳4に調理容器を置くと、調理容器の底面が温度センサ5を押し下げることで温度センサ5の上端が調理容器の底面に当接した状態となって、調理容器の温度を検出することが可能となる。
【0016】
また、ガス加熱調理器1の前面にはグリル扉7が設けられており、グリル扉7の奥には図示しないグリル庫やグリルバーナが搭載されている。グリル扉7の右方には、2つの親子バーナ10に対応して2つのコンロ操作ボタン8が設けられており、ガス加熱調理器1の使用者は何れかのコンロ操作ボタン8を操作することによって、対応する親子バーナ10に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉7の左方には、グリル操作ボタン9が設けられており、使用者はグリル操作ボタン9を操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。
【0017】
図2は、本実施例の親子バーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。図示されるように親子バーナ10は、板金製部材を組み合わせて形成されたバーナ本体11と、略円筒形状のバーナキャップ20とを備えている。バーナ本体11には、略円筒形状のバーナボディ11bと、バーナボディ11bに接続された親混合管12と、親混合管12よりも小径でバーナボディ11bに接続された子混合管13とが形成されている。また、バーナキャップ20は、バーナボディ11bの上に載置されている。バーナキャップ20の中央には挿通孔20hが形成されており、この挿通孔20hには、
図1を用いて前述した温度センサ5が挿通されるようになっている。
【0018】
バーナキャップ20は、上下二段に分割された部材であり、アルミニウム合金あるいは真鍮を用いて、鋳造あるいはダイカストによって形成されている。以下では、バーナキャップ20を構成する上側の部材を上側キャップ部21と称し、下側の部材を下側キャップ部22と称する。図示したように下側キャップ部22の上に上側キャップ部21を載置した状態では、
図2中に拡大して示したように、上側キャップ部21の外周面に複数の上側炎口21fが形成され、更に、下側キャップ部22の外周面には複数の下側炎口22fが形成されている。そして、上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側炎口21fと下側炎口22fとが互い違いとなる位置で組み合わされるようになっている。
【0019】
また、バーナボディ11bの上にバーナキャップ20を載置すると、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に、複数の小さな炎口(以下、子炎口22u)が形成されるようになっている。後述するようにバーナボディ11bの内部には、親混合管12が接続された空間と、子混合管13が接続された空間とが形成されている。そして、下側キャップ部22とバーナボディ11bとの間に形成された子炎口22uは、子混合管13が接続された空間に連通している。また、上側キャップ部21に形成された上側炎口21fと、下側キャップ部22に形成された下側炎口22fとは、親混合管12が接続された空間に連通している。このため、後述するように、子混合管13に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが子炎口22uから流出し、親混合管12に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスが上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出することになる。
【0020】
親混合管12および子混合管13には、次のようにして燃料ガスが供給される。先ず、親混合管12はバーナボディ11bに接続されていない側が開口端12oとなっており、子混合管13もバーナボディ11bに接続されていない側が開口端13oとなっている。親混合管12の開口端12oを臨む位置にはガス噴射ノズル43pが設けられており、子混合管13の開口端13oを臨む位置にはガス噴射ノズル43cが設けられている。尚、以下では、親混合管12側に設けられたガス噴射ノズル43pを「親側のガス噴射ノズル43p」と称し、子混合管13側に設けられたガス噴射ノズル43cを「子側のガス噴射ノズル43c」と称することがある。そして、親側のガス噴射ノズル43pには接続パイプ40pが接続されており、子側のガス噴射ノズル43cには接続パイプ40cが接続されている。これら2つの接続パイプ40p、40cは、ガス供給パイプ40から分岐している。尚、以下では、先端に親側のガス噴射ノズル43pが取り付けられた接続パイプ40pを「親側の接続パイプ40p」と称し、先端に子側のガス噴射ノズル43cが取り付けられた接続パイプ40cを「子側の接続パイプ40c」と称することがある。
【0021】
ガス供給パイプ40に燃料ガスを供給すると、燃料ガスが親側の接続パイプ40pと子側の接続パイプ40cとに分岐して、親側のガス噴射ノズル43pと子側のガス噴射ノズル43cとに供給される。そして、親側のガス噴射ノズル43pから親混合管12の開口端12oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら親混合管12内に流入し、親混合管12内で空気と混合した後、上側炎口21fおよび下側炎口22fから流出する。同様に、子側のガス噴射ノズル43cから子混合管13の開口端13oに向かって燃料ガスを噴射すると、燃料ガスはエジェクタ効果によって周囲の空気を巻き込みながら子混合管13内に流入し、子混合管13内で空気と混合した後、子炎口22uから流出する。
【0022】
また、親側の接続パイプ40pの途中には、親バーナ10Pに供給される燃料ガスの流量を調節するためのガス流量調節弁42pが搭載されており、子側の接続パイプ40cの途中には、子バーナ10Cに供給される燃料ガスの流量を調節するためのガス流量調節弁42cが搭載されている。更に、ガス供給パイプ40には、電磁開閉弁41が搭載されている。親バーナ10Pまたは子バーナ10Cに燃料ガスを供給する場合には、電磁開閉弁41を開弁させた状態で、親側の接続パイプ40pのガス流量調節弁42pまたは子側の接続パイプ40cのガス流量調節弁42cを開弁させる。また、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cに燃料ガスを供給しない場合には、電磁開閉弁41を閉弁させておく。尚、以下では、親側の接続パイプ40pに取り付けられたガス流量調節弁42pを「親側のガス流量調節弁42p」と称し、子側の接続パイプ40cに取り付けられたガス流量調節弁42cを「子側のガス流量調節弁42c」と称することがある。また、親側のガス流量調節弁42pや、子側のガス流量調節弁42cとしては、連続的にあるいは複数段階にガス流量を調節することが可能な周知の種々の弁を使用することができるが、本実施例では、ステッピングモータで駆動される流量調節弁が使用されている。
【0023】
尚、本実施例では、親側の接続パイプ40pが本発明における「親バーナガス供給通路」に対応し、子側の接続パイプ40cが本発明における「子バーナガス供給通路」に対応する。更に、親側のガス流量調節弁42pが本発明における「親バーナガス流量調節手段」に対応し、子側のガス流量調節弁42pが本発明における「子バーナガス流量調節手段」に対応する。
【0024】
また、バーナ本体11には、バーナボディ11bの外周面に近接して、点火プラグ30と火炎センサ32とが設けられており、点火プラグ30および火炎センサ32は制御部50に接続されている。更に、点火プラグ30の上方には、バーナキャップ20の外周面から点火ターゲット31が突設されている。制御部50は、ガス供給パイプ40の電磁開閉弁41を開弁させた状態で、点火プラグ30から点火ターゲット31に向かって火花放電させながら、子側のガス流量調節弁42cを開弁させると、子炎口22uから燃料ガスが流出し、その燃料ガスが着火して燃焼が開始される。火炎センサ32は、子炎口22uで生じた炎を検知することが可能となっており、制御部50は子炎口22uの炎を検知することで、燃焼が開始されたことを認識することができる。尚、本実施例の制御部50は、本発明における「制御手段」に対応する。また、本実施例の点火プラグ30は、本発明における「点火手段」に対応する。
【0025】
図2に示したように、上側炎口21fおよび下側炎口22fは、子炎口22uに比べて大きな開口面積に設定されている。また、バーナ本体11の内部で上側炎口21fおよび下側炎口22fと連通している親混合管12は、子炎口22uと連通している子混合管13も大径に形成されている。このため、上側炎口21fおよび下側炎口22fでは、子炎口22uよりも多量の燃料ガスを燃焼させて、大火力を発生させることができる。そこで、親子バーナ10は、必要な火力が小さい間は、子炎口22uで燃料ガスを燃焼させておき、大火力が必要になったら、上側炎口21fおよび下側炎口22fでも燃料ガスを燃焼させるような使われ方をする。このことから、親子バーナ10の中の子炎口22uの部分は「子バーナ10C」と呼称され、親子バーナ10の中の上側炎口21fおよび下側炎口22fの部分は「親バーナ10P」と呼称されている。
【0026】
尚、
図2に示したように、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pと子バーナ10Cとが、同軸上の上下二段に配置されているものとしているが、親バーナ10Pと子バーナ10Cとは、必ずしも上下二段に配置する必要はなく、例えば円環形状の親バーナ10Pの内側に、親バーナ10Pよりも小径の子バーナ10Cが配置された親子バーナ10とすることもできる。また、本実施例の親子バーナ10は、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが千鳥状に配列されることによって2段の炎口となっているが、これに限らず、親バーナ10Pの上側炎口21fと下側炎口22fとが上下に揃った状態で配列されることによって1段の炎口となっていてもよい。
【0027】
図3は、本実施例の親子バーナ10のバーナボディ11bおよびバーナキャップ20の内部構造を示した分解組立図である。図示されるように、略円筒形状のバーナボディ11bは、上端側が内向きに折り曲げられることによって、バーナキャップ20を載置する円環状の載置面11aが形成されている。また、バーナボディ11bの内側には、円筒形状の中央筒体14が立設されており、バーナボディ11bと中央筒体14との間に、混合ガスが供給される環状の混合室16が形成されている。
【0028】
更に、バーナボディ11bと中央筒体14との間には、略円筒形状の仕切り筒体15が設けられており、この仕切り筒体15によって、混合室16は仕切り筒体15よりも内側の空間と、仕切り筒体15よりも外側の空間とに分けられている。仕切り筒体15よりも内側の空間が後述する親混合室16pとなり、仕切り筒体15よりも外側の空間が後述する子混合室16cとなる。仕切り筒体15は、バーナボディ11bと同様に板金部材によって形成されており、円筒形状の上端側が内向きに折り曲げられた後、その内側が下向きに折り曲げられることによって短い円筒形状の嵌合面15aが形成されている。
【0029】
バーナキャップ20は、前述したように上側キャップ部21と下側キャップ部22とを備えており、下側キャップ部22はバーナボディ11bの載置面11aの上に載置され、上側キャップ部21は、下側キャップ部22の上に載置されるようになっている。図示されるように、下側キャップ部22は略円環形状の部材であり、内縁部分からは下方に向けて円筒形状の隔壁筒22aが垂設されている。更に、外縁部分の下面(バーナボディ11bの載置面11aに当接する面)には、下側キャップ部22の中心に対して放射状に複数の下段溝22bが形成されている。
【0030】
また、下側キャップ部22の外縁部分には、上方に向けて筒状に突出した上向筒状壁22cが設けられており、上向筒状壁22cの上端面には、上向筒状壁22cの中心に対して放射状に複数の下側溝22dが形成されている。尚、下側溝22dは、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。加えて、上向筒状壁22cの外周面からは、前述した点火プラグ30の上方の位置に点火ターゲット31が突設されている。
【0031】
一方、上側キャップ部21は円環形状に形成されており、内縁部分からは下方に向けて、図示しない円筒形状の内筒が垂設されている。更に、外縁部分からは下方に向けて筒状の下向筒状壁21aが設けられており、下向筒状壁21aの下端面には、下向筒状壁21aの中心に対して放射状に複数の上側溝21bが形成されている。尚、上側溝21bは、上述した下側溝22dと同様に、五徳4の複数の爪部に対向する位置には設けられていない。
【0032】
上側キャップ部21と下側キャップ部22とは、上側キャップ部21の上側溝21bと、下側キャップ部22の下側溝22dとが重ならないように位置決めされた状態で組み合わされる。このため、上側キャップ部21と下側キャップ部22とを組み合わせてバーナキャップ20を形成すると、上側溝21bが下向筒状壁21aの外周面に開口した部分には上側炎口21fが形成され、下側溝22dが上向筒状壁22cの外周面に開口した部分には下側炎口22fが形成される(
図2参照)。また、上側溝21bと下側溝22dとが重ならないように位置決めされているから、上側炎口21fと下側炎口22fとは互い違いの位置に形成される。
【0033】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置する際には、先ず、下側キャップ部22の内縁部分から下方に垂設された隔壁筒22aを、仕切り筒体15の嵌合面15aの内側に挿入しつつ、上側キャップ部21の内縁部分から下方に垂設された図示しない内筒を、中央筒体14の内側に挿入しながら、バーナキャップ20を下降させる。すると、下側キャップ部22の外縁部分の下面に形成された下段溝22bが、バーナボディ11bの載置面11aに当接して、バーナキャップ20がバーナボディ11bに載置される。
【0034】
バーナキャップ20をバーナボディ11bに載置した状態では、下側キャップ部22の隔壁筒22aが仕切り筒体15の嵌合面15aに嵌合し、上側キャップ部21の図示しない内筒が中央筒体14の上部の内周面に嵌合した状態となる。その結果、仕切り筒体15の外側には、仕切り筒体15とバーナボディ11bと下側キャップ部22とで囲まれた子混合室16cが形成される。この子混合室16cは子混合管13と連通している。また、仕切り筒体15の内側には、中央筒体14と仕切り筒体15と隔壁筒22aと上側キャップ部21とで囲まれた親混合室16pが形成される。この親混合室16pは親混合管12と連通している。
【0035】
以上のような構造を有する本実施例の親子バーナ10は、必要とされる火力が小さい間は、親側のガス流量調節弁42pは閉弁させたまま、電磁開閉弁41および子側のガス流量調節弁42cを開弁させることによって、子バーナ10Cだけで燃料ガスを燃焼させる。そして、必要な火力が増加するに従って子側のガス流量調節弁42cの開度を増加させることによって、子バーナ10Cの火力を増加させていく。更に、必要な火力が所定の火力を超えた場合には、親側のガス流量調節弁42pも開弁させることによって、親バーナ10Pでも燃料ガスの燃焼を開始させる。こうすることで、小火力から大火力までの広い火力範囲を実現することが可能となる。尚、子バーナ10Cは燃料ガスを燃焼しているが、親バーナ10Pは燃料ガスを燃焼していない状態は、単独燃焼状態と呼ばれる。また、子バーナ10Cおよび10Pで燃料ガスを燃焼している状態は、同時燃焼状態と呼ばれる。
【0036】
ガス加熱調理器1の前面に搭載された2つのコンロ操作ボタン8(
図1参照)は、
図2に示した制御部50に接続されており、更に、制御部50には、電磁開閉弁41や、親側のガス流量調節弁42pや、子側のガス流量調節弁42cも接続されている。ガス加熱調理器1の使用者が、コンロ操作ボタン8を操作することによって、親子バーナ10に点火するための所定の点火操作を行うと、その点火操作を制御部50が検知して、電磁開閉弁41や、親側のガス流量調節弁42pおよび子側のガス流量調節弁42cを開弁させると共に、点火プラグ30(
図2参照)から火花を飛ばすことによって親子バーナ10での燃焼を開始する。そして、親子バーナ10が燃焼を開始した状態で、ガス加熱調理器1の使用者がコンロ操作ボタン8を操作することによって、加熱調理に用いる火力の大きさ(すなわち、設定火力)を設定すると、その設定火力を制御部50が取得して、設定火力に応じて親側のガス流量調節弁42pや、子側のガス流量調節弁42cの開度を調節する。こうすることで、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cには、設定火力に応じて適切な流量の燃料ガスが供給されて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cで燃料ガスが燃焼することになる。
【0037】
図4は、ガス加熱調理器1に搭載された制御部50が、使用者による設定火力に応じて、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cへの燃料ガスのガス流量を制御する様子を示した説明図である。
図4では、使用者による設定火力が、最も小火力の設定であるP1から、最も大火力の設定であるP6へと段階的に切り換わるものとして表示している。もちろん、設定火力が連続的に変化するようにしても良い。また、
図4(a)には本実施例の制御部50がガス流量を制御する様子が示されており、
図4(b)には、参考として、従来のガス加熱調理器に搭載された制御部がガス流量を制御する様子が示されている。
【0038】
尚、燃料ガスのガス流量は、単位時間に通過する燃料ガスの重量や体積ではなく、通過した燃料ガスを燃焼させた時の発熱量で表すことが慣例となっている。このことに対応して、
図4(a)および
図4(b)では、燃料ガスのガス流量が、単位時間あたりの燃料ガスの発熱量を表すインプット(kcal/h)で表示されている。また、
図4(a)および
図4(b)の縦軸に表示された「全体インプット」は、親バーナ10Pへのインプットと、子バーナ10Cへのインプットとを合計した値(すなわち、親子バーナ10全体としてのインプット)である。
【0039】
説明の都合上、初めに
図4(b)に示した従来の場合について説明する。
図4(b)に示されるように、従来のガス加熱調理器では、使用者によって設定された設定火力が、最も小火力のP1であった場合は、親側のガス流量調節弁42pを閉弁させたまま、子側のガス流量調節弁42cを開弁させることによって、子バーナ10Cに約300kcal/hの流量の燃料ガスを供給する。また、設定火力がP2に増加した場合は、親側のガス流量調節弁42pを閉弁させたまま、子側のガス流量調節弁42cの開度を増加させることによって、子バーナ10Cに供給する燃料ガスのガス流量を約650kcal/hに増加させる。このように、設定火力がP1またはP2の場合は、親バーナ10Pには燃料ガスが供給されないまま、子バーナ10Cにだけ燃料ガスが供給される。従って、子バーナ10Cが単独で燃料ガスを燃焼させる単独燃焼状態となる。また、単独燃焼状態では、子バーナ10Cに供給されるガス流量が、そのまま全体インプットとなる。
【0040】
更に、設定火力がP3に設定された場合は、親側のガス流量調節弁42pも開弁させることによって、全体インプットを約1400kcal/hに増加させる。この時の子バーナ10Cと親バーナ10Pと間でのインプットの分担は、子バーナ10Cのインプットを最小火力時(設定火力がP1の時)のインプットである約300kcal/h(あるいはもう少し小さな約約250kcal/h)程度まで減少させて、残りを親バーナ10Pで分担させる。従って、設定火力がP2からP3に増加すると、子側のガス流量調節弁42cは最小火力時の弁開度(あるいはそれよりも小さな弁開度)まで小さくなり、親側のガス流量調節弁42pは閉弁した状態から開弁した状態となるように制御される。また、設定火力がP3に設定された場合には、子バーナ10Cだけでなく親バーナ10Pでも燃料ガスが燃焼する同時燃焼状態となる。
【0041】
また、設定火力がP4に増加した場合は、親側のガス流量調節弁42pおよび子側のガス流量調節弁42cの弁開度を増加させることによって、全体インプットが約2150kcal/hになるように増加させる。更に、設定火力がP5に増加した場合は、親側のガス流量調節弁42pおよび子側のガス流量調節弁42cの弁開度を更に増加させることによって、全体インプットを約3000kcal/hに増加させ、設定火力がP6に増加した場合は全体インプットが約4300kcal/hになるように、親側のガス流量調節弁42pおよび子側のガス流量調節弁42cの弁開度を増加させる。
【0042】
このように、従来のガス加熱調理器では、同時燃焼状態で設定火力が大きくなるほど、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのインプットが同時に増加する。ところが、子バーナ10Cは、本来的には親バーナ10Pでは実現できない小火力での加熱調理のために搭載されているものであるため、設定火力がP5やP6に設定された大火力で使用すると、燃焼によって生じた熱量を効率よく加熱調理に使用することができない。
【0043】
そこで、本実施例のガス加熱調理器1では、ガス加熱調理器1の使用者によって設定された設定火力に応じて、
図4(a)に示したような態様で、親バーナ10Pおよび子バーナ10Cのインプットを制御する。すなわち、設定火力がP1あるいはP2に設定されている場合(すなわち、単独燃焼状態の場合)は、
図4(b)を用いて前述した従来のガス加熱調理器と同様に制御する。また、設定火力がP3よりも大きくなると同時燃焼状態に切り換える点でも、従来のガス加熱調理器と同様である。
【0044】
しかし、本実施例のガス加熱調理器1では、設定火力がP3から大きくなるほど、子バーナ10Cのインプットが小さくなるように、子側のガス流量調節弁42cの弁開度を制御する。また、親側のガス流量調節弁42pの弁開度は、全体インプットが従来のガス加熱調理器と同等となるような開度に、すなわち、設定火力がP3の場合は全体インプットが約1400kcal/hになり、設定火力がP4の場合は全体インプットが約2150kcal/hに、設定火力がP5の場合は約3000kcal/hに、設定火力がP6の場合は約4300kcal/hになるような開度に制御する。
【0045】
こうすれば、
図4(a)に示したように、設定火力がP5やP6のような、同時燃焼状態での大火力では、子バーナ10Cに供給される燃料ガスを抑制されて、抑制した分の燃料ガスは親バーナ10Pで燃焼されることになる。親バーナ10Pは大火力で加熱調理するために設計されているため、大火力での加熱調理時には、子バーナ10Cよりも、燃焼によって生じた熱量を効率よく利用することができる。従って、本実施例のガス加熱調理器1では、設定火力がP5やP6のような大火力時でも、燃料ガスを燃焼させた熱量を効率よく加熱調理に使用することが可能となる。
【0046】
加えて、本実施例のガス加熱調理器1では、
図2に示したように、子バーナ10Cが親バーナ10Pの下方に形成されており、子バーナ10Cの炎は親バーナ10Pの炎よりも調理容器の底面から離れた位置に形成されるため、この点からも、子バーナ10Cは親バーナ10Pに比べて、燃焼によって生じた熱量を効率よく加熱調理に使用することができない。従って、大火力では子バーナ10Cで燃焼させる燃料ガスを抑制して、その分の燃料ガスを親バーナ10Pで燃焼させることで、大火力になっても燃焼による熱量を効率よく加熱調理に使用することが可能となる。
【0047】
また、本実施例のガス加熱調理器1では、同時燃焼状態の小火力時(設定火力がP3の時)に子バーナ10Cで黄色の炎が発生することを防止することも可能となる。これは次のような理由による。先ず、
図4(b)に示したように、設定火力がP2からP3に増加すると、子バーナ10Cのインプットは、最小火力のP1の時と同等のインプット(あるいは、より小さなインプット)に急減する。このため、子側のガス噴射ノズル43cから噴出する燃料ガスのガス流量も減少するため、エジェクタ効果によって燃料ガスに巻き込まれて子混合管13に流入する空気が減少する。また、最小火力のP1の状態とは異なり、設定火力がP3の状態では、親混合管12にもエジェクタ効果によって空気が流入するため、子混合管13に流入する空気が減少し易い状況となっている。その結果、設定火力をP3にすると、子混合管13に流入する空気の流量が燃料ガスのガス流量に対して不足気味となるため、子バーナ10Cでは燃焼状態が悪化し易く、燃焼状態が悪化すると炎が黄色くなる。
【0048】
これに対して本実施例のガス加熱調理器1では、
図4(a)に示したように、設定火力がP3の場合の子バーナ10Cのインプットは、最小の設定火力のP1の場合よりも大きなインプットになっている。このため、設定火力がP2からP3に変更されても、子側のガス噴射ノズル43cから噴射されるガス流量が急減しないので、エジェクタ効果によって十分な空気を子混合管13に取り込むことができる。加えて、本実施例のガス加熱調理器1でも、設定火力がP3になると親側のガス噴射ノズル43pでも燃料ガスが噴射されるため、親混合管12にも空気が流入するが、
図4(b)に示した従来のガス加熱調理器に比べると、親側のガス噴射ノズル43pから噴射される燃料ガスの流量が小さいので、親混合管12に流入する空気量も小さくなる。このため、親混合管12に空気が取り込まれる影響で、子混合管13に取り込まれる空気が不足する事態も起こりにくい。その結果、本実施例のガス加熱調理器1では、設定火力がP3に設定されても、子混合管13に取り込まれる空気が不足することがないので、子バーナ10Cで黄色い炎が発生する事態を回避することが可能となる。
【0049】
上述した本実施例のガス加熱調理器1には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これらの変形例について、本実施例に対する相違点を中心に説明する。
【0050】
上述した本実施例のガス加熱調理器1では、同時燃焼状態になると、設定火力が大きくなるに従って子バーナ10Cのインプットが減少するものとして説明した。しかし、同時燃焼状態では子バーナ10Cのインプットを一定値に維持するようにしても良い。
【0051】
図5は、同時燃焼状態での子バーナ10Cのインプットが維持される第1変形例についての説明図である。
図5に示すように、第1変形例のガス加熱調理器1では、設定火力がP2からP3に変更されると、子バーナ10Cのインプットが減少する。しかし、減少したインプットは、設定火力がP1の時のインプットよりは大きなインプットとなっており、このインプットは、設定火力がP3からP4、P5、P6と増加しても一定に維持されている。
【0052】
このようにしても、設定火力がP5やP6のような大火力に設定されても、子バーナ10Cで燃焼する燃料ガスは増加しないので、加熱調理に有効に利用できない熱量が増加する事態を回避することが可能となる。
【0053】
また、上述した本実施例および第1変形例では、同時燃焼状態では設定火力が大きくなっても、子バーナ10Cのインプットが増加することはないものとして説明した。しかし、点火の開始時には子バーナ10Cのインプットを増加させることによって、一時的に、設定火力が大きくなると子バーナ10Cのインプットが増加するようにしてもよい。
【0054】
先ず初めに、本実施例および第1変形例のガス加熱調理器1が親子バーナ10に点火して燃焼を開始する際の動作について説明する。親子バーナ10で燃料ガスの燃焼を開始する際には、子バーナ10Cおよび親バーナ10Pに燃料ガスを供給しながら、点火プラグ30から火花を飛ばすことによって、子バーナ10Cから流出する燃料ガスに点火する。すると、子バーナ10Cで炎が形成されて、その炎で親バーナ10Pから流出する燃料ガスが着火する。その結果、親子バーナ10での燃料ガスの燃焼が開始される。
【0055】
また、燃焼が開始された時点ではバーナキャップ20やバーナボディ11bが暖まっていないことが普通なので、子バーナ10Cおよび親バーナ10Pでの燃焼が不安定となり易い。そこで、燃焼を安定させるため、燃焼開始時は、設定火力が自動的に大きめの火力に設定されている。例えば、本実施例のガス加熱調理器1では、
図6に示したように、燃焼開始時には設定火力が自動的に(すなわち使用者が設定しなくても)P4の火力に設定されるようになっている。また、設定火力が自動的にP4の火力に設定されることに伴って、親子バーナ10で燃焼が開始された後は(使用者によって設定火力が変更されるまで)、子バーナ10Cおよび親バーナ10PにはP4の設定火力に対応するガス流量が供給されることになる。以下では、燃焼開始時に自動的に設定される設定火力を「燃焼開始火力」と称することにする。また、燃焼開始火力での子バーナ10Cへのガス流量を「子バーナ燃焼開始流量」と称し、燃焼開始火力での親バーナ10Pへのガス流量を「親バーナ燃焼開始流量」と称することにする。
【0056】
ここで、親子バーナ10での燃焼を開始するために点火プラグ30から火花を飛ばしている期間では、子バーナ10Cへのガス流量を、子バーナ燃焼開始流量よりも大きなガス流量としても良い。あるいは、火花を飛ばしている間中ではなく、火花を飛ばしている期間の初期では、子バーナ10Cへのガス流量を子バーナ燃焼開始流量よりも大きなガス流量としても良い。
【0057】
図7は、このような第2変形例のガス加熱調理器1で、親子バーナ10の点火時に子バーナ10Cのガス流量を増加させる様子を示した説明図である。
図7に示した第2変形例のガス加熱調理器1でも、燃焼開始時には設定火力が自動的にP4の火力に設定されるようになっている。このため親子バーナ10での燃焼が開始されると、子バーナ10Cのガス流量は、
図6を用いて前述した本実施例の場合と同様に、子バーナ燃焼開始流量に設定される。しかし、燃焼を開始するために点火プラグ30で火花を飛ばしている期間(あるいは、その期間の初期)では、子バーナ10Cのガス流量を、子バーナ燃焼開始流量よりも大きな所定の子バーナ点火流量に増加させる。
図7中には、子バーナ点火流量が一点鎖線で示されている。その結果、点火時の子バーナ10Cのガス流量が、設定火力P3での子バーナ10Cのガス流量よりも大きくなっている。
【0058】
このように、点火時に子バーナ10Cのガス流量を増加させれば、子バーナ10Cから流出する燃料ガスに確実に点火することができる。そして、子バーナ10Cに確実に点火することができれば、親バーナ10Pから流出する燃料ガスを確実に着火させることができるので、親子バーナ10の燃焼を確実に開始させることが可能となる。
【0059】
尚、
図7に示した例では、点火時に子バーナ10Cの燃料ガスを増加させている間も、子バーナ10Cおよび親バーナ10Pの全体のガス流量(全体インプット)は変わっていないものとして説明した。従って、子バーナ10Cのガス流量を増加させている間は、その分だけ、親バーナ10Pのガス流量は減少させていることになる。しかし、子バーナ10Cのガス流量を増加させている間も、親バーナ10Pのガス流量は親バーナ燃焼開始流量(
図6参照)に保っておいても良い。こうすれば、子バーナ10Cのガス流量と親バーナ10Pのガス流量とを2つとも変更する必要が無いので、制御部50の制御負担を軽減することが可能となる。
【0060】
また、上述した本実施例や、第1変形例、第2変形例では、同時燃焼状態では設定火力が大きくなるほど(従って、設定火力が最大のP6の場合も)子バーナ10Cのガス流量が減少あるいは維持されているものとして説明した。しかし、設定火力が最大のP6の場合は、子バーナ10Cのガス流量を増加させることとしてもよい。
【0061】
図8は、最大の設定火力では子バーナ10Cのガス流量が増加する第3変形例のガス加熱調理器1についての説明図である。尚、
図8では、同時燃焼状態では、設定火力が最大のP6にならない範囲(P3~P5の範囲)では、設定火力が増加するに従って子バーナ10Cのガス流量が減少している。しかし、P3~P5の範囲では子バーナ10Cのガス流量が一定であってもよい。
【0062】
図8に示すように、第3変形例のガス加熱調理器1では、同時燃焼状態が開始されると、最大の設定火力のP6にならない限り、設定火力が大きくなるほど子バーナ10Cのガス流量が減少する。前述したように子バーナ10Cは、大火力で使用すると、燃焼による熱量を効率よく加熱に利用することができない。従って、設定火力が大きくなるほど子バーナ10Cのガス流量を減少させれば、大火力時に燃焼による熱量を効率よく加熱に利用することが可能となる。その一方で、最大の設定火力では、親バーナ10Pだけでなく子バーナ10Cでも燃料ガスを燃焼させることができるので、(熱量の利用効率は若干低下するものの)より大きな火力を実現することが可能となる。
【0063】
以上、本実施例および各種の変形例のガス加熱調理器1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…ガス加熱調理器、 2…コンロ本体、 3…天板、 4…五徳、
5…温度センサ、 7…グリル扉、 8…コンロ操作ボタン、
9…グリル操作ボタン、 10…親子バーナ、 10C…子バーナ、
10P…親バーナ、 11…バーナ本体、 11a…載置面、
11b…バーナボディ、 12…親混合管、 12o…開口端、
13…子混合管、 13o…開口端、 14…中央筒体、
15…仕切り筒体、 15a…嵌合面、 16…混合室、
16c…子混合室、 16p…親混合室、 20…バーナキャップ、
20h…挿通孔、 21…上側キャップ部、 21a…下向筒状壁、
21b…上側溝、 21f…上側炎口、 22…下側キャップ部、
22a…隔壁筒、 22b…下段溝、 22c…上向筒状壁、
22d…下側溝、 22f…下側炎口、 22u…子炎口、
30…点火プラグ、 31…点火ターゲット、 32…火炎センサ、
40…ガス供給パイプ、 40c…接続パイプ、 40p…接続パイプ、
41…電磁開閉弁、 42c…ガス流量調節弁、 42p…ガス流量調節弁、
43c…ガス噴射ノズル、 43p…ガス噴射ノズル、 50…制御部。