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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/48 20200101AFI20240918BHJP
   D06F 34/16 20200101ALI20240918BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F34/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021063564
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158569
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 啓太
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056025(JP,A)
【文献】特開2006-311885(JP,A)
【文献】特開2011-030972(JP,A)
【文献】特開2019-187977(JP,A)
【文献】特開2017-113232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F33/00-34/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽内に回転可能に設けられている回転槽と、
前記水槽の振動に伴う加速度を検出する加速度検出部と、
前記加速度検出部の検出値に基づいて前記回転槽のアンバランス状態を検知するアンバランス検知部と、
前記回転槽のアンバランス状態を解消するアンバランス解消動作を実行するアンバランス解消動作実行部と、
を備え、
前記アンバランス検知部は、前記加速度検出部の検出値に基づいて、前記回転槽においてアンバランスが発生している位置を特定可能であり、
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置に応じて前記アンバランス解消動作の内容を切り替え可能であり、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部である場合と下部である場合と上部および下部である場合とで前記アンバランス解消動作の内容を異ならせる洗濯機。
【請求項2】
前記回転槽の底部にパルセータを備え、
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置に応じて、前記水槽内に供給する水量または前記パルセータの回転態様を変更可能である請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部である場合には、前記アンバランス解消動作において前記水槽内に供給する水量を所定の標準水量よりも多くする請求項に記載の洗濯機。
【請求項4】
記パルセータの回転態様は、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させる大回転態様と、
当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える小刻み回転態様と、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させ、且つ、当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える混合回転態様と、
に切り替え可能であり、
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部である場合には、前記アンバランス解消動作における前記パルセータの回転態様を前記大回転態様に切り替える請求項2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の下部である場合には、前記アンバランス解消動作において前記水槽内に供給する水量を所定の標準水量よりも少なくする請求項に記載の洗濯機。
【請求項6】
記パルセータの回転態様は、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させる大回転態様と、
当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える小刻み回転態様と、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させ、且つ、当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える混合回転態様と、
に切り替え可能であり、
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の下部である場合には、前記アンバランス解消動作における前記パルセータの回転態様を前記小刻み回転態様に切り替える請求項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部および下部である場合には、前記アンバランス解消動作において前記水槽内に供給する水量を所定の標準水量と同じ水量とする請求項に記載の洗濯機。
【請求項8】
記パルセータの回転態様は、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させる大回転態様と、
当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える小刻み回転態様と、
当該パルセータを標準よりも大きく回転させ、且つ、当該パルセータの回転方向を標準よりも細かく切り替える混合回転態様と、
に切り替え可能であり、
前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部および下部である場合には、前記アンバランス解消動作における前記パルセータの回転態様を前記混合回転態様に切り替える請求項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程などといった各行程を自動で実行する洗濯機においては、脱水行程時に、衣類の偏りや絡まりに起因する回転槽のアンバランス状態を検知することが行われている。回転槽に発生したアンバランスが大きい場合には、回転槽、水槽、ひいては、洗濯機本体の異常振動につながる。そのため、この種の洗濯機においては、回転槽のアンバランス状態が検知された場合に、そのアンバランス状態を解消するための動作、いわゆる「ほぐし動作」などと称されるアンバランス解消動作を実行するようにしている。
【0003】
アンバランス解消動作は、例えば、水槽内に水を供給した状態で回転槽内の衣類を撹拌させる動作である。このようなアンバランス解消動作によれば、回転槽内において偏ったり絡まったりした衣類をほぐしてアンバランス状態の解消を図ることができる。
【0004】
また、回転槽のアンバランス状態を検知する構成としては、水槽に設けられた3軸の半導体加速度センサによる検出値、つまり、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の検出値が所定の基準値よりも大きい場合に、回転槽にアンバランスが発生していると判断するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-346270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転槽においてアンバランスが発生する位置は、例えば、回転槽内に収容されている衣類の量、各衣類の大きさや形状、各衣類の種類や布質などといった要因によって異なる場合がある。しかしながら、従来の洗濯機では、回転槽のアンバランス状態が検知された場合には、そのアンバランスの発生位置に関わらず同じ内容のアンバランス解消動作が行われている。そのため、アバランスの発生位置に適した内容のアンバランス解消動作を行うことができない場合があり、このような場合には、回転槽のアンバランス状態を十分に解消することが困難となる。
【0007】
そこで、回転槽におけるアバランスの発生位置に適した内容でアンバランス解消動作を行うことができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る洗濯機は、水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられている回転槽と、前記水槽の振動に伴う加速度を検出する加速度検出部と、前記加速度検出部の検出値に基づいて前記回転槽のアンバランス状態を検知するアンバランス検知部と、前記回転槽のアンバランス状態を解消するアンバランス解消動作を実行するアンバランス解消動作実行部と、を備え、前記アンバランス検知部は、前記加速度検出部の検出値に基づいて、前記回転槽においてアンバランスが発生している位置を特定可能であり、前記アンバランス解消動作実行部は、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置に応じて前記アンバランス解消動作の内容を切り替え可能であり、前記アンバランス検知部によって特定されたアンバランスの発生位置が前記回転槽の上部である場合と下部である場合と上部および下部である場合とで前記アンバランス解消動作の内容を異ならせる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る洗濯機の構成例を概略的に示す縦断面図
図2】第1実施形態に係る洗濯機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
図3】第1実施形態に係る洗濯機による動作例を概略的に示すフローチャート
図4】第1実施形態に係るアンバランス発生位置判定処理の一例を概略的に示すフローチャート
図5】第1実施形態に係るものであって、上下のアンバランス量と変位量の比「B/A」との関係の一例を示す図
図6】第1実施形態に係るものであって、アンバランスの発生位置に応じたアンバランス解消動作の一例を示す図
図7】第1実施形態に係るものであって、回転槽の下部においてアンバランスが発生している状態例を概略的に示す図
図8】第1実施形態に係るものであって、回転槽の上部においてアンバランスが発生している状態例を概略的に示す図
図9】第1実施形態に係るものであって、回転槽の上部および下部においてアンバランスが発生している状態例を概略的に示す図
図10】第2実施形態に係るものであって、アンバランスの発生位置および衣類の重量に応じたアンバランス解消動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、洗濯機に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に例示する洗濯機1は、回転槽の回転軸が上下方向に延びる、いわゆる縦軸型の全自動洗濯機である。洗濯機1は、例えば鋼板などからなり全体として矩形状をなす外箱2を備えている。外箱2は、洗濯機1の本体部の外郭を構成している。
【0012】
外箱2の上部には、薄形の中空箱状をなす合成樹脂製のトップカバー3が設けられている。このトップカバー3には、上下方向に貫通する図示しない衣類出入口が設けられている。また、トップカバー3の上部には、図示しない衣類出入口を開閉するための例えば二つ折り式の蓋4が設けられている。なお、蓋4は、例えば矩形板状の一枚の蓋であってもよい。
【0013】
また、トップカバー3の後部には、図示しない給水機構が設けられている。給水機構は、図2に例示する給水弁17などを備えている。また、トップカバー3の前部の上面部には操作パネル18が設けられている。操作パネル18には、例えば運転コースの選択や運転開始の指示を入力するための操作部や、例えば実行中の行程、運転終了までの残り時間、設定水位などといった運転に関する各種の情報を表示するための表示部などが設けられている。
【0014】
図2に例示するように、操作パネル18は、制御装置21に接続されており、操作部からの入力信号が制御装置21に入力されるようになっている。また、制御装置21は、図示しない表示部の表示を制御するようになっている。
【0015】
また、図1に例示するように、外箱2内には、貯水可能な有底円筒状の水槽5が、周知構成の弾性支持機構6により弾性的に吊り下げられた状態で支持されている。水槽5内の水位は、図2に例示する水位センサ19により検知されるようになっている。また、水槽5内には、洗濯槽および脱水槽を兼用する回転槽7が縦軸回りに回転可能に設けられている。使用者は、図示しない衣類出入口を介して、回転槽7内に衣類を収容することが可能であり、また、回転槽7内から衣類を取り出すことが可能である。
【0016】
回転槽7の回転軸は、垂直方向つまり上下方向に延びている。この回転槽7は、有底円筒状をなしており、その周壁部には、多数個の貫通孔7aが形成されている。また、この回転槽7の上端部には、例えば液体封入形の回転バランサ8が設けられている。また、回転槽7の内底部には、衣類を撹拌するための撹拌機構を構成するパルセータ9が縦軸回りに回転可能に設けられている。
【0017】
水槽5の底部には、排水口5aが形成されている。この排水口5aには、例えばモータ駆動式の排水弁10を備えた排水路11が接続されている。また、水槽5の外底部には、周知の駆動機構が設けられている。この駆動機構は、例えばアウタロータ形のDC三相ブラシレスモータからなる洗濯機モータ12を備えている。また、この駆動機構は、その洗濯機モータ12の駆動力をパルセータ9や回転槽7に選択的に伝達するクラッチ機構13などを備えている。この場合、クラッチ機構13は、切替用モータ14の駆動による排水弁10の開閉と連動して切り替えられるように構成されている。なお、クラッチ機構13は、排水弁10の開閉とは無関係に単独で切り替えられる構成であってもよい。洗濯機モータ12および切替用モータ14は、制御装置21により制御される。
【0018】
また、クラッチ機構13は、排水弁10が閉塞されている例えば洗い行程時およびすすぎ行程時などには、回転槽7を停止させた状態で、洗濯機モータ12の駆動力をパルセータ9に伝達する。これにより、パルセータ9は、所定の低速度で正転方向および反転方向に切り替えられながら回転可能となる。また、クラッチ機構13は、排水弁10が開放されている例えば脱水行程時などには、洗濯機モータ12の駆動力を回転槽7およびパルセータ9に伝達する。これにより、回転槽7は、パルセータ9とともに一方向に所定の高速度で回転可能となる。
【0019】
なお、駆動機構には、図2に例示する回転センサ15や電流センサ16などが設けられている。回転センサ15は、洗濯機モータ12の一部を構成する図示しないロータの回転位置や回転速度を検出する。電流センサ16は、洗濯機モータ12に供給される電流の大きさ、つまり、電流値を測定する。
【0020】
また、洗濯機1は、水槽5が振動することに伴い発生する加速度を複数軸方向において検出する加速度センサ20を備えている。加速度センサ20は、加速度検出部の一例である。この場合、加速度センサ20は、水槽5の外壁部に設けられている。また、加速度センサ20は、水槽5の外壁部のうち当該水槽5の上下方向における中央部よりも高い位置、つまり、上部寄りの位置に設けられている。なお、加速度センサ20の設置位置は、適宜変更して実施することができる。
【0021】
本開示においては、加速度センサ20は、相互に直交関係にあるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向の加速度を検出可能な周知の半導体加速度センサモジュールで構成されている。この場合、加速度センサ20は、X軸方向が水槽5の前後方向に一致し、Y軸方向が水槽5の左右方向に一致し、Z軸方向が水槽5の上下方向つまり回転槽7の回転軸方向に一致するように取り付けられている。加速度センサ20は、各軸方向の加速度を検出し、それら各軸方向の検出値つまり加速度の大きさに応じた検出信号を出力する。
【0022】
図2に例示する制御装置21は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置21は、制御プログラムや各種の設定情報に基づいて洗濯機1の動作全般を制御する。また、制御装置21は、少なくとも、衣類を洗う洗い行程、衣類をすすぐすすぎ行程、衣類を脱水する脱水行程などの行程を含む各種の運転を実行可能である。制御装置21には、操作パネル18からの各種の操作信号が入力される。また、制御装置21には、加速度センサ20、回転センサ15、電流センサ16、水位センサ19などからの各種の検知信号が入力される。
【0023】
また、制御装置21は、回転槽7内の衣類の重量を検知する周知の重量センシング動作を実行可能である。この重量センシング動作において、制御装置21は、回転センサ15から得られる信号を用いて回転槽7内の衣類の重量を検知するようになっている。即ち、制御装置21は、回転槽7を所定の回転速度で回転させたときに回転センサ15から得られる検知信号の変化に基づいて、回転槽7内の衣類の重量を検知する。洗濯機1は、これら制御装置21および回転センサ15などにより、回転槽7内の衣類の重量を検知する重量検知部を構成している。
【0024】
制御装置21は、運転を開始すると、周知の重量センシング動作を実行して回転槽7内の衣類の重量を検出する。そして、制御装置21は、検出した衣類の重量に応じて、例えば、洗い行程やすすぎ行程における水槽5内の水位や各行程の動作時間などといった運転に関する各種の設定内容を決定する。
【0025】
また、制御装置21は、アンバランス検知部22およびアンバランス解消動作実行部23をソフトウェアにより仮想的に実現している。なお、アンバランス検知部22およびアンバランス解消動作実行部23は、ハードウェアにより構成されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより構成されていてもよい。
【0026】
アンバランス検知部22は、回転槽7内における衣類の偏りや絡まりに起因して発生するアンバランス状態を検知する。即ち、アンバランス検知部22は、例えば脱水行程の実行時に、加速度センサ20の検出値に基づいて水槽5の振動変位量つまり振幅を求める。そして、アンバランス検知部22は、求めた振幅が所定の基準値を超えた場合に、回転槽7のアンバランス状態つまり回転槽7がアンバランス状態であることを検知する。
【0027】
また、アンバランス検知部22は、加速度センサ20の検出値に基づいて、回転槽7においてアンバランスが発生している位置を特定可能である。即ち、アンバランス検知部22は、加速度センサ20の検出値に基づき特定される水槽5の各軸方向の振動変位量の比の大きさに基づいて、回転槽7においてアンバランスが発生している位置を特定することが可能となっている。
【0028】
アンバランス検知部22は、回転槽7におけるアンバランスの発生位置を判定するにあたっては、加速度センサ20による各軸方向の検出値のうち、回転槽7の回転軸方向であるZ軸方向の変位量Aと、他の方向の変位量、この場合、前後方向であるX軸方向の変位量Bと、を用いる。
【0029】
即ち、アンバランス検知部22は、Z軸方向の変位量Aの大きさと、X軸方向の変位量Bの大きさの比「B/A」を求める。そして、アンバランス検知部22は、その比「B/A」に基づいて、回転槽7における何れの位置において、特に、回転槽7の上下方向における何れの位置においてアンバランス、つまり、衣類の偏りや絡まりが発生しているのかを判定する。
【0030】
より具体的に一例について説明すると、図4に例示するように、アンバランス検知部22は、「B/A」の値を所定の第1の閾値K1と比較する(ステップS21)。そして、アンバランス検知部2は、閾値K1よりも「B/A」の値の方が大きければ(ステップS21にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の下部であると判定する(ステップS22)。
【0031】
また、アンバランス検知部22は、「B/A」の値が閾値K1以下である場合には(ステップS21にてNO)、「B/A」の値を第1の閾値K1よりも小さい所定の第2の閾値K2と比較する(ステップS23)。そして、アンバランス検知部22は、閾値K2よりも「B/A」の値の方が小さければ(ステップS23にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の上部であると判定する(ステップS24)。
【0032】
また、アンバランス検知部22は、上記の2つの閾値K1,K2との比較ではアンバランスの発生位置の判定ができなかった場合、即ち、「B/A」の値が第1の閾値K1以下であり且つ第2の閾値K2以上であった場合には(ステップS21,S23にてNO)、加速度センサ20のZ軸方向の変位量Aを所定の第3の閾値K3と比較する(ステップS25)。そして、アンバランス検知部22は、変位量Aが第3の閾値K3よりも大きい場合には(ステップS25にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の下部であると判定する(ステップS26)。
【0033】
つまり、アンバランス検知部22は、変位量Aおよび変位量Bに基づいて、アンバランスの発生位置が上部であるのか下部であるのかの判定ができなかった場合には、水槽5の変位量のうち、回転槽7の回転軸方向であるZ軸方向の変位量Aに重みをおいて、回転槽7におけるアンバランスの発生位置を判定するようになっている。なお、閾値K3の値は、例えば閾値K1,K2と異なる値において適宜変更して設定することができる。
【0034】
また、アンバランス検知部22は、変位量Aが第3の閾値K3以下である場合には(ステップS25にてNO)、アンバランスの発生位置が回転槽7の上部および下部であると判定する(ステップS27)。即ち、アンバランス検知部22は、回転槽7の上部および下部においてアンバランスが発生した状態、つまり、回転槽7の上部および下部においてアンバランスが対向して発生している対向状態であると判定する。
【0035】
また、図2に例示するアンバランス解消動作実行部23は、回転槽7のアンバランス状態を解消するためのアンバランス解消動作を実行する。この場合、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス解消動作として、アンバランス検知部22のアンバランス発生位置の判定結果に応じた「ほぐし動作」を実行する。この「ほぐし動作」において、アンバランス解消動作実行部23は、まず回転槽7の回転を停止して脱水行程を中断する。そして、アンバランス解消動作実行部23は、排水弁10を閉塞した状態で回転槽7内に給水を行うとともに、少なくともパルセータ9を所定の態様で回転させる。これにより、回転槽7内で偏ったり絡まったりしている衣類をほぐすことができる。そして、アンバランス解消動作実行部23は、このような「ほぐし動作」を完了すると、脱水行程を再開する。
【0036】
次に、本開示に係る洗濯機1による一動作例について説明する。洗濯機1に運転を実行させるにあたって、使用者は、回転槽7内に衣類を収容するとともに、操作パネル18を介して運転コースの選択などの設定を行い、スタートボタンを操作して運転を開始させる。制御装置21は、運転を開始すると、洗濯機1が備える各種の機構部の動作を制御して、周知の洗い行程、すすぎ行程、脱水行程などを含む運転を自動で実行する。
【0037】
図3に例示するように、制御装置21は、運転を開始すると、重量センシング動作を実行して、回転槽7内の衣類の重量を検出する(ステップS1)。そして、制御装置21は、周知の洗い行程やすすぎ行程を実行する(ステップS2)。そして、制御装置21は、洗い行程やすすぎ行程を終了すると、周知の脱水行程を開始する(ステップS3)。この脱水行程では、制御装置21は、排水弁10を開放させた状態で回転槽7を所定の高速度で回転させる。この脱水行程において、制御装置21は、回転槽7の回転速度を段階的に上昇させる制御を行う。
【0038】
そして、制御装置21は、脱水行程を実行中かどうか、換言すれば、脱水行程を開始してから所定の脱水時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。制御装置21は、脱水行程を実行中である場合には(ステップS4にてYES)、加速度センサ20により、水槽5の振動振幅の大きさ、つまり、水槽5の変位量を特定する(ステップS5)。この特定処理は、回転槽7の回転速度が所定の回転速度でほぼ或いは完全に一定に維持されている状態において、加速度センサ20から得られる検出信号に基づいて行われる。
【0039】
そして、制御装置21は、特定した水槽5の振動振幅の大きさに基づいて、回転槽7の回転が不安定であるか否かを判定する(ステップS6)。この判定処理において、制御装置21は、特定した水槽5の変位量を所定の基準値と比較する。そして、制御装置21は、水槽5の変位量が所定の基準値を超えている場合には、回転槽7の回転が不安定であると判定する。なお、所定の基準値は、適宜変更して設定することができる。
【0040】
制御装置21は、水槽5の変位量が所定の基準値以下であれば、回転槽7の回転が不安定ではないと判断して(ステップS6にてNO)、ステップS4に戻る。しかし、制御装置21は、水槽5の変位量が所定の基準値を超えている場合には、回転槽7の回転が不安定であると判断して(ステップS6にてYES)、ステップS7に移行する。そして、制御装置21は、ステップS7において、回転槽7におけるアンバランスの発生位置を判定する処理を実行する。
【0041】
即ち、図4に例示するように、制御装置21は、加速度センサ20から得られたZ軸方向の変位量Aと、X軸方向の変位量Bとの比、つまり、変位量Bを変位量Aで除算した値「B/A」を求め、その値「B/A」と所定の第1の閾値K1とを比較する(ステップS21)。そして、制御装置21は、「B/A」の値が第1の閾値K1よりも大きければ(ステップS21にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の下部であると判定する(ステップS22)。
【0042】
また、制御装置21は、「B/A」の値が第1の閾値K1以下である場合には(ステップS21にてNO)、「B/A」の値と所定の第2の閾値K2とを比較する(ステップS23)。そして、制御装置21は、「B/A」の値が第2の閾値K2よりも小さければ(ステップS23にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の上部であると判定する。
【0043】
また、制御装置21は、「B/A」の値が第2の閾値K2以上である場合、つまり、「B/A」の値と閾値K1,K2との比較に基づきアンバランスの発生位置を特定できなかった場合には(ステップS23にてNO)、Z軸方向の変位量Aを所定の第3の閾値K3と比較する(ステップS25)。そして、制御装置21は、変位量Aが第3の閾値K3よりも大きい場合には(ステップS25にてYES)、アンバランスの発生位置が回転槽7の下部であると判定する(ステップS26)。また、制御装置21は、変位量Aが第3の閾値K3以下であった場合には(ステップS25にてNO)、アンバランスの発生位置が回転槽7の上部および下部であると判定する。つまり、制御装置21は、アンバランスの発生状態が対向状態であると判定する。
【0044】
図5は、本開示に係る発明者が行った実験の結果、即ち、回転槽7におけるアンバランスの発生位置と「B/A」の値との関係を調べた実験結果を示している。この実験では、回転槽7の上部および下部の所定位置に各種の重さのウエイトを取り付けてアンバランス状態を疑似的に実現し、その状態で回転槽7を「棚」つまりほぼ或いは完全に一定となる所定回転数、例えば130rpmで回転させた際の「B/A」の値を調べた。このときのウエイトの重さは様々に変化させており、回転槽7の下部に取り付けるウエイトについては、例えば0~3600gの範囲において200g単位で変動させ、回転槽7の上部に取り付けるウエイトについては、例えば0~1600gの範囲において200g単位で変動させた。
【0045】
この実験結果によれば、例えば、回転槽7の上部にウエイトを付けず、下部に1200gのウエイトを付けた場合における「B/A」の値は「404」であった。また、回転槽7の上部に1000gのウエイトを付け、下部に400gのウエイトを付けた場合における「B/A」の値の値は「38」であった。
【0046】
図5に例示した実験結果に基づけば、回転槽7のアンバランスが下部で発生している場合は、例えば図5に二点鎖線aで囲んで示すように、「B/A」の数値が比較的大きな値、例えば180以上の値を示す傾向がある。換言すれば、「B/A」の数値が比較的大きな値、例えば180以上の値を示す場合には、回転槽7のアンバランスが「下部」で発生していると判定することが可能である。
【0047】
また、回転槽7のアンバランスが上部で発生している場合は、例えば図5に二点鎖線bで囲んで示すように、「B/A」の数値が比較的小さな値、例えば40以下の値を示す傾向がある。換言すれば、「B/A」の数値が比較的小さな値、例えば40以下の値を示す場合には、回転槽7のアンバランスが「上部」で発生していると判定することが可能である。
【0048】
従って、この実験結果に基づけば、回転槽7の回転速度が所定速度、この場合、130rpmでほぼ或いは完全に一定で維持されている状態で加速度センサ20による加速度の検出を実行する場合には、第1の閾値を例えば「180」で設定し、第2の閾値を例えば「40」で設定することにより、アンバランスの発生位置が回転槽7の「上部」であるのか「下部」であるのかを判定することが可能となる。
【0049】
なお、回転槽7の「上部」は、例えば、回転槽7の上下方向における中央部よりも上側に位置する所定の部位である。また、回転槽7の「下部」は、例えば、回転槽7の上下方向における中央部よりも下側に位置する所定の部位である。
【0050】
また、第1の閾値K1および第2の閾値K2は、上述したような実験結果に基づき予め決定することができる。また、第3の閾値K3も、上述したような実験結果、あるいは、決定した第1の閾値K1や第2の閾値K2に基づき予め決定することができる。なお、これらの閾値は、例えば、回転槽7の大きさや、定格容量、脱水行程における回転槽7の回転速度の設定値などに応じて、適宜変更して設定することができる。
【0051】
以上のような形態に基づき、制御装置21は、回転槽7におけるアンバランスの発生位置を判定する。そして、図3に例示するように、制御装置21は、アンバランスの発生位置の判定処理(ステップS7)を終了すると、その判定結果が「下部アンバランス」であるか否か(ステップS8)、「上部アンバランス」であるか否か(ステップS9)、「対向アンバランス」であるか否か(ステップS10)を確認する。
【0052】
なお、「下部アンバランス」は、アンバランスの発生位置の判定処理(ステップS7)による判定結果が「下部(図4のステップS22またはステップS26)」である場合が該当する。また、「上部アンバランス」は、アンバランスの発生位置の判定処理(ステップS7)による判定結果が「上部(図4のステップS24)」である場合が該当する。また、「対向アンバランス」は、アンバランスの発生位置の判定処理(ステップS7)による判定結果が「対向(図4のステップS27)」である場合が該当する。
【0053】
そして、制御装置21は、アンバランスの発生位置の判定結果が「下部アンバランス」である場合には(ステップS8にてYES)、アンバランス解消動作として「下部用アンバランス解消動作」を実行する(ステップS11)。また、制御装置21は、アンバランスの発生位置の判定結果が「上部アンバランス」である場合には(ステップS9にてYES)、アンバランス解消動作として「上部用アンバランス解消動作」を実行する(ステップS12)。また、制御装置21は、アンバランスの発生位置の判定結果が「対向アンバランス」である場合には(ステップS10にてYES)、アンバランス解消動作として「対向用アンバランス解消動作」を実行する(ステップS13)。なお、制御装置21は、何らかの理由によりアンバランスの発生位置が「不明」であると判断される場合には(ステップS8,S9,S10にてNO)、ステップS7に戻って、アンバランスの発生位置を判定する処理を再び実行する。
【0054】
次に、ステップS11の「下部用アンバランス解消動作」、ステップS12の「上部用アンバランス解消動作」、ステップS13の「対向用アンバランス解消動作」について、さらに詳細に説明する。
【0055】
(下部用アンバランス解消動作)
下部用アンバランス解消動作では、制御装置21は、水槽5内への給水量を所定の「低レベル」とする。即ち、制御装置21は、水槽5内に供給する水量を所定の標準水量よりも少なくする。また、制御装置21は、給水速度を所定の標準速度よりも遅い「低レベル」とする。また、制御装置21は、回転槽7の回転速度を所定の標準速度よりも遅い「低レベル」とする。また、制御装置21は、パルセータ9の回転速度を所定の回転速度よりも遅い「低レベル」とする。また、制御装置21は、水槽5内に発生する水流が所定の標準強さよりも弱い「低レベル」となるようにパルセータ9の回転態様を切り替える。なお、下部用アンバランス解消動作においては、回転槽7は、回転させないようにしてもよい。
【0056】
即ち、下部用アンバランス解消動作では、制御装置21は、少なくとも、パルセータ9の回転態様を「小刻み回転態様」に切り替える。「小刻み回転態様」は、パルセータ9の回転方向を、回転槽7にアンバランスが発生していない標準時よりも細かく切り替えるようにした回転態様である。
【0057】
より具体的に一例について説明すると、図6に例示するように、制御装置21は、パルセータ9を正転方向に例えば0.3秒回転させ、次に例えば0.6秒回転を停止し、次に反転方向に例えば0.5秒回転させ、次に例えば0.6秒停止させる動作を繰り返す。このとき、パルセータ9を正転方向および反転方向に加速させる時間は、何れの方向についても例えば0.2秒である。また、正転方向および反転方向におけるパルセータ9の回転速度は、何れの方向についても例えば110rpmである。
【0058】
なお、この制御例は、あくまでも一例であり、各種の数値は適宜変更して設定することができる。下部用アンバランス解消動作においては、パルセータ9の回転方向を正転方向および反転方向に比較的小刻みに切り替えながら回転させるようにするとよい。これにより、図7に例示するように回転槽7の主として下部において衣類Cが偏ったり絡まったりしている状態において、その衣類Cをほぐす効果を期待することができる。
【0059】
つまり、パルセータ9に近い位置である回転槽7の下部において発生しているアンバランスについては、パルセータ9の回転態様を、当該パルセータ9の回転方向を標準時つまりアンバランス未発生時よりも細かく切り替える「小刻み回転態様」に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の回転力を回転槽7下部の衣類に効率良く伝達することができ、回転槽7の下部におけるアンバランスを効果的に解消する効果を期待することができる。
【0060】
(上部用アンバランス解消動作)
上部用アンバランス解消動作では、制御装置21は、水槽5内への給水量を所定の「高レベル」とする。即ち、制御装置21は、水槽5内に供給する水量を所定の標準水量よりも多くする。また、制御装置21は、給水速度を所定の標準速度よりも速い「高レベル」とする。また、制御装置21は、回転槽7の回転速度を所定の標準速度と同等である「中レベル」あるいは所定の標準速度よりも速い「高レベル」とする。また、制御装置21は、パルセータ9の回転速度を所定の標準速度と同等である「中レベル」あるいは所定の標準速度よりも速い「高レベル」とする。また、制御装置21は、水槽5内に発生する水流が所定の標準強さと同等である「中レベル」あるいは所定の標準強さよりも強い「高レベル」となるようにパルセータ9の回転態様を切り替える。なお、上部用アンバランス解消動作においては、回転槽7は、回転させないようにしてもよい。
【0061】
即ち、上部用アンバランス解消動作では、制御装置21は、少なくとも、パルセータ9の回転態様を「大回転態様」に切り替える。「大回転態様」は、パルセータ9を、回転槽7にアンバランスが発生していない標準時よりも大きく回転させるようにした回転態様である。
【0062】
より具体的に一例について説明すると、図6に例示するように、制御装置21は、パルセータ9を正転方向に例えば1.5秒回転させ、次に例えば1.0秒停止し、次に反転方向に例えば1.5秒回転させ、次に例えば1.0秒停止させる動作を繰り返す。このとき、パルセータ9を正転方向および反転方向に加速させる時間は、何れの方向についても例えば1.0秒である。また、正転方向および反転方向におけるパルセータ9の回転速度は、何れの方向についても例えば140rpmである。
【0063】
なお、この制御例は、あくまでも一例であり、各種の数値は適宜変更して設定することができる。上部用アンバランス解消動作においては、パルセータ9を正転方向および反転方向に比較的大きく回転させるようにするとよい。これにより、図8に例示するように回転槽7の主として上部において衣類Cが偏ったり絡まったりしている状態において、その衣類Cをほぐす効果を期待することができる。
【0064】
つまり、パルセータ9から離れた位置である回転槽7の上部において発生しているアンバランスについては、パルセータ9の回転態様を、当該パルセータ9を標準時つまりアンバランス未発生時よりも大きく回転させる「大回転態様」に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の回転力を回転槽7上部の衣類に効率良く伝達することができ、回転槽7の上部におけるアンバランスを解消する効果を期待することができる。
【0065】
(対向用アンバランス解消動作)
対向用アンバランス解消動作では、制御装置21は、水槽5内への給水量を所定の「中レベル」とする。即ち、制御装置21は、水槽5内に供給する水量を所定の標準水量と同じレベルの水量とする。また、制御装置21は、給水速度を所定の標準速度と同等である「中レベル」とする。また、制御装置21は、回転槽7の回転速度を所定の標準速度と同等である「中レベル」あるいは所定の標準速度よりも速い「高レベル」とする。また、制御装置21は、パルセータ9の回転速度を所定の標準速度と同等である「中レベル」あるいは所定の標準速度よりも速い「高レベル」とする。また、制御装置21は、水槽5内に発生する水流が所定の標準強さと同等である「中レベル」あるいは所定の標準強さよりも強い「高レベル」となるようにパルセータ9の回転態様を切り替える。なお、対向用アンバランス解消動作においては、回転槽7は、回転させないようにしてもよい。
【0066】
即ち、対向用アンバランス解消動作では、制御装置21は、少なくとも、パルセータ9の回転態様を「混合回転態様」に切り替える。「混合回転態様」は、パルセータ9を、回転槽7にアンバランスが発生していない標準時よりも大きく回転させ、且つ、パルセータ9の回転方向を、回転槽7にアンバランスが発生していない標準時よりも細かく切り替えるようにした回転態様である。
【0067】
より具体的に一例について説明すると、図6に例示するように、制御装置21は、パルセータ9を正転方向に例えば1.0秒回転させ、次に例えば0.8秒回転を停止し、次に反転方向に例えば1.0秒回転させ、次に例えば0.8秒停止させる動作を繰り返す。このとき、パルセータ9を正転方向および反転方向に加速させる時間は、何れの方向についても例えば0.2秒である。また、正転方向および反転方向におけるパルセータ9の回転速度は、何れの方向についても例えば145rpmである。
【0068】
なお、この制御例は、あくまでも一例であり、各種の数値は適宜変更して設定することができる。対向用アンバランス解消動作においては、パルセータ9を正転方向および反転方向に下部用アンバランス解消動作時よりは比較的大きく、且つ、上部用アンバランス解消動作時よりは比較的小刻みに切り替えながら回転させるようにするとよい。これにより、図9に例示するように回転槽7の主として上部および下部において衣類Cが偏ったり絡まったりしている状態において、まずは下部側の衣類Cからほぐしていくことができる。また、下部側の衣類Cがほぐれることに伴い、上部側の衣類Cが下方に落下することから、上部側でアンバランスを発生させていた衣類Cについても、順次、ほぐしていくことが可能である。
【0069】
つまり、パルセータ9から離れた位置である回転槽7の上部およびパルセータ9に近い位置である回転槽7の下部において発生しているアンバランスについては、パルセータ9の回転態様を、当該パルセータを標準時つまりアンバランス未発生時よりも大きく回転させ、且つ、当該パルセータの回転方向を標準時つまりアンバランス未発生時よりも細かく切り替える「混合回転態様」に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の回転力を回転槽7上部の衣類および回転槽7下部の衣類の双方に効率良く伝達することができ、回転槽7の下部および上部において発生しているアンバランスを下部側から徐々に崩していくようにして解消する効果を期待することができる。
【0070】
なお、上述した各種のアンバランス解消動作における所定の標準水量は、例えば、洗濯機1が実行可能な周知の標準コースにおける水槽5内への給水量であってもよいし、独自に設定した標準的な給水量であってもよい。また、上述した各種の「中レベル」は、例えば、周知の標準コースにおいて想定される所定の標準的なレベルであってもよいし、独自に設定したレベルであってもよい。また、上述した各種の「低レベル」は、設定した「中レベル」よりも低い範囲において適宜変更して設定することができる。また、上述した各種の「高レベル」は、設定した「中レベル」よりも高い範囲において適宜変更して設定することができる。また、対向アンバランスは、回転槽7の主として上部および下部において同時にアンバランスが発生し、且つ、上部でアンバランスが発生している位置と、下部でアンバランスが発生している位置とが、上下方向において重なっていない状態であると定義することができる。
【0071】
以上に例示した本開示に係る洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定された回転槽7におけるアンバランスの発生位置に応じてアンバランス解消動作の内容を切り替える。この構成によれば、回転槽7におけるアバランスの発生位置に適した内容でアンバランス解消動作を行うことができ、アンバランスを効果的に解消することができる。
【0072】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の上部である場合には、アンバランス解消動作において水槽5内に供給する水量を所定の標準水量よりも多くするとよい。これにより、回転槽7の上部に存在する衣類を水槽5内の水に浮かせた状態あるいは水没させた状態でアンバランスの解消を図ることができ、アンバランスを一層効果的に解消することができる。
【0073】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の上部である場合には、アンバランス解消動作におけるパルセータ9の回転態様を、当該パルセータ9を標準時つまりアンバランス未発生時よりも大きく回転させる「大回転態様」に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の回転力を、当該パルセータ9から離れた位置である回転槽7の上部に存在する衣類に効率良く伝達することができ、アンバランスを一層効果的に解消することができる。
【0074】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の下部である場合には、アンバランス解消動作において水槽5内に供給する水量を所定の標準水量よりも少なくするとよい。これにより、回転槽7の下部に存在する衣類を水槽5内の水に浮かせた状態あるいは水没させた状態でアンバランスの解消を図ることができ、アンバランスを一層効果的に解消することができる。また、水槽5内への給水量を少なくした分、給水時間を短くして早期にアンバランス解消動作を開始することができ、アンバランスの解消を迅速に行うことができる。
【0075】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の下部である場合には、アンバランス解消動作におけるパルセータ9の回転態様を、当該パルセータ9の回転方向を標準時つまりアンバランス未発生時よりも細かく切り替える「小刻み回転態様」に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の回転力を、当該パルセータ9に近い位置である回転槽7の下部に存在する衣類に効率良く伝達することができ、アンバランスを一層効果的に解消することができる。
【0076】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の上部および下部である場合には、アンバランス解消動作において水槽5内に供給する水量を所定の標準水量と同じ水量とするとよい。これにより、少なくとも回転槽7の下部に存在する衣類を水槽5内の水に浮かせた状態あるいは水没させた状態を形成することができ、回転槽7の下部においてアンバランスを発生させている衣類からほぐすことができる。
【0077】
また、回転槽7の下部に発生しているアンバランスを解消することにより、回転槽7の上部においてアンバランスを発生させている衣類が下に落ちてくるため、回転槽7の上部および下部において発生しているアンバランスを、下部側から崩すようにして解消することができる。また、水槽5内への給水量を多くしない分、給水時間が増加してしまうことを抑制することができる。これにより、アンバランス解消動作の開始が遅延することを回避することができ、アンバランスの解消が遅れることを回避することができる。
【0078】
また、洗濯機1によれば、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス検知部22によって特定されたアンバランスの発生位置が回転槽7の上部および下部である場合には、アンバランス解消動作におけるパルセータ9の回転態様を、当該パルセータ9を標準時つまりアンバランス未発生時よりも大きく回転させ、且つ、当該パルセータ9の回転方向を標準時つまりアンバランス未発生時よりも細かく切り替える混合回転態様に切り替えるようにするとよい。これにより、パルセータ9の作用を、当該パルセータ9に近い位置である回転槽7の下部に存在する衣類に効率良く伝達することができ、また、当該パルセータ9から離れた位置である回転槽7の上部に存在する衣類にも効率良く伝達することができる。よって、アンバランスを一層効果的に解消することができる。
【0079】
(第2実施形態)
図10に例示するように、制御装置21は、さらに、回転槽7内の衣類の重量に応じて、パルセータ9の回転態様を標準時つまりアンバランス未発生時と異ならせるようにしてもよい。即ち、アンバランスは、回転槽7内に投入されている衣類の重量によっても発生しやすさが異なり、例えば、回転槽7内に投入されている衣類の量が多いほどアンバランスが発生しやすい傾向がある。そのため、制御装置21は、回転槽7内に投入されている衣類の量が多いほど、パルセータ9を大きく回転させたり、パルセータ9の回転方向を細かく切り替えたりする制御を行うとよい。これにより、回転槽7内の衣類の重量も加味したパルセータ9の回転態様により、アンバランスの解消を一層効果的に行うことができる。
【0080】
なお、この場合、制御装置21は、回転槽7内の衣類の重量が「軽レベル」である場合には、回転槽7におけるアンバランスの発生位置に関わらず、パルセータ9の回転方向の切り替えを同じ態様で行うようにしている。即ち、回転槽7内に投入されている衣類の量が比較的少ない場合には、そもそもアンバランスが発生しにくい。また、仮にアンバランスが発生したとしても、水槽5内に水を溜めた状態でパルセータ9を軽く回転させれば、そのパルセータ9の回転態様がどのような回転態様であっても、アンバランスの解消は十分に可能である。そのため、本開示では、制御装置21は、回転槽7内の衣類の重量が「軽レベル」である場合には、回転槽7におけるアンバランスの発生位置に関わらず、パルセータ9の回転方向の切り替えを同じ態様で行うようにしている。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、本開示は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、洗濯機1は、上述した複数の実施形態を適宜組み合わせた構成としてもよい。
【0082】
また、判定可能なアンバランスの発生位置は、「上部」、「下部」、「対向」だけでなく、例えば「中間部」など、その他の位置についても判定可能としてもよい。また、パルセータ9の回転態様は、「大回転態様」、「小刻み回転態様」、「混合回転態様」だけでなく、その他の回転態様にも切り替え可能としてもよい。そして、判定されたアンバランスの発生位置に応じた最適な回転態様でパルセータ9を回転させるようにすればよい。
【0083】
また、回転槽7内の衣類の重量を検知する重量検知部を備える場合には、アンバランス検知部22は、加速度センサ20の検出値に、重量検知部により検知された重量を加味して回転槽7のアンバランス発生位置を判定するように構成してもよい。例えば、衣類の重量が比較的小さいときには、回転槽7の底部にしか衣類は存在せず、上部で衣類が偏ったり絡まったりする可能性は低い。そのため、衣類の重量が比較的少ない場合には、仮に「上部アンバランス」が発生していると判定できる場合であっても、「上部アンバランス」と判定しないようにしてもよい。このように衣類の重量も加味することにより、アンバランス発生位置の判定を一層精度良く行うことが可能となる。
【0084】
また、上述の実施形態では、回転槽7の回転軸方向であるZ軸方向の変位量Aと前後方向であるX軸方向の変位量Bとを用いて、アンバランス発生位置を判定するようにしたが、Z軸方向の変位量Aと他の方向であるY軸方向つまり左右方向の変位量とを用いてアンバランス発生位置を判定することも可能である。また、上述の実施形態では、回転槽7の回転軸が上下方向である縦軸型の洗濯機1を例示したが、本開示は、回転槽としてのドラムを、水平方向やや傾斜方向の回転軸周りに回転させるようにした、いわゆる横軸型のドラム式の洗濯機にも適用可能である。この場合、加速度センサは、回転槽の回転軸方向とそれと直交する方向における加速度ひいては変位量を検出するように設ければよい。また、ドラムにおけるアンバランスの発生位置に応じて、ドラムの回転態様を切り替えるようにすればよい。
【0085】
また、アンバランス発生位置の判定に関する具体的な手法や各種の閾値などの設定値は、一例を示したに過ぎず、適宜変更して設定することができる。また、アンバランス発生位置の特定は、加速度センサ20の検出値に基づくものに限られず、その他の手法であってもよい。
【0086】
以上、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
図面中、1は洗濯機、5は水槽、7は回転槽、9はパルセータ、20は加速度センサ(加速度検出部)、22はアンバランス検知部、23はアンバランス解消動作実行部、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10