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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20240918BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20240918BHJP
   F23Q 7/00 20060101ALI20240918BHJP
   F23Q 7/22 20060101ALI20240918BHJP
   F23Q 7/24 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F23N5/00 P
F23N5/26 101A
F23N5/26 101E
F23N5/26 101Z
F23Q7/00 Z
F23Q7/22 D
F23Q7/22 605A
F23Q7/22 605E
F23Q7/22 610A
F23Q7/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021065383
(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公開番号】P2022160886
(43)【公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163636(JP,A)
【文献】特開平02-017321(JP,A)
【文献】米国特許第04615282(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0317755(US,A1)
【文献】特開2018-169158(JP,A)
【文献】特開昭59-063420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/00 - 5/26
F23Q 7/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナを用いて燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって、調理物を加熱調理する加熱調理装置において、
通電されると昇温することによって前記混合ガスに点火する点火ヒータと、
ユーザによる所定の点火操作を検出すると前記点火ヒータに通電することで、前記点火ヒータを前記混合ガスの着火温度よりも高い所定の点火温度に加熱する加熱手段と、
前記点火操作を検出するまでの間は、前記点火ヒータを前記混合ガスの着火温度よりも低い所定の予熱温度に予熱しておく予熱手段と
を備えることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理装置において、
前記ガスバーナで前記混合ガスが燃焼中か否かを判定する燃焼判定手段を備え、
前記予熱手段は、前記ガスバーナで前記混合ガスが燃焼中と判定されている場合は、前記点火ヒータの予熱を停止する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の加熱調理装置において、
前記ガスバーナは、
前記混合ガスが流出する複数の炎口が形成されて着脱可能なバーナヘッドと、
前記ガスバーナに装着された前記バーナヘッドを検知するバーナヘッド検知手段と
を備えており、
前記予熱手段は、前記ガスバーナに装着された前記バーナヘッドが検知できない場合は、前記点火ヒータの予熱を停止する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の加熱調理装置において、
前記ガスバーナは、五徳上に置かれた調理容器内の調理物を加熱調理すると共に、前記五徳上の前記調理容器の有無を検知する調理容器検知手段を備えており、
前記予熱手段は、前記五徳上の前記調理容器が検知できない場合は、前記点火ヒータの予熱を停止する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の加熱調理装置において、
前記加熱調理装置の前方に設定された所定の検知範囲内に存在する人間を検知する人間検知手段を備え、
前記予熱手段は、前記検知範囲内で人間が検知できない場合は、前記点火ヒータの予熱を停止する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の加熱調理装置において、
前記点火ヒータの予熱中は、その旨を報知する報知手段を備える
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の加熱調理装置において、
前記点火ヒータの温度を検出するヒータ温度検出手段と、
前記点火ヒータの温度が所定の報知温度を超えている場合には、その旨を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする加熱調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナを用いて燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって調理物を加熱調理する加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロや、グリルコンロや、ガスオーブンレンジなどの加熱調理装置にはガスバーナが搭載されており、ガスバーナで燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって、調理物を加熱調理している。ガスバーナで混合ガスの燃焼を開始するためには、混合ガスに点火する必要があるが、その方法としては、点火プラグを用いて火花放電させ、その時に生じる火花を利用して点火する方法が最も広く使用されている。もっとも、点火プラグを用いて火花放電する方法には、火花放電させる際に放電音が発生し、更には火花が同じ位置に飛ぶとは限らないので、火花が飛ぶ位置によっては点火に失敗することも起こり得るという問題がある。
【0003】
そこで、点火プラグの代わりに小さな点火ヒータを搭載しておき、点火ヒータを高温に加熱することによって、混合ガスに点火する方法が提案されている。この方法では火花放電させる必要が無いので放電音が発生することが無く、また、点火ヒータの位置が変化することもないので、確実に点火することが可能となる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-163636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、点火ヒータを用いて混合ガスに点火するガスバーナを搭載した従来の加熱調理装置では、混合ガスの着火温度よりも高い温度まで点火ヒータを加熱する必要があるため、混合ガスの点火に時間が掛かってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、点火ヒータを用いて混合ガスに迅速に点火することが可能な加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の加熱調理装置は次の構成を採用した。すなわち、
ガスバーナを用いて燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させることによって、調理物を加熱調理する加熱調理装置において、
通電されると昇温することによって前記混合ガスに点火する点火ヒータと、
ユーザによる所定の点火操作を検出すると前記点火ヒータに通電することで、前記点火ヒータを前記混合ガスの着火温度よりも高い所定の点火温度に加熱する加熱手段と、
前記点火操作を検出するまでの間は、前記点火ヒータを前記混合ガスの着火温度よりも低い所定の予熱温度に予熱しておく予熱手段と
を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる本発明の加熱調理装置においては、ガスバーナを用いて混合ガスを燃焼させることによって調理物を加熱調理しており、混合ガスに点火する際には、点火ヒータに通電して、点火ヒータのヒータ温度を混合ガスの着火温度よりも高い点火温度に昇温させることによって混合ガスに点火する。ここで、混合ガスへの点火は加熱調理装置のユーザが所定の点火操作を行ったことを受けて行われるから、点火ヒータのヒータ温度も、ユーザによる所定の点火操作があってから点火温度まで加熱される。しかし本発明の加熱調理装置では、ユーザによって所定の点火操作が行われていない場合でも、点火ヒータのヒータ温度を、混合ガスの着火温度よりも低い所定の予熱温度まで予熱している。
【0009】
点火ヒータに通電を開始してからヒータ温度が点火温度に達するまでにはある程度の時間がかかるから、ユーザによる所定の点火操作を受けて通電を開始するのでは、ガスバーナの点火に時間が掛かってしまう。しかし、点火ヒータを予め予熱しておけば、ユーザが点火操作してからヒータ温度が点火温度に達するまでの時間を短縮することができるので、ガスバーナに迅速に点火することができる。また、点火ヒータを予め予熱しておけば、点火時に点火ヒータが昇温する温度幅を小さくすることができるので、点火ヒータに過大な熱応力が生じることながく、点火ヒータの耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、ガスバーナで混合ガスが燃焼中か否かを判定して、混合ガスの燃焼中は、点火ヒータの予熱を停止することとしてもよい。
【0011】
点火ヒータの予熱はガスバーナを迅速に点火するためであり、ガスバーナで混合ガスを燃焼している間はガスバーナを点火することはなく、従って、点火ヒータを予熱する必要はない。このことから、ガスバーナでの混合ガスの燃焼中は点火ヒータの予熱を停止することとしておけば、無駄に点火ヒータを予熱する事態を回避することが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、複数の炎口が形成されたバーナヘッドをガスバーナから着脱可能としておき、更に、ガスバーナにバーナヘッドが装着されている場合は、そのバーナヘッドを検知可能としてもよい。そして、バーナヘッドが検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしてもよい。
【0013】
バーナヘッドが装着されていない状態ではガスバーナが点火されるとは考えにくいから、点火ヒータを予熱しておく必要はない。また、ガスバーナからバーナヘッドが取り外されている場合、加熱調理装置のユーザがガスバーナをお手入れしている可能性があり、その場合は、点火ヒータが予熱されていると、ユーザが点火ヒータに触れてしまい不快に感じる虞もある。そこで、ガスバーナに装着されたバーナヘッドが検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしておけば、無駄に点火ヒータを予熱することがなく、ユーザに不快感を与えてしまう事態も回避することができる。
【0014】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、五徳上に置かれた調理容器の有無を検知可能としておき、調理容器が検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしてもよい。
【0015】
ガスバーナで混合ガスを燃焼させるのは、五徳上に置かれた調理容器内の調理物を加熱調理するためであるから、ガスバーナに点火するに先立って五徳上に調理容器を載置するものと考えられる。従って、五徳上に調理容器が置かれていない状態では、ガスバーナに点火される可能性は低いと考えてよい。このことから、五徳上の調理容器を検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしておけば、無駄に点火ヒータを予熱する事態を回避することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、加熱調理装置の前方に設定された所定の検知範囲内に存在する人間を検知可能としておき、検知範囲内で人間が検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしてもよい。
【0017】
加熱調理装置のユーザは加熱調理装置の前方に立って加熱調理するから、ガスバーナに点火しようとするユーザは加熱調理装置の前方に立っている。従って、加熱調理装置の前方に人間が検知できない場合は、ガスバーナに点火される可能性は低いと考えてよい。このことから、加熱調理装置の前方に所定の検知範囲を設定しておき、検知範囲内で人間が検知できない場合は、点火ヒータの予熱を停止することとしてもおけば、無駄に点火ヒータを予熱する事態を回避することが可能となる。
【0018】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、点火ヒータが予熱中であることを報知することとしてもよい。
【0019】
こうすれば、点火ヒータが予熱されて熱くなっていることを知らずに、加熱調理装置のユーザが点火ヒータに触れてしまい、ユーザに不快感を与える事態を回避することが可能となる。
【0020】
また、上述した本発明の加熱調理装置においては、点火ヒータの温度を検出して、検出した温度が所定の報知温度を超えている場合には、その旨を報知するようにしてもよい。
【0021】
熱くなった点火ヒータの温度が低下するにはある程度の時間が掛かるから、予熱を停止してもしばらくの間は点火ヒータが熱くなっている可能性がある。従って、点火ヒータの温度が、予熱温度以下の温度に設定された所定の報知温度を超えている場合は、その旨を報知すれば、温度が低下する前の点火ヒータにユーザが触れてしまい、ユーザに不快感を与える事態を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施例の加熱調理装置1の外観形状を示す斜視図である。
図2】加熱調理装置1に搭載されているガスバーナ10の外観形状を示す説明図である。
図3】ガスバーナ10の点火炎口11jの形状を示した説明図である。
図4】点火ヒータ12を用いて点火するガスバーナ10の構造を示す分解組立図である。
図5】ガスバーナ10を縦方向に切断した時の断面図である。
図6】加熱調理装置1に搭載されているコントローラ20の内部構造を示す説明図である。
図7】加熱調理装置1の他の態様を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本実施例の加熱調理装置1の外観形状を示した斜視図である。図1に例示した加熱調理装置1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガスコンロであり、箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0024】
コンロ本体2の内部には、後述するガスバーナ10が、左右に並べて2つ収容されており、これらのガスバーナ10は、天板3に形成された挿通孔から、上部が突出した状態で搭載されている。また、天板3上には、それぞれのガスバーナ10の上部が突出した箇所を囲むようにして五徳4が設置されており、五徳4上に鍋などの調理容器を置くことで、調理容器を下方からガスバーナ10で加熱することが可能となっている。更に、ガスバーナ10には、中央を貫通した状態で鍋検知センサ5が内蔵されている。鍋検知センサ5は図示しない付勢バネによって上方に付勢されており、鍋検知センサ5の上部がガスバーナ10の上面中央から突出した状態となっている。そして、五徳4に調理容器を置くと、調理容器の底面が鍋検知センサ5を押し下げることで、鍋が置かれたことを検知することができる。また、鍋検知センサ5の上部には温度センサが内蔵されている。このため、調理容器の底面が鍋検知センサ5を押し下げると、鍋検知センサ5の上端が調理容器の底面に当接した状態となり、温度センサで調理容器の温度を検出することが可能となる。
【0025】
また、加熱調理装置1の前面にはグリル扉6が設けられており、グリル扉6の奥には図示しないグリル庫やグリルバーナが搭載されている。グリル扉6の右方には、2つのガスバーナ10に対応して2つのコンロ操作ボタン7cが設けられており、加熱調理装置1の使用者は何れかのコンロ操作ボタン7cを操作することによって、対応するガスバーナ10に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉6の左方には、グリル操作ボタン7gが設けられており、使用者はグリル操作ボタン7gを操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。
【0026】
また、2つのコンロ操作ボタン7cおよびグリル操作ボタン7gのそれぞれには、1つずつ(合計で3つ)の報知ランプ9が搭載されている。更に、グリル扉6の左右の位置には、人体センサ8が1つずつ搭載されている。人体センサ8は赤外線を検知することによって、加熱調理装置1の前面側に設定された所定の検知範囲Rに存在する人間を検知することが可能である。報知ランプ9や、人体センサ8は、コンロ本体2の内部に搭載されたコントローラ20に接続されている。
【0027】
図2は、本実施例の加熱調理装置1に搭載されたガスバーナ10の大まかな形状を示した斜視図である。図示されるようにガスバーナ10は、円環形状のバーナヘッド11と、バーナヘッド11が載置される円筒形状のバーナボディ16aと、円環形状でバーナボディ16aよりも大径に形成されたバーナリング15とを備えている。バーナヘッド11には、外周側面に複数の炎口11fが形成されており、外周側面の上部の一箇所からは庇部11hが突設されている。そして、庇部11hの下方には、バーナボディ16aから点火ヒータ12が突設されており、点火ヒータ12に対して向かい合う位置のバーナヘッド11の外周側面には、後述する点火炎口11jが形成されている。このため、点火ヒータ12を高温に加熱した状態で、後述する点火炎口11jから燃料ガスと空気との混合ガスを流出させると、点火ヒータ12の熱によって混合ガスを着火させることができる。そして、その炎が、複数の炎口11fから流出する混合ガスに火移りすることによってガスバーナ10での燃焼が開始される。
【0028】
また、バーナリング15の一部には挿通孔15aが形成されており、この挿通孔15aには、バーナリング15の下方から上方に向かって円柱形状の炎センサ13が挿通されており、炎センサ13の先端はバーナヘッド11の側方の位置に達している。このため、ガスバーナ10の燃焼中は、複数の炎口11fに形成された混合ガスの炎を炎センサ13で検知することができるので、炎センサ13の出力に基づいて、ガスバーナ10の燃焼中か否かを判断することができる。また、バーナヘッド11の中央に開口する中央孔11cからは、円柱形状の鍋検知センサ5の上部が突出した状態となっている。
【0029】
図3は、図2中に太い実線で示した矢印Pの方向からバーナヘッド11を見ることによって、庇部11hの下方に点火ヒータ12が突設されている様子や、点火ヒータ12に向かい合う位置のバーナヘッド11の外周側面に点火炎口11jが形成されている様子を示した説明図である。図示されるように、庇部11hの下方には細長い板状の点火ヒータ12が突設されている。そして、点火ヒータ12の奥側のバーナヘッド11の外周側面には、点火ヒータ12に対して両側の位置に点火炎口11jが形成されている。更に、点火ヒータ12から見て、点火炎口11jよりも外側のバーナヘッド11の外周側面には複数の炎口11fが形成されている。このため、点火ヒータ12を高温に加熱して、点火炎口11jから混合ガスを流出させると、点火ヒータ12の熱で点火炎口11jから流出する混合ガスに点火することができる。そして、その炎が、複数の炎口11fから流出する混合ガスに火移りすることによってガスバーナ10での燃焼を開始することが可能となる。
【0030】
図4は、本実施例のガスバーナ10の構造を示す分解組立図である。上述したように、本実施例のガスバーナ10は、バーナボディ16aの上にバーナヘッド11が載置された構造となっているが、バーナボディ16aはバーナ本体16の一部分となっている。従って、ガスバーナ10は、バーナヘッド11と、バーナリング15と、バーナ本体16とを備えていることになる。
【0031】
バーナ本体16は、円筒形状のバーナボディ16aと、混合通路16bとを備えており、混合通路16bの一端側はバーナボディ16aに接続されていると共に、混合通路16bの他端側は開口端16cとなっている。そして、開口端16cから混合通路16b内に燃料ガスおよび空気を供給すると、混合通路16b内で燃料ガスと空気とが混合することによって混合ガスが形成され、その混合ガスがバーナボディ16a内に流入する。また、バーナボディ16aの上端には、幅の狭い円環形状の載置面16dが形成されており、この載置面16dの上にバーナヘッド11が載置される。このため、混合通路16bからバーナボディ16aに流入した混合ガスは、バーナボディ16aからバーナヘッド11を経由して、バーナヘッド11の外周側面に形成された複数の炎口11fから流出する。
【0032】
また、バーナボディ16aには、点火ヒータ12が上向きに突設されている。点火ヒータ12は、セラミック材料で形成されており、通電すると発熱するセラミックスヒータである。また、点火ヒータ12は、自身の温度が高くなるに従って抵抗値が大きくなる特性(いわゆるPTC特性)を有している。従って、点火ヒータ12の抵抗値を検出することで、点火ヒータ12の温度を検出することが可能となっている。更に、バーナボディ16aの中央には、円柱形状の鍋検知センサ5が搭載されており、バーナボディ16aの側方の位置には、図示しない固定金具によって炎センサ13がバーナ本体16に固定されている。
【0033】
バーナリング15は円環形状の部材であり、部材の上面側には、半径方向外側に向かって下方に傾斜する傾斜面15bが形成されている。更に、傾斜面15bの半径方向内側は下方に向けて折り曲げられることによって、円筒形状の内周面15cが形成されている。内周面15cの内径はバーナボディ16aの外径よりも少しだけ大きく設定されており、このため、バーナボディ16aが内周面15cの内側に挿入されるようにして、バーナリング15をバーナボディ16aに組付けると、バーナボディ16aの上部がバーナリング15の傾斜面15bから突出した状態となる。また、バーナリング15は、傾斜面15bの一部が上方から平坦に凹まされることによって平坦部15dが形成されており、バーナリング15をバーナボディ16aに組み付ける際には、平坦部15dをバーナボディ16aの点火ヒータ12に対して位置合わせし、尚且つ、バーナリング15の挿通孔15aを炎センサ13に対して位置合わせした状態で、バーナリング15をバーナボディ16aに組み付ける。
【0034】
バーナヘッド11は、中央に中央孔11cが形成された円板形状の天井部11aと、天井部11aの外周部分から下方に向けて突設された円筒形状の筒状壁11bと、中央孔11c下方に向けて、筒状壁11bよりも長く突設された円筒形状の内筒11dとを備えている。筒状壁11bの下端面には、複数の炎口溝11gが放射状に形成されており、これらの炎口溝11gは筒状壁11bの外周側面に開口している。バーナボディ16aの載置面16dにバーナヘッド11を載置すると、筒状壁11bに形成された炎口溝11gの下面側が載置面16dによって塞がれる。その結果、筒状壁11bの外周側面に炎口溝11gが開口した位置には炎口11f(図2参照)が形成されることになる。また、筒状壁11b上部の一箇所からは庇部11hが突設されている。
【0035】
バーナボディ16aの載置面16dの上にバーナヘッド11を載置する際には、バーナヘッド11の庇部11hが、バーナボディ16aから突出した点火ヒータ42の上に来るように、尚且つ、バーナボディ16aの中央に突設された鍋検知センサ5が、バーナヘッド11の内筒11dの内側に挿入されるように、バーナヘッド11を位置合わせする。その状態でバーナヘッド11を静かに下ろしていくと、鍋検知センサ5の上部がバーナヘッド11の中央孔11cから突出した状態となる。そして、更にバーナヘッド11を下していき、バーナヘッド11の筒状壁11bが載置面16dに当接したら、バーナヘッド11の載置が完了する。
【0036】
図5は、点火ヒータ12の部分でガスバーナ10を縦方向に切断した時の断面図である。図4を用いて前述したように、バーナボディ16aは円筒形状となっており、バーナボディ16aの上にバーナヘッド11を載置すると、バーナボディ16aの内側の空間にバーナヘッド11の内筒11dが挿入された状態となる。また、バーナボディ16aの一箇所には点火ヒータ12が搭載されている。このため、点火ヒータ12が搭載されている付近では、図5に示されるように、バーナボディ16aの内壁面16eがバーナヘッド11の内筒11dに接近した状態となっている。
【0037】
本実施例のガスバーナ10は、内壁面16eが内筒11dに接近した位置(すなわち、内壁面16eと内筒11dとの距離が小さくなっている位置)に、光学式の近接センサ17が搭載されている。光学式の近接センサ17には、発光ダイオードなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とが一体に組み込まれている。従って、近接センサ17に近接した位置に物体(ここではバーナヘッド11の内筒11d)が存在すれば、発光素子が放射した光が物体で反射して受光素子で検出されるので、物体(内筒11d)が存在すること(すなわち、バーナヘッド11が載置されていること)を検知することが可能となっている。
【0038】
尚、ここでは、バーナヘッド11が載置されているか否かを検知するために、光学式の近接センサ17を用いているものとして説明したが、バーナヘッド11が載置されていることを検知する方法は、必ずしも光学式の近接センサ17を用いた方法でなくても構わない。例えば、バーナヘッド11が載置されると、バーナヘッド11の一部(例えば、内筒11d)によって押されて接点が閉じる接点スイッチを、バーナボディ16aの適切な位置に搭載しておき、接点スイッチの接点の状態を検知することで、バーナヘッド11が載置されているか否かを検知するようにしてもよい。
【0039】
上述したように、本実施例の加熱調理装置1には、鍋検知センサ5や、コンロ操作ボタン7cや、グリル操作ボタン7gや、人体センサ8や、報知ランプ9や、点火ヒータ12や、炎センサ13や、近接センサ17が搭載されており、これらはコントローラ20に接続されている。コントローラ20は、マイクロコンピュータや、メモリやタイマなどの各種のLSIなどによって構成されており、メモリ内には各種のプログラムが記憶されている。それらのプログラムの中には、加熱調理装置1に搭載されたガスバーナ10を迅速に点火するためのプログラムも存在する。すなわち、点火ヒータ12を用いて点火する場合、点火プラグから火花を飛ばして点火する場合に比べて、点火に要する時間が長くなる傾向があるが、本実施例の加熱調理装置1では、コントローラ20が以下のような制御を行うことによって、点火に要する時間を短縮し、その結果、迅速に点火することが可能となっている。
【0040】
尚、図1を用いて前述したように、加熱調理装置1にはグリル扉6の奥に、図示しないグリルバーナも搭載されている。グリルバーナは、外観形状がガスバーナ10とは異なるものの、基本的な構造はガスバーナ10と共通する。すなわち、複数の炎口が形成されたバーナヘッドと、混合通路を有するバーナ本体とを備えており、混合通路の開口端に向けて燃料ガスを噴射すると、燃料ガスと一緒に空気が混合通路内に流入して混合する。そうして混合通路内で形成された混合ガスがバーナヘッドに流入してバーナヘッドの炎口から流出する。その混合ガスに点火ヒータを用いて点火すると、グリルバーナでの燃焼が開始されるようになっている。従って、コントローラ20は、グリルバーナについても点火に要する時間を短縮して、迅速に点火することが可能となっている。
【0041】
図6は、ガスバーナ10の点火に要する時間を短縮するために、本実施例のコントローラ20が備える機能についての説明図である。図6に示されるように、本実施例のコントローラ20は、加熱制御部21や、ヒータ温度検出部22や、予熱制御部23や、燃焼判定部24や、バーナヘッド検知部25や、調理容器検知部26や、人体検知部27や、報知制御部28などを備えている。尚、これらの「部」は、加熱調理装置1に搭載されたガスバーナ10やグリルバーナの点火に要する時間を短縮するために、コントローラ20が備える機能を表したものである。従って、コントローラ20の内部が、これらの「部」に対応する単位で、物理的に区分可能となっていることを意味しているわけではない。実際には、これらの「部」はコンピュータプログラムによって実現することもできるし、LSIなどを用いた電子回路によって実現することもできるし、更には、これらを組み合わせることによって実現することもできる。
【0042】
加熱制御部21は、コンロ操作ボタン7cおよびグリル操作ボタン7gに接続されている。加熱調理装置1のユーザがコンロ操作ボタン7cあるいはグリル操作ボタン7gに対して所定の点火操作(例えば、コンロ操作ボタン7cあるいはグリル操作ボタン7gを押し込む操作)を行うと、加熱制御部21は、点火操作が行われたこと、および点火操作が行われたコンロ操作ボタン7cあるいはグリル操作ボタン7gを検出する。そして、点火操作が行われたコンロ操作ボタン7cあるいはグリル操作ボタン7gに対応するガスバーナ10の点火ヒータ12、あるいはグリルバーナの点火ヒータに通電することによって、点火ヒータ12(あるいはグリルバーナの点火ヒータ)の加熱を開始する。
【0043】
尚、ガスバーナ10の点火ヒータ12に対する以下の説明は、グリルバーナの点火ヒータに対しても同様に当てはまる。このため、以下では、専らガスバーナ10の点火ヒータ12について説明し、グリルバーナの点火ヒータについては、ガスバーナ10の点火ヒータ12についての説明を準用するものとする。
【0044】
前述したように本実施例の点火ヒータ12はPTC特性、すなわち温度が高くなるに従って抵抗値が大きくなる特性を有している。そこで、ヒータ温度検出部22は、点火ヒータ12の抵抗を検出することによって点火ヒータ12のヒータ温度を検出して、加熱制御部21に出力する。加熱制御部21は、ヒータ温度検出部22から受け取ったヒータ温度が、混合ガスの着火温度よりも高い温度に設定された点火温度(代表的には600℃)となるように、点火ヒータ12の通電量を制御する。
【0045】
点火ヒータ12の通電量の制御は、点火ヒータ12に印加する電圧値を増減させることによって制御することもできるが、加熱制御部21は、所定電圧でパルス状の電圧を一定周期で印加し、電圧を印加するパルスの時間幅を変更するPWM制御を行うことによって、点火ヒータ12の通電量を制御している。こうすれば、点火ヒータ12に印加する電圧値を増減させる場合よりも簡単に点火ヒータ12の通電量を制御することができる。
【0046】
また、コントローラ20には予熱制御部23も搭載されている。この予熱制御部23は、後述する所定の禁止条件が成立していない場合は、点火ヒータ12に通電することによって、所定の予熱温度に予熱する。予熱温度は、混合ガスの着火温度よりも低い温度(代表的には100~150℃)に設定されている。予熱制御部23は、ヒータ温度検出部22からヒータ温度を取得して、ヒータ温度が予熱温度となるように、PWM制御によって点火ヒータ12の通電量を制御する。
【0047】
尚、予熱制御部23は点火ヒータ12を予熱するに際して、加熱制御部21が点火ヒータ12を加熱中であるか否かを確認して、加熱中である場合は予熱を行わないようにしてもよい。また、加熱調理装置1に図示しない温度センサを搭載しておき、点火ヒータ12を予熱するに際しては、温度センサを用いて検出した室温を考慮して予熱してもよい。すなわち、室温に対して、点火ヒータ12の適切な通電時間あるいは通電量を予め記憶しておき、室温に対応する通電時間あるいは通電量で、点火ヒータ12を予熱するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施例では、加熱制御部21や予熱制御部23は、ガスバーナ10の点火ヒータ12毎に、加熱あるいは予熱を行うが、全てのガスバーナ10の点火ヒータ12を区別することなく、加熱あるいは予熱を行うものとしてもよい。すなわち、加熱調理装置1に搭載されている何れかのガスバーナ10の点火ヒータ12を加熱する場合には、全ての点火ヒータ12を加熱してもよい。こうすれば、コントローラ20の内部の制御を簡単にすることができる。更には、以下の理由から、加熱調理装置1の安全性を向上させることも可能となる。
【0049】
先ず、加熱調理装置1のガスバーナ10(およびグリルバーナ)には、燃焼させる燃料ガスの流量を制御するためにガス流量制御弁が搭載されている。燃焼させる燃料ガスの流量はガスバーナ10(およびグリルバーナ)毎に違うから、ガス流量制御弁もガスバーナ10(およびグリルバーナ)毎に搭載されている。また、ガス流量制御弁が故障して完全には閉弁できなくなっても、ガスバーナ10から燃料ガスが漏れ出すことが無いように、ガス流量制御弁の上流には元弁と呼ばれる電磁開閉弁が搭載されており、ガスバーナ10で燃料ガスを燃焼させない場合は元弁を閉弁させるようになっている。このように、元弁は、ガス流量制御弁の故障に備えてバックアップとして搭載された電磁開閉弁であるため、複数のガスバーナ10で共用されることが多い。
【0050】
もっとも、元弁を共用する複数のガスバーナ10の中で、あるガスバーナ10のガス流量制御弁が故障して完全には閉弁できなくなった場合、他のガスバーナ10で燃料ガスを燃焼させようとすると、元弁が開弁するため、故障したガス流量制御弁のガスバーナ10からは燃料ガスが漏れ出してしまう可能性がある。これに対して、何れかのガスバーナ10の点火ヒータ12に対しての点火指示があった場合には、その点火ヒータ12だけでなく、全ての点火ヒータ12を点火温度に加熱しておけば、ガス流量制御弁が故障したガスバーナ10でも点火することができるので、ガスバーナ10から燃料ガスが漏れ出すことを回避することができる。加えて、加熱調理装置1のユーザは、点火しようとしていないガスバーナ10で燃焼が開始されるので、そのガスバーナ10のガス流量制御弁が故障していることを認識して、早めに修理することが可能となる。
【0051】
また、図6に示したように、予熱制御部23には、燃焼判定部24や、バーナヘッド検知部25や、調理容器検知部26や、人体検知部27が接続されている。ここで、燃焼判定部24は、炎センサ13(図2参照)に接続されており、炎センサ13からの出力に基づいて、ガスバーナ10が燃焼中か否かを判定した後、その結果を予熱制御部23に出力する。バーナヘッド検知部25は、近接センサ17(図5参照)に接続されており、近接センサ17からの出力に基づいて、ガスバーナ10のバーナボディ16aに載置されたバーナヘッド11を検知した後、その結果を予熱制御部23に出力する。調理容器検知部26は、鍋検知センサ5に接続されており、鍋検知センサ5からの出力に基づいて、ガスバーナ10の五徳4上に置かれた調理容器を検知した後、その結果を予熱制御部23に出力する。更に、人体検知部27は、人体センサ8に接続されており、人体センサ8からの出力に基づいて、加熱調理装置1の前面に設定された検知範囲R内に存在する人間を検知した後、その結果を予熱制御部23に出力する。
【0052】
予熱制御部23は、燃焼判定部24や、バーナヘッド検知部25や、調理容器検知部26や、人体検知部27から受け取った内容に基づいて、所定の禁止条件に該当するか否かを判断する。禁止条件については後ほど詳しく説明する。そして、禁止条件に該当していない場合には、点火ヒータ12の予熱を開始するようになっている。尚、本実施例では、燃焼判定部24と、バーナヘッド検知部25と、調理容器検知部26と、人体検知部27とが予熱制御部23に接続されているものとして説明するが、必ずしもこれら全てが接続されている必要はない。
【0053】
また、図6に示したように、コントローラ20には報知制御部28も搭載されている。報知制御部28は、ヒータ温度検出部22と予熱制御部23とガスバーナ10毎に搭載された報知ランプ9とに接続されている。そして、予熱制御部23が点火ヒータ12を予熱中、あるいはヒータ温度検出部22から受け取ったヒータ温度が所定の報知温度よりも高い場合は、報知ランプ9を点灯させる。報知温度は、点火ヒータ12の予熱温度よりは低いが、点火ヒータ12に触れたユーザが熱いと感じる温度(例えば50℃)よりも高い温度に設定されている。こうすれば、点火ヒータ12が予熱中であること、あるいは点火ヒータ12が熱くなっていることを報知することができるので、加熱調理装置1のユーザが、点火ヒータ12が熱くなっていることを知らずにバーナヘッド11を取り外して、点火ヒータ12に触れてしまう事態を防止することができる。
【0054】
尚、本実施例の加熱制御部21は、本発明の「加熱手段」に対応し、本実施例のヒータ温度検出部22は本発明の「ヒータ温度検出手段」に対応し、本実施例の予熱制御部23は、本発明の「予熱手段」に対応する。また、本実施例の燃焼判定部24は、本発明の「燃焼判定手段」に対応し、本実施例のバーナヘッド検知部25は、本発明の「バーナヘッド検知手段」に対応し、本実施例の調理容器検知部26は、本発明の「調理容器検知手段」に対応する。更に、本実施例の人体検知部27は、本発明の「人間検知手段」に対応し、本実施例の報知制御部28は、本発明の「報知手段」に対応する。
【0055】
また、前述したように予熱制御部23は、燃焼判定部24や、バーナヘッド検知部25や、調理容器検知部26や、人体検知部27から受け取った内容に基づいて、所定の禁止条件に該当するか否かを判断し、禁止条件に該当していない場合には、点火ヒータ12を予熱する。ここで、禁止条件とは以下のような条件である。
【0056】
先ず、ガスバーナ10が燃焼中であれば、ガスバーナ10を点火する必要はないので、点火ヒータ12を予熱する必要もない。逆に言えば、点火ヒータ12を予熱する必要があるのは、ガスバーナ10が燃焼していない場合となる。従って、予熱制御部23は、燃焼判定部24からガスバーナ10が燃焼中か否かの判定結果を受け取って、ガスバーナ10が燃焼中であった場合は、点火ヒータ12の予熱は不要と判断する。以上のことから、[禁止条件A]には、「ガスバーナ10が燃焼中である」という条件が設定されている。
【0057】
また、バーナヘッド11が取り外された状態では、ガスバーナ10が点火されることはないので、点火ヒータ12を予熱する必要はない。また、バーナヘッド11が外されているということは、ユーザがガスバーナ10のお手入れ中(清掃など)の可能性があり、その場合、点火ヒータ12が予熱されているとユーザが火傷する虞がある。そこで、予熱制御部23は、バーナヘッド検知部25からバーナヘッド11の検知結果を受け取って、バーナヘッド11が検知できない場合は、点火ヒータ12の予熱は不要と判断する。以上のことから、[禁止条件B]には、「ガスバーナ10にバーナヘッド11が装着されていない」という条件が設定されている。
【0058】
尚、本実施例では、点火ヒータ12を予熱するか否かは、点火ヒータ12毎に判断するものとしているが、複数のガスバーナ10が搭載されている場合、一部のガスバーナ10のバーナヘッド11を外した状態で、他のガスバーナ10で加熱調理することは考えにくい。従って、複数のガスバーナ10の何れかでバーナヘッド11が検知できない場合は、全てのガスバーナ10の点火ヒータ12について予熱は不要と判断してもよい。
【0059】
また、加熱調理装置1のユーザがガスバーナ10に点火するのは、五徳4上に置かれた調理容器内の調理物を加熱調理するためであるから、ユーザは、ガスバーナ10に点火するに先立って五徳4上に調理容器を載置すると考えられる。逆に言えば、五徳4上に調理容器が載置されていない場合は、点火ヒータ12を予熱する必要はないと考えられる。そこで、予熱制御部23は、調理容器検知部26から調理容器の検知結果を受け取って、調理容器が検知できない場合は、点火ヒータ12の予熱は不要と判断する。以上のことから、[禁止条件C]には、「五徳4上に調理容器が載置されていない」という条件が設定されている。
【0060】
また、図1を用いて前述したように、加熱調理装置1のユーザは、コンロ操作ボタン7cあるいはグリル操作ボタン7gに対して所定の点火操作を行うことによって、ガスバーナ10あるいはグリルバーナを点火するから、点火時にユーザは加熱調理装置1の前面に立っている。逆に言えば、加熱調理装置1の前面に人間が立っていない場合は、ガスバーナ10やグリルバーナが点火される可能性は低いので、点火ヒータ12を予熱する必要はないと考えてよい。従って、予熱制御部23は、人体検知部27から人体の検知結果を受け取って、人体が検知できない場合は、点火ヒータ12の予熱は不要と判断する。以上のことから、[禁止条件D]には、「加熱調理装置1の前方に人間が存在しない」という条件が設定されている。
【0061】
尚、本実施例では、加熱調理装置1の前方の領域中で人間が検知できない部分が生じないように、加熱調理装置1の前面の複数個所に人体センサ8が搭載されている。そして、人間を検知した人体センサ8が何れか一方であっても、検知された人間は、何れのガスバーナ10あるいはグリルバーナについても点火することができる。従って、何れかの人体センサ8で人間が検知された場合は、全てのガスバーナ10およびグリルバーナについても点火される可能性があるので、全ての点火ヒータ12の予熱が必要と判断する。
【0062】
以上に説明したように、本実施例の予熱制御部23は、以下の4つの禁止条件に該当するか否かを判断し、何れの禁止条件にも該当しない場合に点火ヒータ12を予熱する。
[禁止条件A]ガスバーナ10が燃焼中である。
[禁止条件B]ガスバーナ10にバーナヘッド11が装着されていない。
[禁止条件C]五徳4上に調理容器が載置されていない。
[禁止条件D]加熱調理装置1の前方に人間が存在しない。
【0063】
尚、本実施例の予熱制御部23は、上記の4つの全ての禁止条件を考慮しているが、一部の禁止条件に付いては考慮しないようにしても良い。例えば、加熱調理装置1に人体センサ8が搭載されていない場合は、禁止条件Dについては考慮しないようにしても良い。また、炎センサ13や、近接センサ17や、鍋検知センサ5や、人体センサ8が搭載されている場合でも、必要に応じて所定の禁止条件だけを考慮するようにしても良い。更には、ユーザの設定によって点火ヒータ12の予熱を禁止できるようにしても良い。このとき、禁止条件の内容や、予熱を禁止するガスバーナ10をユーザが設定できるようにしてもよい。
【0064】
以上に詳しく説明したように、本実施例の加熱調理装置1は、ガスバーナ10を点火する前に、予め点火ヒータ12を予熱温度に予熱している。このため、ユーザによって点火操作が行われたときに、点火ヒータ12の温度を、室温からではなく予熱温度から昇温させることができるので、短時間で点火温度まで昇温させることができる。その結果、混合ガスに迅速に点火することが可能となる。
【0065】
また、点火時に点火ヒータ12を昇温させる温度幅を小さくすることができるので、点火ヒータ12が損傷する可能性を小さくすることも可能となる。更に、点火ヒータ12を予熱する際に、所定の禁止条件に該当するか否かを確認して、禁止条件に該当しない場合に予熱している。上述したように禁止条件はガスバーナ10が点火されるとは考えにくい条件に設定されている。このため、ガスバーナ10が点火される可能性が低い場合に、無駄に点火ヒータ12を予熱することも回避することができる。
【0066】
また、上述した実施例では、加熱調理装置1に搭載した人体センサ8を用いて人間を検知し、ガスバーナ10に内蔵した近接センサ17を用いて、ガスバーナ10に装着されたバーナヘッド11を検知するものとして説明した。しかし、加熱調理装置1の前面に立っている人間や、ガスバーナ10に装着されたバーナヘッド11を検知することができるのであれば、必ずしも人体センサ8や近接センサ17を用いて検知する必要はない。例えば、加熱調理装置1および加熱調理装置1の前面の領域を撮影した画像を解析することによって、加熱調理装置1の前面に存在する人間の有無や、ガスバーナ10に装着されたバーナヘッド11の有無を判断するようにしても良い。
【0067】
図7に示した例では、加熱調理装置1の上部に設置されたレンジフードにカメラ61と無線通信器62とが搭載されており、無線通信器62と、加熱調理装置1のコントローラ20とが無線で通信可能となっている。そして、カメラ61で、加熱調理装置1および加熱調理装置1の前面の領域を上方から撮影して、その画像を無線通信器62から加熱調理装置1のコントローラ20に送信する。コントローラ20は、受け取った画像を解析することによって、加熱調理装置1の前面に存在する人間の有無や、ガスバーナ10に装着されたバーナヘッド11の有無を判断する。このようにしても、上述した実施例と同様にして、ガスバーナ10が点火される可能性の無い場合に無駄に点火ヒータ12を予熱する事態を回避することが可能となる。
【0068】
以上、本実施例の加熱調理装置1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施することが可能である。
【0069】
例えば、上述した実施例では、加熱調理装置1にガスバーナ10およびグリルバーナが搭載されており、ガスバーナ10やグリルバーナを迅速に点火可能であるものとして説明した。しかし、点火ヒータで混合ガスに点火するのであれば、必ずしもガスバーナ10やグリルバーナである必要はない。例えば、加熱調理装置1がガスオーブンを搭載している場合は、上述した本発明を適用することで、ガスオーブンを迅速に点火することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1…加熱調理装置、 2…コンロ本体、 3…天板、 4…五徳、
5…鍋検知センサ、 6…グリル扉、 7c…コンロ操作ボタン、
7g…グリル操作ボタン、 8…人体センサ、 9…報知ランプ、
10…ガスバーナ、 11…バーナヘッド、 11a…天井部、
11b…筒状壁、 11c…中央孔、 11d…内筒、 11f…炎口、
11g…炎口溝、 11h…庇部、 12…点火ヒータ、 13…炎センサ、
15…バーナリング、 15a…挿通孔、 15b…傾斜面、
15c…内周面、 15d…平坦部、 16…バーナ本体、
16a…バーナボディ、 16b…混合通路、 16c…開口端、
16d…載置面、 16e…内壁面、 17…近接センサ、
20…コントローラ、 21…加熱制御部、 22…ヒータ温度検出部、
23…予熱制御部、 24…燃焼判定部、 25…バーナヘッド検知部、
26…調理容器検知部、 27…人体検知部、 28…報知制御部、
42…点火ヒータ、 61…カメラ、 62…無線通信器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7