(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】保健事業支援装置及び保健事業支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240918BHJP
【FI】
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2021075015
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大崎 高伸
(72)【発明者】
【氏名】伴 秀行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳也
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-152182(JP,A)
【文献】特開2018-081397(JP,A)
【文献】特開2005-258853(JP,A)
【文献】特開2007-011747(JP,A)
【文献】特開2013-003627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保健事業支援装置であって、
プロセッサとメモリとを有し、
表示装置に接続され、
前記メモリは、
保健事業対象者を示す情報と、
医療提供施設と、前記医療提供施設が実行した医療サービス提供の適正化の項目の履歴と、を示す医療情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記医療情報を参照して、前記適正化の履歴に基づいて、前記医療提供施設の評価値を算出し、
前記保健事業対象者を、前記評価値に基づいて、前記医療提供施設に割り当て、
前記保健事業対象者を割り当てた医療提供施設を示す情報を、前記表示装置に表示する、保健事業支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保健事業支援装置であって、
前記プロセッサは、
前記医療情報における、前記適正化の項目それぞれについて、全ての適正化の実行回数に占める当該適正化の割合の逆数に基づく重みを算出し、
前記算出した重みと、前記適正化の項目の実行回数に基づいて、前記評価値を算出する、保健事業支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保健事業支援装置であって、
前記メモリは、前記医療提供施設が前記適正化によって削減した費用を示す情報を保持し、
前記プロセッサは、
前記適正化の履歴と、前記費用と、に基づいて、前記医療提供施設の評価値を算出する、保健事業支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の保健事業支援装置であって、
前記メモリは、
被保険者の個人情報と、前記被保険者が受診した保健事業の結果と、を示す個人健康情報と、
前記保健事業の結果に基づく、被保険者が保健事業対象者となる基準を示す、保健事業対象基準情報と、を保持し、
前記保健事業対象者を示す情報は、前記プロセッサが、前記個人健康情報と、前記保健事業対象基準情報が示す基準と、を比較して、前記被保険者から前記保健事業対象者を特定したことによって得られる、保健事業支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の保健事業支援装置であって、
前記プロセッサは、
前記医療提供施設を割り当てられた保健事業対象者の個人情報を、前記個人健康情報から取得し、
前記取得した個人情報を、前記表示装置に表示する、保健事業支援装置。
【請求項6】
請求項4に記載の保健事業支援装置であって、
前記メモリは、前記医療提供施設において、前記保健事業対象者が保健事業の参加勧奨をされたかを示す実績管理情報を保持し、
前記プロセッサは、前記医療提供施設それぞれについて、前記保健事業対象者を割り当てた数、前記実績管理情報が示す前記参加勧奨の数、及び前記個人健康情報が示す前記参加勧奨をされた保健事業対象者が保健事業を受診した数、に基づいて、当該医療提供施設に対して支払うインセンティブを決定する、保健事業支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の保健事業支援装置であって、
前記プロセッサは、前記医療提供施設ごとの、前記参加勧奨の数に基づくインセンティブ、前記参加勧奨をされた保健事業対象者が保健事業を受診した数に基づくインセンティブ、及び前記参加勧奨をされた保健事業対象者が保健事業を受診した数に基づくインセンティブを、前記表示装置に表示する、保健事業支援装置。
【請求項8】
保健事業支援装置による保健事業支援方法であって、
前記保健事業支援装置は、
プロセッサとメモリとを有し、
表示装置に接続され、
前記メモリは、
保健事業対象者を示す情報と、
医療提供施設と、前記医療提供施設が実行した医療サービス提供の適正化の項目の履歴と、を示す医療情報と、を保持し、
前記保健事業支援方法は、
前記プロセッサが、前記医療情報を参照して、前記適正化の履歴に基づいて、前記医療提供施設の評価値を算出し、
前記プロセッサが、前記保健事業対象者を、前記評価値に基づいて、前記医療提供施設に割り当て、
前記プロセッサが、前記保健事業対象者を割り当てた医療提供施設を示す情報を、前記表示装置に表示する、保健事業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保健事業支援装置及び保健事業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自治体は、国民健康保険、後期高齢者医療保険、及び介護保険の保険者として、住民の健康増進のため、健診、保健指導、がん検診、及び歯科検診などの各種検診、並びに高齢者が交流する通いの場、及びウォーキングなどの健康イベントなどを実施している。しかし、厚生労働省によると2017年度の特定健診受診率は、自治体が主体となる国民健康保険の被保険者のうち37.2%と伸び悩んでおり、参加者及び受診者を増加させていくことが課題となっている。自治体などの保険者は、被保険者に対して広報や手紙などを行って参加勧奨を行っているが、このような手段だけでは参加率の向上につながっていない。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特開2018-124836号公報(特許文献1)及び特開2018-81397号公報(特許文献2)がある。特許文献1の公報には、「特定健診受診勧奨サーバ20の健診機関特定部218は、携帯端末の利用者の受診の履歴に基づいて、当該利用者に対して健康診断の受診が勧奨される健康診断実施機関を特定する。通知要否判定部2192は、携帯端末が、特定された健康診断実施機関を基準とする所定の範囲内に存在するか否かを判定する。メッセージ送信部2194は、携帯端末が、特定された健康診断実施機関を基準とする所定の範囲内に存在する場合に、その利用者に対して、特定された健康診断実施機関での健康診断の受診を勧奨するメッセージを携帯端末に対して送信する。」と記載されている(要約参照)。
【0004】
また、特許文献2の公報には、「被検者40に対して生活習慣病及び睡眠に関するアンケートを提示するステップと、得られたアンケート結果に応じて、当該被検者に対して、睡眠検査することを勧める情報、又は、特定健診を受診することを勧める情報、を通知するステップと、を有する。被検者に対して睡眠検査を勧める情報を通知する場合、予め睡眠検査装置を保管している多数の保管拠点の中から1つ以上の保管拠点を抽出して当該被検者に対して睡眠検査装置が貸与可能な拠点情報を併せて通知し、被検者が一定期間、保管拠点から貸与された睡眠検査装置による睡眠検査を受けて、その睡眠データを取得した場合、その睡眠データの結果に応じて、特定健診を受診すること勧める情報を通知する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-124836号公報
【文献】特開2018-81397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術が、被保険者に対して健診等の保健事業の参加勧奨を行う場合には、携帯端末などを通して参加勧奨が被保険者に通知される。つまり、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、従来の保険者からの通知と比較して、場所や情報が詳細化及び個別化されるものの、携帯端末などを利用してこのような仕組みに参加する被保険者は、そもそも保健事業への参加意識の高い人である可能性が高く、これまで保健事業に参加していなかった被保険者の参加意欲を大きく向上させることができず、ひいては参加率を大きく向上させることはできないおそれがある。そこで本発明の一態様は、被保険者の保健事業への参加意欲を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は以下の構成を採用する。保健事業支援装置は、プロセッサとメモリとを有し、表示装置に接続され、前記メモリは、保健事業対象者を示す情報と、医療提供施設と、前記医療提供施設が実行した医療サービス提供の適正化の項目の履歴と、を示す医療情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記医療情報を参照して、前記適正化の履歴に基づいて、前記医療提供施設の評価値を算出し、前記保健事業対象者を、前記評価値に基づいて、前記医療提供施設に割り当て、前記保健事業対象者を割り当てた医療提供施設を示す情報を、前記表示装置に表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様は、被保険者への対面での受診勧奨の機会を増加させることができ、ひいては被保険者の保健事業への参加意欲を向上させることができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における保健事業支援システムの適用例を示す説明図である。
【
図2】実施例1における保健事業支援システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施例1における個人健康情報の一例である。
【
図5】実施例1における被保険者情報の一例である。
【
図6】実施例1における保健事業対象基準情報の一例である。
【
図7】実施例1におけるチャネル評価情報の一例である。
【
図9】実施例1における実績管理情報の一例である。
【
図10】実施例1におけるチャネル評価処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施例1における委託保健事業及び委託先の選択処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施例1における委託医療提供施設表示画面の一例である。
【
図13】保健事業勧奨支援処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施例1における保健事業情報表示画面の一例である。
【
図15】実施例1におけるインセンティブ決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】実施例1におけるインセンティブ確認画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態において、同一の構成には原則として同一の符号を付け、繰り返しの説明は省略する。なお、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【実施例1】
【0012】
図1は、保健事業支援システムの適用例を示す説明図である。
図1では、保健事業システムを使用して、保健者の保健事業を、医療提供施設を介して実施する場合のステークホルダの関係の一例を示す。ここでは被保険者1301、保健事業機関の一例である健診機関1302及び保健指導機関1303、診療所等の医療機関1304、自治体などの保険者1305、サービス提供事業者1306、並びに薬局1307の関係を示す。
【0013】
保健事業支援システムは、例えば、保険者1305が有する管理端末104及び保健データベース101、サービス提供事業者1306又は保険者が有する保健事業支援装置の一例であるサーバ103、サービス提供事業者又は保険者が使用する管理端末104、及びサービスデータベース102、並びに複数の薬局1307それぞれが有する医療提供施設端末105を含む。
【0014】
なお、保健データベース101及びサービスデータベース102が1つのデータベースであって、保険者1305及びサービス提供事業者1306が当該データベースを有していてもよいし、当該データベースは保険者1305及びサービス提供事業者1306が有する計算機が接続可能な外部データベースであってもよい。各装置の詳細については後述する。
【0015】
一つの保険者1305に対して、健診機関1302、保健指導機関1303、医療機関1304、薬局1307は複数存在し得るが、説明の便宜上ここでは薬局のみ複数記載している。保険者1305が被保険者1301に実施させたい健診や保健指導などの保健事業について、その受診や参加を促す参加勧奨を薬局に委託する場合を例に説明する。
【0016】
被保険者1301が、健診機関1302を受診すると、健診データが被保険者本人に加えて保険者1305に報告されて、保健データベース101に格納される。同様に、被保険者1301が保健指導機関1303の保健指導に参加した場合、保健指導データが保険者1305に報告されて、保健データベース101に格納される。
【0017】
また、被保険者1301が医療機関1304を受診した場合、医療機関1304は、医療費の請求書であるレセプトを保険者1305に提出し、医療機関1304は保険者から医療費収入を得て、レセプトの情報が保健データベース101に格納される。
【0018】
また、被保険者1301は、医療機関1304から処方箋を受け取ると、処方箋を持参して薬局1307を訪問し、薬を受け取る。薬局1307は、薬を処方した医療費請求書であるレセプトを保険者1305に提出し、医療費収入を得て、レセプトの情報が保健データベース101に格納される。
【0019】
サービス提供事業者1306は、保険者1305との契約に基づくデータを、保健データベース101から取得し、薬局1307それぞれを評価する。また、サービス提供事業者1306は、健診や保健指導などの対象であるのに未受診である被保険者1301を抽出し、抽出した被保険者1301ごとに、どの保健事業の参加勧奨を、どの薬局で実施するかを割り当てる。例えば、管理端末104からの指示に基づいて、サーバ103がこれらの処理を実施し、実行結果はサービスデータベース102に格納される。
【0020】
次に、被保険者1301は、医療機関1304を受診後、処方薬を受け取るため、いずれかの薬局1307を受診する。薬局1307は、医療提供施設端末105を使用してサーバ103に問い合わせ、前述の割り当て結果に応じて、サーバ103から保健事業の参加勧奨を委託される。
【0021】
薬局1307は、保健の参加勧奨を保険者1305に代行して実施する。例えば、被保険者1301が健診を未受診であり、当該被保険者1301が訪問した薬局Aの評価により被保険者1301の健診受診勧奨に割り当てられていた場合、医療提供施設端末105は、健診の受診勧奨を実施するよう薬局Aに委託し、薬局Aが健診の受診勧奨を実施する。
【0022】
保健事業の実施結果は、医療提供施設端末105からサーバ103を介してサービスデータベース102に格納される。また、被保険者1301が、薬局からの参加勧奨に応じて、健診機関1302や保健指導機関1303を受診すると、受診結果を含むデータが、保険者1305に報告され、保健データベース101に格納される。
【0023】
当該データをサーバ103が取得し、薬局で保健事業の参加勧奨をした結果、実際に保健事業に参加したかどうかを、サービス提供事業者1306が把握することができる。サービス提供事業者1306は、このような薬局に対する保健事業の委託、薬局1307における参加勧奨の実施、及び参加勧奨後の保健事業の参加有無の結果に応じて、保険者1305から薬局への委託費を決定し、薬局への委託費として支払いを行う。
【0024】
サーバ103では、例えば、薬局1307の過去の活動に基づいて薬局1307を評価し、被保険者1301をどの薬局1307へ割り当てるかを決定する。例えば、薬局1307における残薬や重複投与などへの対策の実施状況など、適正な医療の利用や医療費の適正化に向けた取り組みの実施状況、及び本事業における参加勧奨の実施状況等に応じて、被保険者1301の各薬局1307への割り当て数を決定する。
【0025】
薬局1307による残薬や重複投与などの対策は、薬局1307が被保険者1301や医療機関1304とのコミュニケーションを十分にとっていなければ実施できないため、この実施状況を評価して被保険者1301を割り当てることで、被保険者1301とのコミュニケーションが取れている、かつ参加勧奨の成功可能性が高い薬局1307へと被保険者1301を割り当てることができる。
【0026】
また、適正な医療の利用や医療費の適正化に取り組む薬局1307に多くの被保険者1301の参加勧奨を委託することで、薬局1307における活動をさらに促進することができる。また、薬局1307における保健事業の参加勧奨の委託の量だけでなく、例えば、参加勧奨の実施量、及び参加勧奨後の保健事業の参加量等に応じて、薬局1307に対する支払額を決定することで、薬局1307における保健事業の参加勧奨の実施を促進することができる。
【0027】
図2は、保健事業支援システムの構成例を示すブロック図である。前述した通り、保健事業支援システムは、例えば、インターネット等のネットワークで互いに接続された、保健データベース101、サービスデータベース102、サーバ103、管理端末104、及び医療提供施設端末105を含む。
【0028】
保健データベース101は、主に保険者から取得したデータを格納するデータベースである。保健データベース101は、例えば、個人健康情報111、医療情報112、及び被保険者情報113を保持する。
【0029】
個人健康情報111は、被保険者の保健事業の参加履歴及び被保険者の健診の結果を示す情報を保持する。医療情報112は、レセプト情報等の被保険者が医療提供施設を利用した情報を保持する。被保険者情報113は、被保険者の氏名、年齢、性別、及び住所等の個人情報を保持する。
【0030】
サービスデータベース102は、薬局などへの保健事業の参加勧奨の委託に関する情報を管理するデータベースである。サービスデータベース102は、例えば、保健事業対象基準情報121、チャネル評価情報122、委託情報123、及び実績管理情報124を保持する。
【0031】
保健事業対象基準情報121は、被保険者が、特定健診やがん検診など保健事業の対象者となる基準を示す情報を保持する。チャネル評価情報122は、薬局などの被保険者とのチャネルとなる医療提供施設を評価する指標を保持する。委託情報123は、どの医療提供施設にどの被保険者の保健事業の参加勧奨を委託するかが選定された結果を保持する。実績管理情報124は、薬局などの医療提供施設が保健事業の参加勧奨を実施した結果を保持する。
【0032】
なお、例えば、保健データベース101に格納されている一部又は全部の情報は、サービスデータベース102に格納されていてもよいし、サービスデータベース102に格納されている一部又は全部の情報は、保健データベース101に格納されていてもよいし、保健データベース101及びサービスデータベース102に格納されている一部又は全部の情報は、サーバ103の補助記憶装置150に格納されていてもよい。
【0033】
なお、本実施形態において、保健事業支援システムが使用する情報は、データ構造に依存せずどのようなデータ構造で表現されていてもよい。例えば、リスト、テーブル、データベース、又はキューから適切に選択したデータ構造体が、情報を格納することができる。
【0034】
サーバ103は、例えば、CPU(Control Processing Unit)130、メモリ140、補助記憶装置150、入力装置160、出力装置170、及び通信装置180を含む計算機によって構成される。CPU130は、プロセッサを含み、メモリ140に格納されたプログラムを実行する。メモリ140は、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)及び揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS(Basic Input/Output System))などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、CPU130が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0035】
補助記憶装置150は、例えば、磁気記憶装置(HDD(Hard Disk Drive))、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive))等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、CPU130が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置150から読み出されて、メモリ140にロードされて、CPU130によって実行される。
【0036】
入力装置160は、キーボード、マウス、タッチパネル、カメラ、及びカードリーダなどの、オペレータからの入力を受けつけるための装置である。出力装置170は、ディスプレイやプリンタなどの、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力する装置である。
【0037】
通信装置180は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。また、通信装置180は、例えば、USB等のシリアルインターフェースを含んでもよい。
【0038】
CPU130が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワーク300を介してサーバ103提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置150に格納される。このため、サーバ103は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。これは、管理端末104及び医療提供施設端末105についても同様である。
【0039】
サーバ103は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。これは管理端末104及び医療提供施設端末105についても同様である。また、例えば、サーバ103が、管理端末104及び/又は医療提供施設端末105と一体化していてもよい。
【0040】
CPU130は、例えば、それぞれ機能部である、委託処理部131、チャネル評価部132、通知部133、及びインセンティブ決定部134を有する。委託処理部131は、どの被保険者のどの保健事業の参加勧奨をどの医療提供施設に委託するかを選定する。
【0041】
チャネル評価部132は、医療提供施設の取組みなどに基づいて、参加勧奨を委託する医療提供施設の優先度を決めるための指標を評価する。通知部133は、医療提供施設端末105に対して、被保険者に実施する参加勧奨の情報を通知する。インセンティブ決定部134は、医療提供施設による保健事業の参加勧奨の実施状況に応じたインセンティブを決定する。
【0042】
例えば、CPU130は、メモリ140にロードされた委託処理プログラムに従って動作することで、委託処理部131として機能し、メモリ140にロードされたチャネル評価プログラムに従って動作することで、チャネル評価部132として機能する。CPU130に含まれる他の機能部についても、プログラムと機能部の関係は同様である。また、管理端末104が有するCPU230に含まれる後述する機能部、及び医療提供施設端末105が有するCPU330に含まれる後述する機能部、についても、プログラムと機能部の関係は同様である。
【0043】
なお、CPU130、CPU230、及びCPU330に含まれる機能部による機能の一部又は全部が、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0044】
管理端末104は、例えば、CPU230、メモリ240、補助記憶装置250、入力装置260、出力装置270、及び通信装置280を含む計算機によって構成される。CPU230、メモリ240、補助記憶装置250、入力装置260、出力装置270、及び通信装置280のハードウェアとしての説明は、それぞれ、CPU130、メモリ140、補助記憶装置150、入力装置160、出力装置170、及び通信装置180のハードウェアとしての説明と同様であるため説明を省略する。CPU230は、例えば、出力装置270に表示される画面を生成する画面生成部231を有する。
【0045】
医療提供施設端末105は、例えば、CPU330、メモリ340、補助記憶装置350、入力装置360、出力装置370、及び通信装置380を含む計算機によって構成される。CPU330、メモリ340、補助記憶装置350、入力装置360、出力装置370、及び通信装置380のハードウェアとしての説明は、それぞれ、CPU130、メモリ140、補助記憶装置150、入力装置160、出力装置170、及び通信装置180のハードウェアとしての説明と同様であるため説明を省略する。CPU330は、例えば、出力装置370に表示される画面を生成する画面生成部331を有する。
【0046】
図3は、個人健康情報111の一例である。個人健康情報111は、例えば、保険者が提供する保健事業への被保険者の参加履歴を示す保健事業参加履歴情報601と、被保険者の健診結果を示す健診情報602とを含む。
【0047】
保健事業参加履歴情報601は、例えば、個人ID欄611、年度欄612、保健事業種類欄613、対象欄614、参加欄615、参加日欄616、及び利用施設欄617を含む。個人ID欄611は、被保険者を識別するIDを保持する。年度欄612は、エンドを示す情報を保持する。保健事業種類欄613は、対象となる保健事業の種類を示す情報を保持する。対象欄614は、個人ID欄611が示す被保険者が、年度欄612が示す年度において保健事業種類欄613が示す種類の保健事業の対象者であるかを示すフラグである対象フラグ(参対象者である場合に1、対象者でない場合に0)を保持する。
【0048】
参加欄615は、個人ID欄611が示す被保険者の対象欄614が示す対象フラグが1である場合に当該被保険者が当該保健事業に参加したかを示す参加フラグ(参加した場合に1、参加していない場合に0、対象でない場合には0であってもよいしnull値であってもよい)を保持する。参加日欄616は、個人ID欄611が示す被保険者が保健事業に参加した日(例えば、健診の受診日など)を示す情報を保持する。利用施設欄617は、個人ID欄611が示す被保険者が保健事業を受けた利用施設を示す情報を保持する。
【0049】
健診情報602は、例えば、健診ID欄621、個人ID欄622,受信日欄623、受診時年齢欄624、腹囲欄625、拡張期血圧欄626、収縮期血圧欄627、血糖値欄628、及び中性脂肪欄629を含む。健診ID欄621は、健診を識別するIDを保持する。個人ID欄622は、被保険者を識別するIDを保持する。受信日欄623は、個人ID欄622が示す被保険者が健診を受診した日を示す情報を保持する。
【0050】
受診時年齢欄624は、個人ID欄622が示す被保険者の健診の受診時の年齢を示す情報を保持する。腹囲欄625、拡張期血圧欄626、収縮期血圧欄627、血糖値欄628、中性脂肪欄629は、いずれも健診の各種結果を示す数値を保持するが、健診情報602は、これらの健診の各種結果を示す欄の一部を保持していなくてもよいし、健診の他の種類の結果を示す欄をさらに保持してもよい。
【0051】
図4は、医療情報112の一例である。
図4の例では、医療情報112は、調剤レセプトに含まれる情報を含む。調剤レセプトは、被保険者が医療機関で発行された処方箋を持参して調剤薬局を訪問した場合に、処方箋に従った調剤を実施して医薬品を被保険者に提供した費用を、調剤薬局から保険者に対して請求するために発行される。
【0052】
医療情報112は、例えば、レセプトID欄501、個人ID欄502、診療年月欄503、医療提供施設コード欄504、医療機関コード欄505、薬学管理欄506、医薬品欄507、及び請求点数欄508を含む。
【0053】
レセプトID欄501は、調剤レセプトの請求を識別するIDを保持する。個人ID欄502は、被保険者を識別するIDを保持する。診療年月欄503、当該レセプトの請求に対応する診療の年月を示す情報を保持する。医療提供施設コード欄504は、医療提供施設を識別するコードを保持する。医療機関コード欄505は、当該調剤レセプトに対応する処方箋を発行した医療機関を示すコードを保持する。
【0054】
薬学管理欄506は、薬局において残薬調整や重複又は相互作用防止などの対応が実施しされ場合などに請求される薬学管理の請求(医療サービス提供の適正化に関する請求)を示す情報を保持する。医薬品欄507は、薬局が調剤した医薬品を特定するコードを保持する。請求点数欄508は、費用請求に関する請求点数を示す情報を保持する。
【0055】
なお、薬学管理欄506は、医薬品の飲み残しや、他の医療機関で処方された医薬品との重複や相互作用などを発見した際に、処方箋を発行した医療機関に対する疑義照会を行って処方箋内容を変更した場合などに請求できる加算である。つまり、薬学管理欄506の値は、被保険者からのコミュニケーションが円滑にでき、処方箋を発行した医療機関との連携が取れた場合に請求できる項目である。残薬の調整や重複への対策は、無駄な医療費の抑制につながるほか、被保険者の服薬状態の改善、薬剤に起因する副作用の防止などが期待できる。
【0056】
図5は、被保険者情報113の一例である。被保険者情報113は、例えば、個人ID欄1131、氏名欄1132、年齢欄1133、性別欄1134、及び住所欄1135を含む。個人ID欄1131は、被保険者を識別するIDを保持する。年齢欄1133は、個人ID欄1131が示す被保険者の年齢を示す情報を保持する。性別欄1134は、個人ID欄1131が示す被保険者の性別を示す情報を保持する。住所欄1135は、個人ID欄1131が示す被保険者の住所を示す情報を保持する。
【0057】
図6は、保健事業対象基準情報121の一例である。保健事業対象基準情報121は、保険者が被保険者に実施したい、及び/又は保険者が薬局などに参加勧奨を委託したい保健事業について、その被保険者が対象者となるための基準を示す。保健事業対象基準情報121は、例えば、保健事業欄701、年度欄702、及び条件欄703を含む。
【0058】
保健事業欄701は、保健事業の種類を示す情報を保持する。年度欄702は、当該保健事業が実施される年度を示す情報を保持する。条件欄703は、当該年度の当該保健事業の対象者となる被保険者の条件を示す情報を保持する。当該条件は国によって定められていたもの、保険者の一例である自治体によって独自に定められたものなどがある。
【0059】
図7は、チャネル評価情報122の一例である。チャネル評価情報122は、保健事業の参加勧奨の委託先(つまりチャネルの一例)である、医療提供施設(例えば、薬局)の評価を示す情報であり、後述する処理により評価指標の値が生成される。チャネル評価情報122は、例えば、医療提供施設コード欄801、名称欄802、及び評価指標欄803を保持する。
【0060】
医療提供施設コード欄801は、医療提供施設を識別するコードを保持する。名称欄802は、医療提供施設の名称を示す情報を保持する。評価指標欄803は、医療提供施設を評価する評価指標の値を保持する。評価指標は、例えば、(調剤)薬局が実施した薬学管理などによって被保険者の服薬の改善などが行われた実績を指標化したものである。このような指標の計算方法については後述する。
【0061】
医療提供施設の評価指標が高いことは、当該医療提供施設が被保険者とのコミュニケーションが取れており、かつ当該医療提供施設が医療機関と十分に連携が取れていることを示す。従って、医療提供施設の評価指標が高ければ、当該医療提供施設が、被保険者に対する保健事業の参加勧奨を行った場合に、参加勧奨に応じる可能性が高いことが期待できる。なお、本実施例では医療提供施設が薬局である例を説明しているが、医療提供施設は、診療所、歯科診療所、介護関係施設、又は介護予防の機関などであってもよい。
【0062】
図8は、委託情報123の一例である。委託情報123は、保健事業の参加勧奨の委託先を決定した結果を示す情報であって、後述する処理によって生成される。委託情報123は、例えば、医療提供施設コード欄901、年度欄902、個人ID欄903、勧奨保健事業欄904、提供情報欄905を含む。
【0063】
医療提供施設コード欄901は、医療提供施設を識別するコードを保持する。年度欄902は、参加勧奨の委託を実施する年度を示す情報を保持する。なお、本実施例では前年の保健事業を未参加の被保険者に対して当年の保健事業の参加を勧奨する例を説明するが、当年の保健事業を未参加の被保険者に対して当年の保健事業の参加を勧奨してもよい(つまり、年度欄902に格納される年度と、参加勧奨が実施される年度と、同じでもよい)。個人ID欄903は、保健事業の参加勧奨をされる被保険者を識別するIDを保持する。勧奨保健事業欄904は、委託先である医療提供施設が被保険者へ勧奨する保健事業を示す情報を保持する。提供情報欄905は、保健事業の参加勧奨を行うための情報を保持する。
【0064】
図9は、実績管理情報124の一例である。実績管理情報124は、委託先である医療提供施設が保健事業の参加勧奨を行った実績を示す情報であって、後述する処理によって生成される。実績管理情報124は、例えば、医療提供施設コード欄1001、実施日欄1002、個人ID欄1003、勧奨保健事業欄1004、及び結果欄1005を含む。
【0065】
医療提供施設コード欄1001は、医療提供施設を識別するコードを保持する。実施日欄1002は、委託先である医療提供施設が保健事業の参加勧奨を実施した日を示す情報を保持する。個人ID欄1003は、当該参加勧奨を受けた被保険者を示すIDを保持する。勧奨保健事業欄1004は、参加勧奨された保健事業を示す情報を保持する。結果欄1005は、委託先である医療提供施設が被保険者に保健事業の参加勧奨をした結果(例えば、健診の予約をした、又は断られた等)を示す情報を保持する。
【0066】
図10は、チャネル評価処理の一例を示すフローチャートである。チャネル評価部132は、保健データベース101から医療情報112を取得する(S201)。チャネル評価部132は、医療情報112の医療提供施設コード欄504の医療提供施設コードと、薬学管理欄506の薬学管理の値と、を取得する(S202)。
【0067】
チャネル評価部132は、ステップS202で取得した医療提供施設コードと、薬学管理の値と、に従って、医療提供施設ごとの薬学管理請求の数を集計し(例えば、薬学管理欄506の値が1つあれば薬学管理請求の数を1としてカウントする)、集計した値をチャネル(医療提供施設)の評価指標に決定する(S203)。なお、チャネル評価部132は、例えば、薬学管理請求の種類ごとに所定の重みを付与して(例えば、残薬調整が1回行われた場合には3回分にカウント、重複・相互作用防止が1回行われた場合には1回分にカウントなど)、医療提供施設ごとの薬学管理請求の数を集計してもよい。
【0068】
また、チャネル評価部132は、重み付与方法の別例として、薬学管理請求の種類それぞれについて、医療情報112の薬学管理欄506全体の請求数に占める、当該種類の請求数の割合の逆数を重みとして付与してもよい(具体的には、例えば、医療情報112全体における請求が、残薬調整が200と重複・相互作用防止が300とからなる場合、残薬調整には(200+300)/200=2.5、重複・相互作用防止には(200+300)/300=1.66・・・の重みを付与する)。薬学管理の請求項目には、複数の項目があり、服薬指導などの多数の薬局が請求している項目から、残薬調整などのように実施薬局が少ない項目もある。チャネル評価部132は、このように重みを付与することにより、実施数が少ない請求を実施している医療提供施設の努力を評価することができる。
【0069】
また、チャネル評価部132は、例えば、医療提供施設が、残薬調整や重複・相互作用防止などによって医薬品を削減した薬剤費の総額を評価指標に決定してもよい(上記した薬学管理の請求項目数に基づく評価指標に、薬剤費の総額を所定の重みをつけて加えたものを評価指標としてもよい)。薬学管理によって削減された薬剤費は、医療情報112のレコードに格納されていてもよいし、チャネル評価部132が、医薬品欄507の値と、請求点数から削減された薬剤費を算出してもよい。チャネル評価部132は、このように評価指標を決定することにより、残薬等によって家庭で無駄になってしまう医薬品を削減した金額に基づいて、医療提供施設を評価することができる。
【0070】
チャネル評価部132は、医療提供施設コードと、決定した評価指標と、をチャネル評価情報122に格納し(S204)、チャネル評価処理を終了する。なお、医療情報112に医療提供施設の名称が格納されていてもよく、チャネル評価情報122は、当該名称を医療情報112から取得して、チャネル評価情報122に格納してもよい。
【0071】
チャネル評価部132は、残薬調整や重複及び相互作用防止に関する加算等の薬学管理請求の数によって医療提供施設の評価指標を決定することにより、被保険者とのコミュニケーションが取れており、かつ医療機関とも十分に連携が取れていること医療提供施設を高く評価することができ、このように高く評価された医療提供施設は、被保険者に対する保健事業の参加勧奨を行った場合にも、高い効果が期待できる。
【0072】
図11は、委託保健事業及び委託先の選択処理の一例を示すフローチャートである。委託処理部131は、保健データベース101から個人健康情報111及び医療情報112を取得する(S301)。委託処理部131は、サービスデータベース102から保健事業対象基準情報121を取得し、S301で取得した個人健康情報111から、条件欄703に合致する、即ち保健事業対象者である被保険者(以下、単に保健事業対象者とも呼ぶ)を抽出する(S302)。
【0073】
例えば、
図6の保健事業対象基準情報121の1行目によれば、特定健診の対象者は年齢が40歳以上の人であり、
図6の保健事業対象基準情報121の2行目によれば、特定保健指導の対象者は、健診結果の性別、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値、HbA1c、及び中性脂肪などの検査値の条件に従って抽出される。また、
図6の保健事業対象基準情報121の1行目によれば、肺がん検診は、年齢とともに、健診情報602において、図示していない病名情報を参照して肺がんでない人が抽出される。
【0074】
委託処理部131は、サービスデータベース102からチャネル評価情報122を取得し、ステップS302で抽出した保健事業対象者に対して、チャネル評価情報122及び医療情報112の医療提供施設の利用状況に基づいて、被保険者ごとの委託先である医療提供施設を選定する(S303)。
【0075】
具体的には、例えば、委託処理部131は、保健事業参加履歴情報601から保健事業対象者が利用したことがある医療提供施設を参加勧奨の対象施設として選定する。保健事業対象者が、利用したことがある医療提供施設が複数ある場合は、委託処理部131は、例えば、利用回数が最も多い(多い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよいし、チャネル評価情報122の評価指標欄803の値が最も高い(高い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよい。
【0076】
また、例えば、委託処理部131は、医療提供施設を利用した実績の無い保健事業対象者については、評価指標欄803の評価値が最も高い(多い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよいし、被保険者情報113の住所欄1135を参照して、保健事業対象者の住所から所定範囲(例えば、1km以内)の医療提供施設のうち最も評価値が高い(高い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよい。また、例えば、保健事業対象者が利用したことがある医療提供施設がある場合であっても、委託処理部131は、被保険者情報113の住所欄1135を参照して、保健事業対象者の住所から所定範囲(例えば、1km以内)の医療提供施設のうち、利用回数が最も多い(多い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよいし、チャネル評価情報122の評価指標欄803の値が最も高い(高い順に所定数でもよい)医療提供施設を選定してもよい。
【0077】
委託処理部131は、医療提供施設ごとの、保健事業対象者と、年度(年度欄702から取得する)と、勧奨保健事業と、を委託情報123に格納する(S304)。なお、委託情報123には、医療提供施設が健診の受診勧奨などを円滑に行うために健診を実施している施設の情報や予約方法などを示した提供情報を含み、例えば、保健事業対象基準情報121において、保健事業ごと(又は保健事業と年度との組み合わせごと)に定義されているとよく、委託処理部131は保健事業対象基準情報121から提供情報を取得して、委託情報123に格納するとよい。
【0078】
なお、委託処理部131は、
図12で後述する委託医療提供施設表示画面を管理端末104の出力装置270に表示して(委託処理部131が画面情報を管理端末104に送信し、画面生成部231が当該画面情報に基づいて出力装置270に画面を表示する)、管理端末104のユーザが、当該委託医療提供施設表示画面に表示された、医療提供施設ごとの評価指標と、参加勧奨を委託する被保険者の割り当て及び委託する人数と、図示していないが人数から求められる委託予算と、などを確認しながら参加勧奨の委託先である医療提供施設を決定してもよい。なお、複数の勧奨保健事業がある場合は、委託処理部131は、保健事業ごとに保健事業対象者の医療提供施設への割り当てを実施してもよい。
【0079】
上記したように、委託処理部131は、評価指数の値が高い医療提供施設に優先的に保健事業対象者を割り当てることで、被保険者とのコミュニケーションがとれており、医療機関との連携がとれており、かつ医療サービス利用の適正化の意識が高い医療提供施設に対して、保健事業の参加勧奨を委託できる。
【0080】
なお、前述したように、委託処理部131は、例えば、評価指標の値が高い順に所定数の医療提供施設を選定するなど、1人の被保険者を複数の医療提供施設に割り当ててもよい。特に、医療情報112において、薬局などの医療提供施設の利用実績のない被保険者は、どの医療提供施設を訪問するか不明であるため、委託処理部131は、評価指標が高い順に複数の医療提供施設に当該被保険者を割り当て、複数の医療提供施設のいずれかに当該被保険者が来た場合に参加勧奨ができるようにしておくことで、当該被保険者への参加勧奨ができる確率を高めることができる。後述するようにサーバ103が医療提供施設端末105から被保険者への参加勧奨が行われたことを示す通知を受信すれば、実績管理情報124に参加勧奨が行われたことが記録されるため、委託処理部131は、その後、他の医療提供施設端末105から当該被保険者の個人IDを受信しても、実績管理情報124を参照して、既に当該被保険者に対して参加勧奨済みである場合には、ステップS403において、参加勧奨の対象者ではない旨を通知するようにしてもよい。これにより、委託処理部131は、1人の被保険者に複数の医療提供施設から重複して保健事業の参加勧奨を行うことを防止することができる。
【0081】
図12は、管理端末104の出力装置170に表示される委託医療提供施設表示画面の一例である。委託医療提供施設表示画面は、例えば、グラフ1101、医療提供施設評価指標表示領域1102、及び委託情報表示領域1103を含む。グラフ1101のX軸には評価指数の降順で医療提供施設が配置され、Y軸には、医療提供施設ごとの評価指数1111(チャネル評価情報122から得られる)と、医療提供施設における保健事業対象者の累積委託人数1112(委託情報123から得られる)と、が表示されている。
【0082】
委託範囲カーソル1113を左右にスライドさせることで、どの医療提供施設までを委託範囲とするのか(即ち、委託範囲カーソル1113より右に位置する医療提供施設には保健事業対象者を割り当てない)を設定することができる。これにより管理端末104のユーザは、医療提供施設の評価指標の値と、累積委託人数と、の関係を参照しながら、委託範囲を設定することができる。
【0083】
医療提供施設評価指標表示領域1102には、チャネル評価情報122の内容が表示され、委託情報表示領域1103には、委託情報123の内容が表示されている。医療提供施設が実施する可能性がある残薬調整や重複・相互作用防止対策は、患者を待たせたり医療機関の診療中に疑義照会で連絡を取って処方箋を変更したりするなど、手間を要するため実施状況に差がある。このような薬学管理に積極的な医療提供施設は、被保険者とのコミュニケーション、医療機関との連携、及び医療サービス利用の適正化への意識が高く、医療提供施設が評価指標の降順に表示されることで、管理端末104のユーザは、参加勧奨の成功可能性の高い医療提供施設から多くの参加勧奨を割り当てることができる。
【0084】
図13は、保健事業勧奨支援処理の一例を示すフローチャートである。医療提供施設端末105は、入力装置360を介して当該医療提供施設を訪問した被保険者の個人IDの入力を受け付け、当該個人IDと、当該医療提供施設の医療提供施設コードと、をサーバ103に送信する(S401)。
【0085】
なお、医療提供施設端末105は、入力装置360を介して被保険者の個人IDの入力を直接受け付けてもよいし、被保険者が持参した処方箋に記載された2次元コードに記録された被保険者情報113から個人IDを取得してもよいし、保険証などのカードから個人IDを読み取ってもよいし、オンライン資格確認や個人番号に基づいて行政情報やPHR(Personal Health Record)などの行政によるWebサービスなどのシステムと連携して個人IDを取得してもよい。
【0086】
サーバ103の通知部133は、委託情報123を参照して、受信した被保険者の個人ID及び医療提供施設コードの組み合わせに該当するレコードがあるか、つまり当該被保険者が当該医療提供施設の保健事業の参加勧奨の対象であるかを判定する(S402)。
【0087】
通知部133は、ステップS402において、当該被保険者が保健事業の参加勧奨の対象であると判定した場合、委託情報123から勧奨保健事業と提供情報とを取得して、当該医療提供施設端末105に送信する(S403)。なお、通知部133は、ステップS402において、当該被保険者が保健事業の参加勧奨の対象でないと判定した場合、当該被保険者が保健事業の参加勧奨の対象でないことを示す通知を当該医療提供施設端末105に送信する。
【0088】
通知部133は、医療提供施設端末105の出力装置370に、該当する保健事業の情報を表示(通知部133が画面情報を医療提供施設端末105に送信し、画面生成部331が当該画面情報に基づいて出力装置370に画面を表示する)する(S404)。この保健事業情報表示画面は
図14を用いて後述する。医療提供施設の担当者は、保健事業情報表示画面を確認して、特定健診の受診を促すなど被保険者に対する参加勧奨を実施する。
【0089】
医療提供施設端末105は、医療提供施設の担当者が参加勧奨を実施した結果の入力を、入力装置360を介して受け付け、サーバ103に送信し、通知部133は、受信した結果を実績管理情報124に登録する(S405)。具体的には、医療提供施設端末105は入力装置360を介して、参加勧奨の実施有無(参加勧奨をしなかった場合にはその理由)、参加勧奨の結果(予約ができたか、予約ができなかった場合にはその理由)などの入力を受け付け、入力を受け付けた内容と、当該被保険者の個人IDと、医療提供施設コードと、参加勧奨の実施日と、をサーバ103に送信する。
【0090】
被保険者は、病気や怪我などで医療機関を受診し、処方箋を発行されると医薬品を受け取るために薬局(医療提供施設)を訪問する。わざわざ健診など保健事業を前向きに受けようと考えていない被保険者であっても、病気や怪我などのタイミングでは薬局(医療提供施設)を訪問する。
【0091】
上記した処理により、被保険者は、このようなタイミングで、薬局(医療提供施設)で薬の提供と合わせて、薬局(医療提供施設)が委託されている保健事業の参加勧奨を受けることができる。このように、保険者と比較して、被保険者に対面しコミュニケーションをとる機会の多い、薬局(医療提供施設)の薬剤師などを通じて保健事業の参加勧奨を行うことで、手紙や携帯端末上で受け取った通知による参加勧奨に反応しなかった被保険者であっても、薬剤師などの人を介して、より強い意識付けをすることで参加率を向上できる効果がある。
【0092】
図14は、医療提供施設端末105の出力装置370に表示される保健事業情報表示画面の一例である。保健事業情報表示画面は、サーバ103の通知部133から通知された被保険者への参加勧奨の実施委託に関する情報を表示する。
【0093】
保健事業情報表示画面は、例えば、被保険者情報表示領域1201、参加勧奨情報表示領域1202、保健事業実施施設表示領域1203、及び結果登録領域1204を含む。被保険者情報表示領域1201には、被保険者情報113から得られる、医療提供施設を訪問した被保険者の個人ID及び氏名等の、被保険者の情報が表示される。参加勧奨情報表示領域1202には、委託情報123から得られる、当該医療提供施設及び当該被保険者に対応する勧奨保健事業の情報が表示される。
【0094】
保健事業実施施設表示領域1203には、勧奨保健事業を実施可能な施設を示す情報が表示される。例えば、保健データベース101に、各保健事業が実施可能な施設が定義されたデータが格納され、通知部133は、勧奨保健事業が実施可能な施設を当該データから特定することで、保健事業実施施設表示領域1203の表示内容が実現される。なお、勧奨保健事業の予約を容易にするために、保健事業実施施設表示領域1203には、各施設の予約ページへのリンク(例えば、保健データベース101に各施設のリンクを示す情報が格納され、通知部133は当該情報からリンクを取得する)が張ってあることが望ましい。これらの情報は、提供情報905などにあらかじめ格納しておき、この情報を使用して表示してもよい。
【0095】
結果登録領域1204には、参加勧奨を実施したか否かを登録するボタン、参加勧奨の結果を登録するためのチェックボックス、及び参加勧奨を実施しなかった場合、又は参加勧奨を実施したものの被保険者に断られた場合の理由を入力するためのテキストボックスを含む。
【0096】
被保険者が医療提供施設を訪問した場合、例えば、タブレット端末(医療提供施設端末105の入力装置360及び出力装置370に相当)などに被保険者を特定する情報を入力し、サーバ103から通知された保健事業情報表示画面の情報を、医療提供施設の担当者が参照することで、当該被保険者に参加勧奨が必要であることを認識でき、また、画面上で保健事業実施施設の予約まで実施することができる。
【0097】
図15は、インセンティブ決定処理の一例を示すフローチャートである。インセンティブ決定処理は、インセンティブ決定部134が、保健事業の実績に応じて薬局などの医療提供施設に保険者が支払うインセンティブを決定する処理である。インセンティブ決定処理は、例えば、所定の期間ごとに実行され、当該期間内のインセンティブが算出される。
【0098】
まず、インセンティブ決定部134は、保健データベース101から個人健康情報111を、サービスデータベース102から委託情報123及び実績管理情報124を取得する(S1501)。
【0099】
インセンティブ決定部134は、医療提供施設ごとの参加勧奨を委託した回数(委託数)を委託情報123から特定し、医療提供施設ごとの当該期間内に保健事業の参加勧奨を実施した回数(勧奨数)を実績管理情報124から特定し、医療提供施設ごとの当該期間内に参加勧奨を受けた被保険者が参加勧奨を受けた保健事業を受診した回数(受診数)を実績管理情報124と個人健康情報111とから特定する(S1502)。
【0100】
インセンティブ決定部134は、各医療提供施設に対して、委託数、勧奨数、及び受診数に基づく、インセンティブを算出する(S1503)。具体的には、例えば、委託のインセンティブ単価、実施のインセンティブ単価、及び受診のインセンティブ単価が予め定められており、インセンティブ決定部134は、各医療提供施設について、委託数×委託のインセンティブ単価と、勧奨数×勧奨のインセンティブ単価と、受診数×受診のインセンティブ単価と、を支払うインセンティブに決定する。
【0101】
インセンティブ決定部134は、
図15を用いて後述するインセンティブ確認画面を管理端末104の出力装置270に表示(インセンティブ決定部134が画面情報を生成して管理端末104に送信し、画面生成部231が当該画面情報に基づいて出力装置270にインセンティブ確認画面を表示)する(S1504)ことで、保険者やサービス提供事業者は各医療提供施設に対するインセンティブ支払額を確認することができる。管理端末104は、決済サービスなどを利用して、インセンティブ金額を保険者又はサービス提供事業者から各医療提供施設へと支払う(S1505)。
【0102】
インセンティブ決定部134は、このように、薬局などの医療提供施設へのインセンティブを、委託数、勧奨数、及び受診数の3段階に応じて算出することで、医療提供施設が、多くの委託人数が得られるように医療の適正利用や医療費適正化の取り組みの促進を図るようになる、健診参加勧奨などの保健事業の実施の促進を図るようになる、参加勧奨を受けた人が実際に受診するようなコミュニケーションの工夫の促進を図るようになる。
【0103】
また、薬局(医療提供施設)は、特に、残薬調整や重複・相互作用を行うことにより、手間がかかるにも関わらず、医薬品の数を減らすことで収入が減少してしまう場合がある。しかし、上記した処理によって、保険者からの保健事業の参加勧奨の委託を、薬学管理の取組みに積極的な薬局に割り当てることで、インセンティブの受け取り額も増大するため、収入の減少を抑制し、ひいては収入が増大する可能性があるため、薬学管理など医療サービス利用の適正化について前向きに取り組む動機付けを与えることができる。
【0104】
図16は、管理端末104の出力装置270に表示されるインセンティブ確認画面の一例である。インセンティブ確認画面は、例えば、グラフ1401及び医療提供施設実績表1402を含む。グラフ1401のX軸には、評価指標の値の降順に医療提供施設が示され、Y軸には、各医療提供施設の委託数1411、勧奨数1412、及び受診数1413、並びに累積委託数1414、累積勧奨数1415、及び累積受診数1416が示されている。
【0105】
また、医療提供施設実績表1402には、医療提供施設ごとの、委託数、勧奨数、及び受診数、並びに、医療提供施設ごとの、委託数に基づくインセンティブ支払額、勧奨数に基づくインセンティブ支払額、及び受診数に基づくインセンティブ支払額が表示されている。
【0106】
このように、インセンティブ確認画面において、医療提供施設ごとの、委託数、勧奨数、受信数を、管理端末104の利用者(保険者やサービス提供事業者)が確認することで、当該利用者は、医療提供施設の保健事業の参加勧奨に関する取り組み状況を容易に把握できる。さらに、当該利用者は、当該取組み状況に応じた、インセンティブの支払額も容易に把握することができる。
【0107】
なお、上記した実施例では、医療提供施設として主に薬局を例に説明したが、他の施設を含めてもよい。診療所、歯科医院、介護事業者、及び介護予防事業の事業者などは、いずれも医療提供施設の一例である。これらの医療提供施設に、本実施例における保健事業の参加勧奨の割り当てを行うことにより、当該医療提供施設と被保険者との接点を増大させることができ、参加勧奨ができる機会を増やすことができる。
【0108】
医療提供施設が診療所、歯科医院、介護事業者、及び介護予防事業の事業者などである場合、医療情報112は、調剤レセプトではなく、医科レセプト、歯科レセプト、及び介護レセプトなどのデータに基づいて生成され、サーバ103は、医療や介護サービス利用の適正化に関する請求項目を多く実施している医療提供施設の評価指数を高い値に決定する。また、薬局以外の医療提供施設では、医師、看護師、保健師、歯科医、介護士、管理栄養士、及び健康運動指導士などの、被保険者と直接コミュニケーションをとる機会のある医療又は介護職の人が参加勧奨を促進することができる。
【0109】
また、上記した実施例では、薬局などの医療提供施設が、保健事業の参加勧奨を行うが、医療提供施設が健診や保健指導などの保健事業を提供できる施設は、当該医療提供施設において保健事業を提供してもよい。被保険者が参加勧奨によって保健事業への参加に同意しても、当該被保険者が別の機会に保健事業の実施施設を訪問しなければならない場合、参加率が低下する可能性がある。薬局などの医療提供施設で、保健事業の設備や人員を用意して提供できるようにすることで、実際の参加率を高めることができる。
【0110】
また、チャネル評価部132は、保健事業を提供できる医療提供施設の評価指数を上昇させてもよい(例えば、保健事業を提供できる医療提供施設の評価指数に所定数を加える、又は評価指数に所定数(1より大きい数)をかける等)。これにより、サーバ103は、参加勧奨から実施までを一連でできる医療提供施設に優先的に被保険者を割り当てることができ、被保険者の保健事業への参加率を高めることができる。
【0111】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0112】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0113】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0114】
103 サーバ、104 管理端末、105 医療提供施設端末、111 個人健康情報、112 医療情報、113 被保険者情報、121 保健事業対象基準情報、122 チャネル評価情報、123 委託情報、124 実績管理情報、130 CPU、131 委託処理部、132 チャネル評価部、133 通知部、134 インセンティブ決定部、140 メモリ、150 補助記憶装置、160 入力装置、170 出力装置