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特許7556835同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム
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  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図1
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図2
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  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図7
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  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図9
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図10
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図11
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図12
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図13A
  • 特許-同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム 図13B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】同時の長手方向動作及びねじれ方向動作と、実質的なねじれ方向振動とが可能なチップを備える超音波手術用具システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021151990
(22)【出願日】2021-09-17
(62)【分割の表示】P 2018532147の分割
【原出願日】2016-12-14
(65)【公開番号】P2022008434
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】62/269,542
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー,アダム
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/021216(WO,A1)
【文献】特開2001-178736(JP,A)
【文献】特開2006-051354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC駆動信号の印加に応答して周期的に拡張及び収縮する少なくとも1つの駆動体と、対向する近位端及び遠位端を含むチップであって、該チップの前記近位端は、前記少なくとも1つの駆動体の前記拡張及び前記収縮が前記近位端において長手方向振動を引き起こすように前記少なくとも1つの駆動体に結合され、前記近位端と前記遠位端との間の特徴部は、前記近位端に存在する前記長手方向振動を、長手方向成分及びねじれ方向成分を有する前記遠位端における振動に変換する、チップとを含む超音波ハンドピースと、
前記超音波ハンドピースの前記少なくとも1つの駆動体に印加される可変周波数を有する前記AC駆動信号を生成することと、
前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの隣接する機械共振モードの共振周波数間のある周波数に設定することであって、前記ある周波数は、前記チップを前記隣接する機械共振モードにおいて同時に振動させるものであり、ここで、前記隣接する機械共振モードのうちの第1のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分は、前記隣接する機械共振モードのうちの第2のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルし、前記遠位端は実質的にねじれ方向の移動経路で運動するものであ、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を行うように構成されている、前記超音波ハンドピースの前記チップを振動させる制御コンソールと
を備える超音波用具システム。
【請求項2】
前記隣接する機械共振モードのうちの前記第1のものに関連した前記チップの振動の前記長手方向成分は、前記隣接する機械共振モードのうちの前記第2のものに関連した前記チップの振動の前記長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルし、前記移動経路に沿った前記遠位端の運動の間、前記チップの前記遠位端と前記チップの長手方向軸に垂直である軸との間の角度は30度を超えないものである、請求項1に記載の超音波用具システム。
【請求項3】
前記制御コンソールは、
前記AC駆動信号の電流を測定するアセンブリと、
前記AC駆動信号の電圧を測定するアセンブリと
を備え、
前記制御コンソールは、前記測定された電流及び電圧に基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定するように構成されている、請求項1又は2に記載の超音波用具システム。
【請求項4】
前記制御コンソールは、
前記少なくとも1つの駆動体のキャパシタンスを求めることと、
前記測定された電流及び電圧と前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を行うように構成されている、請求項3に記載の超音波用具システム。
【請求項5】
前記制御コンソールは、
前記測定された電流及び電圧と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスと、前記AC駆動信号の前記可変周波数とに基づいて、前記超音波ハンドピースの機械構成要素に印加される電流の仕事当量を計算することと、
前記超音波ハンドピースの前記機械構成要素に印加される電流の前記仕事当量に基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を行うように構成されている、請求項4に記載の超音波用具システム。
【請求項6】
前記制御コンソールは、
前記測定された電圧と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスと、前記AC駆動信号の前記可変周波数とに基づいて、前記少なくとも1つの駆動体を通る電流を計算することと、
前記測定された電流と前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流との間の差を求めることと
を行うように構成されることによって、前記測定された電流及び電圧と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスと、前記AC駆動信号の前記可変周波数とに基づいて、前記超音波ハンドピースの機械構成要素に印加される電流の仕事当量を計算するように構成されている、請求項5に記載の超音波用具システム。
【請求項7】
前記制御コンソールは、
前記少なくとも1つの駆動体を通る電流と、前記超音波ハンドピースの前記機械構成要素に印加される電流の前記仕事当量との間の比を計算することと、
前記計算された比に基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を行うように構成されている、請求項5又は6に記載の超音波用具システム。
【請求項8】
前記制御コンソールは、
前記計算された比を目標比と比較することと、
前記計算された比と前記目標比との前記比較に基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を行うように構成されることによって、前記計算された比に基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を設定するように構成されている、請求項7に記載の超音波用具システム。
【請求項9】
前記制御コンソールは、前記計算された比の実数成分を目標比と比較するように構成されることによって、前記計算された比を前記目標比と比較するように構成されている、請求項8に記載の超音波用具システム。
【請求項10】
前記超音波ハンドピースは、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスを示すデータを記憶するメモリを備え、前記制御コンソールは、前記少なくとも1つの駆動体のキャパシタンスを示す前記データを前記超音波ハンドピースの前記メモリから読み出すように構成されることによって、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスを求めるように構成されている、請求項4~9のいずれか1項に記載の超音波用具システム。
【請求項11】
AC駆動信号の印加に応答して周期的に拡張及び収縮する少なくとも1つの駆動体と、対向する近位端及び遠位端を含むチップであって、該チップの前記近位端は、前記少なくとも1つの駆動体の前記拡張及び前記収縮が前記近位端において長手方向振動を引き起こすように前記少なくとも1つの駆動体に結合され、前記近位端と前記遠位端との間の特徴部は、前記近位端に存在する前記長手方向振動を、長手方向成分及びねじれ方向成分を有する前記遠位端における振動に変換する、チップとを含む超音波ハンドピースを制御する方法であって、
前記超音波ハンドピースの前記少なくとも1つの駆動体に印加される可変周波数を有する前記AC駆動信号を生成することと、
前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの隣接する機械共振モードの共振周波数間のある周波数に設定することであって、前記ある周波数は、前記チップを前記隣接する機械共振モードにおいて同時に振動させるものであり、ここで、前記隣接する機械共振モードのうちの第1のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分は、前記隣接する機械共振モードのうちの第2のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルし、前記チップの前記遠位端は実質的にねじれ方向の移動経路で運動するものであ、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を含む方法。
【請求項12】
前記隣接する機械共振モードのうちの前記第1のものに関連した前記チップの振動の前記長手方向成分は、前記隣接する機械共振モードのうちの前記第2のものに関連した前記チップの振動の前記長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルし、前記移動経路に沿った前記遠位端の運動の間、前記チップの前記遠位端と前記チップの長手方向軸に垂直である軸との間の角度は30度を超えないものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記AC駆動信号の電流及び電圧を測定することと、
前記少なくとも1つの駆動体のキャパシタンスを求めることと、
前記測定された電流及び電圧と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの前記隣接する機械共振モードの共振周波数間の前記ある周波数に設定することと
を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記超音波ハンドピースは、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスを示すデータを記憶するメモリを備え、前記少なくとも1つの駆動体のキャパシタンスを求めることは、前記少なくとも1つの駆動体のキャパシタンスを示す前記データを前記超音波ハンドピースの前記メモリから読み出すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
AC駆動信号の印加に応答して周期的に拡張及び収縮する少なくとも1つの駆動体と、対向する近位端及び遠位端を含むチップであって、該チップの前記近位端は、前記少なくとも1つの駆動体の前記拡張及び前記収縮が前記近位端において長手方向振動を引き起こすように前記少なくとも1つの駆動体に結合され、前記近位端と前記遠位端との間の特徴部は、前記近位端に存在する前記長手方向振動を、長手方向成分及びねじれ方向成分を有する前記遠位端における振動に変換する、チップとを含む超音波ハンドピースを制御する制御コンソールであって、
前記超音波ハンドピースの前記少なくとも1つの駆動体に印加される可変周波数を有する前記AC駆動信号を生成するアセンブリと、
前記AC駆動信号の前記可変周波数を前記超音波ハンドピースの隣接する機械共振モードの共振周波数間のある周波数に設定するように構成されているプロセッサであって、前記ある周波数は、前記チップを前記隣接する機械共振モードにおいて同時に振動させ、ここで、前記隣接する機械共振モードのうちの第1のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分は、前記隣接する機械共振モードのうちの第2のものに関連した前記チップの振動の長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルし、前記チップの前記遠位端は実質的にねじれ方向の移動経路で運動するものである、プロセッサと
を備える制御コンソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、超音波駆動型手術用(surgical:外科用)ハンドピースに関する。より詳細には、本発明は、複数の振動モードを有する超音波駆動型ハンドピースと、チップヘッド(tip head)が基本的にねじれ方向振動である振動を受けるようにこのハンドピースを駆動する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波手術器具は、幾つかの医学的処置及び外科的処理を実行するのに有用な手術器具である。一般に、超音波手術用具は、少なくとも1つの圧電駆動体(piezoelectric driver:圧電ドライバ)を含むハンドピースを含む。チップ(tip)が駆動体に機械的に結合され、駆動体が配置されるハウジング又はシェルから前方に延在する。チップはヘッドを有する。ヘッドは、特定の医療/外科作業を成し遂げるように寸法を合わせられた機構、多くの場合に歯を設けられる。超音波用具システムは、制御コンソールも備える。この制御コンソールは、AC駆動信号を駆動体に供給する。駆動信号が駆動体に印加されると、駆動体は周期的に拡張及び収縮する。駆動体の拡張/収縮は、チップに沿って伝播する音波を誘発する。これらの音波は、チップ、特にヘッドに前後運動を誘発する。チップがそのように運動すると、チップは振動しているとみなされる。チップの振動しているヘッドは、組織に対して適用されて、特定の外科作業又は医療作業を実行する。例えば、幾つかのチップヘッドは、硬組織に対して適用される。硬組織の1つの形態は骨である。このタイプのチップヘッドが振動されると、チップ歯、すなわち鋸の前後(back and forth:往復)振動が、付近の硬組織を切除する。更に他のチップヘッドは、軟組織に接触して配置されるように設計されている。
【0003】
幾つかの超音波用具は、組織及び周囲の流体にキャビテーションを誘発することによって組織を切除する。キャビテーションは、チップヘッドがキャビテーションを誘発する速度以上の速度で前後運動する結果として生じる。キャビテーションは、チップ付近の組織及び周囲の流体に小さな空隙、すなわちキャビティを形成することである。これらのキャビティは、極めて低い圧力の非常に小さなゾーンである。これらのキャビティと付近の組織を形成する細胞との間の境界にわたる圧力差。この圧力差の大きさが比較的大きいために、細胞壁は破裂する。これらの細胞壁の破裂によって、組織を形成する細胞は切除、すなわちアブレート(ablate)される。幾つかのチップには、チップヘッドの側部から横方向外方に突出した歯が形成されている。
【0004】
物理的に、多くのチップが細長いシャフトを備える。シャフトの近位端、すなわち後端は、ハンドピースに接続される。ヘッド、すなわちチップヘッドは、シャフトの遠位端、すなわち自由端に位置する。ヘッドは、時に、シャフトの隣接部分から外方に突出しているものがある。超音波チップのヘッドは多くの場合に比較的小さい。幾つかのヘッドは1.0cm未満の直径を有する。超音波用具は、ヘッドが適用された場所に隣接する組織を切除する。ヘッドの表面積が比較的小さいために、超音波ハンドピースは、硬組織及び軟組織の双方を正確に切除するのに有用な用具であることがわかっている。
【0005】
組織を選択的に切除するのに用いられる他の切断器具は、ドリルビット及びバーである。ドリル又はバーが機能するために、器具は多くの場合に回転される。ここで、「回転」とは、器具を通る長手軸の回りの360度の動作を繰り返すことを意味するものと解釈される。この回転の機械的力は、組織の抵抗力に対抗すると、器具を切断経路から飛び出させる可能性がある。この回転の更に別の望ましくない効果は、器具のシャフトが、切除の対象でない組織を一定不変に圧迫すると、回転が組織を引き裂くか又はそれ以外の損傷を組織に与える可能性があるということである。これとは対照的に、超音波チップは、シャフトもヘッドも回転しない。これは、このタイプの器具が処置において用いられると、組織がチップの回転の結果として損傷を受け得る可能性が基本的に取り除かれることを意味する。
【0006】
ほとんどのチップは、駆動信号が印加されると、チップヘッドが主として単一モードで振動するように設計されている。ここで、振動モードとは、チップヘッドが進む際に沿う移動経路であると解釈される。チップの大部分は、長手方向に振動するように設計されている。これは、ヘッドが、チップに沿った近位遠位間の長手方向軸と基本的に一致している軸に沿って前後運動することを意味する。
【0007】
問題は、チップが長手方向に振動するときに発生する可能性がある。このタイプのチップは、上記で論述したように、チップヘッドの側面が組織に対して適用されて振動されると、歯が組織を切断、すなわち切除するように設計されている。代替的に、又はこの切断と組み合わさって、歯は、付近の組織をアブレートするキャビテーションを促進する。この問題は、時に、チップのシャフトの遠位端が、ヘッドのこの端部が押圧される組織にキャビテーションを誘発する速度で振動する可能性があることから生じる。このキャビテーションは、切除の対象ではない組織の不要なアブレーション、すなわち切除を引き起こす可能性がある。この不要な組織切除を低減することによって提起される難題は、この切除がチップヘッドの遠位端において行われているということによって更に複雑化される。このロケーションは、通常、開業医(practitioner)の視界からは見えないロケーションである。その結果、チップのこの配置のために、開業医がこの不要な組織アブレーションが行われているか否かを判断することは困難である可能性がある。
【0008】
長手方向モード以外のモードで振動する幾つかのチップが利用可能である。幾つかのチップは、それらのヘッドが振動されると、ねじれ方向振動、すなわち回転振動を行うように設計される。これは、そのヘッドが励振されて振動すると、チップの長手方向軸の回りに回転することを意味する。更に他のチップは、屈曲するように設計される。この回転は、360度未満の角度に対する円弧の回りの前後運動である。これは、チップが励振されると、チップの長手方向軸が前後に曲がることを意味する。チップヘッドは、この曲げ、すなわち、チップの屈曲とともに運動する。
【0009】
超音波ハンドピースと一体的な特性は、当該ハンドピースの機械共振周波数である。ここで、ハンドピースは、駆動体と、チップを含めた、駆動体に結合されたハンドピースの構成要素との双方を意味するものと解釈される。機械共振周波数は、チップがこの周波数において振動されると、チップヘッドがピーク範囲の振動運動を受けるこれらの構成要素の周波数である。長手方向に振動するチップの場合、ピーク範囲は、最大の前後距離であると解釈される。ねじれ方向又は屈曲方向に振動するチップの場合、最大範囲は、振動サイクルの単一フェーズにおける最大円弧であると解釈される。ここで、ピーク範囲の運動は、駆動体が共振周波数を僅かに下回る周波数又は僅かに上回る周波数で振動した場合に生じる運動よりも大きさが大きい運動であると解釈される。
【0010】
幾つかのハンドピースは、それらの構造のために、複数の機械共振モードを有する。これは、このタイプのハンドピースが、隣接する周波数と比較して、ハンドピースが振動さと、チップヘッドがピーク範囲の動作を行う複数の周波数を有することを意味する。各機械共振周波数は、機械共振モードのうちの個々の1つに関連付けられる。
【0011】
本出願人の国際公開第2015/021216号/米国特許出願公開第___号は、駆動信号がチップの機械共振周波数と可能な限り厳密に一致する周波数になるようにこの信号の周波数を調節する手段を開示している。これらの国際公開/米国特許出願公開の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。一般に、このプロセスは、以下の式、すなわち、国際公開第2015/021216号における式(11)の評価結果が真であるか否かを判断することによって実行される。
【数1】
駆動体に印加される駆動信号の周波数は、この比の前項及び後項の双方の変数として機能する。国際公開第2015/021216号は、駆動信号周波数がハンドピースの特定の機械共振モードの共振周波数になるようにこの駆動信号周波数を調節することを教示している。通常、この共振周波数は、チップヘッドの最大ピーク範囲の動作の振動を誘発するハンドピースの機械共振状態のためのものである。
【0012】
上記比を求める計算が正の結果を与える場合、最大の所望の振動動作をもたらす共振周波数とより厳密に一致するように、駆動信号の周波数を減少させることが必要である。通常、上記比を計算するために選択される変数は、長手方向モード振動及びねじれ方向モード振動が最大の大きさを有する共振状態の共振周波数においてチップを振動させる駆動信号の周波数を求めるために選択される。
【0013】
図1において、ほぼ24.45kHzの周波数fは、ハンドピースの機械共振モードのうちの第1のものに関連付けられた周波数である。この周波数は、チップが無負荷状態にあるときのこの共振モードの共振周波数である。チップは、自由空間において振動しているときに無負荷状態にある。チップが組織に適用されると、チップの負荷は自由空間の負荷よりも上昇する。この結果、機械共振モード(複数の場合もある)の共振周波数(複数の場合もある)が変化する。チップの共振周波数(複数の場合もある)は、他の理由によっても変化する場合がある。これらの理由には、チップ温度の変化又はチップに適用される負荷の音響性質の変化が含まれる。この理由によって、国際公開第2015/021216号は、式(1)の評価結果が真であるか否かを連続的に評価することを教示している。チップが組織に適用された結果、機械共振モードの共振周波数は変化する。したがって、チップを含むシステムの効率的な動作を確保するために、国際公開第2015/021216号は、信号が、該当する機械共振モードのリアルタイムの共振周波数に可能な限り厳密に一致する周波数になるように、式(1)に基づいて、ハンドピースに印加される駆動信号を連続的に調整することを教示している。
【0014】
チップヘッド付近のチップシャフトの長手方向動作によって引き起こされる望ましくない効果を大幅に低減するように設計された幾つかのチップが現在利用可能である。通常、このチップは、2つのモードで同時に振動するように設計されている。多くの場合、このチップは、長手方向モード及びねじれ方向モードの双方で振動するように設計されている。これらの2つのモードで同時に振動することが可能な1つのチップは、ミシガン州カラマズーにある本出願人のStryker Corporation社から販売されているロングマイクロクロー(Long Micro Claw)チップである。このチップの構造は、「COUPLING VIBRATION ULTRASONIC HAND PIECE」という発明の名称の米国特許第6,955,680号に開示されている。この米国特許の内容は、引用することによって、明確に本明細書の一部をなすものとする。手短に言えば、このタイプのチップは、駆動体から伝達される長手方向振動を分解する特徴部を有し、この長手方向振動は2つの成分に分解される。具体的には、これらの特徴部は、各振動が長手方向成分、すなわち長手方向モード振動と、ねじれ方向成分、すなわちねじれ方向モード振動とを有するように振動を分解する。
【0015】
これらのチップヘッド振動は、長手方向モード振動の和及びねじれ方向モード振動の和に等しい振動である。
【0016】
上述したチップは、該当する周波数範囲では、2つの機械共振モードを有する。図1において、周波数fは、第1の機械共振モードに関連付けられた共振周波数である。周波数f、すなわち25.32kHzは、第2の機械共振モードに関連付けられた共振周波数である。チップが、第1の機械共振モードに関連付けられた機械共振周波数において振動されると、チップの遠位部分は、駆動信号がこの共振周波数を僅かに下回るとき又は僅かに上回るときの動作範囲と比較してピーク範囲にある長手方向動作及びねじれ方向動作の双方を受ける。チップが、第2の機械共振モードに関連付けられた機械共振周波数において振動されると、チップの遠位部分は、駆動信号がこの共振周波数を僅かに下回るとき又は僅かに上回るときの動作範囲と比較してピーク範囲にある長手方向動作及びねじれ方向動作の双方を受ける。ほぼ25kHzの駆動信号が印加されるチップの場合、「僅かに下回る」の定義は、機械共振周波数を100Hz~300Hz下回る周波数とすることができる。このタイプのチップの場合、「僅かに上回る」の定義は、機械共振周波数を100Hz~300Hz上回る周波数とすることができる。
【0017】
多くの場合に、チップが機械共振モードのうちの一方において振動されるときに生成される運動のピーク範囲は、チップが他方の機械共振モードに関連付けられた周波数において振動されるときの動作のピーク範囲よりも大きな動作範囲である。上述の、引用することによって本明細書の一部をなす国際公開第2015/021216号は、運動のピーク範囲が最大の大きさを有する機械共振モードの共振周波数においてチップを振動させる駆動信号を印加供給(apply source)することを教示している。図1では、これは周波数fである。
【0018】
本出願人の国際公開第2016/022808号/米国特許出願公開第___号として公開された国際出願PCT/US2015/044023号は、ハンドピースに印加される駆動信号の印加を調節する代替のシステムを開示している。この国際出願の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。この文献は、複数の成分を有する駆動信号をハンドピースにどのように印加することができるのかを開示するシステムを対象としている。駆動信号の第1の成分は、電位を有し、第1の機械共振モードに関連付けられた周波数、すなわち図1における周波数fにある。駆動信号の第2の成分は、電位を有し、第2の機械共振モードに関連付けられた周波数にある。これは、図1における周波数fである。駆動信号のこれらの個々の成分の電位及び周波数を調整することによって、2つの機械共振モードに関連付けられた振動の長手方向成分の和の大きさを調整することができる。駆動信号の個々の成分の電位の調整は、2つの共振状態の振動のねじれ方向成分の和の大きさも設定する。これらの個々の振動成分を調整することによって、チップヘッドが非直線とみなすことができる移動経路に関与するようにチップを振動させることができる。ここで、非直線の移動経路は、チップヘッド上の単一の点が単一の前後振動サイクルに関与するとき、サイクルの第1のフェーズでは、この点が空間内の第1の点集合上を通過し、第2のフェーズ、すなわち戻りフェーズでは、チップが空間内の第2の点集合上を通過するような移動経路である。この第2の点集合は第1の点集合と異なる。1つの例では、単一のサイクルにおける移動経路は、基本的に長円形である。
【0019】
非直線移動経路でチップを駆動することの利点は、第1のフェーズにおいて、歯が骨に衝突し、その後、次の動作のフェーズにおいて、骨を摩擦するということである。チップの歯の動作の衝突フェーズの間、チップは、骨を破砕して所望の量の骨を切除する。歯が骨を摩擦する動作フェーズの間、歯は、歯の衝突フェーズの結果として形成されたばかりの残骸を除去する。これらの残骸の除去の結果、次の振動サイクル中の残骸の存在が骨切断プロセスに悪影響を及ぼす程度が同様に低減される。
【0020】
上述した理由によって、2つの振動モード、すなわち、長手方向モード及びねじれ方向モードの同時の振動をチップに受けさせる駆動信号を超音波ハンドピースに印加することは有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、ねじれ方向モード振動及び長手方向モード振動の双方を行うよう駆動されるように設計されたチップであっても、チップのシャフトに沿って或る長手方向動作を受ける。上述した理由によって、この動作は、チップヘッドの遠位端の付近に不要なキャビテーションをもたらす可能性があり、ひいては、不要な組織アブレーションをもたらす可能性がある。したがって、実質的にねじれ方向でありかつ長手方向成分が存在しても最小限の振動をチップに実施させるような駆動信号をハンドピースに印加することができるのであれば最良である幾つかの状況が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、新規でかつ有用な超音波手術用具システムに関する。本発明のシステムは、チップを有するハンドピースと、チップを振動させる駆動信号を供給する補完制御システムとを備える。コンソール及びチップは、駆動信号がチップに印加されると、チップが主としてねじれ方向モードにある運動を行うように集合体として構成される。
【0023】
本発明のシステムは、チップを有するハンドピースを備える。本発明のチップは、長手方向振動の成分をねじれ方向振動に変換する特徴部を有する。
【0024】
本発明は、チップを含む、ハンドピースを形成する機械構成要素の特性のために、ハンドピースが、第1の機械共振モードの共振周波数と第2の機械共振モードの共振周波数との間に長手方向機械キャンセル周波数を有するという原理に基づいている。駆動信号がこの周波数においてハンドピース駆動体に印加されると、ハンドピースの機械構成要素は励振されて、第1の機械共振モード振動及び第2の機械共振モード振動の双方をチップに同時に誘発する。本発明が基礎とする更なる原理は、機械構成要素が励振されて、2つの機械共振モードで同時に振動すると、これらの共振モードに関連付けられた長手方向振動は互いに異相であり、ねじれ方向振動は同相であるということである。
【0025】
ハンドピースがそのように振動される結果、個々のモードの長手方向振動は異相であるので、これらの振動は互いにキャンセルし合う。個々のモードのねじれ方向振動は同相であるので、チップ、より詳細にはヘッド及びシャフトの隣接するセクションは、感知可能なねじれ方向振動を行う。したがって、本発明のチップヘッドは、実質的なねじれ方向振動を受ける一方、ヘッド及びシャフトの隣接するセクションは、長手方向振動が存在しても、最小限の長手方向振動しか受けない。
【0026】
本発明は、ハンドピースに印加される駆動信号の特性を監視することによって、駆動信号の特性を連続的に調整するシステムを対象とする。より詳細には、駆動信号の周波数は、この信号がハンドピースの長手方向機械キャンセル周波数に可能な限り厳密に等しくなることを確保するように連続的に調整される。
【0027】
駆動信号のこの連続的な監視及びこの信号の周波数のその後の調整が必要である理由は、ハンドピースの機械構成要素に適用される負荷が変化すると、長手方向機械キャンセル周波数が同様にシフトするからである。
【0028】
本発明は特許請求の範囲において詳細に示される。本発明の上記の及び他の特徴及び利点は、添付の図面とともに取り上げられる以下の「発明を実施するための形態」から更に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ハンドピース駆動体のキャパシタンスに起因する電流と、本発明のハンドピースを含むハンドピースの周波数にわたるハンドピースを通る電流の仕事当量(mechanical equivalent of current)との比の実数成分のグラフ表現である。
図2】本発明の特徴を備える超音波用具システムの基本構成要素を示す図である。
図3】システムの用具、ハンドピース、チップ及びスリーブの機械構成要素の概略分解図である。
図4】ハンドピース及びチップの電気構成要素と、これらの構成要素が制御コンソールにどのように接続されるのかを示すブロック図である。
図5】ハンドピースの内部のメモリに記憶されたデータのタイプを示す図である。
図6】用具チップと一体となったメモリに記憶されたデータのタイプを示す図である。
図7】本発明のシステムの制御コンソールの電気構成要素及びハンドピース構成要素のブロック図である。
図8】本発明による、チップが振動されたときの長手方向軸の回りのチップヘッドの点の移動経路を2次元で表す図である。
図9】チップを備えるハンドピースの長手方向振動及びねじれ方向振動に関連付けられた境界及び節点のロケーションの概略図である。
図10】振動サイクルの第1のフェーズ中における、ハンドピースの長手方向振動及び機械振動の個々の成分、並びにこれらの成分の和の概略図である。
図11】振動サイクルの第2のフェーズ中における、長手方向振動及び機械振動の個々の成分、並びにこれらの振動の和の概略図である。
図12】本発明による、電気電流及び仕事当量が印加されるインピーダンスの概略図である。
図13A図13Bと組み合わせることで、本発明のシステムの動作のフローチャートを形成する図である。
図13B図13Aと組み合わせることで、本発明のシステムの動作のフローチャートを形成する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
I.システムの概説及びハードウェア
ここでは、本発明の特徴を備える超音波用具システム30を、図2及び図3を参照することによって全般的に説明する。システム30はハンドピース32を備える。チップ142は、ハンドピース32に取り付けられ、ハンドピース32から遠位前方に延在する。(「遠位」とは、ハンドピースが適用される部位に向けて、開業医から遠ざかることを意味するものと解釈される。「近位」とは、ハンドピースが適用される部位から遠ざかって、ハンドピースを保持する開業医に向かうことを意味するものと解釈される。)チップ142は、組織に適用されて所望の医学的処置/外科的処置を行うシステム30の構成要素である。システム30は制御コンソール230も備える。制御コンソール230は、ハンドピース32に印加される駆動信号の信号源である。駆動信号の印加に応答して、ハンドピース32はチップ142を振動させる。
【0031】
ハンドピース32は、図2にのみ見られる本体又はシェル34を備える。図3及び図4から、1つ以上の振動圧電駆動体36(4つが示されている)がシェル34の内部に配置されていることを見て取ることができる。各駆動体36は、電流がその駆動体に印加されると、瞬間的な拡張又は収縮を受ける材料から形成される。駆動体の拡張/収縮は、駆動体36の長手方向軸、すなわち、駆動体の近位側を向いた面と遠位側を向いた面との間に延びる軸上のものである。1対のリード線38が各駆動体36から延在する。リード線38は、駆動体の対向する近位側を向いた面及び遠位側を向いた面に取り付けられる。全てではないが多くのハンドピース32は、ディスク形状を有する駆動体36を備える。駆動体36は、端から端に積重して配列される。リード線38は、駆動信号が駆動体36に印加される際に経由するシステム30の構成要素である。1つが図示されている任意選択の絶縁ディスク40が、隣接する駆動体36の間に配置される。図3では、駆動体36及び絶縁ディスク40は、互いに離隔して示されている。これは、これらの構成要素の図示を容易にするためである。実際には、駆動体36及び絶縁ディスク40は密接に当接している。
【0032】
支柱44が、駆動体36、リード線38及び絶縁ディスクを長手方向に通って延在する。支柱44は、駆動体36、リード線38、及び絶縁ディスク40を通り、これらの構成要素の同一直線上にある長手方向軸に沿って延在する。支柱44が延在して通る駆動体36、リード線38及び絶縁ディスク40の内部の貫通孔は見えない。支柱44は、最も近位に配置された駆動体36及び最も遠位に配置された駆動体の双方の外方に突出している。
【0033】
近位端質量体46は、最も近位に位置する駆動体36の近位側を向いた面に隣接して位置し、この面に当接する。質量体46は、支柱44の近位端セクションに取り付けられる。支柱44がねじ切り加工されている場合、質量体36はナットとすることができる。
【0034】
図3に見られるホーン(horn:円錐部)48は、最も遠位に位置する駆動体36の遠位側を向いた面から前方へ延在する。ホーン48は、駆動体36の直径にほぼ等しい直径を有する基部を有する。駆動体36から遠位前方へ延びるにつれて、ホーン48の直径は減少する。支柱44の露出した遠位端セクションは、ホーン48に添着される。本発明の多くの態様(versions:バージョン)において、支柱44及びホーン48は、単一片(single piece:一体成形)ユニットである。ハンドピース32は、駆動体36及び絶縁ディスクの積重したものが近位質量体46とホーン48との間に圧縮されるようにして構築される。
【0035】
ハンドピースシェル34内には、ハンドピースメモリ56も配置される。メモリ56は、ハンドピース32及びチップ142の動作を調節するのに用いられるデータを含む。メモリ56は、EPROM、EEPROM又はRFIDタグの形態を取ることができる。メモリの構造は本発明の一部ではない。例示として、ハンドピースメモリ56はRFIDタグである。メモリ56に接続されたコイル54が示されている。コイル54は、制御コンソール230がハンドピースメモリ56に対する読み出し及び書き込みを行う際に経由するハンドピースに関連付けられた構成要素である。
【0036】
図5は、ハンドピースメモリ56に記憶されたデータのタイプを示している。これらのデータは、フィールド62によって表されるように、ハンドピース32を特定するデータを含む。これらのデータは、コンソール230がハンドピースに駆動信号を印加することができることを検証するのに有用である。フィールド62内のデータは、コンソールディスプレイ268上に提示されるハンドピースに関する情報のタイプも示すことができる。ハンドピースメモリ56内の他のデータは、駆動体36への駆動信号の供給を調節するのに用いられる。これらのデータの使用は以下で論述されるが、データのタイプはここで説明される。フィールド64は、キャパシタンスC、すなわち、駆動体36のスタックのキャパシタンスを示すデータを含む。駆動体キャパシタンスは、ハンドピース34を組み立てるプロセス中の解析によって求めることができる。多くの場合、駆動体のキャパシタンスの総量は、500pF~5000pFである。ハンドピース36に印加されるべき最大電流、すなわち、電流i MAXに関するデータは、フィールド66に含まれる。電流i MAXは、多くの場合には1アンペアピーク未満であり、より多くの場合には0.5アンペアピーク以下である。フィールド68は、ハンドピースの以下で論述する機械構成要素を流れるべき以下で論述する電流の最大仕事当量i MAXを示すデータを含む。電流i MAXは、通常、0.25アンペアピーク以下である。駆動信号の最大電位、すなわち、電圧V MAXは、フィールド70に記憶される。電圧V MAXは、多くの場合に1500ボルトACピークである。
【0037】
ハンドピースメモリ56には、ハンドピース32に印加されるべき駆動信号の最小周波数及び最大周波数を示すデータも記憶される。フィールド72に記憶された最小周波数は、通常、制御コンソールが供給することができる駆動信号の最小周波数である。フィールド74に記憶された駆動信号の最大周波数は、通常、最小周波数よりも高い5kHz~40kHzである。
【0038】
フィールド76は、コントローラ96によって出力される制御信号を制御する係数を含む。PID制御ループが、これらの信号のそれぞれの最終レベルを確立するのに用いられる。フィールド76は、これらの制御ループのそれぞれの係数を含む。フィールド62、66、68、70、72、74及び76内のデータは、フィールド64内のデータと同様に、ハンドピースを組み立てるプロセスの一部としてハンドピースメモリ56に記憶されることが理解されるであろう。
【0039】
ハンドピースメモリ56は、使用履歴フィールドとしてフィールド78も含む。制御コンソール230は、ハンドピース32の使用中、ハンドピースの動作のログを提供するためにデータをフィールド128内に書き込む。
【0040】
図4に戻ると、ハンドピース32の内部には、2つの導体132も示されていることを見て取ることができる。導体132は、コイル54からハンドピースの遠位端に延在する。導体132は、ハンドピース32に同様に配置された第2のコイル、すなわちコイル134に接続されている。
【0041】
チップ142は、ハンドピースホーン48から前方へ延在する。チップ142は、概ね円柱状のシャフト144を有する。本発明の全ての態様ではなく、幾つかの態様では、シャフト144は、それぞれ異なる断面直径を有する複数のセクションを有する。本発明の図示した態様では、チップシャフト144は、近位セクション146を有する。シャフトの近位セクション146には、チップをハンドピース32に着脱可能に連結することを容易にするように設計された連結特徴部が形成されている。本発明の1つの態様では、ハンドピース連結特徴部は、ホーン48から前方へ延在するボス49である。ボス49の外面は、ねじ切り加工(図示せず)を用いて形成される。チップ連結特徴部は、シャフトの近位セクション145を部分的に通ってシャフト144の近位端から内方へ延在する閉鎖端穿孔145である。穿孔145は、ハンドピースホーン48と一体のねじ切り加工されたボスに係合するように設計されたねじ切り加工(図示せず)を用いて提供される。
【0042】
本発明の図示した態様では、シャフト144は、シャフトの近位セクション146から前方へ延在する中央セクション150を有する。中央セクション150は、近位セクション146の直径よりも小さな直径を有する。図示したシャフト144は、遠位セクション160を有する。シャフトの遠位セクション160は、中央セクション150の直径よりも小さな直径を有する。シャフト144のテーパ型遷移セクションは識別されない。1つの遷移セクションは、近位セクション146と中央セクション150との間にある。第2の遷移セクションは、中央セクション150と遠位セクション160との間にある。シャフトの遠位セクションは、セクション160が遠位に延びるにつれて、シャフトの直径が僅かに減少するように、それ自体が僅かなテーパを有する。
【0043】
ヘッド164は、チップ142の最遠位部分である。ヘッド164は、シャフトの遠位セクション160の直前方に位置する。ヘッド164には、歯又は縦溝(図示せず)が形成されることがある。チップヘッド164は、所望の処置を行う組織に対して押圧されるシステム30の部分である。歯又は縦溝は、ヘッド164が運動するとき、当該歯又は縦溝が組織を圧迫するように設計される。ヘッドの動作の結果、歯又は縦溝は組織を切除する。チップの歯又は縦溝の幾何形状は、本発明の一部ではない。
【0044】
ハンドピース32は、一般的には、駆動体の前後動作がチップ142に同様の振動運動を誘発するように設計される。これらは、運動がチップの長手方向軸、より詳細にはシャフトに沿って前後するという点で長手方向振動である。本発明のチップ142には、シャフト144の近位端に印加される近位遠位間の振動運動を2つの振動運動に変換する特徴部が更に設けられる。図示したチップ142では、これらの特徴部は、シャフトの中央セクション150の外面から内方へ延在する螺旋溝154である。溝154が存在するために、シャフトの近位セクション146に印加される長手方向運動の小部分は、チップのそれよりも遠位のセクションを、長手方向に振動させることに加えて、回転振動させる運動に変換される。回転振動とは、シャフト144の長手方向軸の回りに延びる円弧状のシャフト及びチップの振動を意味するものと解釈される。
【0045】
スリーブ170が、チップシャフト144の周囲に配置されている。スリーブ170は、プラスチックから形成される。スリーブの近位端には、ハンドピースシェル34の遠位端にスリーブを解除可能に連結することを容易にする特徴部が形成されている。システム30を形成する構成要素は、スリーブが、チップシャフト144から径方向に離隔されるとともにチップヘッド160から長手方向に離隔されるように形成される。より具体的には、これらの構成要素は、チップの正常な振動中に、チップがスリーブに当接しないように寸法決めされる。
【0046】
本発明の一部ではないが、スリーブ170には、多くの場合に、取付具172が形成されていることを見て取ることができる。取付具172は、灌注ラインを収容するように形成されている。システム30の使用中、灌注流体は、多くの場合に、スリーブ170内に流入される。この流体は、チップ142とスリーブ170との間の間隙を通ってチップ142の周囲を流れ、スリーブの開放遠位端から流出する。ハンドピース支柱44及びチップ142には、連続した穿孔(これらの穿孔は図示せず)が形成されている。処置中、吸引がこれらの穿孔を通じて行われる。吸引によって、チップヘッド164が適用される部位から、灌注流体とともに、この流体内に同伴される処置によって形成された残骸も吸い込まれる。吸引によって、組織もチップヘッド164に向かって吸い込まれる。このチップヘッド164に向かう組織の吸い込みによって、チップヘッドによる組織の切断が向上される。
【0047】
スリーブの内部には、図3において点線の方形として見られるチップメモリ184が配置されている。メモリ184はチップメモリと呼ばれる。なぜならば、このメモリは、スリーブ170内に配置されていても、チップ142の動作を制御するのに用いられるからである。さらに、チップ142及びスリーブ170は、通常、単一のパッケージとして併せて販売される。チップ142は、通常、まず最初にハンドピース32に連結される。チップ142が定位置に連結された後、スリーブ170がハンドピースに嵌合される。チップメモリ184は、通常、ハンドピースメモリ56と同じタイプのメモリである。したがって、本発明の図示した態様では、チップメモリ184はRFIDタグである。スリーブ170に組み込まれた、図4にのみ見られるコイル182は、チップメモリ172の入力ピンに接続される。システム30を形成する構成要素は、スリーブ170がハンドピース32に嵌合されると、ハンドピースコイル134及びコイル182が電磁誘導信号交換を行うことができるように構築される。
【0048】
図6は、チップメモリ184に含まれるデータのタイプを示している。フィールド188によって表されるように、これらのデータは、チップ識別フィールドを含む。フィールド188内のデータは、チップを特定し、ハンドピースメモリ識別フィールド112内のハンドピースを特定するデータに類似している。フィールド190には、特定のチップ142のときにハンドピースの機械構成要素を流れるべき電流の最大総仕事当量i MAXを示すデータが記憶される。フィールド192は、チップを振動させるのに用いられるハンドピース駆動体に印加されるべき駆動信号の最小電圧V MINを示すデータを含む。フィールド193は、チップを振動させるのに用いられるハンドピース駆動体に印加されるべき駆動信号の最大電圧V MAXを示すデータを含む。
【0049】
フィールド194は、機械共振モードのうちの1つの最低可能周波数(MIN MRM FREQ)を規定するデータを含む。フィールド195は、フィールド195が最低可能周波数を規定する機械共振モードの最高可能周波数(MAX MRM FREQ)を規定するデータを含む。通常、フィールド194及び195は、第1の機械共振モードの周波数の範囲を規定するデータを含む。この周波数の範囲は、第1の共振モードの周波数と第2の共振モードの周波数との間の差の関数である。例えば、これらの2つの機械共振モードの周波数の間の差が2000Hz以上である場合、フィールド194及び195のデータに含まれる周波数の範囲は、1000Hzとすることができる。より多くの場合に、フィールド194及び195内のデータによって規定された機械共振周波数を中心とする周波数の範囲は400Hz以下である。本発明のより好ましい態様では、機械共振周波数を中心とする周波数の範囲は100Hz以下である。
【0050】
フィールド196は、チップ142の以下で論述する長手方向機械キャンセル周波数の最低可能周波数(MIN LCM FREQ)を規定するデータを含む。フィールド198は、長手方向機械キャンセル周波数の最高可能周波数(MAX LCM FREQ)を規定するデータを含む。フィールド196及び198内のデータによって規定された周波数範囲も、2つの機械共振モードの共振周波数の関数である。この周波数範囲は、通常、チップが無負荷状態にあるときのチップの長手方向機械キャンセル周波数を中心とする。この周波数範囲は、チップを駆動することができる機械共振モードに関連付けられた周波数範囲と部分的に重複する場合がある。ただし、長手方向機械キャンセル周波数を中心とするチップの動作の周波数範囲は、チップを駆動することができる機械共振モードの共振周波数まで及ぶべきではない。
【0051】
PID係数フィールド204は、チップにとって、ハンドピースメモリのPID係数フィールド76内のデータよりも具体的であり得る制御信号の制御係数を含む。チップメモリ184は、チップ使用履歴フィールド206も含む。システム30の動作中、制御コンソール230は、チップ142の使用に関するデータをフィールド206に書き込む。
【0052】
図2図4及び図7に関してここで説明する制御コンソール230は、チップ142の振動をもたらす駆動信号をハンドピース32に供給する。これらの構成要素は、電源装置232を含む。電源装置232は、通常は1VDC~250VDCの定電圧信号を出力する。本発明の多くの態様では、電源装置232によって出力される電圧の最大電位は200VDC以下である。電源装置232によって生成される電圧は、可変利得増幅器234に印加される。制御信号、具体的には、WAVEFORM_SET(W_S)信号が増幅器234に印加される。WAVEFORM_SET信号は、周波数及び振幅の双方が変化する。したがって、WAVEFORM_SET周波数は、増幅器が、電位及び周波数の双方が変化する出力信号を生成するように、増幅器234によって生成される信号の利得及び周波数を変化させるのに用いられる。制御コンソール230に組み込むことができる1つのそのような増幅器は、米国仮特許出願第62/159,672号に開示されている。この米国仮特許出願の内容は、引用することによって本明細書の一部をなす国際公開第2016/183084号/米国特許出願公開第___号に開示されている。より詳細には、増幅器234は、10kHz~100kHzの周波数を有する信号を出力することが可能である。多くの場合に、この信号は、20kHzの最小周波数と40kHzの最大周波数とを有する。
【0053】
増幅器234からの出力信号は、制御コンソール230の一部でもある変圧器238の1次巻線244に印加される。変圧器238の2次巻線248の両端間に存在する電圧が、ハンドピース駆動体36に印加される駆動信号である。この電圧は、通常、最大1500ボルトACピークである。この駆動信号は、駆動体36にわたって並列に印加される。
【0054】
変圧器238は再生コイル246を備える。再生コイル246の両端間に存在する電圧は、電圧測定回路252に印加される。再生コイル246の両端間の信号に基づいて、回路252は、電圧V、すなわち、ハンドピース32に印加される駆動信号の電圧の電位及び位相を表す信号を生成する。制御コンソール230に同様に配置されたコイル254は、変圧器の2次巻線248から延在する導体のうちの一方に極めて近くに位置する。コイル254の両端間の信号は、電流測定回路256に印加される。回路256は、電流i、すなわち、ハンドピース32に供給される駆動信号の電流の大きさ及び位相を表す信号を生成する。
【0055】
変圧器の2次巻線248の両端間に存在する駆動信号は、制御コンソールと一体となったソケット(ソケットは図示せず)に取り付けられた2つの導電接点250に存在する。
【0056】
駆動信号は、図2にのみ見られるケーブル228によってハンドピース駆動体に印加される。システム30の多くの構成において、ハンドピース30及びケーブル228は単一ユニットである。ケーブル228は、接点250が位置する制御コンソールのソケットに接続される。
【0057】
ハンドピース32及びケーブル228が単一ユニットである本発明の態様では、ハンドピースのコイル54は、ケーブルと一体となったプラグに配置される。コンソールのソケットには、補完コイル258が配置されている。システムを形成する構成要素は、ケーブル228と一体となったプラグがハンドピースのソケットに取り付けられると、コイル54及び258が電磁誘導によって信号を交換することができるように構成される。
【0058】
ハンドピースに供給される駆動信号の電圧V及び電流iを表す信号は、同様に制御コンソール230の内部にあるプロセッサ266に印加される。制御コンソール230はメモリリーダ262も備える。メモリリーダ262は、一方の端部においてコンソールのコイル258に接続され、反対側の端部においてプロセッサ266に接続される。メモリリーダ262は、コイル258の両端間に存在する信号を、プロセッサ266が読み取ることができるデータ信号に変換する。メモリリーダ262は、プロセッサ266によって出力された信号に応答して、ハンドピースメモリ52及びチップメモリ184へのデータの書き込みをもたらす信号をコイルに出力させる信号もコイル258の両端に出力する。メモリリーダ262の構造は、ハンドピースメモリ102を補完する。したがって、メモリリーダ262は、EPROM又はEEPROM内のデータを読み出すことが可能なアセンブリとすることもできるし、RFIDタグにインタロゲートしRFIDタグからデータ読み出すことが可能なアセンブリとすることもできる。
【0059】
プロセッサ266は、増幅器234に印加されるWAVEFORM_SET信号を生成する。したがって、プロセッサ266は、制御コンソール230によって出力されてハンドピース32に印加される駆動信号の特性を設定する。プロセッサ266によって設定される駆動信号の特性は、駆動信号の電圧及び周波数である。プロセッサ266は、これらの特性を、ハンドピース32の特性及びチップ134の特性の関数として求める。プロセッサ266は、駆動信号も、電圧V及び電流iの取得された測定値の関数として求める。
【0060】
ディスプレイ268は、制御コンソール230に組み込まれている。ディスプレイ268上の画像は、プロセッサ266によって生成されたとおりに示される。ディスプレイ268上に示される情報には、ハンドピース32及びチップを特定する情報と、システムの動作状態の特性を記述した情報とが含まれる。ディスプレイ268は、多くの場合に、タッチスクリーンディスプレイである。プロセッサ266は、ボタンの画像をディスプレイ上に提示させる。これらのボタンを押下することによって、開業医は、システム30の特定の動作特性として自身が所望するものを設定することができる。
【0061】
ディスプレイ268上に提示されるボタンに加えて、通常、制御コンソールに関連付けられた少なくとも1つのオン/オフスイッチが存在する。図2及び図7では、このオン/オフスイッチは、フットスイッチ270によって表されている。フットスイッチ270は、スイッチが押下される程度とともに変化する信号を生成するように構成される。この信号はプロセッサ266に供給される。フットスイッチ270によって供給される信号の状態に基づいて、プロセッサ266は、チップが振動するか否かと、チップヘッドの振動の大きさとの双方を制御するために駆動信号の生成を調節する。
【0062】
II.動作の基本原理
本発明のシステム30は、チップヘッド164が実質的にねじれ方向とみなすことができる移動経路に沿って運動することをもたらす駆動信号を制御コンソール230が出力するように設計される。ここで、実質的にねじれ方向の移動経路は、チップヘッド164上の点の移動経路、すなわち、図8の線PTが、線PAに対して30度以下、好ましくは15度以下、より好ましくは8度以下の鋭角αにあるものと解釈される。線PAは、線LA、すなわち、チップ142を通る長手方向軸に垂直であると解釈される。線LA及び線PAは、図8の平面内にあると解釈される。図8では、線PTは、チップヘッドの単一の点の移動経路を2次元で表している。したがって、線LA、PA及びPTが交差する箇所の左側では、線PTは、線PAの下方にかつ図8の平面から外部に延びる。線LA、PA及びPTが交差する箇所の右側では、線PTは、線PAの上方に図8の平面内に延びる。したがって、ヘッドがねじれ方向動作と長手方向動作とを同時に行う場合にヘッド164上の点が運動する移動経路は、この点が線PAの回りに部分的に回転するとともに、線LAに平行な長手方向移動経路に沿って上下運動する移動経路である。完全な状態の下では、チップヘッド164は、ねじれ方向運動を行い、長手方向運動を行わない。チップヘッド164がこのタイプの運動を行う場合、線PAと線PTとの間の鋭角は0度になることが理解される。
【0063】
システム30の動作の土台となる主要な原理は、溝154、すなわち、チップの長手方向運動をねじれ方向運動に変換する特徴部が存在するために、チップを備えるハンドピースが、互いに離隔した共振周波数を有する第1の機械共振モード及び第2の機械共振モードを有するということである。駆動信号が20kHz~40kHzの範囲内にある場合に動作するシステムの多くの態様について、2つの機械共振モードの共振周波数は、少なくとも250Hz離隔するべきである。本発明のより好ましい態様では、これらの共振周波数は少なくとも500Hz離隔している。
【0064】
システムの動作の土台となる第1の付随原理は、駆動信号が、第1の機械共振モードに関連付けられた共振周波数にあるハンドピース駆動体36に印加されると、チップヘッドが、この周波数における長手方向振動及びねじれ方向振動の組み合わさったものを受けるということである。チップヘッドは、第2の機械共振モードに関連付けることができる感知可能な振動運動を行わない。
【0065】
システムの動作の土台となる第2の付随原理は、駆動信号が、第2の機械共振モードに関連付けられた共振周波数にあるハンドピース駆動体36に印加されると、チップヘッドが、この周波数における長手方向振動及びねじれ方向振動の組み合わさったものを受けるということである。チップヘッドは、第1の機械共振モードに関連付けることができる感知可能な振動運動を行わない。
【0066】
次に、図9を参照して、ハンドピースに関連付けられた振動の境界及び節点を説明する。近位端質量体46の近位端は、ハンドピースの長手方向振動の近位無制約境界(unconstrained boundary)を表す。ここで、ハンドピースは、チップ142を備えるものと解釈される。近位無制約長手方向境界の遠位前方には、第1の長手方向節点、すなわち、近位長手方向節点がある。この節点は、最も遠位の駆動体36に隣接して位置することができる。近位長手方向節点の前方には,第2の長手方向節点、すなわち、遠位長手方向節点が存在する。この節点は、チップ142において螺旋溝154の近位のロケーションに位置する。これらの長手方向節点においては、駆動体がハンドピースにおいて誘発する長手方向の拡張/収縮の波は、ハンドピース又はチップの拡張も収縮も行わない。各長手方向節点の両側では、駆動体によって生成される音波が、ハンドピースの対向した拡張動作及び収縮動作を誘発する。したがって、ハンドピースの各共振モード中に、駆動体が、近位無制約境界と近位長手方向節点との間でハンドピースの拡張を誘発すると、2つの長手方向節点の間では収縮が行われ、遠位長手方向節点の遠位では拡張が行われる。同様に、共振モードについて、駆動体は、近位無制約境界と近位長手方向節点との間で収縮を誘発し、ハンドピースは、長手方向節点の間で拡張を受け、遠位長手方向節点の遠位で収縮を受ける。
【0067】
遠位長手方向節点の遠位にありかつ溝154の近位にあるロケーションにおいて、ハンドピースは、固定ねじれ方向境界を有する。このロケーションの遠位では、溝154が存在するために、チップを通過する各長手方向の拡張/圧縮波の小部分が、チップをねじる運動に変換され、ねじれ方向運動を誘発する。溝154の前方には、ねじれ方向節点が存在する。このねじれ方向節点では、チップはねじれ方向運動を行わない。ねじれ方向節点の遠位では、チップは、固定されたねじれ方向平面とねじれ方向節点との間のチップのセクションがツイストする方向とは反対の方向にツイストする。
【0068】
チップヘッド164の遠位端は、ハンドピースの長手方向振動及びねじれ方向振動の双方について無制約境界である。この境界は無制約境界である。なぜならば、チップヘッドは、チップの運動を制約する固定した物体に取り付けられないからである。この理由によって、駆動信号がハンドピースに印加されると、チップシャフト144を通じてチップヘッド164に伝達される振動運動は、チップヘッドの振動動作を誘発する。
【0069】
駆動信号が、第1の機械共振モードと第2の機械共振モードとの間の周波数においてハンドピース駆動体に印加されると、ハンドピースの機械構成要素は、第1の機械共振モード及び第2の機械共振モードのそれぞれに関連付けられた複数の振動を同時に行うように駆動される。したがって、駆動信号が、第1の機械共振モードの共振周波数と第2の機械共振モードの共振周波数との間の周波数においてハンドピース駆動体に印加されると、駆動体36がハンドピースの残部に印加する力は、第1の機械共振モードに関連付けられた成分と第2の共振モードに関連付けられた成分とを有する長手方向の拡張/収縮を誘発する。第2の機械共振モードに関連付けられた長手方向振動は、第1の機械共振モードに関連付けられた長手方向振動と異相であることが更に理解される。
【0070】
同様に、駆動信号が、第1の機械モードの共振周波数と第2の機械モードの共振周波数との間の周波数においてハンドピース駆動体に印加されると、溝154の遠位のチップ142の機械構成要素は、第1の機械共振モードに関連付けられた成分と第2の機械共振モードに関連付けられた成分とを有するねじれ方向振動を行う。第2の共振モードに関連付けられたチップのねじれ方向振動は、第1の共振モードに関連付けられたチップのねじれ方向振動と同相であることが更に理解される。これは、チップが、第2の機械共振モードにおいて振動されることに起因する長手方向の収縮(又は拡張)運動を行うとき、チップは、第1の機械共振モードにおいて振動されることに起因する長手方向の拡張(又は収縮)運動を行うときと同じ方向のねじれ運動を強いられることを意味する。
【0071】
これらの原理に基づくと、本発明のシステム30は、ハンドピースの第1の機械共振モードに関連付けられた共振周波数と第2の機械共振モードに関連付けられた共振周波数との間にある駆動信号をハンドピース駆動体36に印加するように構成される。駆動信号が駆動体に印加される際の特定の周波数は、ここでは、長手方向機械キャンセル周波数fLCと呼ばれるものである。図1のプロットにおいて、長手方向モードキャンセル周波数fLCは24.97kHzである。
【0072】
駆動信号が、長手方向機械キャンセル周波数において駆動体36に印加されると、ハンドピースは、長手方向機械キャンセルモードと呼ばれるモードで動作する。図10及び図11は、ハンドピースがこのモードで動作するときのチップの振動動作の成分を示している。図10は、駆動体がハンドピースの残部に第1の力を印加したときに起こることを示している。適宜、駆動体は、外向き双方向矢印280によって表される拡張力を出力している。駆動体は、単一の振動サイクルの第1のフェーズ中にこの力をチップの他の機械構成要素に印加するとみなすことができる。本発明において、ハンドピースの機械構成要素は、機械エネルギーを機械負荷に印加するハンドピースの振動構成要素である。これらの構成要素には、駆動体36、支柱44、近位端質量体46、ホーン48及びチップ142が含まれる。スリーブ170は、通常、電流の当量が流れる構成要素とみなされない。この理由は、スリーブ170が振動している間、このスリーブの振動は他の構成要素の振動に起因しているからである。換言すれば、スリーブ170は、ハンドピースの他の機械構成要素の振動が印加される機械負荷の一部である。したがって、スリーブ170は、本発明の運動及び信号フローの解析を目的としたものであり、ハンドピースの機械構成要素のうちの1つとみなされない。
【0073】
駆動体36が長手方向機械周波数において拡張力をハンドピースの残部に印加した結果、ハンドピースの機械構成要素は、励振状態になり、それら自体の長手方向動作を受ける。これらの構成要素は第1の機械共振モードにおいて振動する傾向があることから、遠位長手方向節点の遠位では、この動作は、長手方向拡張動作である。これは、図10の右向き矢印284によって表される。この動作は、拡張動作である駆動体の動作と同様であるが、この動作は、駆動体36の振動と異相である。螺旋溝154が存在するために、ねじれ方向境界では、この長手方向動作の小部分は、チップ142のねじれ方向動作に変換される。ねじれ方向境界の付近では、この動作は、曲線矢印288の方向にある。ハンドピースを遠位端から見下ろすと、この動作は、反時計回り運動として見える。ねじれ方向節点からチップヘッドまでのチップに沿ったロケーションでは、この動作は、同じ視点から見ると、時計回り回転、すなわち、矢印290によって表される回転として見える。
【0074】
ハンドピースの機械構成要素は、第2の機械共振モードにおいて振動させることも必要である。したがって、第1のモードにおいてハンドピースの構成要素の異相の長手方向拡張振動を引き起こすこれらの機械構成要素に印加される同じ拡張力の印加によって、遠位長手方向節点の遠位のこれらの同じ構成要素には、第2の機械共振モードにおいて異相の長手方向収縮振動が誘発される。これらの収縮振動は、左向き矢印292によって表される。ねじれ方向境界の遠位に螺旋溝154が存在するため、これらの長手方向振動の小部分はねじれ方向振動に変換される。ねじれ方向境界の直接隣接した箇所では、これらの振動は、曲線矢印294によって表されるように反時計回り方向である。ねじれ方向節点の遠位では、これらの振動は、矢印296によって表されるように時計回り方向である。
【0075】
したがって、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号が、信号の1つのフェーズ中に駆動体36に印加されると、ハンドピース機械構成要素が長手方向節点の遠位で拡張する傾向は、これらの構成要素が収縮も行おうとする傾向によってキャンセルされる。チップヘッド164は、したがって、長手方向動作を基本的に行わない。
【0076】
このフェーズにおいて同時に、螺旋溝がない場合にはハンドピース構成要素の長手方向運動を誘発する対抗力は、螺旋溝154が存在する結果、ねじれ方向境界の遠位においてねじれ方向運動に変換される。これらのねじれ方向運動は、矢印によって表されるように互いに同相である。これらのねじれ方向運動は、互いに同相であるので累積的である。換言すれば、振動サイクルの或るフェーズ中、チップヘッド164のねじれ方向動作は、ハンドピースが機械共振周波数のうちの単一の一方において振動するように駆動されるために、チップヘッドがねじれ方向動作に励振された場合のチップヘッドのねじれ方向動作よりも大きい。この理由によって、図10では、ねじれ方向節点の近位のねじれ方向振動の和を表す曲線矢印302が、矢印288及び294のいずれのものよりも長くなるように示されている。同じ理由によって、ねじれ方向節点の遠位のねじれ方向振動の和を表す曲線矢印304は、矢印290及び296のいずれのものよりも長くなるように示されている。
【0077】
図11は、駆動体36が、単一の振動サイクルの第2のフェーズ中において収縮力を印加したときに起こることを示している。駆動体が収縮した結果、支柱44は、内向き双方向矢印310によって表されるように、ナット46及びホーン48を互いの方に向けて引動する。この力の印加と、これらの構成要素が第1の機械共振モードにおいて振動しようとする傾向との結果、遠位長手方向節点の遠位では、この力は、長手方向収縮動作として見える。この動作は、図11の左向き矢印312によって表される。この動作は、駆動体36の収縮と異相である。螺旋溝154が存在するために、ねじれ方向境界では、この長手方向動作の小部分は、チップ142のねじれ方向動作に変換される。ねじれ方向境界の付近では、この動作は、曲線矢印314の時計回り方向である。ねじれ方向節点からチップヘッド164までのチップに沿ったロケーションでは、この動作は、同じ視点から見ると、反時計回り回転、すなわち、矢印316によって表される回転として見える。
【0078】
ハンドピースの機械構成要素は、第2の機械共振モードにおいて振動させることも必要である。したがって、第1のモードにおいてハンドピースの構成要素の異相の長手方向収縮振動を引き起こすこれらの機械構成要素に印加される同じ収縮力の印加によって、遠位長手方向節点の遠位のこれらの同じ構成要素には、第2の機械共振モードにおいて異相の長手方向拡張振動が誘発される。これらの拡張振動は、右向き矢印320によって表される。ねじれ方向境界の遠位に螺旋溝154が存在するため、これらの長手方向振動の小部分はねじれ方向振動に変換される。ねじれ方向境界の直接隣接した箇所では、これらの振動は、曲線矢印322によって表されるように時計回り方向である。ねじれ方向節点の遠位では、これらの振動は、矢印324によって表されるように反時計回り方向である。
【0079】
それゆえ、振動サイクルのこの第2のフェーズにおけるハンドピースの振動動作の和は、このサイクルの第1のフェーズにおける振動動作の一部を反転したものである。この場合も、互いに異相である長手方向振動は、互いにキャンセルし合う。この理由によって、チップの長手方向動作は実質的に最小である。2つの機械共振モードに関連付けられたねじれ方向振動は同相である。この理由によって、チップ142は、ねじれ方向動作、すなわちツイスト(twist)を行う。曲線矢印314、316、322及び324に対する曲線矢印326及び328の相対的な長さによって表されるように、このツイストの大きさは、ハンドピースが機械共振モードのうちのいずれか単一の一方で振動しようとする傾向に起因して誘発されるツイストよりも大きい。
【0080】
その結果、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号が駆動体36に印加されると、ハンドピース機械構成要素は、シャフト144及びチップヘッド164の(存在しても)最小限の長手方向動作しか有しないヘッドの実質的なねじれ方向振動、すなわち、ツイスト振動が存在するパターンで振動するように駆動される。
【0081】
ハンドピースを長手方向機械キャンセル周波数において振動させるために駆動体36に印加される駆動信号の特性の理解は、図12を最初に参照することによって得られる。この図は、ハンドピースの構成要素を通る電流フローを表している。駆動信号の電流iは、構成要素の3つのセットを通って並列に印加されるものとみなすことができる。構成要素の第1のセットは、駆動体36自体からなる。これらの構成要素にわたるインピーダンスZは、以下の式のように、基本的に駆動体のリアクタンスである。
【数2】
駆動体のキャパシタンスは、本発明においては、一定である。したがって、駆動体のインピーダンスに影響を及ぼす唯一の変数は、ω、すなわち、ラジアンを単位とする駆動信号の周波数である。
【0082】
駆動信号電流iが印加されて通る構成要素の第2のセットは、ハンドピースを第1の機械共振モードにおいて振動させるハンドピースの機械構成要素である。この電流は、実際の電気電流でないことが理解される。代わりに、この電流は、これらの構成要素の機械振動を誘発するためにこれらの構成要素を流れる電流の仕事当量である。これらの構成要素には、駆動体36、支柱44、近位端質量体46、ホーン48及びチップ142が含まれる。この場合も、スリーブ170は、ハンドピースの他の機械構成要素の振動が印加される機械負荷の一部である。したがって、スリーブ170は、電流の仕事当量が流れる構成要素のうちの1つではないことが理解されるであろう。
【0083】
図12では、この電流の仕事当量は、ハンドピースの第1の機械共振モード振動に関連付けられており、より具体的には、ハンドピースの電流の第1の共振モード仕事当量であるので、iである。この仕事当量が印加されて通るインピーダンスZは、第1の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の抵抗特性に起因する抵抗構成要素Rと、第1の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の誘導特性に起因する誘導リアクタンス構成要素Lと、第1の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の容量特性に起因する容量リアクタンス構成要素Cとを有する。したがって、このインピーダンスZは、以下の式に基づいて計算される。
【数3】
これらのハンドピース機械構成要素が適用される負荷が変化すると、これらの構成要素の抵抗特性、誘導特性及び容量特性は変化する。この理由によって、図12では、R、L、及びCは変数として示されている。
【0084】
駆動電流iの一部分が印加されて通る構成要素の第2のセットは、ハンドピースを第2の機械共振モードにおいて振動させるハンドピースの機械構成要素である。電流のこの部分、すなわち電流iは、ハンドピースを通る電流の第2の共振モード仕事当量とみなすことができる。電流の仕事当量iが印加されて通るインピーダンスZは、第2の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の抵抗特性に起因する抵抗構成要素Rと、第2の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の誘導特性に起因する誘導リアクタンス構成要素Lと、第2の機械共振モードにおいて振動するときのハンドピース機械構成要素の容量特性に起因する容量リアクタンス構成要素Cとを有する。したがって、このインピーダンスは、以下の式に基づいて計算される。
【数4】
【0085】
上述したように、ハンドピースの機械構成要素が適用される負荷の変化は、ハンドピースの抵抗特性、誘導特性及び容量特性の変化をもたらす。したがって、図12では、R、L、及びCは変数として示されている。
【0086】
数学的には、キルヒホッフの電流法則を考慮すると、駆動信号電流iの上記分解は、したがって、以下のように分解することができる。
【数5】
式(5A)を並べ替えると、以下の関係が得られる。
【数6】
これは、ハンドピースの機械構成要素を通る電流の仕事当量が、駆動信号の電流と駆動体36を通る電流フローとの間の差に等しいことを意味する。式(2)を考慮すると、以下の式が得られる。
【数7】
ここで、fは、駆動信号の角周波数である。式(6)を式(5B)に代入すると、以下の結果が得られる。
【数8】
【0087】
長手方向機械キャンセル周波数は、第1の機械共振モードの共振周波数を上回っている。したがって、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号がハンドピースに印加されると、インピーダンスZは、jωLに起因して概ね誘導性となる。長手方向機械キャンセル周波数は、第2の機械共振モードの共振周波数を下回っている。したがって、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号がハンドピースに印加されると、インピーダンスZは、1/jωCに起因して概ね容量性となる。これは、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号が駆動体36に印加されると、インピーダンスZはインピーダンスZと180度異相であることを意味する。したがって、Z及びZのリアクタンス性構成要素は、基本的に互いにキャンセルし合う。これは、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号がハンドピースに印加されると、Z及びZの並列インピーダンスは純粋に抵抗性であることを意味する。
【0088】
長手方向機械キャンセル周波数においては、任意の周波数と同様に、駆動体36のインピーダンスZは純粋に容量性である。
【0089】
長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号が駆動体に印加されたときに上記インピーダンスが存在することは、ハンドピースがこの状態にあるときに、電流iと電流の仕事当量i+iとの間の位相角は90度異相であることを意味する。
【0090】
ハンドピースを通る電気電流及び電流の仕事当量の双方は、大きさ及び位相を有するので、これらの電流は、以下の極形式で表すことができる。
【数9】
及び
【数10】
したがって、これらが90度異相であるとき、iをi+iによって除算することによって、以下の式が得られる。
【数11】
式(8A)の右辺を直交座標形式の数値(rectangular number)に変換することによって、以下の式が得られる。
【数12】
式(10C)の最終結果は、90度の余弦は0であり、90度の正弦は1であることに基づいている。
【0091】
上記結果は、駆動信号が長手方向機械キャンセル周波数にあるとき、駆動体36を通る電気電流フローとハンドピースの機械構成要素を通る電流の仕事当量との比の実数成分は0に等しいことを意味する。数学的には、以下となる。
【数13】
式(5)及び(7)を式(11A)に代入することは、駆動信号が長手方向機械キャンセル周波数にあるとき、以下の式となることを意味する。
【数14】
【0092】
式(11B)の前項及び後項は、従来技術の式(1)の前項及び後項と同一である。長手方向振動と実質的にねじれている振動とをチップヘッド164に同時に受けさせるために駆動信号をハンドピースに印加することとの間には相違がある。チップヘッド164にねじれ方向振動及び長手方向振動を同時に誘発するようにハンドピースを駆動したいとき、目標周波数は、チップの機械共振モードのうちの1つに関連付けられた共振周波数である。多くの場合、これは、第1の機械共振モードに関連付けられた共振周波数である。これとは対照的に、本発明に従って駆動信号をハンドピースに印加するとき、目標周波数は、チップ142の長手方向機械キャンセル周波数である。この周波数は、チップメモリのフィールド196及び198内のデータによって規定された周波数の範囲内にある。
【0093】
2つのシステム間の第2の相違は、本発明のシステムの比の極性が式(1)の比の極性と逆であるということである。この理由は、ハンドピースが機械共振モードにあるように駆動信号を調節すると、駆動体に印加される電流をハンドピースに印加される電流の仕事当量によって除算したものと周波数との間の関係の傾きが正であるからである。これは、式(1)の比を負にすることによって、システム状態の評価が負の結果を与える場合、コントローラは、システムが、共振モードの共振周波数にあるハンドピースに駆動信号を印加するために、駆動信号の周波数を増加させることが必要である状態にあるものと解釈することを意味する。逆に、式(1)の評価が正の数値を与える場合、コントローラは、システムが、共振モードの共振周波数にあるハンドピースに駆動信号を印加するために、駆動信号の周波数を減少させることが必要である状態にあるものと解釈する。
【0094】
これとは対照的に、長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号をハンドピースに印加するように本発明によるシステムを調節するとき、駆動体に印加される電流をハンドピースに印加される電流の仕事当量によって除算したものと周波数との間の関係の傾きは負である。上記で論述したように、式(11B)の比は、式(1)の比と逆の極性を有する。これは、本発明のシステム状態の評価が正の結果を与える場合、プロセッサ266は、システム30が、共振モードの共振周波数にあるハンドピースに長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号を印加するために、駆動信号の周波数を増加させることが必要である状態にあるものと解釈することを意味する。逆に、式(11B)の評価が負の数値を与える場合、プロセッサ266は、システムが、長手方向機械キャンセル周波数にあるハンドピースに駆動信号を印加するために、駆動信号の周波数を減少させることが必要である状態にあるものと解釈する。
【0095】
上記から、ハンドピースの機械構成要素を通る電流の総仕事当量は、ハンドピースを通る電流の仕事当量の和に等しいことも理解されるであろう。数学的には、以下の式となる。
【数15】
【0096】
III.実際の動作
本発明のシステム30の動作は、チップ142をハンドピース32に連結することから開始する。スリーブ170がチップ上に嵌合され、ハンドピース32にも取り付けられる。ケーブル228が制御コンソール230に取り付けられる。コンソール230は、その後、いつでもオンにすることができる。上記サブステップは、システムの初期アセンブリ及び起動を形成する(図13Aにおけるステップ332)。制御コンソール230が最初にオンにされると、プロセッサ266は、ハンドピースメモリ56及びチップメモリ184に記憶されたデータを読み取る(ステップ334)。プロセッサ266は、適切なコマンドをメモリリーダ262にアサートすることによってこれらのデータを受信する。
【0097】
ステップ336において、プロセッサは、読み取られたデータに基づいて、システムの初期構成を完了する。ステップ336は、システム30が使用のために適切に構成されているか否かを判断する複数の評価の実行を含む。これらの評価は、ハンドピースが、制御コンソール230が駆動信号を供給することができるものであるか否かを判断することと、チップ142がハンドピースによる作動に適したものであるか否かを判断することとを含む。これらの評価は、ハンドピース識別フィールド62及びチップ識別フィールド188からのデータに基づくことができる。プロセッサ266は、ハンドピース32及びチップ142が、ハンドピース使用履歴フィールド78及びチップ使用履歴フィールド218からの読み取りデータに基づいて使用できる状態にあるか否かも評価する。使用が適切でない場合があることを示すデータの一例は、特定の構成要素、ハンドピース又はチップが、多数回用いられてきたことを示すデータ、又は全時間がその構成要素の設計されたライフサイクルを越えて用いられてきたことを示すデータである。
【0098】
ハンドピースメモリ56、チップメモリ184及び開業医コマンド内のデータに基づいて、プロセッサは、ステップ338において、ハンドピースの機械構成要素に流される電流の選択された最大当量i SELECTMAXを確立する。電流i SELECTMAXは、チップメモリ184から読み取られた電流の最大仕事当量i MAXよりも大きくないものと解釈される。
【0099】
ステップ340は、プロセッサ266が、チップ142が振動されることを示すために制御部材が作動されているか否かを判断するのを待機することを表している。本発明の説明される実施形態では、プロセッサ266は、フットスイッチ270によって出力される信号を監視することによってステップ340を実行する。開業医は、チップ142を作動させたい場合、フットスイッチ270を押下する。チップヘッド振動の大きさは、開業医がフットスイッチ270の押下の程度を制御することによって設定される。
【0100】
開業医が制御部材を押下したことに応答して、プロセッサは、ステップ342において、電流の目標仕事当量と呼ばれることがある目標電流i TARGETを計算する。目標電流i TARGETは、プロセッサがハンドピース32の機械構成要素に印加されるべきと判断した機械的電流(mechanical current)である。目標電流i TARGETは、ハンドピースメモリから取り出された電流i MAXと、フットスイッチ270が押下された程度とに基づく。目標電流は、以下の1次方程式を用いて計算することができる。
【数16】
係数Dは、0.0以上1.0以下である。例えば、開業医が、ハンドピースチップ164が最大振幅の振動を受けるようにフットスイッチ270を押下した場合、プロセッサ266は、係数Dを1に設定する。フットスイッチ270の設定が、振動が最大未満の振幅にあることを示す場合、プロセッサ266は、係数Dを1未満の値に設定する。
【0101】
次に、ステップ344において、プロセッサ266は、初期WAVEFORM_SET信号を生成する。この信号の電位は、電源装置に、ハンドピースメモリ58から取り出された最大駆動信号電圧V MAXよりもかなり小さい駆動信号を出力させるように設定される。例えば、本発明の幾つかの態様では、WAVEFORM_SET信号の電位は、電圧V MAXの0.02~0.10である電位を有する駆動信号の出力をもたらすように設定される。より詳細には、WAVEFORM_SET信号は、駆動信号の電圧を、電圧V MAXの0.03~0.07である電位にするように設定される。WAVEFORM_SET信号の電圧と駆動信号の駆動信号電圧Vとの間の関係は、通常、1次関係である。WAVEFORM_SET信号の電圧を目標駆動信号電圧の関数として求めることは、目標駆動信号電圧の電位と、プロセッサ96に事前に記憶された係数及びオフセット値とに基づく。
【0102】
ステップ344の一部として、プロセッサ266は、WAVEFORM_SET信号の周波数も設定する。制御部材が、ハンドピースを作動させるために最初に押下されると、プロセッサ266は、WAVEFORM_SET信号の周波数を、最小可能長手方向機械キャンセル周波数、すなわち、チップメモリ184内のフィールド196からの周波数と、最大可能機械キャンセル周波数、すなわち、チップメモリ内のフィールド198からの周波数との間になるように設定する。具体的に言及しないが、ステップ342において、プロセッサ344は、あらゆる必要なイネーブル信号を電源装置232、増幅器234及びコンソール230の内部のあらゆる安全構成要素にアサートする。これらの信号のアサートによって、電源装置232は、必要なレール信号を増幅器に確実に出力するようになり、増幅器234は、意図された信号を変圧器の1次巻線244の両端に印加する。駆動信号が誘発され、2次巻線248の両端に現れる。
【0103】
変圧器238の両端の信号フローの結果、駆動信号はハンドピース32に印加される。この結果、駆動体36は、周期的に拡張/収縮する。駆動体は、ハンドピースの第1の機械共振モードと第2の機械共振モードとの間の周波数において振動するので、ハンドピース自体は、これらの共振モードの双方における同時異相振動を行う。この結果、ねじれ方向境界の遠位のチップの部分は、公称的な場合でのみ仮に長手方向であったとしても(only if nominally if at all longitudinal)実質的にねじれ方向の振動を行う。
【0104】
次に、システム30は、出力駆動信号が適切な振幅及び方向の振動をチップヘッド164に誘発することを確実にするフィードバック制御プロセスを行う。この制御を行うために、ステップ346において、コンソール230は、ハンドピースにわたる駆動信号の電圧Vを監視する。具体的には、ステップ346において、電圧測定回路252によって出力された駆動信号電圧Vを表す信号が、プロセッサ266に印加される。また、ステップ346において、コンソール230は、電流i、すなわち、ハンドピース32に供給される駆動信号の電流も監視する。ステップ346のこの部分では、電流測定回路256によって生成された出力信号がプロセッサ266に印加される。
【0105】
ステップ348において、プロセッサ96は、印加される電流の総仕事当量iを求める。この計算は、式(7)及び(12)の組み合わせに基づく。プロセッサ266はこれを求めることができる。なぜならば、プロセッサは、これを求める際に基礎となる4つの変数、すなわち、電流測定回路256からの電流iと、プロセッサが駆動信号の周波数を設定することに基づく周波数ωと、電圧測定回路252からの電圧Vと、駆動体キャパシタンスCとを規定するデータを有するからである。駆動体キャパシタンスCは変数であるが、式(7)では、ハンドピースメモリ56から読み取られる固定された既知の変数である。
【0106】
ステップ350において、電流の総仕事当量iが電流i TARGETと比較される。より詳細には、この比較は、ハンドピースの機械構成要素を通る実際の電流フローが目標フローと等しいか否か又は実質的に同じであるか否かを判断するように行われる。ここで、実質的に同じとは、電流が互いの20ミリアンペア以内、より多くの場合に互いから10ミリアンペア以内、好ましくは2ミリアンペア以内、より好ましくは1ミリアンペア以内にあるときの状態と考えられる。代替的に、電流は、互いの10%以内、より好ましくはそれぞれの5%以内、理想的には互いの1%以内である場合に実質的に同じである考えることができる。
【0107】
電流が実質的に等しい場合、システム30は、ハンドピースの機械構成要素に印加される電流の当量が、正しい周波数にあると仮定される駆動信号の印加が適切な振幅の振動をチップヘッド52に誘発しているレベルにある状態にある。システム30がこの状態にある場合、プロセッサ96はステップ164に進む。
【0108】
多くの状況において、ステップ350の比較は、電流の総仕事当量iが目標電流i TARGETに実質的に等しくないことを示す。システム30がこの状態にあるとき、プロセッサ96は、ステップ352において、WAVEFORM_SET信号の電圧を再設定する。より具体的には、プロセッサ96は、式(7)に基づいて、目標電流i TARGETに実質的に等しいハンドピースの機械構成要素を通る調整された電流フローをもたらす駆動信号電圧Vの値を計算する。ステップ352のこの計算は、駆動体キャパシタンスと、一定のままである駆動信号周波数とに基づいて実行される。
【0109】
ステップは特定されないが、WAVEFORM_SET信号の電圧の再設定の結果として、増幅器は、変圧器の1次巻線244の両端に印加される信号の電位を再設定する。この結果、変圧器の2次巻線248の両端に現れる駆動信号電圧Vは変化する。
【0110】
ステップ356において、プロセッサは、駆動信号の周波数がハンドピースの長手方向機械キャンセル周波数にあるか否か又はこの周波数と実質的に等しいか否かを判断する。この判断は、式(11B)の比が0に等しいか否か又は0に実質的に等しいか否かを評価することによって行われる。ここで、0に実質的に等しいとは、比の実数成分が0.10以下、好ましくは0.05以下、より理想的には0.01以下であることを意味する。
【0111】
ステップ356の比較は、ハンドピースに印加される駆動信号がハンドピースの長手方向機械キャンセル周波数にあるか又はこの周波数に実質的に等しいことを示す場合がある。これが駆動信号の目標状態である。これは、駆動信号が、ねじれ方向境界の遠位のチップのセクションが実質的なねじれ方向振動及び存在しても最小限の長手方向振動を行うことをもたらす駆動体36の拡張/収縮を誘発していることを意味する。
【0112】
ステップ356の評価において、駆動信号は、長手方向機械キャンセル周波数において又はこの周波数の近くでハンドピースに印加されていないと判断される場合がある。プロセッサ266がこの判断を行った場合、ステップ358において、プロセッサは、WAVEFORM_SET信号の周波数を再設定する(ステップ358)。ステップ356の評価の結果が否定的である場合、プロセッサ266は、システムを、式(11B)の左辺の比が負であるために、ステップ358において、プロセッサ266は、システム30が駆動信号の周波数を減少させるべき状態にあると解釈する状態にあるとみなす。ステップ356の計算が正の結果を与える場合、プロセッサ96は、システム30が、駆動信号周波数がハンドピースの長手方向機械キャンセル周波数により接近することを確保するために駆動信号の周波数を増加させることが必要である状態にあるとみなす。
【0113】
ステップ358において、プロセッサは、電流i、電圧V及び駆動体キャパシタンスCが一定であると仮定する。反復プロセスにおいて、異なる周波数が式(11B)に導入される。式(11B)の新たな実行の結果、駆動を通る電流フローと、ハンドピースの機械構成要素に印加される電流の当量との比の実数成分は0よりも小さい(又は実質的に小さい)と判断される場合がある。この状態が存在する場合、次の反復において、導入される周波数は、以前に導入された周波数よりも低い。式(11B)の実行及び評価の結果、この比は0よりも大きい(又は実質的に大きい)と判断される場合がある。この状態が存在する場合、次の反復において、導入される周波数は、以前に導入された周波数よりも高い。計算の最終結果が、上記比が0又は実質的に0であるという場合、駆動信号の周波数は、導入された周波数に設定される。次に、プロセッサ266は、これらの計算の結果に基づいて、増幅器234に出力されるWAVEFORM_SET信号の周波数を調整する。次に、制御コンソール230は、ハンドピース32の長手方向機械キャンセル周波数にある駆動信号をハンドピースに出力する。
【0114】
図示していないが、ハンドピース32に印加される駆動信号の特性は、ハンドピースから読み取られる境界パラメータによって制限されることが理解される。具体的には、WAVEFORM_SET信号の調整は、駆動信号が最大電圧レベルV MAXによって指定される電位を越えないことを確保するように制限される。WAVFORM_SET信号の調整は、ハンドピースに印加される駆動信号の電流がi MAXを越えないこと、及び電流の機械構成要素がi MAXを越えないことを確保するように更に制限される。
【0115】
ステップ352及び358において行われるWAFEFORM_SET信号の電圧及び周波数の調整は、ハンドピースメモリ56及びチップメモリ184から読み取られるPID係数に基づくことも理解されるであろう。通常、チップメモリ184内の係数は、WAVEFORM_SET信号のこれらの特性が調整される係数である。
【0116】
図13A及び図13Bにおいて、ステップ356又は必要な場合にはステップ358の実行後、システムは、ステップ340にループバックすることが示されている。これは、目標電流i TARGETを再計算するプロセスと、駆動信号の電位及び周波数を選択的に調整するプロセスとが、一般に、システムが作動された状態にある限り実行されるからである。
【0117】
制御ループが繰り返し実行されるのには複数の理由がある。一般に、駆動信号の周波数の調整の結果が調整されると、駆動体インピーダンスZと、ハンドピースの機械構成要素のインピーダンスZ及びZとの双方のインピーダンスが変化する場合に、理解されるであろう。この結果、ハンドピースを通る電流フロー、より詳細には、ハンドピースの機械構成要素を通る電流の総仕事当量iが変化する。システム30は、これらの変化を測定値V及びiの変化として検出する。したがって、ステップ356又は358が実行された後、次のステップ350の評価は、システムが、電流の総仕事当量iが目標電流i TARGETからシフトしている状態にあることを示す可能性が最も高い。これによって、ステップ352を新たに実行して、駆動信号の電圧の大きさを調整することが必要とされる。
【0118】
同様に、駆動信号の電位の調整は、電圧V及び電流iの変化ももたらす。これは、ステップ164が次回実行されると、その評価は、駆動信号がもはやハンドピースの機械構成要素の長手方向モードキャンセル周波数にないことを示すことを意味する。
【0119】
制御ループを通る複数の繰り返しの後、コンソール266は、i TARGETに実質的に等しくかつハンドピース機械構成要素の長手方向モードキャンセル周波数にあるハンドピースの機械構成要素を通る電流フローをもたらす駆動信号をアサートする。起動時において、チップヘッドは組織に対して適用されていないものと仮定すると、システムは、2秒以内、より多くの場合には1秒以内にこの状態に達すると考えられる。
【0120】
制御ループが連続して実行される更なる理由は、ハンドピース32がどのように用いられるかというまさにその性質と関係がある。ハンドピースが機能するために、ヘッド164は、組織に接触して配置される(ステップは図示せず)。これは、組織の鋸切断、アブレーション、乳化、集合的には切除をもたらす、組織に対する歯の前後動作であるからである。この場合も、本発明の幾つかの実施態様では、この前後動作は、組織の付近の流体、幾つかの場合には組織自体のキャビテーションをもたらすものである。
【0121】
ヘッド164が組織に接触して配置されると、ハンドピースを形成する構成要素に機械負荷がかかる。この機械負荷は、ハンドピースの機械構成要素のインピーダンスを変化させる。ここで、インピーダンスは、ハンドピースの第1の機械共振モード及び第2の機械共振モードの双方に関連付けられたインピーダンスであると解釈される。また、システム30が作動されると、ハンドピースの機械構成要素の温度も多くの場合に変化する。この構成要素の温度変化は、これらの構成要素のインピーダンスの変化をもたらす。構成要素の性質の変化は、ハンドピースの長手方向機械キャンセル周波数のシフトを引き起こす可能性がある。
【0122】
インピーダンス及び長手方向機械キャンセル周波数の結果として生じる変化は、ハンドピースを通る電流i及び電流の総仕事当量iの双方のフローの変化をもたらす。したがって、制御ループの連続的な実行は、インピーダンスのこれらの変化が生じたときに、電流の仕事当量が目標電流i TARGETに実質的に等しくなり、駆動信号の周波数がハンドピースの機械構成要素の長手方向機械キャンセル周波数に実質的に等しくなることを確保するように駆動信号が再設定されることを確保する。駆動信号の特性をこれらの目標パラメータの近くに維持することによって、チップヘッド52が受ける機械負荷が変化すると、ヘッドの振動の振幅は実質的に一定のままであり、チップヘッド164及びシャフト144の隣接する遠位セクション160は、実質的な長手方向動作を行わないことが保証される。
【0123】
さらに、ハンドピース32が作動されている期間中、開業医は、チップヘッド振動の振幅を調整したい場合がある。この調整は、制御部材270の再設定によって生じる(調整は図示せず)。この調整が行われると、ステップ148のその後の実行において、新たに計算された目標電流i TARGETは、以前に計算された目標電流と異なることになる。これは、ひいては、次のステップ350の実行の結果、電流の仕事当量i+iがもはや目標電流i TARGETに実質的に等しくないと判断されることを意味する可能性が最も高い。上述した理由から、これは、駆動信号の電位及び周波数の調整をもたらす可能性が最も高い。
【0124】
したがって、ステップ340の評価から開始する上記で説明した制御ループは、フットペダル270又は他のオン/オフコントロールが作動状態を維持している限り、連続して実行される。開業医は、フットペダル270を解放することによってハンドピースを起動解除する。この結果、プロセッサは、ステップ340のその後の実行のうちの1つにおいて、この制御部材がオフ位置にあることの信号を受信する。プロセッサ266がこの信号を受信したことに応答して、プロセッサは、駆動信号の出力を引き起こすようにアサートされていた信号の印加を無効にする(ステップは図示せず)。システム30は、待機状態すなわち、オン/オフ制御部材からの信号を連続して監視し、開業医がハンドピース32を作動させたいか否かを判断することに戻る。
【0125】
ハンドピースが作動された後、最終的には、振動するチップヘッド164を組織に適用することがもはや必要でない時が来ることが理解されるであろう。開業医は、制御部材、すなわちフットスイッチ270の押下を停止する。プロセッサ266は、ステップ340の次の実行においてこのイベントの発生を検出する。このイベントが発生すると、プロセッサは、WAVEFORM_SRT信号の印加を無効にする(ステップは図示せず)。この結果、制御コンソールは、ハンドピース駆動体36への駆動信号の印加を停止する。この結果、チップ142の振動は終了する。プロセッサ266は、ステップ340を繰り返し実行して、開業医がチップを再度振動させたいか否か、すなわち、制御部材270が再度作動されるか否かを引き続き判断する。
【0126】
本発明のシステム30は、ステップ356及び358の反復実行によって、当該システムが、ハンドピース32の長手方向機械キャンセル周波数に実質的に等しい周波数に駆動信号を維持するように構築される。この関係は、ハンドピース機械構成要素の共振周波数が、機械負荷及び/又はこれらの構成要素の温度変化に起因して変化する際に維持される。
【0127】
本発明のシステム30は、ハンドピースのチップ及び他の構成要素が機械負荷を被るか又は温度変化を受けても、所望の振幅においてチップのヘッドを振動させることができる。これによって、このシステムを用いる手術要員が、駆動信号を連続して調整し、チップヘッドが所望の振幅において連続して振動することを確保しなければならない必要性が低減される。
【0128】
また、処置の経過中、チップヘッドは、組織に突然押圧される場合がある。これによって、ハンドピースの機械構成要素のインピーダンスの急速な大幅の増加が引き起こされる。このインピーダンスの急速な変化に応答して、本発明のシステム30は、駆動信号の電位及び周波数を急速に調整する。駆動信号のこれらの特性の調整は、チップヘッド振動が所望の振幅を維持することを確保する働きをする。これによって、ハンドピースの突然の機械負荷が、チップヘッド振動の振幅の同様に突然の低減をもたらす程度が低減される。
【0129】
長手方向機械キャンセル周波数における駆動信号をハンドピースに印加することによって、本発明のシステム30は、実質的にねじれ方向の振動をチップ142に誘発する。チップシャフト144は、長手方向振動動作が存在しても、この動作を最小限にしか行わない。処置の経過中、チップヘッドの配置を容易にするために、シャフト144は、チップヘッド164が適用される組織に隣接した組織に対して押圧される場合がある。シャフト144は、長手方向動作を最小限にしか行わないので、この動作が、シャフトが押圧される組織の不要な切除をもたらすキャビテーションを誘発することができる可能性は、完全ではなくても、同様に実質的に取り除かれている。
【0130】
このシステムは、プロセッサ266が、ハンドピース32及びチップ142の特性を制御コンソール230の内部の構成要素のキャパシタンス、抵抗又はインダクタンスに整合させることを要しないことも同様に理解されるであろう。したがって、それぞれがそれ自体のインピーダンス特性を有する種々のハンドピース32及びチップ142を備える本発明のシステム30を構築するのに、単一のコンソール230を用いることができる。このコンソールは、ハンドピースメモリ56及びチップメモリ184から読み取られたデータに基づいて、ハンドピース及びチップアセンブリごとにシステム30を構成する。同様に、ハンドピース及びチップを種々の制御コンソールとともに用いて、本発明のシステム30を組み立てることができる。
【0131】
本発明の上記で説明した態様では、各チップがそれ自体の長手方向機械キャンセル周波数を有する複数の異なるチップ142を単一のハンドピース32に取り付けることができ、その後、この単一のハンドピースによって駆動することができることが同様に理解されるであろう。本発明のこの特徴の1つの利点は、それぞれがそれ自体の物理構造を有し、したがって、長手方向機械キャンセル周波数を有する複数の異なるタイプのチップを共通のハンドピースに取り付けることができるということである。この特徴の第2の利点は、製造後、各チップを評価して、そのチップの長手方向機械キャンセル周波数を求めることが可能になるということである。これは、各チップの駆動信号を供給するのに用いられるそのチップのデータが、個々のチップ間の製造ばらつきを考慮したものであることを意味する。この場合も、基本設計又は製造ばらつきのいずれかで異なる双方のタイプのチップを単一のハンドピースによって駆動することができる。これによって、関連付けられたチップ142との使用向けに特に関連付けられているハンドピースを提供する費用を必要としない本発明のシステムを提供することが容易になる。
【0132】
本発明のシステム30は、目標電流に実質的に等しい電流の仕事当量をハンドピースの機械構成要素に印加するように更に設計されている。この目標電流は、チップヘッド振動の所望の振幅の開業医の設定に基づいている。したがって、本発明のシステムは、チップヘッド振動の振幅を制御する比較的正確な手段を開業医に提供する。
【0133】
IV.代替の実施形態
上記は、本発明の1つの特定の態様を対象としている。本発明の代替の態様は、説明したものとは異なる特徴を有することができる。
【0134】
例えば、本発明を構築するのに用いられる構成要素は、説明したものとは異なることができる。本発明の幾つかの態様では、ハンドピース32及びチップ142は、単一片ユニットとすることができる。
【0135】
長手方向振動運動をねじれ方向振動運動に変換するチップと一体となった特徴部は、必ずしも螺旋溝でなくてもよい。本発明の幾つかの態様では、これらの特徴部は、溝であってもよいが、螺旋状でなくてもよい。代替の溝構造の一例は斜めの溝である。これらの2つの溝の間の相違は、螺旋溝がチップに沿って近位から遠位に延びて、チップの長手方向軸の回りに曲線状になっている長手方向軸を有するということである。斜めの溝は、形状が直線状である長手方向軸を有する。
【0136】
詳しく述べた周波数、電圧、電流、キャパシタンス及び他の定量化された値は、特許請求の範囲に存在しない限り、単なる例にすぎないと解釈され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0137】
制御コンソール230は、電位及び周波数がともに変化する駆動信号を生成する他の構成要素を備えることができる。これらの構成要素の構成に応じて、コンソールは、駆動信号を生成するために入力信号が印加される変圧器を備えなくてもよい。同様に、本発明の幾つかの態様では、駆動信号電圧V及び駆動信号電流iのうちの一方又は双方を表す信号を提供するために、インダクタと対照をなすものとして抵抗器回路をコンソールに組み込むことができる。
【0138】
同様に、本発明の幾つかの態様では、コンソールは、駆動信号の周波数を設定する第1の回路と、駆動信号の電位を設定する第2の回路、すなわち可変利得増幅器とを備えることができる。本発明のこれらの態様では、プロセッサ266。
【0139】
駆動信号の出力を調節するのに必要とされるハンドピース及びチップの特性を記述するデータを収容するメモリデバイスのタイプは、説明したものと異なってもよい。例えば、これらのメモリのうちの1つ以上は、EEPROM、バーコード又は幾つかの他の機械可読デバイスとすることができる。本発明の幾つかの態様では、ハンドピース及びチップのうちの1つ以上は、メモリを有しなくてもよい。本発明のこれらの態様では、作業員は、システム30が適切に構成されることを確保するために、ハンドピース及びチップの特性をコンソールに手動で入力する必要がある。
【0140】
コンソール230が駆動信号の電位及び周波数を設定するステップのシーケンスも同様に、説明したものと異なってもよい。例えば、システムの代替の構成では、コンソールは、駆動信号の電圧を設定する前に、この信号の周波数を最初に設定することができる。この場合も、本発明の構成に応じて、コンソールは、単一のWAVEFORM_SET信号の対応する特性を設定することによって、駆動信号の周波数及び電圧を設定しなくてもよい。本発明の幾つかの態様では、駆動信号を実際に生成する構成要素の動作を調節するために、処理回路は2つの制御信号を生成することができる。これらの制御信号のうちの第1のものは、駆動信号の電圧を設定するのに用いられる。第2の制御信号は、駆動信号の周波数を設定するのに用いられる。
【0141】
本発明の説明した態様では、コンソール230は、チップの最低可能長手方向機械キャンセル周波数である周波数に駆動信号を初期設定するように構成される。本発明の他の態様は、代替の周波数を駆動信号の初期周波数として用いるように構成することができる。例えば、本発明の幾つかの態様では、駆動信号の初期周波数は、最高可能長手方向機械キャンセル周波数とすることができる。代替的に、駆動信号には、チップの最低長手方向機械キャンセル周波数と最高長手方向機械キャンセル周波数との間にある周波数を設定することができる。本発明の幾つかの態様では、チップと一体となったメモリは、長手方向駆動信号の初期周波数設定を規定するデータを含むことができる。
【0142】
上記説明では、駆動体キャパシタンスCは一定であると仮定される。これは、本発明の理解を目的としたものである。実際には、駆動体キャパシタンスは、経時的にドリフトする場合がある。このドリフトは、駆動体の経時変化、又は単一の処置中においては駆動体の温度変化等の影響に起因する可能性がある。したがって、本発明のシステム内に統合された幾つかの制御コンソールは、駆動体キャパシタンスを求める手段を備える。これを求める正確な手段は本発明の一部ではない。処置中に随時、駆動体キャパシタンスを求めるこの手段は、電流の仕事当量を求めるのに用いられる評価において用いられる駆動体キャパシタンスCの更新された測定値を提供するのに用いられる。
【0143】
さらに、本発明のシステムは、開業医の好み及び実施されている処置の特質に基づいて、3つの状態のうちの1つにおいてチップを振動させる駆動信号をハンドピースに印加するように構成することができる。第1のコマンドセットをコンソールに入力することによって、システムは、上述したように、すなわち、実質的にねじれ方向に、長手方向振動が存在しても最小限しか伴わずにチップを振動させる駆動信号を供給する。
【0144】
第2の代替のコマンドセットをコンソール230に入力することによって、システムは、機械共振モードのうちの1つにおいてチップを振動させる駆動信号を供給する。システムがこのモードにおいて動作するために、駆動信号の周波数は、チップがその機械共振モードにおいて振動されるときの駆動信号の周波数の範囲を規定するチップメモリ184のフィールド194及び195内のデータに基づいて設定される。コンソールは、そのように設定されると、引用することによって本明細書の一部をなす国際公開第2015/021216号に記載されているように動作する。システムがこのモードで動作するとき、ねじれ方向境界の遠位において、チップシャフト14及びチップヘッド164は、同時の長手方向動作及びねじれ方向動作を行うことが理解されるであろう。開業医は、チップヘッド164の長手方向動作及びねじれ方向動作を組み合わせたものが組織への最適な切除をもたらし、シャフト144の長手方向運動の影響が許容可能であると考えられる場合に、ハンドピースをこのモードで動作させたい場合がある。
【0145】
第3のコマンドセットをコンソール230に入力することによって、システムは、第1の共振モードにおいてチップを駆動するのに必要とされる駆動信号と、第2の共振モードにおいてチップを駆動するのに必要とされる駆動信号とを組み合わせたものである駆動信号を駆動体36にわたって供給する。コンソールがそのように設定されると、システムは、引用することによって本明細書の一部をなす国際出願PCT/US2015/044023号に記載されているように動作する。開業医は、組織を切除するためにチップヘッド164に非直線運動を行わせることが望ましく、チップヘッドの長手方向運動の影響が許容可能である状況では、ハンドピースをこのモードで動作させたい場合がある。
【0146】
システム30が第3のモードで動作することができるようにするために、チップメモリは、フィールド194の2つの態様と、フィールド195の2つの態様とを基本的に含む。フィールド194及びフィールド195の第1の態様には、第1の機械共振モードの共振周波数の範囲を規定するデータが記憶される。フィールド194及び195の第2の態様には、第2の機械共振モードに関連付けられた共振周波数の範囲を規定するデータが記憶される。
【0147】
同様に、第4のコマンドセットをコンソールに入力することによって、システムは、機械共振モードのうちの一方の共振周波数と長手方向機械キャンセル周波数との間の周波数にある駆動信号を供給するように設定することができる。したがって、システムがこの状態において動作されると、チップヘッド164及びシャフトの隣接する遠位セクション160の長手方向運動が部分的にキャンセルされる。この動作モードは、所与の処置について、チップに主としてねじれ方向動作を行わせ、長手方向動作を完全ではなく一部のみ伴う振動にチップヘッド164を励振することが適切である場合に望ましいものとすることができる。
【0148】
チップメモリに記憶することができる追加のデータには、共振モードのそれぞれの電流の仕事当量の範囲を規定するデータが含まれる。
【0149】
したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の真の趣旨及び範囲に入る全てのそのような変形及び変更を包含することである。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
AC駆動信号の前記印加に応答して周期的に拡張及び収縮する少なくとも1つの駆動体(36)を有するハンドピース(32)と、前記駆動体に接続されるチップとを準備するステップであって、前記チップは、対向する近位端及び遠位端を有し、前記近位端(164)は、前記少なくとも1つの駆動体の前記拡張及び前記収縮に応答して長手方向に振動するように前記駆動体に接続され、前記チップは、前記チップの前記近位端において誘発される長手方向振動を、前記チップの前記遠位端の付近において、長手方向成分及びねじれ方向成分を有する振動に変換する、前記近位端と前記遠位端との間の特徴部(154)を有し、前記チップは、適用される前記組織に対して医療処置を行うように構成されたヘッド(164)を前記遠位端に有する、準備するステップと、
周波数及び電位の双方が変化するAC駆動信号を電源装置(232、234、238)から前記ハンドピース(32)に供給するステップ(344)と、
前記ハンドピース(32)の機械構成要素を通る電流の目標仕事当量を求めるステップ(342)と、
前記ハンドピースに供給される前記電流と、前記電源装置の前記出力の両端間の前記電圧とを測定するステップ(346)と、
前記ハンドピースに供給される前記電流と、前記電源装置の両端間の前記電圧と、前記駆動信号の前記周波数と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、前記ハンドピースの機械構成要素を通る電流の仕事当量を計算するステップ(346)と、
前記電流の目標仕事当量と前記計算された電流の仕事当量とを比較するステップ(350)と、
前記電流の目標仕事当量と前記計算された電流の仕事当量との前記比較に基づいて、前記電源装置によって供給される前記AC駆動信号の前記電位を選択的に設定するステップ(352)と、
前記ハンドピースに供給される前記電流と、前記電源装置の両端間の前記電圧と、前記駆動信号の前記周波数と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の比を計算するステップ(356)と、
前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の前記比に基づいて、前記電源装置によって供給される前記AC駆動信号の前記周波数を設定するステップであって、前記周波数は、前記ハンドピース(32)の2つの隣接する機械共振モードの共振周波数(f、f)の間の周波数(fLC)になるようにされ、前記少なくとも1つの駆動体(36)は、前記チップを前記隣接する機械共振モードにおいて同時に振動させる振動を前記チップ(142)に誘発するようにされ、前記機械共振モードのうちの第1のものの前記チップヘッド(164)における前記振動の長手方向成分は、前記機械共振モードのうちの第2のものの前記チップヘッドの前記振動の長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルするようにされる、設定するステップと、
を含む、超音波手術チップを振動させる方法。
請求項2:
前記計算された比を前記目標比と比較する前記ステップの前に、電源装置(232、234、238)から前記少なくとも1つの駆動体(36)にAC駆動信号を供給する前記ステップを最初に実行するとき、前記機械共振モードうちの前記第1のものの前記チップヘッド(164)の前記振動の前記長手方向成分が前記機械共振モードのうちの前記第2のものの前記振動の前記長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルするように、前記AC駆動信号の周波数を、前記ハンドピースの前記2つの隣接する機械共振モードの前記共振周波数(f、f)の間の周波数(fLC)に設定するステップ(344)を更に含む、請求項1に記載の方法。
請求項3:
前記ハンドピースを通る前記電流の仕事当量を計算する前記ステップ(346)は、前記ハンドピースに供給される前記電流(i)と前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流(i)との前記差を求めることによって実行される、請求項1又は2に記載の方法。
請求項4:
前記ハンドピースを通る前記電流の仕事当量を計算する前記ステップのとき、前記少なくとも1つの駆動体を通る電流(i)が、該少なくとも1つの駆動体(36)の前記キャパシタンス(C)と、前記駆動信号の前記電圧(V)及び前記周波数(ω)との関数として計算される、請求項3に記載の方法。
請求項5:
前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の前記比を計算する前記ステップ(356)の後、前記比は目標比と比較され、
前記AC駆動信号の前記周波数を設定する前記ステップは、前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流と前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の前記比(356)と前記目標比との前記比較に基づいて実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
請求項6:
前記計算された比を前記目標比と比較する前記ステップが実行されるとき、前記計算された比は、0の目標比と比較される、請求項5に記載の方法。
請求項7:
前記プロセッサ(266)、前記ハンドピースの機械構成要素を通る電流の仕事当量を計算する前記ステップと、前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流と前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の比を計算する前記ステップとの少なくとも初期実行中に、前記計算は、前記ハンドピース(32)に関連付けられたメモリ(56)から読み取られた前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンス(C)の表示値を入力変数として用いて実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
請求項8:
前記ハンドピースの機械構成要素を通る電流の目標仕事当量を求める前記ステップ(342)において、前記電流の目標機械構成要素当量は、前記ハンドピースチップ(164)の振動の前記所望の大きさを示すユーザ入力コマンドを表す信号に部分的に基づいて計算される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
請求項9:
前記AC駆動信号を供給する前記ステップは、定電圧における信号を出力する電源装置(232)と、該電源装置によって出力された前記信号を受信し、可変電位駆動信号を出力するために該電源装置からの前記信号を増幅するように構成された可変利得増幅器(234)とを用いて実行され、
前記AC駆動信号の前記電位を設定する前記ステップ(352)は、前記増幅器(234)の前記利得を変化させることによって実行される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
請求項10:
前記AC駆動信号を供給する前記ステップは、DC信号又は定周波数におけるAC信号のいずれかを出力する電源装置(232)と、前記電源装置によって出力された前記信号を受信し、可変電位駆動信号を出力するために前記電源装置からの前記信号の前記周波数を変化させるように構成された信号ジェネレータ(234)とを用いて実行され、
前記AC駆動信号の前記周波数を設定する前記ステップ(352)は、前記信号ジェネレータ(234)によって出力される前記信号の前記周波数を調節することによって実行される、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
請求項11:
超音波手術用具システム(30)であって、
AC駆動信号の前記印加に応答して周期的に拡張及び収縮する少なくとも1つの駆動体(36)を有するハンドピース(32)と、
対向する近位端及び遠位端を有するチップ(142)であって、該チップの前記近位端は、前記駆動体の前記拡張及び前記収縮が該チップの前記近位端を長手方向に振動させるように前記少なくとも1つの駆動体に連結され、該チップは、前記遠位端にヘッド(164)を有し、該ヘッドは、振動されると、該ヘッドが適用された組織に対して医療処置を行うように成形され、該チップは、該チップの前記近位に存在する前記長手方向振動を、前記遠位端において長手方向成分及びねじれ方向成分を有する振動に変換する特徴部(154)を前記近位端と前記遠位端との間に有する、チップと、
超音波ハンドピース(32)の前記チップ(50)を振動させるシステムであって、前記ハンドピースは、前記チップを振動させるAC駆動信号が印加される少なくとも1つの駆動体(40)を有する、システムと、
を備え、
前記システムは、
ハンドピースの少なくとも1つの駆動体(40)に印加される可変AC駆動信号を生成するアセンブリ(232、234、238)と、
駆動信号電圧を表す信号を出力する前記駆動信号の前記電圧を測定するアセンブリ(246、252)と、
駆動信号電流を表す信号を出力する前記ハンドピースに印加される前記駆動信号の前記電流を測定するアセンブリ(254、256)と、
前記駆動信号電圧を表す信号及び前記駆動信号電流を表す信号から受信するプロセッサ(266)であって、前記駆動信号電圧と、前記駆動信号電流と、前記少なくとも1つの駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、
前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る電流の目標当量である電流の目標仕事当量を求めること(342)と、
前記駆動信号の前記電圧と、前記駆動信号の前記電流と、前記駆動信号の前記周波数と、前記少なくとも1つの駆動体(36)の前記キャパシタンスとに基づいて、前記ハンドピースの機械構成要素に印加される電流の仕事当量を計算すること(350)と、
前記電流の目標仕事当量を、前記ハンドピースの前記機械構成要素に印加される前記計算された電流の当量と比較すること(3508)と、
前記電流の比較に基づいて、前記駆動信号を生成する前記アセンブリ(232、234、238)によって出力される前記駆動信号の前記電位を設定すること(352)と、
前記駆動信号の前記電圧と、前記駆動信号の前記電流と、前記駆動信号の前記周波数と、前記圧電駆動体の前記キャパシタンスとに基づいて、前記少なくとも1つの駆動体に印加される電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素を通る前記電流の仕事当量との間の比を計算すること(356)と、
前記計算された比に基づいて、前記AC駆動信号(68、70、72)を生成する前記アセンブリによって出力される前記AC駆動信号の前記周波数を設定すること(358)と、
を行うように構成された、プロセッサと、
を備え、
該超音波手術用具システムは、
前記プロセッサが、前記AC駆動信号の前記周波数を設定するとき、前記プロセッサは、前記ハンドピース(32)の前記2つの隣接する機械共振モードのうちの前記第1のものの前記チップヘッド(164)の前記振動の前記長手方向成分が、前記機械共振モードのうちの前記第2のものの前記振動の前記長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルするように、前記AC駆動信号を、前記機械共振モードの共振周波数(f、f)の間の周波数(fLC)に設定することを特徴とする、超音波手術用具システム。
請求項12:
請求項11に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(26)は、前記比に基づいて前記駆動信号の前記周波数を設定する前に、前記機械共振モードのうちの前記第1のものの前記チップヘッド(164)の前記振動の前記長手方向成分が、前記機械共振モードのうちの前記第2のものの前記振動の前記長手方向成分を少なくとも部分的にキャンセルするように、前記AC駆動信号の前記周波数を、前記ハンドピースの前記2つの隣接する機械共振モードの前記共振周波数(f、f)の間の周波数(fLC)に初期設定する(344)ように更に構成される、システム。
請求項13:
請求項11又は12に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、前記駆動信号の前記電流(i)と前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流(i)との前記差を求めることによって、前記ハンドピース(32)の前記機械構成要素に印加される前記電流の当量を計算するように構成される、システム。
請求項14:
請求項13に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、前記少なくとも1つの駆動体(36)の前記キャパシタンス(C)と、前記駆動信号の前記電圧(V)及び前記周波数(ω)との関数として、前記少なくとも1つの駆動体を通る前記電流(i)を求めるように構成される、システム。
請求項15:
請求項11~14のいずれか1項に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、
前記少なくとも1つの駆動体(36)に印加される電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素に印加される前記電流の仕事当量との間の前記計算された比が、前記駆動周波数が目標比に実質的に等しいことを示すか否かを判断すること(356)と、
前記判断が、前記計算された比が前記目標比に実質的に等しくないことを示す場合、駆動信号の前記周波数を調整すること(358)と、
を行うように構成される、システム。
請求項16:
前記プロセッサが、前記少なくとも1つの駆動体(36)に印加される電流と、前記ハンドピースの前記機械構成要素に印加される前記電流の仕事当量との間の前記計算された比が、前記駆動周波数が前記目標比に実質的に等しいことを示すか否かを判断するとき(356)、前記プロセッサは、前記計算された比が0の目標比に実質的に等しいか否かを判断する、請求項15に記載のシステム。
請求項17:
請求項11~16のいずれか1項に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、
前記少なくとも1つの駆動体(36)の前記キャパシタンスを表すデータを前記ハンドピース(32)に関連付けられたメモリ(56)から得ることと、
前記システムの少なくとも初期起動時に、前記ハンドピースメモリ(56)から得られた前記駆動体のキャパシタンスのデータに基づいて、前記ハンドピースの機械構成要素に印加される前記電流の当量を計算することと、
前記ハンドピースメモリから読み取られた前記駆動体のキャパシタンスのデータに基づいて、前記圧電駆動体に印加される電流と前記ハンドピースの前記機械構成要素に印加される前記電流の当量との間の前記比を計算することと、
を行うように更に構成される、システム。
請求項18:
請求項11~17のいずれか1項に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、
前記ハンドピースチップの振動の前記所望の大きさを示すユーザ入力コマンドを表す信号を受信することと、
前記ハンドピースチップの振動の前記所望の大きさを示す前記ユーザ指示コマンドを表す前記信号に部分的に基づいて、前記電流の目標仕事当量を求めること(342)と、
を行うように更に構成される、システム。
請求項19:
請求項11~18のいずれか1項に記載のシステム(30)であって、
前記駆動信号を生成する前記アセンブリは、定電圧における信号を出力する電源装置(232)と、該電源装置によって出力された前記信号を受信し、可変電位駆動信号を出力するために該電源装置からの前記信号を増幅するように構成された可変増幅器(234)とを備え、
前記プロセッサ(266)は、前記増幅器に接続されて、前記増幅器の前記利得を調節することによって前記駆動信号の前記電位を設定する、システム。
請求項20:
請求項19に記載のシステム(30)であって、前記プロセッサ(266)は、前記増幅器に接続されて、前記増幅器によって出力される前記信号の前記周波数及び前記振幅を調節することによって前記駆動信号の前記電位及び前記周波数を設定する、システム。
請求項21:
請求項11~20のいずれか1項に記載のシステム(30)であって、前記チップ(142)には溝(154)が形成され、該溝は、存在する結果として、前記少なくとも1つの駆動体(36)から前記チップに印加される前記長手方向振動運動が長手方向成分及びねじれ方向成分を有する振動運動に変換されるように成形される、システム。
請求項22:
請求項21に記載のシステム(30)であって、前記溝(154)は、前記チップ(142)の長手方向軸の回りに曲線を描くように螺旋状に成形される、システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B