(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】傾斜しながら上昇する椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/16 20060101AFI20240918BHJP
A47C 3/20 20060101ALI20240918BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A47C3/16
A47C3/20
A47C7/02 D
(21)【出願番号】P 2021196783
(22)【出願日】2021-12-03
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521529961
【氏名又は名称】株式会社畦浦設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100149836
【氏名又は名称】森定 勇二
(72)【発明者】
【氏名】畦浦 博紀
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-164751(JP,A)
【文献】特開2002-345896(JP,A)
【文献】特開2007-083836(JP,A)
【文献】米国特許第05695248(US,A)
【文献】中国実用新案第209898783(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/16,3/20,7/02
A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座体(11)と、
前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体(12)と、
前記椅子基礎体上に配設する所定の着座体作動機構(20)と、
を少なくとも備え、前記着座体作動機構が、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させることを特徴とする傾斜しながら上昇する椅子
であって、
前記着座体作動機構
が、前記着座体の椅子長方向の一方側端部を昇降させる第1のリンク機構(21)と、前記着座体の椅子長方向の他方側端部を昇降させる第2のリンク機構(22)と、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構を拡開及び縮閉作動させるリンク機構作動軸(23)と、前記リンク機構作動軸を回動させるリンクモータ(24)と、
で構成され、
さらに、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第1リンク部(211)と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト(212)及び下段第1連結シャフト(213)と、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車(214)と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車(215)と、前記
下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナット(216)とで構成
され、
さらに、前記第2のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第2リンク部(221)と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト(222)及び下段第2連結シャフト(223)と、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車(224)と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車(225)と、前記
下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナット(226)とで構成
され、
前記第1のリンク機構が、前記着座体の一方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さ(L1)と、前記第2のリンク機構が前記着座体の他方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さ(L2)と、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高い傾斜しながら上昇する椅子。
【請求項2】
着座体(11)と、
前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体(12)と、
前記椅子基礎体上に配設する所定の着座体作動機構(20)と、
を少なくとも備え、前記着座体作動機構が、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させることを特徴とする傾斜しながら上昇する椅子
であって、
前記着座体作動機構
が、前記着座体の椅子長方向の一方側端部を昇降させる第1のリンク機構(21´)と、前記着座体の椅子長方向の他方側端部を昇降させる第2のリンク機構(22)と、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構を拡開及び縮閉作動させるリンク機構作動軸(23)と、前記リンク機構作動軸を回動させるリンクモータ(24)と、
で構成され、
さらに、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第1リンク部(211´)と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト(212)及び下段第1連結シャフト(213)と、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車(214)と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車(215)と、前記
下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナット(216)とで構成
され、
さらに、前記第2のリンク機構(22´)が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第2リンク部(221´)と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト(222)及び下段第2連結シャフト(223)と、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車(224)と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車(225)と、前記
下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナット(226)とで構成
され、
前記第1のリンク機構が、前記着座体の一方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さ(L1)と、前記第2のリンク機構が前記着座体の他方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さ(L2)と、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高い傾斜しながら上昇する椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、着座体の高さ(高低)だけではなく傾きも変位可能な傾斜しながら上昇する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子に着座している状態である着座姿勢から立ち上がる際にはひざや腰にかかる負担が大きかった。
【0003】
特に、和室などで利用されている座椅子は、着座位置が床面により近いため、立ち上がる際にひざや腰にかかる負担がより大きかった。
【0004】
ところで、座椅子の座部を昇降する昇降装置は存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の昇降装置は、設置面上に載置されてベースとなる下フレームと、座椅子の座部を支持する上フレームと、操作ペダルを踏込み毎に圧油を供給するポンプ等とを備え、操作ペダルを踏込むだけで上フレームが昇降する昇降装置であり、座椅子あるいは座部が平行に昇降するだけで、傾斜させながら昇降するものではないものと考える。
【0007】
着座姿勢から立ち上がる際には、体を前傾させた方がスムーズであり、また、ひざや腰にかかる負担も軽減されるものと考える。
【0008】
そこで、着座部を前方に傾斜させながら上昇させることが可能で、着座姿勢から立ち上がる際に、ひざや腰にかかる負担を軽減させ得る傾斜しながら上昇する椅子(座椅子を含む。)を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、上述の課題を解決するために、着座体と、前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体と、前記椅子基礎体上に配設する所定の着座体作動機構と、を少なくとも備え、前記着座体作動機構が、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させることを特徴とする傾斜しながら上昇する椅子であって、前記着座体作動機構が、前記着座体の椅子長方向の一方側端部を昇降させる第1のリンク機構と、前記着座体の椅子長方向の他方側端部を昇降させる第2のリンク機構と、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構を拡開及び縮閉作動させるリンク機構作動軸と、前記リンク機構作動軸を回動させるリンクモータと、で構成され、さらに、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第1リンク部と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト及び下段第1連結シャフトと、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車と、前記下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナットとで構成され、さらに、前記第2のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第2リンク部と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト及び下段第2連結シャフトと、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車と、前記下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナットとで構成され、前記第1のリンク機構が、前記着座体の一方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さと、前記第2のリンク機構が前記着座体の他方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さと、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高い傾斜しながら上昇する椅子を提供する。
【0010】
本願発明は、上述の課題を解決するために、着座体と、前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体と、前記椅子基礎体上に配設する所定の着座体作動機構と、を少なくとも備え、前記着座体作動機構が、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させることを特徴とする傾斜しながら上昇する椅子であって、前記着座体作動機構が、前記着座体の椅子長方向の一方側端部を昇降させる第1のリンク機構と、前記着座体の椅子長方向の他方側端部を昇降させる第2のリンク機構と、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構を拡開及び縮閉作動させるリンク機構作動軸と、前記リンク機構作動軸を回動させるリンクモータと、で構成され、さらに、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第1リンク部と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト及び下段第1連結シャフトと、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車と、前記下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナットとで構成され、さらに、前記第2のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第2リンク部と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト及び下段第2連結シャフトと、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車と、前記下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナットとで構成され、前記第1のリンク機構が、前記着座体の一方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さと、前記第2のリンク機構が前記着座体の他方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さと、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高い傾斜しながら上昇する椅子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の請求項1の傾斜しながら上昇する椅子は、着座体と、前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体と、前記椅子基礎体上に配設する所定の着座体作動機構と、を少なくとも備え、前記着座体作動機構が、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させることを特徴とする傾斜しながら上昇する椅子であるため、前記着座体を前方に傾けながら上昇させることができ、前記着座体が水平である着座姿勢から立ち上がる際に、ひざや腰の負担が軽減される。
【0012】
また、前記着座体作動機構として、前記着座体の椅子長方向の一方側端部を昇降させる第1のリンク機構と、前記着座体の椅子長方向の他方側端部を昇降させる第2のリンク機構と、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構を拡開及び縮閉作動させるリンク機構作動軸と、前記リンク機構作動軸を回動させるリンクモータと、からなり、前記第1のリンク機構が前記着座体の一方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さと、前記第2のリンク機構が前記着座体の他方側端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さと、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高いため、前記着座体を前方に傾けながら上昇させることができ、前記着座体が水平である着座姿勢から立ち上がる際に、ひざや腰の負担が軽減される。また、前記リンクモータを利用して前記着座体を前方に傾けながら上昇させることができる。
【0013】
さらに、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第1リンク部と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト及び下段第1連結シャフトと、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車と、前記下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナットとで構成され、さらに、前記第2のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部に設ける1対の第2リンク部と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト及び下段第2連結シャフトと、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車と、前記下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナットとで構成され、たため、前記着座体を安定して前方に傾けながら上昇させることができる。
【0014】
本願発明の請求項2の傾斜しながら上昇する椅子は、前記第1のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第1リンク部と、前記各々の第1リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト及び下段第1連結シャフトと、前記下段第1連結シャフトの端部に設ける第1駆動歯車と、前記上段第1連結シャフトの端部に設ける第1従動歯車と、前記下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナットとで構成され、さらに、前記第2のリンク機構が、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近傍部及び他方側の側方中央近傍部に設ける1対の第2リンク部と、前記各々の第2リンク部のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト及び下段第2連結シャフトと、前記下段第2連結シャフトの端部に設ける第2駆動歯車と、前記上段第2連結シャフトの端部に設ける第2従動歯車と、前記下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナットとで構成したため、前記着座体を安定して前方に傾けながら上昇させることができる。また、前記リンクモータを利用して前記着座体を前方に傾けながら安定して上昇させることができる。
【0015】
なお、本願発明の傾斜昇降椅子は、さらに、前記リンク機構作動軸とリンクモータとの間の接続にフレキシブル伝導体を使用しているため、前記リンクモータのレイアウト(配置)を容易に変更することが可能である。また、自在キャスター、圧縮バネ及び下段ストッパーを備えたため、前記着座体が降下した状態では、椅子基礎体が前記下段ストッパーに接地し水平となるため、安定して着座することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子の正面図である。
【
図2】
図2は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子の側面図である。
【
図3】
図3は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子の一部拡大図である。
【
図4】
図4は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子(
図2状態)の内部構造を上方から見た図である。
【
図5】
図5は実施例1のリンク機構作動軸(
図4状態)の一部を拡大した拡大図である。
【
図6】
図6は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子の作動(開始時)及び構造を示す側面図である。
【
図7】
図7は実施例1のリンク機構作動軸の作動を示す一部拡大図である。
【
図8】
図8は実施例1の傾斜しながら上昇する椅子の作動(傾斜上昇時)及び構造を示す側面図である。
【
図9】
図9は実施例2の傾斜しながら上昇する椅子の側面図である。
【
図10】実施例2の傾斜しながら上昇する椅子(
図9状態)の内部構造を上方から見た図である。
【
図11】
図11は実施例2の傾斜しながら上昇する椅子の作動(開始時)及び構造を示す側面図である。
【
図12】
図12は実施例2のリンク機構作動軸の作動を示す一部拡大図である。
【
図13】
図13は実施例2の傾斜しながら上昇する椅子の作動(傾斜上昇時)及び構造を示す側面図である。
【
図14】
図14は実施例3の傾斜しながら上昇する椅子の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
着座体を傾斜させながら上昇する座椅子として実施する。
【実施例1】
【0018】
傾斜しながら上昇する椅子の全体構成について、
図1から
図8に従い説明する。
【0019】
傾斜しながら上昇する椅子(1)は、人が着座する部分である着座体(11)と、前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体(12)と、前記着座体を前方に傾けかつ上昇させ及び水平に戻しかつ下降させる所定の着座体作動機構(20)と、所定の自在キャスター(30)と、所定の圧縮バネ(31)と、所定のストッパー(32)と、所定の回転テーブル(33)と、を備える(
図1)。
【0020】
前記着座体(11)の構成について、少なくとも人が着座をする着座箇所を包含していれば良く、本実施例の様に、背もたれ部や左右のひじ掛け部などを付加してもかまわない。
【0021】
前記椅子基礎体(12)の形状に関して、本実施例では水平面を有する長方形形状としているが、当該椅子を設置した際に転倒しない程度の安定感を具備する形状であればいかなる形状でも許容し得る(
図1、
図2及び
図4)。
【0022】
前記着座体作動機構(20)は、前記着座体(11)と前記椅子基礎体(12)との間に挟設され、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部(
図2で示す着座した際の右腕ひじ掛け部側の端部)及び他方側の側方端部(
図6で示す着座した際の左腕ひじ掛け部側の端部)に設ける1対の第1リンク部(211)と、前記それぞれの第1リンク部の上段側のリンク連結部相互間を連結する上段第1連結シャフト(212)と、前記それぞれの第1リンク部の下段側のリンク連結相互間を連結する下段第1連結シャフト(213)と、前記下段第1連結シャフトの両端部に設ける第1駆動歯車(214)と、前記上段第1連結シャフトの両端部に設ける第1従動歯車(215)と、前記下段第1連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第1ナット(216)と、で構成する第1のリンク機構(21)と、前記着座体と前記椅子基礎体との間に挟設され、前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方端部及び他方側の側方端部(
図6で示す着座した際の左腕ひじ掛け部側の端部)に設ける1対の第2リンク部(221)と、前記それぞれの第2リンク部の上段側のリンク連結部相互間を連結する上段第2連結シャフト(222)と、前記それぞれの第2リンク部の下段側のリンク連結相互間を連結する下段第2連結シャフト(223)と、前記下段第2連結シャフトの両端部に設ける第2駆動歯車(224)と、前記上段第2連結シャフトの両端部に設ける第2従動歯車(225)と、前記下段第2連結シャフトの直交する方向に貫通固定して設ける第2ナット(226)と、で構成する第2のリンク機構(22)と、前記第1ナット及び前記第2ナットを貫通し噛み合うリンク機構作動軸(23)と、前記リンク機構作動軸を回動させる動力源であるリンクモータ(24)と、前記リンク機構作動軸と前記リンクモータとを接続するフレキシブル伝導体(25)と、で構成する(
図4、
図2、
図5及び
図6)。
【0023】
前記第1のリンク機構(21)と前記第2のリンク機構(22)に関して、前記第1のリンク機構が前記着座体(11)の背もたれ側の端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体一方側端部最高到達高さ(L1)と、前記第2のリンク機構が前記着座体の背もたれ側とは反対側の端部を上昇させた際に前記着座体が到達する最も高い位置である着座体他方側端部最高到達高さ(L2)と、を比較した場合に、前記着座体一方側端部最高到達高さの方が高いことを要する(
図8)。
【0024】
前記1対の第1リンク部(211)の各々の長さにについて、下段側に設けるリンクの長さよりも上段側に設けるリンクの長さの方を長くしている(
図8)。
【0025】
また、前記第1リンク部(211)の下段側に設けるリンクの長さを上段側に設けるリンクの長さの2倍程度とすることが好ましいものと考える。
【0026】
前記第1リンク部(211)の一方側端部は前記着座体(11)を支持し、他方側端部は前記椅子基礎体(12)に固着する(
図2及び
図6)。
【0027】
前記第1リンク部(211)の一方側端部のより詳細な構成について、椅子長方向に対して移動自在なローラーで支持している(
図4)。
【0028】
前記第1駆動歯車(214)及び前記第1従動歯車(215)は、噛み合う様に配置する(
図2)。
【0029】
前記第1駆動歯車(214)及び前記第1従動歯車(215)の個数に関して、前記下段第1連結シャフトあるいは前記上段第1連結シャフト上の各両端で合計4個としているが、前記下段第1連結シャフトあるいは前記上段第1連結シャフトの各一方側端部で合計2個としても良い。
【0030】
なお、前記第1駆動歯車(214)及び前記第1従動歯車(215)を配設する詳細な位置について、前記着座体の上昇作動を可能とする位置であれば、前記下段第1連結シャフトあるいは前記上段第1連結シャフト上の最端部でなくとも端部近傍位置であっても許容するものとする。
【0031】
前記1対の第2リンク部(221)の各々の長さにについて、下段側に設けるリンクの長さよりと上段側に設けるリンクの長さを同一にしている(
図8)。
【0032】
なお、前記第2リンク部(221)のリンクの長さと前記第1リンク部(211)の下段側に設けるリンクの長さとは同一である(
図8)。
【0033】
前記第2リンク部(212)の一方側端部は前記着座体(11)に固着し、他方側端部は前記椅子基礎体(12)に固着する(
図2及び
図6)。
【0034】
前記第2駆動歯車(224)及び前記第2従動歯車(225)は、噛み合う様に配置する(
図6)。
【0035】
前記第2駆動歯車(224)及び前記第2従動歯車(225)の個数に関して、前記下段第2連結シャフトあるいは前記上段第2連結シャフトの各両端で合計4個としているが、前記下段第2連結シャフトあるいは前記上段第2連結シャフトの各一方側端部で合計2個としても良い。
【0036】
なお、前記第2駆動歯車(224)及び前記第2従動歯車(225)を配設する詳細な位置について、前記着座体の上昇作動を可能とする位置であれば、前記下段第2連結シャフトあるいは前記上段第2連結シャフト上の最端部でなくとも端部近傍位置であっても許容するものとするのは前記第1駆動歯車(214)及び前記第1従動歯車(215)と同様である。
【0037】
前記第1ナット(216)に設ける雌ネジ溝の形状(方向)と前記第2ナット(226)に設ける雌ネジ溝の形状(方向)とに関し、右方向の螺旋又は左方向の螺旋のいずれかが相違していることを要する(
図5)。
【0038】
前記リンク機構作動軸(23)の外周には、前記第1ナット(216)の内側雌ネジ箇所に対応する一方側の雄ネジ溝(231)及び前記第2ナット(226)の内側雌ネジ箇所に対応する他方側の雄ネジ溝(232)を設ける(
図5)。
【0039】
前記一方側の雄ネジ溝(231)のピッチ幅と、前記他方側の雄ネジ溝(232)のピッチ幅との比率について、1対1(同一)としている。
【0040】
なお、前記第1ナット(216)の内側に設ける雌ネジ溝の方向(形状)及びピッチについて、前記一方側の雄ネジ溝(231)に対応する方向及びピッチの螺旋形状を描いている(図示せず)。
【0041】
また、前記第2ナット(226)の内側に設ける雌ネジ溝の方向(形状)及びピッチについて、前記他方側の雄ネジ溝(232)に対応する方向及びピッチの螺旋形状を描いている(図示せず)。
【0042】
前記フレキシブル伝導体(25)について、具体的には回転伝達可能なワイヤーロープを樹脂等のチューブで外被を覆ったものを指すが、ユニバーサルジョイントを複数連結したものでもよい。
【0043】
前記自在キャスター(30)及び前記圧縮バネ(31)について、前記着座体(11)に荷重がかからない場合は前記圧縮バネの反発力により、床面と前記回転テーブル(33)下面の間に隙間ができ、容易に移動が可能となる。また、前記着座体に荷重がかかると前記自在キャスターが前記圧縮バネの弾性により引っ込み、床面と前記回転テーブル下面が接地し安定する(
図1及び
図3)。
【0044】
前記下段ストッパー(32)の役割について、人が着座する時に着座部を安定させる(
図1)。
【0045】
また、前記回転テーブル(33)を付加することにより、前記着座体(11)が左右方向に自在に旋回可能となる(
図1)。
【0046】
次に、傾斜しながら上昇する椅子に着座している状態(着座姿勢)から立ち上がる際の動作について、
図6から
図8に従い説明する。
【0047】
リンクモータ(24)の作動を開始すると、その出力軸が時計方向に回転を始める(
図6)。
【0048】
その後、前記リンクモータ(24)の出力軸と一方側端部を接続するフレキシブル伝導体(25)及び前記フレキシブル伝導体の他方側端部と接続するリンク機構作動軸(23)も同方向に回転を始める(
図6及び
図7)。
【0049】
前記リンク機構作動軸(23)が時計方向に回転することにより、第1ナット(216)が前記リンク作動軸の雄ネジ溝(231)に沿って外側方向(
図7で示す右方向あるいは
図8で示す背もたれ方向)に移動する(
図7及び
図8)。
【0050】
また、第2ナット(226)も前記リンク作動軸の雄ネジ溝(232)に沿って外側方向(
図7で示す左方向あるいは
図8で示す背もたれとは反対方向)に移動する(
図7及び
図8)。
【0051】
前記作動により、前記第1リンク部(211)が拡開方向に変位しながら、着座体(11)の背もたれ側が上昇を始め、最終的には一方側端部最高到達高さ(L1)まで上昇する(
図8の状態)。
【0052】
また、前記第2リンク部(221)も拡開方向に変位しながら、前記着座体(11)の背もたれ側とは反対側が上昇を始め、最終的には他方側端部最高到達高さ(L2)まで上昇する(
図8の状態)。
【0053】
前述した様に、前記第1リンク部(211)のうち上段側に設けるリンクの長さを下段側に設けるリンクの長さよりも長くし、かつ、前記リンク機構作動軸(23)の外周に設ける一方側の雄ネジ溝(231)のピッチ幅と、前記リンク作動軸の外周に設ける他方側の雄ネジ溝(232)のピッチ幅との比率を同一とすることで、前記着座体(11)の後方(背もたれ側)の方がより高く上昇し前方に傾斜する(
図8)。
【0054】
なお、前記第1駆動歯車(214)と前記第1従動歯車(215)の歯車数比率は同一としているが、この比率を変更(例えば、50対30など。)することによっても前記着座体(11)の傾斜上昇角度を変化させることも可能である。
【0055】
前述の作動により、着座姿勢から立ち上がることが容易となる。また、立ち上がる際のひざや腰の負担が軽減される。
【実施例2】
【0056】
実施例2の傾斜しながら上昇する椅子は、第1のリンク機構及び第2のリンク機構が実施例1と異なるものであり、その異なる部分のみについて、
図9及び
図10に従い説明する。
【0057】
傾斜しながら上昇する椅子(1)は、実施例1と同様の着座体(11)と、椅子基礎体(12)と、前記着座体と前記椅子基礎体との間に挟設する着座体作動機構(20)と、所定の自在キャスターと、所定の圧縮バネと、所定のストッパーと、を備える(
図9)。
【0058】
前記着座体作動機構(20)は、前記椅子基礎体(12)の椅子幅方向の一方側の側方中央近端部(
図9で示す着座した際の右腕ひじ掛け部側の中央近端部)及び他方側の側方中央近端部(着座した際の左腕ひじ掛け部側の中央近端部)に設ける1対の第1リンク部(211´)と、実施例1と同様の上段第1連結シャフト、下段第1連結シャフト、第1駆動歯車、第1従動歯車、第1ナットと、で構成する第1のリンク機構(21´)と、前記前記椅子基礎体の椅子幅方向の一方側の側方中央近端部(
図9で示す着座した際の右腕ひじ掛け部側の中央近端部)及び他方側の側方中央近端部(着座した際の左腕ひじ掛け部側の中央近端部)に設ける1対の第2リンク部(221´)と、実施例1と同様の上段第2連結シャフト、下段第2連結シャフト、第2駆動歯車、第2従動歯車、第2ナットと、で構成する第2のリンク機構(22´)と、実施例1と同様のリンク機構作動軸、リンクモータ、フレキシブル伝導体と、で構成する(
図9及び
図10)。
【0059】
その他の構成については、実施例1と同様であるため省略する。
【0060】
次に、着座姿勢から立ち上がる際の動作について、
図11から
図13に従い実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
リンクモータ(24)の作動を開始すると、その出力軸が反時計方向に回転を始める(
図11)。
【0062】
その後、前記リンクモータ(24)の出力軸と一方側端部を接続するフレキシブル伝導体(25)及び前記フレキシブル伝導体の他方側端部と接続するリンク機構作動軸(23)も同方向に回転を始める(
図11及び
図12)。
【0063】
前記リンク機構作動軸(23)が反時計方向に回転することにより、第1ナット(216)が前記リンク作動軸の雄ネジ溝(231)に沿って内側方向(
図12で示す左方向あるいは
図13で示す背もたれ側とは反対方向)に移動する(
図12及び
図13)。
【0064】
また、第2ナット(226)も前記リンク作動軸の雄ネジ溝(232)に沿って内側方向(
図12で示す右方向あるいは
図13で示す背もたれ側方向)に移動する(
図12及び
図13)。
【0065】
前記作動により、前記第1リンク部(211´)が拡開方向に変位しながら、着座体(11)の背もたれ側が上昇を始め、最終的には一方側端部最高到達高さ(L1)まで上昇する(
図13の状態)。
【0066】
また、前記第2リンク部(221)が拡開方向に変位しながら、前記着座体(11)の背もたれ側とは反対側が上昇を始め、最終的には他方側端部最高到達高さ(L2)まで上昇する(
図13の状態)。
【0067】
前述した様に、前記第1リンク部(211´)のうち上段側に設けるリンクの長さを下段側に設けるリンクの長さよりも長くし、かつ、前記リンク機構作動軸(23)の外周に設ける一方側の雄ネジ溝(231)のピッチ幅と、前記リンク作動軸の外周に設ける他方側の雄ネジ溝(232)のピッチ幅との比率を同一とすることで、前記着座体(11)の後方(背もたれ側)の方が早く(より高く)上昇し前方に傾斜する(
図13)。
【0068】
なお、前記第1駆動歯車(214)と前記第1従動歯車(215)の歯車数比率は同一としているが、この比率を変更(例えば、50対30など。)することによっても前記着座体(11)の傾斜上昇角度を変化させることも可能である。
【実施例3】
【0069】
実施例3の傾斜しながら上昇する椅子は、椅子基礎体の下方に脚部を配設したものであり、その異なる部分のみについて、
図14に従い説明する。
【0070】
傾斜しながら上昇する椅子(1)は、人が着座する部分である着座体(11)と、前記着座体よりも下方に配設する椅子基礎体(12)と、前記着座体を前方に傾けあるいは水平に戻しながら昇降を可能とする所定の着座体作動機構(20)と、所定のストッパー(32)と、前記椅子基礎体の下方に設ける脚部(40)と、を備える。
【0071】
前記脚部(40)の役割について、前記着座体(11)の高さを維持するためのものであり、いかなる構造及び形状の脚部も使用可能とする。
【0072】
その他の構成については、実施例1の傾斜しながら上昇する椅子と同様であるため省略する。
【0073】
また、その動作についても実施例1と略同様であるため、その説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明は、着座姿勢から立ち上がる際に、座部を前方に傾斜させながら上昇させることが可能で、ひざや腰にかかる負担を軽減させ得る優れた傾斜しながら上昇する椅子であるので、産業上の利用性可能性を有する。
【符号の説明】
【0075】
1 傾斜しながら上昇する椅子
11 着座体
12 椅子基礎体
20 着座体作動機構
21 第1のリンク機構(実施例1)
211 第1リンク部
212 上段第1連結シャフト
213 下段第1連結シャフト
214 第1駆動歯車(下段側)
215 第1従動歯車(上段側)
216 第1ナット
21´ 第1のリンク機構(実施例2)
211´ 第1リンク部
22 第2のリンク機構(実施例1)
221 第2リンク部
222 上段第2連結シャフト
223 下段第2連結シャフト
224 第2駆動歯車(下段側)
225 第2従動歯車(上段側)
226 第2ナット
22´ 第2のリンク機構(実施例2)
221´ 第2リンク部
23 リンク機構作動軸
231 一方側の雄ネジ溝
232 他方側の雄ネジ溝
24 リンクモータ
25 フレキシブル伝導体
30 自在キャスター
31 圧縮バネ
32 下段ストッパー
33 回転テーブル
40 脚部
L1 着座体一方側端部最高到達高さ
L2 着座体他方側端部最高到達高さ