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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】操作可能な長尺機能システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20240918BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B1/005 524
A61B1/005 522
A61B1/005 523
A61B1/313 510
G02B23/24 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522064
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079234
(87)【国際公開番号】W WO2020084133
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】18306392.4
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520393635
【氏名又は名称】ベースキャンプ バスキュラー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】カズヌーヴ,ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】マイアノ,カミーユ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04870951(US,A)
【文献】特開2008-023089(JP,A)
【文献】特開平07-199088(JP,A)
【文献】特開平06-209998(JP,A)
【文献】特開平10-024014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ、ダクト、またはチューブの管腔内で前進するように構成された長尺機能システム(1;100)であって、前記システムは、
-長尺可撓性本体(2;200)と、
-ワイヤの形状にあり、形状記憶合金で作られ、かつ前記長尺可撓性本体(2;200)の上に配置された少なくとも1つの第1のアクチュエータ(3;300)と、
-ワイヤの形状にあり、形状記憶合金で作られ、かつ前記長尺可撓性本体(2;200)の上に配置された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(4;400)と、
-電流源と、
を備え、
前記第1のアクチュエータ(3;300)および前記第2のアクチュエータ(4;400)のそれぞれは、近位端および遠位端を提供し、かつ前記電流源に接続可能であり、かつ前記長尺可撓性本体(2;200)の一部の可逆的湾曲を引き起こすように、ある量の電流を、前記第1のアクチュエータ(3;300)および前記第2のアクチュエータ(4;400)の湾曲の形態にある機械的エネルギーに変換するように構成され、
前記長尺可撓性本体(2;200)は、そこに沿って前記第1のアクチュエータ(3;300)の少なくとも前記近位端(31)が前記第2のアクチュエータ(4;400)の少なくとも前記遠位端(42)と重なる重なり領域(W)を含み、前記第1のアクチュエータ(3;300)および前記第2のアクチュエータ(4;400)が互いに機械的に独立し、互いに長手方向にオフセットしている、長尺機能システム。
【請求項2】
前記長尺可撓性本体(2;200)は、少なくとも1つのチューブ、ブレード、もしくはワイヤを備えるか、または少なくとも1つのチューブ、ブレード、もしくはワイヤからなる、請求項1に記載の長尺機能システム。
【請求項3】
前記長尺可撓性本体(2;200)は、星形、円形、半円形、正方形、長方形、三角形、角錐形、またはそれらの任意の組み合わせから選択される形状の断面プロファイルを有する、請求項1または2に記載の長尺機能システム。
【請求項4】
前記ブレード(200)は、前記第1のアクチュエータ(300)が配置される上面(201)、および前記第2のアクチュエータ(400)が配置される下面(202)を提供する、請求項2に記載の長尺機能システム。
【請求項5】
前記重なり領域(W)は、前記第1のアクチュエータ(3;300)の近位端(31)を前記第2のアクチュエータ(4;400)の遠位端(42)と重ねることからなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【請求項6】
前記第1のアクチュエータ(3;300)および前記第2のアクチュエータ(4;400)は、前記長尺可撓性本体(2;200)の表面上に位置し、直径方向に対向する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【請求項7】
前記第1のアクチュエータ(3;300)および前記第2のアクチュエータ(4;400)は、前記重なり領域中で固定手段で前記長尺可撓性本体(2;200)に固定される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【請求項8】
少なくとも第3のアクチュエータをさらに含み、前記アクチュエータは、前記チューブの周方向に互いに実質的に等距離である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【請求項9】
少なくとも第3のアクチュエータ、および前記第1の重なり領域(W)と異なり、そこに沿って前記第3のアクチュエータの近位端または遠位端が、前記第1のアクチュエータ(3;300)または前記第2のアクチュエータ(4;400)の少なくとも1つの近位端または遠位端に面する、少なくとも第2の重なり領域(W’)をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【請求項10】
カテーテル、カテーテルガイド、または内視鏡である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の長尺機能システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ、ダクト、またはチューブの内部を検査するための、例えばカテーテルまたは内視鏡などの、操作可能な長尺機能システムに関する。より具体的には、本発明のシステムは、被検者の体内の外科的および/または内科的検査の分野での使用に適している。
【背景技術】
【0002】
例えば、チューブの遠位部を特定の場所に配置するため、光もしくは薬剤を運ぶため、または遠隔もしくはアクセス困難な場所に機能をもたらすために、パイプ、ダクト、またはチューブの内部でシステムを使用する必要性がある幅広い用途が存在する。
【0003】
システムをパイプ、ダクト、またはチューブの管腔内で前進させる場合、ユーザが、システムの運動および配置を注意深くかつ正確に制御し得ることが重要である。パイプ内でのシステムの配置は、石油工学またはモータ工学における既知の技術的な問題である。例えば(静脈、動脈、胃腸管などの)入口部などを通る体管内でのシステムの配置も、医療分野において困難な課題であるとして知られている。
【0004】
例えば、US 5,322,509は、2つの入口部にアクセスするためにカテーテルを交換する必要性のない心臓カテーテルを開示する。C字型遠位部の代わりに、US 5,322,509に記載されたカテーテルは、中間部に取り付けられた遠位部を含み、二重または反向曲線(S字型)からなる。この構造により、カテーテルがその軸の周りで回転することよって、カテーテルの交換をせずに、カテーテルを左または右のいずれの入口部に進入させることができる。しかしながら、このシステムは、複数の湾曲部を備える。したがって、大動脈内に上記誘導手段を進める間に、装置が、動脈壁に接触して圧力をかけるため、患者に害を及ぼし得る。
【0005】
無害な検査は、カテーテルまたは内視鏡の特定の領域を、その構造に沿った様々な種類のアクチュエータを使用することによって適切に湾曲させることにより行われ得る。
【0006】
しかしながら、可撓性構造体上のアクチュエータの数が多くなればなるほど、上記システムの活性化および制御は困難になる。
【0007】
結果として、最適化されたシステムを提供する必要性が常に存在する。特に、チューブ内で前進するように設計され、上記チューブ(例えば体管)内でのその運動の制御が改善された、(例えばカテーテルなどの)長尺システムの必要性が存在する。
【0008】
無害かつ制御された検査を意図された良好に操作可能な機能システムは、例えば血管系のチューブのねじれに適合可能であるべきであり、より具体的には、
-短半径の曲線、
-きつくコンパクトな二重曲線(S字型)、および
-独立した曲線
を得ることができるべきである。
【0009】
文献US 8 558 878 B2は、アクチュエータを含む可撓性本体の一部が短半径の曲線を形成するために厚くなった、操作可能な構造体を開示する。しかしながら、厚くなった部分は、コンパクトな二重曲線または独立した曲線を可能とせず、その結果、チューブ、ダクト、またはパイプ内での操作可能な構造体の操縦を複雑にする。また、開示された構造体は、短半径のコンパクトなS字型曲線の形成を可能としない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、好ましくは人体内のパイプ、ダクト、またはチューブの検査のための、独立して形成し得る短半径のコンパクトなS字型曲線を形成することができる操作可能なシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、パイプ、ダクト、またはチューブの管腔内で前進するように構成された長尺機能システムに関し、上記システムは、
-長尺可撓性本体、
-長尺可撓性本体の中または上に配置された少なくとも1つの第1のアクチュエータ、
-長尺可撓性本体の中または上に配置された少なくとも1つの第2のアクチュエータ、
-近位端および遠位端を提供し、エネルギー源に接続可能であり、長尺可撓性本体の一部の可逆的湾曲を引き起こすのに十分なエネルギー量を長尺可撓性本体に送達または変換するように構成された、各アクチュエータ
を備え、
長尺本体は、そこに沿って第1のアクチュエータの少なくとも近位端が第2のアクチュエータの少なくとも遠位端と重なる重なり領域を含み、第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータが互いに機械的に独立し、互いに長手方向にオフセットしていることを特徴とする。
【0012】
一実施形態によれば、長尺可撓性本体は、少なくとも1つのチューブ、ブレード、もしくはワイヤを備えるか、または少なくとも1つのチューブ、ブレード、もしくはワイヤからなる。
【0013】
あるいは、長尺可撓性本体は、星形、円形、半円形、正方形、長方形、三角形、角錐形、またはそれらの任意の組み合わせから選択される形状の断面プロファイルを有する。
【0014】
別の実施形態によれば、ブレードは、第1のアクチュエータが配置される上面、および第2のアクチュエータが配置される下面を提供する。
【0015】
一実施形態によれば、長尺本体は、そこに沿って第1のアクチュエータの少なくとも近位端が第2のアクチュエータの少なくとも遠位端と重なる重なり領域を含む。
【0016】
特定の実施形態では、重なり領域は、第1のアクチュエータの近位端を第2のアクチュエータの遠位端と重ねることからなる。
【0017】
一実施形態によれば、第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータは、長尺可撓性本体の表面上に位置し、直径方向に対向する。
【0018】
第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータが、重なり領域中で固定手段で長尺可撓性本体に少なくとも部分的に固定される構成を有することが可能である。
【0019】
あるいは、長尺機能システムは、少なくとも第3のアクチュエータをさらに含み、アクチュエータは、チューブの周方向に互いに実質的に等距離である。
【0020】
特定の実施形態では、長尺機能システムは、少なくとも第3のアクチュエータ、および第1の重なり領域と異なり、そこに沿って第3のアクチュエータの近位端または遠位端が、第1のアクチュエータまたは第2のアクチュエータの少なくとも1つの近位端または遠位端に面する、少なくとも第2の重なり領域をさらに備える。
【0021】
一実施形態によれば、アクチュエータは、互いに独立して作動するように構成される。
【0022】
一実施形態によれば、長尺機能システムは、カテーテル、カテーテルガイド、または内視鏡である。
【0023】
本発明はまた、本発明の長尺機能システムの、パイプ、ダクト、またはチューブの管腔内での前進を制御するための方法に関し、上記方法は、
-長尺機能システムをパイプ、ダクト、またはチューブ内に導入し、前進させることと、
-重なり領域を備える長尺可撓性本体の一部の単純な湾曲またはS字型湾曲を引き起こすように、アクチュエータに独立してまたは同時にエネルギーを伝達することによって、パイプ、ダクト、またはチューブの形状に応じて、アクチュエータを制御することと
を含む。
【0024】
あるいは、本発明の方法では、
-チューブは大動脈弓であり、
-第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータは、長尺可撓性本体の遠位部に配置され、
-第1のアクチュエータは遠位アクチュエータであり、第2のアクチュエータは近位アクチュエータであり、
第1および第2のアクチュエータを制御することは、
-2つのアクチュエータの1つを活性化し、機能システムを大動脈弓の遠隔部位に向かって押し進めること、
-作動されたアクチュエータを解除すること、
-機能システムを安定させるために、第2の近位アクチュエータを活性化し、次いで、入口部に到達するためのコンパクトな短半径のS字型曲線を得るために、第1の遠位アクチュエータを活性化すること
を含む。
【0025】
一実施形態によれば、本発明の方法では、アクチュエータを活性化することは、物理的および/または化学的手段を使用することを含む。
【0026】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0027】
-「約」は、本明細書では、およそ、大まかに、付近、またはその領域を意味するのに使用される。用語「約」が数値範囲と共に使用される場合、明記された数値の上下に限界を拡張することによってその範囲を修飾する。一実施形態によれば、数字に先行する用語「約」は、上記数字の値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0028】
-「アクチュエータ」は、機能をトリガするか、またはそれが固定されている本体部の領域の曲がりを引き起こすために、それが固定されている本体部を活性化することができる任意の種類の紐、ケーブル、ワイヤ、リボン、チューブ、またはそれらの任意のセットであり得る。本発明によるアクチュエータは、環境条件の変化に応答してそれらの形状を変化させ、機械的仕事を行うことができる材料および装置であり得る。アクチュエータは、エネルギーを送達してよい。大抵の場合、アクチュエータは、受け取ったエネルギーを別の種類のエネルギーに変換する。一実施形態では、アクチュエータは、ジュール効果によって熱に変換される電流を受け取り、熱が作用すると収縮する。
【0029】
-「カテーテル」は、流体の注入/回収を可能とするため、通路を開いた状態に保つため、内臓および組織を検査するため、ならびに動物もしくはヒトの体内で医療処置用の位置に医療器具を配置するためなどの診断または治療目的で、管、血管、通路、または体腔に挿入するためのチューブ状医療装置である。本発明では、用語「カテーテル」は、ヒトまたは動物の管、血管、通路、または体腔への挿入用に設計された任意のカニューレまたは医療用プローブを包含する。
【0030】
-「湾曲する」は、ある湾曲形態をとって曲がることを意味する。湾曲を有すること、または湾曲していることは、直線であることとは反対の意味で使用される。用語「湾曲」は、ゼロでない湾曲を意味する。湾曲は、正または負であり得る。
【0031】
-「長尺」は、長手方向に伸びる本体またはシステムなどの要素を指す。
【0032】
-「可撓性」は、壊れずに曲がり得る物体を指す。
【0033】
-「重なる」は、第1の要素が、他の要素(単数または複数)の少なくとも1つの部分を直接または間接的に覆う少なくとも1つの部分を有する、少なくとも2つ要素の互いに対する空間的な位置付けに関する。一実施形態によれば、用語「重なる」は、第1のアクチュエータの一部、例えばその端部の1つが、第2のアクチュエータの一部を覆い、上記第1および第2のアクチュエータが、本体の表面上に位置し、上記本体上で直径方向に対向することに関する。一実施形態によれば、重なり領域は、その長さ(Wと記される)により特徴付けられる。一実施形態によれば、ブレード形状の長尺本体の場合、第1および第2のアクチュエータは、ブレードの2つの対向面上にそれぞれ固定され、したがって、重なり領域に沿って平行であり、第1の部分は第2の部分に面する。
【0034】
-「機械的に独立した装置」は、互いに独立し、機械的観点から十分である、アクチュエータなどの自己支持型装置に関する。各独立した装置は、別々に作動し得、自律型である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】3つの異なる長さの重なり領域を有し、アクチュエータが活性化されていない、本発明による長尺システムの例を示す。
図2】3つの異なる長さの重なり領域を有し、アクチュエータが活性化されていない、本発明による長尺システムの例を示す。
図3】3つの異なる長さの重なり領域を有し、アクチュエータが活性化されていない、本発明による長尺システムの例を示す。
図4】S字型形状を形成するように両アクチュエータが作動している図3のシステムを示す。
図5】ブレード形状を有し、アクチュエータが活性化されている、本発明による長尺機能システムを示す。
図6】アクチュエータが活性化されていない、本発明の長尺システムの好ましい実施形態である。
図7】大動脈幹上口に到達するために大動脈弓内に導入された、本発明による長尺機能システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
長尺機能システム
本発明は、パイプ、ダクト、またはチューブの検査での使用を意図された、カテーテル、カテーテルガイド、または内視鏡であり得る長尺機能システム1に関する。
【0037】
本発明の1つの目的は、好ましくは人体内のパイプ、ダクト、またはチューブの検査のための、アクチュエータに関連付けられた2つの区域によって作られ、上記区域は短半径を有して独立して活性化され得る、コンパクトなS字型曲線を形成することができる操作可能なシステムを提供することである。
【0038】
図1に示すように、システムは、可撓性であり、近位部21および遠位部22を提供する長尺本体2を含む。遠位部22は、近位部21に連続しており、近位部21を延長する。長尺本体2は、対称軸A1を有する。長尺本体2がブレードである場合、A1は、対称軸ではなく対称面となる。
【0039】
長尺可撓性本体2は、例えば円形断面の、例えば円筒形の形状(すなわち、チューブ)であってよい。他の示されていない実施形態では、可撓性本体2は、星形、円形、半円形、正方形、長方形、三角形、角錐形、またはそれらの任意の組み合わせから選択される形状の断面プロファイルなどの、別の可能な断面を有する円筒形であってよい。実施形態によれば、長尺可撓性本体は、3つ以上のチューブを含有してよい。例えば、長尺本体は、角錐形に配置された3つのチューブ、すなわち、2つの平行かつ隣接するチューブおよびそれらの上の第3のチューブによって形成されてよい。
【0040】
長尺可撓性本体2は、例えば、10cm~200cm、好ましくは50cm~150cmの範囲の長さを有し、より好ましくは約120cmである。一実施形態によれば、長尺機能システム3は、10cm~190cm、好ましくは、10cm~180cm、10cm~170cm、10cm~160cm、10cm~150cm、10cm~140cm、10cm~130cm、10cm~120cm、10cm~110cm、10cm~100cm、10cm~90cm、10cm~80cm、10cm~70cm、10cm~60cm、10cm~50cm、10cm~40cm、10cm~30cm、または10cm~20cmの長さを有する。一実施形態によれば、長尺機能システム3は、20cm~200cm、好ましくは、30cm~200cm、40cm~200cm、50cm~200cm、60cm~200cm、70cm~200cm、80cm~200cm、90cm~200cm、100cm~200cm、110cm~200cm、120cm~200cm、130cm~200cm、140cm~200cm、150cm~200cm、160cm~200cm、170cm~200cm、180cm~200cm、または190cm~200cmの長さを有する。実施形態によれば、可撓性本体の長さは、500mm~3000mm、好ましくは400mm~1200mmの範囲にある。
【0041】
実施形態によれば、可撓性本体の幅または直径は、100μm~12mmの範囲にある。一実施形態によれば、長尺可撓性本体2は、0mm超~12mm、好ましくは0.5mm~3mmの範囲の直径を有する。一実施形態によれば、長尺機能システム3は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mmの直径を有する。一実施形態によれば、長尺機能システム3は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1mmの直径を有する。一実施形態によれば、長尺可撓性本体2は、0μm超~500μm、好ましくは10μm~200μmの範囲、より好ましくは約150μmまたは170μmの直径を有する。
【0042】
実施形態によれば、本体2は、例えば弾性もしくは別の可撓性材料、または弾性材料アセンブリで作られる。一実施形態では、本体部2は、侵襲的使用に適するポリマー可撓性材料で作られる。一実施形態では、本体2は、超弾性合金で作られる。任意の超弾性合金が、本発明で使用されてよい。一実施形態では、超弾性合金は、ニチノールである。
【0043】
第1のアクチュエータ3は、長尺可撓性本体2上に配置され、近位端31および遠位端32を含む。第2のアクチュエータ4は、同じ長尺本体2上に配置され、近位端41および遠位端42を含む。具体的には、第1のアクチュエータ3は、長尺本体2の遠位部22に配置され、第2のアクチュエータ4は、近位部21に配置される。そのような構成で、第1のアクチュエータ3および第2のアクチュエータ4は、互いに機械的に独立し、長尺機能本体2の対称軸A1に沿って軸方向にオフセットしている。一方のアクチュエータ3または4のみを活性化し、J字型曲線を得ることが可能である。これは、チューブ内に機能システムを進める間に、必要に応じて、独立した短半径の曲線を形成することを可能とする。機械的に独立しているため、各アクチュエータは、別々に作動し得、関連する長尺機能システム1を特定の方向に誘導し得る。加えて、A1に沿って軸方向にオフセットしているため、得られる湾曲は、S字型構成をもたらし得る。A1に沿った軸方向/長手方向オフセットは本件において重要であり、そうでなければ、S字型形状を達成することができない。
【0044】
第1および第2のアクチュエータ3、4は、
i)本体2の断面の周囲の2つの対向する領域に配置される。一実施形態によれば、本体2が円形断面を有する場合、第2のアクチュエータ4は、第1のアクチュエータ3から120°~240°で、チューブの周方向に位置してよく、好ましくは、第1および第2のアクチュエータ3、4は、軸方向にオフセットしながら直径方向に対向する。
ii)長尺本体2上に連続して配置されるが、長手方向に重なり領域Wを画定し、第1のアクチュエータ3の近位端31は、第2のアクチュエータ4の遠位端41に出会いかつ面する。
【0045】
実施形態によれば、機能システム1は、少なくとも第3のアクチュエータを含む。実施形態によれば、第1、第2、および第3のアクチュエータは、チューブの周方向に互いに等距離である。実施形態によれば、長尺機能システムは、少なくとも第3のアクチュエータ、および第1の重なり領域と異なり、そこに沿って第3のアクチュエータの近位端または遠位端が、第1のアクチュエータまたは第2のアクチュエータの少なくとも1つの近位端または遠位端に面する、少なくとも第2の重なり領域をさらに備える。
【0046】
実施形態によれば、システムは、少なくとも第3および第4のアクチュエータ、ならびに第1の重なり領域と異なり、そこに沿って第3のアクチュエータの近位端が第4のアクチュエータの遠位端に面する、少なくとも第2の重なり領域をさらに備える。
【0047】
図1に示すように、重なり領域は、0mm超からアクチュエータの1つの大きさまでの範囲の、その長さWにより特徴付けられる。一実施形態によれば、重なり領域Wの長さは、本体2上のアクチュエータの固定手段1つほどの大きさである。一実施形態によれば、重なり領域Wの長さは、本体2上のアクチュエータの固定手段2つほどの大きさである。一実施形態によれば、重なり領域Wの長さは、本体2上のアクチュエータ(単数または複数)の固定手段2つの大きさより大きい。
【0048】
一実施形態によれば、重なり領域Wの長さは、重なったアクチュエータの少なくとも1つの長さの0%超~95%の範囲である。一実施形態によれば、Wは、重なったアクチュエータの少なくとも1つの長さの1%~50%、好ましくは5%~40%、10%~30%の範囲である。
【0049】
実施形態によれば、重なり領域Wの長さは、2mm~30mmの範囲にある。例えば、アクチュエータの長さが35mmである場合、Wは5mm~20mmの範囲である。
【0050】
図1、2、および3の実施形態は全体的に類似しているが、3つの長尺機能システムは、可変長W1、W2、およびW3の重なり領域を含む。
【0051】
例えば、:
W1は、2mm~10mmの範囲であり、
W2は、4mm~20mmの範囲であり、
W3は、5mm~30mmの範囲である。
【0052】
一実施形態によれば、アクチュエータ3、4は、形状記憶型のワイヤ、ワイヤの集合体、またはブレードの形状であってよい。一実施形態によれば、ブレード形状の長尺本体は、予測可能な方向に沿って曲がるという点で有利である。さらに、それは、アクチュエータなどの要素の容易な統合に適する2つの対向する平面を提供する。実施形態によれば、ブレードは、第1のアクチュエータが配置される上面、および第2のアクチュエータが配置される下面を提供する。
【0053】
一実施形態によれば、アクチュエータ3、4は、物理的および/または化学的手段を含む、当業者に知られている任意の技術によって作動してよい。一実施形態によれば、アクチュエータ3、4は、空気または流体で膨張させるバルーンの使用を含むものなどの、任意の作動技術によって作動してよい。一実施形態によれば、アクチュエータ3、4は、例えば、電気信号または熱などの物理的刺激に反応することができる材料を使用することによって作動してよい。実施形態によれば、アクチュエータ3、4は、
-形状記憶合金、および/もしくは
-活性ポリマー、および/もしくは
-圧電材料
で作られるか、またはそれらを含む。
【0054】
実施形態によれば、アクチュエータの少なくとも1つは、例えば、50%のNiおよび50%のTiで構成されるニチノールで作られる。
【0055】
1つの示されていない実施形態では、長尺機能システム1は、例えば電気エネルギー源などのエネルギー源、ならびにエネルギー源から第1のアクチュエータ3および/または第2のアクチュエータ4にエネルギーを提供および/または伝達するための手段をさらに備える。上記エネルギーは、湾曲を得るように、作動要素-アクチュエータ3または4-によって機械的エネルギーに変換され、したがって、チューブ、パイプ、またはダクトの内部での操縦を容易にする。アクチュエータ3および4は独立しているので、エネルギー源によって独立して作動し得る。
【0056】
一実施形態によれば、各アクチュエータは、少なくとも2つの導電ワイヤに接続される。一実施形態によれば、2つのアクチュエータは、少なくとも3つの導電ワイヤに接続される。一実施形態によれば、導電ワイヤは銅製である。例えば、導電ワイヤの第1のセットは、第1のアクチュエータ3に接続されてよく、導電ワイヤの第2のセットは、第2のアクチュエータ4に接続されてよい。あるいは、第1および第2のアクチュエータの両方が、同じワイヤまたはワイヤのセットによって接続されてよい。
【0057】
導電ワイヤ(単数または複数)は、電流を、それらの長手方向部分に沿って、第1のアクチュエータおよび/または第2のアクチュエータに制御された方法で提供または伝達するように配置される。別の実施形態によれば、長尺機能システム1は、長尺機能システムの近位端に位置する外部制御ユニットをさらに備える。制御ユニットは、アクチュエータを独立してまたは同時に作動させるように構成された少なくとも1つのコントローラデバイスを備える。
【0058】
一実施形態によれば、導電ワイヤの第1のセットは、第1のコントローラに接続される。一実施形態によれば、導電ワイヤの第2のセットは、第2のコントローラに接続される。第1のコントローラおよび/または第2のコントローラは、それぞれ第1のアクチュエータおよび/または第2のアクチュエータに、導電ワイヤによって電流を流すことを可能とし、それにより、上記アクチュエータの少なくとも1つの作動を提供する。
【0059】
一実施形態によれば、重なったアクチュエータは、互いに独立して作動するように構成される。これは、チューブ内に機能システムを進める間に、必要に応じて、独立した短半径の曲線を形成することを可能とする。
【0060】
一実施形態によれば、アクチュエータが作動していなくても、重なったアクチュエータ間の重なり領域は、保存の原理を作り出す剛性を達成することを可能とする。一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータが作動すると、重なり領域はより硬くなる。本発明によれば、少なくとも1つのアクチュエータが作動すると、重なり領域の硬化は、重なっていない領域での作動されたアクチュエータの湾曲を引き起こし、上記生じる曲線半径は、重なり領域の存在なしで得られる曲線半径より短い。
【0061】
一実施形態によれば、重なる2つの対向するアクチュエータが作動すると、重なり領域の硬化は、2つの作動されたアクチュエータの湾曲を増幅し、本体2はS字型形状をとり、上記S字型曲線は、重なり領域の存在なしで得られるものより短くかつコンパクトである。別の実施形態によれば、少なくとも2つのアクチュエータは、S字型二重曲線を形成するために共に作動してよい。これは、特に、2つの連続するコンパクトかつ逆方向の湾曲を有するチューブを通して操縦する場合に、機能システムのより効率的な制御を可能とする。
【0062】
一実施形態によれば、各アクチュエータによってトリガされる曲線は、制御された方法で独立して生じてよい。
【0063】
一実施形態によれば、S字型曲線は、2つの曲線半径rおよびrにより特徴付けられる。一実施形態によれば、rおよびrは、各々独立して3mm以上とされる。一実施形態によれば、S字型曲線は、曲線の長さL(すなわち、S字型曲線の始まりから終わりまでの最短の直線の長さ)により特徴付けられる。一実施形態によれば、本発明によって得られる曲線の長さLは、重なり領域の存在なしで得られるものより短い。
【0064】
各アクチュエータ3、4は、固定手段5を使用することによって長尺本体2に固定される。有利には、1つの示されていない実施形態では、第1および第2のアクチュエータ3、4は、重なり領域中で同じ固定手段を使用することによって固定されてよい。これは、締結手段の数の削減を可能とする。
【0065】
図1乃至3では、アクチュエータ3、4は活性化されていない。第1のアクチュエータ3および/または第2のアクチュエータ4の活性化は、それぞれ上記アクチュエータの変形を生じさせる。
【0066】
アクチュエータは長尺本体2に固定されているので、アクチュエータの変形(すなわち、アクチュエータの長さの短縮、および/またはアクチュエータの湾曲)は、長尺本体2の湾曲をもたらす。特に、長尺本体2に固定された重なったアクチュエータの作動は、それらの湾曲のより良好なコンパクト化を可能とする。より正確には、湾曲部分は、アクチュエータが固定されているが、重なり領域ではない部分である。
【0067】
図4は、重なり領域Wの長さがわずかに異なる、図3のものに類似する長尺機能システム1を示す。この実施形態では、示されるように、コンパクトな二重湾曲(S字型)が得られるように両アクチュエータ3、4が活性化されている。
【0068】
図5は、ブレード形状を有する長尺本体200を含む長尺機能システム100の別の実施形態を示し、そのようなブレードは、示されていない対称面も有する。本体200は(本体の内部または上に)、長尺本体200に沿って軸方向にオフセットし、重なり領域Wを画定する、第1および第2のアクチュエータ300および400を含む。第1のアクチュエータ300は、本体200の上面201に固定され、一方、第2のアクチュエータ400は、長尺本体200の下面202に固定される。実施形態によれば、アクチュエータ300、400も、ブレード形状のものである。しかしながら、他の形状も可能である。例えば、第1および/または第2のアクチュエータは、1つ以上の長尺ワイヤを含んでよい。
【0069】
図6は、長尺可撓性本体2が、先端6を有し、第1のアクチュエータ3を備える遠位部22を提供する別の実施形態を示す。この有利な実施形態は、チューブ(またはパイプ、またはダクト)内に進める際の機能システムの遠位部の誘導を習得することを可能とする。長尺可撓性本体2は、長手方向軸A1を有する。先端6の存在は、例えばチューブが大動脈の場合、チューブの無傷な壁に影響を及ぼし得るか、または患者を傷つけ得る、可撓性本体によって引き起こされ得る任意の穿孔または衝突からのチューブの保護を可能とする。
【0070】
前進を制御するための方法
本発明はまた、本発明の長尺機能システムの、パイプ、ダクト、またはチューブの管腔内での前進を制御するための方法に関する。
【0071】
一実施形態によれば、上記方法は、
-長尺機能システム1をパイプ、ダクト、またはチューブ内に導入し、前進させることと、
-重なり領域を備える長尺可撓性本体の一部の単純な湾曲またはS字型湾曲を引き起こすように、アクチュエータに独立してまたは同時にエネルギーを伝達することによって、パイプ、ダクト、またはチューブの形状に応じて、少なくとも2つのアクチュエータ3、4を制御することと
を含む。
【0072】
一実施形態によれば、方法は、外科的および/または内科的検査に特に適している。一実施形態によれば、チューブは静脈または動脈であり、好ましくは大動脈弓である。
【0073】
一実施形態によれば、第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータは、長尺可撓性本体2の遠位部に配置される。
【0074】
一実施形態によれば、第1および第2のアクチュエータを制御することは、
-2つのアクチュエータの一方を活性化し、機能システムを大動脈弓の遠隔部位に向かって押し進めること、
-上記アクチュエータを解除すること、ならびに/または
-機能システムを安定させるために、他方のアクチュエータを活性化し、次いで、入口部に到達するためのコンパクトな短半径のS字型曲線を得るために、この他方のアクチュエータを活性化すること
を含む。
【0075】
一実施形態によれば、アクチュエータ3、4を制御することは、
-2つのアクチュエータ3または4の1つを活性化し、機能システムを大動脈弓の遠隔部位に向かって押し進めること、
-作動されたアクチュエータ3または4を解除すること、
-機能システムを安定させるために、第2の近位アクチュエータ4を活性化し、次いで、スナッピング現象を回避しながら入口部に到達するための短半径のS字型曲線を得るために、第1の遠位アクチュエータ3を活性化すること
を含む。
【0076】
第1のアクチュエータは遠位アクチュエータであり、第2のアクチュエータは近位アクチュエータである。
【0077】
一実施形態によれば、本発明の方法は、長尺機能本体2を不活性化するためのステップをさらに含む。
【0078】
本発明による長尺機能システムが使用され得るパイプの例を図7で示す。長尺機能システム1をパイプ内に導入し、前進させる。次いで、アクチュエータ3、4を、重なり領域Wを備える長尺本体2の一部の(1つのアクチュエータのみを作動させることによる)単純な湾曲または(2つのアクチュエータを作動させることによる)S字型湾曲を引き起こすように、アクチュエータに独立してまたは同時にエネルギーを伝達することによって、チューブの形状に応じて制御する。これは、例えば、大動脈弓の入口部にシステムの遠位端を誘導することを可能とする。図7では、2つのアクチュエータ3、4は活性化されており、したがって、S字型曲線を提供する。
【符号の説明】
【0079】
参照番号
1、100:長尺機能システム、
2、200:長尺可撓性本体、
201:長尺本体200の上面、
202:長尺本体200の下面、
21:長尺本体2の近位部、
22:長尺本体2の遠位部、
3、300:第1のアクチュエータ、
31:第1のアクチュエータ3の近位端、
32:第1のアクチュエータ3の遠位端、
4、400:第2のアクチュエータ、
41:第2のアクチュエータ4の近位端、
42:第2のアクチュエータ4の遠位端、
5:固定手段、
6:先端、
W:重なり領域の長さ、
L:S字型曲線の長さ、
:S字型曲線の第1の曲線の曲線半径、および
:S字型曲線の第2の曲線の曲線半径。
A1:長尺機能本体の軸または対称面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7