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  • 特許-熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240918BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L101/00
C09K21/12
C08L77/00
C08L67/00
C08K5/5313
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021545810
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020052977
(87)【国際公開番号】W WO2020165017
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】102019201727.4
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヘーロルト・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ロイシュナー・エーファ-マリーア
(72)【発明者】
【氏名】シュロッサー・エルケ
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528676(JP,A)
【文献】特開2004-346325(JP,A)
【文献】特開2009-030067(JP,A)
【文献】特表2009-512766(JP,A)
【文献】特表2018-525449(JP,A)
【文献】特開2001-072978(JP,A)
【文献】特表2013-529230(JP,A)
【文献】特開2009-041016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 21/00-21/14
C08L 1/00-101/14
C08K 5/00-5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
成分A)として、30重量~55重量%の、式(I)のジアルキルホスフィン酸の亜鉛塩
【化1】
[式中、
およびRは、同一であるかまたは異なっており、直鎖状、分岐状または環状のC-C18-アルキル、C-C18-アリール、C-C18-アリールアルキルおよび/またはC-C18-アルキルアリールであり、そして、Mは亜鉛であり、そしてm=1~2である]、
成分B)として、45~70重量%の、メラミンとポリリン酸とのおよび/または縮合メラミンとポリリン酸との1種または複数の反応生成物、
成分C)として、0%~10%の、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムおよび/またはスズ酸カルシウムである少なくとも1種のさらに別の無機難燃剤、
成分D)として、0重量%~20重量%の、1種または複数の、メラミンの縮合生成物、
成分E)として、0重量%~2重量%の少なくとも1種のホスファイトもしくはホスフィナイトまたはそれらの混合物、および
成分F)として、0重量%~2重量%の、少なくとも1種の、典型的にはC14~C40の鎖長を有する長鎖脂肪族カルボン酸(脂肪酸)のエステルおよび/または塩、
を含み、前記成分の合計は常に100重量%である、熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物であって、
ただし、ジアルキルホスフィン酸のアルミニウム塩を含む、熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は除く、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物。
【請求項2】
以下:
成分A)としての、30重量~55重量%の、式(I)のジアルキルホスフィン酸の亜鉛塩
【化2】
[式中、
およびRは、同一であるかまたは異なっており、直鎖状、分岐状または環状のC-C18-アルキル、C-C18-アリール、C-C18-アリールアルキルおよび/またはC-C18-アルキルアリールであり、そして、Mは亜鉛であり、そしてm=1~2である]、
成分B)としての、45~70重量%の、メラミンとポリリン酸とのおよび/または縮合メラミンとポリリン酸との1種または複数の反応生成物、
成分C)としての、0%~10%の、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムおよび/またはスズ酸カルシウムである少なくとも1種のさらに別の無機難燃剤、
成分D)としての、0重量%~20重量%の、1種または複数の、メラミンの縮合生成物、
成分E)としての、0重量%~2重量%の少なくとも1種のホスファイトもしくはホスフィナイトまたはそれらの混合物、および
成分F)としての、0重量%~2重量%の、少なくとも1種の、典型的にはC14~C40の鎖長を有する長鎖脂肪族カルボン酸(脂肪酸)のエステルおよび/または塩、
からなり、前記成分の合計は常に100重量%である、熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物。
【請求項3】
以下:
35重量%~55重量%の成分A)、
45重量%~65重量%の成分B)、
0重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)
を含む、請求項1または2に記載の難燃剤混合物。
【請求項4】
成分A)中のRおよびRが、同一であるかまたは異なっており、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよび/またはフェニルである、請求項1~3のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
【請求項5】
成分D)が、メラム、メレムおよび/またはメロンである、請求項1~4のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
【請求項6】
成分D)がメレムである、請求項1~5のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の難燃剤混合物と、成分H)としての熱可塑性ポリマーとを含むポリマー組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーがポリアミドおよび/またはポリエステルを含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
ポリアミド(PA)がPA6、PA6,6、PA4,6、PA12、PA6,10、PA6T/66、PA6T/6、PA4T、PA9T、PA10T、ポリアミドコポリマー、ポリアミドブレンドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
ポリアミドがPA6,6、またはPA6,6およびPA6のコポリマーもしくはポリマーブレンドである、請求項8または9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTおよびPETのブレンド、またはポリエステルエラストマーである、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
以下:
1重量%~96重量%の熱可塑性ポリマー
0重量%~50重量%のフィラーおよび/または強化材、および
3重量%~35重量%の、請求項1~6のいずれか1つに記載の難燃剤混合物
を含み、ただし、上記パーセントはポリマー組成物の全量を基準とする、請求項7~11のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
以下:
15重量%~75重量%の熱可塑性ポリマー
15重量%~45重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
10重量%~25重量%の、請求項1~6のいずれか1つに記載の難燃剤混合物
を含み、ただし、上記パーセントはポリマー組成物の全量を基準とする、請求項7~12のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数を有する、請求項7~13のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項15】
3.2mm~0.4mmの厚さの成形体で測定して、UL-94によるV-0の評価を達成する、請求項7~14のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項16】
0.75~3mmの厚さの成形体で測定して、960℃以上のIEC60695-2-12に従うグローワイヤ燃焼性指数を有する、請求項7~15のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項17】
少なくとも775℃のIEC60695-2-13に従うグローワイヤ着火温度(GWIT)を有する、請求項7~16のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項18】
酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、フィラー、強化材および/またはさらに別の難燃剤である、さらに別の添加剤を含む、請求項7~17のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項19】
ガラス繊維を含む、請求項7~18のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
【請求項20】
電気、エレクトロニクスおよび自動車産業における、食品分野における、包装における、またはゲームおよび玩具分野における、成形コンパウンドまたは最終製品としての、ラベルモチーフとしての、医療技術における、または動物の個々のラべリング用のプラスチックタグとしての、請求項7~19のいずれか1つに記載のポリマー組成物の使用。
【請求項21】
印刷回路基板、ハウジング、箔、ワイヤー、スイッチ、分配器、継電器、抵抗器、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、コントローラ、記憶機器およびセンサの部品の製造のための、請求項7~19のいずれか1つに記載のポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマー用の難燃剤混合物、および前記難燃剤混合物を含むポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのプラスチックは、それらの化学組成のために、易燃性である。プラスチック加工業者および一部の場合には立法者から求められる高い難燃性要件を達成できるためには、プラスチックは通常、難燃剤で変性しなければならない。この目的のために、多数の種々の難燃剤および難燃剤相乗剤が知られており、市販もされている。煤煙ガス密度および小さいガス組成に関してそれらのより有利な二次的な燃焼特性のために、および環境的な理由から、好ましくは非ハロゲン化難燃剤系がしばらく使用されている。
【0003】
非ハロゲン化難燃剤の中では、特に熱可塑性ポリマーに関して、ホスフィン酸の塩(ホスフィネート)が非常に有効であることが見出されている(DE-A-2252258(特許文献1)およびDE-A-2447727(特許文献2))。ここで、この難燃剤クラスのいくつかの誘導体は、熱可塑性成形コンパウンドの機械的特性におけるそれらの負の影響が少ないために、高く評価され、相応に使用されている。
【0004】
さらに、ホスフィネートと特定の窒素含有化合物、特にメラミン誘導体との相乗的な組み合わせが見出され、そしてこれらが、一連の全てのポリマーにおいて、難燃剤としてホスフィネート単独よりも有効であることが見出されている(WO-A-2002/28953(特許文献3)、WO-A-97/01664(特許文献4)ならびにDE-A-19734437(特許文献5)およびDE-A-19737727(特許文献6))。
【0005】
さらに、熱可塑性ポリマーにおける種々のホスフィネートの難燃作用が、窒素不含の少量の無機もしくは鉱物性化合物の添加によっても顕著に改善できること、および上記の添加剤はまた、窒素含有相乗剤と組み合わせたホスフィネートの難燃作用を改善できることが見出された(EP-A-0024167(特許文献7)、WO-A-2004/016684(特許文献8))。特に、ホスフィネートとメラミンポリホスフェートの組み合わせは、ポリアミドにおいて、UL94試験に従うV-0分類をもたらす。
【0006】
ホスフィネート含有難燃剤系を使用すると、特に300℃を超える加工温度において、最初は部分的なポリマー分解、ポリマーの変色および加工の過程で煙発生が生じた。しかしながら、これらの困難は、塩基性または両性の酸化物、水酸化物、カーボネート類、シリケート類、ボレート類またはスタネート類の添加により軽減することができた(WO-A-2004/022640(特許文献9))。
【0007】
熱安定性のさらなる改善のために、WO-A-2012/045414(特許文献10)は、ホスフィン酸塩と亜リン酸の塩との組み合わせを提案している。ホスフィン酸塩の難燃作用は、特に脂肪族ポリアミドにおいて、顕著に改善することができる。相乗剤としてのメラミンポリホスフェートの使用に比べて、高温多湿での保管後に、滲出(exudation)は観察されない。
【0008】
WO-A-2014/135256(特許文献11)には、相乗剤としてのホスフィン酸塩および亜リン酸塩ならびに強化材およびさらに別の添加剤も含む難燃性ポリアミドが記載されている。そのように得られたポリアミド成形コンパウンドは、良好な熱安定性を示し、マイグレーション傾向を示さない。燃焼性クラスUL94 V-0および600ボルトのクリープ耐性(比較トラッキング指数,CTI)が達成される。
【0009】
ハロゲン不含ポリアミド組成物は、多くの場合にIEC60335に従うグローワイヤ着火温度(GWIT)に関して十分なグローワイヤの結果を示さず、すなわちそれは、750℃においてグローワイヤの先端でポリアミドの望ましくない発火があることを意味する。置いたままにされる家庭電化製品における難燃性ポリアミド成形コンパウンドの使用には、750℃以上のGWITが必要である。
【0010】
US-A-2007/299171(特許文献12)は、ホスフィン酸塩(F1)、メラミンおよびリン酸の反応生成物(F2)およびメラミンの縮合生成物(F3)を含み、F1+F2が、全組成物を基準として、少なくとも13%、好ましくは少なくとも15%である、熱可塑性の特にポリアミドを開示している。F1、F2およびF3を同時に使用することにより、775℃のGWITに達する。このような調製物の不利な点は、メラミンおよびリン酸の反応生成物の使用により、マイグレーション効果が生じ得ることである。さらに、熱安定性は約300℃に限定され;さらにより高い加工温度では、ポリマー分解および破壊、およびまた腐食効果(例えばコンパウンディングおよび射出成形におけるスクリューで)が生じ得る。
【0011】
WO-A-2009/109318A1(引用文献13)には、ポリアミドおよびポリエステル中にホスフィン酸アルミニウムを使用した場合の腐食効果が記載されている。種々の添加剤の添加は、腐食を明らかに減少させることができる。
【0012】
US-A-2014/0371357(特許文献14)は、10~40重量%のガラス繊維、10~40重量%のメラムおよび0~15%のハロゲン不含難燃剤を有する熱可塑性ポリアミドであって、当該ポリアミドが最大10モル%の芳香族モノマー単位を含有する熱可塑性ポリアミドを記載している。少なくとも800℃のGWITが達成され;前記のハロゲン不含難燃剤は、ホスフィン酸金属塩であることができる。メラムを使用する際の欠点は、UL94 V-0およびGWIT>750℃を達成するための30~35%という高い充填レベルであり、これは、ポリアミド化合物の流動性および機械的特性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】DE-A-2252258
【文献】DE-A-2447727
【文献】WO-A-2002/28953
【文献】WO-A-97/01664
【文献】DE-A-19734437
【文献】DE-A-19737727
【文献】EP-A-0024167
【文献】WO-A-2004/016684
【文献】WO-A-2004/022640
【文献】WO-A-2012/045414
【文献】WO-A-2014/135256
【文献】US-A-2007/299171
【文献】WO-A-2009/109318A1
【文献】US-A-2014/0371357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、リン-および窒素含有難燃系をベースとする、熱可塑性ポリマー用、特にポリアミド類およびポリエステル類用のハロゲン不含難燃剤混合物であって、高い熱安定性および良好な機械的特性を有し、試験片の0.4mmの壁厚までのUL94 V-0も、グローワイヤ燃焼性指数(GWFI)960℃のグローワイヤの要件およびGWIT775℃も、全ての試験した壁厚で確実に達成し、腐食が少なく、わずかなマイグレーション効果(migration effects)しか示さず、良好な流動性および高い電気的値(比較トラッキング指数(CTI)>550V)を示す混合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
今回驚くべきことに、熱可塑性ポリアミドおよびポリエステルのグローワイヤ耐性を、成形コンパウンドがホスフィン酸亜鉛と、特定の比率でのメラミンおよび縮合リン酸の反応生成物との組み合わせを含む場合に、顕著に改善できることが見出された。上記の特定の組み合わせの場合、ポリアミドの電気的および機械的特性に関する調和のとれた特性プロファイルが十分に保たれる。そのように得られた成形コンパウンドは、驚くべきことに、非常に少ない腐食のみを示し、使用した難燃剤のマイグレーションをほとんど示さない。任意選択的に、前記難燃剤混合物はさらに、さらに別の添加剤を含む。
【0016】
熱可塑性ポリマーは主に、溶融物で加工される。それに伴う構造変化および状態変化に、ポリマーはその化学構造を変化させることなく耐えることはほとんどない。架橋、酸化、分子量変化および従ってまた物理的および技術的特性の変化が生じ得る。加工の間のポリマーの負荷を減らすために、ポリマーに応じて種々の添加剤が使用される。
【0017】
多くの場合に、種々の添加剤が同時に使用され、それらの各々は所定の任務を担う。例えば、ポリマーが化学的損傷なしで加工に耐え、その後外的な影響、例えば熱、UV光、天候および酸素(空気)に対して安定な十分な時間を有するために、酸化防止剤および安定剤が使用される。潤滑剤は、流動特性の改善に加えて、熱い機械部品へのポリマー溶融物の過剰な付着を防止し、顔料、フィラーおよび強化材のための分散剤として作用する。
【0018】
難燃剤の使用は、ポリマーの安定性に、溶融物における加工の過程で影響を及ぼし得る。国際規格に従うプラスチックの十分な難燃性を確保するために、難燃剤は多くの場合に、高い用量で添加されなければならない。高温での難燃作用のために必要なそれらの化学的反応性のために、難燃剤はポリマーの加工安定性を損ない得る。これは、例えば、ポリマー分解の増加、架橋反応、脱ガスまたは変色をもたらし得る。
【0019】
例えば少量の銅ハロゲン化物ならびに芳香族アミンおよび立体障害性フェノールにより、ポリアミドは安定化されるが、ここで高い継続使用温度での長期安定性の達成がとても重要である(H.Zweifel (Ed.):“Plastics Additives Handbook”,第5版,Carl Hanser Verlag,Munich,2000,80~84頁)。
【0020】
従って、本発明は、以下を含む、熱可塑性ポリマー用の難燃剤混合物を提供する:
成分A)として、30~55重量%の、式(I)のジアルキルホスフィン酸の亜鉛塩
【0021】
【化1】
(式中、
およびRは、同一であるかまたは異なっており、直鎖状、分岐状または環状のC-C18-アルキル、C-C18-アリール、C-C18-アリールアルキルおよび/またはC-C18-アルキルアリールであり、そして、Mは亜鉛であり、そしてm=1~2である);
成分B)として、45重量%~70重量%の、メラミンとポリリン酸類とのおよび/または縮合メラミンとポリリン酸類との1種または複数の反応生成物、
成分C)として、0%~10%の、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムおよび/またはスズ酸カルシウムである1種のさらに別の無機難燃剤、
成分D)として、0重量%~20重量%の、1種または複数の、メラミンの縮合生成物、
成分E)として、0重量%~2重量%のホスファイトまたはホスホナイトまたはそれらの混合物、および
成分F)として、0重量%~2重量%の、典型的にはC14~C40の鎖長を有する長鎖脂肪族カルボン酸(脂肪酸)のエステルまたは塩
(ここで、前記成分の合計は常に100重量%である)。
【0022】
好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は以下を含む:
35重量%~55重量%の成分A)、
45重量%~65重量%の成分B)、
0重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)。
【0023】
より好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は以下を含む:
38重量%~45重量%の成分A)、
45重量%~60重量%の成分B)、
2重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)。
【0024】
特に好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は以下を含む:
37重量%~45重量%の成分A)、
53重量%~60重量%の成分B)、
2重量%~7重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
1重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)。
【0025】
さらに好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は以下を含む:
30重量%~54.7重量%の成分A)、
45重量%~70重量%の成分B)、
0.1重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0.1重量%~2重量%の成分E)、および
0.1重量%~2重量%の成分F)。
【0026】
好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は、あるいは以下を含む:
30重量%~54.6重量%の成分A)、
45重量%~70重量%の成分B)、
0.1重量%~10重量%の成分C)、
0.1重量%~20重量%の成分D)、
0.1重量%~2重量%の成分E)、および
0.1重量%~2重量%の成分F)。
【0027】
好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤において、成分A)中のRおよびRは、同一であるかまたは異なっており、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよび/またはフェニルである。
【0028】
好ましくは、成分D)は、メラム、メレムおよび/またはメロンである。
【0029】
好ましくは、成分D)はメレムである。
【0030】
好ましくは、請求項1~9の1つ以上に記載の熱可塑性ポリマー用の難燃剤混合物は、成分G)としてテロマーをさらに含み、前記テロマーは、エチルブチルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、エチルヘキシルホスフィン酸、ブチルヘキシルホスフィン酸、エチルオクチルホスフィン酸、sec-ブチルエチルホスフィン酸、1-エチルブチル-ブチル-ホスフィン酸、エチル-1-メチルペンチル-ホスフィン酸、ジ-sec-ブチルホスフィン酸(ジ-1-メチル-プロピルホスフィン酸)、プロピルヘキシルホスフィン酸、ジヘキシルホスフィン酸、ヘキシルノニルホスフィン酸、ジノニルホスフィン酸および/またはそれらの亜鉛塩であり;ただし、成分A)とG)は異なる。
【0031】
本発明はまた、請求項1~10の少なくとも1つに記載の難燃剤混合物と、成分H)としての熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーとを含むポリマー組成物に関する。
【0032】
好ましくは、前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミドおよび/またはポリエステルを含む。
【0033】
好ましくは、前記難燃剤混合物はポリアミドのために使用される。ポリアミド(PA)は、好ましくは、PA6、PA6,6、PA4,6、PA12、PA 6,10、PA4,10、Pa10,10、PA11、PA6T/66、PA6T/6、PA4T、PA9T、PA10T、ポリアミドコポリマー、ポリアミドブレンドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
ナイロン-6,6、またはナイロン-6,6とナイロン-6とのコポリマーもしくはポリマーブレンドが特に好ましい。
【0035】
好ましくは、前記難燃剤混合物はまたポリエステルのためにも使用される。ポリエステルは、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTとPETとのブレンド、またはポリエステルエラストマーである。
【0036】
好ましくは、請求項11~15の1つ以上に記載のポリマー組成物は以下を含む:
1重量%~96重量%のポリマー
0重量%~50重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
3重量%~35重量%の、請求項1~10の少なくとも1つに記載の難燃剤混合物
(ここで、パーセントは、ポリマー組成物の全量を基準とする)。
【0037】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、以下を含む:
15重量%~75重量%のポリマー
15重量%~45重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
10重量%~25重量%の、請求項1~10の少なくとも1つに記載の難燃剤混合物
(ここで、パーセントは、ポリマー組成物の全量を基準とする)。
【0038】
より好ましくは、前記ポリマー組成物は、以下を含む:
35重量%~65重量%のポリマー
25重量%~35重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
15重量%~25重量%の、請求項1~10の少なくとも1つに記載の難燃剤混合物
(ここで、パーセントは、ポリマー組成物の全量を基準とする)。
【0039】
好ましくは、請求項11~18の少なくとも1つに記載のポリマー組成物は、国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数(CTI)を有する。
【0040】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、特に3.2mm~0.4mmの厚さの成形体で測定して、UL-94によるV-0の評価を達成する。
【0041】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、特に0.75~3mmの厚さの成形体で測定して、960℃以上のIEC60695-2-12に従うグローワイヤ燃焼性指数を有する。
【0042】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、少なくとも775℃のIEC-60695-2-13に従うグローワイヤ着火温度(GWIT)を有する。
【0043】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、フィラー、強化材および/またはさらに別の難燃剤である、さらに別の添加剤を含む。
【0044】
好ましくは、前記ポリマー組成物は、ガラス繊維を含む。
【0045】
本発明はまた、電気、エレクトロニクスおよび自動車産業における、食品分野における包装における、またはゲームおよび玩具分野における、成形コンパウンド、半完成品または最終製品としての、ラベルモチーフとしての、医療技術における、または動物の個々のラべリング用のプラスチックタグとしての、上記のポリマー組成物の使用に関する。
【0046】
本発明は同様に、印刷回路基板、ハウジング、箔、ワイヤー、スイッチ、分配器、継電器、抵抗器、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、コントローラ、記憶機器およびセンサの、大面積コンポーネント、特にスイッチギアーのハウジング部分の大面積コンポーネントの形態の、および要求の厳しい幾何形状を有する複雑な形状のコンポーネントの形態の部品の製造のための、本発明のポリマー組成物の使用に関する。
【0047】
より好ましくは、前記の熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物は、成分C)としてのホウ酸亜鉛またはスズ酸亜鉛、および成分D)としてのメラムまたはメレムを含む。
【0048】
好ましくは、前記ポリアミドは、15重量%~45重量%のガラス繊維を含む。
【0049】
好ましくは、成分A)はジエチルホスフィン酸亜鉛である。
【0050】
好ましくは、成分B)は、メラミンポリホスフェートまたは亜鉛メラミンホスフェートまたはカルシウムメラミンホスフェートである。
【0051】
好ましくは、成分C)はホウ酸亜鉛である。
【0052】
成分Eとして、式(II)のホスファイトを使用することが好ましい
P(OR (II)
(Rは、直鎖状、分岐状または環状のC-C18-アルキル、C-C18-アリール、C-C18-アリールアルキルおよび/またはC-C18-アルキルアリールである)。
【0053】
好ましくは、ホスホナイト(成分E))は、H. Zweifel (Ed.):“Plastics Additives Handbook”,第5版,Carl Hanser Verlag,ミュンヘン,2000,第108~122頁に記載されるような成分であり、特にSandostab(登録商標)P-EPQ、Irganox(登録商標)5057およびL118、Irgafos(登録商標)168、12および38の名称を有するものおよび他の化合物が含まれる。
【0054】
これらは、多くの場合に以下の一般構造を有する
R-[P(OR (III)
[式中、
Rは、一価または多価の脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族有機基であり、
は、構造(IV)の化合物であるか
【0055】
【化2】
または、2つのR基が式(V)の架橋基を形成する
【0056】
【化3】
ここで、
Aは、直接結合、O、S、C1-18-アルキレン(直線状または分岐状)、C1-18-アルキリデン(直線状または分岐状)であり、
は、独立に、C1-12-アルキル(直線状または分岐状)、C1-12-アルコキシおよび/またはC5-12-シクロアルキルであり、
nは0~5であり、そして
mは1~4である]。
【0057】
ホスファイトとホスホナイトとの混合物も使用してよい。
【0058】
好ましくは、成分F)は、14~40個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよび/または亜鉛塩を含み、および/または14~40個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸と多価アルコール、例えばエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリスリトールとの反応生成物を含む。
【0059】
本発明はさらに、プラグコネクタ、電力分配装置における電流接触部品(残留電流保護)、回路基板、ポッティングコンパウンド、プラグコネクタ、回路遮断器、ランプハウジング、LEDハウジング、コンデンサハウジング、印刷回路基板中もしくは上のコイル部品ベンチレータ、接地接触子、プラグ;プラグ用、ケーブル用、フレキシブル回路基板用、携帯電話充電用ケーブル用のハウジング、エンジンカバー、テクスタイルコーティング及び他の製品中におけるまたはこれらのための、難燃性ポリアミド組成物における本発明の難燃剤混合物の使用に関する。
【0060】
驚くべきことに、ポリアミド組成物における本発明の難燃剤混合物の使用が、良好な難燃作用(V-0、GWFIおよび特にGWIT)を改善された流動性、少ない腐食、高い熱安定性および高い耐衝撃性と組み合わせてもたらすことが見出された。ポリマー分解が防止されるかまたは非常に大きく減少し、型への付着および滲出は観察されない。さらに、本発明の難燃性ポリアミド組成物は、溶融物における加工の際に、(あるとしても)ほんのわずかな変色を示すだけである。
【0061】
熱可塑性ポリアミドは、Hans Domininghausの“Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften[ポリマーおよびそれらの特性]”,第5版(1998)第14頁に基づき、分子鎖が、側鎖を有しないか、またはある程度の長さの、種々の数の側鎖を有し、加熱すると軟化し、実質的に無限に成形可能なポリアミドである。
【0062】
好ましくは、脂肪族ポリアミドおよびコポリアミドは、ナイロン-12、ナイロン-4、ナイロン-4,6、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,9、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12、ナイロン-6,66、ナイロン-7,7、ナイロン-8,8、ナイロン-9,9、ナイロン-10,9、ナイロン-10,10、ナイロン-11、ナイロン-12などである。これらは、例えば、DuPontからのNylon(登録商標)、BASFからのUltramid(登録商標)、DSMからのAkulon(登録商標)、DuPontからのZytel(登録商標)、BayerからのDurethan(登録商標)、Ems ChemieからのGrillamid(登録商標)の商品名で知られている。
【0063】
好ましくは、m-キシレン、ジアミンおよびアジピン酸に由来する芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンジアミンおよびイソ-および/またはテレフタル酸および任意選択的に改質剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えば、ポリ-2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-テレフタルアミドまたはポリ-m-フェニレンイソフタルアミド、上記ポリアミドとポリオレフィン、オレフィン-コポリマー、イオノマーまたは化学的に結合またはグラフトしたエラストマー、またはポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマーもまた適切である。更に、EPDMもしくはABSで変性されたポリアミド類またはコポリアミド類;並びに加工中に縮合されたポリアミド(“RIM-ポリアミド系”)もある。
【0064】
ナイロン-6,6および1種または複数の半芳香族非晶質ポリアミドのブレンドも好ましい。
【0065】
ここで具体的に言及していない他の難燃剤または難燃剤相乗剤も使用することができる。特に窒素含有難燃剤、例えばメラミンシアヌレート、またはさらに別のリン系難燃剤、例えばアリールホスフェートまたは赤燐を使用することができる。さらに、脂肪族および芳香族スルホン酸の塩および鉱物性難燃性添加剤、例えば水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウム、カルシウムマグネシウムカーボネート水和物(例えばDE-A-4236122)も使用することができる。酸素-、窒素-または硫黄含有金属化合物、好ましくは、酸化亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化モリブデン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化亜鉛、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウムまたはこれらの混合物の群からの難燃剤相乗剤もまた有用である。
【0066】
適切なさらに別の難燃性添加剤は、好ましくは、炭素形成剤(charcoal formers)、より好ましくはポリアルコール類、例えばペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート類、ポリイミド類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類またはポリエーテルケトン類ならびに防滴剤(anti-dripping agents)、特にテトラフルオロエチレンポリマーである。
【0067】
難燃剤は、純粋な形態で、あるいはマスターバッチまたは圧縮物を介して添加してよい。
【0068】
好ましくは、上記の縮合メラミン化合物(成分C)は、メラムまたはメレムである。
【0069】
【化4】
本発明の難燃剤混合物を含む難燃性ポリアミド組成物は、さらなる好ましい実施態様において、少なくとも1種のフィラーまたは強化材を含むことができる。
【0070】
ここで、好ましくはタルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ類、ナノスケール鉱物、より好ましくはモンモリロナイト類またはナノベーマイト、炭酸マグネシウム、白亜、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズをベースとする、2種またはそれ以上の異なるフィラーおよび/または強化材、および/または炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとする繊維性フィラーおよび/または強化材の混合物も使用できる。タルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ類、炭酸マグネシウム、白亜、長石、硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーを使用することが好ましい。
【0071】
タルク、珪灰石、カオリンおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーを使用することが特に好ましい。
【0072】
さらに、針状鉱物性フィラーを使用することも特に好ましい。針状鉱物性フィラーは、本発明において、非常に顕著な針状特性を有する鉱物性のフィラーを意味すると理解される。例としては、針状珪灰石が挙げられる。好ましくは、上記の鉱物は、2:1~35:1、より好ましくは3:1~19:1、特に好ましくは4:1~12:1の長さと直径の比を有する。本発明において使用可能な針状鉱物の平均粒度は、CILAS粒度計で測定された場合に、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
【0073】
前記フィラーおよび/または強化材は、好ましい実施態様において、表面改質されていてもよく、好ましくは接着促進剤または接着促進剤系、より好ましくはシランベースの接着促進剤系を用いて表面改質されていてもよい。しかしながら、前処理は必ずしも必要ではない。特にガラス繊維を使用する場合、シラン類に加えて、ポリマー分散体、皮膜形成剤、分岐剤および/またはガラス繊維加工助剤も使用することができる。
【0074】
特に好ましく使用するためのガラス繊維(概して、7~18μm、好ましくは9~15μmの繊維直径を有する)は、連続繊維の形態で、またはチョップド・ガラスファイバーもしくはグラウンド・ガラスファイバー(ground glass fibers)の形態で添加される。これらの繊維は、適切なサイズ系および接着促進剤もしくは接着促進剤系(好ましくはシランをベースとする)を用いて変性されていてもよい。
【0075】
本発明の難燃剤混合物を含む難燃性ポリアミド組成物はまた、さらに別の添加剤を含むこともできる。本発明との関連において、好ましい添加剤は、酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料および顔料である。前記添加剤は、単独でまたは混合物においてまたはマスターバッチの形態で使用することができる。
【0076】
適切な酸化防止剤は、例えば、アルキル化モノフェノール類、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;アルキルチオメチルフェノール類、例えば2,4-ジオクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール;ヒドロキノン類およびアルキル化ヒドロキノン類、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;トコフェロール類、例えばα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールおよびそれらの混合物(ビタミンE);ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、例えば2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)、4,4’-ビス-(2,6-ジ-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-ジスルフィド;アルキリデンビスフェノール類、例えば2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール;O-、N-およびS-ベンジル化合物、例えば3,5,3’,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシジベンジルエーテル;ヒドロキシベンジル化マロネート類、例えばジオクタデシル-2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート;ヒドロキシベンジル芳香族類、例えば1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,4-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン、2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)フェノール;トリアジン化合物、例えば2,4-ビスオクチルメルカプト-6(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン;ベンジルホスホネート類、例えばジメチル-2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;アシルアミノフェノール類、4-ヒドロキシラウラミド(4-hydroxylauramide)、4-ヒドロキシステアラニリド(4-hydroxystearanilide)、N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)カルバミン酸オクチルエステル;β-(3.5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールのエステル;3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価または多価アルコールのエステル;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド類、例えばN,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンである。
【0077】
特に好ましくは、立体障害フェノールが単独でまたはホスファイト類と組み合わせて使用され、ここで、N,N’-ビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン(例えばBASF SE社、ルートヴィヒスハーフェン、独国のIrganox(登録商標)1098)の使用が特に好ましい。
【0078】
適切なUV吸収剤および光安定剤は、例えば、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-ヒドロキシベンゾフェノン類、例えば4-ヒドロキシ、4-メトキシ、4-オクトキシ、4-デシルオキシ、4-ドデシルオキシ、4-ベンジルオキシ、4,2’,4-トリヒドロキシ、2’-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ誘導体;任意選択的に置換された安息香酸のエステル、例えば4-tert-ブチルフェニルサリチレート、フェニルサリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス-(4-tert-ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル 3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;アクリレート類、例えばエチルもしくはイソオクチルα-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチルα-カルボメトキシシンナメート、メチルもしくはブチルα-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート、メチルα-カルボメトキシ-p-メトキシシンナメート、N-(β-カルボメトキシ-β-シアノビニル)-2-メチル-インドリンである。
【0079】
使用される着色剤は、好ましくは、無機顔料、特に二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、硫化亜鉛またはカーボンブラック、さらにまた有機顔料、好ましくはフタロシアニン類、キナクリドン類、ペリレン類、および染料、好ましくはニグロシンおよびアントラキノン類である。
【0080】
適切なポリアミド安定剤は、例えば、ヨウ化物および/またはリン化合物と組み合わせた銅塩、および2価のマンガンの塩である。
【0081】
適切な塩基性共安定剤は、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン類、ポリアミド類、ポリウレタン類、高級脂肪酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、リシノール酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、カテコール酸アンチモンまたはカテコール酸スズである。
【0082】
適切な核形成剤は、例えば、4-tert-ブチル安息香酸、アジピン酸およびジフェニル酢酸、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素、最も好ましくはタルクであるが、これらの列挙は非限定的である。
【0083】
使用される流動助剤は、好ましくは、少なくとも1つのα-オレフィンと、少なくとも1つの、脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマーである。ここで、α-オレフィンがエテンおよび/またはプロペンから構成され、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルがアルコール成分として6~20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキル基を含むコポリマーが特に好ましい。非常に特に好ましくは、(2-エチル)-ヘキシルアクリレートである。
【0084】
流動助剤として本発明において適切なコポリマーは、それらの組成だけでなく、それらの低い分子量も顕著である。従って、本発明に従って熱分解から保護されるべき組成物のための適切なコポリマーは、特に、190℃および2.16kgの負荷で、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、より好ましくは少なくとも300g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するコポリマーである。MFIは、熱可塑性物質の溶融物の流動に関する特性付けのために役立ち、ISO1133またはASTM D1238規格に従う。本発明との関連において、MFIおよび全てのMFIの数値は一律に、190℃での2.16kgの試験重量を用いるISO1133に関し、これに従って測定/決定された。
【0085】
使用されるための可塑剤は、好ましくは、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素油またはN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0086】
本発明はまた、射出成形または押出により本発明に記載の組成物から得ることができる生成物、好ましくは繊維、フィルムまたは成形体に関する。
【0087】
ホスフィン酸亜鉛(成分A))は、PCT/WO97/39053に記載されており、これは参照により明示的に組み込まれる。特に好ましいホスフィネート類は、ジメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸亜鉛、エチルブチルホスフィン酸亜鉛およびジブチルホスフィン酸亜鉛である。
【0088】
成分F)は、好ましくは、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛および/またはモンタン酸カルシウムを含む。
【0089】
好適な成分F)は、典型的にはC14~C40の鎖長を有する長鎖脂肪族カルボン酸(脂肪酸)のエステルまたは塩である。前記エステルは、上記カルボン酸と、標準的な多価アルコール、例えばエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールとの反応生成物である。上記のカルボン酸の有用な塩は、特に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩またはアルミニウムおよび亜鉛塩である。
【0090】
好ましい成分F)は、ステアリン酸のエステルまたは塩、例えばグリセリルモノステアレートまたはステアリン酸カルシウムである。
【0091】
成分F)にはまた、好ましくは、モンタンワックス酸とエチレングリコールとの反応生成物も含まれる。
【0092】
好ましくは、上記反応生成物は、エチレングリコール-モノ-モンタンワックス酸エステル、エチレングリコール-ジモンタンワックス酸エステル、モンタンワックス酸およびエチレングリコールの混合物である。
【0093】
好ましくは、成分F)にはまた、モンタンワックス酸とカルシウム塩の反応生成物も含まれる。
【0094】
より好ましくは、上記反応生成物は、1,3-ブタンジオール-モノ-モンタンワックスエステル、1,3-ブタンジオール-ジ-モンタンワックスエステル、モンタンワックス酸、1,3-ブタンジオール、カルシウムモンタネートおよびカルシウム塩の混合物である。
【0095】
請求項1~10のいずれか1つに記載の本発明の難燃剤混合物を含む本発明のポリアミド組成物は、好ましくは、0.4~3mmの試験片の厚さにおいて、IEC-60695-2-13に従う775℃以上のグローワイヤ着火温度(GWFI)を有する。
【0096】
上記添加剤は、種々の異なる工程ステップにおいてポリマーに導入することができる。例えば、ポリアミド類の場合、重合/重縮合の開始または終了時に、または後続のコンパウンディング操作において、上記添加剤をポリマー溶融物中に混合することが可能である。さらに、さらに後の段階まで添加剤を添加しない加工操作がある。これは特に、顔料または添加剤マスターバッチの使用の場合に実施される。また、添加剤(特に粉末状の)を、乾燥操作の結果として温かくてもよいポリマーペレットに、ドラムを使用して施与することも可能である。
【0097】
本発明は、最終的には、本発明の難燃性ポリマー成形組成物を、上昇させた温度での、射出成形(例えばAarburg Allrounderタイプの射出成形機)および圧縮、射出発泡成形、内部ガス射出成形、ブロー成形、フィルムキャスティング、カレンダー成形、ラミネート加工またはコーティングにより加工して、難燃性ポリマー成形体を得る、難燃性ポリマー成形体の製造方法にも関する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.以下:
成分A)として、30重量~55重量%の、式(I)のジアルキルホスフィン酸の亜鉛塩
【化5】
[式中、
およびR は、同一であるかまたは異なっており、直鎖状、分岐状または環状のC -C 18 -アルキル、C -C 18 -アリール、C -C 18 -アリールアルキルおよび/またはC -C 18 -アルキルアリールであり、そして、Mは亜鉛であり、そしてm=1~2である]、
成分B)として、45~70重量%の、メラミンとポリリン酸とのおよび/または縮合メラミンとポリリン酸との1種または複数の反応生成物、
成分C)として、0%~10%の、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ホウ酸マグネシウムおよび/またはスズ酸カルシウムである少なくとも1種のさらに別の無機難燃剤、
成分D)として、0重量%~20重量%の、1種または複数の、メラミンの縮合生成物、
成分E)として、0重量%~2重量%の少なくとも1種のホスファイトもしくはホスフィナイトまたはそれらの混合物、および
成分F)として、0重量%~2重量%の、少なくとも1種の、典型的にはC 14 ~C 40 の鎖長を有する長鎖脂肪族カルボン酸(脂肪酸)のエステルおよび/または塩、
を含み、前記成分の合計は常に100重量%である、熱可塑性ポリマー用難燃剤混合物。
2.以下:
35重量%~55重量%の成分A)、
45重量%~65重量%の成分B)、
0重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)
を含む、上記1に記載の難燃剤混合物。
3.以下:
38重量%~45重量%の成分A)、
45重量%~60重量%の成分B)、
2重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)
を含む、上記1または2に記載の難燃剤混合物。
4.以下:
37重量%~45重量%の成分A)、
53重量%~60重量%の成分B)、
2重量%~7重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
1重量%~2重量%の成分E)、および
0重量%~2重量%の成分F)
を含む、上記1~3のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
5.以下:
30重量%~54.7重量%の成分A)、
45重量%~70重量%の成分B)、
0.1重量%~10重量%の成分C)、
0重量%~20重量%の成分D)、
0.1重量%~2重量%の成分E)、および
0.1重量%~2重量%の成分F)
を含む、上記1に記載の難燃剤混合物。
6.以下:
30重量%~54.6重量%の成分A)、
45重量%~70重量%の成分B)、
0.1重量%~10重量%の成分C)、
0.1重量%~20重量%の成分D)、
0.1重量%~2重量%の成分E)、および
0.1重量%~2重量%の成分F)
を含む、上記1に記載の難燃剤混合物。
7.成分A)中のR およびR が、同一であるかまたは異なっており、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよび/またはフェニルである、上記1~6のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
8.成分D)が、メラム、メレムおよび/またはメロンである、上記1~7のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
9.成分D)がメレムである、上記1~8のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
10.成分G)としてテロマーをさらに含み、前記テロマーが、エチルブチルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、エチルヘキシルホスフィン酸、ブチルヘキシルホスフィン酸、エチルオクチルホスフィン酸、sec-ブチルエチルホスフィン酸、1-エチルブチルブチルホスフィン酸、エチル-1-メチルペンチルホスフィン酸、ジ-sec-ブチルホスフィン酸(ジ-1-メチルプロピルホスフィン酸)、プロピルヘキシルホスフィン酸、ジヘキシルホスフィン酸、ヘキシルノニルホスフィン酸、ジノニルホスフィン酸および/またはそれらの亜鉛塩であり;ただし、成分A)とG)は異なる、上記1~9のいずれか1つに記載の難燃剤混合物。
11.上記1~10のいずれか1つに記載の難燃剤混合物と、成分H)としての熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーとを含むポリマー組成物。
12.前記熱可塑性ポリマーがポリアミドおよび/またはポリエステルを含む、上記11に記載のポリマー組成物。
13.ポリアミド(PA)がPA6、PA6,6、PA4,6、PA12、PA6,10、PA6T/66、PA6T/6、PA4T、PA9T、PA10T、ポリアミドコポリマー、ポリアミドブレンドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記11または12に記載のポリマー組成物。
14.ポリアミドがナイロン-6,6、またはナイロン-6,6およびナイロン-6のコポリマーもしくはポリマーブレンドである、上記11~13のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
15.ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPBTおよびPETのブレンド、またはポリエステルエラストマーである、上記11~14のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
16.以下:
1重量%~96重量%のポリマー
0重量%~50重量%のフィラーおよび/または強化材、および
3重量%~35重量%の、上記1~10のいずれか1つに記載の難燃剤混合物
を含み、ただし、上記パーセントはポリマー組成物の全量を基準とする、上記11~15のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
17.以下:
15重量%~75重量%のポリマー
15重量%~45重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
10重量%~25重量%の、上記1~10のいずれか1つに記載の難燃剤混合物
を含み、ただし、上記パーセントはポリマー組成物の全量を基準とする、上記11~16のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
18.以下:
35重量%~65重量%のポリマー
25重量%~35重量%のフィラーおよび/または強化材、ならびに
15重量%~25重量%の、上記1~10のいずれか1つに記載の難燃剤混合物
を含み、ただし、上記パーセントはポリマー組成物の全量を基準とする、上記11~17のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
19.国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数を有する、上記11~18のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
20.特に3.2mm~0.4mmの厚さの成形体で測定して、UL-94によるV-0の評価を達成する、上記11~19のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
21.特に0.75~3mmの厚さの成形体で測定して、960℃以上のIEC60695-2-12に従うグローワイヤ燃焼性指数を有する、上記11~20のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
22.少なくとも775℃のIEC60695-2-13に従うグローワイヤ着火温度(GWIT)を有する、上記11~21のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
23.酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、フィラー、強化材および/またはさらに別の難燃剤である、成分Hとしてのさらに別の添加剤を含む、上記11~22のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
24.ガラス繊維を含む、上記11~23のいずれか1つに記載のポリマー組成物。
25.電気、エレクトロニクスおよび自動車産業における、食品分野における包装における、またはゲームおよび玩具分野における、成形コンパウンド、半完成品または最終製品としての、ラベルモチーフとしての、医療技術における、または動物の個々のラべリング用のプラスチックタグとしての、上記11~24のいずれか1つに記載のポリマー組成物の使用。
26.印刷回路基板、ハウジング、箔、ワイヤー、スイッチ、分配器、継電器、抵抗器、コンデンサ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、コントローラ、記憶機器およびセンサの、大面積コンポーネント、特にスイッチギアー用のハウジング部分の大面積コンポーネントの形態の、および要求の厳しい幾何形状を有する複雑な形状のコンポーネントの形態の部品の製造のための、上記11~24のいずれか1つに記載のポリマー組成物の使用。
【実施例
【0098】

1.使用した成分
市販のポリアミド:
ナイロン-6,6(PA 6,6-GR):Ultramid(登録商標)A27(BASF SE(ドイツ)から)
ナイロン-6:Ultramid(登録商標)B27(BASF SE(ドイツ)から)
ナイロン-6T/6,6:Vestamid(登録商標)HTplus M1000(Evonik(ドイツ)から)
ナイロン-10T:Vestamid(登録商標)HTplus M3000(Evonik(ドイツ)から)
10μm直径および4.5mmの長さを有するPPG HP3610ガラス繊維(PPG社(オランダ)から)
難燃剤(成分A)):
ジエチルホスフィン酸の亜鉛塩(以後、DEPZNとも呼ぶ)
比較のために:
ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩(以下DEPALと呼ぶ)
難燃剤(成分B)):
B1:メラミンポリホスフェート、Melapur(登録商標)200/70(BASF AG(D)から)(MPPと呼ぶ)
B2:亜鉛メラミンホスフェート、Safire(登録商標)400(Huber(USA)から)
難燃剤(成分C)):
C1:Firebrake(登録商標)500ホウ酸亜鉛(Rio Tinto(USA)から)
C2:スズ酸亜鉛、Flamtard(登録商標)S(William Blythe(UK)から)
難燃剤(成分D)):
Delflam(登録商標)NFR(メレム)
ホスホナイト(成分E)):Sandostab(登録商標)P-EPQ(Clariant GmbH(ドイツ)から)
ワックス成分(成分F)):
Licowax(登録商標)E(Clariant Produkte (Deutschland) GmbH(ドイツ)から)(モンタンワックス酸のエステル)
【0099】
2.難燃性ポリアミド成形コンパウンドの製造、加工および試験
難燃剤成分を表に記載される比でホスホナイト、潤滑剤および安定剤と混合し、二軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE 27/44D)のサイドフィーダーを介して、260~310℃の温度でPA6,6に、または250~275℃でPA6に練り込んだ。ガラス繊維は、第2のサイドフィーダーを介して添加した。均質化したポリマーストランドを抜き取り、水浴で冷却し、引き続きペレット化した。
【0100】
十分に乾燥した後に、成形コンパウンドを射出成形機(Arburg 320 C Allrounder)において250~300℃の溶融温度で試験片に加工し、UL94試験(Underwriter Laboratories)を用いて難燃性を試験し、クラス付けした。
【0101】
UL94の耐火分類は以下のとおりである:
V-0:残炎時間が10秒を超えない、10回接炎した場合の全残炎時間が50秒以下、燃焼滴下物無し、試験片の完全な消費無し、接炎終了後の試験片の残燼時間が30秒を超えない。
V-1:接炎終了後の残炎時間が30秒を超えない、10回接炎した際の全残炎時間が250秒以下、接炎終了後の試験片の残燼時間が60秒を超えない、他の基準はV-0に関するとおり。
V-2:綿指示材が燃焼滴下物によって着火する。他の基準はV-1に関するとおり。
分類不能(ncl):耐火分類V-2を満たさない。
【0102】
グローワイヤ耐性を、IEC60695-2-12に従うGWFI(グローワイヤ燃焼性指数)グローワイヤ試験、およびIEC60695-2-13に従うグローワイヤ着火性試験GWIT(グローワイヤ着火温度)を使用して決定した。GWFI試験では、3つの試験片(例えば、60X60X1.5mmの形状のプレートを用いて)で550~960℃の温度でグローワイヤを用いて、残炎時間が30秒を超えず、試料が燃焼して落下しない最高温度を決定する。GWIT試験では、比較可能な測定手段で、グローワイヤ着火温度を記録し、これは3回の連続した試験においてグローワイヤの接触時間中に着火を起こさない最高グローワイヤ温度より25K高い(900℃~960℃の間では30K)。ここでは、着火を5秒以上の燃焼時間を有する炎として見なす。
【0103】
成形組成物の流動性は、275℃/2.16kgでメルトボリュームフローレート(MVR)を求めることにより測定した。より高いMVR値は、射出成形プロセスにおけるより良好な流動性を意味する。ただし、MVR値の顕著な増加はポリマー分解も示唆し得る。
【0104】
腐食は、プラーク法(plaque method)を用いて調べた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
DKI(ドイツプラスチック学会(ダルムシュタット))で開発されたプラーク法は、金属材料を比較評価するための、または可塑化成形コンパウンドの腐食および摩耗強度を比較評価するためモデル試験を提供する。この試験では、プラスチック溶融物の通過のための長さ12mm、幅10mmおよび0.1~最大1mmに調節可能な高さを有する長方形のギャップが形成するように、2つの試験片をノズル内に対で配置する(図1)。このギャップを通して、プラスチック溶融物を、可塑化ユニットから、ギャップ内での高い局部せん断応力およびせん断速度を生じさせながら押出す(または射出成形する)。
【0106】
摩耗の測定パラメータは、分析用A&D製電子天秤(Electronic Balance)を用いた試験片の秤量差によって0.1mgの差で決定される重量の減少である。試験片の質量は、腐食試験の前後に、ポリマー通過量25kgまたは50kgの各場合に測定した。
【0107】
所定の通過量(概して25または50kg)の後に、サンプルプラークを取り外し、付着しているプラスチックを物理的/化学的手段によって洗い落とす。物理的洗浄は、熱いプラスチック塊を柔らかい素材(綿)でのふき取りによる除去によって行われる。化学的洗浄は、試験片をm-クレゾール中で60℃に20分間加熱することによって行われる。沸騰後になおも付着しているプラスチック塊を、柔らかい綿パッドでふき取ることによって除去する。
【0108】
各シリーズの全ての試験は、別段の記載がない限り、比較可能性のために、同一条件(温度プログラム、スクリュー形状、射出成形パラメーター等)下で行った。
【0109】
本発明に従った難燃剤-安定剤混合物を使用した結果を例I1~I3に示す。全ての量は重量%として表し、難燃剤、添加剤および強化材を含めたポリマー成形コンパウンドを基準とする。
【0110】
【表1】
【0111】
ホスフィン酸亜鉛、メラミンポリホスフェートおよびホウ酸亜鉛の本発明の組み合わせのみが、0.4mmで燃焼性クラスUL94 V-0を達成し、同時に775℃超のGWITおよびCTI 600ボルト、少ない腐食、穏やかな滲出および65kJ/m超の衝撃強さ、10kJ/m超のノッチ付き衝撃強さを有するポリアミド成形コンパウンドをもたらす。
【0112】
対照的に、ホスフィン酸アルミニウムとメラミンポリホスフェートおよびホウ酸亜鉛との組み合わせは、明確な腐食および顕著な滲出、ならびにより低い衝撃強さおよびノッチ付き衝撃強さを示す。
【0113】
さらに、本発明の組み合わせを有するポリアミドは、射出成形において型への付着を示さず、一方で、比較例では200ショット後でさえ型への付着が起こり、これは型の洗浄を必要とする。
【0114】
【表2】
【0115】
全体として、本発明の組み合わせのみが、満たすべきパラメーター全てを達成する。
【0116】
【表3】
【0117】
ガラス繊維を含むナイロン-6においても、本発明の組み合わせのみが、満たすべきパラメーター全てを達成する。ここでは、本発明の調製物の射出成形においても、型への付着は観察されない。
図1