(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】減衰要素
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240918BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240918BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20240918BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240918BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240918BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B60K1/04
H01M50/249
H01M50/244 Z
F16F15/02 H
F16F7/00 F
B32B5/24 101
(21)【出願番号】P 2021564958
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2020062116
(87)【国際公開番号】W WO2020225126
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】102019111464.0
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513044337
【氏名又は名称】アドラー ペルツァー ホルディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Adler Pelzer Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ、フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】キアシュ、フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】タレッロ、マウリツィオ
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/146840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0153317(US,A1)
【文献】米国特許第05045085(US,A)
【文献】米国特許第04859546(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064707(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0003185(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0070710(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04232961(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/249
H01M 50/244
F16F 15/02
F16F 7/00
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性の被覆されたPUR発泡体(1)を備える、特に電気自動車のバッテリ/蓄電システム用の減衰要素(4)であって、前記粘弾性の被覆されたPUR発泡体は、
(a)20~65kg/m
3の範囲の密度を有し、
(b)0.2より大きい損失係数を有し
、
(d)前記発泡体(1)は、その表面全体にわたって不織布(2)で被覆されており、
(e)前記不織布(2)は、前記発泡体(1)から外方を向く側にコーティングされ、
(f)カバー継ぎ目、カバー屈曲部、及び/又はカバーリップ内にベント開口部(3)を有し、
(g)前記減衰要素(4)は、前記バッテリ/バッテリシステムと電気自動車
の自動車フロアとの間に25~75%の範囲で圧縮されるように配置される、減衰要素(4)。
【請求項2】
前記発泡体(1)を被覆する前記不織布(2)が、銅又はアルミニウムコーティングと、適切な場合には防食層とを有することを特徴とする、請求項1に記載の減衰要素(4)。
【請求項3】
前記発泡体(1)の加圧されていない初期厚さが、車体板金と前記バッテリ/蓄電システムとの間の間隙によって決定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の減衰要素(4)。
【請求項4】
前記発泡体の初期の加圧されていない厚さが、8~30mm、10~20mmの範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、バッテリ/バッテリシステムと自動車のフロアとの間に配置された減衰要素を提供することである。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102016207231号明細書が、従来技術において知られている。これは、自動車における高電圧エネルギー貯蔵装置の配置を開示しており、高電圧エネルギー貯蔵装置は、自動車の下部本体の領域に配置されフロア要素によって車両の上方向に底部において少なくとも部分的に被覆され、少なくとも1つの負荷分配要素が、高電圧エネルギー貯蔵装置とフロア要素との間に車両の上方向に配置された間隙に配置され、この負荷分配要素を介して、フロア要素を高電圧エネルギー貯蔵装置上に支持することができる。
【0003】
負荷分配要素は、変形発泡体及び/又は少なくとも1つのばね要素、特にばねレールである。この配置は、高電圧エネルギー貯蔵装置を衝突から保護することを意図している。変形発泡体は、特に金属発泡体である。
【0004】
さらに、例えば金属コーティングされた発泡体で作られたバッテリコーティングが、バッテリを保温するために従来技術において提案されている。しかし、バッテリは動作中にあまり温まらないので、カバーは熱を蓄えることができない。いずれの場合も、カバーは、保冷として機能することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、前述の従来技術と比較した本発明の課題は、バッテリ/蓄電システムと自動車のフロアとの間に配置され、バッテリ/蓄電システムの質量を自動車のフロアに結合し、板金振動を低減/減衰させる、特に電気自動車用の(振動)減衰要素を提供することである。バッテリ/蓄電システムが前壁(前方又は後方)に対して垂直に配置される自動車でも、本発明による減衰要素が使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施形態では、本発明の目的は、粘弾性PUR発泡体1を備える、特に電気自動車のバッテリ/蓄電システム用の減衰要素4であって、粘弾性PUR発泡体は、
(a)20~65kg/m3の範囲の密度を有し、
(b)0.2より大きい損失係数を有し、
(c)特に、OEMによって指定された燃焼挙動要件を満たしており、
(d)発泡体1は、その表面全体にわたって不織布2で被覆されており、
(e)不織布2は、発泡体1から外方を向く側にコーティングされ、
(f)カバー継ぎ目、カバー屈曲部、及び/又はカバーリップ内にベント開口部3を有し、
(g)この減衰要素4は、バッテリ/バッテリシステムと電気自動車の自動車フロアとの間に25~75%の範囲で圧縮されるように配置される、減衰要素4である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】乗用車が80km/hの一定速度で走行しているときの音響効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
腐食保護された方法で被覆された、拘束(圧縮)された発泡体1を車体板金とバッテリシステムとの間に挿入することによって、車体板金とのバッテリ質量の結合、したがってフロア板金の振動減衰をもたらす減衰要素は、従来技術では知られていない。
【0009】
本発明の意味における粘弾性は、部分的に弾性の、部分的に粘性の材料挙動を意味する。弾性部分は、基本的に自発的な限定された可逆的変形を引き起こすが、粘性部分は、圧力変形後に遅延した(時間依存の)回復挙動を引き起こし、したがって、粘弾性発泡体1は、良好な減衰特性を示す。
【0010】
発泡体1の初期厚さは、車体板金とバッテリ/蓄電システムとの間の間隙によって決定される。初期発泡体厚さは、8~30mm、好ましくは最大10~20mmの範囲である。
【0011】
不織布は、銅又はアルミニウムでコーティングされてもよく、任意選択により、特に片側に防食層でコーティングされてもよく、主に、電磁放射線を遮蔽するのにも又はこれにも同時に適したポリエステル又はポリアミドスパンボンド不織布である。
【0012】
したがって、本発明の核心は、バッテリ/蓄電システムの質量を車両のフロアに結合し、耐食性であり、それと同時に必要に応じて電磁放射を遮蔽し、板金振動を低減/減衰させる減衰要素4を提供することである。
【0013】
本発明の利点は、減衰要素4を正確に用いることによって、板金振動が低減され減衰され、したがって、市販のドラム防止ホイルの面積当たりの重量を低減又は省くことができ、したがって車両の全体的な重量を低減できることである。
【0014】
発泡体1の燃焼挙動の尺度は、例えば可燃性によって決定される。DIN75200は、米国規格FMVSS302(連邦自動車安全基準)から開発された。試験手順は実際には同一である。DIN75200は、試験設定及び燃焼試験の性能並びに燃焼速度の決定を単に説明しているにすぎず、一方でFMVSS302は、評価基準を追加的に指定している。規格は、車両内部の材料の燃焼挙動を試験するために開発された。
【実施例】
【0015】
市販の粘弾性PUR発泡体1(密度35kg/m3、損失係数0.4、厚さ20mm、FMVSS302を満たす可燃性)からなる減衰要素を、化学結合ポリアミドスパンボンド不織布(80g/m2、コーティング:銅+防食層)で被覆した。ベント開口部3は、カバーの湾曲部に配置された。次いで、この減衰要素4を自動車両のフロアと乗用車のバッテリシステムとの間に配置した。発泡体1の圧縮率は、40%であった。
【0016】
図2は、乗用車が80km/hの一定速度で走行しているときの音響効率を示す。これらの図は、減衰要素あり、なしの車室側で測定された車体板金の加速度レベルを示している。これらの図は、減衰要素あり、なしの、道路を80km/hの定速走行したときの車室側で測定した車体板金lの加速度レベルを示している。測定された3つの空間方向すべてにおいて、減衰要素によって著しい改善/レベル低下が引き起こされる。