(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240918BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240918BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240918BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/6554
H01M10/613
H01M50/242
(21)【出願番号】P 2022028194
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】松山 智
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0127349(US,A1)
【文献】特開2014-216298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/6554
H01M 10/613
H01M 50/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収納する内部空間、冷媒が流れる冷媒通路が形成された冷却プレート、および前記冷却プレートとともに前記内部空間を規定する側面部を含むケース部材と、
前記冷却プレートの前記冷媒通路への前記冷媒の入口部と、
前記冷却プレートの前記冷媒通路からの前記冷媒の出口部と、
前記入口部および前記出口部に接続される冷媒配管とを備え、
前記側面部は、第1の方向に直交する面の方向に延びる部分と、前記第1の方向に直交する第2の方向に直交する面の方向に延びる部分とを含み、
前記冷却プレートは、前記内部空間に面する第1部分と、前記ケース部材の前記側面部よりも外側に突出する第2部分とを含み、
前記冷却プレートの前記第1部分および前記第2部分は、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に直交する面の方向に延び、
前記冷却プレートの前記第2部分は、前記第1の方向または前記第2の方向において前記ケース部材の前記側面部よりも外側に突出し、
前記冷媒の前記入口部および前記出口部は
前記冷却プレートの前記第2部分に接続され、
前記冷媒配管は、前記側面部に沿って延びる部分を有する、電池パック。
【請求項2】
前記ケース部材の前記側面部は、前記内部空間に対して反対側に設けられた補強リブを有し、
前記補強リブは、前記冷媒配管を支持する支持部を含む、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記複数の電池セルは
、前記第1の方向に配列され、
前記第2の方向に並ぶ複数の電極端子を各々含み、
前記補強リブは、
前記第3の方向、または前記第3の方向に対して斜めに交差する方向に延びる、
請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記複数の電池セルに対して前記第1の方向の両側に位置する前記ケース部材の前記側面部に前記補強リブが設けられる、
請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記ケース部材の前記側面部は、前記複数の電池セルを前記第1の方向に支持する、
請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記補強リブは、前記ケース部材の前記側面部と同じ素材からなる、
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記冷却プレートの前記冷媒通路は、前記第2部分に位置する屈曲部を有する、請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックに冷却プレートを設け、その冷却プレートに冷媒を流すことにより、ケース部材に収納された電池セルを冷却することが従来から行われている。たとえば、国際公開第2015/146387号(特許文献1)には、比重が相対的に大きい第1冷媒と比重が相対的に小さい第2冷媒とを用いた電池の冷却構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水をはじめとする冷媒が流れる冷媒通路を電池パックのケース部材の内部空間に導入した場合、ジョイント部分などにおいて漏液が発生したときに、ケース内部が浸水することになる。ケース内部の浸水の回避という観点から、従来の電池パックにはなお改善の余地がある。
【0005】
本技術の目的は、ケース部材の内部への浸水を防ぐことができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る電池パックは、複数の電池セルと、複数の電池セルを収納する内部空間、冷媒が流れる冷媒通路が形成された冷却プレート、および冷却プレートとともに内部空間を規定する側面部を含むケース部材と、冷却プレートの冷媒通路への冷媒の入口部と、冷却プレートの冷媒通路からの冷媒の出口部と、入口部および出口部に接続される冷媒配管とを備える。冷却プレートは、内部空間に面する第1部分と、ケース部材の側面部よりも外側に突出する第2部分とを含む。冷媒の入口部および出口部は第2部分に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、電池パックにおいて、ケース部材の内部の浸水を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】電池セルおよび電池セルを収納するケース部材を示す斜視図である。
【
図3】電池パックのケース部材(蓋部分を除く)を示す斜視図である。
【
図5】冷却プレートの冷媒通路への冷媒の入口部および出口部の変形例を示す図である。
【
図6】冷却プレートにおける冷媒通路の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0012】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。
【0014】
本明細書において、「電池セル」は必ずしも角型のものに限定されず、円筒型、パウチ型、ブレード型など、他の形状のセルも含み得る。「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0015】
図1は、電池セル100を示す斜視図である。
図1に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120と、ガス排出弁130とを有する。
【0016】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0017】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0018】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。
【0019】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0020】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0021】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0022】
ガス排出弁130は、上面121に設けられている。ガス排出弁130は、電池セル100の温度が異常に上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0023】
図2,
図3は、電池セル100を収納するケース部材200を示す斜視図である。
図2,
図3においては、図示の便宜上、後述するケース部材200の蓋部分を示していない。
【0024】
図2,
図3に示すように、ケース部材200は、内部空間200Aと、底面部材210と、冷却プレート220と、側面部材230と、補強リブ240とを含む。
【0025】
内部空間200Aには、Y軸方向に積層された複数の電池セル100の積層体(組電池)が収納される。組電池は、X軸方向に三列並ぶように設けられる。冷却プレート220および側面部材230は、内部空間200Aを規定する。
【0026】
底面部材210および冷却プレート220は、ケース部材200の底部を構成する。底面部材210上に冷却プレート220が設けられる。冷却プレート220は、内部空間200Aに面する第1部分221と、第1部分221よりも外側に位置し、内部空間200Aに面しない第2部分222とを含む。
【0027】
側面部材230は、上フランジ部231(第1フランジ)と、下フランジ部232(第2フランジ)と、側面部233(フレーム部)とを含む。冷却プレート220の第2部分222は、側面部材230の下フランジ部232と底面部材210とに挟持される。側面部材230の側面部233は、ケース部材200の側面を構成する。側面部233は、Y軸方向に直交する方向に延びる部分と、X軸方向に直交する方向に延びる部分とを含む。側面部233は、上フランジ部231と下フランジ部232とを接続する。上フランジ部231(第1フランジ)、下フランジ部232(第2フランジ)、および側面部233(フレーム部)は、コ字状の断面を構成する。電池セル100の積層体(セパレータを含む)に対してY軸方向の両側に位置し、Y軸方向に直交する方向に延びる側面部233は、電池セル100の積層体を直接支持する(Cell-to-Pack構造)。
図3中の側面部233のα部において、電池セル100の積層体が側面部233に当接する。
【0028】
ただし、ケース部材200は、側面部233が電池セル100の積層体を直接支持するものに限定されず、複数の電池セル100を含む電池モジュールを収納するもの(Cell-Module-Pack構造)であってもよい。
【0029】
補強リブ240は、Y軸方向に直交する方向に延びる側面部233上に設けられている。補強リブ240は、X軸方向に直交する方向に延びる側面部233上に設けられてもよい。補強リブ240は、Z軸方向に延びるように設けられている。補強リブ240は、Z軸方向に対して斜めに交差する方向に延びるように設けられていてもよい。
【0030】
Y軸方向に直交する方向に延びる側面部233上において、補強リブ240は、X軸方向に並ぶように複数設けられている。補強リブ240は、単数であってもよい。
【0031】
側面部233上において、補強リブ240は、Z軸方向の全体に亘って延びている。補強リブ240は、Z軸方向の一部に亘って設けられていてもよい。
【0032】
下フランジ部232は、冷却プレート220の第2部分222に当接する。上フランジ部231は、側面部材230の上端部、すなわち冷却プレート220に対してZ軸方向の反対側の端部に形成されている。上フランジ部231は、冷却プレート220の第2部分222および下フランジ部232に対してZ軸方向に沿って離間し、かつ第2部分222および下フランジ部232と平行に形成される。上フランジ部231は、側面部233から冷却プレート220の第2部分222および下フランジ部232と同じ方向に突出する。冷却プレート220の第2部分222は、側面部材230の側面部233よりも外側に突出する。
【0033】
補強リブ240は、上フランジ部231から下フランジ部232に達するように形成される。補強リブ240は、側面部材230と同じ素材からなるものであってもよいし、側面部材230と異なる素材からなるものであってもよい。補強リブ240は、たとえば鋼板からなるものであってもよいし、アルミニウムからなるものであってもよいし、樹脂からなるものであってもよい。補強リブ240は、上フランジ部231および下フランジ部232に接合される。この接合は、たとえば溶接などにより行われる。
【0034】
図4は、電池パックの外観図である。
図4に示すように、側面部材230に蓋部材250が組み付けられてケース部材200の内部空間200Aが密閉される。電池パックは、入口部300と、出口部400と、冷媒配管500とを含む。冷却プレート220の内部に形成された冷媒通路には、冷媒配管500を通じて入口部300から冷媒が供給され、出口部400から冷媒配管500を通じて冷媒が排出される。冷媒には水が使用されるが、これに限定されない。
【0035】
冷媒配管500は、側面部233に沿って延びるように設けられる。冷媒配管500は補強リブ240に設けられた支持部2400に支持される。支持部2400は、補強リブ240に設けられた貫通孔により構成され得る。
【0036】
図5は、入口部300および出口部400の変形例を示す図である。
図4に示す例では、入口部300および出口部400に対して斜め方向から冷媒配管500が接続されるのに対し、
図5に示す例では、入口部300および出口部400の近傍において冷媒配管500が湾曲し、入口部300および出口部400に対してZ軸方向から冷媒配管500が接続される。なお、入口部300および出口部400が略L字状に形成され、Z軸に対して斜めに交差する方向から冷媒配管500が入口部300および出口部400に接続されてもよい。
【0037】
図4,
図5いずれの例においても、冷媒配管500は、X-Z平面上において、X軸およびZ軸に対して斜めに交差する方向に延びる。X軸およびZ軸に対する冷媒配管500の傾斜角度は、側面部233上において一定であってもよいし、側面部233上において変化してもよい。
【0038】
図6は、冷却プレートにおける冷媒通路の配置を示す図である。
図7は、
図6におけるVII-VII断面図である。
図6に示すように、冷却プレート220の第2部分222に配置された入口部300から冷却プレート220内に流入した冷媒は、第1流路220A内を矢印DR1方向に流れ、冷却プレート220の第1部分221を通過した後、入口部300とは反対側に位置する第2部分222に達する。
【0039】
冷却プレート220の第2部分222には、第1流路220Aに交差(直交)する第2流路220Bが形成されている。第1流路220Aと第2流路220Bとの間には、屈曲部が形成されている。すなわち、冷却プレート220の冷媒通路は、第2部分222に位置する屈曲部を有する。第2流路220Bの外側には、蓋220Cが溶接により接合される。これにより、冷却プレート220の冷媒通路が閉じられ屈曲部が形成される。冷却プレート220は、ボルト220Dを用いて側面部材230の下フランジ部232と接合される。
【0040】
冷却プレート220の第2部分222において折り返された(Uターンした)冷媒は、第1流路220Aを矢印DR2方向に流れ、冷却プレート220の第1部分221を通過した後、入口部300と同じ側の第2部分222に位置する出口部400に達する。
【0041】
図7に示すように、冷却プレート220は、第1流路220Aとなる連通孔が形成された押出材を加工して構成され得る。
【0042】
図8は、冷媒配管500の支持部2400の拡大図である。
図8の例では、支持部2400は、補強リブ240に設けられた略円形の貫通穴により構成される。貫通穴の形状は適宜変更が可能である。支持部2400と冷媒配管500との接触部にクッション材を設けてもよい。
【0043】
本実施の形態に係る電池パックにおいては、入口部300および出口部400がケース部材200の内部空間200Aに面しない第2部分222に設けられているため、入口部300および出口部400において漏液が発生したときにおいても、ケース部材200の内部空間200Aが浸水することを防ぐことができる。また、冷媒配管500が補強リブ240に支持されるため、冷媒配管500の意図しない変形を抑制することができる。この結果、冷媒配管500の破損を抑制することができる。なお、補強リブ240は必ずしも設けられなくてもよい。
【0044】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 ガス排出弁、200 ケース部材、200A 内部空間、210 底面部材、220 冷却プレート、220A 第1流路、220B 第2流路、220C 蓋、220D ボルト、221 第1部分、222 第2部分、230 側面部材、231 上フランジ部、232 下フランジ部、233 側面部、240 補強リブ、250 蓋部材、300 入口部、400 出口部、500 冷媒配管、2400 支持部。