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特許7556905正極活物質、正極およびリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】正極活物質、正極およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240918BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240918BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022036834
(22)【出願日】2022-03-10
(65)【公開番号】P2023131850
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶一
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/059857(WO,A1)
【文献】特開2017-084628(JP,A)
【文献】特開2018-095523(JP,A)
【文献】特開2020-087879(JP,A)
【文献】国際公開第2021/025479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1粒子群と第2粒子群とを含む正極活物質であって、
前記第1粒子群は、複数個の第1粒子からなり、
前記第1粒子は、1個から10個の単粒子を含み、
前記単粒子は、0.5μm以上の第1最大径を有し、
前記第1最大径は、前記単粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示し、
前記第2粒子群は、複数個の第2粒子からなり、
前記第2粒子は、凝集粒子を含み、
前記凝集粒子は、50個以上の一次粒子が凝集することにより形成されており、
前記一次粒子は、0.5μm未満の第2最大径を有し、
前記第2最大径は、前記一次粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示し、
前記単粒子は、リチウムを除く金属元素に対するニッケル比率が70mol%以上であり、
前記一次粒子は、リチウムを除く金属元素に対するニッケル比率が75mol%以上であり、
前記凝集粒子は内部において、前記一次粒子界面にリチウム含有金属酸化物を含み、
前記凝集粒子は、空隙率が2%以上8%以下であり、
前記第1粒子群と前記第2粒子群との質量比は、20:80~50:50である、正極活物質。
【請求項2】
前記単粒子および前記一次粒子は、ニッケル、コバルトおよびマンガン含有化合物を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記凝集粒子の破壊強度は150MPa以上である、請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム含有金属酸化物は、タングステン酸リチウム、ジルコン酸リチウム、チタン酸リチウム、アルミン酸リチウムおよびホウ酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
正極活物質層と基材とを含む正極であって、前記正極活物質層は、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項6】
請求項5に記載の正極を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質に関し、さらには正極およびリチウムイオン電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2020-087879号公報)には、単粒子と、表面をタングステン酸リチウムやホウ酸リチウムで被覆した凝集粒子とをブレンドして活物質の円形度分布をバイモーダル(2山分布)とすることにより、充填密度を向上させた混合活物質を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-087879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空隙を形成した凝集粒子を含む正極活物質を用いた正極板は、サイクル特性に優れるものの、充填密度を3.7g/cm以上とすると粒子が割れ、サイクル後の容量維持率が低下する場合がある。空隙を形成した凝集粒子を単粒子とブレンドした場合でも、3.65g/cmまでしか充填密度を上げられず、所望のエネルギー密度が得られない場合がある。また、特許文献1の記載の凝集粒子は再加熱による結晶成長により空隙が消滅する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、充填密度が高い(例えば3.7g/cm以上)正極活物質であって、サイクル特性の優れたリチウムイオン電池が得られる正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の正極活物質、正極およびリチウムイオン電池を提供する。
[1] 第1粒子群と第2粒子群とを含む正極活物質であって、
前記第1粒子群は、複数個の第1粒子からなり、
前記第1粒子は、1個から10個の単粒子を含み、
前記単粒子は、0.5μm以上の第1最大径を有し、
前記第1最大径は、前記単粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示し、
前記第2粒子群は、複数個の第2粒子からなり、
前記第2粒子は、凝集粒子を含み、
前記凝集粒子は、50個以上の一次粒子が凝集することにより形成されており、
前記一次粒子は、0.5μm未満の第2最大径を有し、
前記第2最大径は、前記一次粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示し、
前記単粒子は、リチウムを除く金属元素に対するニッケル比率が70mol%以上であり、
前記一次粒子は、リチウムを除く金属元素に対するニッケル比率が75mol%以上であり、
前記凝集粒子は内部において、前記一次粒子界面にリチウム含有金属酸化物を含み、
前記凝集粒子は、空隙率が2%以上8%以下であり、
前記第1粒子群と前記第2粒子群との質量比は、20:80~50:50である、正極活物質。
[2] 前記単粒子および前記一次粒子は、ニッケル、コバルトおよびマンガン含有化合物を含む、[1]に記載の正極活物質。
[3] 前記凝集粒子の破壊強度は150MPa以上である、[1]または[2]に記載の正極活物質。
[4] 前記リチウム含有金属酸化物は、タングステン酸リチウム、ジルコン酸リチウム、チタン酸リチウム、アルミン酸リチウムおよびホウ酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれかに記載の正極活物質。
[5] 正極活物質層と基材とを含む正極であって、前記正極活物質層は、[1]~[4]のいずれかに記載の正極活物質を含む、正極。
[6] [5]に記載の正極を含む、リチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充填密度が高い(例えば3.7g/cm以上)正極活物質であって、サイクル特性の優れたリチウムイオン電池が得られる正極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本実施形態における凝集粒子の概念図である。
図2図2は本実施形態におけるリチウムイオン電池の一例を示す概略図である。
図3図3は本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。
図4図4は本実施形態における正極を示す概念図である。
図5図5は空隙率が0%であるときの凝集粒子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0010】
<正極活物質>
正極活物質は、第1粒子群と第2粒子群とを含む。正極活物質は、実質的に、第1粒子群と第2粒子群とからなっていてもよい。正極活物質は、第1粒子群と第2粒子群とからなっていてもよい。第1粒子群は第1粒子の集合体である。第2粒子群は第2粒子の集合体である。第1粒子は、第2粒子と異なる粒子構造を有する。本実施形態の正極活物質は、リチウムイオン電池用であることができる。リチウムイオン電池の詳細は後述される。
【0011】
第1粒子群は、複数個の第1粒子からなる。第1粒子は、任意の形状を有し得る。第1粒子は、例えば球状、柱状、塊状等であってもよい。第1粒子は、1個から10個の単粒子を含む。単粒子は、相対的に大きく成長した一次粒子である。単粒子は単独で第1粒子を形成していることもある。2個から10個の単粒子が凝集することにより第1粒子を形成していることもある。
【0012】
本実施形態における「単粒子」は、粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像において、外観上、粒界が確認できない粒子であり、かつ0.5μm以上の第1最大径を有する粒子を示す。第1最大径は、単粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。本実施形態において「粒子の輪郭線」は、粒子の二次元投影像において確認されてもよいし、粒子の断面像において確認されてもよい。粒子の輪郭線は、例えば、粉体のSEM画像において確認されてもよいし、粒子の断面SEM画像において確認されてもよい。
【0013】
単粒子は0.5μm以上の第1最大径を有し、好ましくは1μmから7μmの第1最大径、より好ましくは2μmから5μmの第1最大径を有していてもよい。
【0014】
第2粒子群は、複数個の第2粒子からなる。第2粒子は、任意の形状を有し得る。第2粒子は、例えば、球状、柱状、塊状等であってもよい。第2粒子は、凝集粒子を含む。第2粒子は、例えば実質的に凝集粒子からなっていてもよい。第2粒子は、例えば凝集粒子からなっていてもよい。凝集粒子は、50個以上の一次粒子が凝集することにより形成されている。
【0015】
凝集粒子は、例えば100個以上の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。凝集粒子において一次粒子の個数に上限はない。凝集粒子は、例えば10000個以下の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。凝集粒子は、例えば1000個以下の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。凝集粒子は、任意の形状を有し得る。凝集粒子は、例えば球状、柱状、塊状等であってもよい。
【0016】
一次粒子は、粒子のSEM画像において、外観上、粒界が確認できない粒子であり、かつ0.5μm未満の第2最大径を有する粒子を示す。第2最大径は、一次粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。一次粒子は、0.05μmから0.5μmの第2最大径、好ましくは0.05μmから0.3μmの第2最大径を有する。1個の凝集粒子のSEM画像から無作為に抽出された10個以上の一次粒子が0.05μmから0.3μmの第2最大径を有する時、該凝集粒子に含まれる一次粒子の全てが0.05μmから0.3μmの第2最大径を有するとみなされる。一次粒子は、例えば0.1μmから0.3μmの第2最大径を有していてもよい。
【0017】
本明細書において、第1粒子に含まれる単粒子の個数および凝集粒子に含まれる一次粒子の個数は、第1粒子および凝集粒子のSEM画像において測定される。SEM画像の拡大倍率は、粒子のサイズに応じて適宜調整される。SEM画像の拡大倍率は、例えば10000倍から30000倍であってもよい。
【0018】
第1粒子(単粒子)および第2粒子(一次粒子)はニッケルを含有する。第1粒子(単粒子)および第2粒子(一次粒子)中のリチウムを除く金属元素に対するニッケル比率はそれぞれ70mol%以上および75mol%以上であり、それぞれ好ましくは70mol%以上および75mol%以上である。第1粒子(単粒子)および第2粒子(一次粒子)のいずれか一方または両方は、例えばニッケル、コバルトよびマンガン含有化合物を含んでよく、好ましくはニッケルコバルトマンガン複合水酸化物、より好ましくはリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば共沈法等により得られるものであってよい。ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物は、例えば一般式:NiCoMn(OH)(式中、x+y+z=1)で表される化合物であってよい。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、リチウムとニッケル、コバルトおよびマンガンとのモル比が例えば1.0~1.2:1.0であることができる。
【0019】
単粒子は、例えば、第1層状金属酸化物を含んでいてもよい。
第1層状金属酸化物は、式(1):
Li1-a1Nix1Me1 1-x12 (1)
によって表される。
式(1)中、
「a1」は、「-0.3≦a1≦0.3」の関係を満たす。
「x1」は、0.7≦x1<1.0の関係を満たす。
「Me1」は、Co、Mn、Al、Zr、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mo、
Sn、Ge、Nb、およびWからなる群より選択される少なくとも1種を示す。
【0020】
一次粒子は、例えば、第2層状金属酸化物を含んでいてもよい。
第2層状金属酸化物は、式(2):
Li1-a2Nix2Me2 1-x22 (2)
によって表される。
式(2)中、
「a2」は、「-0.3≦a2≦0.3」の関係を満たす。
「x2」は、0.75≦x2≦1.0の関係を満たす。
「Me2」は、Co、Mn、Al、Zr、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mo、
Sn、Ge、Nb、およびWからなる群より選択される少なくとも1種を示す。
【0021】
式(1)および(2)中、例えば「x1<x2」の関係が満たされていてもよい。
【0022】
例えば、単粒子は、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、およびLiNi0.7Co0.1Mn0.22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、一次粒子は、LiNi0.8Co0.1Mn0.12を含んでいてもよい。
【0023】
例えば、単粒子および一次粒子の両方が、実質的にLiNi0.8Co0.1Mn0.12からなっていてもよい。
【0024】
凝集粒子は内部において、一次粒子界面にリチウム含有金属酸化物を含む。凝集粒子が内部における一次粒子界面にリチウム含有金属酸化物を含むことにより電池の耐久性が向上し易くなる傾向にある。リチウム含有金属酸化物としては、例えばタングステン酸リチウム、ジルコン酸リチウム、チタン酸リチウム、アルミン酸リチウムおよびホウ酸リチウムからなる群から選択される少なくとも一種である。中でもホウ酸リチウムが好ましい。
【0025】
凝集粒子は、表面全体がリチウム含有金属酸化物で被覆されていてよいし、第2粒子(一次粒子)の表面がリチウム含有金属酸化物で被覆されていてもよい。また、第1粒子(単粒子)の表面がリチウム含有金属酸化物で被覆されていてもよい。
【0026】
凝集粒子は、空隙率が2%以上8%以下である。凝集粒子が上記範囲の空隙率を有することにより、一次粒子界面にリチウム含有金属酸化物を含み易くなり、粒子破壊強度の低下が抑制され易くなる傾向にある。凝集粒子の空隙率は好ましくは2%以上6%以下である。凝集粒子の粒子破壊強度は例えば149MPa以上であってよく、好ましくは150MPa以上、154MPa以下である。凝集粒子の空隙率および粒子破壊強度は後述の実施例の欄において説明する方法にしたがって求められる。
【0027】
凝集粒子は、例えば水酸化リチウム等のリチウム源と、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物とを混合し、焼成することにより凝集構造を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得た後、これに金属酸化物を添加して熱処理を行う方法等が挙げられる。空隙率は焼成温度や熱処理温度を調節することにより上記範囲とすることができる。第1粒子(単粒子)は、例えば上記凝集構造を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物をジェットミルなどを用いて乾式粉砕し乾燥することで得られる。
【0028】
図1に凝集粒子の概略断面図を示す。図1に示す凝集粒子10は、複数の凝集粒子は複数の一次粒子11からなる。凝集粒子10はリチウム含有金属酸化物12で被覆されている。凝集粒子10は内部に空隙13を有する。凝集粒子10は内部において一次粒子11界面にリチウム含有金属酸化物12を含む。
【0029】
第1粒子群と第2粒子群との質量比は20:80~50:50である。第1粒子群と第2粒子群との質量比が上記範囲であることにより、電池の耐久性が向上し易くなる傾向にある。第1粒子群と第2粒子群との質量比は好ましくは20:80~30:70である。
【0030】
<リチウムイオン電池>
図2は、本実施形態におけるリチウムイオン電池の一例を示す概略図である。図2に示す電池100は、リチウムイオン電池である。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源等の車載用角型リチウムイオン電池であってよい。
【0031】
電池100は、外装体90を含む。外装体90は、電極体50および電解質(不図示)を収納している。電極体50は、正極集電部材81によって正極端子91に接続されている。電極体50は、負極集電部材82によって負極端子92に接続されている。図3は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。電極体50は巻回型である。電極体50は、正極20、セパレータ40および負極30を含む。すなわち電池100は正極20を含む。正極20は、正極活物質層22と正極基材21とを含む。負極30は、負極活物質層32と負極基材31とを含む。
【0032】
<正極>
図4に示すように正極20は、正極活物質層22が正極基材21の片面にのみ直接的に形成されていてもよい。正極活物質層22と正極基材21との間に介在層(不図示)が形成されていてもよい。正極活物質層22が正極基材21の両面に形成されていてよい。正極基材21は、例えばAl合金箔、純Al箔等からなる導電性のシートであってよい。
【0033】
正極活物質層22は第1粒子14と第2粒子15とを含む正極活物質を含む。第1粒子14は単粒子を含む。第2粒子15は凝集粒子を含む。正極活物質層22は、正極活物質に加えて、導電材(不図示)およびバインダ(不図示)等をさらに含んでいてもよい。
【0034】
正極活物質層22は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層22は高密度を有し得る。正極活物質層22は、例えば3.7g/cm3以上の密度を有していてもよいし、3.8g/cm3以上の密度を有していてもよいし、3.9g/cm3以上の密度を有していてもよい。密度の上限は任意である。正極活物質層22は、例えば、4.0g/cm3以下の密度を有していてもよい。
【実施例
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0036】
[空隙率]
空隙率Vpは、マイクロメリティックス社製アキュピックII1340を用いて定容積膨張法に基づき正極活物質粉体の粒子密度Dpを測定し、同じ粉体の結晶格子定数より求めた理論密度D0を用いて、式:Vp=(1-Dp/D0)×100(%)に従い体積割合として求めた。
【0037】
[粒子破壊強度]
凝集粒子の破壊強度は、JIS Z 8844に準拠し、島津製作所製微小圧縮試験機MCT-501を用い、顕微鏡で観察しながら平均粒子径D50(=12μm)と同程度の大きさの凝集粒子1個を50μm径の平面圧子で押しこみ、その変位量と試験力から破壊挙動を示すs-sカーブを測定し、10回の測定の平均を求めることにより粒子破砕時の粒子破壊強度を求めた。
【0038】
[凝集構造の活物質A1の作製]
共沈により得られた、組成がNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を、大気中450℃で5時間一次熱処理して、酸化物とし、冷却後、水酸化リチウムと所定のLi/Me比になるように混合し、酸素雰囲気中770℃10時間で焼成処理し、凝集粒子構造のリチウム複合酸化物の粉体(活物質A1)を得た。活物質A1は内部に空隙が存在せず、空隙率が0%であった。図5に空隙率が0%であるときの凝集粒子の概略図を示す。
【0039】
[凝集構造の活物質A2の作製]
凝集粒子構造のリチウム複合酸化物の粉体(活物質A1)を1at%のホウ酸とともに混合し、200℃で3時間熱処理し、ホウ酸リチウムで被覆された活物質A2を得た。
【0040】
[凝集構造の活物質A3の作製]
共沈により得られた、組成がNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を、大気中450℃で1時間一次熱処理して、酸化物とし、冷却後、水酸化リチウムと所定のLi/Me比になるように混合し、酸素雰囲気中750℃10時間で焼成処理し、凝集粒子構造のリチウム複合酸化物を得た。得られた二次粒子構造の粉体の空隙率は、一次熱処理に応じて空隙率が5%の粉体が得られた。
【0041】
得られた凝集粒子構造の活物質粒子を1at%のホウ酸とともに混合し、300℃で3時間熱処理し、ホウ酸リチウムで被覆された活物質A3を得た。
【0042】
[凝集構造の活物質A4~A6の作製]
ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を、それぞれ500℃、550℃、および650℃で一次熱処理したこと以外は活物質A3の作製と同様にして凝集粒子構造のリチウム複合酸化物(A4~A6)を得た。得られた二次粒子構造の粉体の空隙率は、それぞれ2%、6%および12%の粉体であった。
【0043】
[凝集構造の活物質A7、A8の作製]
実施例1と同じ凝集粒子の表面にホウ酸リチウムの代わりにタングステン酸リチウムおよびアルミン酸リチウムを同様に被覆した活物質A7およびA8を作製した。
【0044】
[単粒子構造の活物質Bの作製]
共沈により得られた、組成がNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を500℃で焼成して、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Z1)を得た。
【0045】
次に、水酸化リチウムと、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Z1)を、Liと、Ni、CoおよびMnとの総量のモル比が、1.05:1になるように混合し、当該混合物にを酸素雰囲気中にて850℃で72時間焼成した後、ボールミルで湿式粉砕し乾燥後、単粒子構造とし、再度酸素雰囲気中にて750℃で10時間熱処理して単粒子構造のリチウム複合酸化物(B)を得た。なお、リチウム複合酸化物(B)の粒度分布を測定すると粒子径(D50)の値は3.3μmであり、SEMによりその構造を観察した結果、複合酸化物(B)はほぼ単粒子構造の粒子であり、その粒子径は2.3~3.5μmであった。
【0046】
<実施例1~6および比較例1~4>
[単粒子および凝集粒子の混合]
凝集構造の活物質A1~A8および単粒子構造の活物質Bを所定の重量比(混合比80:20)に秤りとり、ロッキングミキサーで均一混合し、正極活物質C1~C8を得た。同様に凝集構造の活物質A3と単粒子構造の活物質Bの混合比をそれぞれ10:90、50:50および60:40とした正極活物質C9~C11も作製した。
【0047】
[正極板の作製]
正極活物質C1~C11とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを96.3:2.5:1.2の固形分質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えた後、これを混練して正極合材スラリーを調製した。当該正極合材スラリーを1C32番の13μm厚みのアルミニウム箔芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延機を用いて塗膜の合材密度が3.7g/cm(実施例5のみ3.65)となるように圧縮し、所定の電極サイズに切断して、正極芯体の両面に正極合材層が形成された正極を得た。
【0048】
[リチウムイオン小型電池の作製]
上記の正極をセパレータを介してカーボン負極と対向させて、1.1MPF6のEC/EMC/DMC(343)+VC2%の電解液を注液し、小型ラミネート型電池を作製した。初期の充放電容量を25℃の恒温槽中で0.3Cレート4.2VCVCC充電2.5Vカット放電の条件で確認し、0.5Cレートの4.2VCVCC充電、3.0VCC放電のサイクル条件で、1000サイクル充放電し、再び0.3Cレートでの充放電試験から放電容量をもとめ、初期の容量値と比較して容量維持率を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【符号の説明】
【0050】
10,60 凝集粒子、11 一次粒子、12 リチウム含有金属酸化物、13 空隙、14 第1粒子、15 第2粒子、20 正極、21 正極基材、22 正極活物質層、30 負極、31 負極基材、32 負極活物質層、40 セパレータ、50 電極体、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 外装体、91 正極端子、92 負極端子、100 電池(リチウムイオン電池)。
図1
図2
図3
図4
図5