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特許7556911ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法)
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  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図1
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図2
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図3
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図4
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図5
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図6
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図7
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図8
  • 特許-ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法) 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法及び装置(現在の熱的条件に応じて最小入力電力または最大熱的冷却力にてフリーピストンガンマ型スターリングヒートポンプを駆動するための周波数動的調整方法)
(51)【国際特許分類】
   F02G 1/043 20060101AFI20240918BHJP
   F02G 1/044 20060101ALI20240918BHJP
   F02G 1/045 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F02G1/043 B
F02G1/044 A
F02G1/045 Z
F02G1/043 F
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066374
(22)【出願日】2022-04-13
(65)【公開番号】P2022166827
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】17/236,701
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512005829
【氏名又は名称】グローバル・クーリング・インク
【氏名又は名称原語表記】GlobalCooling, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池山 和生
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エム・バーコウィッツ
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525534(JP,A)
【文献】特開2005-003318(JP,A)
【文献】特開2004-108678(JP,A)
【文献】特開2001-304745(JP,A)
【文献】特表2012-533018(JP,A)
【文献】特開2007-077985(JP,A)
【文献】特開平07-260277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 1/043
F02G 1/044
F02G 1/045
F25B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの入力電力を制御可能に変更するための、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法において、
上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、ディスプレーサと少なくとも2つのピストンとを有すると共に、リニア電動機によって往復駆動され、
上記リニア電動機は、交流電圧と電流とによって所定の運転周波数において駆動され、
さらに上記方法は、
(a)制御変更可能な駆動周波数を有する交流電圧と電流とによって、上記リニア電動機を駆動する工程と、
(b)上記交流電圧と電流との駆動周波数を増加させて、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を減少させることによって、上記リニア電動機への入力電力を減少させる工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、貯蔵室を有する冷凍装置に接続され、この貯蔵室から熱を汲み上げるように構成されており、
さらに上記方法は、
(a)選択した周波数範囲にわたって、上記交流電圧と電流との周波数を変化させる工程と、
(b)上記周波数範囲以内での複数の駆動周波数において、上記リニア電動機に送られる電力を検知する工程と、
(c)定常状態の熱負荷において上記リニア電動機への最小入力電力が検知されたときの運転周波数にて、このリニア電動機を駆動する工程と
を経由して、定常状態での熱負荷において、上記リニア電動機が最小入力電力を消費するときの運転周波数を検出する
ことを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、さらに、
(a)上記リニア電動機に与えられる上記交流電圧と電流との運転周波数を、不連続に増加変更して、上記選択した周波数範囲にわたって複数のサンプル周波数を提供する工程と、
(b)各サンプル周波数において上記リニア電動機への入力電力のサンプルを検知する工程と、
(c)上記リニア電動機への検知した最小入力電力における運転周波数を記憶する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、さらに、
上記リニア電動機が最小入力電力を消費するときの周波数を検出する間、ピストンの往復振動幅を一定に維持する工程
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、さらに、
(a)上記貯蔵室の温度を検知することによって、温度維持モードを定期的に検出し、この検知した温度が選択した温度の限度を超えているか、あるいは温度上昇の変化速度が、選択した温度の変化速度の限度を超えているかを計算する工程と、
(b)上記限度を超えない場合は、上記リニア電動機への入力電圧を変化させることによって、上記冷凍装置の温度を設定点温度に維持するようにピストン振幅を調節して、上記貯蔵室の温度を維持するために熱的冷却力を変化させる工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項6】
ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの熱的冷却力を制御可能に変更するための、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法において、
上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、ディスプレーサと少なくとも2つのピストンとを有すると共に、リニア電動機によって往復駆動され、
上記リニア電動機は、交流電圧と電流とによって所定の運転周波数において駆動され、
さらに上記方法は、
(a)制御変更可能な駆動周波数を有する交流電圧と電流とによって、上記リニア電動機を駆動する工程と、
(b)上記交流電圧と電流との駆動周波数を減少させて、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を増加させることによって、上記リニア電動機への入力電力を増加させる工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、貯蔵室を有する冷凍装置に接続されて、この貯蔵室から熱を汲み出すように構成され、
さらに上記方法は、
(a)選択した周波数範囲にわたって上記交流電圧と電流との周波数を変化させる工程と、
(b)上記選択した周波数範囲以内の複数の駆動周波数において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーに送られる熱的冷却力を検知する工程と、
(c)検知した最大の熱的冷却力の運転周波数において上記リニア電動機を駆動する工程と
を経由して、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーが最大熱的冷却力で運転するときの運転周波数を検出する
ことを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、さらに、
(a)上記リニア電動機に与えられる電圧と電流との駆動周波数を、不連続に増加変更して、上記選択した周波数範囲にわたって複数のサンプル周波数を提供する工程と、
(b)各々のサンプル周波数において上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの熱的冷却力のサンプルを検知する工程と、
(c)検知した最大の熱的冷却力サンプルの運転周波数を記憶する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、さらに、
(a)上記貯蔵室の温度を検出することによって、回復モードを定期的に検出し、この検出した温度が選択した温度制限を超えているか、あるいは温度上昇の時間的変化速度が 、選択した温度の変化速度の制限を超えているかを計算する工程と、
(b)上記制限を超える場合は、上記リニア電動機への入力電圧を変化させることによって、上記ピストンの振幅を最大振幅に維持する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項10】
時には温度維持モードにて、そして時には回復モードにて、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法において、
上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、ディスプレーサと少なくとも2つのピストンとを有すると共にリニア電動機によって駆動され、
上記リニア電動機は、所定の運転周波数において交流電圧と電流とによって駆動され、さらに、
(a)制御変更可能な駆動周波数を有する交流電圧と電流とによって、上記リニア電動機を駆動する工程、
および
(b)上記交流電圧と電流との上記運転周波数を増加させることによって、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を減少させて、温度維持モードで運転する上記リニア電動機への入力電力を減少させる工程、
あるいは
(c)上記交流電圧と電流との運転周波数を減少させることによって、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を増加させて、回復モードで運転する上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの熱的冷却力を増加させる工程のいずれか
を含むことを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、アクセスドア付きの貯蔵室を有する冷凍装置に接続されており、
上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーは、上記冷凍装置の上記貯蔵室から熱を汲み上げて排出するように構成されており、
さらに上記方法は、
(a)上記貯蔵室の温度若しくはこの貯蔵室内の温度変化の時間的速度、またはアクセスドアが開かれたことを検知する工程と、
(b)上記温度維持モードで上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを運転し、
(1)上記検知された温度が、選択した低温温度の限度よりも低いこと、
または
(2)上記検知された温度が、選択された温度変化の時間的速度の限度より遅い速度で低下すること
の少なくとも1つを検知した場合に、上記交流電圧と電流との運転周波数を増加させることによって、上記リニア電動機への入力電力を減少させる工程と、
(c)上記回復モードで上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを運転し、
(1)上記検知された温度が、高温温度の限度よりも高いこと、
(2)上記検知された温度が、選択された温度変化の時間的速度の限度を超える時間的速度で上昇すること、
または
(3)上記アクセスドアが開いていること
の少なくとも1つを検知した場合に、上記交流電圧と電流との運転周波数を減少させることによって、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの熱的冷却力を増加させる工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、さらに、
(a)上記温度維持モードで運転する場合、上記リニア電動機への入力電圧を変化させることによって上記ピストンの振幅を調整して、上記貯蔵室の温度を設定温度に維持するために上記熱的冷却力を変化させる工程と、
(b)上記回復モードで運転する場合、上記ピストンの振幅を最大振幅に維持する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項13】
上記温度維持モードおよび上記回復モードに最適な運転周波数を検出するための請求項12に記載の方法において、
さらに上記方法は、
(a)次の工程、すなわち
(1)選択した周波数範囲にわたって、上記交流電圧と電流との周波数を変化させること、
(2)上記周波数範囲以内での複数の駆動周波数において、上記リニア電動機に送る電力を検知すること、
および
(3)上記リニア電動機への最小入力電力が検知されたときの上記運転周波数を記憶すること
によって上記リニア電動機が最小入力電力を消費するときの運転周波数を検出する工程と、
(b)次の工程、すなわち
(1)選択した周波数範囲にわたって、上記交流電圧と電流との周波数を変化させること、
(2)上記周波数範囲以内での複数の駆動周波数において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーが提供する上記熱的冷却力を検知すること、
および
(3)検出した最大熱的冷却力の運転周波数を記憶すること
によって、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを最大熱的冷却力にて運転するときの運転周波数を検出する工程と、
(c)上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを上記温度維持モードで運転する場合には、上記リニア電動機への検知した最小入力電力における運転周波数にて、このリニア電動機を駆動する工程と、
(d)上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを上記回復モードで運転する場合には、検知した最大熱的冷却力における運転周波数にて上記リニア電動機を駆動する工程と
を含むことを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、さらに、
(a)上記リニア電動機に加える上記交流電圧と電流との運転周波数を、不連続に増加変更して、上記選択した周波数範囲にわたって複数のサンプル周波数を提供する工程と、
(b)時には各サンプル周波数において、上記リニア電動機への入力電力のサンプルを検知し、時には各サンプル周波数において、上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーが提供する上記熱的冷却力のサンプルを検知する工程と、
(c)上記リニア電動機への検知した最小入力電力における上記運転周波数、および検知した最大熱的冷却力における上記運転周波数を記憶する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、上記選択された周波数範囲は、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの機械的公称周波数を中心に±2Hz未満の範囲であり、上記不連続な増加分の幅は、0.2Hz未満である
ことを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、さらに、
(a)上記リニア電動機が最小入力電力を消費する場合の運転周波数を検出する間、上記ピストンの往復振動幅を一定に維持する工程と、
(b)上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを最大熱的冷却力において運転する運転周波数を検出する間、上記ピストンの往復振動幅を最大に維持する工程と
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを制御可能に運転する方法。
【請求項17】
ディスプレーサと少なくとも2つのピストンを備えると共に、リニア電動機によって往復駆動されるように構成され、このリニア電動機が交流電圧と電流とによって所定の運転周波数において駆動される改良されたガンマ型フリーピストンスターリングクーラーにおいて、
(a)十分な電力、電圧および電流を供給し、上記リニア電動機を駆動するように接続される交流電圧と電流との電源であって、制御可能な可変周波数を有する電源と、
(b)コントローラであって、該コントローラは、
上記交流電圧と電流との上記運転周波数を増加させることによって、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を減少させて、温度維持モードで運転する上記リニア電動機への入力電力を減少させる、
あるいは
上記交流電圧と電流との運転周波数を減少させることによって、上記ピストンに対して上記ディスプレーサが先行する位相角度を増加させて、回復モードで運転する上記ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーの熱的冷却力を増加させる、
ように構成されるコントローラと、
を有することを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラー。
【請求項18】
ディスプレーサと少なくとも2つのピストンを備えると共に、リニア電動機によって往復駆動されるように構成され、このリニア電動機が交流電圧と電流とによって所定の運転周波数において駆動される改良されたガンマ型フリーピストンスターリングクーラーにおいて、
(a)十分な電力、電圧および電流を供給し、前記リニア電動機を駆動するように接続される、制御可能に可変の周波数を有する交流電圧と電流との電源と、
(b)前記ディスプレーサに熱的に接続された冷凍保管室と、
(c)前記リニア電動機に接続されて、このリニア電動機への入力電力を検知するように構成される電力検知回路と、
(d)前記冷凍保管室に熱的に接続され、この冷凍保管室の温度を検知するように構成される温度センサーと、及び、
(e)コントローラであって、前記温度センサーおよび前記電力検知回路に接続され、前記リニア電動機に加えられる交流電圧の振幅と周波数とを制御可能に変化させるように構成されるコントローラと、
を備えることを特徴とするガンマ型フリーピストンスターリングクーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ型フリーピストンスターリング機関に関し、特に超低温冷凍庫を冷却するヒートポンプとして用いるようなガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを運転する方法及び装置に関する。本発明の目的の一つは、冷凍庫の温度が定常状態にある場合には、電力消費を最小限に抑えることによって冷凍庫のエネルギー効率を最大にすることにある。本発明の第二の目的は、冷凍庫の温度が高い場合には、熱的冷却力を最大にすることによって冷凍庫温度を設定点温度まで下げることができる速度を最大にすることにある。
【背景技術】
【0002】
スターリングサイクルフリーピストンクーラーを使用する冷凍庫は、環境に最も優れた超低温(ULT)冷凍庫であるだけでなく、最小の運転費用で最高の能力を発揮する。ULT冷凍庫は、通常、-80℃と-90℃との範囲において貯蔵室の温度を維持する。これらの冷凍庫は、ワクチンなどの生物学的サンプルを保存するために、大学、病院、製薬メーカーおよび流通業者によって使用される。
【0003】
最も簡単なフリーピストンスターリングクーラーは、冷凍庫において一般的に使用されているベータ型構成である。ベータ型構成において主要で必要な可動要素は、ピストン、ディスプレーサおよびバランサーである。ピストンとディスプレーサとは、シリンダー内で往復し、ピストンとディスプレーサとに付与されるバネ力が、機械的な共振システムを形成し、このシステムは、その共振周波数またはその近辺で運転される。ピストンの往復は、ベータ型フリーピストンスターリングクーラーを収容するケーシングの振動を引き起こす。バランサーの目的は、ケーシングから過剰な振動を取り除いて、騒音の伝送を最小限に抑えることにある。ベータ型スターリング機関は、最初に、ディスプレーサの動きがピストンに先行する好ましい位相角度を持つまで、ディスプレーサの共振周波数を調整することによって、最適に調整される。それが達成されたら、次にバランサーを調整しなければならない。バランサーは通常、減衰しないばね上質量なので、Q(蓄積エネルギー/消散エネルギー)が高くなり、よって最適な性能を得るためには非常に正確な調整を行う必要がある。この調整は多くの場合、望ましい固有振動数を中心とする狭い周波数範囲内に収める必要があり、実際的な方法で達成することは非常に困難である。現行の方式では、ケースの振動が最大許容レベル未満になるまで質量を増やしたり削ったりして、バランサーを調整する。この方法が示唆していることは、最小のケーシング振動が達成されるまで、機関の運転周波数を変更することである。しかるに、この方法には、ピストンの運動に対するディスプレーサの運動の位相関係が変化して、最小のケーシング振動時点における機関の性能を低下させてしまうという問題が付随する。したがって、バランサーの調整の必要性を排除し、また、バランサー自体の必要性を避け、それでもなお振動が受容可能な小さなレベルになることが望ましい。
【0004】
図1は、冷凍庫の貯蔵室を冷凍するために取り付けたガンマ型フリーピストンスターリングクーラーを含む、比較的単純化された概略図である。この構成の冷凍庫は、周知技術であって、基本的な構成要素は、図1に示すように本発明の実施の形態にも適用可能である。フリーピストンスターリング機関は、フリーピストンスターリングエンジンとも呼ばれ、ガンマ型の構成のものを含めて周知技術である。それらは機関の一つの部品に熱を加えることによってモーターとして運転させることができ、機械的な負荷を駆動するための往復出力を生み出す。またリニア電動機などの往復駆動装置によって駆動され、冷たいヘッドから周囲の大気などの暖気に熱を伝達することができる。後者の機能は、ヒートポンプとして知られている。ここで術語「スターリングクーラー」は、その冷たいヘッドからより高い温度の質量に熱をポンプまたは汲み上げることを意図して設計されたスターリング機関を指すために使用する。
【0005】
スターリングクーラー及びスターリングクーラーを使用する冷凍庫は、周知技術なので、以下の説明は要約である。図1を参照すると、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラー10は、冷凍庫12などの冷凍装置に搭載されて貯蔵室14を有し、冷たいヘッド15を経由して貯蔵室14から外気に熱を汲み上げるように構成されている。貯蔵室14は、この貯蔵室に保管されているサンプルの挿入および引き出し用のアクセスドア17を有する。スターリングクーラー10は、ディスプレーサ16及び2つのピストン18と20とを有する。ピストン18と20とは、対向するように配置され、ピストンが互いに反対の方向に動くため、全ての振動が理想的に打ち消される。ディスプレーサ16は、接続ロッド22によって、平坦ばね24に接続する。ケーシング26に封入された作動ガスは、ピストンにバネ力を加えるバネとしても働き、クーラー10全体が機械的に共振する。ディスプレーサの動きはバランスが取れていないが、ディスプレーサの質量は小さいため、ケーシング振動への寄与は小さく、一般的に許容できる。ピストンは、交流リニア電動機28によって対向して往復するように駆動され、ケーシング26の振動原因となる力を相互に打ち消す。電動機28は、交流電力源30によって供給される交流電圧と電流とによって、所定の運転周波数において駆動される。電力源30は、デジタル処理回路とコンピュータ部品を含む電子制御システム32によって制御される。検出された運転パラメータは、少なくとも貯蔵室の温度センサー34および他のセンサー36によって制御システム32に与えられる。従来技術による制御システムは、格納された制御アルゴリズムに従い、検出された運転パラメータの入力に基づいて電力源30の電圧振幅を制御可能に変化させる。
【0006】
図2は、ピストン18および20と、ディスプレーサ16との動きを示す位相図(phasor diagram)であり、それらの動きの位相角度を示す。ディスプレーサ16は、ピストンの動きより約45°から65°先行して往復する。ピストン18及び20は、空間的な視点では対向しているが、時間的な観点からは、互いに同相で作動している。図2の位相図は、運動の時間域における関係を示しているので、2つのピストン18と20との動きはオーバーラップしているが、ディスプレーサ16の動きに対して、同じように遅れた位相関係にある。ケーシング26の動きは、ディスプレーサ16の動きとは反対になっている。ディスプレーサ16は、質量が小さく、機関全体の残りの部分はかなり質量が大きいので、結果として生じるケーシング運動は小さく、ほとんどの実用的な場面においては、無視できる。
【0007】
従来技術によるスターリングクーラーは、機関の機械的共振周波数またはそれに近い一定の運転周波数で運転する。スターリングクーラーによって生み出される熱を汲み上げるための熱的冷却力は、ピストン振幅の増加関数である。ピストン振幅は、交流リニア電動機28に印加される交流電圧の増加関数である。従来技術では、貯蔵室14内の温度を制御するために、リニア電動機28に印加される電圧を調節することによって熱的冷却力を調節する。本発明の実施の形態は、時には、貯蔵室14内の温度を制御するために、リニア電動機28に印加される電圧を調節する運転モードを含む。その目的のために、ネガテブフィードバックの電子制御システム32は、検出された貯蔵室の温度、及び記憶された設定点温度の入力を有する。電子制御システム32は、よく知られたネガテブフィードバック制御原理によって、設定点温度に近い温度範囲内に貯蔵室14の温度を維持するために、交流電力源30の電圧を調節することによって熱的冷却力を調節する。最大の冷却力を提供するためには、従来技術では、単一の運転周波数において、最大振幅限度でスターリングクーラーを運転する。
【0008】
フリーピストンスターリングクーラーを効率的に運転するためには、ディスプレーサの周期的な往復は、ピストンの周期的な往復より約45°~65°の角度範囲で先行させるべきである。ディスプレーサが先行する角度は、スターリングクーラーの機械的共振周波数(共振曲線のピーク)およびスターリングクーラーを運転する周波数が関係する関数である。従来技術によるスターリングクーラーは、単一の運転周波数で運転するため、ディスプレーサが先行する位相が、上記範囲内で許容可能な角度になるためには、スターリングクーラーは、単一の運転周波数で駆動したときに、許容可能な先行位相で運転できる機械的周波数に調整しなければならない。
【0009】
スターリング機関の機械的共振周波数は、各往復成分の質量と、その機械的ばねの実効ばね定数と、ばねのように振る舞う作動ガスとの関数である。時には製造された部品は、質量またはばね定数において相違し、検知されたディスプレーサの位相が選択された許容範囲内にない場合がある。部品が許容範囲にない場合、従来技術によるメーカーは、ピストンに対して許容できる位相関係を有するように、ディスプレーサを機械的に調整する。ディスプレーサはピストンの動きに対する動きを観察しながら、最適な全体的性能を得るように調整される。最適な性能とは、所定の低温を維持するために必要な最小のエネルギー入力を与える先行位相を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した調整手順では、機関を分解してディスプレーサの質量を増減し、そして再組み立てしてテスト運転を行い、ディスプレーサの先行位相を検出する必要がある。製造される各々の冷凍庫に対して、許容範囲内にある位相角度が検出されるまで、この手順を複数回も繰り返す可能性がある。したがってこの手順には、明らかにかなり大きな労働力が必要になる。この手順に掛かる費用と難しさとは、冷凍庫の製造費用を増すだけでなく、冷却器の異なる運転モードに最適となる先行位相角度に許容できるほど近いものの、未だ異なる先行位相角度を受け入れなければならない。特定のスターリングクーラーに対して、達成できる最適なエネルギー効率と達成できる最大の熱的冷却力との間の、妥協点となる運転条件を受け入れなければならない。たとえば、50°と60°の間の先行位相角度は、合理的な妥協と見なされるかもしれない。スターリングクーラーを調整して、この許容範囲内でディスプレーサの先行位相角度を得た後は、従来技術によるスターリングクーラーでは、その耐用年数の残りの期間中、ただ一つの基準運転周波数においてのみ駆動され運転される。
【0011】
しかるに、次の3つの改善を同時に達成することが望ましい。すなわち(1)過度の振動およびバランサーの必要性を排除する。(2)先に説明した方法でスターリング機関を調整する必要性を排除することにより、製造コストを削減する。(3)スターリングクーラーを、妥協に基づくモードで運転する替わりに、最大のエネルギー効率を発揮するモードと最大の熱的冷却力を発揮する別のモードとの、2つの異なる最適化された運転モードのいずれかにおいて運転する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーでULT冷凍庫を冷却すると共にリニア電動機を駆動し、このリニア電動機は、制御可能な可変周波数を有する交流電力源を用いてピストンを往復運動させる。最適な周波数の検出方法は、スターリングクーラーの熱負荷を一定に維持しながら、消費電力を最小にする電動機の運転周波数を検出する。また最適な周波数の検出方法は、スターリングクーラーの熱的冷却力を最大にする、電動機の別の異なる運転周波数も検出する。最適な周波数は、(1)冷凍庫で安定した温度を維持するために必要な入力電力を検知するか、または(2)スターリングクーラーが付与する、冷凍庫の温度を下げるための熱的冷却力を検知するそれぞれの手順において、運転周波数を少しずつ変化させる最適化アルゴリズムを適用することによって検出する。
【0013】
また本発明は、冷凍庫の適切な運転が、電力の最小化モードであるか、または熱的冷却力の最大モードであるかを検出する、モード検出ルーチンを有する。その検出は、冷凍庫の現在の熱的状態に基づく。冷凍庫の貯蔵室が十分冷えているので定常運転が適切な場合、スターリングクーラーのピストンは、電力を節約するために、検出された定常状態を維持するための消費電力が最小になる周波数で駆動される。冷凍庫の貯蔵室が暖かくなり過ぎ、または暖かくなり過ぎそうな場合には、スターリングクーラーのピストンは、冷凍庫を設定点温度まで冷却する時間を最小限にするために、検出された熱的冷却力が最大になる周波数より低めの周波数で駆動される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、少なくとも以下の改良をもたらす。(1)かなりの量となる定常状態の電力消費を最小にする。(2)ドアを開いた後またはその他の実質的な熱の入力後の温度回復時間を最小にする。(3)製造者は、費用がかさんで時間が掛かる作業によって、個々のスターリングクーラー機関を、それぞれ調整する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーで冷却される冷凍庫の形状と図表とを示す図である。
【0016】
図2】従来技術によるガンマ型スターリングエンジンにおけるピストンとディスプレーサとの位相の関係と動きを示す位相図である。
【0017】
図3】かなり簡略したレベルでの発明の実施に用いるステップを示す流れ図である。
【0018】
図4図2に類似した位相図であって、本発明によって運転するガンマ型フリーピストンスターリングクーラーにおけるピストンとディスプレーサとの位相の関係および動きを示す。
【0019】
図5】電動機の駆動周波数の関数として、本発明によって運転するスターリングクーラーを駆動している電動機への入力電力の変動を示すグラフである。
【0020】
図6】電動機の駆動周波数の関数として、本発明によって電動機で駆動されているガンマ型フリーピストンスターリングクーラーからの熱的冷却力(「lift」)の変動を示すグラフである。
【0021】
図7】本発明を具体化した装置とその運転方法の1例を示すブロック図である。
【0022】
図8】本発明による定常状態における電動機への最小入力電力モードの運転に最適な周波数を求めるルーチンの実施を示すフローチャートである。
【0023】
図9】本発明による最大熱的冷却力モードの運転に最適な周波数を求めるルーチンの実施を示すフローチャートである。
【0024】
図面に示される本発明の好ましい実施の形態を説明する際に、明確化のために特定の用語が使用される。しかし本発明を、選択された特定の用語に限定することを意図するものではなく、また各特定の用語が、同様の目的を達成するために同様の方法で作動するすべての技術的に同等な物を含むということを理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
全体像
【0026】
本発明は、製造中にスターリングクーラーを機械的に調整する必要性を排除する。従来技術においては、このような調整は、スターリングクーラーを妥協した運転モードに調整して、単一の運転周波数において運転できるように行われてきた。ベータ型スターリングクーラーは、単一の周波数でクーラーを運転する必要があった。なぜなら許容できる性能を得るためには、共振周波数のすぐ近くで運転しなければならないので、高いQ(非常に鋭い共振ピーク)を備える共振装置である振動バランサーが必要になるためであった。ガンマ型スターリングクーラーは、振動バランサーを必要としないため、運転周波数の重要性は、大幅に減少する。ガンマ型スターリングクーラーは、電動機に付与される駆動周波数を、いく分変えることができる。ガンマ型スターリングクーラーを使用すると、クーラーの電動機を、周波数可変の交流電流(AC)電力源によって、電動機への入力電力が最小になる周波数、またはスターリングクーラーの熱的冷却力が最大となる比較的低い周波数の、いずれの周波数において駆動することができる。周波数可変の(AC)電流電力源は、ときには可変周波数駆動(VFD)と呼ばれ、本質的には、電気的に変動する周波数を持つ発振回路であり、電動機を駆動するのに十分な電力を供給することができる。このような電力源は、回転電動機を駆動するために市販されている。
【0027】
振動バランサーの除去により周波数の重要性が低いため、本発明の運転は、スターリングクーラーは、(1)入力効率と冷却能力との妥協である従来技術による周波数をわずかに上回る運転周波数において駆動すると、最小入力で運転でき、(2)従来技術による周波数よりもわずかに低い運転周波数において駆動すると、最大熱的出力で運転できるという観察に基づいている。その理由は、周波数を変えると、ピストンに先行するディスプレーサの位相が変化するからである。ディスプレーサの先行する位相を変更すると、入力電力とガンマ型スターリングクーラーの熱的冷却力の双方が変化する。運転周波数およびディスプレーサが先行する位相は、最小入力電力と最大熱冷却能力とでは相違する。図4は、位相の関係の1例を示す位相図である。本発明は、冷凍庫の熱的条件に応じて、スターリングクーラーの最小入力電力または最大熱的冷却力を検出し、そしてこの最小入力電力または最大熱的冷却力においてスターリングクーラーを運転する。
【0028】
図5および図6は、ガンマ型フリーピストンスターリングクーラーに本発明の原理を適用したものを示すグラフであって、このスターリングクーラーは、本発明によって駆動される。図5は、周波数の関数としての入力電力およびディスプレーサの位相の進み角度の1例を示す。また図5は、約61.2Hzの運転周波数において、最小の入力電力を示す。図6は、周波数の関数としての熱的冷却力およびディスプレーサの位相の進み角度の1例を示す。また図6は、約59.8Hzの運転周波数において、最大の熱的冷却力を示す。本発明や本発明の理解とは関係はないが、周波数に対する位相のグラフは、同一条件下で得られた場合、図5及び6において同じであろう。これらの条件には、ピストン振幅、冷たいヘッド温度、および周囲の雰囲気と熱交換する熱交換器の温度が含まれる。図5は、市販の冷凍庫において、-80°Cの定常状態の熱的冷却力に近い約90Wの熱的冷却力において得られた。図6は、市販の冷凍庫において、-80°C付近で最大の熱的冷却力に近い電力が生じる条件の下で得られた。しかし、最大の冷却力を生み出す最適なサンプリング周波数は、冷凍庫の温度の関数であるため、冷凍庫が冷却するにつれて最適な運転周波数は変化する。同様に、最大のピストン振幅に近い振幅における周波数に対する位相曲線は、温度が異なると相違する。しかし本発明は、最適な周波数を繰り返し検出することによって、冷凍庫の異なる温度および異なる設定点温度に対して、最大の熱的冷却力を生み出すのに最適な周波数に繰り返し適応する。
【0029】
本発明は、定常状態の温度維持モードにおいて、スターリングクーラーを運転する場合に最適な周波数を検出する方法を提供する。定常状態モードの間、つまり熱負荷が安定したときには、最大の効率を提供するために、クーラーを駆動する電動機への入力電力が最小になることが望ましい。また、本発明は、スターリングクーラーを最大の熱的冷却力モードで運転する場合に最適な周波数を検出する方法を提供する。回復モードの間におけるスターリングクーラーの熱的冷却力は、冷凍庫を設定点温度まで冷却するために必要な時間を最短にするために、最大にすることが望ましい。
【0030】
最小の消費電力を提供する最適な定常運転周波数を求める方法と、最大の熱的冷却力を提供する最適な回復運転周波数を求める方法の両方に、検出またはサンプリングルーチンが含まれ、このルーチンには、選択した周波数範囲全体において交流電圧電流の電力源30の周波数を変化させることが含まれる。最適な定常状態モードの運転周波数を求めるには、安定した冷凍温度を維持しながら、周波数範囲内で複数の駆動周波数において、電動機に送る電力が検知される。その後、電動機は、検知された電動機への入力電力が最小となる運転周波数で駆動される。最適な回復モードの運転周波数を求めるには、スターリングクーラーによって供給される熱的冷却力を、選択した周波数範囲内で複数の駆動周波数において検出し、電動機は、検知された熱的冷却力が最大になる運転周波数で駆動される。
【0031】
好ましくは、周波数範囲全体にわたる駆動周波数は、周波数の間隔が狭い離散サンプル周波数であって、それぞれ電力サンプルまたは熱的冷却力サンプルを提供する。
【0032】
最適な定常運転周波数を求める方法と、最適な回復モードの運転周波数を求める方法は、両方とも冷凍庫の製造中、完成した冷凍庫の運転寿命中、またはその両方の間に行うことができる。
【0033】
工場のフロアにおける製造中に、最適な周波数の検出が行われるときには、検出された2つの最適な周波数がコントローラのメモリーに保存される。制御ルーチンは、選択した運転モードに関連付けられて保存された周波数において、冷凍庫を運転するようにプログラムされる。最適な周波数は、設定点温度に依存するため(ディスプレーサの共振数は、膨張空間の温度によって変化するため)、冷凍庫を運転する複数の設計上の設定点温度の範囲全体において、一組の最適な周波数を検出する必要がある。保存された最適な周波数とそれらが関連する一組の設定点温度は、最適な周波数に対する冷凍庫温度の関係を示す曲線で表され、制御ファームウェアに格納され、この制御ファームウェアにより冷凍庫の現在の運転における設定点温度に適した最適な周波数に回復することができる。
【0034】
最適な周波数を検出する方法は、冷凍庫の通常運転寿命にわたる日々の運転の間においても、たえず実行することができる。最適な周波数を検出する方法を実行する制御ルーチンは、コントローラの制御ルーチンにプログラムされ、プロセッサを介してクロック毎に連続して、あるいは周期的に実行される。
【0035】
従来技術によるスターリングクーラーに対する、先に説明した方法による機械的な調整は不要であり、したがって冷凍庫の製造中か使用中かにかかわらず、本発明の方法によって最適な周波数を検出すれば、この機械的な調整を回避することができる。スターリングクーラーの機械的なパラメータの変動は、ピストン質量やばね定数などの機械部品の変化によるため、従来技術において調整が必要であった。部品の変化は、共振周波数など、スターリングクーラーの運転パラメータの変動を引き起こした。スターリングクーラーの運転パラメータにおけるこれらの変動は、製造された各スターリングクーラーが、すべて同じ単一の運転周波数で運転された場合に、大幅に異なる冷却特性を持ち得ることを意味する。例えばクーラーは、ある1つの運転周波数において、大幅に異なる温度冷却力と同様に、大幅に異なる性能効率または性能係数を持つことができる。本発明の方法は、各々の特定のスターリングクーラーにおいて最適な周波数を検出することによって、製造された部品のこれらの変化を補う。したがって製造された各々のスターリングクーラーは、それ自体の2つの最適な周波数の一方または他方において運転される。多くの場合、各々の冷凍庫の一組の最適な周波数は、同じ生産ラインにおいて同じ公称仕様の部品から製造された他のスターリングクーラーの最適な周波数とは異なる。
【0036】
本発明の方法には、冷凍庫の1つ以上の運転パラメータを検出し、これらの運転パラメータから、スターリングクーラーを定常状態において最小消費電力モードで運転できるか、または回復状態において最大熱的冷却力モードで運転すべきか否かを検出するモード検出方法も含まれる。好ましい運転モードが現状の運転モードと異なる場合、運転モードは、コントローラによって好ましいモードに切り替えられる。それ以外の場合は、切り替えられない。定常状態において最小入力電力モードとなる最適な周波数は、回復モードにおいて最大熱的冷却力となる最適な周波数よりも大きい。したがって、一方のモードから他方への切り替えは、電動機を駆動する交流周波数を増加または減少させる段階を含む。
【0037】
図3は、冷凍庫用のスターリングクーラー、電動機、コントローラおよび温度センサーを用いる冷凍庫の日々の運転において、本発明を実施するための基本的な手順を示す簡略化されたフローチャートである。直ぐ後の説明は、発明の基本概念の概要であって、その後で詳しい説明を続ける。
【0038】
最初のステップは、検出された冷凍庫の熱条件に対する適切な応答として、スターリングクーラーを運転すべき運転モードを検出するモード検出ルーチンである。本発明に関連する2つのモードは、定常状態における温度維持モードおよび最大熱的冷却力による回復モードである。大まかに言えば、定常状態の温度維持モードは、冷凍庫温度が設定点温度の上下に延びる選択温度範囲内にあり、冷凍庫の貯蔵室を顕著に温めることを示すか予測する事象またはデータがない場合に適している。また大まかに言えば、最大熱的冷却力モードは、冷凍庫温度が選択した温度よりも暖かい場合、または冷凍庫の貯蔵室を顕著に温めることを予測するデータが検出された場合に適している。例えば、貯蔵室扉17を開口することや、あるいは少なくとも2分間程度開口していることは、暖かい周囲の空気の突入によって冷凍庫が著しく温められることを予測する熱条件事象であり、最大熱的冷却力の回復モードを開始するために使用することができる。
【0039】
この手順が適切な運転モードを検出した後、検出されたモードに最適な周波数は、簡単な説明を上述したが、引き続きより詳細に議論する。最適な周波数は、交流電力源30の周波数を、選択した周波数範囲にわたって段階的に走査することによって見出す。周波数範囲内で検出した複数の周波数において、最適な定常周波数を見つけるために、電動機が吸収する電力が検出される。同様に、選択された周波数範囲内の複数の周波数において、最適な回復モード周波数を見つけるために、スターリングクーラーによって供給される熱的冷却力が検出される。最適な周波数が見つかった後に、電動機は、適切な運転モードに最適な周波数で駆動される。
【0040】
電動機への入力電力の検出
【0041】
本発明の方法を行うには、定常温度条件において入力電力を最小値とする周波数を見つけるために、ピストン18、20を駆動する電動機28への入力電力を複数の駆動周波数で検出することが必要である。従来技術において、電力を測定し、アナログまたはデジタル形式にて、電力の検知値を表示出力する回路及び技術に関する多数の例が提供されている。電動機の端子はアクセス可能なので、従来の電力の検知回路をそれらの端子に接続することができる。このような回路は、電圧、電流および力率を検知し、コントローラ32にデジタルまたはアナログ出力を提供する。
【0042】
熱的冷却力の検出
【0043】
また本発明の方法を行うためには、熱的冷却力の最大値をもたらす周波数を検出するため、冷凍庫から熱を排出するスターリングクーラーの熱的冷却力を、複数の駆動周波数において検出する必要がある。熱的冷却力は、熱エネルギーの伝達速度、すなわちガンマ型フリーピストンスターリングクーラーによって、熱エネルギーが冷凍庫の貯蔵室から排出されて、最終的に冷凍装置から流出する時間速度である。熱エネルギー伝達速度は、ワット若しくは1分あたりのカロリー、1時間あたりのBTU(BTU/h)、1秒あたりのジュール(1Watt=1Joule/秒)などの様々な単位で表すことができる。
【0044】
本発明の方法は、熱的冷却力が最大または最小である周波数を検出することを含むので、特定の従来単位で表現できる熱的冷却力の値それ自体を検知する必要はない。相対的な冷却力、つまり、他のサンプリングされた周波数における冷却力との対比として、各サンプル周波数における冷却力を検知するだけで済む。そのためには、熱的冷却力が増すと増加し、減ると減少するパラメータを検知するだけで済む。より数学的な用語では、熱的冷却力の増加関数であるパラメータを検知することだけが必要となる。この書類で用いられているように、熱的冷却力を検知するステップは、相対的な冷却力の検出、すなわち熱的冷却力の増加関数であるパラメータの検出を含む。
【0045】
本発明の目的の一つである熱的冷却力の検知を行う実施の形態の一例は、冷凍室内の温度変化の時間的速度を検出することである。冷凍庫のコントローラ32は、温度センサー34に接続され、複数の目的のために貯蔵室の温度を計測する。したがって、コントローラは、異なる時間に検知された2つの検知温度間の温度差を、この温度間の時間間隔で割ることにより、温度変化の時間的速度を検出することができる。その代わりにあるいは追加して、貯蔵室の壁に沿って延伸して冷たいヘッド15に熱的に接続する、冷媒含有管などの冷凍回路の部品の温度を検知することによって、同様に熱的冷却力を検出することができる。
【0046】
製造工程中に、スターリングクーラーの熱的冷却力を検知する実施の形態の一例として、スターリングクーラーの冷たいヘッド15を、熱負荷に熱的に接続し、一定の温度に維持するために熱負荷によって消費される電力を測定する方法がある。たとえば、電気抵抗ヒーターは、スターリングクーラーの冷たいヘッド15に熱的に連結することができる。その配置により、冷たいヘッド15を一定の温度で維持するためにヒーターに供給される電力は、スターリングクーラーの熱的冷却力と同じになる。したがってヒーターに供給される電力を測定することによって、熱的冷却力を直接測定することができる。
【0047】
適切な運転モードの検出
【0048】
本発明の方法を実行するには、モード検出ルーチンが必要であって、この検出ルーチンにおいて冷凍庫のコントローラは、どの運転モードが検知した冷凍庫の熱的条件に適しているかを検出する。本発明の実施の形態では、性能の妥協に基づく単一の周波数において運転するのではなく、冷凍庫の熱的条件の要求によって2つのモード間を行き来するので、適切なモードを検出しなければならない。運転には2つのモードがある。
【0049】
定常状態モードは、温度を維持するモードである。貯蔵室が過度に温められていない場合において、長期保存するための通常の運転モードである。例えば、(1)貯蔵室が、設定点温度を含む許容温度範内にある場合、あるいは(2)貯蔵室が温まる温度変化の速度が、許容範囲内にある場合には、定常状態モードが適している。定常状態モードでは、電動機への供給電圧、したがってピストンの振幅は、従来技術において実施されているのと同じ方法で、コントローラによって変調されて、設定点温度を維持する。この定常状態モードでは、スターリングクーラーの熱的冷却力の全部を要しないため、定常状態の設定点温度の維持に見合う最も低い入力電力を提供する周波数において、スターリングクーラーを運転させることが望ましい。その運転周波数において、ピストンの振幅が設定点温度を維持するように変調される。
【0050】
貯蔵室を取り囲む絶縁されたキャビネットを通して、冷凍庫の周囲環境から通常の熱入力を超える熱入力を貯蔵室が受け取っているか、または受け取ろうとしているので、最大冷却力が必要となる場合には、回復モードが適切になる。回復モードでは、最大熱的冷却力、すなわち貯蔵室から熱を運び出すための最大能力で、スターリングクーラーを運転する。定常状態モードでの運転が失敗した場合、または失敗しそうな場合には、選択した制限温度または設定点を下回る貯蔵室の温度を維持するために、回復モードが必要となる。回復モードにおいては、貯蔵室の温度をできるだけ早く設定温度に戻すために、最大の熱的冷却力でスターリングクーラーを運転させることが望ましい。
【0051】
適切な運転モードを検出する方法の1つは、貯蔵室の内部温度を検知して、保存してある制限温度と比較することである。検知した温度が、保存している制限温度よりも高い場合には、回復モードを開始する必要があり、または検知した温度が、保存している制限温度または設定点よりも低い場合には、定常状態モードを開始または継続することができる。同じことを実現するため、保存している制限温度を使用する代わりに、設定点温度と検知温度との間の選択した温度差を保存し、その後で検知温度と比較することができる。
【0052】
適切な運転モードを検出する別の方法は、貯蔵室の内部温度を一定の時間間隔で検知して、温度変化の速度を計算することである。選択した変化速度を超えて温度が上昇している場合には、回復モードを開始できる。十分早い温度上昇速度を検知した場合には、定常状態モードの運転では、貯蔵室内の設定点温度を維持できないと予測する。
【0053】
回復モードが必要かどうかを検出するさらに別の方法は、貯蔵室へのアクセスドア17が開いているか、または少なくとも選択した最小時間の間、開いていることを検知する方法である。アクセスドアは、貯蔵室14からサンプルを保存または取り出すために、ユーザによってしばしば開かれる。アクセスドアが開いて2分間開いたままの場合、設定点温度に回復するのには、1.5時間近く掛かる。アクセスドアが開いたことを検知することによって、回復モード運転を開始することは、任意であり、また回復モードの必要性を検知する温度検出方法に優先させる(論理和で)ことができる。
【0054】
適切な運転モードを検出する複数の方法を使用することが可能であり、ANDおよびOR論理ブール演算による組み合わせを含む制御ロジックによって、組み合わせることができる。
【0055】
最適な周波数の検出
【0056】
先に説明したように、本発明の方法を行うことには、スターリングクーラーを最適なモードにおいて運転できるときの運転周波数を検出するための、最適な周波数を検出するルーチンを含む。検出された最適な運転周波数の1つにおける1つのモードは、定常状態である温度維持モードである。検出された最適な運転周波数における別のモードは、最大の熱的冷却力を提供する回復モードである。これらの最適な2つの周波数を見つけるプロセスは、多くの点で類似しており、同じ検知ルーチンの多数の工程を実行する。どちらのプロセスも、選択した周波数範囲に亘って、スターリングクーラーを駆動する交流電圧電流源の周波数を変える工程を含む。どちらのプロセスも、選択された周波数範囲内にある複数の駆動周波数において、最適化されるべき運転パラメータ、すなわち電動機への入力電力またはスターリングクーラーが発揮する熱的冷却能力を検出することを含む。
【0057】
発明の方法をより詳細に説明する際には、各々の周波数において検知される検出値をサンプルと呼び、それらを検知するプロセスをサンプリングと呼ぶ。選択した周波数範囲内にある周波数は、サンプル周波数と呼ぶ。運転周波数とは、サンプリングルーチン中か否かを問わない特定の瞬間に、交流電力源30が電動機に適用する駆動周波数である。「公称周波数」という用語も使用する。クーラーの公称周波数とは、クーラーの部品、例えばピストンやディスプレーサの質量、および機械的ばねと作動ガスのばねの定数が、設計上の公称値を有するとした場合に、冷凍庫の設計時において、クーラーのおおよその最適な運転周波数として計算できる運転周波数である。もちろん製造された部品はすべて公称設計値から逸脱しているものの、実際の値が設計上の公差範囲内にある限り使用される。公称周波数は、本発明の手順またはルーチンを実施する際の出発点として使用できる。そして本発明は、実際の最適な運転周波数を検出することによって、公称値からの逸脱を補償する。「公称周波数」は、可能性があると想定される運転時点に基づいており、設計点と呼ばれることもある。この設計点は、必ず暖かい側と冷たい側の特定の温度およびピストン振幅を想定している。したがって、公称周波数は妥協値となる。従来技術では、運転周波数を変更しないため、スターリングクーラーは、設計点から外れた妥協した状態で運転される。本発明は、設計点とは異なる運転条件を補償する。
【0058】
周波数範囲にわたるサンプル周波数は、間隔を空けた別々の周波数であることが好ましい。具体的には、電動機に印加される電圧と電流の運転周波数を、少しずつ増加させて変更し、選択した周波数範囲にわたって複数のサンプル周波数を得ることによって、最適な周波数が見つかる。各サンプル周波数において、入力電力または熱的冷却力のサンプルが検出され、コントローラに格納される。そしてモード検出ルーチンまたはモード検出方法の実行結果として、最適化されるモードに応じて、コントローラ内にプログラムされたルーチンは、検出された電動機に対する最小の入力電力サンプル、または検出された最大の熱的冷却力サンプルを生じるサンプル周波数を検出して保存する。
【0059】
図5および図6は、本発明によって運転するガンマ型スターリングクーラーの1例を示す。図5では、約61.2Hzの運転周波数において、最小の入力電力が生じている。図6では、運転周波数約59.8Hzにおいて、最大の熱的冷却力が生じている。公称周波数が60Hzであると仮定すると、サンプル周波数は、最大ピークと最小反転ピークの全体わたって延伸するので、共振周波数から±2Hzのサンプリング範囲で変化させることができる。この範囲には、最小電力の周波数と最大熱的冷却力の周波数の両方が含まれる。各々のサンプリング周波数間の周波数の増加分は、例えば0.2Hz、または本発明のいくつかの実施の形態については、0.1Hz若しくは0.05Hzであってもよい。例えば、図6に示す実施の形態については、最大の熱的冷却力の周波数を見出すために、サンプルを採取(すなわち検出)できる範囲は、この範囲に最大値を含むので、共振周波数から±1Hzにすることができる。要約すると、サンプリングは、±2Hz以下の周波数範囲において、0.01Hz~0.20Hzの周波数間隔で行なうと、効果的と考えられる。
【0060】
さらに、各サンプルが検出される時間の間には時間間隔がある。サンプル間の時間間隔を選択するときに考慮すべき2つの要因は、サンプル周波数が変化した後、スターリングクーラーの温度が安定する必要性、および熱センサーが出力信号を変更して、冷凍庫温度が、異なる温度を記録できるほど十分大きな温度変化を示す必要性である。市販の温度センサーで検出できる温度変化の例としては、0.2℃と0.05℃とがある。スターリングクーラーの運転と、先に検知した温度とは十分に異なる温度との双方が安定するまでの時間が、望ましい安定化時間となる。望ましい安定化時間は、18秒と推定されるが、冷凍庫のサイズが異なる場合、有効な安定化時間は、5~30秒と推定される。
【0061】
サンプリング中、すなわち電動機が最小の入力電力を消費する周波数を検出している間、およびスターリングクーラーが最大の熱的冷却力を提供する周波数を検出している間において、ピストン振幅を一定の振幅で維持することは、必要ではないが望ましい。最適な周波数の検出ルーチンを実行する間は、ピストン振幅を、ピストンを駆動した最新の振幅に維持することが好ましい。その理由は、最適な周波数の検出ルーチンのサンプリング中に、ピストンの共振周波数と運転周波数との差が変化することによって、運転電圧とピストン振幅との関係が変化するからである。この関係の変化により、ピストン振幅が増加または減少する場合がある。これらの関係の変化により、検出されたパラメータが歪曲し、最適な周波数検出ルーチンを実行している間に、不正確で誤ったデータをもたらす結果となる。ピストン振幅が維持されない場合には、最適なディスプレーサの位相を得る方法が継続されるが、各々の周波数変化後の運転の安定化に、より時間が掛かることが起こり得る。従って、最適な周波数検出ルーチンの実施のために周波数を変更する間は、ピストン振幅を維持するのが有益である。ピストン振幅を維持するために用いることができる1つの方法としては、米国特許出願番号16/919,689に記載されている技術を使用する。この米国特許出願は、20207月2日にDavid.M.Berchowitzによって提出され、フリーピストン機関のピストン振幅回復の方法と制御システムと題されている。
【0062】
曲線の最大値と最小値とにおいて最適値を求める
【0063】
検知されたモーター入力電力データと検知された熱的冷却力データとは、サンプル周波数の関数として図示すると、図5図6とに示すようにピークまたは反転ピークに沿って低下するため、従来技術において知られている最適化アルゴリズムを用いて、コントローラがピークの最大値と最小値を見つけることができる。最小の入力電力を見つける簡単な方法の1つは、サンプリングされた周波数範囲にわたって周波数を進め、先に検出された入力電力のサンプルよりも少ない場合にのみ、検出された入力電力のサンプルをサンプリング周波数に関連付けて保存することである。したがって、すべてのサンプルが検出された後に、ピークの最小値に最も近いサンプルが保存される。各々の熱的冷却力のサンプルが、先に検出されたサンプルよりも大きい場合にのみ、そのサンプリングされた周波数に関連付けて保存される点を除いて、同じ手法が最大の熱的冷却力を検出する場合にも適用される。
【0064】
最大値または最小値を見出すために、コントローラのコンピュータによって実行できるアルゴリズムが他にもある。先行技術によるアルゴリズムの他の例は、ニュートン・ラフソン技術であって、最大値または最小値を有する変数グラフの曲線が、最大値と最小値とにおいて傾きがゼロになるとの認識に基づいて、関数の解を見つけるための方法である。グラフの曲線を微分した関数の解は、最大値または最小値となり得る。
【0065】
最適な周波数の検出ルーチンが、一定範囲のサンプル周波数にわたって線形に進行するサンプリング手順の代わりに、従属変数(入力電力または熱的冷却力)の変化の方向を検知するルーチンを使用することができる。サンプル周波数(独立変数)を、従属変数の最大値または最小値に向かう方向に変更する。最適な周波数検出ルーチンが最小入力電力を捜している場合、各サンプルの後に、入力電力が減少する方向にサムプル周波数を変化させる。最適な周波数検出ルーチンが最大の熱的冷却力を捜している場合、各サンプルの後に、熱的冷却力が増加する方向にサンプル周波数を変化させる。増減の方向に従うことによって、周波数を互いに逆の方向に変化させたときに、電力の増加分が同じになる周波数が検出された場合が、すなわち電力が最大または最小となる周波数である。
【0066】
サンプリングが完了して最小入力電力または最大熱的冷却力における周波数が見出されると、電動機は、電力が最大または最小となる運転周波数で駆動される。より具体的には、モード検出ルーチンが、スターリングクーラーを定常モードで運転可能であることを検出した場合には、電動機は、最適な周波数検出ルーチン中に検知された電動機への最小の入力電力における周波数で駆動される。モード検出ルーチンが、スターリングクーラーを回復モードで運転する必要があることを検出した場合には、電動機は、最適な周波数検出ルーチンの間に検知された最大の熱的冷却力における周波数で駆動される。
【0067】
コントローラが運転モードを変更した後も、最適な周波数の検出ルーチンが繰り返され続けるので、現在の運転モードに最適な周波数を更新できる。その結果、冷凍庫は、現在の運転モードに最適な周波数で運転し続ける。またモード検出ルーチンは、運転モードを変更すべきことを検出するまで、繰り返し続ける。変更の必要を検出すると、コントローラは運転モードを変更し、運転手順が続行すると共に反復する。
【0068】
システムの1例(図7
【0069】
図7は、本発明を実施する装置の1例を示す。ガンマ型スターリングクーラー10は、コンピュータを含むコントローラ40によって制御され、このコンピュータは、検知したデータを処理すると共に、従来技術による方法と同じように、本発明の方法を実施するデータ処理ルーチンを実行する。この従来技術による方法は、スターリングクーラー10の制御にも使用する。コントローラ40は、交流電圧と電流の電力源であるドライバー42を制御し、このドライバー42は、電動機28を駆動するために十分な電力と電圧と電流とを供給する。ドライバー42の周波数と出力電圧の両方が、コントローラ40の出力によって制御可能に変更される。
【0070】
コントローラ40は、電動機28の制御のために使用される複数の入力を受けとる。この入力の一つは、先に説明した目的のために、アクセスドア17(図1)の開口を検知するアクセスドアのセンサー44からのものである。別の入力は、先に述べた目的のために、電動機電力のセンサー46からのものである。冷凍庫の温度センサー34は、先に述べた目的のために、その温度データをコントローラ40に適用する。
【0071】
冷凍庫の温度センサー34からの温度は、集計器48にも与えられる。また集計器48へのもう一方の入力は、設定点温度の入力50である。また集計器48の出力は、設定点温度と冷凍庫の貯蔵室14(図1)内における検知温度との差である。この温度差は、前述したように従来技術によるフィードバック制御原理に従って、定常状態モードにおけるピストン振幅を制御するために、コントローラに適用される。また集計器48から出力される温度差は、判定ブロック52によって記号化されたモード検出ルーチンにも付与される。モード検出ルーチン52は、最適な周波数の検出ルーチンを開始する。この最適な周波数の検出ルーチンは、検出したモードに応じて、前述の回復モードにおける熱的冷却力の最大化ルーチン54、あるいは前述の電動機電力の最小化ルーチ56のいずれかである。電動機電力の最小化または熱的冷却力の最大化のために検出された最適な周波数を表すデータが、コントローラ40に送信される。
【0072】
ピストン振幅センサー58、あるいはこれと同等の、プログラムされたピストン振幅を検知するルーチンは、検知したピストン振幅を集計器60に与える。設定点としている最大許容ピストン振幅62が、検知したピストン振幅に集計され、その差がコントローラ40に付与される。この目的は、従来技術においても知られているように、ピストン振幅が、スターリングクーラーへの衝突ダメージを発生させる最大振幅を超えないようにすることにある。ピストン振幅センサー58からのピストン振幅の出力は、コントローラ40にも与えることができる。
【0073】
運転
【0074】
2つの運転モードに最適な2つの周波数が、冷凍庫の製造中に検出されてコントローラに格納され、その後検出されなければ、冷凍庫の運転は比較的簡単となる。その場合、モード検出ルーチンが連続的に繰り返されてモード変更を検出すると、コントローラは、運転周波数を、保存してある運転の切り替え先のモードの周波数に切り替える。
【0075】
しかしながら本発明によるさらに高度な実施においては、モード検出ルーチンと最適な周波数検出ルーチンとの両方が、冷凍庫の寿命を通して繰り返される。これらのルーチンは、冷凍庫を制御するための他の多くのルーチンと共に、通常の方法において繰り返される閉ループ制御によって実行される。本発明に適用される制御ルーチンの一部を説明する際には、冷凍庫が初めて配達されて暖まっている状態における閉ループの実施を検討することから始めることができる。
【0076】
冷凍庫が暖かい状態にある場合には、スターリングクーラーの設計上の公称パラメータ、例えばピストンやディスプレーサの質量、及び平坦ばねや作動ガスのばね定数などに基づいて決定した公称周波数において、運転を開始することができる。あいは製造中に冷凍庫を試験して、最大の回復冷却力モードに最適な周波数を見つけ、その周波数で運転を開始することができる。
【0077】
冷凍庫を、暖かい温度において初期運転周波数で運転すると、モード検出ルーチンは、回復モードが必要なことを検出する。その結果、最大の熱的冷却力を発揮する周波数を見つけるサンプリング処理が実行され、回復モードに最適な周波数を見つけることができる。そして冷凍庫の運転を、直近に検出された最適な回復モード周波数に変更する。冷凍庫を設定点温度まで冷却するためには、数時間、例えば6時間程度掛かる。その間にモード検出ルーチンは、連続的に繰り返され、最大の熱的冷却力を発揮する最適な周波数を見つけるための、最適な周波数検出ルーチンが続く。異なる周波数が検出される毎に、運転周波数が、その周波数に変更される。その繰り返しは、冷凍庫が設定点温度に達するか、または設定温度に近い、選択した温度以内になるまで続く。最大の熱的冷却力を発揮する最適な運転周波数は、冷凍庫の冷却につれて繰り返される処理中に、何度も変更されると思われる。
【0078】
前述した繰り返しは、モード検出ルーチンが、冷凍庫内の温度に基づいて、コントローラが運転を定常状態モードに変更する必要があることを検出するまで続く。冷凍庫が設定点温度に達したか、あるいは設定点温度からある範囲内、例えば5°C以内になったことを、モード検出ルーチンが検出した場合に、この変更を行うことができる。
【0079】
運転が定常状態の最小電力モードに変更されると、定常状態における最小入力電力を求めるサンプリングルーチンが開始される。モード検出ルーチンと、定常状態における最小入力電力を求めるサンプリングルーチンとは、引き続き繰り返される。サンプリングルーチンが異なる最適周波数を検出する毎に、運転周波数が、検出した最新の最適な運転周波数に変更され、ルーチンの繰り返しが継続する。
【0080】
直前のモード検出ルーチンおよび直前の最適な周波数の検出ルーチンの繰り返しは、モード検出ルーチンが、冷凍庫内の温度、その温度の変化速度または冷凍庫のドアの開口に基づいて、コントローラが運転を回復モードに変更する必要があることを検出するまで継続する。
【0081】
次にコントローラが回復モードに切り替わり、最大の熱的冷却力に最適な周波数を得るサンプリングと、上述したモード検出ルーチンの実行とを繰り返す運転に戻る。回復モードに入ると最初に、周波数が、検出された最新の最適な回復モードの周波数に変更される。
【0082】
図8および図9は、定状状態における最小の電動機入力電力モードにおける最適な周波数を見つけるためのルーチン(図8)、および最大の熱的冷却力モードにおける最適な周波数を見つけるためのルーチン(図9)の、さらに詳細な実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
符号の説明
【0084】
10 ガンマ型フリーピストンスターリングクーラー
【0085】
12 冷凍庫
【0086】
14 貯蔵室
【0087】
15 冷たいヘッド
【0088】
16 ディスプレーサ
【0089】
17 アクセスドア
【0090】
18および20 ピストン
【0091】
22 コネクティングロッド
【0092】
24 平坦ばね
【0093】
26 ケーシング
【0094】
28 リニア電動機
【0095】
30 交流電力源
【0096】
32 電子制御システム
【0097】
34 貯蔵室の温度センサー
【0098】
36 他のセンサー
【0099】
40 コントローラ
【0100】
42 電動機のドライバー
【0101】
44 アクセスドアのセンサー
【0102】
46 電動機電力のセンサー
【0103】
48 冷凍庫温度/設定点の集計器
【0104】
50 冷凍庫温度の設定点
【0105】
52 決定ブロック
【0106】
54 回復モードの最大化ルーチン
【0107】
56 電動機電力の最小化ルーチン
【0108】
58 ピストン振幅の検出
【0109】
60 ピストン振幅限度の集計器
【0110】
62 ピストン最大振幅の設定点
【0111】
図面に関連する詳細な説明は、主に本発明の現時点における好ましい実施の形態の説明として意図されており、本発明が構築または利用され得る唯一の形態を表すものではない。説明は、図示された実施の形態に関連して発明を実施する設計、機能、手段および方法を規定する。しかし、本発明の精神および範囲内に包含されることを意図した異なる実施の形態によって、同じまたは同等の機能および特徴を達成し、そして、次の請求項に係る発明または範囲から逸脱することなく、様々な改変を採用することができるということを理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9