(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電気剥離型粘着シート、接合体及び接合体の剥離方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240918BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240918BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240918BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J5/00
C09J201/00
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2022208627
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2018042244の分割
【原出願日】2018-03-08
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 香織
(72)【発明者】
【氏名】溝端 香
(72)【発明者】
【氏名】粟根 諒
(72)【発明者】
【氏名】平尾 昭
(72)【発明者】
【氏名】横山 純二
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157408(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/064925(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3141272(JP,U)
【文献】特開2000-225900(JP,A)
【文献】特開2004-037741(JP,A)
【文献】特開2003-129030(JP,A)
【文献】特開2011-052056(JP,A)
【文献】特開2015-210963(JP,A)
【文献】特開2012-123231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被着体と第2の被着体とが複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体であって、
前記電気剥離型粘着シートは導電性基材と、前記導電性基材の一方の面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層と、前記導電性基材の前記第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層とを備え、
前記第1の被着体は導電性であり、前記第1の粘着剤層に貼着されており、
前記第2の被着体は前記第2の粘着剤層に貼着されており、
前記複数の電気剥離型粘着シートの導電性基材同士が、単一の部材ですべての前記電気剥離型粘着シートを接続する連結部材により電気的に接続されている接合体
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気剥離用粘着剤組成物から形成された粘着剤層を含む電気剥離型粘着シート、当該粘着シートと被着体の接合体、及び当該接合体の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造工程等において、歩留まり向上のためのリワークや、使用後に部品を分解して回収するリサイクル等に関する要望が増している。このような要望に応えるべく、電子部品製造工程等で部材間を接合するうえで、一定の接着力とともに一定の剥離性をも伴った両面粘着シートが利用される場合がある。
【0003】
接着力と剥離性を実現する両面粘着シートとして、接着剤層に電圧を印加することにより剥離する電気剥離用粘着剤組成物からなる電気剥離型粘着剤層を備える粘着シート(電気剥離型粘着シート)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合する被着体のサイズが大きい場合は、被着体のサイズに合わせて粘着シートを大面積化して用いることが考えられるが、このような場合には下記のような課題がある。
すなわち、まず、粘着シートの大面積化により被着体と粘着シートとの間に気泡が混入しやすくなるが、気泡が混入すると、粘着シートと被着体の接触面積が減少して被着体と粘着シートの間の接着力が低下するため、好ましくない。
また、被着体が例えば電子基板である場合には、その表面には各種素子などによる凹凸が存在する場合があり、このような凹凸を回避して粘着シートを被着体に貼着する必要があるが、粘着シートが大面積の場合は凹凸の回避が困難である。
【0006】
上記課題を解決するために、被着体の接合に複数の粘着シートを使用することも考えられる。このようにすることで、粘着シートの大面積化による気泡の混入を回避でき、さらに表面の凹凸を回避するように各粘着シートを配置することもできる。しかし、このような場合には、剥離の際にそれぞれの粘着シートの電気剥離型粘着剤層に電圧を印加する必要がある為、工数が増加し、作業性が低下する。
【0007】
したがって、電気剥離型粘着シートによる被着体の接合においては、気泡の混入の抑制、表面の凹凸などの回避の容易性、及び剥離時の工数の増加に伴う作業性の低下の抑制を同時に実現することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する電気剥離型粘着シート、及び接合体により上記課題を達成できることを見出した。また、特定の剥離方法によっても上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の参考例に係る電気剥離型粘着シートは、少なくとも一方の面が導電性を有する通電用基材と、通電用基材の導電性を有する面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層と、通電用基材の第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層とを備える電気剥離型粘着シートであって、複数の被連結部と、複数の被連結部同士を連結する連結部とを備える。
以下、「第1の実施形態」は「第1の参考例」に読み替える。
【0010】
本発明の第1の実施形態の一態様において、電気剥離型粘着シートは櫛形であってもよい。
【0011】
また、本発明の第1の実施形態に係る接合体は、本発明の第1の実施形態に係る電気剥離型粘着シートと、第1の粘着剤層に貼着された第1の被着体と、第2の粘着剤層に貼着された第2の被着体とを備える接合体であって、第1の被着体は導電性である。
【0012】
また、本発明の第2の実施形態に係る接合体は、第1の被着体と第2の被着体とが複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体であって、電気剥離型粘着シートは導電性基材と、導電性基材の一方の面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層と、導電性基材の第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層とを備え、第1の被着体は導電性であり、第1の粘着剤層に貼着されており、第2の被着体は第2の粘着剤層に貼着されており、複数の電気剥離型粘着シートの導電性基材同士が、連結部材により電気的に接続されている。
【0013】
また、本発明の第3の参考例に係る接合体は、第1の被着体と第2の被着体とが複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体であって、電気剥離型粘着シートは電気剥離用粘着剤からなり、第1の被着体は電気剥離型粘着シートの一の面に貼着されており、第2の被着体は電気剥離型粘着シートの第1の被着体とは反対側の面に貼着されており、第1の被着体および第2の被着体が導電性である。
以下、「第3の実施形態」は「第3の参考例」に読み替える。
【0014】
また、本発明の第4の参考例に係る接合体は、第1の被着体と第2の被着体とが複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体であって、電気剥離型粘着シートは、導電性基材と、導電性基材上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層と、導電性基材の第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された導電性粘着剤からなる第2の粘着剤層とを備える電気剥離型粘着シートであって、複数の電気剥離型粘着シートの第1の粘着剤層はそれぞれ第1の被着体に貼着しており、第2の粘着剤層はそれぞれ第2の被着体に貼着しており、第1の被着体は導電性であり、第2の被着体は導電性を有する導電部を備え、複数の電気剥離型粘着シートのそれぞれの第2の粘着剤層が、導電部により電気的に接続されている。
以下、「第4の実施形態」は「第4の参考例」に読み替える。
【0015】
また、本発明の第5の参考例に係る接合体の剥離方法は、第1の被着体と第2の被着体とが複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体の剥離方法であって、電気剥離型粘着シートは少なくとも一方の面が導電性を有する通電用基材と、通電用基材の導電性を有する面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層と、通電用基材の第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層とを備え、第1の被着体は導電性であり、第1の粘着剤層に貼着されており、第2の被着体は第2の粘着剤層に貼着されており、治具により複数の電気剥離型粘着シートのそれぞれの通電用基材を電気的に接続し、複数の電気剥離型粘着シートのそれぞれの第1の粘着剤層に同時に電圧を印加しながら第1の被着体と第2の被着体を剥離する。
以下、「第5の実施形態」は「第5の参考例」に読み替える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係る電気剥離型粘着シートによれば、被着体への貼着時の気泡の混入を抑制することができ、表面の凹凸などの回避が容易である。
本発明の第1の実施形態に係る接合体は、剥離時の作業性に優れる。
本発明の第2~4の実施形態に係る接合体は、被着体が複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体であるが、剥離時の作業性に優れる。
本発明の第5の実施形態に係る接合体の剥離方法によれば、被着体が複数の電気剥離型粘着シートによって接合された接合体を良好な作業性で剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気剥離型粘着シートの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る接合体を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る接合体の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る接合体を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る接合体の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る接合体を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る接合体の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る接合体を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る接合体の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5の実施形態に係る接合体の剥離方法を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5の実施形態に係る接合体の剥離方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、以下、「本実施形態の粘着シート110」は「本参考例の粘着シート110」に読み替え、「本実施形態の接合体140」は「本参考例の接合体140」に読み替え、「本実施形態の接合体340」は「本参考例の接合体340」に読み替え、「本実施形態の接合体440」は「本参考例の接合体440」に読み替え、「本実施形態の剥離方法」は「本参考例の剥離方法」に読み替える。
【0019】
[第1の実施形態]
<粘着シート>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気剥離型粘着シート110(以下、単に「本実施形態の粘着シート110」や「粘着シート110」ともいう)の概略図である。本実施形態の粘着シート110は、少なくとも一方の面が導電性を有する通電用基材112と、通電用基材112の導電性を有する面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層111と、通電用基材112の第1の粘着剤層111とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層113とを備える電気剥離型粘着シートであって、複数の被連結部110aと、複数の被連結部110a同士を連結する連結部110bとを備える。
【0020】
(粘着シートの構成要素)
まず、本実施形態の粘着シート110を形成する各層や、被連結部、連結部について説明する。
【0021】
第1の粘着剤層111は、電気剥離用粘着剤からなる粘着剤層であって、粘着剤たるポリマーおよび電解質を含有する。
【0022】
第1の粘着剤層111に含有されるポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、およびエポキシ系ポリマーが挙げられる。また、第1の粘着剤層111は一種類のポリマーのみを含有してもよく、二種類以上のポリマーを含有してもよい。
コストの抑制や高い生産性の実現という観点からは、アクリル系ポリマーを含有することが好ましい。アクリル系ポリマーとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして含む重合体である。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
【0023】
第1の粘着剤層111がアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを含むことが好ましい。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチルブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、およびn-テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、およびイソノニル(メタ)アクリレートが好ましい。また、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。
【0024】
アクリル系ポリマーにおける、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットの割合は、第1の粘着剤層111について高い接着力を実現するという観点からは、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。すなわち、アクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、第1の粘着剤層111について高い接着力を実現するという観点からは、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0025】
第1の粘着剤層111がアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、第1の粘着剤層111について高い接着力を実現するという観点からは、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含むことが好ましい。極性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、およびビニル基含有モノマーが挙げられる。
【0026】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、およびカルボキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。また、一種類のカルボキシル基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のカルボキシル基含有モノマーを用いてもよい。
【0027】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。これらのうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。また、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。
【0028】
ビニル基含有モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、およびラウリン酸ビニルが挙げられる。これらのうち、酢酸ビニルが好ましい。また、一種類のビニル基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のビニル基含有モノマーを用いてもよい。
【0029】
上記のアクリル系ポリマーにおける、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合は、第1の粘着剤層111において凝集力を確保して第1の粘着剤層111の剥離後の被着体表面での糊残りを防止するという観点からは、好ましくは0.1質量%以上である。すなわち、上記のアクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における極性基含有モノマーの割合は、凝集力確保および糊残りの防止という観点からは、好ましくは0.1質量%以上である。また、上記のアクリル系ポリマーにおける、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合は、炭素数1~14のアルキル基を有する上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットに起因する特性をアクリル系ポリマーにおいて適切に発現させるという観点からは、好ましくは30質量%以下である。すなわち、上記のアクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における極性基含有モノマーの割合は、当該特性の発現という観点からは、好ましくは30質量%以下である。
【0030】
上記のようなモノマーを重合してアクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
【0031】
第1の粘着剤層111におけるポリマーの含有量は、第1の粘着剤層111において充分な接着力を実現するという観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0032】
第1の粘着剤層111に含有される電解質は、アニオンとカチオンとに電離可能な物質であり、そのような電解質としては、イオン液体や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。第1の粘着剤層111において良好な電気剥離性を実現するという観点からは、第1の粘着剤層111に含有される電解質としては、イオン液体が好ましい。イオン液体は、室温(約25℃)で液体の塩であってアニオンとカチオンとを含む。
【0033】
第1の粘着剤層111がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のアニオンは、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、Br-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、NO3
-、BF4
-、PF6
-、CH3COO-、CF3COO-、CF3CF2CF2COO-、CF3SO3
-、CF3(CF2)3SO3
-、AsF6
-、SbF6
-およびF(HF)n
-からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。なかでもアニオンとしては、(FSO2)2N-[ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン],および(CF3SO2)2N-[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン]が、化学的に安定であり、第1の粘着剤層111の電気剥離性を実現するうえで好適であることから好ましい。
【0034】
第1の粘着剤層111がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のカチオンは、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0035】
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へプチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ノニル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ウンデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-トリデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘプタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ウンデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、および1,3-ビス(ドデシル)イミダゾリウムカチオンが挙げられる。
【0036】
ピリジニウム系カチオンとしては、例えば、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、および1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオンが挙げられる。
【0037】
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオンおよび1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオンが挙げられる。
【0038】
アンモニウム系カチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、テトラデシルトリヘキシルアンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、およびトリメチルアミノエチルアクリレートカチオンが挙げられる。
【0039】
第1の粘着剤層111中のイオン液体としては、カチオンについての高い拡散性を利用して第1の粘着剤層111において高い電気剥離性を実現するという観点から、上記の(FSO2)2N-[ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン]と分子量160以下のカチオンとを含むイオン液体が特に好ましい。分子量160以下のカチオンとしては、例えば、1-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、およびトリメチルアミノエチルアクリレートカチオンが挙げられる。
【0040】
第1の粘着剤層111に含有されるイオン液体の市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「エレクセルAS-110」、「エレクセルMP-442」、「エレクセルIL-210」、「エレクセルMP-471」、「エレクセルMP-456」、および「エレクセルAS-804」が挙げられる。
【0041】
アルカリ金属塩としては、例えば、LiCl、Li2SO4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、NaCl、Na2SO4、NaBF4、NaPF6、NaClO4、NaAsF6、NaCF3SO3、NaN(SO2CF3)2、NaN(SO2C2F5)2、NaC(SO2CF3)3、KCl、K2SO4、KBF4、KPF6、KClO4、KAsF6、KCF3SO3、KN(SO2CF3)2、KN(SO2C2F5)2およびKC(SO2CF3)3が挙げられる。
【0042】
第1の粘着剤層111におけるイオン液体の含有量は、第1の粘着剤層111において電気剥離性を付与するために例えば第1の粘着剤層111内のポリマー100質量部に対し、0.1質量部以上であり、より良好な電気剥離性を実現するという観点からは、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上、特に好ましくは1.0質量部以上、最も好ましくは1.5質量部以上である。第1の粘着剤層111について良好な接着力と電気剥離性とをバランス良く実現するという観点からは、第1の粘着剤層111におけるイオン液体の含有量は、第1の粘着剤層111内のポリマー100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは5質量部以下である。
【0043】
第1の粘着剤層111は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、粘着付与剤、シランカップリング剤、着色剤、顔料、染料、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状物、および箔状物が挙げられる。これら成分の含有量は、使用目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲において決定される。例えば、ポリマー100質量部に対して例えば10質量部以下である。
【0044】
第1の粘着剤層111の厚さは特に限定されないが、第1の粘着剤層111において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは8μm以上である。また、被着体剥離の際の印加電圧を低減するという観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
【0045】
第2の粘着剤層113は、第2の粘着剤層113にて粘着性を発現させるためのポリマーを含有する。第2の粘着剤層113に含有される成分とその含有量については、電解質の点を除き、第1の粘着剤層111に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。
第2の粘着剤層113の厚さは特に限定されないが、第2の粘着剤層113において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは8μm以上である。また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0046】
通電用基材112は、少なくとも片方の面において導電性を有する限り特に限定はされない。例えば
図1に示すように導電層112aと基材層112bとを含む積層構造であってもよく、金属箔などからなる単
層構造であってもよい。
【0047】
通電用基材112の厚みは特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
【0048】
通電用基材112が導電層112aと基材層112bとを含む積層構造である場合、基材層112bは、支持体として機能する部位であり、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材、または紙系基材、これらの積層体等が挙げられる。基材層112bは単層であっても複層であってもよい。また、基材層112bには、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、下塗り処理等の各種処理が施されていてもよい。
【0049】
基材層112bの厚みは特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
【0050】
導電層112aは、導電性を有する層であり、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。このような導電層112aは、メッキ法、化学蒸着法、またはスパッタリング法等によって形成することができる。
【0051】
導電層112aの厚みは特に限定されないが、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましく、0.05μm以上であることが特に好ましい。また、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0052】
本実施形態の粘着シート110は、複数の被連結部110aを備える。被連結部110aの大きさや形状は特に限定されず、被連結部110aごとに異なってもよく、同じでもよい。また、被連結部110aの個数も特に限定されるものではない。
また、複数の被連結部110aは連結部110bにより連結されている。連結部110bの大きさや形状も特に限定されず、連結部110bごとに異なってもよく、同じでもよい。また、個数も特に限定されない。本実施形態の粘着シート110において、すべての被連結部110aは、少なくとも1つの他の被連結部110aと連結部110bにより連結されている。
【0053】
上記のような本実施形態の粘着シート110は、一様な粘着シートと比較してそれぞれの被連結部110a及び連結部110bの面積が小さいため、貼付時の気泡の混入を抑制することができる。また、複数の被連結部110a間にすき間が存在するため、被着体表面の凹凸などが当該すき間に位置するようにして被着体の接合を行うことができる。
さらに、一様な粘着シートと比較して本実施形態の粘着シート110は面積が小さいため、コスト削減の観点からも好ましい。
【0054】
なお、本実施形態の粘着シート110の第1の粘着剤層111及び第2の粘着剤層113の表面には、セパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シート110の第1の粘着剤層111及び第2の粘着剤層113が露出しないように保護するための要素であり、粘着シート110を被着体に貼付する際に粘着シート110から剥がされる。2枚のセパレーターによって粘着シート110が挟まれる形態をとってもよいし、粘着シート110とセパレーターとが交互に配されるように粘着シート110がセパレーターを伴ってロール状に巻回された形態をとってもよい。セパレーターとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材、および、無極性ポリマーからなる低接着性基材が挙げられる。セパレーターの表面は、離型処理、防汚処理、または帯電防止処理が施されていてもよい。セパレーターの厚さは、例えば5~200μmである。
【0055】
(粘着シートの接着力)
粘着シート110の各粘着面、即ち、第1の粘着剤層111側の表面及び第2の粘着剤層113の側の表面については、良好な接着力を実現するという観点から、その180°剥離粘着力(対SUS304板,引張速度300mm/分,剥離温度23℃)が0.1N/10mm以上であることが好ましい。粘着シート110の180°剥離粘着力については、例えば以下のようにして、JIS Z 0237に準じて測定することができる。
まず、両面にセパレーターを伴う粘着シート110について、一方のセパレーターを剥がした後、露出した粘着面に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて、粘着シート110を裏打ちする。次に、この裏打ちされた粘着シート110から試験片(幅10mm×長さ100mm)を切り出す。次に、この試験片から他方のセパレーターを剥がし、試験片を被着体たるステンレス板(SUS304)に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させることによって試験片と被着体とを圧着させる。そして、30分間静置した後、剥離試験機(商品名「変角ピール測定機YSP」,旭精工株式会社製)を使用して、180°剥離粘着力(引張速度:300mm/分,剥離温度23℃)を測定する。
【0056】
(粘着シートの製造方法)
粘着シートの製造においては、例えば、まず、第1の粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(第1組成物)、および、第2の粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(第2組成物)を、それぞれ作製する。次に、第1組成物を通電用基材の導電性を有する面に塗布してこれを乾燥させる。これによって第1の粘着剤層が形成される。次に、第2組成物を通電用基材の反対側に塗布してこれを乾燥させる。これによって第2の粘着剤層が形成される。例えばこのようにして、粘着シートを製造することができる。
【0057】
或は、いわゆる転写法によって粘着シートを製造してもよい。具体的には、まず、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層をそれぞれセパレーター(剥離ライナー)上に形成する。第1の粘着剤層については、第1の粘着剤層形成用の上記第1組成物を所定のセパレーターの剥離処理面に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させて形成する。第2の粘着剤層については、第2の粘着剤層形成用の上記第2組成物を所定のセパレーターの剥離処理面に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を乾燥させて形成する。次に、セパレーターを伴う第1の粘着剤層を通電用基材の導電層の側に貼り合せる。次に、セパレーターを伴う第2の粘着剤層を通電用基材の基材層の側に貼り合せる。例えばこのようにして、粘着シートを製造することができる。
【0058】
粘着シート110を製造する際には、製造する粘着シート110と同じ形状(以下、「所望の形状」ともいう)の通電用基材112を用いて上記の方法で粘着シート110を製造してもよく、所望の形状とは異なる形状の通電用基材を用いて上記の方法で製造した粘着シート(以下、「粘着シート材」ともいう)を切断して所望の形状とすることで粘着シート110を製造してもよい。
【0059】
粘着シート材を切断して粘着シート110を製造する場合には、粘着シート110の形状は、単一の連結部110bから複数の被連結部110aが延出するような形状とすることが好ましく、単一の連結部110bから複数の被連結部110aが同一方向に延出するような形状、即ち図1に示すような櫛形とすることが好ましい。このような場合には、2つの櫛形の粘着シート110が噛みあったような形で得られるように粘着シート材を切断して粘着シート110を製造することで、粘着シート材の廃棄部分を減らすことができ、粘着シート110の製造コストを減少することができるためである。
【0060】
<接合体、接合体の電気剥離方法>
(接合体)
次に、第1の実施形態の粘着シート110を用いて得られる接合体について説明する。
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る接合体140(以下、単に「本実施形態の接合体140」や「接合体140」ともいう)の側面図であり、
図2(b)は本実施形態の接合体140の斜視図である。
図3は、本実施形態の接合体140の分解斜視図である。
本実施形態の接合体140は、本実施形態の粘着シート110と、第1の粘着剤層111に貼着された第1の被着体120と、第2の粘着剤層113に貼着された第2の被着体130とを備える接合体であって、第1の被着体120は導電性である。
【0061】
第1の被着体120は導電性を有すれば特に限定されず、このような被着体の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、および、これらを含有する合金が挙げられる。また、導電性ポリマー等であってもよい。なお、導電性は少なくとも本発明の効果を奏するために必要な部分においてあればよく、第1の被着体120においては、少なくとも第1の粘着剤層111と接触する部分、及び電圧印加デバイスの端子を接触させる部分において導電性があり、これらの部分が導通していればよい。一方、本実施形態において第2の被着体130は導電性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0062】
(電気剥離方法)
上記のような構成の接合体140の電気剥離の際には、粘着シート110の第1の粘着剤層111に対し、第1の被着体120と通電用基材112とを介して電圧を印加する。本実施形態の接合体140を接合する粘着シート110においては、複数の被連結部110aがそれぞれ連結部110bにより連結されているため、全ての被連結部110a、及び連結部110bに対して、同時に電圧を印加することが容易である。
なお、電圧印加の際に端子を第1の被着体120及び通電用基材112に接触させる方法は特に限定されないが、第1の被着体120及び通電用基材112に対して、同じ方向からそれぞれ電圧印加デバイスの端子を接触させることが、作業性の観点から特に好ましい。
【0063】
例えば第1の被着体の方向から第1の被着体120及び通電用基材112に端子を接触させる場合、通電用基材112に対する電圧印加デバイスの端子の接触を容易にするために、粘着シート110は、接合体140を第1の被着体120の方向から平面視で観察した際に第1の被着体120からはみ出す部分を備えてもよい。この部分は第1の粘着剤層111を備えてもよく、第1の粘着剤層111を備えずに通電用基材112の導電性を有する面が露出していてもよい。このような部分を備えることにより、通電用基材112に第1の被着体120の方向から電圧印加デバイスの端子を接触させることが容易となる。なお、このような部分が第1の粘着剤層111を備える場合には、端子を、第1の粘着剤層111を貫通させて通電用基材に接触させる。
また、例えば第1の被着体120及び第1の粘着剤層111を貫通させて端子を通電用基材112に接触させてもよい。
【0064】
接合体140の電気剥離の際の第1の粘着剤層111に対する印加電圧は、1V以上であることが好ましく、3V以上であることがより好ましく、6V以上であることがさらに好ましい。また、100V以下であることが好ましく、50V以下であることがより好ましく、30V以下であることがさらに好ましく、15V以下であることが特に好ましい。このような範囲内であると、接合体の分離作業を効率よく行うことができるため、好適である。例えば、このような範囲内であると、電圧印加デバイスの電源として乾電池など入手しやすいものを用いることが可能である。
また、第1の粘着剤層111に対する電圧の印加時間は短いことが好ましく、具体的には、好ましくは60秒以内、より好ましくは40秒以内、より好ましくは20秒以内である。このような範囲内であると、接合体の分離作業の効率化を図るうえで好適である。
これら好ましい印加電圧や好ましい印加時間については、後述の第2~5の実施形態においても同様である。
【0065】
[第2の実施形態]
図4(a)は、本発明の第2の実施形態に係る接合体240(以下、単に「本実施形態の接合体240」や「接合体240」ともいう)の側面図であり、
図4(b)は本実施形態の接合体240の斜視図である。
図5は、本実施形態の接合体240の分解斜視図である。
本実施形態の接合体240は、第1の被着体220と第2の被着体230とが複数の電気剥離型粘着シート210によって接合された接合体であって、電気剥離型粘着シート210は導電性基材212と、導電性基材212の一方の面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層211と、導電性基材212の第1の粘着剤層211とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層213とを備え、第1の被着体220は導電性であり、第1の粘着剤層211に貼着されており、第2の被着体230は第2の粘着剤層213に貼着されており、複数の電気剥離型粘着シート210の導電性基材212同士が、連結部材214により電気的に接続されている。
【0066】
<粘着シート>
まず、本実施形態の接合体240における電気剥離型粘着シート210(以下、単に「粘着シート210」ともいう)について説明する。
粘着シート210における第1の粘着剤層211及び第2の粘着剤層213については、第1の実施形態における第1の粘着剤層111及び第2の粘着剤層113と同様である。また、これらの粘着剤層は第1の実施形態と同様に、セパレーターで保護されていてもよい。また、粘着シート210の粘着力の好ましい範囲についても第1の実施形態において説明したものと同様であり、粘着シート210の製造方法についても、第1の実施形態について説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0067】
粘着シート210における導電性基材212は、導電性を有していればよく、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。具体的には、例えば金属箔などを用いることができる。
【0068】
<接合体>
接合体240は、第1の被着体220と第2の被着体230とが複数の粘着シート210によって接合された接合体である。
本実施形態の接合体240における第1の被着体220及び第2の被着体230については、それぞれ第1の実施形態における被着体120及び第2の被着体130と同様である。
本実施形態の接合体240において、第1の被着体220と第2の被着体230との接合に用いる粘着シート210の数は複数であれば特に限定されない。粘着シート210の形状や大きさも特に限定されず、粘着シート210ごとに異なっていても、同じでもよい。
【0069】
上記のような構成の本実施形態の接合体240においては、一様な粘着シートを用いて被着体同士を接合して得られた接合体と比較して、複数の粘着シート210のそれぞれの面積が小さいため、貼付時の気泡の混入が抑制されている。また、被着体表面の凹凸などを回避するように複数の粘着シート210を配置して接合体を形成することができる。
さらに、一様な粘着シートを用いて被着体同士を接合して得られた接合体と比較して、使用する粘着シート210の総面積が小さいため、コスト削減の観点からも好ましい。
【0070】
本実施形態の接合体240において、連結部材214は複数の粘着シート210の導電性基材212を電気的に接続することができれば特に限定はされないが、
図5に示すように、各粘着シート210にそれぞれ第2の粘着剤層213を備えない部分を設け、その部分に連結部材214を配置することが好ましい。
連結部材214は、例えば金属や導電性ポリマーよりなる。具体的には、例えば金属箔などを用いることができる。連結部材214は単一の部材ですべての粘着シート210の導電性基材212を電気的に接続するような構成であってもよく、複数の部材からなってすべての粘着シート210の導電性基材212を電気的に接続するような構成であってもよいが、製造の容易性の観点から、単一の部材からなることが好ましい。
【0071】
(電気剥離方法)
上記のような構成の接合体240の電気剥離の際には、複数の粘着シート210の第1の粘着剤層211に対し、第1の被着体220と導電性基材212とを介して電圧を印加する。本実施形態の接合体240を接合する複数の粘着シート210のそれぞれの導電性基材212は、連結部材214により電気的に接続されているため、全ての粘着シート210の第1の粘着剤層211に対して、同時に電圧を印加することが容易である。
なお、電圧印加の際には、第1の被着体220、及び、導電性基材212又は連結部材214に対して、同じ方向からそれぞれ電圧印加デバイスの端子を接触させることが、作業性の観点から特に好ましい。
【0072】
導電性基材212又は連結部材214に対する電圧印加デバイスの端子の接触を容易にするために、例えば、第1の実施形態において示したように、粘着シート210又は連結部材214は、接合体240を第1の被着体220の方向から平面視で観察した際に第1の被着体220からはみ出す部分を備えてもよい。
また、第1の実施形態において示したように第1の被着体220を貫通させて端子を導電性基材212又は連結部材214に接触させてもよい。
【0073】
[第3の実施形態]
図6(a)は、本発明の第3の実施形態に係る接合体340(以下、単に「本実施形態の接合体340」や「接合体340」ともいう)の側面図であり、
図6(b)は本実施形態の接合体340の斜視図である。
図7は、本実施形態の接合体340の分解斜視図である。
本実施形態の接合体340は、第1の被着体320と第2の被着体330とが複数の電気剥離型粘着シート310によって接合された接合体であって、電気剥離型粘着シート310は電気剥離用粘着剤からなり、第1の被着体320は電気剥離型粘着シート310の一の面に貼着されており、第2の被着体330は電気剥離型粘着シート310の第1の被着体320とは反対側の面に貼着されており、第1の被着体320および第2の被着体330が導電性である。
【0074】
<粘着シート>
まず、本実施形態の接合体340における電気剥離型粘着シート310(以下、単に「粘着シート310」ともいう)について説明する。
粘着シート310は、電気剥離用粘着剤からなる粘着シートであり、基材層などを有さない。粘着シート310の成分や好ましい厚み等については、第1の実施形態における第1の粘着剤層111について説明したものと同様である。
【0075】
粘着シート310の製造方法は特に限定されないが、例えば粘着シート310をセパレーター(剥離ライナー)上に形成し、さらにその上にセパレーターを貼り合わせることで、両面がセパレーターで保護された粘着シート310を製造することができる。
また、粘着シート310の形成用の組成物を直接被着体に塗布することによっても製造することができる。
【0076】
<接合体>
接合体340は、第1の被着体320と第2の被着体330とが複数の粘着シート310によって接合された接合体である。本実施形態においては第1の被着体320と第2の被着体330のいずれもが導電性であり、いずれも第1の実施形態における第1の被着体120と同様のものを用いることができる。
本実施形態の接合体340において、第1の被着体320と第2の被着体330との接合に用いる粘着シート310の数は複数であれば特に限定されない。複数の粘着シート310により接合体を形成することにより奏する効果については、第2の実施形態において説明したものと同様である。
また、第3の実施形態の接合体340における粘着シート310は、基材を有さない単層構造であるため非常に薄く、したがって、第3の実施形態の接合体340の小型化の観点から特に優れる。
【0077】
(電気剥離方法)
上記のような構成の接合体340の電気剥離の際には、複数の粘着シート310に対し、第1の被着体320と第2の被着体330とを介して電圧を印加する。
なお、電圧印加の際には、第1の被着体320及び第2の被着体330に対して、同じ方向からそれぞれ電圧印加デバイスの端子を接触させることが、作業性の観点から特に好ましい。
【0078】
例えば第1の被着体の方向から両被着体に端子を接触させる場合、第2の被着体330に対する接触を容易にするために、第2の被着体330は、接合体340を第1の被着体320の方向から平面視で観察した際に第1の被着体320からはみ出すような部分があるように構成されていてもよく、また、第1の被着体320より一回り大きく構成されていてもよい。
また、第1の実施形態において示したように第1の被着体320を貫通させて端子を第2の被着体330に接触させてもよく、その際には、さらに粘着シート310を突き破って第2の被着体330に端子を接触させるようにしてもよい。
【0079】
[第4の実施形態]
図8(a)は、本発明の第4の実施形態に係る接合体440(以下、単に「本実施形態の接合体440」や「接合体440」ともいう)の側面図であり、
図8(b)は本実施形態の接合体440の斜視図である。
図9は、本実施形態の接合体440の分解斜視図である。
本実施形態の接合体440は、第1の被着体420と第2の被着体430とが複数の電気剥離型粘着シート410によって接合された接合体であって、粘着シート410は、導電性基材412と、導電性基材412上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層
411と、導電性基材の第1の粘着剤層411とは反対側の面上に形成された導電性粘着剤からなる第2の粘着剤層413とを備える粘着シートであって、複数の粘着シート410の第1の粘着剤層411はそれぞれ第1の被着体420に貼着しており、第2の粘着剤層413はそれぞれ第2の被着体430に貼着しており、第1の被着体420は導電性であり、第2の被着体430は導電性を有する導電部431を備え、複数の粘着シート410のそれぞれの第2の粘着剤層413が、導電部431により電気的に接続されている。
【0080】
<粘着シート>
まず、本実施形態の接合体440における電気剥離型粘着シート410(以下、単に「粘着シート410」ともいう)について説明する。
粘着シート410における第1の粘着剤層411は、第1の実施形態における第1の粘着剤層111と同様のものを用いることができる。
また、導電性基材412は、第2の実施形態における導電性基材212と同様のものを用いることができる。
【0081】
第2の粘着剤層413は、導電性粘着剤からなる層である。第2の粘着剤層を構成する導電性粘着剤は特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、導電成分(例えば銀フィラー)を3~70重量%程度含む粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)を用いることができる。
【0082】
また、第1の粘着剤層411及び第2の粘着剤層413は第1の実施形態と同様に、セパレーターで保護されていてもよい。また、粘着シート410の粘着力の好ましい範囲についても第1の実施形態において説明したものと同様であり、粘着シート410の製造方法についても、第1の実施形態について説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0083】
<接合体>
接合体440は、第1の被着体420と第2の被着体430とが複数の粘着シート410によって接合された接合体である。
本実施形態の接合体440における第1の被着体420については、第1の実施形態における被着体120と同様である。
【0084】
第2の被着体430は導電性を有する導電部431を備え、この導電部により複数の粘着シート410のそれぞれの第2の粘着剤層413が電気的に接続されていれば特に限定はされない。
導電部は第2の被着体430の粘着シート410が貼付される面の全面にわたって形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。また、部分的に形成される場合は、
図9に示すように単一の導電部431によりすべての粘着シート410の第2の粘着剤層413が電気的に接続されるような構成であってもよく、また、複数の導電部431によりすべての粘着シート410の第2の粘着剤層413が電気的に接続されるような構成であってもよい。
【0085】
導電部431を形成する方法は特に限定されないが、例えば第2の被着体430が金属等の導電性材料に絶縁性のコーティングを施した部材である場合には、絶縁性のコーティングを削って導電性材料を露出させることにより、導電部431を形成することができる。
また、絶縁性材料からなる第2の被着体430の表面に金属等の導電性材料によるコーティングを施すことによって導電部431を形成することもできる。
【0086】
本実施形態の接合体440において、第1の被着体420と第2の被着体430との接合に用いる粘着シート410の数は複数であれば特に限定されない。複数の粘着シート410により接合体を形成することにより奏する効果については、第2の実施形態において説明したものと同様である。
【0087】
(電気剥離方法)
上記のような構成の接合体440の電気剥離の際には、複数の粘着シート410の第1の粘着剤層411に対し、第1の被着体420と導電性基材412とを介して電圧を印加する。本実施形態の接合体440を接合する複数の粘着シート410の導電性基材412は、それぞれ第2の粘着剤層413及び導電部431により電気的に接続されているため、全ての粘着シート410の第1の粘着剤層411に対して、同時に電圧を印加することが容易である。
なお、電圧印加の際には、第1の被着体420及び、導電性基材412又は導電部431に対して、同じ方向からそれぞれ電圧印加デバイスの端子を接触させることが、作業性の観点から特に好ましい。
【0088】
導電性基材412又は導電部431に対する電圧印加デバイスの端子の接触を容易にするために、例えば、第1の実施形態において示したように、粘着シート410又は導電部431は、接合体440を第1の被着体420の方向から平面視で観察した際に第1の被着体420からはみ出す部分を備えてもよい。
また、第1の実施形態において示したように第1の被着体420を貫通させて端子を導電性基材412又は導電部431に接触させてもよい。
【0089】
[第5の実施形態]
図10(a)は、本発明の第5の実施形態に係る接合体の剥離方法(以下、単に「本実施形態の剥離方法」ともいう)の概要を示す側面図であり、
図10(b)は本実施形態の剥離方法の概要を示す平面図である。
図11は、本実施形態の剥離方法の概要を示す斜視図である。
本実施形態の剥離方法は、第1の被着体520と第2の被着体530とが複数の電気剥離型粘着シート510によって接合された接合体
540の剥離方法であって、電気剥離型粘着シート510は少なくとも一方の面が導電性を有する通電用基材512と、前記通電用基材の導電性を有する面上に形成された電気剥離用粘着剤からなる第1の粘着剤層511と、通電用基材の第1の粘着剤層とは反対側の面上に形成された第2の粘着剤層513とを備え、第1の被着体520は導電性であり、第1の粘着剤層511に貼着されており 、第2の被着体530は第2の粘着剤層513に貼着されており、治具550により複数 の電気剥離型粘着シート510のそれぞれの通電用基材512を電気的に接続し、複数の 電気剥離型粘着シート510のそれぞれの第1の粘着剤層511に同時に電圧を印加しな がら第1の被着体520と第2の被着体530を剥離する。
【0090】
<粘着シート>
まず、本実施形態の剥離方法において剥離する接合体540を形成する電気剥離型粘着シート510(以下、単に「粘着シート510」ともいう)について説明する。
粘着シート510における第1の粘着剤層511、通電用基材512、及び第2の粘着剤層513については、第1の実施形態における第1の粘着剤層111、通電用基材112、及び第2の粘着剤層113と同様のものを用いることができる。また、これらの粘着剤層は第1の実施形態と同様に、セパレーターで保護されていてもよい。また、粘着シート510の粘着力の好ましい範囲についても第1の実施形態において説明したものと同様であり、粘着シート510の製造方法についても、第1の実施形態について説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0091】
<接合体>
本実施形態の剥離方法において剥離する接合体540は、第1の被着体520と第2の被着体530とが複数の粘着シート510によって接合された接合体である。
接合体540における第1の被着体520及び第2の被着体530については、それぞれ第1の実施形態における被着体120及び第2の被着体130と同様のものを用いることができる。
接合体540において、第1の被着体520と第2の被着体530との接合に用いる粘着シート510の数は複数であれば特に限定されず、形状や大きさも特に限定されない。複数の粘着シート510により接合体を形成することにより奏する効果については、第2の実施形態において説明したものと同様である。
【0092】
(電気剥離方法)
本実施形態の剥離方法においては、複数の粘着シート510のそれぞれの第1の粘着剤層に対し、第1の被着体520と通電用基材512とを介して電圧を印加する。この際には、治具550により複数の電気剥離型粘着シート510のそれぞれの通電用基材512を電気的に接続することで、複数の電気剥離型粘着シート510のそれぞれの第1の粘着剤層511に同時に電圧を印加する。
【0093】
治具550は複数の電気剥離型粘着シート510のそれぞれを同時に電気的に接続することができればその形状や材料は特に限定されない。治具550の一例として、
図10に示すような、刃物状であり、それぞれの粘着シート510の第1の粘着剤層を貫通してそれぞれの通電用基材512に接触することができるような治具が挙げられる。
【0094】
通電用基材512に対する治具の接触を容易にするために、例えば
図10に示すように、通電用基材512が、接合体540を第1の被着体520の方向から平面視で観察した際に第1の被着体520からはみ出すように構成されていてもよい。
また、第1の被着体520に治具挿入用のすき間を設け、そのすき間を通して治具550を通電用基材512に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0095】
110、210、310、410、510:電気剥離型粘着シート
110a:被連結部
110b:連結部
111、211、411、511:第1の粘着剤層
112、512:通電用基材
112a、512a:導電層
112b、512b:基材層
212、412:導電性基材
113、213、413、513:第2の粘着剤層
214:連結部材
120、220、320、420、520:第1の被着体
130、230、330、430、530:第2の被着体
431:導電部
140、240、340、440、540:接合体
550:治具