IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7556935積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置
<>
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図1
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図2
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図3
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図4
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図5
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図6
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図7A
  • 特許-積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】積層体、光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびに光学装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240918BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240918BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240918BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240918BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B3/30
B32B7/023
B32B27/30
C09J133/00
C09J167/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022501090
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006452
(87)【国際公開番号】W WO2021167090
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020028232
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】水野 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜樹子
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚史
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112966(JP,A)
【文献】特開2011-215601(JP,A)
【文献】特開2012-008277(JP,A)
【文献】特開2011-026361(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182091(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/105217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
B32B 3/30
B32B 7/023
B32B 27/30
C09J 133/00
C09J 167/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1光学シートと、
前記第1光学シートの前記第1主面側に配置された接着剤層と
を有し、
前記凹凸構造は複数の凹部を含み、前記接着剤層の表面と前記第1光学シートの前記第1主面とが、前記複数の凹部に複数の空間を画定し、
前記凹凸構造は、前記接着剤層と接する平坦部を含み、
前記接着剤層は、回転式レオメータを用いたクリープ試験において、50℃で10000Paの応力を1秒間印加したときのクリープ変形率が10%以下であり、かつ、50℃で10000Paの応力を30分間印加したときのクリープ変形率が16%以下であり、
前記接着剤層は、PMMAフィルムに対する180°ピール接着力が、10mN/20mm以上であり、
前記接着剤層は、グラフトポリマーを含まず、
前記接着剤層は、以下の(1)または(2)の重合体の少なくとも1つを含む、光学積層体:
(1)窒素含有環状構造を有する窒素含有(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマーとの(メタ)アクリル系重合体;
(2)ポリエステル系重合体。
【請求項2】
前記接着剤層のヘイズが0.01%以上5%以下である、請求項1に記載の光学積層体
【請求項3】
前記接着剤層の厚さが0.1μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の光学積層体
【請求項4】
前記接着剤層は、カルボキシル基含有アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマー(ただし、窒素含有(メタ)アクリルモノマーを除く)との共重合体をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記接着剤層は、ポリエステル系重合体を含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学積層体
【請求項6】
前記接着剤層は、前記(メタ)アクリル系重合体を含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学積層体
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系重合体は架橋されている、請求項に記載の光学積層体
【請求項8】
前記接着剤層は、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物をさらに含む、請求項6または7に記載の光学積層体
【請求項9】
前記接着剤層は、前記(メタ)アクリル系重合体と前記活性エネルギー線硬化性樹脂と重合開始剤とを含む接着剤組成物層の前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることによって形成されている、請求項に記載の光学積層体
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の光学積層体が有する前記接着剤層と、
剥離処理された主面を有する基材と
を有し、
前記基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤層と貼り合されている、積層体。
【請求項11】
請求項に記載の光学積層体が有する前記接着剤層を形成する前記接着剤組成物層と、
剥離処理された主面を有する基材と
を有し、
前記基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤組成物層と貼り合されている、積層体。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学積層体を製造する方法であって、前記第1光学シートと前記接着剤層とを貼り合せる工程を含む、製造方法。
【請求項13】
前記工程はロール・ツー・ロール法で行われる、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記接着剤層の前記第1光学シート側と反対側に配置された第2光学シートをさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項15】
請求項14に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記第1光学シートおよび前記接着剤層が積層された第1積層体と、前記第2光学シートとを貼り合せる工程A1、または
前記接着剤層および前記第2光学シートが積層された第2積層体と、前記第1光学シートとを貼り合せる工程A2
のいずれか一方を含む、製造方法。
【請求項16】
前記工程A1を含み、前記工程A1は、前記第1積層体と前記第2光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、または
前記工程A2を含み、前記工程A2は、前記第2積層体と前記第1光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1から9および14のいずれか1項に記載の光学積層体を備える、光学装置。
【請求項18】
請求項に記載の光学積層体を製造する方法であって、
前記第1光学シートの前記第1主面上に、前記接着剤組成物層を付与する工程Aと、
前記第1光学シートの前記第1主面上に前記接着剤組成物層を付与した状態で、前記接着剤組成物層の前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる工程Bと
を含む、製造方法。
【請求項19】
前記工程Aは、前記第1光学シートと前記接着剤組成物層とをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項9を引用する請求項14に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記第1光学シートおよび前記接着剤組成物層が積層された第1積層体と、前記第2光学シートとを貼り合せる工程A1、または
前記接着剤組成物層および前記第2光学シートが積層された第2積層体と、前記第1光学シートとを貼り合せる工程A2
のいずれか一方と、
前記工程A1または前記工程A2の後に、前記接着剤組成物層に含まれる前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる工程Bと
を含む、製造方法。
【請求項21】
前記工程A1を含み、前記工程A1は、前記第1積層体と前記第2光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、または
前記工程A2を含み、前記工程A2は、前記第2積層体と前記第1光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、請求項20に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層、接着剤層を有する積層体、接着剤層を形成するための接着剤組成物層を有する積層体、接着剤層と光学シートとを有する光学積層体および光学積層体の製造方法、ならびにそのような光学積層体を備える光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学シート(例えば、マイクロレンズシート、プリズムシート、輝度上昇フィルム(例えば、3M社製のBrightness Enhancement Film:BEF(登録商標)))は、種々の光学装置(例えば、表示装置および照明装置)に用いられている。本明細書において、「光学シート」は、上記の例示したものに限られず、シート状の光学部材を広く含み、例えば、拡散板および導光板をさらに含む。光学シートは、例えば接着剤層を用いて、他の光学シートまたは光学装置に貼り付けられる。本明細書において、光学シートと接着剤層とを含む構成または複数の光学シートを含む構成を指して「光学積層体」という。本明細書において、「接着剤」は粘着剤(「感圧接着剤」ともいわれる。)を含む意味で用いる。
【0003】
本出願人は、表示装置や照明装置に用いられ得る光学積層体(特許文献1では「光学積層シート」と呼ばれている。)を特許文献1に開示している。特許文献1の光学積層体は、凹凸構造を表面に有する光学シート(例えばマイクロレンズシート)と、凹凸構造を有する表面に設けられた接着剤層とを有する。凹凸構造の凸部の高さの5%~90%が接着剤層で埋められている。接着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーに、環状エーテル基含有モノマーを含む鎖がグラフト重合されてなるグラフトポリマーおよび光カチオン系重合開始剤または熱硬化触媒を含む接着剤組成物から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-007046号公報(特許第5658490号公報)
【文献】国際公開第2019/087118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤層を用いて凹凸構造を表面に有する光学シートを貼り付ける際、接着剤層が凹凸構造の凹部に侵入する(凹部を埋める)程度は、光学シートの機能に影響する。したがって、接着剤層が凹凸構造の凹部に侵入する程度は、経時変化しないことが好ましい。
【0006】
また、光学装置に用いられる、光学シートと接着剤層とが積層された光学積層体または複数の光学シートが積層された光学積層体は、量産性の観点から、ロール・ツー・ロール方式で製造できることが好ましい。
【0007】
本発明は上記の課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、光学シートの凹凸構造の凹部に侵入する程度の経時変化が抑制された接着剤層、そのような接着剤層を有する積層体、そのような接着剤層を形成することができる接着剤組成物層を有する積層体、そのような接着剤層と光学シートとを有する光学積層体、または、ロール・ツー・ロール方式で製造できる光学積層体、およびそのような光学積層体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような光学積層体を備える光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
[項目1]
回転式レオメータを用いたクリープ試験において、50℃で10000Paの応力を1秒間印加したときのクリープ変形率が10%以下であり、かつ、50℃で10000Paの応力を30分間印加したときのクリープ変形率が16%以下であり、
PMMAフィルムに対する180°ピール接着力が、10mN/20mm以上である、接着剤層。
[項目2]
ヘイズが0.01%以上5%以下である、項目1に記載の接着剤層。
[項目3]
厚さが0.1μm以上20μm以下である、項目1または2に記載の接着剤層。
厚さは好ましくは15μm以下または10μm以下である。
[項目4]
以下の(1)から(3)の重合体の少なくとも1つを含む、項目1から3のいずれか1つに記載の接着剤層:
(1)窒素含有(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体;
(2)カルボキシル基含有アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマー(ただし、窒素含有(メタ)アクリルモノマーを除く)との共重合体;
(3)ポリエステル系重合体。
[項目5]
ポリエステル系重合体を含有する、項目1から4のいずれか1つに記載の接着剤層。
[項目6]
(メタ)アクリル系重合体を含有し、
前記(メタ)アクリル系重合体は、窒素含有(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体である、項目1から5のいずれか1つに記載の接着剤層。
[項目7]
前記窒素含有(メタ)アクリルモノマーは窒素含有環状構造を有する、項目6に記載の接着剤層。
[項目8]
前記(メタ)アクリル系重合体は架橋されている、項目6または7に記載の接着剤層。
[項目9]
グラフトポリマーを含まない、項目6から8のいずれか1つに記載の接着剤層。
[項目10]
活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物をさらに含む、項目6から9のいずれか1つに記載の接着剤層。
[項目11]
前記(メタ)アクリル系重合体と前記活性エネルギー線硬化性樹脂と重合開始剤とを含む接着剤組成物層の前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることによって形成されている、項目10に記載の接着剤層。
[項目12]
項目1から10のいずれか1つに記載の接着剤層と、
剥離処理された主面を有する基材と
を有し、
前記基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤層と貼り合されている、積層体。
項目12に記載の積層体を「接着シート」ということがある。
項目12に記載の積層体は、例えば、前記接着剤層の前記基材と反対側に配置された、剥離処理された主面を有する他の基材をさらに有してもよい。このとき、前記他の基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤と貼り合されている。
剥離処理された面(剥離処理面)は、剥離剤によって処理された面をいう。基材(支持体)の剥離処理された主面は、基材の一方の主面に剥離剤を塗布(付与)し、必要に応じてさらに乾燥などさせることによって形成される。剥離剤としては特に限定されないが、例えばシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、脂肪酸アミド系剥離剤を挙げることができる。
[項目13]
項目11に記載の接着剤層を形成する前記接着剤組成物層と、
剥離処理された主面を有する基材と
を有し、
前記基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤組成物層と貼り合されている、積層体。
項目13に記載の積層体を「接着シート」ということがある。
項目13に記載の積層体は、例えば、前記接着剤組成物層の前記基材と反対側に配置された、剥離処理された主面を有する他の基材をさらに有してもよい。このとき、前記他の基材の前記剥離処理された主面が前記接着剤組成物層と貼り合されている。
[項目14]
凹凸構造を有する第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する第1光学シートと、
前記第1光学シートの前記第1主面側に配置された項目1から11のいずれか1つに記載の接着剤層と
を有する、光学積層体。
[項目15]
前記凹凸構造は複数の凹部を含み、前記接着剤層の表面と前記第1光学シートの前記第1主面とが、前記複数の凹部に複数の空間を画定する、項目14に記載の光学積層体。
[項目16]
前記凹凸構造は、前記接着剤層と接する平坦部を含む、項目15に記載の光学積層体。
[項目17]
項目14から16のいずれか1つに記載の光学積層体を製造する方法であって、前記第1光学シートと前記接着剤層とを貼り合せる工程を含む、製造方法。
[項目18]
前記工程はロール・ツー・ロール法で行われる、項目17に記載の製造方法。
[項目19]
前記接着剤層の前記第1光学シート側と反対側に配置された第2光学シートをさらに備える、項目14から16のいずれか1つに記載の光学積層体。
[項目20]
項目19に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記第1光学シートおよび前記接着剤層が積層された第1積層体と、前記第2光学シートとを貼り合せる工程A1、または
前記接着剤層および前記第2光学シートが積層された第2積層体と、前記第1光学シートとを貼り合せる工程A2
のいずれか一方を含む、製造方法。
[項目21]
前記工程A1を含み、前記工程A1は、前記第1積層体と前記第2光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、または
前記工程A2を含み、前記工程A2は、前記第2積層体と前記第1光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、項目20に記載の製造方法。
[項目22]
項目14から16および19のいずれか1つに記載の光学積層体を備える、光学装置。
[項目23]
項目11を直接または間接的に引用する項目14から16のいずれか1つに記載の光学積層体を製造する方法であって、
前記第1光学シートの前記第1主面上に、前記接着剤組成物層を付与する工程Aと、
前記第1光学シートの前記第1主面上に前記接着剤組成物層を付与した状態で、前記接着剤組成物層の前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる工程Bと
を含む、製造方法。
[項目24]
前記工程Aは、前記第1光学シートと前記接着剤組成物層とをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、項目23に記載の製造方法。
[項目25]
項目11を間接的に引用する項目19に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記第1光学シートおよび前記接着剤組成物層が積層された第1積層体と、前記第2光学シートとを貼り合せる工程A1、または
前記接着剤組成物層および前記第2光学シートが積層された第2積層体と、前記第1光学シートとを貼り合せる工程A2
のいずれか一方と、
前記工程A1または前記工程A2の後に、前記接着剤組成物層に含まれる前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる工程Bと
を含む、製造方法。
[項目26]
前記工程A1を含み、前記工程A1は、前記第1積層体と前記第2光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、または
前記工程A2を含み、前記工程A2は、前記第2積層体と前記第1光学シートとをロール・ツー・ロール法で貼り合せる工程を含む、項目25に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によると、光学シートの凹凸構造の凹部に侵入する(埋める)程度の経時変化が抑制された接着剤層、そのような接着剤層を有する積層体、そのような接着剤層を形成することができる接着剤組成物層を有する積層体、そのような接着剤層と光学シートとを有する光学積層体、または、ロール・ツー・ロール方式で製造できる光学積層体、およびそのような光学積層体の製造方法が提供される。本発明の他の実施形態によると、そのような光学積層体を備える光学装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による光学積層体100Aの模式的な断面図である。
図2】本発明の他の実施形態による光学積層体101Aの模式的な断面図である。
図3】接着剤のクリープ曲線を示す模式図である。
図4】本発明のさらに他の実施形態による光学積層体100Bおよび光学積層体101Bの模式的な断面図である。
図5】光学積層体100Bが有する第1光学シート10bの模式的な斜視図である。
図6】光学積層体100Bを備える照明装置200の模式的な断面図である。
図7A】本発明の実施形態による光学積層体が有する賦形フィルム70の模式的な平面図である。
図7B】賦形フィルム70の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の実施形態による接着剤層、接着剤層を有する積層体、接着剤層を形成するための接着剤組成物層を有する積層体、および接着剤層と光学シートとを有する光学積層体、ならびに光学積層体の製造方法について説明する。
【0012】
図1および図2に、本発明の実施形態による光学積層体100Aおよび101Aの模式的な断面図をそれぞれ示す。図1に示すように、光学積層体100Aは、プリズムシート(第1光学シート)10aのプリズム面(第1主面)12sの凹凸構造上に接着剤層20aを有する。プリズムシート10aに代えて他の光学シート(例えばマイクロレンズシート)を用いてもよい。図2に示すように、光学積層体101Aは、光学積層体100Aと、接着剤層20aの第1光学シート10a側と反対側に配置された第2光学シート30とを有する。光学積層体100Aについての説明は、特に断らない限り光学積層体101Aについてもあてはまるので、重複を避けるために説明を省略することがある。
【0013】
光学積層体100A(または光学積層体101A)の製造工程において、接着剤層20aを、例えばロール・ツー・ロール法で、プリズムシート10aに貼り付ける際に、プリズムシート10aの凹凸構造の凹部に接着剤層20aが侵入し過ぎないことが求められる。また、接着剤層20aをプリズムシート10aに貼り付けた後、接着剤層20aが凹部に侵入する程度が経時変化しにくいことが求められる。
【0014】
本発明者は、接着剤層20aのクリープ変形率と、接着剤層20aをプリズムシート10aに貼り付ける際の侵入の程度および侵入の程度の経時変化との間に相関関係があり、クリープ変形率を用いて好適な接着剤層を選別できることを見出した。
【0015】
一般に、粘弾性を有する高分子物質に一定の応力が作用しているとき、図3に示すクリープ曲線で表されるように、時間とともにひずみ(変形率)が増加する現象(クリープ)が生じる。一定応力を与えたときの粘弾性体のひずみは、応力印加とともに瞬間的に生じる弾性成分、時間の増加関数として表され長時間後に一定値に達する粘弾性成分、および、時間に比例して増加する粘性成分とを含む。粘性成分により、長時間経過後もひずみは一定速度で増大し続ける。応力を除いた後、ひずみの粘性成分は回復せずに残留する。
【0016】
接着剤層20aを貼り合せる際に接着剤層20aが凹部に侵入する程度は、接着剤層20aの1秒後のクリープひずみ(「クリープ変形率A」という。)と相関がある。すなわち、接着剤層20aを貼り合せる際に接着剤層20aが凹部に侵入する程度は、接着剤層20aの弾性成分が主に影響している。一方、接着剤層20aの凹部への侵入の程度の経時変化は、接着剤層20aの30分(1800秒)後のクリープひずみ(「クリープ変形率B」という。)と相関がある。すなわち、接着剤層20aの凹部への侵入の程度の経時変化は、接着剤層20aの粘弾性成分および粘性成分が主に影響している。なお、接着剤層20aの凹部への侵入の程度は、光学積層体100Aの拡散透過率で評価することができる。プリズムシート10aの凹部に接着剤層20aが侵入する程度が大きいほど、拡散透過率は小さくなる。クリープ変形には、遷移クリープ(第1次クリープ)と呼ばれる、ひずみ速度(クリープ曲線の傾き)が次第に減少する変形初期の段階と、定常クリープ(第2次クリープ)と呼ばれる、ひずみ速度がほぼ一定になる段階とがある。図3に示すように、圧力印加後30分(1800秒)は、遷移クリープ後の定常クリープ領域に属する時刻である。
【0017】
後に実験例を示して説明するように、本発明の実施形態による光学積層体100Aが有する接着剤層20aは、回転式レオメータを用いたクリープ試験において、50℃で10000Paの応力を1秒間印加したときのクリープ変形率Aが10%以下であり、かつ、回転式レオメータを用いたクリープ試験において、50℃で10000Paの応力を30分間印加したときのクリープ変形率Bが16%以下である。実験例では、光学積層体の拡散透過率の評価結果についても示す。なお、接着剤層のクリープ変形率AおよびBならびに光学積層体の拡散透過率は、例えば後述する実験例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
クリープ変形率Aが10%以下の接着剤層20aは、貼り合せる際に接着剤層20aが凹部に侵入する程度は十分に小さく抑制される。クリープ変形率Bが16%以下の接着剤層20aは、凹部への侵入の程度の経時変化が十分に抑制される。接着剤層20aのクリープ変形率Aは、例えば、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下であり、接着剤層20aのクリープ変形率Bは、例えば、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、または10%以下である。クリープ変形率AおよびBの下限は特に限定されないが、例えば0超である。接着剤層20aは、クリープ変形率Aが8%以下であり、クリープ変形率Bが14%以下であることがより好ましく、クリープ変形率Aが5%以下であり、クリープ変形率Bが10%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
第2光学シート30は、接着剤層20a側の主面38sと、主面38sと反対側の主面32sとを有する。主面38sは、平坦な面である。第2光学シート30は、目的に応じて任意の適切な材料を採用することができる。第2光学シート30の材料としては、例えば、光透過性を有する熱可塑性樹脂が挙げられ、より具体的には、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、またはポリカーボネート(PC)系樹脂などにより形成されたフィルムが挙げられる。光学積層体101Aの第2光学シート30の接着剤層20aと反対側に(すなわち主面32s上に)、少なくとも1つの他の光学部材(または光学シート)が配置されていてもよい。他の光学部材(光学シート)は、例えば、拡散板、導光板などを含み、接着剤層を介して光学シート30の主面32s上に接着される。すなわち、本発明の他の実施形態の光学積層体は、光学積層体101Aと、光学積層体101Aの第2光学シート30の接着剤層20aと反対側に配置された少なくとも1つの他の光学シートとを含む。本発明の他の実施形態の光学装置は、光学積層体101Aと、光学積層体101Aの第2光学シート30の接着剤層20aと反対側に配置された他の光学部材とを含む。
【0020】
接着剤層20aのPMMAフィルムに対する180°ピール接着力は、例えば10mN/20mm以上である。その上限は特に限定されないが、例えば50N/20mm以下、40N/20mm以下、30N/20mm以下、20N/20mm以下、10N/20mm以下または1N/20mm以下である。接着剤層20aのヘイズは、例えば0.01%以上であり、かつ、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下または1.5%以下である。接着剤層20aの厚さは、例えば0.1μm以上、0.5μm以上または1.0μm以上であって、かつ、20μm以下、15μm以下、10μm以下または5μm以下である。接着剤層20aは、光学積層体100Aを他の光学シートまたは光学装置に貼り付けるために用いられる。なお、接着剤層のPMMAフィルムに対する180°ピール接着力ならびに接着剤層のヘイズは、例えば後述する実験例に記載の方法で測定することができる。
【0021】
接着剤層20aを形成する接着剤は、後に実験例を示して説明するように、以下の接着剤を好適に用いることができる。
【0022】
接着剤は、例えば(メタ)アクリル系重合体を含有し、(メタ)アクリル系重合体は、例えば、窒素含有(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体である。窒素含有(メタ)アクリルモノマーは、例えば、窒素含有環状構造を有する。窒素含有(メタ)アクリルモノマーを用いて(メタ)アクリル系重合体を調製すると、特に、窒素含有(メタ)アクリルモノマーが窒素含有環状構造を有すると、(メタ)アクリル系重合体の弾性的な特性を向上させる効果が得られる。
【0023】
接着剤が(メタ)アクリル系重合体を含有する場合、当該(メタ)アクリル系重合体は架橋されていることが好ましい。また、接着剤が(メタ)アクリル系重合体を含有する場合、当該接着剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂(例えば紫外線硬化性樹脂)と硬化剤(例えば光重合開始剤)とをさらに含んでもよいし、あるいは、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物をさらに含んでもよい。活性エネルギー線は、例えば可視光および紫外線である。接着剤に架橋構造を導入することによって、接着剤の貼り付け時の変形および経時変形が抑制される。特に、光学シート10aに(接着剤層20aとなる)接着剤組成物層を付与した後で活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化することによって、接着剤層20aの経時変形を抑制することができ、接着剤層20aが凹部へ侵入する程度の経時変化を抑制することができる。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化すると、接着剤層20aは硬くなる。接着剤層20aが硬すぎると、接着剤層20aをロール・ツー・ロール法で光学シート10aに貼り合せることが困難になることがあるが、光学シート10aに接着剤組成物層を付与した後で活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化すれば、この問題を回避することができる。
【0024】
活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む接着剤層20aは、例えば以下の方法で形成される。まず、(メタ)アクリル系重合体と、架橋剤と、活性エネルギー線硬化性樹脂と、重合開始剤と、溶媒とを含む接着剤組成物溶液から接着剤組成物溶液層を形成する。接着剤組成物溶液層は、例えば、基材の剥離処理された主面上に形成される。次いで、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去し、接着剤組成物溶液層の(メタ)アクリル系重合体を(例えば加熱することによって)架橋剤で架橋させることによって、架橋構造を有する接着剤組成物層を得る。接着剤組成物溶液層を基材の剥離処理された主面上に形成した場合は、基材の剥離処理された主面上に接着剤組成物層が形成され、基材と接着剤組成物層とを有する積層体が得られる。ここで、(メタ)アクリル系重合体と架橋剤とで形成される架橋構造を第1架橋構造ということにする。後述する、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることによって形成される架橋構造(第2架橋構造)と区別する。接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程において接着剤組成物溶液層の重合体が架橋されてもよいし、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程の後に、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程とは別に、接着剤組成物溶液層の重合体を架橋させる工程をさらに行ってもよい。その後、接着剤組成物層を光学シート10aの第1主面12s上に貼り付け、接着剤組成物層を光学シート10aの第1主面12s上に配置した状態で、接着剤組成物層に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることによって、第1架橋構造に加えて第2架橋構造を有する接着剤層20aを形成することができる。接着剤層20aが有する第1架橋構造および第2架橋構造は、いわゆる相互侵入網目構造(IPN)を形成していると考えられる。
【0025】
活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含まない接着剤層20aは、例えば以下の方法で形成される。まず、重合体と架橋剤と溶媒とを含む接着剤組成物溶液から接着剤組成物溶液層を形成する。この接着剤組成物溶液は、活性エネルギー線硬化性樹脂および重合開始剤を含まない。接着剤組成物溶液層は、例えば、基材の剥離処理された主面上に形成される。次いで、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去し、接着剤組成物溶液層の重合体を(例えば加熱することによって)架橋剤で架橋させることによって、架橋構造を有する接着剤層20aを得る。接着剤組成物溶液層を基材の剥離処理された主面上に形成した場合は、基材の剥離処理された主面上に接着剤層が形成され、基材と接着剤層とを有する積層体が得られる。接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程において接着剤組成物溶液層の重合体が架橋されてもよいし、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程の後に、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去する工程とは別に、接着剤組成物溶液層の重合体を架橋させる工程をさらに行ってもよい。
【0026】
接着剤は、グラフトポリマーを含まないことが好ましい。特許文献1に記載の接着剤層のようにグラフトポリマーを含む接着剤組成物から形成すると、材料の設計因子や制御因子が多くなり、量産性に劣ることがある。グラフトポリマーを含まない接着剤は、種々の因子(例えば、架橋剤の種類、量、活性線硬化性樹脂の種類、量)によってクリープ特性を調整することができる。
【0027】
接着剤の好適な具体例を以下に説明する。
【0028】
接着剤は、例えば(メタ)アクリル系重合体を含む。(メタ)アクリル系重合体の製造に使用されるモノマーとしては、いずれの(メタ)アクリレートでも用いることができ、特に限定はされない。例えば、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。この場合、(メタ)アクリル系重合体の製造に使用されるモノマーの総量に対する、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば50質量%以上である。
【0029】
本明細書において、「アルキル(メタ)アクリレート」は、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを指す。アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数は4以上であることが好ましく、より好ましくは、4以上9以下である。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0031】
接着剤は、窒素含有(メタ)アクリルモノマーと少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体である(メタ)アクリル系重合体を含んでもよい。この場合、(メタ)アクリル系重合体は、共重合に使用されるモノマーの合計量を100質量部としたときに、以下のモノマーを以下の量で用いて共重合した共重合体であることが好ましい。
窒素含有(メタ)アクリルモノマー:10.0質量部以上、15.0質量部以上、20.0質量部以上、25.0質量部以上、30.0質量部以上または35.0質量部以上であり、かつ、40.0質量部以下、35.0質量部以下、30.0質量部以下、25.0質量部以下、20.0質量部以下または15.0質量部以下。例えば、10.0質量部以上40.0質量部以下。
ヒドロキシル基含有アクリルモノマー:0.05質量部以上、0.75質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上、6.0質量部以上、7.0質量部以上、8.0質量部以上または9.0質量部以上であり、かつ、10.0質量部以下、9.0質量部以下、8.0質量部以下、7.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下または1.0質量部以下。例えば、0.05質量部以上10.0質量部以下。
カルボキシル基含有アクリルモノマー:1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上、6.0質量部以上、7.0質量部以上、8.0質量部以上または9.0質量部以上であり、かつ、10.0質量部以下、9.0質量部以下、8.0質量部以下、7.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下または2.0質量部以下。例えば、1.0質量部以上10.0質量部以下。
アルキル(メタ)アクリレートモノマー:(100質量部)-(共重合に使用される、アルキル(メタ)アクリレートモノマー以外のモノマーの合計量)
【0032】
本明細書において、「窒素含有(メタ)アクリルモノマー」は、(メタ)アクリロイル基の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ窒素原子を有するモノマーを特に制限なく含む。「窒素含有(メタ)アクリルモノマー」は、例えば窒素含有環状構造を有する。窒素含有環状構造を有する窒素含有(メタ)アクリルモノマーの例として、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、N-ビニル-ε-カプロラクタム(NVC)、4-アクリロイルモルホリン(ACMO)が挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0033】
本明細書において、「ヒドロキシル基含有アクリルモノマー」は、(メタ)アクリロイル基の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ水酸基を有するモノマーを特に制限なく含む。例えば、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
本明細書において、「カルボキシル基含有アクリルモノマー」は、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するモノマーを特に制限なく含む。不飽和カルボン酸含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等があげられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0035】
接着剤は、カルボキシル基含有アクリルモノマーと少なくとも1種の他のモノマー(ただし、窒素含有(メタ)アクリルモノマーを除く)との共重合体である(メタ)アクリル系重合体を含んでもよい。この場合、(メタ)アクリル系重合体は、共重合に使用されるモノマーの合計量を100質量部としたときに、以下のモノマーを以下の量で用いて共重合した共重合体であることが好ましい。
カルボキシル基含有アクリルモノマー:1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上、6.0質量部以上、7.0質量部以上、8.0質量部以上または9.0質量部以上であり、かつ、10.0質量部以下、9.0質量部以下、8.0質量部以下、7.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下または2.0質量部以下。例えば、1.0質量部以上10.0質量部以下。
アルキル(メタ)アクリレートモノマー:90.0質量部以上、91.0質量部以上、92.0質量部以上、93.0質量部以上、94.0質量部以上、95.0質量部以上、96.0質量部以上、97.0質量部以上または98.0質量部以上であって、99.0質量部以下、98.0質量部以下、97.0質量部以下、96.0質量部以下、95.0質量部以下、94.0質量部以下、93.0質量部以下、92.0質量部以下または91.0質量部以下。例えば、90.0質量部以上99.0質量部以下。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体に架橋構造を導入する架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物などの架橋剤が含まれる。架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせることができる。
【0037】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0038】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0039】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー株式会社製,商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー株式会社製,商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー株式会社製,商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社製,商品名D110N)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学株式会社製,商品名D160N);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0040】
イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、例えば0.01質量部以上、0.02質量部以上、0.05質量部以上または0.1質量部以上であり、かつ、10質量部以下、9質量部以下、8質量部以下、7質量部以下、6質量部以下または5質量部以下であり、好ましくは、0.01質量部以上10質量部以下、0.02質量部以上9質量部以下、0.05質量部以上8質量部以下である。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して、配合量を適宜調整すればよい。
【0041】
なお、乳化重合にて作成した変性(メタ)アクリル系重合体の水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いなくてもよいが、必要な場合には、水と反応し易いために、ブロック化したイソシアネート系架橋剤を用いることもできる。
【0042】
エポキシ系架橋剤はエポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物である。エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N′,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱瓦斯化学株式会社製、商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」などを用いることができる。
【0043】
エポキシ系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。エポキシ系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、例えば0.01質量部以上、0.02質量部以上、0.05質量部以上または0.1質量部以上であり、かつ、10質量部以下、9質量部以下、8質量部以下、7質量部以下、6質量部以下または5質量部以下であり、好ましくは、0.01質量部以上10質量部以下、0.02質量部以上9質量部以下、0.05質量部以上8質量部以下である。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して、配合量を適宜調整すればよい。
【0044】
過酸化物の架橋剤としては、加熱によりラジカル活性種を発生して粘着剤のベース重合体の架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃以上160℃以下である過酸化物を使用することが好ましく、90℃以上140℃以下である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0045】
過酸化物としては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などが挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0046】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日油株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0047】
過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。過酸化物の配合量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、0.02質量部以上2質量部以下であり、0.05質量部以上1質量部以下が好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜調整される。
【0048】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0049】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0050】
また、架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物が挙げられる。
【0051】
活性エネルギー線硬化性樹脂の配合量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、例えば、3質量部以上60質量部以下である。硬化前の質量平均分子量(Mw)は4000以上50000以下である。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ウレタン系、またはエン・チオール系紫外線硬化性樹脂を好適に用いることができる。
【0052】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、活性エネルギー線によりラジカル重合またはカチオン重合するモノマーおよび/またはオリゴマーが用いられる。
【0053】
活性エネルギー線によりラジカル重合するモノマーとしては(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を有するモノマーがあげられ、特に反応性に優れる利点から(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく用いられる。
【0054】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの具体例としては、たとえば、アリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロオデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレ-ト、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
活性エネルギー線によりラジカル重合するオリゴマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマーと同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが用いられる。
【0056】
ポリエステル(メタ)アクリレートは多価アルコールと多価カルボン酸から得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものであり、具体例としては東亜合成株式会社製のアロニックスM-6000、7000、8000、9000シリーズ等が挙げられる。
【0057】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものであり、具体例としては昭和高分子株式会社製のリポキシSP、VRシリーズや共栄社化学株式会社製のエポキシエステルシリーズ等が挙げられる。
【0058】
ウレタン(メタ)アクリレートはポリオール、イソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させることで得られるものであり、具体例としては根上工業株式会社製のアートレジンUNシリーズ、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴUシリーズ、三菱ケミカル株式会社製の紫光UVシリーズ等が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤は、紫外線を照射することにより励起、活性化してラジカルを生成し、多官能オリゴマーをラジカル重合により硬化させる作用を有する。例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、α-アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、4’,4”-ジエチルイソフタロフェノン等の特殊光重合開始剤を挙げることができる。また、光重合開始剤として、アリルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート塩、スルホニウムヘキサフルオロフォスフェート塩類、およびビス(アルキルフェニル) イオドニウムヘキサフルオロフォスフェートなどの光カチオン系重合開始剤も用いることができる。
【0060】
上記光重合開始剤については、2種以上併用することも可能である。重合開始剤は、上記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対し、通常、0.5質量部以上30質量部以下、さらには1質量部以上20質量部以下の範囲で配合するのが好ましい。0.5質量部未満だと十分に重合が進行せず、硬化速度が遅くなり、30質量部を超えると硬化シートの硬度が低下する場合があるといった問題が生じる場合がある。
【0061】
活性エネルギー線は特に限定はされないが、好ましくは、紫外線、可視光、および電子線である。紫外線照射による架橋処理は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマレーザ、メタルハライドランプ、LEDランプなどの適宜の紫外線源を用いて行うことができる。その際、紫外線の照射量としては、必要とされる架橋度に応じて適宜選択することができるが、通常は、紫外線では、0.2J/cm2以上10J/cm2以下の範囲内で選択するのが望ましい。照射時の温度は、特に限定されるものではないが、支持体の耐熱性を考慮して140℃程度までが好ましい。
【0062】
接着剤が、(メタ)アクリル系重合体に代えて、または(メタ)アクリル系重合体と共に、ポリエステル系重合体を含む場合、例えば以下の特徴を有するポリエステル系重合体が好ましい。
【0063】
カルボン酸成分の種類(若しくは骨格の特徴など):少なくとも、カルボキシル基を2個含むジカルボン酸を含有すること、具体的にはジカルボン酸。前記ジカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、セバシン酸、オレイン酸およびエルカ酸などから誘導される、ダイマー酸が挙げられる。その他の例としては、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸が挙げられる。前記ジカルボン酸に加えて、カルボキシル基を3個以上含むトリカルボン酸を使用することもできる。
【0064】
ジオール成分の種類(若しくは骨格の特徴など):少なくとも、ヒドロキシル基を分子中に2個有するものを含有すること、具体的にはジオール。脂肪酸エステルや、オレイン酸や、エルカ酸などから誘導されるダイマージオール、グリセロールモノステアレートなど。その他としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、等の脂肪族グリコールや、脂肪族グリコール以外のものとして、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0065】
ポリエステル系重合体に架橋構造を導入する架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤を用いることができる。配合量は、ポリエステル系重合体100質量部に対して、例えば2.0質量部以上10.0質量部以下である。
【0066】
次に、図4図6を参照して、本発明の他の実施形態による光学積層体100Bおよび101Bを説明する。なお、先の実施形態と実質的に同じ機能を有する構成要素については、特に断らない限り先の実施形態の説明があてはまる。光学積層体100Bは、特許文献2に記載されている配光制御素子として機能し、ロール・ツー・ロール法を用いて製造することができる。参考のために特許文献2の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
【0067】
図4は、光学積層体100Bおよび101Bの模式的な断面図であり、第1光学シート10bが第2光学シート30の表面38sに、接着剤層20bを介して接着された状態を表している。図5は、光学積層体100Bが有する光学シート10bの模式的な斜視図である。図6は、光学積層体102Bと光源60とを備える照明装置200の模式的な断面図であり、光線の軌跡を模式的に示している。
【0068】
図4および図5を参照する。光学積層体100Bは、凹凸構造を有する第1主面12sおよび第1主面12sと反対側の第2主面18sを有する第1光学シート10bと、第1光学シート10bの第1主面12s側に配置された接着剤層20bとを有する。光学積層体101Bは、光学積層体100Bと、接着剤層20aの第1光学シート10b側と反対側に配置された第2光学シート30とを有する。ここでは、光学シート10bの第1主面12sが有する凹凸構造は複数の凹部14を含み、接着剤層20bの表面と光学シート10bの第1主面12sとが、複数の凹部14に複数の空間14(凹部と同じ参照符号で示す。)を画定している。接着剤層20bは、光学積層体100Bの空間14を画定するために必須の構成要素であり、光学積層体100Bの一部分である。
【0069】
光学シート10bが有する凹凸構造は、接着剤層20bと接する平坦部10sを含む。凹凸構造は、例えば、断面が台形である複数の凸部15を含む。凹凸構造が、接着剤層20bと接する平坦部10sを有しているので、光学シート10bの凹凸構造は、図1に示したプリズムシート10aのプリズム面の凹凸構造よりも、凹部に接着剤層20bが侵入し難い。したがって、上記の接着剤を用いることによって、複数の空間14に接着剤層20bが侵入することなく、また、経時変化も生じない、光学積層体100Bを得ることができる。
【0070】
光学シート10bは、公知のプリズムシートまたはマイクロレンズシートと同様の材料を用いて、同様の方法で製造され得る。光学シート10bの凹凸構造の大きさ、形状は適宜変更され得る(特許文献2)。ただし、上述したように、光学シート10bは、接着剤層20と接着されることによってはじめて空間14が画定された光学積層体100Bとして機能する点において、公知のプリズムシートまたはマイクロレンズシートと異なる。
【0071】
図4に示すように、光学積層体101Bにおいて、第2光学シート30が、その表面38sで接着剤層20bの表面22sに接着するように配置されている。第2光学シート30を構成する材料は目的に応じて任意の適切な材料を採用することができる。第2光学シート30の材料としては、例えば、光透過性の熱可塑性樹脂が挙げられ、より具体的には、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂により形成されたフィルムが挙げられる。
【0072】
光学積層体100Bが有する空間14は、第1光学シート10bの第1主面12sの一部である表面16sおよび表面17sと、接着剤層20bの表面28sとによって画定されている。ここでは、表面16sがシート面(図の水平方向)に対して傾斜(0°超90°未満)しており、表面17sがシート面に対してほぼ垂直な例を示しているが、これに限られず、種々に改変され得る(特許文献2参照)。
【0073】
光学積層体100Bは、例えば、図6に示すように、照明装置200に用いられる。光学積層体100Bの接着剤層20bの第1光学シート10b側と反対側に、導光板50が設けられている。光学積層体100Bと導光板50とをあわせて光学積層体102Bという。光学積層体102Bは、光学積層体100Bの接着剤層20bの表面22sにおいて導光板50に接着されている。導光板50の受光面には、光源(例えばLED)60からの光が入射するように配置されており、導光板50内に導かれた光線は、図6中に矢印で示したように、空間14が作る界面16sおよび界面14sで全反射(TIR)される。界面14s(接着剤層20bの表面28s)で全反射された光線は、導光板50および接着剤層20b内を導光し、斜面16sで全反射された光線は、光学積層体100Bの表面18sから外部に出射される。空間14の形状、大きさ、配置密度などを調整することによって、光学積層体100Bから出射される光線の分布(配光分布)を調整することができる。ここで、導光板50、接着剤層20bおよび光学シート10bの屈折率は互いに等しいことが好ましい。
【0074】
図4図6では、凸部15の断面形状が台形である例を示しているが、凸部15の形状は、図示するものに限られず、種々に改変され得る。凸部15の形状、大きさなどを調整することによって、空間14の形状、大きさ、配置密度などを調整することができる。例えば国際公開第2011/124765号に、内部に複数の空間を有する積層体の例が記載されている。参考のために国際公開第2011/124765号の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
【0075】
以下、実験例(実施例および比較例)を説明する。
【0076】
[実施例1]
(接着剤組成物溶液の調製)
まず、アクリル系重合体を調製した。攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)62.9質量部、4-アクリロイルモルホリン(ACMO)33.9質量部、アクリル酸(AA)2.9質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.3質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部をモノマーの合計が50質量%になるように酢酸エチルと共にフラスコに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を58℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系重合体を得た。ここで、重合反応開始より2時間経過した後に、酢酸エチルを3時間かけて、固形分が35質量%になるように滴下した。すなわち、アクリル系重合体は、固形分が35質量%のアクリル系重合体溶液として得た。
【0077】
続いて、得られたアクリル系重合体溶液に、重合体100質量部に対して、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂A(質量平均分子量Mw:5,500)を固形分で7質量部、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタンー1-オン(商品名「Omnirad651」、IGMジャパン合同会社製)を0.7質量部、架橋剤として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「TETRAD-C」、三菱瓦斯化学株式会社製)0.1質量部を配合して接着剤組成物溶液を調製した。
【0078】
(接着シートの作製)
シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、接着剤組成物溶液を塗布して接着剤組成物溶液層を形成した。このとき、接着剤組成物溶液層の厚さは、乾燥後の厚さ(すなわち接着剤組成物層の厚さ)が1μmとなるように塗布した。接着剤組成物溶液層を150℃で3分間乾燥させることによって、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去するとともにアクリル系重合体を架橋剤で架橋させ、第1架橋構造を有する接着剤組成物層を得た。次いで、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRE38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面に接着剤組成物層を貼り合わせて、PETフィルム/接着剤組成物層/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第1積層体)を作製した。
【0079】
(光学積層体の作製)
得られた接着シート(第1積層体)から一方の剥離処理されたPETフィルムを剥離し、露出させた接着剤組成物層をアクリル系樹脂フィルム(厚さ:20μm)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータ(PETフィルム)を剥離して、ピッチP10μm、高さH5.0μm、頂角θ90°(図1参照)の凹凸があるプリズムシート(日本特殊光学樹脂株式会社製、品番「LPV90-0.01S」)のプリズム面に貼り合わせ、アクリル系樹脂フィルム/接着剤組成物層/プリズムシートの積層構造を有する積層体(第2積層体)を得た。
【0080】
次に、この第2積層体に対して、第2積層体の上面(アクリル系樹脂フィルム側)から、紫外線を照射し、接着剤組成物層中の紫外線硬化性樹脂を硬化することによって、第1架橋構造に加えて第2架橋構造をさらに有する接着剤層を形成し、アクリル系樹脂フィルム/接着剤層/プリズムシート(光学シート)の積層構造を有する実施例1の光学積層体(第3積層体)を得た。実施例1の光学積層体(第3積層体)は、図2に示した光学積層体101Aのように、第1光学シート(プリズムシート)10aと、接着剤層20aと、第2光学シート(アクリル系樹脂フィルム)30とを有する。紫外線照射は、LEDランプ(株式会社クォークテクノロジー製、ピーク照度:200mW/cm、積算光量1500mJ/cm(波長345~365nm))を使用し、紫外線の照度はUV Power Puck(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を使用して測定した。
【0081】
[実施例2]
(接着剤組成物溶液の調製)
実施例2では、アクリル系重合体の調製において、n-ブチルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、アクリル酸、および4-ヒドロキシブチルアクリレートを、それぞれ67.8質量部/29.0質量部/2.9質量部/0.3質量部とした点において実施例1と異なる。得られたアクリル系重合体溶液に、重合体の固形分100質量部に対して、架橋剤として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「TETRAD-C」、三菱瓦斯化学株式会社製)0.1質量部を配合して接着剤組成物溶液を調製した。すなわち、実施例2の接着剤組成物溶液は、紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含まない。
【0082】
(接着シートの作製)
シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、接着剤組成物溶液を塗布して接着剤組成物溶液層を形成した。このとき、接着剤組成物溶液層の厚さは、乾燥後の厚さ(すなわち接着剤層の厚さ)が1μmとなるように塗布した。接着剤組成物溶液層を150℃で3分間乾燥させることによって、接着剤組成物溶液層の溶媒を除去するとともに、アクリル系重合体を架橋剤で架橋させることによって架橋構造を有する接着剤層を得た。
【0083】
上述した実施例1においては、接着剤組成物溶液はアクリル系重合体と架橋剤と紫外線硬化性樹脂と光重合開始剤と溶媒とを含む。実施例1では、接着剤組成物溶液から形成された接着剤組成物溶液層を150℃で3分間乾燥させ、アクリル系重合体を架橋剤で架橋させることによって第1架橋構造を有する接着剤組成物層が形成され、その後、接着剤組成物層の紫外線硬化性樹脂を硬化させることによって、第1架橋構造に加えて第2架橋構造を有する接着剤層が形成された。これに対して、実施例2においては、接着剤組成物溶液は紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含まない。実施例2では、接着剤組成物溶液から形成された接着剤組成物溶液層を150℃で3分間乾燥させ、アクリル系重合体を架橋剤で架橋させることによって架橋構造を有する接着剤層が形成される。
【0084】
次いで、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRE38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面に接着剤層を貼り合わせて、PETフィルム/接着剤層/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第1積層体)を作製した。
【0085】
(光学積層体の作製)
得られた接着シート(第1積層体)から一方の剥離処理されたPETフィルムを剥離し、露出させた接着剤層をアクリル系の樹脂フィルム(厚さ:20μm)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータ(PETフィルム)を剥離して、ピッチ10μm、高さ5.0μmの凹凸があるプリズムシート(日本特殊光学樹脂株式会社製、品番「LPV90-0.01S」)のプリズム面に貼り合わせることによって、実施例2の光学積層体(第2積層体)を得た。実施例2の光学積層体は、図2に示した光学積層体101Aのように、第1光学シート(プリズムシート)10aと、接着剤層20aと、第2光学シート(アクリル系樹脂フィルム)30とを有する。
【0086】
[実施例3]
(接着剤組成物溶液の調製)
実施例3では、アクリル系重合体の調製において、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート95.0質量部、アクリル酸5.0質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部をモノマーの合計が40.0質量%になるように酢酸エチルと共にフラスコに仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を63℃付近に保って6時間重合反応を行った。その後、固形分が40質量%になるよう、酢酸エチルを加え、アクリル系重合体を得た。得られたアクリル系重合体溶液に、重合体の固形分100質量部に対して、架橋剤として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「TETRAD-C」、三菱瓦斯化学株式会社製)6.0質量部を配合して接着剤組成物溶液を調製した。
【0087】
(接着シートの作製)
実施例2と同様に行った。
【0088】
(光学積層体の作製)
実施例2と同様に行った。
【0089】
[実施例4]
(接着剤組成物溶液の調製)
まず、ポリエステル重合体を調製した。三つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、真空ポンプを付し、これにダイマー酸(商品名「プリポール1009」、分子量567、クローダジャパン株式会社製)48.9g、ダイマージオール(商品名「プリポール2033」、分子量537、クローダジャパン株式会社製)51.1g、触媒として酸化ジブチルスズ(関東化学株式会社製)0.1gを仕込み、減圧雰囲気(2.0kPa以下)で撹拌しながら200℃まで昇温し、この温度を保持した。約5時間反応を続けてポリエステル重合体を得た。
【0090】
得られたポリエステル重合体溶液に、重合体の固形分100質量部に対して、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名「コロネートHX」、東ソー株式会社製)4.0質量部を配合して接着剤組成物溶液を調製した。
【0091】
(接着シートの作製)
シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRF38」、三菱ケミカル株式会社製)の片面に接着剤組成物溶液を塗布して接着剤組成物溶液層を形成した。このとき、接着剤組成物溶液層の厚さは、乾燥後の厚さ(すなわち接着剤層の厚さ)が3μmとなるように塗布した。接着剤組成物溶液層を120℃で3分間乾燥させることによって、溶媒を除去させて接着剤組成物層を得た。次いで、シリコーン剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「MRE38」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理面に、接着剤組成物層を貼り合わせて、40℃で3日間放置し、PETフィルム/接着剤層/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第1積層体)を作製した。40℃で3日間処理することによって、接着剤組成物層のポリエステル重合体が架橋剤で架橋され、架橋構造を有する接着剤層が得られる。なお、120℃で3分間乾燥させる工程においても架橋反応が部分的に生じる場合がある。
【0092】
(光学積層体の作製)
実施例2と同様に行った。
【0093】
[実施例5]
(接着剤組成物溶液の調製)
実施例5では、アクリル系重合体の調製において、n-ブチルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、アクリル酸、および4-ヒドロキシブチルアクリレートを、それぞれ74.6質量部/18.6質量部/6.5質量部/0.3質量部とした点において実施例1と異なる。さらに、接着剤組成物溶液の調製において、得られたアクリル系重合体溶液に、重合体100質量部に対して、紫外線硬化性樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂Aを固形分で10質量部、光重合開始剤として4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン(商品名「Omnirad2959」、IGMジャパン合同会社製)を1.0質量部、架橋剤として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「TETRAD-C」、三菱瓦斯化学株式会社製)0.6質量部を配合した点において実施例1と異なる。その他は実施例1と同様に行った。
【0094】
(接着シートの作製)
実施例1と同様に行った。
【0095】
(光学積層体の作製)
実施例1と同様に行った。
【0096】
[実施例5a]
光学シートとして下記の凹凸賦形フィルム70を用いたことのほかは実施例5と同様にして、アクリル系樹脂フィルム/接着剤層/光学シート(凹凸賦形フィルム)の積層構造を有する実施例5aの光学積層体を作製した。
【0097】
(凹凸賦形フィルムの製造)
特表2013-524288号公報に記載の方法にしたがって凹凸賦形フィルムを製造した。具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムの表面をラッカー(三洋化成工業株式会社製、ファインキュアー RM-64)でコーティングし、当該ラッカーを含むフィルム表面上に光学パターンをエンボス加工し、その後ラッカーを硬化させることによって目的の凹凸賦形フィルムを製造した。凹凸賦形フィルムの総厚さは130μmであり、ヘイズは0.8%であった。製造された凹凸賦形フィルム70の一部について凹凸面側から見た平面図を図7Aに示す。また、図7Aの凹凸賦形フィルムの7B-7B’断面図を図7Bに示す。長さLが80μm、幅Wが14μm、深さHが10μmの、断面が三角形である複数の凹部74が、X軸方向に幅E(155μm)の間隔を空けて配置された。さらにこのような凹部74のパターンが、Y軸方向に幅D(100μm)の間隔を空けて配置された。凹凸賦形フィルム表面における凹部74の密度は、3612個/cmであった。図7Bにおけるθaおよびθbはいずれも41°であり、フィルムを凹凸面側から平面視した際の凹部74の占有面積率は4.05%であった。
【0098】
[実施例6]
実施例6は、接着シート(第1積層体)の作製において、接着剤組成物溶液層の厚さを、乾燥後の厚さ(すなわち接着剤組成物層の厚さ)が5μmとなるようにした点において、実施例5と異なる。その他は実施例5と同様に行った。
【0099】
[実施例6a]
光学シートとして凹凸賦形フィルム70を用いたことのほかは実施例6と同様にして、アクリル系樹脂フィルム/接着剤層/光学シート(凹凸賦形フィルム)の積層構造を有する実施例6aの光学積層体を作製した。
【0100】
[実施例7]
実施例7は、接着シート(第1積層体)の作製において、接着剤組成物溶液層の厚さを、乾燥後の厚さ(すなわち接着剤組成物層の厚さ)が10μmとなるようにした点において、実施例5と異なる。その他は実施例5と同様に行った。
【0101】
[実施例7a]
光学シートとして凹凸賦形フィルム70を用いたことのほかは実施例7と同様にして、アクリル系樹脂フィルム/接着剤層/光学シート(凹凸賦形フィルム)の積層構造を有する実施例7aの光学積層体を作製した。
【0102】
[比較例1]
比較例1では、アクリル系重合体の調製において、n-ブチルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、アクリル酸、および4-ヒドロキシブチルアクリレートを、それぞれ77.4質量部/19.4質量部/2.9質量部/0.3質量部とした点において実施例2と異なる。その他は実施例2と同様に行った。
【0103】
[比較例2]
比較例2では、アクリル系重合体の調製において、n-ブチルアクリレート、4-アクリロイルモルホリン、アクリル酸、および4-ヒドロキシブチルアクリレートを、それぞれ92.0質量部/4.8質量部/2.9質量部/0.3質量部とした点において実施例2と異なる。その他は実施例2と同様に行った。
【0104】
実施例1~7および比較例1、2の光学積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0105】
<クリープ変形率の評価>
接着剤層の積層体(厚さ1mm)を以下のように作製した。
実施例1および5~7:上記の接着シート(第1積層体)と同様に、ただし接着剤組成物層の厚さを10μmとして、PETフィルム/接着剤組成物層(厚さ10μm)/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第5積層体)を幅20cm、長さ30cmのサイズで4個作製した。その後、第5積層体のそれぞれに対して紫外線を照射して接着剤組成物層の紫外線硬化性樹脂を硬化させることによって、PETフィルム/接着剤層(厚さ10μm)/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第6積層体)を得た。得られた接着シート(第6積層体)の接着剤層を複数積層させる工程と、接着剤層の積層体を複数の試験片に分割する(複数の試験片を切り出す)工程とを繰り返すことによって、接着剤層(厚さ10μm)を合計で100層積層させた接着剤層の積層体(厚さ1mm、サイズ4cm×6cm)を得た。なお、第5積層体への紫外線照射は、LEDランプ(株式会社クォークテクノロジー製、ピーク照度:200mW/cm、積算光量1500mJ/cm(波長345~365nm))を使用し、紫外線の照度はUV Power Puck(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を使用して測定した。
実施例2~4および比較例1、2:上記の接着シート(第1積層体)と同様に、ただし接着剤層の厚さを10μmとして、PETフィルム/接着剤層(厚さ10μm)/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第6積層体)を幅20cm、長さ30cmのサイズで4個作製した。得られた接着シート(第6積層体)の接着剤層を複数積層させる工程と、接着剤層の積層体を複数の試験片に分割する(複数の試験片を切り出す)工程とを繰り返すことによって、接着剤層(厚さ10μm)を合計で100層積層させた接着剤層の積層体(厚さ1mm、サイズ4cm×6cm)を得た。
【0106】
上記のようにして得られた接着剤層の積層体(厚さ1mm)から、直径8mmの円柱体(高さ1mm)を打ち抜き、試験片を作製した。上記試験片に、粘弾性測定装置(装置名「ARES G-2」、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、測定温度50℃にて、30分間10000Paの応力を印加し、1秒後および30分後の変形率を測定した。
【0107】
本明細書において、接着剤層の「クリープ変形率」は、接着剤層の積層体(厚さ1mm)を用いて、上記の方法で求められる「クリープ変形率」とする。本発明者の実験によると、厚さが1mmの積層体のクリープ変形率は、厚さ50μmの接着剤層を20層積層することによって形成された積層体と、厚さ10μmの接着剤層を100層積層することによって形成された積層体と、厚さ5μmの接着剤層を200層積層することによって形成された積層体との間で、有意な差が認められなかった。すなわち、厚さが1mmの積層体のクリープ変形率は、積層体を構成する個々の接着剤層の厚さが少なくとも5μm以上50μm以下の範囲で、接着剤層の厚さに依存しない。本発明者の検討によると、個々の接着剤層の厚さが0.1μm以上であれば、厚さが1mmの積層体のクリープ変形率は、ほぼ一定の値をとると考えられる。
【0108】
<ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に対する180°引き剥がし粘着力>
実施例2~4、比較例1および2について、得られた接着シート(第1積層体)から一方の剥離処理されたPETフィルムを剥離し、露出させた接着剤層の表面を厚さが25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラー S-10」、東レ株式会社製)に貼り合わせて試験片を得た。
【0109】
試験片を幅20mmにカットし、もう一方の剥離処理されたPETフィルムを剥離し、露出させた接着剤層の表面をポリメタクリル酸メチル(PMMA)板(厚さ2mm、商品名「アクリライト」、三菱ケミカル株式会社製)に貼り合わせて、試験片とし、PMMA板に対する接着力(mN/20mm)を測定した。PMMA板との貼り合せの際の圧着は、2kgのローラーを1往復して行い、貼り合わせ30分後に引張圧縮試験機(装置名「AGS-50NX」、株式会社島津製作所製)を用いて、180°ピール粘着力の測定を以下の条件下で行った。
引き剥がし速度:300mm/分
測定条件:温度:23±2℃、湿度:65±5%RH
【0110】
実施例1および5~7については、接着シート(第1積層体)を用いて実施例2~4、比較例1および2と同様に試験片の作製を行い、PMMA板との貼り合せの後(すなわち、PETフィルム(ルミラー S-10)/接着剤組成物層/PMMA板の積層体を得た後)、PETフィルム側から紫外線を照射することによって試験片を作製した。紫外線照射は、LEDランプ(株式会社クォークテクノロジー社製、ピーク照度:200mW/cm、積算光量1500mJ/cm(波長345~365nm))を使用し、紫外線の照度はUV Power Puck(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を使用して測定した。
【0111】
<ヘイズの評価>
接着剤層の積層体(厚さ80μm)を以下のように作製した。
実施例1および5~7:上記の<クリープ変形率の評価>と同様の方法で、PETフィルム/接着剤層(厚さ10μm)/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第6積層体)を幅20cm、長さ30cmのサイズで作製した。得られた接着シート(第6積層体)から8個の試験片を切り出し、接着剤層(厚さ10μm)を8層積層させることによって、接着剤層の積層体(厚さ80μm)を得た。
実施例2~4および比較例1、2:上記の<クリープ変形率の評価>と同様の方法で、PETフィルム/接着剤層(厚さ10μm)/PETフィルムの積層構造を有する接着シート(第6積層体)を幅20cm、長さ30cmのサイズで作製した。得られた接着シート(第6積層体)から8個の試験片を切り出し、接着剤層(厚さ10μm)を8層積層させることによって、接着剤層の積層体(厚さ80μm)を得た。
【0112】
接着剤層の積層体(厚さ80μm)をシリコーン剥離処理したPETフィルムと貼り合せることによって、PETフィルム/接着剤層の積層体(厚さ80μm)/PETフィルムの積層構造を有する積層体を得た。PETフィルム/接着剤層の積層体(厚さ80μm)/PETフィルムの積層構造を有する積層体から一方のセパレータ(PETフィルム)を剥離して、接着剤層の積層体をガラス板(商品名「EAGLE XG」、コーニング社製、厚さ0.7mm)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータを剥離して、接着剤層の積層体/ガラス板の積層構造を有する試験片を作製した。試験片のヘイズをヘイズメーター(装置名「HZ-1」、スガ試験機株式会社製)を使用して、D65光にて測定した。
【0113】
本明細書において、接着剤層の「ヘイズ」は、接着剤層の積層体(厚さ80μm)を用いて、上記の方法で求められる「ヘイズ」とする。厚さが80μmの積層体のヘイズは、積層体を構成する個々の接着剤層の厚さによらない。
【0114】
<拡散透過率の評価>
各実施例または比較例の光学積層体のアクリル系樹脂フィルムが光源側になるようにヘイズメーター(装置名「HZ-1」、スガ試験機株式会社製)にセットして、D65光にて拡散透過率を測定した。貼り合わせ直後(5分以内)の拡散透過率(表1中「拡散透過率(直後)」と記載)および貼り合わせ10日後(温度:23±2℃、湿度:65±5%RHで保管)の拡散透過率(表1中「拡散透過率(10日後)」と記載)を測定した。得られた拡散透過率を以下の基準で判定した。
貼り合わせ直後(5分以内)の拡散透過率
◎:96%以上
○:95%以上96%未満
△:94%以上95%未満
×:94%未満
貼り合わせ後10日後の拡散透過率
◎:90%以上
○:85%以上90%未満
△:84%以上85%未満
×:84%未満
【0115】
【表1】
【0116】
実施例1~7の光学積層体は、いずれも、貼り合わせ直後(5分以内)の拡散透過率が95%以上であり、かつ、貼り合わせから10日後の拡散透過率が85%以上である。これに対して、比較例1および2の光学積層体は、貼り合わせ直後(5分以内)の拡散透過率が95%未満であり、貼り合わせから10日後の拡散透過率が85%未満である。これらの結果から、実施例1~7の接着剤層は、接着剤層を光学シートに貼り合せる際に接着剤層が光学シートの凹部に侵入することおよび接着剤層の凹部への侵入の程度の経時変化が抑制されているといえる。
【0117】
光学シートとして、表面に複数の凹部を有する凹凸賦形フィルムを用いた実施例5a、6aおよび7aの光学積層体については、光学シートと接着剤組成物層とを貼り合わせてから10日後に、実施例5a、6aおよび7aの光学積層体の断面(凹凸賦形フィルム70の図7Bの断面を含む断面)を光学顕微鏡(株式会社ニコンソリューションズ社製、ECLIPSE LV100)によって倍率1500倍で観察した。実施例5a、6aおよび7aのいずれについても、観察像から凹凸賦形フィルム70の凹部74内に接着剤層の侵入が実質的にないことが確認され、接着剤層の凹部への侵入の程度の経時変化が抑制されていることが確かめられた。
【0118】
実施例1~7の光学積層体の接着剤層は、いずれも、1秒後のクリープ変形率(クリープ変形率A)が10%以下であり、かつ、30分後のクリープ変形率(クリープ変形率B)が16%以下である。これに対して、比較例1および2の光学積層体の接着剤層は、クリープ変形率Aが10%超またはクリープ変形率Bが16%超である。接着剤層のクリープ変形率は、光学積層体の拡散透過率との間に一定の相関関係を有するといえる。実施例1~7の結果から、接着剤層を光学シートに貼り合せる際に接着剤層が光学シートの凹部に侵入することおよび接着剤層の凹部への侵入の程度の経時変化を抑制する観点からは、1秒後のクリープ変形率(クリープ変形率A)が10%以下であり、かつ、30分後のクリープ変形率(クリープ変形率B)が16%以下である接着剤層が好ましいことが分かる。
【0119】
実施例2、比較例1および2は、(メタ)アクリル系重合体の調製において、n-ブチルアクリレート(BA)と4-アクリロイルモルホリン(ACMO)との質量割合が異なるのみである。実施例2においてはBA:ACMO=70:30、比較例1においては、BA:ACMO=80:20、比較例2においては、BA:ACMO=95:5である。接着剤全体に対するACMO由来の成分の割合は、実施例2においては29.0質量%、比較例1においては19.4質量%、比較例2においては4.8質量%である。ただし、この例に限られず、例えば実施例3から分かるように、窒素含有(メタ)アクリルモノマーを使用せずに(メタ)アクリル系重合体を調製してもよい。実施例1および5~7の接着剤は、窒素含有環状構造を有する窒素含有(メタ)アクリルモノマー由来の成分(実施例1:接着剤全体に対して31.4質量%、実施例5~7:接着剤全体に対して16.7質量%)に加えて、紫外線硬化性樹脂の硬化物をさらに含む。紫外線硬化性樹脂の硬化物をさらに含む場合は、窒素含有環状構造を有する窒素含有(メタ)アクリルモノマーの好ましい割合が変化し得る。さらに、実施例4のように、(メタ)アクリル系重合体に代えてポリエステル系重合体を含む接着剤を用いることもできることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の光学積層体は、表示装置や照明装置などの光学装置に広く用いられる。
【符号の説明】
【0121】
10a、10b 第1光学シート
12s、18s 主面(表面)
20a、20b 接着剤層
30 第2光学シート
32s、38s 主面(表面)
50 導光板
60 光源
100A、100B、101A、101B、102B 光学積層体
200 照明装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B