(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】クラッド2XXXシリーズ航空宇宙用製品
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240918BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20240918BHJP
C22C 21/06 20060101ALI20240918BHJP
C22C 21/12 20060101ALI20240918BHJP
C22F 1/05 20060101ALI20240918BHJP
C22F 1/057 20060101ALI20240918BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C22C21/00 E
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/12
C22F1/05
C22F1/057
C22F1/00 602
C22F1/00 627
C22F1/00 623
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692Z
(21)【出願番号】P 2022511388
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2020057081
(87)【国際公開番号】W WO2021033050
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518412058
【氏名又は名称】ノベリス・コブレンツ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Novelis Koblenz GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィドコフ,アレクサンダル ロザノフ
(72)【発明者】
【氏名】ビュルガー,アヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュパンゲル,ザビーネ マリア
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,フィリップ
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186615(JP,A)
【文献】特開2002-053925(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065760(WO,A1)
【文献】特表2018-534419(JP,A)
【文献】特表2006-527303(JP,A)
【文献】特表2009-535508(JP,A)
【文献】特開平06-278243(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0106613(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0013772(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00-21/12
C22F 1/05
C22F 1/057
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の少なくとも1つの表面に結合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙用製品であって、前記6XXXシリーズアルミニウム合金は、重量%で、Si0.3%~1.0%、Mg0.3%~1.1%、Mn0.04%~1.0%、Fe0.03%~0.4%、Cu最大0.10%、Cr最大0.25%、V最大0.2%、Zr最大0.2%、Zn最大0.5%、Ti最大0.1%、不可避不純物が各々<0.05%、合計<0.15%、及び残部アルミニウム
からなり、
前記2XXXシリーズコア層と前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層との間の腐食電位差が、30mV~100mVの範囲である、前記圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項2】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が0.4%~0.9%の範囲のSi含有量を有する、請求項1に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項3】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が0.40%~0.90%の範囲のMg含有量を有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項4】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が、0.25%~1.0%の範囲のMn含有量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項5】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層が、前記2XXXシリーズコア層の前記少なくとも1つの表面に圧延結合によって接合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項6】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層が、前記圧延複合航空宇宙用製品の総厚さの1%~20%の範囲の厚さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項7】
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の1つの表面に接合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項8】
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の両方の表面に接合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とからなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項9】
前記コア層の2XXXシリーズ合金は、重量%で、
Cu 1.9%~7.0%、
Mg 0.30%~1.8%、
Mn 最大で1.2%、
Si 最大で0.40%、
Fe 最大で0.40%、
Cr 最大で0.35%、
Zn 最大で1.0%、
Ti 最大0.15%、
Zr 最大で0.25%、
V 最大で0.25%、
Li 最大で2.0%、
Ag 最大で0.80%、
Ni 最大で2.5%、
残部アルミニウム及び不純物の組成を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項10】
前記2XXXシリーズコア層は、2x24シリーズ合金に由来する、請求項1~9のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項11】
前記2XXXシリーズコア層は、T3、T351、T39、T8またはT851質別である、請求項1~10のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項12】
前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層は、T4またはT6質別である、請求項1~11のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項13】
前記圧延複合航空宇宙用製品は、0.8mm~50.8mmの総厚さを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項14】
前記圧延複合航空宇宙用製品は、プレート製品である、請求項1~13のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項15】
前記圧延複合航空宇宙用製品は、シート製品である、請求項1~13のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項16】
前記圧延複合航空宇宙用製品は、航空宇宙用構造部品である、請求項1~15のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品を製造する方法であって、
(a) 前記圧延複合航空宇宙用製品の前記コア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを提供する工程、
(b) 前記2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを400℃~505℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程、
(c) 前記2XXXシリーズコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するための6XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程、
(d) 前記6XXXシリーズアルミニウム合金の前記インゴットを少なくとも480℃の温度で少なくとも0.5時間均質化する工程、
(e) 前記6XXXシリーズアルミニウム合金を、熱間圧延及び任意にそれに続く冷間圧延によって、2XXXシリーズコア合金に圧延接着して圧延接着製品を形成する工程、
(f) 圧延接着製品を450℃~505℃の範囲の温度で溶体化熱処理する工程、
(g) 溶体化熱処理された圧延接着製品を100℃未満に冷却する工程、
(h) 任意に、前記溶体化熱処理され、冷却された圧延接着製品を伸長する工程、及び
(i) 前記冷却された圧延接着製品の前記2XXXシリーズコア合金を、T3、T351、T39、T8またはT851質別まで時効させる工程、を含む前記方法。
【請求項18】
前記方法は、前記溶体化熱処理され、冷却され、任意にさらに伸長もされている圧延接着製品を、成形プロセスにおいて単軸屈曲または2軸屈曲のうちの少なくとも1つを有する所定の形状の製品に成形することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記時効工程(i)の後に成形工程(j)が実施される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記成形工程(j)及び前記時効工程(i)は、昇温下で、140℃~200℃の範囲の温度で、1~50時間の範囲の時間、成形工程において組み合わされる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2019年8月22日に出願された「CLAD2XXX-SERIES AEROSPACE PRODUCT」というタイトルの欧州特許出願第19193108.8号の利益と優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、2XXXシリーズコア層及び2XXXシリーズコア層の少なくとも1つの表面に接合されたアルミニウム合金層を含む圧延複合航空宇宙用製品に関する。圧延複合製品は、理想的には、航空宇宙用構造部品に好適である。本発明はさらに、圧延複合航空宇宙用製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
航空宇宙産業において、AA2024シリーズアルミニウム合金及びその改変物は、大抵はT3調質の高い耐損傷アルミニウム合金またはその改変物として広く使用されている。これらのアルミニウム合金の製品は、重量比に対して比較的高い強度を有し、良好な破壊靱性、良好な疲労特性、及び適切な耐腐食性を示す。
【0004】
すでに数十年の間、耐腐食性を向上させるために、AA2024シリーズ合金製品は、一方または両方の面に比較的薄いクラッド層を有する複合製品として提供され得る。クラッド層は、通常、AA2024コア合金を腐食保護するより高い純度のものである。クラッドは、本質的に非合金のアルミニウムを含む。しばしば、1XXXシリーズアルミニウム合金に対して一般的に言及され、それには、1000型、1100型、1200型及び1300型のサブクラスが含まれる。しかしながら、実用的には、クラッド層のために使用される1XXXシリーズアルミニウム合金は、相当に極めて純粋であり、Si+Fe<0.7%、Cu<0.10%、Mn<0.05%、Mg<0.05%、Zn<0.10%、Ti<0.03%、及び残部アルミニウムの組成を有する。
【0005】
1XXXシリーズ合金を有するAA2024シリーズアルミニウム合金クラッドはまた、陽極酸化され得る。陽極酸化は、腐食及び摩耗に対する耐性を増加させ、塗装プライマー及び接着剤に対してむき出しの金属よりも良好な接着性を提供する。陽極酸化品は、構造的接着金属結合において、例えば、翼、水平尾翼、垂直尾翼または胴体の外表パネルにおいて適用される。さらに既知の用途は、1つ以上の(ガラス)繊維強化層が、接着結合を使用してアルミニウムパネルまたはシート間に介在され、いわゆる繊維金属ラミネートがもたらされるサンドイッチ構造を含む。特許文献WO-2017/183965-A1(Fokker)は、後の接着結合層及び/またはプライマー層の適用の準備において多孔性陽極酸化物コーティングを適用するためのアルミニウム合金を陽極酸化する方法を開示している。
【0006】
クラッド層としての1XXXシリーズ合金の欠点は、これらの合金が極めて柔らかく、製品の取り扱い中に表面損傷に対して敏感であることである。また、成形オペレーション中に、これは、例えば、ダイ粘着をもたらし得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において以下で理解されるように、別段示される場合を除き、アルミニウム合金及び質別の名称は、2018年にthe Aluminium Associationによって発行されているAluminum Standards and Data and the Registration RecordsにおけるAluminium Association名称を指し、当業者によく知られている。質別名称は、欧州規格EN515にも記されている。
【0008】
合金組成物または好ましい合金組成物の任意の記載について、百分率に対するすべての言及は、別段示されない限り重量パーセントによる。
【0009】
用語「最大で」及び「最大で約」は、本明細書で用いられる場合、限定されないが、それが言及する特定の合金成分のゼロ重量パーセントの可能性を明示的に含む。例えば、最大で0.20%のZnは、Znを有さないアルミニウム合金を含み得る。
【0010】
本発明の目的のため、シート製品またはシート物質は、1.3mm(0.05インチ)以上且つ6.3mm(0.25インチ)以下の厚さを有する圧延製品として理解されるべきであり、プレート物質またはプレート製品は、6.3mm(0.25インチ)を超える厚さを有する圧延製品として理解されるべきである。Aluminium Standard and Data,the Aluminium Association,Chapter 5 Terminology,1997も参照されたい。
【0011】
本発明の目的は、2XXXシリーズ合金を含み、且つ耐腐食性及び成形性の改善されたバランスを提供するクラッド圧延航空宇宙用製品を提供することである。
【0012】
この及び他の目的ならびにさらなる利点は、コア層が2つの面を有する2XXXシリーズコア層と、2XXXシリーズコア層の少なくとも1つの表面に接合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙用製品を提供する本発明によって満たされ、または上回る。ここで、6XXXシリーズアルミニウム合金は、重量%で、
Si 0.3%~1.0%、
Mg 0.3%~1.1%、
Mn 0.04%~1.0%、
Fe 0.03%~0.4%、
Cu 最大で0.10%、
Cr 最大で0.25%、
V 最大で0.2%、
Zr 最大で0.2%、
Zn 最大で0.5%、
Ti 最大で0.15%、
不可避不純物は各々<0.05%、合計<0.15%、及び残部アルミニウム、を含む。
【0013】
6XXXシリーズ合金は、圧延複合航空宇宙用製品が高い変形度を必要とする成形オペレーションにおいて成形され得るように、極めて良好な成形特性、特に、曲げ性及び引張成形性を有する。成形特性は、いくつかの自動車用シートアルミニウム合金のものに匹敵する。成形ダイに対するクラッド層のダイ粘着は、1XXXシリーズクラッド層と比較して増加したクラッディング層の硬度のため、有意に低下するか、または回避さえされる。6XXXシリーズの合金は、所定の形状の製品に成形した後も、非常に優れた表面品質を備えている。表面クラックの非存在により、任意の成形潤滑油の表面への取り込みが回避される。表面クラックの非存在はまた、圧延複合航空宇宙用製品の疲労性能を有意に増加させる。また、疲労は孔食開始部位によって一般的に引き起こされるので、孔食に対する極めて良好な耐性は疲労性能を改善する。6XXXシリーズ合金は、1XXXシリーズ合金よりも著しく高い強度を有し、より硬い表面及びそれに対応する製品取り扱い中のスクラッチのような表面損傷の減少がもたらされる。6XXXシリーズ合金は、複合航空宇宙用製品の全体の強度が同じクラッド層厚さの1XXXシリーズ合金と比較して増加するように、1XXXシリーズ合金よりも有意に強度が高い。これにより、また、軽量化をもたらしつつ、且つ必要とされる良好な耐腐食性及び改善された成形特性を依然として提供しつつ、より薄いクラッド層を有する圧延複合航空宇宙用製品の設計が可能となる。6XXXシリーズ合金は、後の接着結合層及び/またはプライマー層の適用に問題が生じないように、極めて良好に陽極酸化可能である。
【0014】
一実施形態では、6XXXシリーズのアルミニウム合金クラッド層は、T4質別時に少なくとも55HBの硬度を達成する。一実施形態では、6XXXシリーズのアルミニウム合金クラッド層は、T4質別時に少なくとも60HB、そして好ましくは少なくとも65HBの硬度を達成する。
【0015】
一実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層は、圧延接着によって、好ましくは熱間圧延によってコア層に接着されて、層間の必要とされる冶金接着が達成される。そのような圧延接着プロセスは、極めて経済的であり、所望の特性を示す極めて有効な複合製品をもたらす。本発明に従う圧延複合製品を生成するためのそのような圧延接着プロセスを行う場合、コア層及び6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層(複数可)の両方が、圧延接着中に厚さ減少を経験することが好ましい。典型的には、圧延の前、特に熱間圧延の前に、コア層及びクラッド層(複数可)の両方の圧延面は、圧延インゴットの鋳造したままの表面に近い偏析領域を除去するため及び製品の平坦性を増加させるために剥ぎ取られる。
【0016】
好ましくは2XXX合金コア層の鋳造インゴットまたはスラブは、熱間圧延の前に均質化され、及び/またはそれは予熱され、その直後に熱間圧延され得る。熱間圧延の前の2XXXシリーズ合金の均質化及び/または予熱は、通常、400℃~505℃の範囲の温度で行われる。鋳造したままの材料中の合金元素の偏析が減少し、可溶性元素は溶解される。処理が約400℃未満で行われる場合、生じる均質化効果は不十分である。温度が約505℃を超える場合、不要な孔形成をもたらす共晶溶融が生じる場合がある。この熱処理の好ましい時間は、2~30時間の間である。時間が長くても通常は有害ではない。均質化は、通常、約480℃を超える温度で実施される。典型的な予熱温度は、最大で約15時間の範囲の浸漬時間で約430℃~460℃の範囲である。均質化は、初期の溶融を回避するために、温度を上昇させる1つの段階またはいくつかの段階で実施することができる。
【0017】
本発明の一実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金クラッドライナーを形成する鋳造インゴットまたはスラブは、より薄いゲージへの熱間圧延の前に均質化されてより薄いゲージになり、2XXXシリーズ合金コア合金と一緒に所望のゲージに圧延するための適切なクラッドライナーを形成する。6XXXシリーズの合金インゴットまたはスラブの圧延面が剥ぎ取られて、圧延インゴットの鋳造したままの表面に近い偏析領域が除去され、製品の平坦性が増加し得る。均質化は、より細かく、より均質な粒構造をもたらし、最終圧延複合航空宇宙用製品における合金層の成形性の増加をもたらす。それは粗い相のほとんどを溶解し、6XXXシリーズ合金の陽極酸化挙動を改善するベータからアルファ-AlFeSiへの変換を完了する。均質化熱処理は、好ましくは、少なくとも約0.5時間、好ましくは約1~30時間の範囲、典型的には約6~20時間、少なくとも480℃の温度で行われる。好ましくは、均質化温度は、約500℃~590℃の範囲であり、好ましくは、510℃から580℃の範囲の温度である。一実施形態では、均質化は、最大で570℃の温度で実施される。当分野で周知のように、均質化は、初期の溶融を回避するために、温度を上昇させる1つの段階またはいくつかの段階で実施することができる。
【0018】
圧延複合航空宇宙用製品は、当該技術分野で慣習であるように、熱間圧延及び任意にそれに続く冷間圧延によって最終ゲージまでゲージ縮小される。圧延複合製品が最終ゲージまで圧延された後、製品は、典型的には、5~120分の範囲の典型的な浸漬時間を用いて、溶体化効果が平衡に近づくのに十分な時間、約450℃~505℃の範囲の温度で溶体化熱処理(SHT)される。好ましくは、溶体化熱処理(SHT)は、475℃~500℃の範囲の温度、例えば約495℃である。溶体化熱処理は、典型的には、バッチ式炉または連続式炉において行われる。示された温度での好ましい浸漬時間は、約5~35分の範囲である。しかしながら、クラッド製品を用いると、特に2XXXコア層から過度に多くの銅が6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層(複数可)に拡散し得、これは前記層(複数可)によって得られる腐食保護に有害な影響を及ぼし得るので、過度に長い浸漬時間に対して注意が払われるべきである。溶体化熱処理(SHT)の後、圧延複合製品を175℃以下の温度、好ましくは100℃以下、より好ましくは周囲温度に十分に早く冷却して、二次相、例えば、2XXXコア合金のAl2CuMg及びAl2Cuの制御不可能な析出を防止または最小化することが重要である。一方で、冷却速度は、圧延複合製品における十分な平坦性及び低レベルの残留応力を可能とするために過度に高くすべきではない。好適な冷却速度は、水の使用、例えば、水浸漬または水ジェットにより達成され得る。この温度範囲における溶体化熱処理は、6XXXシリーズ合金層の結晶化した微細構造をもたらす。本発明に従って使用される6XXXシリーズのアルミニウム合金を使用すると、SHTを適用した後、特に475℃~500℃、例えば約495℃で、溶融していない粗いMg2Si及びSi粒子の割合が最小限になり、6XXXシリーズのアルミニウム合金クラッド層の強度、成形性、耐腐食性にプラスの効果をもたらす。周囲(室温)温度での微細構造の進化により、6XXXシリーズのアルミニウム合金層がW(焼入れされたまま)からT4調質になる。この調質では、6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層は、再結晶化していない状態と比較して向上した成形性を提供する。
【0019】
複合製品は、残留応力を解消するため及び製品の平坦性を改善するために、例えば、その元の長さの0.5~8%の範囲で伸長させることによってさらに冷間加工され得る。好ましくは、伸長は、0.5%~6%、より好ましくは0.5%~4%、最も好ましくは0.5%~3%の範囲である。
【0020】
冷却の後、圧延複合航空宇宙用製品は、典型的には周囲温度で自然時効され、代替的には、複合航空宇宙用製品はまた、人工時効され得る。
【0021】
6XXXシリーズアルミニウム合金層(複数可)は、通常、コアよりもはるかに薄く、各6XXXシリーズアルミニウム合金層は、複合体の総厚さの1%~20%を構成する。6XXXシリーズアルミニウム合金層は、より好ましくは、複合体の総厚さの約1%~10%を構成する。
【0022】
一実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金層は、2XXXシリーズコア層の1つの表面または面上に結合される。
【0023】
一実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金層は、2XXXシリーズコア層の両方の表面または面上に結合され、それにより圧延複合航空宇宙用製品の外側表面を形成する。
【0024】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙用製品は、少なくとも0.8mmの総厚さを有する。
【0025】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙用製品は、多くとも50.8mm(2インチ)、好ましくは多くとも25.4mm(1インチ)、最も好ましくは多くとも12mmの総厚さを有する。
【0026】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙用製品は、プレート製品である。
【0027】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙用製品は、シート製品である。
【0028】
6XXXシリーズのアルミニウム合金クラッド層は、重量%で、Si 0.3%~1.0%、Mg 0.3%~1.1%、Mn 0.04%~1.0%、Fe 0.03%~0.4%、Cu最大0.10%、Cr最大0.25%、V最大0.2%、Zr最大0.2%、Zn最大0.5%、Ti最大0.15%、不可避不純物は各々<0.05%、合計<0.15%、及び残部アルミニウムを含む組成を有するアルミニウム合金に由来する。
【0029】
SiとMgは、6XXXシリーズ合金の最も重要な合金元素であり、アルミニウムに必要なレベルの強度と成形性、特に引張成形性を提供する。Si含有量は0.3%~1.0%の範囲でなければならない。Si含有量の好ましい下限は、0.40%である。Si含有量の好ましい上限は0.9%であり、より好ましくは0.75%である。Mg含有量は0.3%~1.1%の範囲でなければならない。Mg含有量の好ましい下限は、0.40%、より好ましくは0.45%である。Mg含有量の好ましい上限は、0.90%、より好ましくは0.80%である。これらのSi及びMgの範囲は、他の合金元素とともに、SHT及び急速冷却後の約1か月の自然時効後、約110~125MPaの範囲の降伏強度を提供し、さらに徐々に増加するだけで、自然時効が長くなり、T4調質での非常に安定した強度レベルのセットになる。好ましくは、6XXXシリーズ合金は、改善された時効速度論及び精製されたMg2Si析出構造の形成を提供するように、Mgを超えるSiを有する。これにより、人工時効後、特に475℃~500℃での溶体化熱処理と急速冷却後の自然時効の最初の月の両方で、時効時に高い強度レベルが得られる。
【0030】
Mnは、クラッド層(複数可)に使用される6XXXシリーズ合金の重要な合金元素でもあり、0.04%~1.0%の範囲である必要がある。Mn含有量の好ましい下限は、0.20%、好ましくは0.25%である。Mn含有量の好ましい上限は、0.90%、好ましくは0.80%である。一実施形態では、Mn含有量の上限は、0.7%である。Mnは、溶体化熱処理と急速冷却後のT4またはT6質別時に、アルミニウム合金の強度を高める。Mnは、クラッド層(複数可)の小さな結晶粒径を維持するのに貢献し、成形操作後の表面の外観を改善し、表面の亀裂を減らす。Mnの存在は、ベータ-AlFeSi相(Al5FeSi)からアルファ-AlFeSi(Al8Fe2Si)への変換を促進し、アルファ-AlFeSi相を安定化するため、6XXXシリーズ層の外面の陽極酸化品質を向上させる。Mnの存在はまた、6XXXシリーズアルミニウム合金の腐食電位を有利に増加させ、添加されるMnの量を調整して、コア合金とクラッド層(複数可)の間の腐食電位差を添加に応じて低減及び最適化することができ、それによって圧延複合航空宇宙製品の耐腐食性を向上させる。
【0031】
6XXXシリーズアルミニウム合金の実施形態では、耐腐食性を高めるために、Cu含有量は最大0.10%、好ましくは最大0.05%、より好ましくは最大0.03%である。
【0032】
Feは強度向上や結晶粒微細化に有効な元素である。0.03%未満のFe含有量では十分な効果が得られない可能性があるが、一方、0.4%を超えるFe含有量では、特に大量のMnが存在する場合に、複数の粗い金属間化合物が生成される可能性があり、それはアルミニウム合金の引張成形性と耐腐食性を低下させる可能性がある。その結果、Fe含有量は0.03%~0.4%、好ましくは0.1%~0.3%の範囲にある。一実施形態では、Fe含有量は0.25%未満である。好ましい実施形態では、良好な耐腐食性と良好な陽極酸化品質とのバランスを提供するために、比Fe/Mnは1.8未満である。
【0033】
アルミニウム合金の強度を高め、結晶粒を微細化するために、Crを0.25%まで添加することができる。好ましくは、それは、最大0.20%、より好ましくは最大0.15%存在する。一実施形態では、Crは不可避不純物の1つである。
【0034】
Znは、本発明の利点から逸脱することなく、最大0.5%、好ましくは最大0.25%存在することができる。一実施形態では、Znは不可避不純物の1つである。
【0035】
Vは、本発明の利点を逸脱することなく、最大0.2%、好ましくは最大0.1%まで加えることができる。好ましい実施形態では、Vは、不可避不純物の1つであり、溶体化熱処理及び急速冷却後の圧延材料の完全な再結晶を妨げることができるように、好ましくは最大0.02%、より好ましくは最大0.01%である。さらに、それは、アルミニウム合金に有害な金属間化合物粒子を形成する可能性がある。
【0036】
Zrは、本発明の利点を逸脱することなく、最大0.2%、好ましくは最大0.1%まで加えることができる。好ましい実施形態では、Zrは、不可避不純物の1つであり、溶体化熱処理及び急速冷却後の圧延材料の完全な再結晶を妨げることができるように、好ましくは最大0.02%、より好ましくは最大0.01%である。さらに、それは、アルミニウム合金に有害な金属間化合物粒子を形成する可能性がある。
【0037】
Ti、TiB2、Ti-Cなどの結晶粒微細化剤は、通常、最大0.15%、好ましくは最大0.10%、より好ましくは0.005%~0.05%の総Ti含有量で添加される。
【0038】
残部はアルミニウムと不可避不純物によって構成され、各々<0.05%、合計<0.15%である。
【0039】
一実施形態では、6XXXシリーズ層は、重量%で、Si 0.3%~1.0%、Mg 0.3%~1.1%、Mn 0.04%~1.0%、Fe 0.03%~0.4%、Cu最大0.10%、Cr最大0.25%、V最大0.2%、Zr最大0.2%、Zn最大0.5%、Ti最大0.1%、不可避不純物は各々<0.05%、合計<0.15%、及び残部アルミニウムを有するアルミニウム合金に由来し、好ましいより狭い組成範囲は本明細書に記載され、特許請求されているとおりである。
【0040】
一実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層の組成物は、0.1N甘汞電極を用いて25℃で53g/LのNaCl+3g/LのH2O2の溶液中で溶体化熱処理及び焼き入れがされた物質で測定される、2XXXシリーズコア合金に対して最適な腐食保護を提供するための-710mV以下(例えば、-750mV)の自然電位腐食値(基準甘汞電極(SCE)に対するもの、「腐食電位」とも称される)を有するように調整または設定される。好ましい実施形態では、6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層の腐食電位は、SHT及び焼き入れの後、したがって、重要な合金元素が概ね固溶体中にある場合に測定して、-730mV~-810mVの範囲である。
【0041】
一実施形態では、2XXXコア層と6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層との間、すなわち、最終質別における腐食電位差は、陽極クラッド層からコア層に対する十分な腐食保護を提供するために30~100mVの範囲である。
【0042】
一実施形態では、2XXXシリーズコア層は、重量%で、
Cu 1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、より好ましくは3.2%~4.95%、
Mg 0.30%~1.8%、好ましくは0.35%~1.8%、
Mn 最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、より好ましくは0.2%~0.9%、
Si 最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Fe 最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Cr 最大で0.35%、好ましくは最大で0.10%、
Zn 最大で1.0%、
Ti 最大で0.15%、好ましくは0.01%~0.10%、
Zr 最大で0.25%、好ましくは最大で0.12%、
V 最大で0.25%、
Li 最大で2.0%
Ag 最大で0.80%、
Ni 最大で2.5%、
残部アルミニウム及び不純物を含む組成を有するアルミニウム合金に由来する。典型的には、そのような不純物は、各々<0.05%、合計<0.15%である。
【0043】
別の実施形態では、2XXXシリーズコア層は、重量%で、
Cu 1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、より好ましくは3.2%~4.95%、
Mg 0.30%~1.8%、好ましくは0.8%~1.8%、
Mn 最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、より好ましくは0.2~0.9%、
Si 最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Fe 最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Cr 最大で0.35%、好ましくは最大で0.10%、
Zn 最大で0.4%、
Ti 最大で0.15%、好ましくは0.01%~0.10%、
Zr 最大で0.25、好ましくは最大で0.12%、
V 最大で0.25%、
残部アルミニウム及び不純物を含む組成を有するアルミニウム合金に由来する。典型的には、そのような不純物は、各々<0.05%、合計<0.15%である。
【0044】
好ましい実施形態では、2XXXシリーズコア層は、AA2X24シリーズアルミニウム合金(Xは、0、1、2、3、4、5、6、7、または8に等しい)に由来する。特に好ましいアルミニウム合金は、AA2024、AA2524、及びAA2624の範囲内である。
【0045】
一実施形態では、2XXXシリーズコア層は、T3、T351、T39、T8またはT851調質で提供される。
【0046】
2XXXシリーズコア層は、溶体化熱処理されていない調質、例えば、「F」質別または焼きなましされた「O」質別で使用者に提供され、次いで使用者によって成形され、溶体化熱処理され、時効され、必要とされる調質、例えば、T3、T351、T39、T8またはT851質別にされ得る。
【0047】
本発明はまた、本発明の圧延複合航空宇宙用製品を製造する方法であって、
(a) 複合航空宇宙用製品のコア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットまたは圧延原料を提供する工程、
(b) 2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを400℃~505℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程、
(c) 2XXXシリーズコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するための6XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供することであって、任意に、6XXXシリーズアルミニウム合金の2つのインゴットまたは2つの圧延クラッドライナーが、6XXXシリーズコアアルミニウム合金の各面上にクラッド層を形成するために提供される、提供する工程、
(d) 6XXXシリーズアルミニウム合金のインゴット(複数可)を少なくとも480℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間、好ましくは500℃~590℃の範囲の温度で、圧延クラッドへの熱間圧延の前に均質化する工程、
(e) 6XXXシリーズアルミニウム合金層(複数可)を、好ましくは熱間圧延及び任意にそれに続く冷間圧延によって、2XXXシリーズコア合金層に圧延接着して圧延接着製品を形成する工程、
(f) 圧延接着製品を450℃~505℃の範囲の温度で溶体化熱処理する工程、
(g) 溶体化熱処理された圧延接着製品を100℃未満、好ましくは周囲温度に冷却する工程、
(h) 任意に、溶体化熱処理された圧延接着製品を、好ましくはその元の長さの0.5%~8%の範囲、好ましくは0.5%~6%の範囲、より好ましくは0.5%~4%、最も好ましくは0.5%~3%の冷間伸長によって、伸長する工程、
(i) 冷却された圧延接着製品を、自然時効及び/または人工時効によって時効させる工程を含む、方法に関する。好ましい実施形態では、時効により、2XXXシリーズコア層は、T3、T351、T39、T8またはT851質別となる。6XXXシリーズ合金クラッド層は、自然時効した場合はT4質別となり、人工時効した場合はT6質別となる。
【0048】
本発明に従う方法の一実施形態では、次の加工工程において、圧延複合航空宇宙用製品は、成形プロセスにおいて、周囲温度または昇温下で、単軸屈曲または2軸屈曲のうちの少なくとも1つを有する所定の形状の製品に成形される。
【0049】
方法の代替的な実施形態では、工程(f)において、好ましくは熱間圧延及び任意にそれに続く冷間圧延によって、6XXXシリーズアルミニウム合金(複数可)を2XXXシリーズコア合金に圧延接着して圧延接着製品を形成した後、本発明の圧延接着製品航空宇宙用製品は、成形プロセスにおいて、周囲温度または昇温下で、単軸屈曲または2軸屈曲のうちの少なくとも1つを有する所定の形状の製品に成形され、続いて溶体化熱処理され、その後、最終質別まで時効される。
【0050】
成形は、曲げオペレーション、圧延成形、伸長成形、時効クリープ成形、深絞り、及び高エネルギーハイドロフォーミングの群からの成形オペレーションによって、特に爆発成形または放電成形によるものであり得る。本発明の圧延複合航空宇宙用製品に使用される6XXXシリーズのアルミニウム合金は、自然及び/または人工の時効後も、必要な曲げ性を提供する。また、これらの成形作業に必要な引張成形性も備えている。
【0051】
一実施形態では、昇温下での成形オペレーションは、140℃~200℃の範囲の温度で実施され、好ましくは、航空宇宙用製品は、1~50時間の範囲の時間、成形温度で維持される。6XXXシリーズのクラッド層の強度を最適化するには、150℃から170℃の範囲の成形温度が好ましい。好ましい実施形態では、昇温下での成形は、時効クリープ成形オペレーションが用いられる。時効クリープ成形は、時効熱処理中に構成要素を特定の形状に拘束するプロセスまたはオペレーションであり、これにより構成要素は、応力を開放し、例えば、単一または二重屈曲を有する胴体シェルを形成するように変形することが可能となる。
【0052】
一実施形態では、本明細書に組み込まれる特許文献US-2014/036699-A1に開示されているように、溶体化熱処理(SHT)を受けた後、且つ既定の形状に成形する前の本発明に従う圧延複合航空宇宙用製品は、圧延複合航空宇宙用製品において少なくとも25%の冷間加工を誘導するSHT後冷間加工工程を受け、特に冷間加工が、圧延航空宇宙用製品を最終ゲージに冷間圧延することは本発明から除外される。
【0053】
本発明の一態様では、それは、2XXXシリーズアルミニウム合金圧延航空宇宙用製品の一方または両方の表面上のクラッド層としての、本明細書に記載され、特許請求される6XXXシリーズアルミニウム合金の使用に関する。
【0054】
本発明のさらなる態様では、本発明に従う圧延複合航空宇宙用製品及びリベット打ちまたは溶接オペレーションによって圧延複合航空宇宙用製品に接合された少なくとも1つのアルミニウム合金硬化要素を含む溶接構造が提供される。
【0055】
さらに本発明の別の態様では、それは、本発明に従う圧延複合航空宇宙用製品及びリベット打ちまたは溶接オペレーションによって、例えば、レーザービーム溶接または摩擦撹拌溶接によって圧延複合航空宇宙用製品に接合された少なくとも1つのアルミニウム合金硬化要素、好ましくはストリンガーを含む航空機の溶接構造部材に関する。それはまた、胴体パネルがレーザービーム溶接(「LBW」)または摩擦撹拌溶接(「FSW」)によって、例えば、突き合わせ溶接によって互いに接合された溶接胴体構造に関する。
【0056】
本発明はまた、航空機または宇宙船であって、その胴体が、全体的または部分的に、航空機の様々な構造部分に組み込まれ得る本発明に従う圧延複合航空宇宙用製品から構築されている、航空機または宇宙船を含む。例えば、様々な開示される実施形態は、翼アセンブリにおける構造的部分及び/または尾アセンブリ(尾部)における構造的部分を形成するために使用され得る。航空機は、通常、商業用旅客機または貨物機の代表である。代替的な実施形態では、本発明は、他のタイプの飛行体に組み込まれ得る。そのような飛行体の例には、有人または無人軍事用航空機、回転翼航空機、またはさらに弾道飛行体が含まれる。
【0057】
本発明の圧延複合航空宇宙用製品は、飛行機のための部材、例えば、胴体部品もしくはパネル、または例えば、翼部品もしくはパネルに成形され得、飛行機は、記載される本発明の利点を利用し得る。言及される形状には、曲げ、伸長成形、機械加工及び航空機、航空宇宙用または他の乗り物のためにパネルまたは他の部材を成形するために当該技術分野で知られている他の成形オペレーションが含まれ得る。曲げまたは他の塑性変形を含む成形は、室温でまたは昇温下で実施され得る。
【0058】
本発明はまた、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図2】本発明による圧延複合航空宇宙用製品を製造するためのプロセスのいくつかの実施形態の概略フロースケジュールである。
【0060】
図1は、本明細書に示され、特許請求される、各面上に6XXXシリーズアルミニウム合金のクラッド層30を有する2XXXシリーズコア合金層20の3層構造を有する圧延複合航空宇宙用製品10の実施形態を示している。
【0061】
図2は、圧延複合航空宇宙用製品を製造するための本発明のプロセスのいくつかの実施形態の概略フロースケジュールである。プロセス工程1において、インゴットは、複合航空宇宙用製品のコア合金を形成する2XXXシリーズ合金の鋳造物であり、これは任意に、工程2において剥ぎ取られて、圧延インゴットの鋳造したままの表面に近い偏析領域が除去され、製品の平坦性が増加し得る。プロセス工程3において、圧延インゴットは均質化される。並行して、プロセス工程4において、インゴットは、複合航空宇宙用製品のコア合金の表面上、及び任意にコア合金の両面上に少なくとも1つのクラッド層を形成するための6XXXシリーズ合金の鋳造物である。また、このインゴットは、任意に、工程5において剥ぎ取られ得る。プロセス工程6において、6XXXシリーズ合金は、均質化され、その後、プロセス工程7において、熱間圧延されて、通常はクラッド層がコアよりもはるかに薄いので、ライナープレート(複数可)が形成される。プロセス工程8において、2XXXコア合金及びコア合金の一方または両方の面上の6XXXライナープレートは、好ましくは熱間圧延によって、圧延接着される。所望の最終ゲージに応じて、圧延接着製品は、プロセス工程9において最終ゲージ、例えば、シート製品または薄いゲージのプレート製品に冷間圧延され得る。プロセス工程10において、圧延航空宇宙用製品は、溶体化熱処理され、次にプロセス工程11において冷却され、好ましくはプロセス工程12において伸長される。
【0062】
一実施形態では、冷却された製品が成形プロセス13において成形され、プロセス工程14において最終質別、例えばT3またはT8質別まで時効、すなわち、自然または人工時効される。
【0063】
一実施形態では、成形プロセス13及びプロセス工程14の時効は組み合わされ得、例えば、成形オペレーションは、2XXXシリーズコア及び6XXXシリーズクラッド層(複数可)の両方の人工時効も生じるように、140℃~200℃の範囲の温度で、好ましくは1~50時間の範囲の時間実施される。
【0064】
一実施形態では、冷却された製品は、プロセス工程14、すなわち、自然または人工時効において所望の質別まで時効され、その後、成形プロセス13において既定の形状の成形された製品に成形される。
【0065】
代替的な実施形態では、2XXXシリーズコア及び6XXXシリーズクラッド層(複数可)を最終ゲージまで圧延接着した後、圧延製品は、成形プロセス13において既定の形状に成形され、プロセス工程15において成形された製品の溶体化熱処理がなされ、プロセス工程11において冷却され、続いてプロセス工程14において最終質別、例えば、T3またはT8質別まで時効、すなわち、自然または人工時効される。
【0066】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で広く変更され得る。
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目20]に記載する。
[項目1]
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の少なくとも1つの表面に結合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙用製品であって、前記6XXXシリーズアルミニウム合金は、重量%で、Si0.3%~1.0%、Mg0.3%~1.1%、Mn0.04%~1.0%、Fe0.03%~0.4%、Cu最大0.10%、Cr最大0.25%、V最大0.2%、Zr最大0.2%、Zn最大0.5%、Ti最大0.1%、不可避不純物が各々<0.05%、合計<0.15%、及び残部アルミニウムを含む、前記圧延複合航空宇宙用製品。
[項目2]
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が0.4%~0.9%の範囲のSi含有量を有する、項目1に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目3]
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が0.40%~0.90%の範囲のMg含有量を有する、項目1~2のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目4]
前記6XXXシリーズアルミニウム合金が、0.25%~1.0%の範囲、好ましくは0.30%~0.90%の範囲のMn含有量を有する、項目1~3のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目5]
前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層が、前記2XXXシリーズコア層の前記少なくとも1つの表面に圧延結合によって接合されている、項目1~4のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目6]
前記6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層が、前記圧延複合航空宇宙用製品の総厚さの1%~20%、好ましくは1%~10%の範囲の厚さを有する、項目1~5のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目7]
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の1つの表面に接合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とからなる、項目1~6のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目8]
2XXXシリーズコア層と、前記2XXXシリーズコア層の両方の表面に接合された6XXXシリーズアルミニウム合金クラッド層とからなる、項目1~6のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目9]
前記コア層の2XXXシリーズ合金は、重量%で、
Cu 1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、より好ましくは3.2%~4.95%、
Mg 0.30%~1.8%、好ましくは0.35%~1.8%、
Mn 最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、
Si 最大で0.40%、
Fe 最大で0.40%、
Cr 最大で0.35%、
Zn 最大で1.0%、
Ti 最大0.15%、
Zr 最大で0.25%、
V 最大で0.25%、
Li 最大で2.0%、
Ag 最大で0.80%、
Ni 最大で2.5%、
残部アルミニウム及び不純物の組成を有する、項目1~8のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目10]
前記2XXXシリーズコア層は、2x24シリーズ合金に由来する、項目1~9のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目11]
前記2XXXシリーズコア層は、T3、T351、T39、T8またはT851質別である、項目1~10のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目12]
前記6XXXシリーズクラッド層は、T4またはT6質別である、項目1~11のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目13]
前記圧延複合航空宇宙用製品は、0.8mm~50.8mm、より好ましくは0.8mm~25.4mmの総厚さを有する、項目1~12のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目14]
前記圧延複合航空宇宙用製品は、プレート製品である、項目1~13のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目15]
前記圧延複合航空宇宙用製品は、シート製品である、項目1~13のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目16]
前記圧延複合航空宇宙用製品は、航空宇宙用構造部品であり、好ましくは航空機胴体である、項目1~15のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品。
[項目17]
項目1~16のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙用製品を製造する方法であって、
(a) 前記複合航空宇宙用製品の前記コア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを提供する工程、
(b) 前記2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを400℃~505℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程、
(c) 前記2XXXシリーズコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するための6XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程、
(d) 前記6XXXシリーズアルミニウム合金の前記インゴットを少なくとも480℃、好ましくは500℃~590℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間均質化する工程、
(e) 前記6XXXシリーズアルミニウム合金を、好ましくは熱間圧延及び任意にそれに続く冷間圧延によって、2XXXシリーズコア合金に圧延接着して圧延接着製品を形成する工程、
(f) 圧延接着製品を450℃~505℃の範囲の温度で溶体化熱処理する工程、
(g) 溶体化熱処理された圧延接着製品を100℃未満、好ましくは周囲温度に冷却する工程、
(h) 任意に、前記溶体化熱処理され、冷却された圧延接着製品を伸長する工程、及び
(i) 前記冷却された圧延接着製品の前記2XXXシリーズコア合金を、好ましくはT3、T351、T39、T8またはT851質別まで時効させる工程、を含む前記方法。
[項目18]
前記方法は、前記溶体化熱処理され、冷却され、任意にさらに伸長もされている圧延接着製品を、成形プロセスにおいて既定の形状の製品に成形することをさらに含む、項目17に記載の方法。
[項目19]
前記時効工程(i)の後に成形工程(j)が実施される、項目17及び18に記載の方法。
[項目20]
前記成形工程(j)及び前記時効工程(i)は、昇温下で、好ましくは140℃~200℃の範囲の温度で、好ましくは1~50時間の範囲の時間、成形工程において組み合わされる、項目18に記載の方法。