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特許7556943顕微鏡を制御する制御装置、顕微鏡を制御するための方法、顕微鏡ならびにコンピュータプログラム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】顕微鏡を制御する制御装置、顕微鏡を制御するための方法、顕微鏡ならびにコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20240918BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/26
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022513856
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020074238
(87)【国際公開番号】W WO2021043722
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】19194952.8
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/089839(WO,A1)
【文献】特表2015-521749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G02B 26/10-26/12
G01N 21/62-21/74
G01N 21/84-21/958
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(101)を制御する制御装置(100)であって、前記制御装置(100)は、
-前記顕微鏡(101)のサンプル容積(105)のサンプル容積速度(104)を、前記顕微鏡(101)に対して調整し、
-前記サンプル容積速度(104)に応じて、前記顕微鏡(101)の光シート(107)の光シート速度(106)を、前記顕微鏡(101)に対して調整する、
ように構成されており、
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積速度(104)が上昇した場合に前記光シート速度(106)を低下させること、および、前記サンプル容積速度(104)が低下した場合に前記光シート速度(106)を上昇させること、のうちの少なくとも一方を行うように構成されている、
制御装置(100)。
【請求項2】
前記制御装置(100)は、方向(104a,106a)および絶対値(104b,106b)のうちの少なくとも一方において、前記顕微鏡(101)に対する前記サンプル容積速度(104)とは異なるように、前記顕微鏡(101)に対する前記光シート速度(106)を調整するように構成されている、
請求項1記載の制御装置(100)。
【請求項3】
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積速度(104)に応じた前記光シート速度(106)および前記サンプル容積速度(104)のうちの1つを調整することにより、前記光シート(107)の走査速度(108)が一定となるように調整するように構成されており、
前記走査速度(108)は、前記サンプル容積(105)に対する前記光シート(107)の速度である、
請求項1または2記載の制御装置(100)。
【請求項4】
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積速度(104)の方向(104a)である第1の方向が前記光シート速度(106)の方向(106a)である第2の方向とは反対方向を向くように、前記サンプル容積速度(104)を調整するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項5】
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積速度(104)の方向(104a)である第1の方向が前記光シート速度(106)の方向(106a)である第2の方向に等しくなるように、前記サンプル容積速度(104)を調整するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項6】
顕微鏡(101)を制御する制御装置(100)であって、前記制御装置(100)は、
-前記顕微鏡(101)のサンプル容積(105)のサンプル容積速度(104)を、前記顕微鏡(101)に対して調整し、
-前記サンプル容積速度(104)に応じて、前記顕微鏡(101)の光シート(107)の光シート速度(106)を、前記顕微鏡(101)に対して調整する、
ように構成されており、
前記制御装置(100)は、調整範囲(129)内の前記光シート(107)の位置に応じて前記サンプル容積速度(104)を調整するように構成されており、
前記制御装置(100)は、前記光シート(107)が前記調整範囲(129)の限界の所定の領域に位置する場合、前記サンプル容積速度(104)の方向(104a)である第1の方向(104a)が前記光シート速度(106)の方向(106a)である第2の方向(106a)と等しくなるように、前記サンプル容積速度(104)を調整するように構成されている、
御装置(100)。
【請求項7】
前記制御装置(100)は、前記光シート速度(106)の方向(106a)である第2の方向(106a)に対する前記サンプル容積速度(104)の方向(104a)である第1の方向(104a)の向きを、平行な向きから反平行な向きへ、かつ/または、反平行な向きから平行な向きへ変化させるように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項8】
顕微鏡(101)を制御する制御装置(100)であって、前記制御装置(100)は、
-前記顕微鏡(101)のサンプル容積(105)のサンプル容積速度(104)を、前記顕微鏡(101)に対して調整し、
-前記サンプル容積速度(104)に応じて、前記顕微鏡(101)の光シート(107)の光シート速度(106)を、前記顕微鏡(101)に対して調整する、
ように構成されており、
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積(105)の加速度に応じて、前記光シート(107)の加速度を調整するように構成されている、
御装置(100)。
【請求項9】
前記制御装置(100)は、前記サンプル容積速度(104)、前記光シート速度(106)および前記光シート(107)の走査速度(108)のうちの少なくとも1つを測定または決定するように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項10】
前記制御装置(100)は、前記光シート(107)を、前記光シート(107)に対して垂直な方向に移動させるように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項11】
顕微鏡(101)を制御する制御装置(100)であって、前記制御装置(100)は、
-前記顕微鏡(101)のサンプル容積(105)のサンプル容積速度(104)を、前記顕微鏡(101)に対して調整し、
-前記サンプル容積速度(104)に応じて、前記顕微鏡(101)の光シート(107)の光シート速度(106)を、前記顕微鏡(101)に対して調整する、
ように構成されており、
前記制御装置(100)は、調整範囲(129)内の前記光シート(107)の位置に応じて前記サンプル容積速度(104)を調整するように構成されており、
前記制御装置(100)は、前記光シート速度(106)および前記サンプル容積速度(104)のうちの一方を調整して、前記光シート(107)を前記調整範囲(129)の中央に位置させるように構成されている、
御装置(100)。
【請求項12】
顕微鏡(101)は、斜面顕微鏡(102)またはSCAPE顕微鏡(103)である、
請求項1から11までのいずれか1項記載の制御装置(100)。
【請求項13】
顕微鏡(101)であって、前記顕微鏡(101)は、
-前記顕微鏡(101)のサンプル容積(105)内に光シートを発生させる光シート発生器と、
-光(107b)を前記サンプル容積(105)内に透過させる光学系(110)と、
-光シート速度(106)を調整する光シートアクチュエータ(107c)と、
-前記サンプル容積(105)のサンプル容積速度(104)を調整するサンプルアクチュエータ(115)と、
-前記光シート(107)により発生される、前記サンプル容積(105)内の光分布(113)を検出する検出ユニット(112)と、
-前記光シート速度(106)および前記サンプル容積速度(104)のうちの少なくとも一方を制御する制御装置(100)と、
を備え、
前記制御装置(100)は、請求項1から12までのいずれか1項記載の制御装置(100)である、
顕微鏡(101)。
【請求項14】
前記顕微鏡(101)は、前記サンプル容積速度(104)、前記光シート速度(106)、および、前記サンプル容積速度(104)と前記光シート速度(106)との重ね合わせ、のうちの少なくとも1つを決定する速度検出器ユニット(100b)をさらに備える、
請求項13記載の顕微鏡(101)。
【請求項15】
前記顕微鏡(101)は、前記サンプル容積(105)から前記検出ユニット(112)に光を伝達するさらなる光学系を備え、前記光シートアクチュエータは、前記光シート(107)を前記さらなる光学系の光軸に対して平行な方向に平行移動させるように構成されている、
請求項13または14記載の顕微鏡(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡、例えば斜面顕微鏡またはSCAPE顕微鏡を制御する制御装置、顕微鏡、例えば斜面顕微鏡またはSCAPE顕微鏡を制御するための方法、顕微鏡、例えば斜面顕微鏡またはSCAPE顕微鏡ならびにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
斜面顕微鏡の従来技術のソリューションでは、サンプルが静止した光シートに対して移動される。これらの従来技術のソリューションでは、通常、平行移動ステージが適用される。サンプルが対物レンズの光軸に沿って移動される場合、画像のスタックを斜面顕微鏡で記録することができる。
【0003】
SCAPE顕微鏡では、光シートが、照明光路内および観察光路内に配置されたスキャナにより、サンプルを通過する走査範囲内で移動される。SCAPEでは、対物レンズの視野よりも広い大きなサンプル領域を記録することはさらに煩雑である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、制御装置が顕微鏡のサンプル容積のサンプル容積速度を顕微鏡に対して調整し、サンプル容積速度に応じて、顕微鏡の光シートの光シート速度を顕微鏡に対して調整するように構成されている点で、冒頭で言及した制御装置についての上記の問題を解決する。
【0005】
本発明は、顕微鏡のサンプル容積内に光シートを発生させる光シート発生器、光をサンプル容積内に透過させる光学系、光シート速度を調整する光シートアクチュエータ、サンプル容積のサンプル容積速度を調整するサンプルアクチュエータ、光シートにより発生される、サンプル容積内の光分布を検出する検出ユニット、および光シート速度およびサンプル容積速度のうちの少なくとも一方を制御する制御装置を備え、ここで、制御装置が本発明に係る制御装置である点で、冒頭に言及した顕微鏡についての上記の問題を解決する。
【0006】
さらに、本発明は、方法がサンプル容積のサンプル容積速度を調整することと、サンプル容積速度に応じて、光シートの光シート速度を調整することと、を含む点で、従来技術の顕微鏡を制御するための方法を改善する。
【0007】
サンプルの異なる部分がサンプルの移動によって記録される場合、サンプルに必要とされる加速が、高いスループットを得るために速く行われるか、または緩慢にかつ注意深く行われる場合がある。高速走査のための大きな加速ではサンプルに作用する大きな力がもたらされて、これによりサンプルが変形または再配置されてしまうことがあり、またサンプルの緩慢な移動ではサンプルの加速度に対して画像記録のフレームレートを採用する必要があるため、両アプローチとも不利である。このことにより、測定の完了に必要な時間がさらに長くなる場合がある。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、適用される対物レンズの視野よりも大きいサンプル領域の記録を容易にする、制御装置、方法、および顕微鏡を提供することである。
【0009】
本コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行される際に、本発明の方法を実行するためのプログラムコードを含む。
【0010】
本発明の制御装置、方法、および顕微鏡を、以下に記載される追加の技術的特徴によってさらに改善することができる。これらの追加の技術的特徴は相互に任意に組み合わせることができ、また省略される技術的特徴によって得られる技術的効果が本発明に関連しない場合には省略されてもよい。
【0011】
好ましくは、光シート速度は、サンプル容積速度に適応化される。これは、光シート速度を(変化する)サンプル容積速度に応じて迅速かつ容易に調整することができるという利点を有する。例えば本発明の顕微鏡における顕微鏡の光シートアクチュエータにより光シート速度を調整することは、光シート速度の調整に対応する手段としてサンプル容積速度を調整することよりも容易かつ迅速である。例えば、光シートアクチュエータは、例えばサンプルを保持するサンプルホルダに比べて、加速度に対してそれぞれ低い慣性(速度の変化に対する物体の抵抗)および低い感度を有する。
【0012】
本開示では、速度は、大きさおよび方向により定義される物理ベクトル量と理解されるべきである。例えば、サンプルの移動が1つの軸に沿ってのみ行われるいくつかの実施形態では、速度を符号付き量とみなすことができる。
【0013】
さらに、本開示では、斜面顕微鏡は、サンプル容積内で斜めに配向された光シートを備える顕微鏡、好ましくは、光シート顕微鏡と理解されるべきである。ここで、光シートを、好ましくは、横方向に移動させることができ、ここで、サンプル、より一般的にはサンプル容積を、光学アセンブリに対して、特に対物レンズに対して移動させることができる。制御装置、方法、コンピュータプログラム製品および顕微鏡は、特に、このような光シート顕微鏡を指すことができ、またはこのような光学シート顕微鏡に適用することができる。
【0014】
サンプルの走査を可能にするために、本発明の制御装置の一実施形態は、方向および絶対値のうちの少なくとも一方において、顕微鏡に対するサンプル容積速度とは異なるように、顕微鏡に対する光シート速度を調整するように構成されている。これにより、光シートおよびサンプル容積が同じ絶対値で同じ方向に移動しないことが保証される。もし同じ方向に移動してしまえば、光シートを介したサンプルの静的な平面照明が発生し、これにより画像スタックの記録またはサンプルの走査が不可能となる。
【0015】
制御装置は、a)サンプル容積速度に応じた光シート速度、およびb)サンプル容積速度のうちの1つを調整することにより、光シートの走査速度が一定になるように調整するように構成可能である。ここで、走査速度は、サンプル容積に対する光シートの速度である。
【0016】
走査速度は、光シート速度とサンプル容積速度との重ね合わせであってよい。ここで、走査速度は、参照フレームとしてサンプル容積を有する。その結果、光シートが顕微鏡に対して移動せず、サンプル容積が第1の速度+vで移動する場合、サンプル容積に対する光シートの走査速度vscはvsc=-vになる。
【0017】
好ましくは、制御装置は、一定の走査速度を提供するように光シート速度を調整するように構成可能である。ここで、サンプル容積速度も調整することができ、その結果、光シート速度も調整されることになる。
【0018】
調整ステップを行うために、本発明の顕微鏡の一実施形態は、サンプル容積速度、光シート速度、およびサンプル容積速度と光シート速度との重ね合わせ、のうちの少なくとも1つを決定する速度検出器ユニットをさらに備えることができる。
【0019】
したがって、前記速度のうちの1つはオンラインで測定することができ、または例えば測定が開始されてからの経過時間に応じて速度(光シートおよび/またはサンプル容積)の進行を記憶することができるルックアップテーブルにより決定することができる。
【0020】
したがって、制御装置は、サンプル容積速度、光シート速度および走査速度のうちの少なくとも1つを測定または決定するように構成可能である。
【0021】
本発明の制御装置の一実施形態では、制御装置は、サンプル容積速度が上昇した場合に光シート速度を低下させること、およびサンプル容積速度が低下した場合に光シート速度を上昇させること、のうちの少なくとも一方を行うように構成可能である。
【0022】
このような上昇または低下は、対応する速度の絶対値の増大または減少と理解されるべきである。
【0023】
例として、10(任意の単位)の目標走査速度がx軸に沿ったサンプル容積で達成される場合、すなわちvsc,t=+10の場合、vsv=-1のサンプル容積速度により、第1の走査速度vsc,1=+1がもたらされる。ここで、制御装置は、vls,1=+9となるように第1の光シート速度vls,1を調整し、このため、vsc,adj=+10(任意の単位)の調整された走査速度における2つの速度の重ね合わせが生じる。
【0024】
同様に、-5のサンプル容積速度は、走査速度を一定に維持するために、制御装置が第1の光シート速度を+5に調整することによりもたらされる。
【0025】
本発明の制御装置のさらに有利な実施形態では、制御装置は、サンプル容積の加速度に応じて、光シートの加速度を調整するように構成可能である。
【0026】
このようにして、サンプル容積が加速された場合、例えば、そこに提供されたサンプルを変形させずまたは位置変化させないために、光シートを、最初よりも高い光シート速度(走査速度が所定の目標値で一定になるように制御装置により調整される)で移動させる。ここで、サンプル容積のさらなる加速につれて、光シートは減速する。サンプル容積速度の上昇(すなわち速度の絶対値の増大)に伴って、光シート速度は、サンプル容積の速度の上昇に対応する割合(これは、減速度すなわち経時的な速度の変化割合に対応する)で低下する。
【0027】
このようにして、サンプルの速度が一定でない場合、例えば加速または減速される場合でも、走査速度、すなわちサンプル容積を通して光シートが走査される速度を、制御装置により一定に保つことができる。
【0028】
したがって、本発明の制御装置、方法、顕微鏡、およびコンピュータプログラム製品は、より大きな容積、すなわち対物レンズの視野よりも大きな容積またはサンプルを完全かつ迅速に検査することができるという利点を有し、ここで特に、サンプル全体の3次元画像スタックを記録することができる。画像スタックの各画像は、サンプルを過剰な力または加速度に曝すことなく、またはサンプル容積速度が変化する場合に本発明を使用しなければ画像間の距離を等距離に保つために必要となる検出器のフレームレート、例えばカメラのフレームレートを採用する必要なく、各画像間の等距離ステップで記録される。
【0029】
制御装置および顕微鏡は、光シートがその中で移動可能でありうる調整範囲を含むことができる。この調整範囲は、走査速度を一定に保つために、光シート(斜面顕微鏡)または光シート(SCAPE)の実際の走査範囲を再配置させ、特に移動させることができる範囲と理解されるべきである。調整範囲を、光シートを移動させるのに使用される光シートアクチュエータ部材により規定することができる。調整範囲の終端を、光シートアクチュエータ部材の最大および最小偏向角により、または光シートアクチュエータ部材の向きもしくは位置により、規定することができる。また、調整範囲を、光学系、例えば対物レンズの利用可能な開口により限定し、これにより範囲設定することができる。当該開口を介して、光シートの光がサンプル容積に提供される。加えて、調整範囲を、光学系にハードアパーチャを設けることにより規定することができる。光シートアクチュエータ部材は、偏向を提供する傾斜可能な要素または光シートの横方向の変位を提供する直線的に運動可能な要素であることができる。
【0030】
制御装置は、調整範囲内の光シートの位置に応じてサンプル容積速度を調整するように構成可能である。
【0031】
好ましくは、制御装置は、光シートが調整範囲の限界の所定の領域に位置する場合、第1の方向が第2の方向と等しくなるように、サンプル容積速度を調整するように構成可能である。
【0032】
このようにして、光シートが調整範囲の終端、限界または境界に近づいている場合、光シートを検出することができる。ここで、検出時に、制御装置または顕微鏡は、光シートとサンプル容積とが同じ方向へ移動するようにサンプル容積速度を調整することにより、対抗手段としての過補償を開始することができる。こうした過補償により、調整範囲の限界、好ましくは調整範囲の中央に、所定の領域から光シートを戻すことが可能となる。所定の領域は、光シート速度の調整が可能なままであることを保証するセキュリティバッファを表すことができる。光シートが所定の領域に入射する角度範囲は、調整範囲全体の20%に相当する場合がある。また、この角度範囲は、調整範囲の10%または5%に相当する場合がある。
【0033】
本開示では、光シートの位置は、SCAPE顕微鏡の場合の走査範囲の位置に対応すると理解されるべきである。光シートの走査および調整を行うために、同じまたは別の光学素子を適用することができる。例示的に、光シートの位置を調整するために、光シートでのサンプル容積の走査に使用されるのと同じ傾斜ミラーを使用することができる。
【0034】
さらなる実施形態では、制御装置は、サンプル容積速度の方向である第1の方向が光シート速度の方向である第2の方向とは反対方向を向くように、サンプル容積速度を調整するように構成可能である。すなわち、光シートの移動方向とサンプル容積の移動方向とは反対方向を向いており、つまり基準フレームとしての顕微鏡を使用して反平行である。
【0035】
さらに有利な実施形態では、制御装置は、サンプル容積速度の方向である第1の方向が光シート速度の方向である第2の方向と等しくなるように、サンプル容積速度を調整するように構成可能である。すなわち、顕微鏡に対して、サンプル容積および光シートは同じ方向へ移動する。
【0036】
10(任意単位)の目標走査速度で上記の例を再び考察すると、これは、サンプル容積速度が-15となる、すなわちvsv,1=-15であるケースとなる。ここで、光シートが顕微鏡に対して移動しない場合、vsc,1=+15の第1の走査速度が得られる。これは、目標走査速度よりも速い。この場合、制御装置は、光シート速度をvls,1=-5に調整し、これにより走査速度を+10に保つ。この場合、サンプル容積速度と光シート速度とは同じ方向を有する。
【0037】
この実施形態は、走査速度を一定に維持するために、光シートが第1の調整方向に移動すると、調整範囲内に留まるように光シートの移動方向を反転させることができるという利点を有する。サンプル容積の量が所望の走査速度の量よりも多い場合、光シートの方向が反転され、これを初期位置に向かって移動させることが可能となる。これにより、光シートをその調整範囲内に維持することが可能となる。
【0038】
さらに有利な実施形態では、制御装置は、光シートが移動可能である調整範囲の限界に近づく場合、第1の方向が第2の方向に等しくなるようにサンプル容積速度を調整するように構成可能である。この実施形態では、光シートは、その調整範囲内に留まるように制御される。
【0039】
よって、ここでは2つの制御ステップ、すなわち、サンプル容積速度に応じて、光シート速度を調整することと、光シート速度の調整が2つ以上の方向において依然として可能であるかどうかを制御することと、が適用される。この方法を過補償と称することができ、光シートをその初期位置に再配置することが可能となり、好ましくは、この初期位置は調整範囲の中央に対応する。第2の制御ステップは、第1の制御ステップへのフィードバックをトリガすることができ、例えばサンプル容積速度の変化を開始させることができる。
【0040】
制御装置は、第2の方向に対する第1の方向の向きを、平行な向きから反平行な向きへ、かつ/または反平行な向きから平行な向きへ変化させるように構成可能である。第1の期間の間、光シートおよびサンプル容積を同じ方向に移動させることができ、一方、第2の期間、好ましくは後続の期間の間、光シートおよびサンプル容積を反対方向に移動させることができる(両方の場合において参照フレームとして顕微鏡が使用される)。1回の測定の間、複数のこれらの期間が交互に配置されていてよい。
【0041】
本発明の制御装置は、光シートを光シートに対して垂直な方向で、すなわちその法線ベクトルに沿って移動させるように構成可能である。また、光シートをサンプル容積内にのみに位置させ、その法線ベクトルに対して所定の角度の方向に沿って移動させることもできる。
【0042】
本発明の制御装置は、特に、光シート速度およびサンプル容積速度のうちの1つを調整して、光シートを調整範囲の中央に位置させるように構成可能である。調整範囲の中央におけるこの位置決めは、サンプル容積速度の量が目標走査速度の量よりも大きい場合(ここでの2つの速度は反対方向を向いている)に、すなわちサンプル容積速度を過補償することによって、達成可能である。
【0043】
本発明の顕微鏡は、サンプル容積から検出ユニットに光を伝達するさらなる光学系を備えることができ、ここで、光シートアクチュエータは、光シートをさらなる光学系の光軸に対して平行な方向に平行移動させるように構成可能である。
【0044】
コンピュータプログラム製品は、任意の従来の磁気もしくは光学記憶媒体または非一時的記憶媒体に基づく任意の読み出し専用メモリ(ROM)もしくはランダムアクセスメモリ(RAM)であることができる。プログラムコードを、パーソナルコンピュータ、任意のフィールドプログラマブルゲートアレイ、マイクロコントローラ等、簡潔には、プログラムコードを記憶するように構成された任意の集積回路上で実行することができる。
【0045】
サンプル容積速度を、経時的に直線的もしくは非直線的に変化させることができ、または一定のままとすることができる。いずれにせよ、サンプル容積速度に応じて、光シート速度を、好ましくは一定の走査速度が得られるように、制御装置により調整することができる。異なる例では、サンプル容積の特定の領域において、修正された走査速度が必要とされることが望ましい場合がある。これは、例えば関心領域が定義されるケースであり、ここでは、所定の分解能、すなわちサンプルにおいて撮影された隣接する画像間の距離が必要となる。ここで、前記関心領域の外側では、より低い分解能で十分でありうる。これにより、関心領域の外側の概観走査と、関心領域におけるより詳細な走査、すなわちより高い分解能での走査と、が可能となる。この場合、目標走査速度を、関心領域の外側ではより速く設定し、関心領域の内側ではより緩慢に設定することができる。
【0046】
サンプルのこれら2つの異なる部分(関心領域の内外)において、走査速度を一定に設定することができる。
【0047】
別の例は、いわゆるマルチウェルプレート(マイクロウェルプレート)であり、ここでは(ウェル内に)別個の容積がパターン状に配列されている。ウェルは、それらの間の中間領域により分離されている。この場合、単一のサンプルは存在しないが、別個の各部分、すなわち各関心領域が存在する。可能な限り短い時間ですべてのウェルの内容物の概要を得るために、本開示は有益となりうる。光シートを1つのウェルから隣接するウェルへ、すなわち中間領域を超えて移動させることを、相当の速度で行うことができる。ここで、ウェルの内側すなわちサンプルの内側の光シートによるサンプル容積の移動は、より緩慢な走査速度で行われる。これにより、ウェルプレートの持続的な加速および減速がもたらされ、(光シートが関心領域に入るときの)サンプル容積の減速および(光シートが関心領域から2つの隣接するウェル間の中間領域へ移動するときの)サンプル容積の加速を、本開示により補償することができる。
【0048】
さらに、各ウェルの内側では、光シート速度を、ウェルを出入りするときの調整に加えて、サンプル容積速度に応じて調整することもできる。また、本発明は、照明光路および/または観察光路の内側に追加の望遠鏡を設けることにより、サンプル容積内の焦点を変化させる遠隔焦点合わせを使用する顕微鏡にも適用することができる。この場合、遠隔焦点合わせモジュールにより、対物レンズの光軸に沿ったサンプル容積の可能な速度に適応化されうる光シート速度を決定することができる。
【0049】
本発明の顕微鏡、好ましくは光学シート顕微鏡、より好ましくは斜面顕微鏡またはSCAPE顕微鏡は、照明が行われたのと同じ光学アセンブリ(対物レンズ)を介して、サンプル容積内で放出されまたは発光された観察光の検出を場合により行うことができる。このため、同一の光学アセンブリ(対物レンズ)を光学照明アセンブリとしてかつ光学観察アセンブリとして適用することができる。
【0050】
さらに、光学観察アセンブリは、光シートにより照明された観察容積の平面部の仮想画像を生成することができる。前記仮想画像は傾斜していてよく、すなわち光学観察アセンブリの光軸に対して斜めになっていてよい。本発明の顕微鏡は、さらなる光学アセンブリを備えることができ、この光学アセンブリは、所定の角度で光学観察アセンブリに対して配向されるように構成される。この結果、さらなる光学アセンブリの光軸は、仮想画像に対して実質的に垂直に配向される。これにより、さらなる光学アセンブリの光軸に対して垂直に配向された焦点面において、前記仮想画像のさらなる画像を生成することができる。当該焦点面内に検出器を配置することができる。このようにして、当該さらなる光学アセンブリ(独語:Aufrichteeinheit(正立ユニット))により、斜めの仮想画像が正立される。代替的に、コンピュータ上で実行される際に、補正された画像を計算するためのコードを含むコンピュータプログラム製品により、仮想画像の傾きを補償することもできる。
【0051】
SCAPE顕微鏡は、斜面顕微鏡の特に有利な実施形態であり、この実施形態では、光シートがサンプル容積を通して走査される。
【0052】
斜面顕微鏡は、1つの単一対物レンズ(すなわち、SCAPE顕微鏡に類似する)を備えることができ、傾斜光シートの傾斜画像は、照明または検出対物レンズに対して所定の角度で配向された対物レンズによってではなく、増大された焦点深度によって、平面的に検出器上へ結像される。
【0053】
サンプル容積の移動および光シートの移動の対応する調整は、周期的に繰り返すことができる。このため、特定の時間(サイクル持続時間または周期時間)の後、光シートはその初期位置に戻ることができる。光シートはその調整範囲内に維持されるべきであるため、前記調整範囲の中央付近で周期的な移動を行うことができる。光シートは、その期間中に、1回、2回または複数回、その初期位置に到達することができる。
【0054】
好ましい実施形態では、本開示により、光シートの一定の走査速度および周期的な移動ならびにサンプル容積の周期的な移動が可能となる。これにより、任意の大きなサンプルの走査が可能となる。
【0055】
代替例として、特定の時間範囲の間のみ、特に光シートがその調整範囲内の最大位置に到着するまでの間、画像をキャプチャすることができ、その後画像キャプチャが停止され、光シートがその初期位置に戻る。次いで、このシステムは、サンプル容積の移動を継続することができる。
【0056】
最も容易なケースは、測定が終了した後、光シートがその調整範囲の境界に到達しないように、光シートの速度およびサンプル容積の速度を調整することである。よって、測定終了後、光シートをその初期位置に戻すことができる。
【0057】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0058】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装されうる。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0060】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0061】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0062】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0063】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0064】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0065】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0066】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0067】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【0069】
以下において、本開示の例示を添付の図面を参照して示し、例示的な実施形態のみを記載する。これらは、特許請求の範囲により定義される権利保護の可能範囲を狭めることを意図するものではない。例示的な実施形態では、省略される技術的特徴の技術的効果が本開示の主題に関連しない場合、当該技術的特徴を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の顕微鏡および本発明の制御装置の模式図である。
図2】一定でない加速度での制御装置の模式的な動作方式を示す図である。
図3】一定の加速度での制御装置の模式的な動作方式を示す図である。
図4】可能性のある移動パターンおよび制御装置により行われる対応する調整の模式的な例を示す図である。
図5】別の可能性のある移動パターンおよび制御装置により行われる対応する調整のさらなる模式的な例を示す図である。
図6】さらに別の可能性のある移動パターンおよび制御装置により行われる対応する調整のさらなる模式的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下の図の説明では、図に導入されている各要素は、その特徴が導入された図に対応する先行の番号によって示される。このため、図2に初めて現れる技術的特徴は、参照符号2xxによって示される。同じ特徴が後続の図で扱われることもあり、この場合、前記特徴は、参照符号3xx、4xx、5xx等によって示される。同様に、図4に最初に記載されて参照符号4yyで示される技術的特徴が図1においても同様に扱われることもあり、この場合には図1では1yyと称される。参照符号のリストでは、各技術的特徴は1つの参照符号でのみ示されている。例示的には、サンプル容積の速度は参照符号217で与えられており、ここで、この参照符号は、サンプル容積の速度が図1図3図4図5または図6で言及される場合、参照符号117,317,417,517および617を含む。同じことが、参照符号のリストに挙げられている他の特徴にも適用される。
【0072】
図1は、本発明の顕微鏡101の模式図である。図示の顕微鏡101を、斜面顕微鏡102またはSCAPE顕微鏡103として具現化することができる。
【0073】
図1には、顕微鏡101のサンプル容積105内に光シート107を発生させる光シート発生器107aが模式的に示されている。
【0074】
顕微鏡101は光学系110をさらに備えており、光シート発生器107aから当該光学系110を通ってサンプル容積105へ光107bが透過される。
【0075】
図1には、透過装置として例示的に示されているが反射においても作用しうる光シートアクチュエータ107cがさらに示されている。光シートアクチュエータ107cにより、光シート速度106を調整することができる。
【0076】
光シート速度106は、方向106aおよび絶対値106bを特徴とする。すなわち、これらは、コネクタユニット111を表す。
【0077】
図1には、サンプル容積105内の光分布113を検出する検出ユニット112がさらに示されている。ここで、光分布113は、光シート107により発生され、(図示の実施形態では)光学系110を介して、検出ユニット112へ向かって透過される。このようにして、観察光114は、同じ光学系110を介して、検出ユニット112へ向かって透過される。
【0078】
顕微鏡101は、光シートアクチュエータ107cと、サンプル容積105のサンプル容積速度104を調整するように構成されたサンプルアクチュエータ115と、に接続された制御装置100をさらに備える。
【0079】
図1に示されている実施形態では、光シートアクチュエータ107cおよびサンプルアクチュエータ115は顕微鏡101に含まれているが、これらの特徴の異なる実施形態では、制御装置100に含まれていてもよい。
【0080】
図1には、顕微鏡101に対するサンプル容積105の3つの位置116が示されている。位置116のこの時系列は、サンプル容積速度の絶対値104bを有するサンプル容積速度の方向104aへのサンプル容積速度104でのサンプル容積105の移動を記述している。
【0081】
光シート速度106とサンプル容積速度104との重ね合わせ109により、光シート107は、走査速度108でサンプル容積105に対して移動する。
【0082】
走査速度108が基準フレームであるサンプル容積105とみなされ、サンプル容積速度と光シート速度とのそれぞれの方向104aおよび106aが反対を向くように、サンプル容積速度と光シート速度とのそれぞれの絶対値104bおよび106bが加えられて(加算されて)、走査速度の絶対値108bが得られる。走査速度の方向108aは、光シート速度の方向106aに等しい。
【0083】
制御装置100は、速度検出器100bに接続可能な速度評価モジュール100aを備えることができ、これは明確性の目的で模式的にのみ示されている。異なる実施形態では、速度評価モジュール100aおよび速度検出器100bは顕微鏡101の一部であってよく、速度データ(図示せず)を計算モジュール100cに直接に提供することができる。計算モジュール100cは、サンプルアクチュエータ115および/または光シートアクチュエータ107cと直接に接続可能であり、これにより、制御装置100はサンプル容積速度104および/または光シート速度106を調整することができる。制御装置100は、記憶モジュール100dをさらに備えることができる。記憶モジュール100dには、計算規則、移動パターンデータ、または制御装置もしくは顕微鏡のさらなるパラメータを記憶することができる。
【0084】
例えば、光シート107またはサンプル容積105の速度を測定せず、ルックアップテーブルを読み取ることによって決定することができる。このルックアップテーブルは、前記記憶モジュール100dに記憶することができる。
【0085】
図1には、光学系110の視野110aも示されている。ここで、サンプル容積105の画像の記録は当該視野110aに限定されており、このため、サンプル容積105全体についてのサンプル容積105の検査を移動させる必要がある。
【0086】
図1の右側の位置116には、サンプル容積速度が第2のサンプル容積速度104fに変更された状況が示されている。この変更された第2のサンプル容積速度104fに従って、制御装置100は、光シート速度を第2の光シート速度106fに変更する。両者の重ね合わせ109により、再び走査速度108がもたらされる。走査速度108は、図示の3つのすべての位置116において一定のままである。
【0087】
図2および図3において、速度vが時間tに依存して示されている。このグラフは、サンプル容積の速度217,317および光シートの速度218,318を示している。速度217,317および218,318はそれぞれ、サンプル容積速度および光シート速度の対応する絶対値104bおよび106bの符号付き値として理解されるべきである(図1を参照のこと)。
【0088】
このグラフにおいて、走査速度の絶対値108bに対応する値を有する走査速度219,319が定義され、ここで、走査速度の方向108aは数学的符号により考慮される(これは正の方向の問題であり、すなわち、示されている速度の符号は反対となることもある)。サンプル容積の移動方向(図示せず)が正として定義される。よって、光シートの反対方向への移動により、光シートの速度218,318が負になる。走査速度108は、サンプル容積速度104と反対の向きであると考えられるため、走査速度219,319も負である。
【0089】
走査速度219,319は、所定の値219a,319aである。図2において、サンプル容積の速度217は、ゼロから最終値217aまで非線形に上昇する。制御装置100(図示せず)は、一定の走査速度219が得られるように、サンプル容積の速度217に応じて、光シートの速度218を調整する。
【0090】
図3において、サンプル容積の速度317は、一定の加速度320で上昇し、ここで、図2におけるのと同様に、光シートの速度318は、所定の値319aに対応する一定の走査速度319が達成されるように相応に調整される。
【0091】
図4図6には、さらに可能な移動パターンが示されている。
【0092】
図4図6のすべてで、時間tに関する速度vが示されている。
【0093】
図4では、周期的な移動パターン420が、サンプル容積417の速度および光シートの速度418について示されている。走査速度419は一定であり(これは、サンプル容積417の速度に応じて光シートの速度418を調整する制御装置100(図示せず)により実現される)、-1(任意の単位)である。
【0094】
このパターンを、マルチウェルプレート421が検査される場合に適用することができる。このようなマルチウェルプレート421は、ウェル422および中間領域423を備えている。
【0095】
一般的に、これらのマルチウェルプレート421は、光学系110の視野110aよりも大きい場合がある。この場合、中間領域423は測定の対象ではない。前記中間領域423内では、サンプル容積、すなわちマルチウェルプレート421全体を、より速く移動させることができる。このグラフには、第1の走査範囲424および第2の走査範囲425が示されている。第1の走査範囲424では、視野110aは中間領域423上を(すなわちより速く)移動する。ここで、第2の走査範囲425では、視野はウェル422内に位置する。第2の走査範囲425では、サンプル容積417の速度はより緩慢であり、これによりサンプルへの妨害を少なくすることができる。
【0096】
このグラフには、光シート107が移動する距離427に対応する影付き領域426も示されている。
【0097】
第1の走査範囲424と第2の走査範囲425との間で、光シートの速度418はその符号を変化させる。これらの交点428において、サンプル容積417の速度は、その絶対値としての走査速度419の所定の値419aに対応する。すなわち、交点428では、光シート107は平行移動されず、(顕微鏡101を基準とみなせば)サンプル容積417の速度によって静的な光シート107が走査速度419でサンプル容積105を通過して走査が行われる。
【0098】
第1の走査範囲424では、光シート107は正の方向へ移動する。ここで、第2の走査範囲425では、光シート107は負の方向(光シートの負の速度418)へ移動する。したがって、第2の走査範囲425における光シート107の移動は、第1の走査範囲424における光シート107の移動を補償する。
【0099】
全体として、光シート107は、中央または中心にある初期位置(図示せず)の周りおよび調整範囲で振動する。
【0100】
調整範囲129は、図1に示されている。
【0101】
図5および図6には、非周期的な移動パターンが示されている。
【0102】
図5に、マルチウェルプレート521がウェル522を備え、ウェル522において、サンプル529がこのウェル522の中央に位置する場合が示されている。サンプル529は、高分解能の測定が望まれる関心領域530を規定している。したがって、図5の第1の走査範囲524は、中間領域523と、関心領域530の外側のウェル522の部分と、をカバーしており、関心のより低い前記領域上または非関心領域(中間領域523)上を迅速に移動する。
【0103】
第2の走査範囲525では、関心領域530における測定を改善するために、サンプル容積517の速度が低減される。光シートの速度518は、走査速度519を一定に維持するために適応化される。
【0104】
移動パターンの間、光シート107は、光シート107の初期位置532で再び戻り点531に到達する。
【0105】
このような戻り点531は、例えば1期間533後に再び到達される。このように、光シート107はその初期位置532の周りを移動するのみであり、その調整範囲129内に留まる。図5では期間533が2回ぶん示されており、ここで、各期間533において、光シート107は、その初期位置532で移動し始めてその初期位置532に戻り、最後に初期位置532に再び戻る。いずれの場合も、期間533後、光シートはその初期位置532に戻る。また、期間533内に1回、2回またはさらには複数回、初期位置に到達してもよい。
【0106】
図6には、図5に示されているものと類似した移動パターンが示されている。この移動パターンは、第3の走査範囲634が分割された第1の走査範囲624間に含まれる点で、図5に示されているものとは異なる。
【0107】
この第3の走査範囲634では、光シート107は、基準フレームとしての顕微鏡101と共に静止状態に留まる。ここで、当該第3の走査範囲634内のサンプル容積617の速度により、一定の走査速度619がもたらされる。第3の走査範囲634では、光シート107は初期位置632にある。これは、期間633後の戻り631のケースでもある。
【0108】
図示の例示的なグラフを、例えばマルチウェルプレート内の走査中に、前記プレートの終端に近づいた場合、任意に修正することができる。ここで、曲線により記載された遷移移動において、走査方向に対して垂直に平行移動した位置に光学アセンブリの視野を位置決めするために、例えばその慣性のためにサンプルがずれてしまわないよう、サンプル容積の速度を低下させることができる。
【0109】
同様に、マルチウェルプレートの中間領域にわたる光学アセンブリの視野の遷移中に、走査速度を上昇させることも可能でありうる。これは、関連する内容物が提供されていない中間領域には関連しないが、こうした速度の上昇は、マルチウェルプレートを効果的により速く走査するのに役立つ。
【符号の説明】
【0110】
100 制御装置
100a 速度評価モジュール
100b 速度検出器
100c 計算モジュール
100d 記憶モジュール
101 顕微鏡
107a 光シート発生器
101b 光
107c 光シートアクチュエータ
102 斜面顕微鏡
103 SCAPE顕微鏡
104 サンプル容積速度
104a サンプル容積速度の方向
104b サンプル容積速度の絶対値
104f 第2のサンプル容積速度
105 サンプル容積
106 光シート速度
106f 第2の光シート速度
106a 光シート速度の方向
106b 光シート速度の絶対値
107 光シート
108 走査速度
108a 走査速度の方向
108b 走査速度の絶対値
109 重ね合わせ
110 光学系
110a 視野
111 ベクトル単位
112 検出ユニット
113 光分布
114 観察光
115 サンプルアクチュエータ
116 位置
129 調整範囲
217 サンプル容積の速度
217a 最終値
218 光シートの速度
219 走査速度
219a 所定の値
220 加速度
420 周期的な移動パターン
421 マルチウェルプレート
422 ウェル
423 中間領域
424 第1の走査範囲
425 第2の走査範囲
426 影付き領域
427 距離
428 交点
529 サンプル
530 関心領域
531 戻り点
532 初期位置
533 期間
634 第3の走査範囲
v 速度
t 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6