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特許7556958触媒酸化によるスチレンプロセスストリームにおける不溶性ポリマー除去添加剤を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】触媒酸化によるスチレンプロセスストリームにおける不溶性ポリマー除去添加剤を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/20 20060101AFI20240918BHJP
   B01J 23/28 20060101ALI20240918BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20240918BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20240918BHJP
   B01J 23/75 20060101ALI20240918BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240918BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 47/54 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 49/78 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 45/36 20060101ALI20240918BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07C7/20
B01J23/28 Z
B01J23/34 Z
B01J23/745 Z
B01J23/75 Z
B01J35/61
C07C7/04
C07C15/46
C07C47/54
C07C49/78
C07C45/36
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022529365
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020061236
(87)【国際公開番号】W WO2021102112
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】16/687,820
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391024559
【氏名又は名称】フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペラティ,ジョセフ・イー
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-025079(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101306986(CN,A)
【文献】特開昭62-121645(JP,A)
【文献】特表2013-509353(JP,A)
【文献】特開昭55-040684(JP,A)
【文献】特開2006-016350(JP,A)
【文献】Jignesh VALAND et al.,“Mixed Cu-Ni-Co nano-metal oxides: A new class of catalysts for styrene oxidation”,Catalysis Communications,2013年06月18日,Vol. 40,p.149-153,DOI: 10.1016/j.catcom.2013.06.008
【文献】Clara SAUX et al.,“Studies on styrene selective oxidation to benzaldehyde catalyzed by Cr-ZSM-5: Reaction parameters effects and kinetics”,Applied Catalysis A: General,2011年04月22日,Vol. 400, No. 1-2,p.117-121,DOI: 10.1016/j.apcata.2011.04.021
【文献】Beena TYAGI et al.,“Microwave-assisted epoxidation of styrene with molecular O2 over sulfated Co-Y-ZrO2 solid catalyst”,Catalysis Communications,2009年09月09日,Vol. 11, No. 2,p.114-117,DOI: 10.1016/j.catcom.2009.09.007
【文献】Haitao CUI et al.,“Adsorption synthesized cobalt-containing mesoporous silica SBA-15 as highly active catalysts for epoxidation of styrene with molecular oxygen”,Catalysis Communications,2010年11月20日,Vol. 12, No. 6,p.417-420,DOI:10.1016/j.catcom.2010.11.009
【文献】Alan Jean-Marie et al.,Cobalt supported on alumina and silica-doped alumina: Catalyst structure and catalytic performance in Fischer-Tropsch synthesis,Comptes Rendus Chimie,2009年02月26日,Vol. 12, No. 6-7,p.660-667
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C07D 301/00 - 305/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法であって:
粗スチレンストリーム、スチレン含むタールストリーム、又はそれらの組み合わせの酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を酸化触媒を用いて生成することと;
酸化生成物の少なくとも一部を含む添加剤ストリームを、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入し、それによりジビニルベンゼン(DVB)架橋が阻害されることと、を含み、
前記酸化触媒が、
多孔質担体と;
コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む酸素活性化金属を含む活性相と、
を含む、方法。
【請求項2】
スチレンを含むタールストリームが、エチルベンゼン(EB)リサイクルカラムからの底部ストリームをタールストリームを含む底部ストリーム及びスチレンを含む頭上ストリームに分離するように構成されたスチレン仕上げカラム、からの底部ストリームのスリップストリームである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
添加剤ストリームが導入される、スチレン及びDVBを含むストリームが、EB脱水素化反応器の下流の蒸留カラムへのフィード、リサイクル、又は還流ストリームである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
蒸留カラムが、EBを含む頂部生成物をスチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたEBリサイクル蒸留カラム、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム、又はスチレンを含む頂部生成物をタール及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたスチレン仕上げ蒸留カラムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法であって:
酸化触媒を、酸化反応器内で、大気圧以上の圧力及び5atm未満の圧力で、スチレン及び空気と接触させることを含み、
前記酸化触媒が、
多孔質担体と;
コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む酸素活性化金属を含む活性相と、
を含む、方法。
【請求項6】
酸化が、140℃以下の温度を含む穏やかな条件下で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
酸化反応器が連続反応器であり、方法が、空気及びスチレンを含むストリームを酸化反応器内に導入することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
空気を40h-1以上の気体時空間速度(GHSV)で導入すること、スチレンを含むストリームを0.4h-1以下の液体時空間速度(LHSV)で導入すること、又はそれらの組み合わせをさらに含み;及び/又は
液体時空間速度に対する気体時空間速度の比(GHSV/LHSV)が、60以上であるような気体時空間速度(GHSV)及び液体時空間速度(LHSV)で、空気及びスチレンを含むストリームを導入することをさらに含む、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
スチレンを含むストリームとして、スチレン製造プラントのスチレン仕上げカラムからのタールストリームを前記酸化反応器に導入する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
タールストリームが、スチレン製造プラントのスチレン分離セクションの第1のスチレン仕上げカラムの底部生成物であり;及び/又は
タールストリームが、80重量パーセント(重量%)以上のスチレンを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化触媒が、適切な酸化物相として、か焼後の酸化触媒の総重量に基づいて、0.2~4重量パーセント(重量%)の活性相を含む、請求項5に記載の方法
【請求項12】
前記酸化触媒の多孔質担体が、ASTM D3663によって測定される20m/g以下のBrunauer Emmett及びTeller(BET)表面積を有する低表面積担体である、請求項5に記載の方法
【請求項13】
前記酸化触媒の酸素活性化金属が、コバルト(Co)又はマンガン(Mn)を含む、請求項5に記載の方法
【請求項14】
前記酸化触媒の活性相が、酸化コバルト(III)(Co)、酸化マンガン(IV)(MnO)、酸化マンガン(III)(Mn)、又はそれらの混合物を含む、請求項13に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本願は、その全体が全目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月19日出願の米国特許出願第16/687,820号による利益を主張する。
【0002】
連邦政府が後援する研究又は開発に関する声明
該当なし。
【0003】
マイクロフィッシュ付録に対する参照
該当なし。
【0004】
技術分野
本開示は、スチレンモノマーの製造に関する。より詳細には、本開示は、スチレンモノマーの製造において遭遇するポリスチレン汚染(fouling)の低減に関し、この汚染は、低下された速度に起因する生産損失をもたらし得る。さらにより詳細には、本開示は、スチレンを含むプロセスストリームからのベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の製造、及びスチレンを含むプロセスストリームへの酸化生成物の少なくとも一部の導入によって、スチレン製造中に形成される不溶性ポリスチレンポリマーの量を低下させることに関する。
【背景技術】
【0005】
ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンブタジエンゴム、及びその他等の主要なポリマー製品の原料であるスチレンは、毎年大量に消費され、代表的な汎用モノマー製品の1つである。スチレンは、反応器内の脱水素化触媒床上で、過熱水蒸気、即ち蒸気の存在下、エチルベンゼン(EB)を脱水素化することによって調製できることが周知である。スチレン製造プラントは、一般に、直列に接続された2又は3つの断熱反応器を、多数の炉及び熱交換器と組み合わせて含む反応システムを使用する。
【0006】
例えば、EB脱水素化によるスチレンの従来の製造は、典型的には約60%スチレンを含む粗スチレンストリームを生成する。蒸留による精製は、80℃超で有意な速度で起こり得る、スチレンによる重合の熱的な自己開始に起因して課題に直面する。スチレンは145℃で沸騰し、従って蒸留は一般に、より低い及び温度で、重合阻害剤(抗重合剤又は重合遅延剤とも呼ばれる)を添加して行われる。スチレン製造中の望ましくないモノマー分解及び/又はポリスチレンポリマーの望ましくない形成を制御するために、重合遅延剤が通常、プロセスに添加される。この目的に使用される典型的な製品は、DNOC(ジニトロ-オルト-クレゾール)又はDNBP(ジニトロ-sec-ブチル-フェノール)等のジニトロフェノール、及び、伝播速度よりも速くラジカルと反応する分子である真の阻害剤、例えば置換テトラメチルピペリデン-1-オキシル種である。スチレン重合の制御に有効であるが、これらの遅延剤のいくつかは、高い毒性を有し、及び/又は比較的高価であり得る。真の阻害剤は急速に消費され、いくつかの領域内では有効でない場合がある。
【0007】
真の阻害剤の使用は、スチレン蒸留カラム内のほぼ全ての可溶性ポリマー形成を停止させたが、良好な通常の運転が行われた場合であっても、不溶性ポリマー堆積物がターンアラウンドにて見出される。重大な事象又は機械的な問題の時間中、不溶性ポリマー汚染は深刻なものとなり得る。不溶性ポリマー汚染は、可用性、容量及び効率の損失をもたらし
得る。蒸留カラムの分配器、トレイ及び構造化パッキングは、このタイプの汚染から損傷を受けやすく;汚染を除去し、損傷を修復するために完全なシャットダウンが必要となる場合がある。カラムパッキングが汚染された場合、これを交換する必要がある。急性の不溶性ポリマー汚染のために、コストのかかる長期停止及び大規模な修理の可能性がある。このように、不溶性ポリマーが損失をもたらす多数の状況が存在する。
【0008】
至る所に存在する副生成物、ジビニルベンゼン(DVB)は、不溶性DVB架橋ポリスチレンポリマー(本明細書で不溶性ポリマー及び/又はDVB架橋ポリマーとも称される)の製造をもたらし得る強力な架橋剤である。従来の蒸留重合阻害剤を使用した場合であっても、相当な量の不溶性ポリマーがスチレン蒸留システム内に度々観察される。スチレン製造プラント内の不溶性ポリマー汚染は、流量制限、熱交換の低下、及び蒸留カラム性能の損失等の問題を引き起こし得る。現代の重合阻害剤/遅延剤の使用は、高い用量であっても、不溶性ポリマーの形成を排除していない。DVBは195℃の沸点を有し、スチレン及びEBが気相のまま留まる領域内で熱い液体形態に凝集する場合がある。そのような領域は、不溶性ポリマーが開始し得る位置であり得る。そのような位置において架橋ポリマーラジカルの塊が形成する可能性がある。形成後、これら不溶性ポリマーの「種」は、他の領域に移動し得、そこでそれらは沈降し、時間と共に不溶性ポリマーの大きな堆積物を形成し得る。従って、不溶性ポリマーの堆積は、依然として、従来のスチレン製造における課題である。
【0009】
従って、不溶性ポリマー形成が阻害される、スチレン製造及び/又は精製の改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
スチレンをベンズアルデヒド及びアセトフェノンに酸化するための酸化触媒が本明細書に開示され、酸化触媒は:多孔質担体と;コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む酸素活性化金属を含む活性相とを含む。
【0011】
酸化触媒の製造方法も本明細書に開示され、方法は、活性金属前駆体の水溶液を形成することであって、活性金属は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む、形成することと;担体を水溶液で含侵させて含浸担体を形成することと;か焼して酸化触媒を形成することとを含む。
【0012】
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法がさらに提供され、方法は:本開示の酸化触媒を酸化反応器内で、大気圧以上の圧力及び1、3、又は5atm未満の圧力で、スチレン及び空気と接触させることを含む。
【0013】
スチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法も本明細書に開示され、方法は:粗スチレンストリーム、スチレンを含むタールストリーム、又はそれらの組み合わせの酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を生成することであって、酸化は、本開示の酸化触媒によって達成される、生成することことと;酸化生成物の少なくとも一部を含む添加剤ストリームを、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入し、それによりジビニルベンゼン(DVB)架橋が阻害されることと、を含む。
【0014】
エチルベンゼン(EB)の脱水素化を介してスチレンを製造するためのシステムも開示され、システムは:EBと脱水素化触媒を有する蒸気とを脱水素化条件下で接触させて、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含む粗スチレン流出物を提供するよ
うに操作可能な1つ以上の脱水素化反応器と;粗スチレン流出物の温度を低下させて、冷却された粗スチレン流出物を提供するように構成された熱交換装置と;冷却粗スチレン流出物からオフガス及び/又は凝縮物を分離し、それにより脱水素化混合物を提供するように構成された分離装置と;脱水素化混合物を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、又はそれらの組み合わせを含む1つ以上のストリームと、ポリマー、添加剤、スチレンよりも高い沸点を有する種、及びスチレンを含むタールストリームと、スチレンを含むストリームとに分離するように操作可能な蒸留セクションと;タールストリームの一部の酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を含む酸化生成物ストリームを生成するように構成された酸化ユニットであって、酸化ユニットは本開示の酸化触媒を含む、酸化ユニットと;それによって酸化生成物ストリームの少なくとも一部が、粗スチレン流出物、冷却粗スチレン流出物、脱水素化混合物、蒸留セクションの蒸留カラムへのフィード、リサイクル、若しくは還流物、又はそれらの組み合わせと組み合わされ得る1つ以上のリサイクルラインと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
詳細な説明は、同様の参照番号が同様の部分を表す以下に簡単に記載する図面を参照する。
図1】本開示の態様によるスチレン製造システムIのプロセス流れ図である。
図2】本開示の別の態様によるスチレン製造システムIIのプロセス流れ図である。
図3】本開示の別の態様によるスチレン製造システムIIIのプロセス流れ図である。
図4】本開示の態様による酸化システムIVの概略である。
図5】実施例1の添加剤及び選択された参照種のバッチ試験におけるパーセント(%)DVB変化及びパーセント可溶性ポリマー成長の棒グラフである。
図6】実施例2の粗スチレン凝縮物試験装置の概略図である。
図7】実施例2の凝縮物試験結果に関するパーセント(%)DVB変化の棒グラフである。
図8】スチレンプラントストリームからのベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の製造のための酸化触媒の評価に使用される実施例3の回分式反応器の概略である。
図9】実施例3の酸化触媒についてのパーセントベンズアルデヒド及びアセトフェノン(%B&A)のプロットである。
図10】120℃での選択されたタール及び空気流量での実施例4の酸化触媒により生成されたパーセントベンズアルデヒド及びアセトフェノン(%B&A)のプロットである。
図11】実施例4の実験に関する、スチレン含有ストリームの液体時空間速度(LHSV)に対する空気の気体時空間速度(GHSV)の比GHSV/LHSVの関数としてのパーセントベンズアルデヒド及びアセトフェノン(%B&A)のプロットである。
図12】実施例5に記載されているスチレン製造システムVの例示的な部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概要
1つ以上の局面の例示的な実施が以下に説明されるが、開示される添加剤、組成物、システム、及び方法は、現在公知の又は未だ存在しないいずれかの数の技術を用いて実施される場合があることを最初に理解するべきである。本開示は、以下に説明される例示的な実施、図面、及び技術に決して限定されるべきではなく、それらの均等物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の範囲内で修正される場合がある。様々な要素の寸法に関する値が開示されるが、図面は等尺ではない場合がある。
【0017】
上記のように、エチルベンゼン(EB)の高温脱水素化によって生成されたスチレンは、低いレベルの副生成物、例えばジビニルベンゼン(DVB)を含み、これは不溶性ポリマー汚染をもたらす可能性がある。不溶性のDVB架橋ポリマーの堆積は、スチレンプラントにとって重大な問題である。この問題は、そのようなプラントの運転期間が3年以上継続する場合があるという事実により悪化する。そのような不溶性ポリマー形成を、付随する汚染(例えば、DVB汚染効果)と共に低下させ又は阻害することができる不溶性ポリマー除去添加剤、即ちIPAA(本明細書で単に添加剤とも称される)、そのような添加剤を含む組成物、並びにスチレンの製造及び/又は精製中に遭遇する汚染を低下させる方法が本明細書に開示される。そのようなIPAAは、DVBの沸点付近の沸点を有し、DVBが不溶性ポリマーを形成するのを阻害する(例えば、DVB架橋ポリスチレンの形成を阻害する)十分な化学活性を有する。
【0018】
標準的な重合阻害剤は、存在する場合、DVB反応を抑制するように思われるが、そのような重合阻害剤は、典型的には高価であり、有毒であり、高い沸点を有する(例えば、大気圧で200℃超で沸騰する)。DVBの沸点付近の沸点を有する少なくとも1つのIPAA(本明細書で「化学成分」又は「化学的化合物」とも称される)を含む、本明細書に記載される組成物は、DVBの凝縮及び反応の可能な部位に対処するのに有効であり得ることが発見された。DVBの沸点付近の(かつ従来の重合阻害剤の沸点よりも低い)沸点を有することによって、IPAAは、スチレン精製プロセス中にDBVと共に残留(又は「追従」)することができる。理論に制限されることを望むものではないが、DVB凝縮のそのような部位は、不溶性ポリマー堆積をもたらす「種」ポリマーの供給源である場合があり、DVBと相互作用し、かつDVBに追従する(即ち、スチレン精製/製造後処理のほぼ全体を通してDVBと共に残留する)適切な特性を有する、本明細書に記載されるIPAAは、そのような播種を(その結果としての不溶性ポリマー汚染と共に)低下させる場合がある。
【0019】
特に記さない限り、本明細書に列挙する沸点は、1気圧での標準的な沸点である。態様において、DVBの沸点付近で沸騰する少なくとも1つの化学的化合物又はIPAAは、195℃であるDVBの沸点の5、10、20、30、40、50、又は60℃以内の沸点を有し、スチレンの沸点(145℃)よりも十分高く、スチレンからの効果的な分離を可能にする。態様において、スチレンの沸点よりも十分高い温度は、少なくとも170℃である。即ち、態様において、少なくとも1つの化学成分は、190℃~200℃、185℃~205℃、175℃~215℃、170℃~225℃、170℃~235℃、170℃~245℃、又は170℃~255℃の範囲の沸点を有する。態様において、IPAAは、DVBの沸点以下、即ち、195℃以下の沸点を有する。態様において、IPAAは、スチレンの沸点以上、即ち、145℃以上の沸点を有し、蒸留による効果的な分離を可能にするように170℃よりも高い。態様において、IPAAは、約260℃、250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、又は195℃以下の沸点を有し、約170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、又は230℃以上、又はその中に表されるいくつかの範囲の沸点を有する。
【0020】
IPAAはまた、1つ以上の官能基を含み、それによってその活性はDVB架橋を阻害する。本明細書で使用される場合、IPAAは、IPAAの存在下でのスチレン及びDVBを含む粗スチレンの精製が、IPAAが存在しない同じプロセスと比較して少ない不溶性ポリマーを生成する(これは例えば、分子DVBのより少ない減少により示される場合がある)場合、「DVB架橋を阻害する活性を有する」。そのような分析は、例えば、本明細書の下記の実施例1に記載される技術によって行われる場合がある。本開示による方法は、スチレンの製造/精製中の汚染の低下を提供する場合がある。そのような汚染の低下は、IPAAが存在しない同じプロセスに対する、不溶性ポリスチレン、可溶性ポリス
チレン、又は両方の形成の低下を含む場合がある。
【0021】
いくつかの異なる化学部分(例えば、不安的なC-H及びC-C結合、酸素及び窒素官能基)が、DVBの望ましくない反応を阻害する、及びDVB架橋を遅延させる能力を有することが見出されている。態様において、IPAAは、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル及びカーボネート(これらに限定されない)により提供されるような明らかな活性酸素を含む。態様において、IPAAは、β水素を有する歪んだ環式及びカルボニル(これらに限定されない)により提供されるような反応性水素官能基を含む。態様において、1つ以上の官能基は、アミン、アルコール、アミノアルコール、不安的なC-C、エステル、カルバメート、アルデヒド、ケトン、酸、アセテート、ベンゾエート、不安的な水素、グリコール、又はそれらの組み合わせから選択される。態様において、IPAAは、アミン、グリコール、ベンゾエート、カルバメート、又はそれらの組み合わせから選択される。理論に制限されることを望むものではないが、上述した沸点に加えた重要な化学的特性は、ラジカル鎖重合を妨げるのに十分な化学的不安定性である場合がある。さらに、いくつかの種は、典型的なスチレン蒸留条件下で、DVBと化学的に反応することができる場合がある。
【0022】
適切なIPAAは、乳酸エチル、テトラリン、アセトフェノン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トランスチルベン(transtilbene)、N,N-ジエチル-1,4,-フェニレンジアミン、フェニルエタノール(例えば、1-フェニルエタノール)、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、炭酸ジフェニル、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アセト酢酸エチル、ジエチルアミノエタノール、ビフェニル、ジエタノールアミン、3-アミノ1-プロパノール、テルピネオール、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0023】
理論に制限されることを望むものではないが、IPAAは、DVBを消費し(例えば、それを可溶性ポリマーに組み込ませる、又はDVBと別様に反応する)、それがラジカル重合に組み込まれることを防止し、又はいくつかの他の機構によって、DVB架橋を阻害する活性を有する場合がある。例えば、本明細書の下記の実施例1で明らかなように、ベンズアルデヒドはDVBと反応し、従ってプロセスストリームからDVBを効果的に除去する場合があり、安息香酸アルキルは、別の機構によってDVB反応性を抑制するように思われる。Diels-Alder反応を含むがこれに限定されない付加反応が起こってプロセスからDVBを除去する場合がある。
【0024】
本明細書に開示される不溶性ポリマー除去組成物(IPAC)は、DVB架橋を阻害する活性を有し、かつDVBの沸点付近の沸点を有する2つ以上のIPAAを含む場合がある。例えば、態様において、添加剤は、DVBの沸点未満(即ち、195℃未満)の沸点を有する1つのそのような化学成分、及びDVBの沸点を超える(即ち、195℃を超える)沸点を有する別のそのような化学成分を含む。そのような添加剤混合物は、蒸気圧領域にわたって作動可能であり、従ってDVB反応性を遅延させる広い適用範囲を提供する場合がある。DVBよりも高い及び低い沸点を有する種を含むそのような混合物は、例えば、凝縮領域及び蒸留カラムの広い適用範囲を提供する場合がある。
【0025】
IPAAは、従来の重合阻害剤と共に使用された場合、全体的な性能をさらに向上させる場合がある。態様において、本開示のIPACは、従って従来の重合阻害剤をさらに含む。一般に、そのような従来の重合阻害剤は、本明細書に記載される化学成分よりも遥かに高い沸点を有する。例えば、従来の重合阻害剤は、195℃、200℃、205℃、215℃、225℃、235℃、245℃、250℃、又は300℃を超える沸点を有する場合がある。そのような重合阻害剤は、多数の商業的ベンダーから入手可能な、ジニトロ
フェノール(例えば、DNOC(ジニトロ-オルト-クレゾール)又はDNBP(ジニトロ-sec-ブチル-フェノール))、TMPO化合物(例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル)、オキシム(例えば、代替的遅延剤)等を含む(これらに限定されない)ものである。
【0026】
態様によれば、本開示によるスチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法は、本明細書で上述したIPAA又はIPACを、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入することを含む。態様において、スチレン及びDVBを含むストリームは、スチレンを製造するように構成された反応器内で形成される粗スチレンである。粗スチレンは、エチルベンゼン(EB)脱水素化の生成物である場合があり、ここでEBは、等式(1)のように、過熱水蒸気、即ち蒸気の存在下で脱水素化される:
【化1】
【0027】
このような粗スチレン生成物を製造するためのシステム及び方法は、当技術分野で公知であり、態様において、粗スチレンは、いずれかのそのような公知のシステム及び方法によって製造される。例えば、多段階EB脱水素化システム及び方法は、2017年12月12日に出願された米国特許出願第15/838,569号(本開示に反しない目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。そのような粗スチレンを製造するためのシステム及び方法は、本明細書で以下により詳細に記載される。
【0028】
態様において、IPAA又はIPACは、スチレン及びDVBを含むストリームの約0.001~約0.1、約0.01~約0.1、約0.001~約0.2の範囲、又は約0.001、0.01、又は0.1重量パーセントに等しい濃度で導入される。IPAA又はIPACが導入されるスチレンを含むストリームは、態様において、EB脱水素化反応器の粗スチレン反応器流出物である場合がある。態様において、IPAA又はIPACが導入されるスチレンを含むストリームは、粗スチレンが生成される反応器(例えば、EB脱水素化反応器)の下流のスチレン精製/回収セクションの蒸留カラム(又は他の精製ユニット)へのフィード、リサイクル、又は還流ストリームである。図2を参照して本明細書で以下により詳細に述べるように、蒸留カラムは、EBを含む頂部生成物を、スチレンを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム(この蒸留カラムは、本明細書で、「EBリサイクル」又は「EB分離」カラムとも称される場合がある)、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム、又はスチレンを含む頂部生成物を、タールを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム(この蒸留カラムは、本明細書で、「スチレン仕上げカラム」とも称される場合がある)を含む場合がある。このようなタールは、いくつかのスチレン、重質副生成物、ポリマー、及び/又は重合阻害剤/遅延剤を含み、本明細書で「スチレンタール」又は「スチレン/タール」とも称される場合がある。
【0029】
スチレン及び副生成物DVB、並びに本明細書で上述したIPAA又はIPACを含む、このような粗スチレンストリームを含む組成物も本明細書に開示される。
スチレンの製造/精製のためのシステム
【0030】
ここで、本明細書に開示される添加剤を使用するスチレンの製造方法を、図1を参照して記載する。図1は、本開示の態様によるスチレン製造システムIのプロセス流れ図である。スチレン製造システムIは、粗スチレン製造装置100、冷却、オフガス及び凝縮物除去装置110、分離又は「蒸留」装置120、並びに本明細書に開示される酸化装置130を含む。粗スチレン製造装置100は、反応関与体からスチレン及びDVBを含む粗スチレンを生成するように操作可能ないずれかの装置である。反応関与体は、1つ以上の反応関与体フィードラインを介して導入される場合がある。例えば、図1の態様では、第1の反応関与体ライン101及び第2の反応関与体ライン102は、組み合わされて反応関与体フィード入口ライン103を形成し、これは粗スチレン製造装置100に流体接続されている。反応関与体フィードは、態様において、ほぼ等しい質量流量のEB及び蒸気を提供する場合がある。代替的に、第1の反応関与体ライン101及び第2の反応関与体ライン102は、両方とも、反応関与体を粗スチレン製造装置100に直接導入してもよい。粗スチレンは、粗スチレン流出物ライン105を介して粗スチレン製造装置100から除去される。図2を参照して本明細書で以下にさらに述べるように、態様において、粗スチレンは、EBの脱水素化によって製造される。EB脱水素化によって粗スチレンを製造するためのシステム及び方法は、当技術分野で公知であり、態様において使用されて粗スチレンを提供する場合がある。例えば、態様において、米国特許出願第62/436,653号に記載されている多段階EB脱水素化が使用される場合がある。
【0031】
冷却、オフガス及び/又は凝縮物除去装置110は、熱交換によって粗スチレン製造装置100の粗スチレン流出物を冷却するように操作可能であり、粗スチレン流出物は、粗スチレン流出物ライン105を介してそこに導入され、該装置は本明細書で単に「冷却装置」又は「凝縮ゾーン」110と称される場合がある。冷却オフガス及び凝縮物除去装置110はまた、オフガス及び/又は凝縮物を粗スチレンから分離するように機能する場合があり、従って脱気され、凝縮物(例えば、水)が除去された(例えば、脱水された)粗スチレンを提供する。オフガスライン112は、冷却装置110と流体接続されている場合があり、それによりオフガスはそこから除去され得、凝縮物ライン111は冷却装置110と流体接続されている場合があり、それにより凝縮物はそこから除去され得る。態様において、オフガスライン112は分離装置120と結合されている。分離フィードライン113は、冷却装置110を分離装置120と流体接続させる場合があり、それにより冷却粗スチレン混合物(これは脱気及び/又は脱水もされている場合がある)は分離装置120に導入され得る。
【0032】
分離装置120は、冷却されたスチレン混合物から1つ以上の副生成物、未反応反応関与体、及び重質残渣(例えば、タール)を除去し、それにより精製されたスチレンモノマーストリームを提供するように操作可能ないずれかの装置である。例えば、分離装置120は、粗スチレン製造装置100へとリサイクルするための未反応反応関与体出口ライン122を介して分離装置120から除去される場合がある未反応反応関与体ストリーム(例えば、EB)、1つ以上の副生成物出口ライン121を介して分離装置120から除去される場合がある1つ以上の副生成物ストリーム、及び、スチレンモノマー(SM)出口ライン127を介して分離装置120から除去される場合がある、精製スチレンモノマー(SM)ストリームからスチレン/タール出口ライン125を介して除去される場合があるいくつかのスチレンを含むタール、を分離するように構成される場合がある。態様において、精製されたスチレンモノマーは、150、100、又は75PPM未満のEBを含む。未反応反応関与体出口ライン122は、例えばライン101及び/又は103を介して、分離装置120を粗スチレン製造装置100に流体接続する場合があり、それにより未反応反応関与体はリサイクルされて、さらなる粗スチレンを生成する場合がある。
【0033】
粗スチレン製造装置100が、1つ以上のEB脱水素化反応器を含む場合、未反応反応関与体は、例えば、未反応反応関与体出口ライン122を介して、粗スチレン製造装置1
00にリサイクルされる場合があるEBを含む場合があり、副生成物は、1つ以上の副生成物出口ライン121を介して分離装置120から除去される場合があるベンゼン及び/又はトルエンを含む場合がある。
【0034】
態様において、タールリサイクル及び/又はさらなる処理が用いられ、それによりスチレン/タール出口ライン125内のタールの少なくとも一部は、1つ以上のタールリサイクル及び/又はさらなる処理ライン128(228/328)を介してリサイクルされる。態様において、本開示のシステムは、スチレンタールリサイクルストリームを含み、それにより活性な未使用重合遅延剤が分離セクション120へのフィードに戻され得る(例えば、分離フィードライン113に導入される)。いくつかのそのような態様では、1つ以上のタールリサイクル及び/又はさらなる処理ライン128(図2の態様の228)は、リサイクルタール/重質残渣を分離フィードライン113(213/313)に、又は分離若しくは蒸留装置120(220/320)内のいずれかの個々のカラム内に戻すように構成される場合がある。
【0035】
本明細書で以下にさらに述べるように、スチレン/タール出口ライン125内のスチレン/タールストリームの全部又はおそらく一部は、タール酸化フィードライン129を介して、タール酸化ユニット操作に供給するのに使用される場合があり、ここでタールストリーム中の成分(例えば、スチレン等)は、炭化水素の酸素添加剤(oxygenate)IPAAに酸化され得、これは分離セクション120にリサイクルされて不溶性ポリマー除去を提供し得る。例えば、タール酸化フィードライン129内のスチレンは、ベンズアルデヒド、アセトフェノン及び/又はフェニルエタノールに酸化され得るがこれらに限定されない。これらの種は、不溶性ポリマー汚染を低下させるのに有効であり得る。スチレンに加えてタール中の他の種も、そのような酸素添加剤を形成することができ、同じ又は同様の効果を提供する。従って、態様において、タール出口ライン125は、タール酸化フィードライン129を介して酸化ユニット又は装置130と流体接続される。
【0036】
酸化ユニット又は装置130は、スチレン/タール出口ライン125及びタール酸化フィードライン129を介してそこに導入されたスチレン/タールの少なくとも一部を酸化して、本明細書に開示される添加剤における使用のための、本明細書で上述した少なくとも1つの化学成分を含む液体流出物138を提供するように操作可能ないずれかの酸化装置である。空気入口ライン126を介して酸化セクション130に空気を導入し、過剰な空気を過剰空気除去ライン126’を介して除去することができる。図4の態様を参照してさらに記載するように、液体流出物138はそのままで使用され、分離セクション120にリサイクルされ得、又は、本開示による1つ以上の化学成分(例えば、IPAA)が、スチレン製造システム内の不溶性ポリマー除去のための1つ以上の分離されたIPAAの使用の前に、そこから分離される。例えば、タールは、いくつかの潜伏したスチレンモノマー及び/又は他のモノマー/化合物を含む場合があり、これらは変換(即ち、酸化)されて、例えばアセトフェノン、フェニルエタノール及び/又はベンズアルデヒドなどであるがこれらに限定されない、本明細書に記載される添加剤の所望の酸化化学成分を形成する場合がある。態様において、約0.01~約0.1、約0.1~約1若しくは約1~約3重量%のベンズアルデヒド、約0.01~約0.1、約0.1~約1、若しくは約1~約3重量%のアセトフェノン、及び/又は約0.001~約0.01、約0.01~約0.1、若しくは約0.1~約0.3重量%ppmのフェニルエタノールがスチレンタールストリームから生成され得る。例示的な態様では、ラボ回分式反応器は120℃で、プラントストリームサンプルを使用して、1.4%ベンズアルデヒド、0.9% アセトフェノン及び50ppmのフェニルエタノールの製造を示した。酸化ユニット操作は、そのストリームが酸化可能種を含むことを条件として、分離セクション120(本明細書で以下に記載する図2の220及び図3の320)からのスチレンタール及び/又は別のストリームに対して使用され得ることに留意されたい。
【0037】
液体流出物ストリーム138又はそこから分離された1つ以上の添加剤を含む添加剤成分ストリーム(例えば、本明細書で以下に図2及び3を参照してさらに記載される)の全部又は一部は、不溶性ポリマー除去のために、スチレン製造システムのいずれかの他の箇所に再導入される場合がある。液体流出物ストリーム138又は添加剤成分ストリームの一部は、分離へのフィードストリーム(例えば、分離フィードライン113)及び/又は分離装置120内の分離セクション内の別の地点にリサイクルされる場合がある。例えば、本明細書で以下にさらに記載するように、液体流出物ストリーム138又は添加剤成分ストリームの一部は、他の添加剤成分と組み合わされ、及び/又は、粗スチレン流出物ライン105内の粗スチレン流出物に導入され、分離フィードライン113内の冷却(及び/又は脱気及び/又は脱水)された粗スチレン流出物、分離装置120の蒸留カラムへのフィード、リサイクル、及び/又は還流物に導入され、又はそれらの組み合わせである場合がある。酸化流出物ストリームからの添加剤ストリームの分離から得られた酸化残渣は、態様において、スチレン製造システム内でリサイクルされる場合がある。図に示さないが、態様において、例えば精製スチレンモノマー出口ライン127(本明細書で以下に記載される図2の態様の227及び図3の態様の327)又はそれ以外の箇所内のスチレンモノマーの一部は、酸化ユニット(EBタールと共に又は伴わずに)に導入されて、不溶性ポリマー形成を低下させるのに使用される酸素添加された化学成分IPAAを生成することができる。
【0038】
本明細書で上記に述べたように、145℃の沸点を有するスチレンは、液体状態で重合を熱的に自己開始し(スチレン重合は気相では起こらない)、重合速度は80℃を超える温度で相当なものとなり得る。DVBの沸点は、スチレンの沸点よりも50℃高く、これもまた重合を熱的に自己開始することができ、従ってDVBが凝縮によって高濃度に蓄積し得る、スチレン製造プラント内の領域が存在する場合がある。上記のように、微量副生成物であるDVBは、例えば、蒸留カラム、タンク及び配管内に不溶性ポリマー堆積物を生成する強力な架橋剤であるため、スチレン製造プラント内の不溶性ポリマー形成は永続的な問題である。そのような残渣は、蒸留カラム内のポリマー形成をほぼ排除する現代の阻害剤を使用した場合でも継続して見出される。1つの説明は、可溶性ポリマー形成の量を非常に低いレベルに除去させる典型的な阻害剤の使用後であってもこのタイプの汚染が問題となり得るように、DVBが特定の非阻害領域内のプロセス条件下で濃縮することができる十分な蒸気圧を有して不溶性ポリマー形成を誘発することである。そのような領域は、不溶性ポリマー形成が開始する位置であり得る。
【0039】
2つの主な潜在的関心領域が発見されており、それは、IPAAがDVBと同様の沸点/蒸気圧を有し、そのような不溶性ポリマー形成を阻害する適切な化学活性を有するため、本開示によるIPAA又はIPACの導入(及び/又は存在)が特に有用な場合がある領域内である。第1の領域は、スチレン製造反応器からの気相粗スチレンが最初に液体に凝縮される地点である。この領域内で、より高温で沸騰するDVBは、スチレンが液化するよりも前に液化し得、従って熱い液体DVBに晒される位置を提供する。第2の潜在的な開始領域は、DVB蒸気が阻害剤/遅延剤の存在なしで凝縮し得る下流分離/精製装置の蒸留カラム(例えば、EBリサイクルカラム、スチレン仕上げカラム内、カラム還流及び/又はタールリサイクルストリーム中)を含む。一旦生成されると、そのような不溶性ポリマーは時間と共に付着及び成長し得、この付着は開始地点で起こり、及び/又はそこから下流のどこかで起こる。DVBは、ある部分蒸気圧に起因して、注入地点から上方のカラムにて集まり得る。蒸留カラムのフィード地点の上方の、有意な量の液体DVBの凝縮は、通常とは異なる流れの異常により増大し得る。使用されている現在の阻害剤の選択肢は、遥かに高い沸点を有する種であり、DVBが蓄積する箇所では蓄積しない場合がある。スチレン及びDVBを含む蒸留カラム内部の蒸気-液体平衡は、どのように有限量のDVBが、フィード地点の上方へとカラムを移動することができるかを説明するであろう
。従来の阻害剤及び遅延剤は、DVBよりも遥かに高い沸点を有し、蒸気移動によりDVBを追従しない。ラボ実験では、DVBが蒸気輸送を介して蒸留カラムを上方に輸送されることが観察されている。従って、DVB開始の位置は、付着及び成長と同じではない場合がある。不溶性ポリマーは、スチレンを吸収及び保持して、その成長を促進し得る。
【0040】
陰影で強調されている図3のプロセス領域(本明細書で以下にさらに記載される)は、不溶性ポリマー形成の関心領域である。凝縮ゾーン310は、大型の熱交換器が反応器流出物を液体状態に凝縮させる地点である。DVBはスチレンの前に凝縮し、下流に押し出されて堆積及び成長し得る不溶性の種ポリマーをおそらく形成し得る。EBリサイクルカラムD2及びD3を含むスチレン仕上げカラムは、フィード地点の上方でDVB蒸気から形成する、又はカラム全体の地点で形成する不溶性ポリマーの小粒子を有し得る。また、流れ及び分布が損なわれたいずれかの地点が、DVBが収集され、かつ不溶性ポリマー形成が開始する停滞領域を形成し得る。これらのカラムの底部は、各ターンアラウンドにおいて不溶性ポリマーの大きな堆積物を含むことが多い。底部の不溶性ポリマーは、それがそこで形成されたか又はそれ以外の箇所で形成された後にそこに移動したかにかかわらず成長し得る。本明細書に記載されるように、上述した開始領域への溶液は、DVBの沸点付近の沸点を有し、またポリマー形成を阻害するいくつかの化学的活性を有する、本明細書に記載されるIPAA種の添加である。同様の沸点は、潜在的な不溶性ポリマー除去添加剤、IPAAが、DVBを追跡し、同時に凝縮又は収集されることを可能にする。
【0041】
従って、態様において、本開示によるスチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法は、本明細書で上述したIPAA又はIPACを、そのような第1の領域内(1つ以上の添加剤入口ラインA1を介して)、そのような第2の領域内(1つ以上の添加剤入口ラインA2を介して)、及び/又は別の領域内(1つ以上の添加剤入口ラインA3を介して)の1つ以上のスチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入することを含む。
【0042】
例えば、図1に示すように、本開示によるIPAA又はIPACは、粗スチレン流出物を冷却装置110内で冷却する前に、添加剤入口ラインA1を介して粗スチレン流出物ライン105内に導入される場合があり、従って添加剤は、粗スチレン製造装置100のスチレン製造反応器からの気相粗スチレンが最初に液体に凝縮される、上記の第1の領域内に存在する。代替的に又は追加的に、本開示によるIPAA又はIPACは、図1の添加剤入口ラインA2で示されるように、冷却された粗スチレンの精製の直前又は精製中に導入される場合がある。この方法では、添加剤は、第2の記載した関心領域内-DVB蒸気が阻害剤/遅延剤の存在なしで凝縮し得る下流分離/精製装置120の蒸留カラム内に存在するであろう。
【0043】
代替的に又は追加的に、本開示によるIPAA又はIPACは、図1の添加剤入口ラインA3で示される、タールリサイクルストリームであるがそれに限定されない、それ以外の箇所に導入される場合がある。このような態様では、1つ以上の添加剤入口ラインA3は、タール/重質残渣をタール出口ライン125(及び/又は下記に述べる酸化残渣出口ライン136)から分離フィードライン113、及び/又は分離セクション内のいずれかの個々のカラムにリサイクルするように構成された1つ以上のタールリサイクルライン128内に、本開示による添加剤を導入するように構成される場合がある。
【0044】
第1の領域(即ち、気体の粗スチレンが、冷却装置110内で最初に液体に凝縮される領域)は、一般に、分離装置120の蒸留カラムよりも高温であるため、添加剤入口ラインA1を介して第1の領域内に導入されたPAA又はIPACは、態様において、添加剤入口ラインA2を介して第2の領域内に導入されたIPAA若しくはIPAC、及び/又は添加剤入口ラインA3を介して別の領域内に導入されたIPAA若しくはIPACとは
異種である場合がある。
粗スチレン製造装置における粗スチレンの製造
【0045】
態様において、スチレン及びDVBを含む粗スチレンは、粗スチレン製造装置100内でEB脱水素化によって製造される。そのようなEB脱水素化は、蒸気希釈、減圧操作、及び断熱反応器を用いて、当技術分野で公知のように従来通りに行われる場合がある。吸熱反応のために、再熱器が断熱反応器の間に配置される。脱水素化反応は低温が好ましい場合があるため、反応器は典型的には、流出物ライン上に圧縮機(例えば、真空圧縮機)を設置することによって低圧(即ち、真空条件)で操作される。現代のプラント設計は、スチレン製造のための直列の2つの反応器からなる場合がある。従来の3床反応器システムは直列に配置され、プラント容量を増加させるための一般的な後付け選択肢である。
【0046】
態様において、米国特許出願第62/436,653号に記載されているように、多段階脱水素化用途の第1の2つのEB脱水素化反応器は、並行して操作され、その組み合わされた生成物ストリームが共通の第3の反応器に供給される場合があり、それによって、所望の変換を維持しながら、反応器の全体的な圧力を低下させ、エネルギーの必要性を低下させ、及び/又は生成物選択性を増加させることができる。
【0047】
態様において、粗スチレンは、直列に接続した2つ又は3つの断熱反応器を含む反応システムを、多数の炉及び熱交換器と共に使用する従来のスチレン製造によって製造される。スチレンは、過熱水蒸気、即ち蒸気の存在下、反応器内の脱水素化触媒床上でEBを脱水素化することによって調製することができる。このプロセスでは、EBを高温蒸気中でその体積の5~12倍の気相中で混合し、触媒の固体床を通過させる。殆どのエチルベンゼン脱水素化触媒は、酸化第二鉄に基づくものであり、数パーセントの酸化カリウム又は炭酸カリウムによって促進される。
【0048】
脱水素化プロセスでは、エチルベンゼンの高い変換率と、ベンゼン及びトルエン等の副生成物の生成を阻害する、スチレンへの高い選択性が所望される。脱水素化性能に影響を与えるプロセスパラメーターは、触媒、反応温度、反応圧力、空間速度、炭化水素(例えば、エチルベンゼン)に対する蒸気の混合比等を含む。
【0049】
エチルベンゼンの脱水素反応は吸熱反応であるため、より高い反応温度が反応に有利である。しかしながら、反応温度が高すぎる場合、スチレンへの選択性が低下し、ベンゼン、トルエン、又は他の副生成物を生成する副反応が優勢となる。比較的大量の反応熱に起因して、反応器の出口温度は反応器の入り口温度よりも有意に低い。温度低下を補償するために、従来の脱水素化プロセスは、多数の反応器を使用し、反応器の間に段階間エネルギー付加(interstage energy addition)を提供する。
【0050】
多くの反応では、水は触媒毒として作用するが、水はエチルベンゼンの脱水素化において重要な役割を果たすことが周知である。蒸気は、カリウム及び鉄と反応し、活性部位を生成し、吸熱反応を促進するための潜熱を供給し、及び水気体シフト反応によって酸化鉄触媒上に形成する傾向がある堆積炭素(即ち、コークス)を除去する。触媒のカリウム促進剤は、このデコーキング反応を増強する。蒸気はまた、反応関与体及び生成物を希釈し、化学平衡の位置を生成物に向けてシフトさせる。蒸気を600℃を超える温度に維持するには相当なエネルギーが必要であるため、最少量のエネルギーを使用するプロセスが好ましい。過剰量の蒸気が高温で使用された場合、脱水素化触媒の重要な活性成分、即ちカリウムが溶解し、反応器出口を介して溶出する。このことは触媒の失活の主な理由として示されている。
【0051】
得られる生成物分子の数は反応関与体の数よりも多いため、エチルベンゼンの脱水素化
の変換レベルは、圧力が増加するにつれて低下する。即ち、より低い圧力(又はエチルベンゼン分圧)は、平衡を生成物の方に推進することによって、スチレンの製造に有利である。従って、圧縮機に大きすぎる容量負荷を付与することなく、EB脱水素化を可能な限り低い圧力下で操作することが望ましい場合がある。圧力が低下すると、触媒コーキングが低下するため安定性が増加し、主にベンゼン及びトルエンからなる副生成物を生成する副反応の比較的低い程度によって、スチレンへの選択性も改善する。結果として、変換及び選択性の両方を改善する、プロセスにおける圧力低下も非常に有利であると考えられる。脱水素化反応器は、変換及び選択性を向上させるために真空下で操作され得る。典型的な総変換率は、直列で操作される2つの反応器では約60~63%、直列で操作される3つの反応器では63~70%である。スチレンへの選択性は、典型的には92~97%モルである。
【0052】
スチレン及びエチルベンゼンは同様の沸点を有するため、それらの分離は、大きい蒸留塔と高い返却/還流比を必要とする。従って、所望の変換率を脱水素化反応器内で維持し、それにより生成物ストリームから分離する必要があるEBの量を低下させる場合がある。
【0053】
ここで本開示の別の態様によるスチレン製造システムを、スチレン製造システムIIのプロセス流れ図である図2を参照して記載する。スチレン製造システムIIは、EB脱水素化200、冷却、オフガス、及び/又は凝縮物除去装置210(「凝縮セクション210」とも称される)、スチレン分離/蒸留220、並びにタール酸化230を含む。本開示によるEB脱水素化システム200は、いずれかの数の脱水素化反応器を直列及び/又は並列で含む場合がある。態様において、EB脱水素化システム200は、上述したような3つの脱水素化反応器を含み、一方、他の態様では、脱水素化システム200は、下流脱水素化反応器の上流に直列して、及び下流脱水素化反応器と並行して、2つの脱水素化反応器を含む。図2の態様では、粗スチレン製造システムは、第2のEB脱水素化反応器DR2と直列の第1のEB脱水素化反応器DR1を含むEB脱水素化システム200を含む。EB脱水素化反応器DR1及びDR2は、脱水素化を介してEBをスチレンに変換するように構成されている。EB脱水素化中、上記の式1に概略的に示し、下記の式2にテキストで示すように、スチレンが生成される:
エチルベンゼン→スチレン+水素。 (2)
さらに、式3及び4によって、幾分かのベンゼン及びトルエンが生成される:
エチルベンゼン→ベンゼン+エチレン (3)
エチルベンゼン+水素→トルエン+メタン。 (4)
【0054】
EB反応関与体ライン201内のEBと、蒸気反応関与体ライン202内の蒸気が組み合わされ、反応関与体フィード入口ライン203を介して第1のEB脱水素化反応器DR1に導入される。第1のEB脱水素化反応器DR1内では、適切な脱水素化触媒の存在下、脱水素化条件下でEBが脱水素化されてスチレン及び水素を生成する。第1のEB脱水素化反応器DR1の生成物は、第1の脱水素化反応器出口ライン204を介して第2のEB脱水素化反応器DR2に導入される。第2のEB脱水素化反応器DR2内では、未反応EB(及び/又は第2のEB脱水素化反応器DR2に直接導入されたEB(図2の態様には示さず))は、脱水素化触媒の存在下、スチレンモノマーに変換される。
【0055】
脱水素化反応器DR1及びDR2は、当業者に知られるいずれかの脱水素化反応器であってもよい。上記のように、3つの反応器システムは、等しく実行可能な選択肢である。態様において、脱水素化反応器DR1及びDR2は、断熱反応器である。脱水素化反応器DR1及びDR2は、炭化水素フィード中の炭化水素を脱水素化して脱水素化生成物とするのに適切な脱水素化触媒をその中に含む。態様において、脱水素化触媒は、炭化水素フィード中のエチルベンゼンを脱水素化して、スチレンを含む脱水素化生成物を生成するよ
うに操作可能な触媒である。適切な脱水素化触媒及び条件は、当技術分野で公知であり、本明細書では詳細に記載しない。例えば、そのような条件は、約600℃の温度、出口における例えば6PSIA(41kPa)の減圧、及び大きい蒸気希釈(例えば、EBに対する蒸気の5~9のモル比)を含む場合がある。当業者は、所与の反応器条件に基づく適切な脱水素化触媒の選択が明らかであろう。態様において、脱水素化触媒は、酸化カリウム又は炭酸カリウムによって促進される酸化鉄(III)、希土類酸化物、及び他の無機性能促進剤を含む。態様において、脱水素化触媒は、平衡制約及び吸熱反応を克服するために、蒸気希釈、減圧及び高温での操作に適した不均一性触媒システムを含む。
【0056】
EB脱水素化装置200の粗スチレン流出物は、粗スチレン流出物ライン205を介して、冷却、オフガス、及び/又は凝縮物除去装置210に導入される。冷却、オフガス、及び/又は凝縮物除去装置210は、EB脱水素化装置200からの熱い脱水素化反応器粗スチレン流出物を冷却するように構成され、また、粗スチレン流出物からオフガス及び/又は凝縮物を除去するように構成される場合がある。例えば、図2の態様では、熱交換器206は、冷却剤入口ライン207を介して熱交換器206内に導入される冷却媒体による熱交換によって、粗スチレン流出物ライン205内の粗スチレン流出物の温度を低下させるように構成されている。冷却された粗スチレンは、冷却粗スチレン出口ライン209を介して熱交換機206から除去され、加熱された熱交換媒体は、熱交換出口ライン208を介してそこから除去される。態様において、セパレーターを使用して、気体及び又は凝縮物を、冷却粗スチレンから分離する場合がある。例えば、図2の態様では、セパレーター214は、冷却粗スチレン出口ライン209を介してそこに導入された冷却粗スチレンから、気体及び凝集物(例えば、凝縮水を含む)を分離するように構成されている。セパレーター214からの気体は、気体ラインGを介して気体圧縮機215に導入され、圧縮された液体は、液体ラインLを介してセパレーター214に戻る場合がある。オフガスは、オフガス出口ライン212を介して圧縮機215から除去される場合がある。凝縮物は、凝縮物出口ライン211を介してセパレーター214から除去される場合がある。本開示の添加剤は、1つ以上の添加剤入口ラインA1を介して凝縮セクション210、例えば熱交換器206に導入される場合がある
【0057】
そこからオフガス及び/又は凝縮物が除去されている場合がある冷却粗スチレンは、分離又は「脱水素化混合物」若しくは「DM」フィードライン213を介してスチレン分離/蒸留装置220(本明細書でスチレン精製装置220とも称される)に導入され得る。スチレン精製装置220は、当技術分野で公知のように、いずれかの適切な数の蒸留カラムを含むことができる。一般に、分離システムは、1つ以上の副生成物(例えば、ベンゼン及び/又はトルエン)、未反応反応関与体(例えば、EB)及び重質残渣(本明細書で「タール」とも称される)を分離して、精製されたスチレンモノマーストリームを提供するように操作可能である。態様において、スチレン分離システム220は、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部制背物から分離するように構成された1つ以上の蒸留カラム、ベンゼンを含む頂部生成物を、トルエン、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された1つ以上の蒸留カラム、トルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された1つ以上の蒸留カラム、EBを含む頂部生成物を、スチレンを含む底部生成物から分離するように構成された1つ以上の蒸留カラム、スチレンを含む頂部生成物を、タールを含む底部生成物から分離するように構成された1つ以上の蒸留カラム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0058】
図2の態様のスチレン分離/蒸留装置220は、第1の蒸留カラムD1、第2の蒸留カラムD2、第3の蒸留カラムD3、及び第4の蒸留カラムD4を含む4つの蒸留カラムを含む。第1の蒸留カラムD1は、分離又はDMフィードライン213を介してそこに導入された冷却粗スチレンを、ベンゼンを含む頂部生成物(これはベンゼン出口ライン221
Aを介してそこから除去される)及びトルエン、EB及びスチレンを含む底部生成物(これは第1の蒸留カラム底部生成物出口ライン223Aを介してそこから除去される)に分離するように構成されている。第2の蒸留カラムD2は、第1の蒸留カラム底部生成物出口ライン223A)を介してそこに導入された第1の蒸留カラム底部生成物を、トルエンを含む頂部生成物(これはトルエン出口ライン221Bを介してそこから除去される及びスチレン及びEBを含む底部生成物(これは第2の蒸留カラム底部出口ライン223Bを介してそこから除去されるに分離するように構成されている。本明細書に記すように、第1及び第2の蒸留カラムD1及びD2は、態様において、本明細書で以下に詳述する図3の態様に示すように、頭上のベンゼン及びトルエンの混合ストリームを除去するように操作可能な単一カラムに組み合わせることができる。第3の蒸留カラムD3は、第2の蒸留カラム底部生成物出口ライン223Bを介してそこに導入された第2の蒸留カラム底部生成物を、EBを含む頂部生成物(これはEB出口ライン222を介してそこから除去される及びスチレンを含む底部生成物(これは第3の蒸留カラム底部出口ライン224を介してそこから除去されるに分離するように構成されている。第4の蒸留カラムD4は、第3の蒸留カラム底部生成物出口ライン224を介してそこに導入された第3の蒸留底部生成物を、スチレンモノマーを含む頂部生成物(これは精製スチレン出口ライン227を介してそこから除去される及びタールを含む底部生成物(これは第4の蒸留カラム底部又は「タール」出口ライン225を介してそこから除去される)に分離するように構成されている。タール出口ライン225内のスチレン/タールの全部又は一部は、リサイクル及び/又はさらなる処理ライン228(図2に、第4の蒸留カラム底部生成物ライン225を第2の蒸留カラム底部生成物ライン228に流体接続するリサイクルラインとして示されるを介して、リサイクルされ及び/又はさらなる処理に送られ得、それによりスチレン/タールは、第3の蒸留カラムD3にリサイクルされ得る。任意的に、本明細書で以下に記されるように、追加のスチレン仕上げカラが使用されて、潜伏したモノマーをタールストリームから除去する場合がある。
【0059】
ここで本開示の別の態様によるスチレン製造システムを、スチレン製造システムIIIのプロセス流れ図である図3を参照して記載する。スチレン製造システムIIIは、x個(例えば、1つ以上)のEB脱水素化反応器DRxを含むEB脱水素化セクション300と、そこからオフガス312及びDMフィード313が得られる冷却、オフガス、及び/又は凝縮物除去装置310(又は「凝縮セクション」310)と、スチレン分離/蒸留320とを含む。図3の態様のスチレン分離/蒸留装置320は、第1の蒸留カラムD1、第2の蒸留カラムD2、及び第3の蒸留カラムD3を含む3つの蒸留カラムを含む。この態様では、第1の蒸留カラムD1は、分離又はDMフィードライン313を介してそこに導入された冷却粗スチレンを、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物(これはベンゼン出口ライン321を介してそこから除去される)とEB及びスチレンを含む底部生成物(これは第1の蒸留カラム底部生成物出口ライン323を介してそこから除去される)とに分離するように構成されている。第2の蒸留カラムD2は、第1の蒸留カラム底部生成物出口ライン323を介してそこに導入された第1の蒸留カラム底部生成物を、EBを含む頂部生成物(これはEB出口ライン322を介してそこから除去されると、スチレンを含む底部生成物(これは第3の蒸留カラム底部生成物出口ライン324を介してそこから除去されるとに分離するように構成されている。第3の蒸留カラムD3は、第2の蒸留カラム底部生成物出口ライン324を介してそこに導入された第2の蒸留底部生成物を、スチレンモノマーを含む頂部生成物(これは精製スチレン出口ライン327を介してそこから除去されると、タールを含む底部生成物(これは第4の蒸留カラム底部又は「タール」出口ライン325を介してそこから除去される)に分離するように構成されている。任意的に、以下に記載される追加のスチレン仕上げカラムを使用して、タール出口ライン325内のスチレン/タールストリームから、潜伏したモノマーを除去する場合がある。
【0060】
頂部生成物としてのEBを除去するように構成された蒸留カラム(例えば、図2の態様
の第3の蒸留カラムD3、及び図3の態様の第2の蒸留カラムD2)は、「EBリサイクルカラム」と称される場合がある。頂部生成物としてのスチレンモノマー(SM)を除去するように構成された蒸留カラム(例えば、図2の態様の第4の蒸留カラムD4、及び図3の態様の第3の蒸留カラムD3)は、「スチレン仕上げカラム」と称される場合がある。本開示のスチレン製造システムは、1つ以上のEBリサイクルカラム及び1つ以上のSM仕上げカラムを、例えば、直列及び/又は並列で含むことができる。
【0061】
本開示による態様において、IPAA又はIPACは、フィード、リサイクル、及び/若しくは還流物ストリーム中で、又はそれらと共に、EB脱水素化反応器の下流の蒸留カラムに導入される場合がある。例えば、添加剤入口ラインA2は、IPAA又はIPACを、DMフィードライン213/313内の冷却粗スチレンとは別に又はそれと組み合わせて、分離セクション120/220/320の第1の蒸留カラムD1に導入するように構成される場合がある。代替的に又は追加的に、本開示のIPAA又はIPACは、蒸留カラムのうちの1つの還流物ラインに導入されてもよく、例えば、態様において、本開示のIPAA又はIPACは、第1の蒸留カラムD1の頂部還流物R1A及び/若しくは底部還流物R1B、第2の蒸留カラムD2の頂部還流物R2A及び/若しくは底部還流物R2B、第3の蒸留カラムD3の頂部還流物R3A及び/若しくは底部還流物R3B、並びに/又は、第4の蒸留カラムD4の頂部還流物R4A及び/若しくは底部還流物R4Bに導入されてもよい。
【0062】
態様において、IPAA又はIPACは、EBリサイクルカラム及び/又はスチレン仕上げカラムに導入される。例として、図2及び図3の態様では、添加剤入口ラインA2’は、本開示によるIPAA又はIPACを、すぐ上流の蒸留カラムの底部生成物(例えば、図2の態様の第2の蒸留カラムD2の底部生成物出口ライン223B内の底部生成物、又は図3の態様の第1の蒸留カラムD1の底部生成物出口ライン323内の底部生成物)に導入することによって、EBリサイクルカラム(例えば、図2の態様の蒸留カラムD3及び図3の態様の蒸留カラムD2)(EBを含む頂部生成物を、スチレンを含む底部生成物から分離するように構成されている)に導入するように構成されている。図2又は図3の態様に示さないが、態様において、添加剤入口ラインA2’は、IPAA又はIPACをEBリサイクルカラムに直接導入することができる。さらなる例として、図2の態様に示すように、添加剤入口ラインA2”は、本開示によるIPAA又はIPACを、EBを含む頂部生成物をスチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたEBリサイクルカラム(例えば、図2の態様の第3の蒸留カラムD3)に導入する(例えば、図2の態様において頂部還流物ラインR3Aを介してそこに導入される頂部還流物中への導入により)。本開示を読んで当業者に明らかとなるように、IPAA及びIPACの注入地点は、分離システムのいずれの箇所にあってもよく、特定のプラント設計及び個々の製造プラントにおける汚染の特定の地点に応じて変動し得る。
【0063】
図1の態様を参照して本明細書で上記に述べたように、本開示によるスチレン製造システムは、そこに導入されたスチレンを含むタールストリーム(本明細書でスチレン/タールストリームとも称される)の少なくとも1つの成分を酸化し、従って1つ以上の本開示のIPAAを提供するように構成された酸化装置をさらに含む場合がある。図2を参照すると、酸化セクション230は、第4の蒸留カラム出口ライン225及びタール酸化フィードライン229を介してそこに導入されたタールの少なくとも1つの成分を酸化するように構成された酸化反応器231を含む。酸化装置231は、本開示による不溶性ポリマー除去での使用に適切なIPAAである、少なくとも1つの酸素添加(酸素化_)された化学成分を生成するように構成される場合があり、このIPAAは、液体流出物238中でそのままで使用され得、又はIPAAを含む液体流出物は、液体流出物ライン238を介してタール除去装置230から除去され得る。液体流出物ライン238は、タール酸化装置231を上流装置と流体接続する場合があり、それにより酸化装置230内で生成さ
れた酸素添加化学成分IPAAは、上流装置に単独で又はIPACの一部として導入され得る。例えば、液体流出物ライン238は、本明細書で上述した添加剤入口ラインA1、添加剤入口ラインA2’及び/又は添加剤入口ラインA2”と流体接続され得る。代替的に、図1の態様を参照して上記したように、酸化装置231は、所望により分離システム220内の別の位置に配置され、液体流出物ライン238内のIPAAを含む酸化生成物は、分離セクション220内のいずれかの適切な地点にリサイクルされる場合がある。
【0064】
蒸留カラムの可能な配置が図2及び図3の態様に示されているが、蒸留カラムの他の組み合わせ及び/又は順序を用いてスチレンモノマーを粗スチレンから分離することができ、そのような代替的配置は本開示の範囲に含まれることが認識されるであろう。例えば、図3のスチレン分離/蒸留セクションは、トルエン及びベンゼンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された第1の蒸留カラム、第1の蒸留カラムからのEB及びスチレンを含む底部生成物を、EBを含む頂部生成物(これはEB脱水素化セクションにリサイクルされる場合がある)とスチレン及びタールを含む底部生成物とに分離するように構成された第2の蒸留カラム、並びに第2の蒸留カラムからのスチレン及びタールを含む底部生成物を、スチレンモノマーを含む頂部生成物及びタールを含む底部生成物に分離するように構成された第3の蒸留カラムを含む。そのような態様では、本開示による添加剤は、蒸留カラムのいずれかの組み合わせへのフィード、リサイクル、及び/又は還流物、例えば、第1の蒸留カラムへの粗スチレンフィード、及び/又は第2の蒸留カラムへの還流物に添加される場合がある。他の態様では、多数の蒸留カラムが使用されて、所与の分離を達成する場合がある。非限定的な例として、態様において多数の蒸留カラムが使用されて、ベンゼン、トルエン及びEBが除去されている粗スチレンストリームを、精製されたスチレンモノマー生成物及びタールストリームに分離することを達成する(即ち、スチレンからタールを除去する)。さらに、様々な他の構成要素(例えば、ヒーター)を、当技術分野で公知のようにシステム内で使用する場合がある(例えば、流動性タールを維持するために)。他の配置も適切であり、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0065】
上記のように、添加剤入口ラインA1を介して第1の領域(即ち、スチレン製造反応器からの気相粗スチレンが最初に液体に凝縮される領域)内に導入される本開示によるIPAA又はIPACは、添加剤ラインA2を介して第2の領域(即ち、DVB蒸気が阻害剤/遅延剤の存在なしで凝縮され得る下流分離/精製装置の蒸留カラム内)に導入されるIPAA又はIPACとは異なる場合があり、該IPAA又はIPAC自体は、添加剤入口ラインA3を介してそれ以外の箇所(例えば、タールリサイクルストリーム中)に導入されるIPAA又はIPACと同じ又は異なる場合がある。これらの位置の条件は異なり得、従って、本明細書に開示されるIPAAの1つ又はその他を、特定の領域内でより有益なものとする。例えば、凝縮物ゾーンは、より高い温度、より低いスチレンモノマー濃度、及び蒸気を有し得る一方、蒸留カラム還流物領域は、より低い温度、より高いスチレンモノマー濃度、及びより高いDVB濃度を有し得る。
【0066】
態様において、ベンズアルデヒド及び/又はアセトフェノンを含み、本明細書に記載されるスチレンタールの酸化により生成されたIPAAを含むIPACは、別様に生成されたIPAAをさらに含む。例として、第1の領域(例えば、添加剤入口ラインA1を介して)に導入されたIPAAは、第2の領域(例えば、添加剤入口ラインA2、A2’、A2”を介して)に導入されたIPAAと比較して高い沸点の化学成分及び/又は異なる化学反応性(即ち、異なる官能基)を含む場合がある。同様に、第1の領域(例えば、添加剤入口ラインA1を介して)及び/又は第2の領域(例えば、添加剤入口ラインA2、A2’、A2”を介して)に導入されたIPAAは、第3の領域(例えば、添加剤入口ラインA3を介して)に導入されたIPAAと比較して低い沸点の化学成分及び/又は異なる化学反応性を含む場合がある。非限定的な例として、ベンゾエートは、第2の領域に導入
するためのIPACの添加剤又は添加剤成分として使用するのにより適切な場合があるが、蒸気の存在下での解離に起因して、第1の領域での使用にあまり適していない場合がある。
【0067】
態様において、IPAA又はIPACは、冷却、オフガス、及び/又は又は凝縮物除去装置110/210(例えば、添加剤ラインA1を介して)に注入されて、DVB液化及び開始に起因する不溶性ポリマーの開始を阻害又は防止する。そのようなIPAA又はIPACは、ニートで又はプロセスストリームの有機部分に対して1~1000ppm(0.0001~0.1重量%)の用量の溶液として、注入され得る。そのような態様では、IPACは、フェニルエタノール、テルピネオール、プロピレングリコール、カルバミン酸エチル、アセトフェノンビフェニル、ベンズアルデヒド、テトラリン、ジエタノールアミン、3-アミノ1-プロパノール、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む場合があるが、これらに限定されない。態様において、第1の領域に導入されたIPAAは、蒸気により乱されない、より高温での有効な機能、凝縮条件に対する適切な反応性、又はそれらの組み合わせを示す。
【0068】
態様において、IPAA又はIPACは、分離セクション又は装置120/220(例えば、添加剤入口ラインA2、A2’、A2”、又はそれ以外の箇所を介して)へのフィードに又はそのいずれかのカラムに注入されて、DVB液化及び開始に起因する不溶性ポリマー形成の開始を防止する。そのようなIPAA又はIPACは、ニートで又はプロセスストリームの有機部分に対して1~1000ppm(0.0001~0.1重量%)の用量の溶液として、注入され得る。そのような態様では、IPACは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、安息香酸メチル、ベンズアルデヒド、ジエチルアミノエタノール、アセトフェノン、DPGME(ジプロピレングリコールメチルエーテル)、テトラリン、アセト酢酸エチル、テルピネオール、ビフェニル、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の成分を含む場合があるが、これらに限定されない。態様において、第2の領域に導入される添加剤は、適切な沸点、高いスチレン/DVB濃度に十分な反応性、許容可能な物理的特性、又はそれらの組み合わせを提供する。
【0069】
態様において、添加剤入口ラインA3を介して第3の領域に導入されるIPAA又はIPACは、システムに戻るその注入地点に適した特性を含む。
【0070】
態様において、IPAAは、タール酸化ユニット130/230/330を介して適切な酸化可能成分を含むスチレンタール又は粗スチレンストリームから(部分的に又は全体的に)調製される。酸化されたストリーム(例えば、液体流出物ライン138内)は、1つ以上のIPAAを含む、タール又は粗ストリーム中の成分からの酸化生成物の混合物を、約10ppm~100,000ppm(0.001~10重量%)の濃度で含み得る。態様において、酸化ストリーム中のIPAAは、分離セクション120/220/320又はその中のいずれかの地点へのフィードストリーム113/213/313に注入され得る。そのような態様では、IPAAは、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、フェニルエタノール、又はそれらの組み合わせから選択される場合があるが、これらに限定されない。
【0071】
酸化触媒
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンへのスチレンの好気性酸化のための酸化触媒も本明細書に開示される。酸化触媒は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせ等の、分子酸素を活性化する1つ以上の金属イオンを含むことができる。態様において、本開示の好気性酸化触媒の存在下で酸化される場合があるスチレンプロセスストリーム中のポリマー及び重質分子の高い濃度に起因して、酸化触媒は、本明細書で以下に記載されるように、頑強な性質、より小さい表面積
及び/又は大きい細孔を有する触媒担体を含むことができる。
【0072】
本開示の酸化触媒は、多孔質担体と、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む酸素活性化金属を含む活性相とを含む。態様において、酸素活性化金属は、コバルト(Co)又はマンガン(Mn)を含む。態様において、酸化触媒は、酸化触媒の総重量、及びか焼後の活性相の適切な酸化物形態の重量に基づいて、約0.2~約4、約0.5~約3.5、又は約0.5~約2重量パーセント(重量%)の活性相を含む。態様において、活性相(か焼後)は、酸化コバルト(III)(Co)又は酸化マンガン(IV)(Mn/MnO)を含む。従って、態様において、酸化触媒は、本明細書に記載されるように、マクロ多孔質アルミナ又はシリカ/アルミナ担体上の酸化コバルト又は酸化マンガンを含む。
【0073】
態様において、担体は、ASTM D3663によって測定される20、15、若しくは10m/g以下、及び/又は0.001、0.005、若しくは0.01m/g以上のBrunauer Emmett及びTeller(BET)表面積を有する低表面積担体である。態様において、担体は、アルミナ、アルミナ-シリカ又はそれらの組み合わせを含む。態様において、担体は、約0~約25、約0~約10、約0~約1、約1~約10、約10~約25重量パーセント(重量%)、又は約33、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1重量%以下のシリカを含む。そのような化学的に不活性な担体の使用は、活性相の活性を維持するのを助けることができる。態様において、担体は、マクロ多孔質担体である。本明細書で使用されるように、細孔を含むマクロ多孔質担体は、約50、60、70、75、80、90、又は100ミクロン(μ)以上の平均細孔サイズを有する。態様において、マクロ多孔質担体は、約40、50、60、70、又は80ミクロン(μ)以下の平均細孔サイズを有する細孔を含む。態様において、触媒/触媒担体は、吸水重量測定(gravimetric water absorption)によって測定して、約0.1~0.3mL/g以上(例えば、約0.1、0.2、又は0.3mL/g以上の液体細孔容積を有する。担体は、例えば、球状、円筒状、タブレット状又はそれらの組み合わせであるがこれらに限定されないいずれかの形状を有することができる。態様において、担体は、約1~約5、約1~約4、約1~約3mmの範囲、約5、4.5、4、3、2、若しくは1mm以下、及び/又は約0.1、1、2、3、若しくは4mm以上の平均最大寸法(例えば、球状担体の平均直径)を有するが、これらに限定されない。態様において、担体は、低表面積のマクロ多孔質アルミナ又はシリカ-アルミナ球体を含む。
【0074】
本開示の酸化触媒の製造方法も本明細書に開示される。方法は、活性金属前駆体の水溶液を形成することであって、活性金属は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む、形成することと、担体を水溶液で含浸して含浸担体を形成することと、か焼して酸化触媒を形成することと、を含む。態様において、活性金属前駆体は、硝酸コバルト(III)六水和物、硝酸マンガン(II)、硝酸鉄(III)九水和物、七モリブデン酸アンモニウム四水和物、又はそれらの類似の水溶性塩、又はそれらの組み合わせを含む。含浸は、初期湿式含浸(incipient wetness impregnation)(IW、IWI、キャピラリー含浸、又は乾式含浸としても公知)を含むことができる。態様において、か焼は、空気中でか焼することを含む。か焼は、含浸担体を約200℃以下の温度で加熱すること、含浸担体を約200℃以上及び約300℃以下の温度で加熱すること、含浸担体を約300℃以上及び約400℃以下の温度で加熱すること、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0075】
態様において、酸化触媒の製造方法は、か焼の前に含浸担体を乾燥することをさらに含む。乾燥は、当業者に公知のいずれかの方法によって行うことができる。例えば、態様に
おいて、乾燥は、約125~約250℃、約100~約250℃、約150~約200℃の範囲、又は約250、200、175℃、若しくは150℃以下の温度で加熱することを含む。
【0076】
上記のように、態様において、担体は、アルミナ又はシリカ/アルミナを含み;担体は、ASTM D3663によって測定して、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1m/g以下、及び/又は約0.005、0.01、若しくは0.1m/g以上のBrunauer Emmett Teller(BET)表面積を有し;担体は、約50、60、70、75、80、90、若しくは100ミクロン(μ)以上、及び/又は約200、175、150、125、若しくは100ミクロン(μ)以下の平均細孔サイズを有する細孔を含むマクロ多孔質担体であり;及び/又は担体は、吸水重量測定によって測定して、約0.1、0.16、若しくは0.22mL/g以上、又は約0.1~約0.5、約0.1~約0.4、若しくは約0.1~約0.3mL/gの範囲の液体細孔容積を有する。
【0077】
酸化生成物の形成方法
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法も本明細書に開示され、該方法は、本開示の態様による酸化システムIVの概略図である図4を参照して記載される。方法は:本開示の酸化触媒を、酸化触媒460を含む酸化反応器431内で、スチレン及び空気と接触させることを含む。接触は、大気圧以上の圧力、及び1、3又は5atm未満の圧力、及び/又は約110~約130℃の範囲、又は約140℃、130℃、若しくは120℃以下の温度を含み得る穏やかな条件下で達成され得る。操作可能な最大圧力は、空気及びスチレン蒸気のより低い爆発限界(LEL)未満、及び/又はスチレン熱自己開始温度未満の最高温度として決定され得る。可燃性、及びスチレンで可能な重合の熱開始により、穏やかな条件が望ましい。最低温度での最大の生産性を確実にするために、本明細書に記載される酸化触媒を使用することができる。態様において、タール酸化は、不必要な重合を回避するために約90~約120℃の範囲の温度で達成される。これらの温度は、本開示の不均一酸化触媒上での空気注入を伴う液相プロセスで使用され得る。
【0078】
酸化反応器431は、回分式反応器又は連続反応器であり得る。図4に示すような態様において、酸化反応器431は連続反応器であり、方法は、空気426及びスチレン425を含むストリームを、酸化反応器431に導入することをさらに含む。空気は、態様において、分配器450を介して酸化反応器に導入され得る。図4の態様に示すような態様において、空気426及びスチレン425を含むストリームは、酸化反応器431内に同時に導入される。態様において、酸化反応器は、同時上向流反応器(例えば、同時上向流管状反応器)である。酸化反応器は、本明細書に記載される固体酸化触媒、空気気相、及びスチレン含有ストリーム液相を含む三相反応器であり得る。
【0079】
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法は、空気426を約40、30、又は20h-1以上の気体時空間速度(GHSV)で導入すること、スチレン425を含むストリームを約0.4、0.3、又は0.2h-1以下の液体時空間速度(LHSV)で導入すること、又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。態様において、ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法は、液体時空間速度に対する気体時空間速度の比(GHSV/LHSV)が、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、又は170以上となるような気体時空間速度(GHSV)及び液体時空間速度(LHSV)で、空気及びスチレンを含むストリームを導入することをさらに含む。
【0080】
本明細書の以下の実施例4に示すように、触媒床中の空気分布を最適化して、酸化反応
器内のIPAA製造を最大にすることができる。空気分布は重要であるため、分配器(例えば、図4の分配器450)を有するより大型の酸化反応器は、酸化反応器(例えば、図4の酸化反応器431)内の触媒床全体のより良好な空気適用率を提供するために、より効率的な場合がある。より良好な空気分布は、酸化反応器内のIPAAの製造を改善する場合がある。
【0081】
スチレンを含むストリームは、スチレン製造システム(例えば、スチレン製造システムI/II/III)のストリーム425を含むスチレンの一部であり得る。例えば、態様において、スチレン含有ストリーム425は、スチレン製造プラントのスチレン仕上げカラムからのスチレン/タールストリームの一部(例えば、図1のタールストリームライン125内のタールストリームからの酸化フィードライン129内の酸化フィードストリーム、図2のタールストリームライン225内のタールストリームからの酸化フィードライン229内の酸化フィードストリーム、図3のタールストリームライン325内のタールストリームからの酸化フィードライン329内の酸化フィードストリーム)であり得る。態様において、タールストリームは、スチレン製造システム又はプラントのスチレン分離セクション120/220/320の第1のスチレン仕上げカラム(例えば、図3の態様のスチレン仕上げ蒸留カラムD4、又は図3の態様のスチレン仕上げカラムD3)の底部生成物の一部である。代替的に又は追加的に、スチレン含有ストリーム425は、スチレンモノマーストリーム127/227/327、及び/又はスチレン製造システムI/II/III内の他の箇所の別のスチレン含有ストリーム中のスチレンを含む。例えば、態様において、スチレン含有ストリーム425は、第1のスチレン仕上げカラムの下流の第2のスチレン仕上げカラム(例えば、図2の態様のスチレン仕上げ蒸留カラムD4の下流の第2のスチレン仕上げカラム、又は図3の態様のスチレン仕上げカラムD3の下流の第2のスチレン仕上げカラム)からの底部生成物を含む。
【0082】
態様において、酸化反応器431に導入されるスチレンを含むストリームは、約25~約99.9、又は約80、85、90、若しくは98重量パーセント(重量%)以上のスチレンを含む。酸化反応器431に導入されるスチレンを含むストリーム(例えば、スチレン/タールストリーム)は、1つ以上の重合阻害剤、スチレンよりも重質の成分(例えば、ポリマー、又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。態様において、酸化プロセスは、そのようなスチレンプロセスストリーム成分又は副生成物の存在下で操作可能であり、スチレンタールストリーム中に存在する重合遅延剤(例えば、DNBP遅延剤)を損なわない場合があり、従って、これは酸化反応器内で生成されたIPAAと共に分離セクションI/II/IIIにリサイクルされ得る。
【0083】
酸化生成物を含む液体流出物は、液体流出物ライン438を介して除去され得る。次いで、流出物ライン438は分離セクション120に導入されてIPAA/IPACを供給する場合がある。流出物ライン438(138)は、酸化反応器431(又は酸化セクション130又は431)からの液体流出物の貯蔵のための貯蔵容器に流体接続される場合がある。態様において、液体流出物ライン438内の液体流出物は、約1、1.5、又は2重量%以上のIPAAを含み得る。
【0084】
タール酸化セクション
本明細書で上記したように、スチレン製造システム(例えば、図1のスチレン製造システムI、図2のスチレン製造システムII、及び図3のスチレン製造システムIII)は、タール酸化セクション(例えば、図1のタール酸化セクション130、図2のタール酸化セクション230、及び図3のタール酸化セクション330)を含むことができる。本開示のタール酸化セクション130/230/330は、本明細書で上記に詳述した本開示の酸化触媒を含むことができる。本開示のタール酸化セクション130/230/330は、本明細書で上記に詳述した本開示の酸化反応器(例えば、図2の酸化反応器231
、これは図4を参照して記載した酸化反応器431である場合がある)を含むことができる。タール酸化セクション130/230/330は、図4を参照して本明細書で上述した1つ以上のIPAAを含む酸化生成物を形成するように操作可能であり得る。図2及び図3に示すように、態様において、タールストリーム225/325の一部229/329は、酸化セクション230/330の酸化反応器231/431に導入され、ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物を含む液体流出物238/338がそこから除去され得る。過剰な空気は過剰空気ライン226’326’を介して除去され得る。態様において、液体流出物238/338の全部又は一部はIPACとして直接使用され得る。
【0085】
態様において、スチレンプラントプロセスストリームからIPAAを生成するように使用される酸化反応器は、そこからIPAAが生成されるプロセスストリームのいくつかを除去することによってオフライン操作として操作され得、酸化を行い、次いでそれをスチレン製造プロセスに戻す。従来のEB脱水素化プロセスと同様、反応器及び蒸留カラムは減圧で操作され、酸化反応器は、最低でも、過剰な空気を有する周囲圧力を使用し、そのような態様では、酸化は、インラインユニット操作には適切ではない。態様において、IPAAの製造のために本開示のスチレン製造プロセスで使用される酸化反応器は、比較的小さく(例えば、分離セクション120/220/320の蒸留カラムのサイズと比較して)、これは、DVB濃度が低いため、等価又はほぼ等価な量のIPAAの製造が大きい酸化ユニットを必要としないためである。
【0086】
態様において、図4を参照して記載したようなスチレン酸化反応器は、スチレン製造システムI/II/III内に配置されて、スチレン製造システム内の不溶性ポリマー除去を提供するためにスチレン精製セクション120/220/320(の、例えば、前部)にリサイクルされるために、選択されたプラントストリームからIPAAベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物を生成することができる。
【0087】
スチレン製造プロセスにおける汚染を低下させる方法
本開示によるスチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法は:粗スチレンストリーム、スチレン含むタールストリーム、又はそれらの組み合わせの酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を生成することであって、酸化は本開示の酸化触媒により達成される、生成することと;酸化生成物の少なくとも一部を含む添加剤ストリームをスチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入し、それによりジビニルベンゼン(DVB)架橋が阻害されることと、を含み得る。本明細書の以下の実施例1に詳述するように、ベンズアルデヒドはDVBを消費するように思われ、従ってポリマー形成を阻害するだけではなく、DVB濃度の大幅な低下を示す。従って、態様において、ベンズアルデヒド(benzaldehye)は、優れたIPAAである場合がある。本開示によれば、IPAAベンズアルデヒド及びアセトフェノンは、スチレン含有プロセスストリームから好気性酸化により調製され、プロセスに戻されて不溶性ポリマー汚染を抑制することができる。態様において、本明細書で上述した好気性酸化プロセスは、スチレンの反応性の点で穏やかであるが、IPAAの所望の総量を生成するのに十分な生産力を有する。酸化セクション130/230/330のIPAA製造は、(例えば、IPAAを含むIPAA又はIPAcが導入される)添加剤で処理されるスチレンプロセスストリーム中のDVB濃度と合致することが望ましい。
【0088】
態様において、スチレンを含むタールストリームは、スチレン仕上げカラムからの底部ストリームのスリップストリームであり、該スチレン仕上げカラムは、エチルベンゼン(EB)リサイクルカラムからの底部ストリームを、タールストリームを含む底部ストリーム及びスチレンを含む頭上ストリームに分離するように構成されている。スリップストリ
ームは、態様において、約1、5、10、15、又は20重量パーセント(重量%)以下の、スチレン仕上げカラムからの底部ストリームを含むことができる。即ち、態様において、タールライン125内のタールストリームに対する酸化フィードライン129内の酸化フィードストリームの重量百分率、タールライン225内のタールストリームに対する酸化フィードライン229内の酸化フィードストリームの重量百分率、又はタールライン325内のタールストリームに対する酸化フィードライン329内の酸化フィードストリームの重量百分率は、約1、5、10、15、又は20重量パーセント(重量%)以下であり得る。
【0089】
態様において、添加剤ストリームは、ベンズアルデヒドの濃度、アセトフェノンの濃度、又はベンズアルデヒドの濃度とアセトフェノンの濃度との合計が、ストリームの約0.001、0.01又は0.1以上又は約0.001~約0.1、約0.01~約0.1、又は約0.001~約0.2重量パーセントの範囲であるように、スチレン及びDVBを含むストリームに導入される。本明細書で上述したように、添加剤ストリームが導入されるスチレン及びDVBを含むストリームは、EB製造(例えば、脱水素化)反応器の下流の蒸留カラムへのフィード、リサイクル、又は還流ストリームであり得る。例えば、態様において、蒸留カラムは、EBを含む頂部生成物を、スチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたEBリサイクル蒸留カラム、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム、又はスチレンを含む頂部生成物を、タール及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたスチレン仕上げ蒸留カラムを含む。態様において、汚染の低下は、添加剤ストリームが存在しない同じプロセスと比較して、不溶性ポリスチレン、可溶性ポリスチレン、又は両方の形成の少なくとも1、10、50、又は100%の低下を含む。添加剤ストリームは、195℃、200℃、250℃、又は300℃を超える沸点を有する重合阻害剤をさらに含むことができる。本明細書で上述したように、そのような重合阻害剤は、態様において、ジニトロフェノール、TMPO化合物(例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)、オキシム、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0090】
酸化生成物は、本明細書に開示される酸化生成物の形成方法によって形成され得る。態様において、本開示の酸化触媒は、プラント内の典型的なDVB濃度に十分な量の1つ以上のIPAAのオンサイト製造に十分な製造速度で、IPAA(例えば、ベンズアルデヒド及びアセトフェノン)を製造するためにスチレンプロセスストリーム(例えば、スチレン仕上げカラム底部生成物ストリームの留分)の好気性酸化に使用される。態様において、十分な量は、形成されたIPAAがその後不溶性ポリマー除去のために導入されるプロセスストリーム中のDVBの量(例えば、重量%)と実質的に等しいか、又はその約1、2、3、4、若しくは5倍の(及び/又は1、2、3、4、若しくは5重量%多い)IPAAの量(例えば、重量%)を含む。
【0091】
ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含むIPAAを含む酸化生成物の製造に使用されるスチレンプロセスストリームの特定は、スチレンプロセスストリームのスチレン濃度、抗重合濃度及び粘度に基づいてもよい。例えば、態様において、酸化フィードストリーム(129/229/329)の供給源は、第1のスチレン分離又は仕上げカラム、例えば図2の態様の第3の蒸留カラムD3及び図3の態様の第2の蒸留D2からの底部ストリームである。このストリームは、高いスチレン濃度(例えば、約80、90、95、又は98重量%以上)及び高い抗重合濃度(例えば、約200、800、1400又は2000ppm重量/重量以上)を有し得、全体の粘度は低く;85~100、又は85~110℃の範囲の温度を有し得る。抗重合添加剤の存在は、スチレンの熱開始が有意な速度で起こる80℃超で酸化を行うために重要であり得る。態様において、ストリームの残り(例えば、5、10、又は20重量%の非スチレン部分)は、重質物、ポリマー及び/又は
抗重合添加剤を含む。
【0092】
エチルベンゼン(EB)の脱水素化によるスチレン製造のためのシステム(例えば、図1/2/3のスチレン製造システムI/II/III)も本明細書に開示される。システムは、EB及び蒸気を脱水素化条件下で脱水素化触媒と接触させて、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含む粗スチレン流出物105/205/305を提供するように操作可能な1つ以上の脱水素化反応器と;粗スチレン流出物の温度を低下させるように構成された熱交換装置(図2、207)と;オフガス112/212/312及び/又は凝縮物111/211を冷却粗スチレン流出物から分離し、従って脱水素化混合物113/213/313を提供するように構成された分離装置(図2、214)と;脱水素化混合物を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、又はそれらの組み合わせを含む1つ以上のストリーム、タール及びスチレンを含むタールストリーム125/225/325、並びにスチレン127/227/327を含むストリームに分離するように操作可能な蒸留セクション120/220/320と;タールストリームの一部の酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を含む酸化生成物ストリーム138/238/338を生成するように構成された酸化ユニット130/230/330と(ここで酸化ユニット130/230/330は、本開示の酸化触媒を含む);それによって酸化生成物ストリームの少なくとも一部が、粗スチレン流出物、冷却粗スチレン流出物、脱水素化混合物、蒸留セクション120/220/320の蒸留カラムへのフィード、リサイクル、若しくは還流物、又はそれらの組み合わせと組み合わされ得る1つ以上のリサイクルラインとを含む。リサイクルラインは、例えば、本明細書で上述したように、酸化反応器(例えば、液体流出物ライン138/238/338)からの液体流出物ラインを、添加剤入口ライン(例えば、A1、A2’、A2”)と接続することができる。
【0093】
本明細書に開示される添加剤、組成物、システム、及び方法の特徴/潜在的な利点
いくつかの可能な不溶性ポリマー除去添加剤が本明細書で特定され、スチレン製造プラントにおける不溶性ポリマー汚染は共通の問題であるため、このようなIPAAは、スチレン製造プラントの汚染を低下させるために使用することができる。本明細書に記載されるように、このようなIPAAは、DVBの沸点付近の沸点を有し、またその活性官能基によって不溶性ポリマー形成を抑制することができる。粗スチレンはDVB、存在する場合にスチレン重合中に不溶性ポリマーを形成する強力な架橋剤を含むため、本明細書に開示されるIPAAを使用して、スチレンの製造中(例えば、粗スチレンストリームからのスチレンモノマーの精製中)に形成される不溶性ポリマー(即ち、ポリスチレン)の量を最小限にすることができる。IPAAは、酸素、水素、窒素及び/又は同様の活性部位を有する反応性有機種を含む1つ以上の活性官能基を含む。そのような有機種は、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、及び不安的な水素を含むがこれらに限定されない。不溶性ポリマー汚染は、生産を低下させ、運転の長さを短縮し、及びターンアラウンドを延長し得る。従って、本開示のIPAA、IPAC、組成物、システム及び方法は、態様において、増大した生産、より長い運転の長さ、及び/又は短縮されたターンアラウンド時間を提供する場合がある。
【0094】
少なくとも2つのそのようなIPAAは、好気性酸化によってスチレンから調製することができる。スチレン精製セクションからのタールストリーム(及び/又はスチレン生成物127/227/327などであるが、これに限定されない別のストリーム)の一部を使用してIPAAを生成することは、IPAAのオンサイトの製造を可能にし、従って汚染低下のコストを低下させる。例えば、態様において、本明細書に記載される酸化触媒の存在下、本明細書に記載される穏やかな条件下でのタールストリームの好気性酸化による、スチレン精製セクションからのタールストリームの一部からのアセトフェノン及びベンズアルデヒドの製造は、汚染の低下に使用されるIPAAのオンサイト製造を可能にする
。態様において、IPAAは、従って、スチレン製造システム又はプラント内のプロセスストリームから調製され、プロセスに注入し戻されて、不溶性ポリマー汚染に対する保護を提供することができる。
【0095】
不溶性ポリマー汚染のコストは、生産損失及び維持コストの両方を負担し得るため高くなり得る。本明細書に開示されるIPAA、IPAC、システム、及び方法は、そのようなコストを低下させることができる。
【実施例
【0096】
実施例1:不溶性ポリマー除去のための添加剤性能
不溶性ポリマー形成を制御するための様々な添加剤の能力を試験した。性能評価は、6ポート試験システムを用いて液相で行った。25(D)×150(H)mmの試験管を保持することができる6つのポートを有する共通の加熱ブロックを使用し、それによって6つの別々の溶液の同時操作を可能にした。各管を隔壁キャップで密封し、共通の窒素ヘッダーを使用して各管をパージした。窒素パージを、隔壁キャップを通って延びる1/16”管を使用して試験管に導入した。シリンジ針を用いてパージガスを排出した。
【0097】
約60重量パーセント(重量%)のスチレンを含む試験溶液を、ラボ断熱パイロットユニットから粗スチレンサンプルとして収集した。粗スチレンにDVBをスパイクして、0.1%(重量)濃度を生成した。添加剤は、同じ濃度、0.1%(重量)で使用した。0.1%(重量)DVBを含む粗スチレンを参照サンプルとして使用した。評価のために、10gの溶液を試験管に入れ、室温で窒素でパージした。加熱ブロックを120℃に設定し、試験溶液を導入する前に安定化させた。各溶液をパージした後、各試験管を加熱ブロックポートに移動した。15分後及び30分後にサンプルを採取した。低レベルのDVBを測定し、ベンゼン、トルエン、EB、スチレン、DVB、エチルビニルベンゼン及びフェニルアセチレンを含む通常の粗スチレン種を定量的に分析することができる方法を使用して、各サンプルをガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。試験溶液はまた、モノマーを蒸発させるように操作可能な高強度赤外線ランプを有する電子天秤を含む固体分析器を使用して、ポリマー及び重質物について重量測定的に試験した。DVB濃度の変化(その低下は、不溶性ポリマー形成と相関し得る)及び可溶性ポリマー形成を記録した。
【0098】
この実施例で試験した添加剤を表1に列挙する。試験される種は、スチレンの沸点よりも高く、DVBの沸点に近い沸点を有するそれらの沸点に基づいて選択された。試験した添加剤の沸点も表1に示す;スチレン及びDVB並びにそれらの沸点を参照のために含める。
【0099】
【表1】
【0100】
DVB1000ppmを投与した粗スチレン中、120℃で30分後の各添加物1000ppmの結果を図3に示す。これは%DVB変化の棒グラフであり、実施例1の添加物のパーセントポリマー成長である(図3では、Bzaldはベンズアルデヒドであり、PhEは1-フェニルエタノールであり、BZDMAはベンズアルデヒドジメチルアセタールであり、DPCは炭酸ジフェニルであり、ETラクテートは乳酸エチルであり、Etacetoアセテートはアセト酢酸エチルであり、AcPhenはアセトフェノンであり、dpgmeはジプロピレングリコールメチルエーテルであり、DiET-アミノ-EtOHはジエチルアミノエタノールであり、DiPGはジプロピレングリコールであり、PGはプロピレングリコールであり、N,N-ジET PDAはN,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミンである)。
【0101】
試験した添加剤は、N,N-ジエチルフェニレンジアミン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジプロピレングリコール、ジエチルアミノ-エタノール、ビフェニル、シクロヘキサノール、及びアセト酢酸エチルを含み;試験した活性種の官能基は、アミン、アミノ-エチルアルコール、不安定なC-C結合、エステル、及びカルバメートを含んでいた。アミン、グリコール、ベンゾエート及びカルバメートは、特に良好な結果をもたらした。
【0102】
評価した殆どの添加剤は、%PS形成と%DVB変化の相関を示し、スチレン重合の開始及び/又は伝播を阻害することによって機能することを示唆した。このことは、DVBがフリーラジカル重合によって消費されるため、予想される場合がある;一旦重合が起こると、DVBはポリマーに組み込まれる。しかしながら、以下に述べるように、この相関にはいくつかの例外が存在した。試験における全ての添加剤の結果を図4にまとめ、これは、実施例1の添加剤についてのパーセントDVB変化の関数としてのパーセント可溶性ポリスチレン(PS)ポリマー形成のプロットである。
【0103】
理論によって限定されることを望むものではないが、ベンズアルデヒドはDVBと反応して、試験の過程の間にDVBの高い消費を示すと考えられる。ベンズアルデヒドはまた、ポリマーの形成を阻害した。2種のベンゾエートも他種の相関とは一致しなかった。安息香酸メチル及び安息香酸エチルは共に%DVBのわずかな変化を示した。安息香酸エチルはポリマー形成を阻害する能力を示さなかったが、安息香酸メチルは中程度の阻害性能を示した。再び、理論によって限定されることを望むものではないが、これはポリマーのラジカル重合及び架橋へのその組み込みを妨げるDVBとの何らかの他の相互作用を示唆し、また、ベンゾエート誘導体が標準的な重合防止剤と混合されて、その反応を選択的に抑制することによってDVB架橋を防止する場合があることを示唆する。
【0104】
実施例2:粗スチレン凝縮物領域汚染研究
本明細書で上記したように、不溶性ポリマーの汚染/形成の潜在的な問題に関するスチレン製造プラントの第1の主要な領域は、気相反応器流出物の凝縮物が冷却及び液化される熱交換器領域である。この凝縮物領域はスチレン重合を開始するのに十分な温度を有し、DVBの濃度は、不溶性ポリマーを形成するのに十分であり得る。DVBは195℃のより高い沸点を有し、凝縮中にスチレンの前に液化し;DVBはまた熱的に重合を開始することができる。従って、試験装置は、気相粗スチレン及び蒸気が液体に凝縮される条件を模倣するように設計された。
【0105】
約55~65重量%のスチレン、35~45重量%のEB、2重量%のベンゼン/トルエン、及びそこに追加の500ppmのDVBが添加された微量副生成物を含むEB脱水素化ラボ反応器流出物から、粗スチレンフィードを調製した。図5は、実施例2の粗スチレン凝縮物試験装置300の概略図である。ISCOシリンジポンプ301及び302を使用して、それぞれ、粗スチレン及び蒸気生成のための水をシステムに添加した。主容器309は、130℃に設定された独立したコントローラ312から電力を供給されるヒートテープ311に包まれた、1/2”内径(ID)×15”長さの寸法を有する水平管310から構成された。水は1/8”管304を介して、135℃に設定された独立したコントローラ307によって制御される予熱気化ゾーン306に供給されて、水平管310の入口308に接続されたヒートテープ305を加熱した。粗スチレンを、水平管310の入口308で蒸気と共に1/8”管303を介して添加した。流出物313は水冷凝縮器(図示せず)を通過し、サンプル収集又は流出物ボトル314に入った。窒素は、90
PSI窒素ユーティリティライン及び調整器315及び管316を介して導入されて、実験の間に水平管310をパージした。実験の前に窒素を用いて酸素を除去し、実験の間に装置をクリアした。
【0106】
個々の実験は、粗スチレンに選択された添加剤を添加することによって行われた。列挙された用量は、蒸気/水を除いて、炭化水素部分のみに基づく。ヒートテープ305及び311を最初に始動させ、それらの設定点(即ち、それぞれ135℃及び130℃)に到達させた。水ポンプを0.25mL/分で始動させ、システムが蒸気のみで安定するまで運転した。次いで、粗スチレンポンプを0.5mL/分で始動させた。主容器309の管310は、110℃~140℃の範囲の温度を維持した。殆どの実験は、110℃又は1
30℃で行われた。130℃実験からのデータを使用して、許容可能な添加剤を選択した。4時間後、複合流出物サンプルを収集し、粗スチレンフィードサンプルと共にGCによって分析した。フィードから流出物へのDVBの濃度の変化(GCによる重量パーセント損失)が報告された;DVBの損失が大きいほど、より多くの不溶性ポリマーが形成されると推定された。不溶性ポリマーの形成は、実験を行った後に水平管を検査することによって確認した。
【0107】
適切な物理的特性を有するいくつかの候補を、上述した粗スチレン凝縮物試験装置を介して評価した。得られた凝縮物添加剤試験データを、下記の表2及び図6に示し、図6は、実施例2の凝縮物試験結果についてのパーセントDVB変化の棒グラフである。
【0108】
添加剤を200ppmの用量で試験した。PhE(フェニルエタノール)、テルピネオール及びPG(プロピレングリコール)は高い性能を示したが、カルバミン酸エチル、アセトフェノン、ビフェニル及びベンズアルデヒドは中間の性能を生じた。テトラリンは、この第1の試験領域(A1)において低い活性を有し、主に比較のために含まれる。
【0109】
【表2】
【0110】
この実施例は、高温の気体反応器流出物が液体に変換される時点でのスチレン製造プラントの凝縮物領域についての添加剤の性能を研究した。この(「第1の領域」)位置では、蒸気が存在し、急峻な温度勾配が見いだされる。この領域に見られる汚染の疑わしい主な原因は、スチレン/EBの前に高温の液体DVBを凝縮させ、それにより不溶性ポリマー形成を開始させ得るDVBのより高い沸点である。市販の抑制剤は非常に高い沸点を有し、DVBの前に凝縮するが、ここで遭遇するようなより高い温度が存在する場合、多く
は熱不安定性を有する場合がある。また、このような市販の製品は、この用途で使用するのに高価であり得る。本開示の添加剤のような、化学活性及びDVBの沸点付近の沸点を有する容易に入手可能な安価な化合物は、この問題を解決するための魅力的な選択肢を提供する。
【0111】
実施例3:穏やかな条件でスチレンプラントストリームを用いるスチレンのベンズアルデヒド及びアセトフェノンへの酸化触媒
スチレンプラントプロセスストリームから比較的穏やかな条件で目標レベル(例えば、1~2重量%)までベンズアルデヒド及びアセトフェノンの生成を促進する触媒として、強固な担体上の酸素活性化種を研究した。この実施例3では、公知の酸素活性化金属及び2つのアルミナ担体を調べた。
【0112】
酸化触媒を標準的な初期湿式法(incipient wetness method)により調製した。Alfa Aesarから購入した2つの担体:中間表面積アルミナ押出物(Al1)及びマクロ多孔質低表面積シリカ-アルミナ球体(Al4)を使用した。Al1担体(Alfa-43857)は、低シリカ含有量、0.44~0.54mL/gの液体細孔容積、及び80~120m/gの範囲の表面積を有する1/8”(3.1mm)アルミナ押出物触媒担体である。Al4担体(Alfa-43863)は、13%シリカ、75ミクロンの平均細孔径、約0.1m/g以下の表面積、及び0.21mL/gの液体細孔容積を含む3/16”(4.5mm)アルミナ球体である。
【0113】
この実施例3に選択された活性相(Co、Mn、Fe及びMo)は、酸素活性化種である。使用した出発物質は、硝酸コバルト(III)六水和物、硝酸マンガン(II)-50重量%水溶液、硝酸鉄(III)九水和物、及び七モリブデン酸アンモニウム四水和物であった。水溶液から出発物質を添加した後、触媒を150℃で乾燥し、次いで空気中で1時間200、300及び400℃で連続してか焼した。量を表3に示す。か焼後、コバルト及びマンガン触媒は黒/灰色に着色し、鉄触媒は褐色であり、モリブデン触媒は薄いスレートグレーであった。1.8”(3.1mm)のアルミナ球体上に0.3重量%のPdを含む別の市販の触媒も評価した。この市販の触媒は、水素化反応器から得られ、使用前に再生された。
【0114】
【表3】
【0115】
触媒結果は、バッチ試験を用いて行った。ここで図8を参照して記載するように、これ
は、スチレンプラントストリームからのIPAAベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の製造のために、この実施例3の酸化触媒の評価に使用されるバッチ酸化システム530の概略図である。250mLの三口丸底フラスコ531を、加熱マントル532及びTC 533と共に使用した。TC 533は、コントローラ(図8には図示せず)に接続された。フラスコ531上の24/40ジョイントを隔壁でキャップした。空気526を、1/8”(3.1mm)管527を介してフラスコの底部に導入し、ロタメーターによって制御した。全ての試験は、95.5%スチレンモノマー(SM)を含む第1のスチレン仕上げカラム底部のサンプルであるスチレン製造システムからの同じバッチの粗スチレンを使用して行った。スチレンフィード(例えば、129、229、329)を、受け取ったままで使用した。粗スチレン(125mL)をフラスコに添加し、続いて10グラムの触媒を添加した。水冷凝縮器534をフラスコ531の頂部に配置した。空気流を設定し、加熱を開始し;時間ゼロは、液体温度が設定値120℃に達したとき(いくつかの実験が110℃で行われた)としてカウントした。各実験の間、60分及び180分の時点でサンプルを採取した。標準的な完全分析スチレン方法を用いて、サンプルをGCによって分析した。ベンズアルデヒド及びアセトフェノンのパーセント(%B&A)を合計し、「%B&A」として報告した。
【0116】
この実施例3の異なる触媒の比較のためのデータセットを表4に示す。試験は、30mL/分の空気を添加しながら、120℃で10gの触媒を用いて行った。データは180分のサンプルからのものであり、各%B&Aを示す。
【0117】
【表4】
【0118】
この実施例3では、温度及び空気流量の影響も調べた。Co3-Al4触媒を異なる条件で評価した。温度を110℃に下げ、180分での%B&Aは0.8%に低下した。120℃より高い温度では、相当なポリマー形成が観察され、このような高温でのデータの信頼性を低下させた。Co3-Al4の120℃での空気流を増加させ(50mL/分)、%B&Aは1.6%B&Aに増加した。従って、120℃以上の温度及びより高い空気流量は、生成される%B&Aに有利であるように思われる。
【0119】
より高い生成速度では、ほぼ等量のベンズアルデヒド及びアセトフェノンが生成された。より低い生成速度では、アセトフェノンの2~3倍のベンズアルデヒドが形成された。図9は、この実施例3の酸化触媒についての%B&Aのプロットである。図9は、試験さ
れた酸化触媒の性能ランキングを示し、図9の左側へのより良好な性能の増加を示す。
【0120】
Co-Al4は最高の性能を示し、Mn-Al4は2番目に良好な性能を示した。不溶性ポリマー除去に必要なB&Aの用量が1~2重量%のB&Aの目標生成によって提供されると推定される場合、この実施例3のCo及びMn酸化触媒の両方は、この総IPAA量のベンズアルデヒド及びアセトフェノンを生成する能力を有する。
【0121】
実施例4:スチレンタールの不溶性ポリマー除去添加剤への好気性酸化のための反応器性能
本明細書に記されるように、スチレンの酸化によって調製することができる不溶性ポリマー除去添加剤(IPAA)として特定される2つの種は、ベンズアルデヒド及びアセトフェノン(B&A)である。それらの化合物をIPAAとして使用することにより、スチレンプロセスストリームから直接IPAAを調製することが可能となり得る。この実施例4は、スチレン製造システムにおいて実施するのに十分な量での、B&Aの(例えば、オンサイト)製造のための穏やかな好気性酸化のための供給原料としてスチレンタールストリームを使用するプロセスの酸化触媒性能を記載する。
【0122】
ベンズアルデヒド及びアセトフェノン(B&A)を生成するためのスチレンタールストリームの酸化のための触媒性能を研究するために、連続流反応器システムを構築した。この実施例4のスチレンタールは、第1のスチレン仕上げカラム(図2の態様の第4のカラムD4又は図3の態様の第3の蒸留カラムD3など)からの底部ストリームから構成された。スチレンタールは、約92~96%のスチレンを含んでいた。実際のプラントサンプルを使用し、従ってスチレンに加えて重合阻害剤、ポリマー、及び他の重質種を含んでいた。この実施例4で試験した酸化触媒(本明細書の上記の実施例3に記載された)は、コバルト又はマンガンから構成された。
【0123】
反応は、スチレンタールフィード(例えば、図4のスチレン含有ストリームライン425内のスチレン含有ストリーム)及び空気(例えば、図4の空気入口ライン426内の空気ストリーム)の両方について上向流で行った。酸化反応器(例えば、図4の酸化反応器431)は、酸化反応器の底部にスチレンタール(例えば、スチレン含有ストリームライン425内)及び空気(空気入口ライン426内)の同時導入を可能にするために、穴あき貫通T継手(bored through tee-fitting)を有する150mLステンレス鋼容器(5”L×2” D)から調製された反応器容器を含んでいた。別の穴あき貫通T継手は、内部制御TCのために反応器の頂部に配置され、過剰の空気(例えば、図4の過剰空気ライン426’内)から液体流出物を解放するために配置された。過剰の空気がノックアウトポットを通ってベントラインに流れている間に、液体をサンプルボトルに集めた。反応器は、内部TC及びコントローラを用いてシリコーン被覆ヒーティングテープで加熱した。この実施例4では、液体スチレンタールフィードをISCO 500Cシリンジポンプによって導入し、ロタメーター及び計量バルブを用いて空気流を制御した。液体フィードはスチレン精製カラムの底部生成物から採取した実際のプラントであり、受け取ったまま使用した。サンプルを1時間ごとに収集し、5時間サンプルを最終結果に使用して、平衡化のための十分な時間を可能にした。各条件で繰り返し実験を行い、平均した。多数の触媒バッチを作製し、試験した。実施例3に記載のコバルト及びマンガン触媒の両方は、数週間の使用後に失活を示さなかった。表5に示すデータは、全ての実験について同じ触媒バッチ及びスチレンタールバッチを用いて収集した。
【0124】
【表5】
【0125】
この実施例4では、スチレンプラントの蒸留カラム内のスチレンストリームからの不溶性ポリマー除去添加剤IPAAの製造を、実験室反応器システムを用いて調べた。ベンズアルデヒド及びアセトフェノンは、スチレンの穏やかな好気性酸化によって調製した。上記のように、これら2種は、スチレンとDVBの混合物中の不溶性ポリマーの除去に活性を示した。上記に詳述したように、オンサイトスチレンストリームからのB&Aの製造は、これらの添加剤の製造を可能にし、その後、不溶性ポリマー除去のために精製システム120/220/320に再導入することができる。態様では、スチレン製造プラントにおいてIPAAとして使用するのに十分なIPAAを製造するために、プラントストリームからの1~2%(又はそれ未満)のB&A製造のみが必要とされる場合がある。従って、この実施例4の試験を行って、プラントスチレンストリームからのB&Aの形成を研究した。
【0126】
この実施例4では、実験室反応器システムを使用して、ベンズアルデヒド及びアセトフェノン(B&A)の製造に関する反応条件を調べた。第1のスチレン精製カラムからの底部ストリームの一部を、この実施例4において酸化反応器へのスチレン含有供給原料として使用した。この供給原料は、高いスチレン含有量、高い重合阻害剤レベルを含み、酸化について潜在的に競合し得るEBを実質的に含まなかった。本明細書の上記の実施例3に記載したような酸素活性化触媒を用いて、温度を液体スチレン使用の実際の閾値未満に保った(即ち、スチレン自己開始を防止した)。最適であることが見出された120℃の酸化反応温度を、この実施例4において使用した。
【0127】
上向流管状触媒反応器を使用した。低表面積を有し、マクロ多孔質担体を含むコバルト触媒(実施例3に記載)及びほぼ同一の性能を示すマンガン類似体(これも実施例3に記載)を、この実施例4で使用した。この実施例4では、スチレンタール流量及び空気流量のいくつかの異なるレベルを研究した。120℃でのスチレンタールについての3つの液体時空間速度(LHSV)レベル及び空気についての3つの気体時空間速度(GHSV)
レベルの結果を図10に示し、これは、120℃で選択されたタール及び空気流量で、この実施例4の酸化触媒を用いて生成されたベンズアルデヒド及びアセトフェノンのパーセント(%B&A)のプロットである。図10に示すデータは、150mLの触媒床から得られた。試験したスチレンタール流量1、0.8及び0.6mL/分は、0.4、0.32及び0.24h-1のLHSVと相関する。試験した空気流量100、80、50cc/分は、40、32、20h-1のGHSVと相関する。
【0128】
図10において、B&A生産量(重量% B&A)は、スチレンタール流量に対してプロットされている。別々の曲線(挿入ボックスに描かれている)は、空気流量の効果を示す。本開示のコバルト及びマンガン酸化触媒の両方についての結果が図10に示されている。製造実施に必要なB&Aの予測変換レベル(1~2重量%)は、殆どの条件で実証された。図10から明らかなように、スチレンタールの流量が多いほどB&A生産量が低くなり、逆に、空気流量が多いほどB&A生産量が高くなった。コバルト触媒は、この実施例4においてマンガン類似体よりもわずかに良好な性能を示した。
【0129】
図10のデータから、%B&Aの製造のための一般的な操作ガイドラインは、空気流量を最大にし、液体スチレンタールストリームフィード流量を最小にすることを含み得る。図11は、この実施例4の実験についての、スチレン含有ストリームの液体時空間速度(LHSV)に対する空気の気体時空間速度(GHSV)の比GHSV/LHSVの関数としてのベンズアルデヒド及びアセトフェノンのパーセント(%B&A)のプロットである。従って、図11は、%B&A生産量と空気GHSV及びスチレンタールLHSVの比との相関による流量のこの関係を示す。分子のGHSVと分母のLHSVでは、%B&Aの生産量は比の増加につれて増加する。データポイントの大部分は、1重量% B&Aの推定最小生産レベルを超えている。空気及びスチレンフィードの他の流量も可能であり、本開示の範囲内に含まれる。
【0130】
この実施例4は、本明細書でIPAAとして特定される(少なくとも)2つの種、ベンズアルデヒド及びアセトフェノンが、穏やかな条件下での好気的酸化によってスチレンから調製され得ることを示す。この実施例4は、これらの添加剤がスチレン蒸留カラムストリームから調製され得ることを確認する。低温接触酸化反応器は、この実施例4において、実際のプラントサンプルから十分な量のB&Aを首尾よく生成した。本明細書で上記に詳述したように、プロセススリップストリームを使用して、スチレン精製セクション120/220/320の前部(例えば、図2の第3の蒸留カラムD3又は図2の第2の蒸留カラムD2などのEBリサイクルカラム)への再注入のためのIPAAを調製することができる。
【0131】
実施例5:スチレンタール酸化を含む例示的なスチレン製造システムV
図12は、この実施例5に記載されるような、その場でのIPAA製造システム(例えば、酸化セクション530)を含むスチレン製造システムVの例示的な部分の概略図である。この例では、EBリサイクル又は分離カラム120Aは、EB、スチレンモノマー(SM)、及びより重質の成分(例えば、ポリマー、タール)を含むフィードライン523内のEB分離/リサイクルカラムフィードからEB頂部ライン522内のEBストリームを分離し、スチレン及び重質物を含む底部生成物ライン524内の底部ストリームを提供するように構成されている。ストリームは、重合防止添加剤(例えば、本開示のIPAA及び/又は従来の重合遅延剤、例えば、TMPOであるがこれに限定されない)をさらに含むことができる。(例えば、第1又は唯一の)スチレン仕上げカラム120Bは、EBリサイクル/分離カラム120Aから導入された底部生成物ライン524内の底部ストリームから、スチレンライン527を介してスチレンを含む頂部生成物と、底部生成物ライン525内のスチレンタール(例えば、スチレン、重質成分、及び任意的に重合防止添加剤を含むタール)を含む底部生成物とを分離するように構成されている。
【0132】
底部生成物525のスリップストリームは、酸化フィードライン529を介して酸化ユニット又は反応器531に導入される。底部生成物ライン525内の底部生成物の残りは、タールリサイクル及び/又はさらなる処理ライン528を介して除去される。態様において、1つ以上のタールリサイクル及び/又はさらなる処理ライン528は、タール/重質残渣を分離フィードライン(例えば、図1の113)に、又は蒸留カラム120A及び120Bが一部である分離若しくは蒸留装置内のいずれかの個々のカラム内にリサイクルするように構成されている。態様において、底部ライン528から除去されるライン529内のスリップストリームは、スチレン仕上げカラム120Bからのライン525内の底部ストリームの約1、5、10、15、又は20重量パーセント(重量%)以下を含む。本公開の1つ以上のIPAA(例えば、少なくともベンズアルデヒド及び/又はアセトフェノン)を含む、液体酸化反応器液体流出物ライン538を介して酸化ユニット531から除去された酸化生成物の全部又は一部は、液体流出物ライン538を介してEB分離蒸留カラム120Aにリサイクルすることができる。
【0133】
図12の例示的態様では、EB分離蒸留カラム120Aは、スチレンに対して200ppmのDVB(又は40.0lbs/hのDVB)を含む200,000ポンド/時(lb/h)のスチレンモノマーを含む底部生成物ライン524内の底部生成物を提供し、スチレン仕上げカラム120Bは、スチレンに対して1333.33ppmのDVB(又は40.0ポンド/時のDVB)を含む30,000ポンド/時のスチレンモノマーを含む底部生成物ライン525内の底部生成物を提供する。9重量%(2700ポンド)の底部生成物ライン525を含む底部生成物ライン525のスリップストリーム529を酸化反応器531内で酸化して、1.5重量%のIPAA又は40.5ポンド/時のIPAA(ベンズアルデヒド及びアセトフェノン)を含む酸化生成物を生成し、従って、EB分離/リサイクルカラム120A及びスチレン仕上げカラム120B内のDVBの量(40lb/時)よりも0.5lb/時大きいIPAAの量を提供し、1.0125のその中のIPAA対DVBの重量比を提供する。液体流出物ライン538内の酸化生成物の全部又は一部は、EB分離/リサイクルカラム120A及び/又はスチレン仕上げカラム120Bにリサイクルされ得る(例えば、液体流出物ライン538とEB分離カラムフィードライン523及び/又は底部生成物ライン524との流体接続を介して)。この実施例5は、本明細書に記載されるように、穏やかな条件下で操作される酸化反応器において、スチレン仕上げカラム底部からのベンズアルデヒド及びアセトフェノン(組み合わせた)IPAAの1~2重量%生産量を製造できることを示す。従って、2000~4000lb/hのスリップストリーム(例えば、酸化フィードライン129/229/329内の酸化フィードストリーム)を使用して、この実施例5のEBリサイクル蒸留カラム120A及びスチレン仕上げ蒸留カラム120Bにおける不溶性ポリマー形成を阻害するのに十分な総量のIPAAを生成することができる。
【0134】
この実施例5では、実施例3で実証された酸化反応器生産性レベルを用いてIPAAの目標用量を作るために、スチレン仕上げ底部生成物ストリーム525の10重量%未満が必要とされる。この態様では、IPAAを含む酸化反応器液体流出物538がその中のDVBの濃度と一致するように、EBリサイクルカラム120Aにリサイクルされる。
【0135】
追加の説明
本開示は、本明細書の教示の恩恵を受ける当業者には明らかな、異なるが同等の方法で修正及び実施される場合があるので、上記で開示された特定の態様は例示的なものにすぎない。さらに、下記の特許請求の範囲に記載されるもの以外に、本明細書に示された構造又は設計の詳細に対する限定は意図されない。従って、上記で開示された特定の例示的な態様は、変更及び修正されてもよく、そのような変形の全ては本開示の範囲及び趣旨内にあると見なされることが明らかである。態様の特徴を組み合わせ、統合し、及び/又は省
略することから生じる代替の態様もまた、本開示の範囲内である。組成物及び方法は、様々な構成要素又は工程を「有する」、「備える」、「含有する」、又は「含む」というより広い用語で記載されているが、組成物及び方法はまた、様々な構成要素及び工程「から本質的になる」、又は「からなる」ことができる。特許請求の範囲のいずれかの要素に関する「任意的に」という用語の使用は、その要素が必要とされるか、又は代替的にその要素が必要とされず、両方の代替物が特許請求の範囲内にあることを意味する。
【0136】
上記に開示された数及び範囲は、ある量だけ変化する場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されている場合はいつでも、その範囲内に入るいずれかの数及びいずれかの含まれる範囲が具体的に開示されている。特に、本明細書に開示される(「約a~約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約a~b」の形態の)全ての値の範囲は、値のより広い範囲に包含される全ての数及び範囲を示すものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲中の用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、その平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書ではそれが導入する要素の1つ又は複数を意味するように定義される。本明細書及び1つ以上の特許又は他の文献における単語又は用語の使用に矛盾がある場合、本明細書と一致する定義を採用すべきである。
【0137】
以下は、本開示による非限定的な特定の態様である:
【0138】
態様A:スチレンをベンズアルデヒド及びアセトフェノンに酸化するための酸化触媒であって:多孔質担体と;コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む酸素活性化金属を含む活性相とを含む、酸化触媒。
【0139】
態様B:適切な酸化物相として、か焼後の酸化触媒の総重量に基づいて、約0.2~約4、約0.5~約3.5、又は約0.5~約2重量パーセント(重量%)の活性相を含む、態様Aの酸化触媒。
【0140】
態様C:担体が、ASTM D3663によって測定される20、10、又は1m/g以下のBrunauer Emmett及びTeller(BET)表面積を有する低表面積担体である、態様A又は態様Bの酸化触媒。
【0141】
態様D:担体が、アルミナ、アルミナ-シリカ、又はそれらの組み合わせを含む、態様A~Cのいずれかの酸化触媒。
【0142】
態様E:酸素活性化金属が、コバルト(Co)又はマンガン(Mn)を含む、態様A~Dのいずれかの酸化触媒。
【0143】
態様F:活性相が、酸化コバルト(III)(Co)、酸化マンガン(IV)(MnO)、酸化マンガン(III)(Mn)、又はそれらの混合物を含む、態様A~Eのいずれかの酸化触媒。
【0144】
態様G:担体が、約50、60、70、75、80、90、又は100ミクロン(μ)以上の平均細孔サイズを有する細孔を含むマクロ多孔質担体である、態様A~Fのいずれかの酸化触媒。
【0145】
態様H:吸水重量測定によって測定して、約0.1、0.2、若しくは0.3mL/g以上、又は約0.2~約0.24mL/gの範囲の液体細孔容積を有する、態様A~Gのいずれかの酸化触媒。
【0146】
態様I:担体が、球状、円筒状、平板状、又はそれらの組み合わせである、態様A~Hのいずれかの酸化触媒。
【0147】
態様J:担体の平均直径又は平均最大寸法が、約1~約6、約2~約5、約2~約6の範囲、又は約7.5、6、5、若しくは4.5mm以下、及び/又は約1、1.5、若しくは2mm以上である、態様A~Iのいずれかの酸化触媒。
【0148】
態様K:担体が、約0.1~約30、約1~約25、約5~約15重量パーセント(重量%)、約30、25、20、若しくは15重量%以下、及び/又は約5、6、若しくは7重量%以上のシリカを含む、態様A~Jのいずれかの酸化触媒。
【0149】
態様L:酸化触媒の製造方法であって:活性金属前駆体の水溶液を形成することであって、活性金属は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、又はそれらの組み合わせを含む、形成することと;担体を水溶液で含浸させて含浸担体を形成することと;か焼して酸化触媒を形成することと、を含む、方法。
【0150】
態様M:活性金属前駆体が、硝酸コバルト(III)六水和物、硝酸マンガン(II)、硝酸鉄(III)九水和物、七モリブデン酸アンモニウム四水和物、又は適切な分解性金属複合体、又はそれらの組み合わせを含む、態様Lの方法。
【0151】
態様N:含浸が初期湿式含浸を含む、態様L又は態様Mの方法。
【0152】
態様O:か焼が、空気中でのか焼を含む、態様L~Nのいずれかの方法。
【0153】
態様P:か焼が、含浸担体を約200℃以下の温度で加熱すること、含浸担体を約200℃以上及び約300℃以下の温度で加熱すること、含浸担体を約300℃以上及び約400℃以下の温度で加熱すること、又はそれらの組み合わせを含む、態様L~Oのいずれかの方法。
【0154】
態様Q:か焼の前に含浸担体を乾燥させることをさらに含む、態様L~Pのいずれかの方法。
【0155】
態様R:乾燥が、約110~約250℃、約125~約200℃、約135~約175℃の範囲、又は約200℃以下の温度で加熱することを含む、態様Qの方法。
【0156】
態様S:担体が、アルミナ又はシリカ/アルミナを含み;担体が、ASTM D3663によって測定して、約20、10、5、又は1m/g以下のBrunauer Emmett Teller(BET)表面積を有し;担体が、約50、60、70、75、80、90、又は100マイクロメートル以上の平均細孔サイズを有する細孔を含むマクロ多孔質担体であり;及び/又は担体が、吸水重量測定によって測定して、約0.1、0.2、若しくは0.3mL/g以上、又は約0.2~約0.24mL/gの範囲の液体細孔容積を有する、態様L~Rのいずれかの方法。
【0157】
態様T:ベンズアルデヒド及びアセトフェノンを含む酸化生成物の形成方法であって、態様A~態様Kのいずれかの触媒を、酸化反応器内で、大気圧以上の圧力及び1、3、又は5atm未満の圧力で、スチレン及び空気と接触させることを含む、方法。
【0158】
態様U:酸化が、約140℃、130℃、又は120℃以下の温度を含む穏やかな条件下で行われる、態様Tの方法。
【0159】
態様V:酸化反応器が、回分式反応器又は連続反応器である、態様T又は態様Uの方法。
【0160】
態様W:酸化反応器が連続反応器であり、方法が、空気及びスチレンを含むストリームを酸化反応器内に導入することをさらに含む、態様Vの方法。
【0161】
態様X:分配器を介して空気を導入することをさらに含む、態様Wの方法。
【0162】
態様Y:空気及びスチレンを含むストリームを、酸化反応器内に同時に導入することをさらに含む、態様W又は態様Xの方法。
【0163】
態様Z1:酸化反応器が上向流管状反応器である、態様T~Yのいずれかの方法。
【0164】
態様Z2:空気を約40、30、又は20h-1以上の気体時空間速度(GHSV)で導入すること、スチレンを含むストリームを約0.4、0.3、又は0.2h-1以下の液体時空間速度(LHSV)で導入すること、又はそれらの組み合わせをさらに含む、態様W~Z1のいずれかの方法。
【0165】
態様Z3:液体時空間速度に対する気体時空間速度の比(GHSV/LHSV)が、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、又は170以上であるような気体時空間速度(GHSV)及び液体時空間速度(LHSV)で、空気及びスチレンを含むストリームを導入することをさらに含む、態様W~Z2のいずれかの方法。
【0166】
態様Z4:スチレンが、スチレン製造プラントのスチレン仕上げカラムからのタールストリーム中に含まれる、態様T~Z3のいずれかの方法。
【0167】
態様Z5:タールストリームが、スチレン製造プラントのスチレン分離セクションの第1のスチレン仕上げカラムの底部生成物である、態様Z4の方法。
【0168】
態様Z6:タールストリームが、約85~約100、約88~約98、約90~約96、又は約80、85、90、95、98重量パーセント(重量%)以上のスチレンを含む、態様Z5の方法。
【0169】
態様Z7:タールストリームは、1つ以上の重合阻害剤、ポリマー、又はそれらの組み合わせをさらに含む、態様Z6の方法。
【0170】
態様Z8:スチレンの製造のためのプロセスにおける汚染を低下させる方法であって:粗スチレンストリーム、スチレン含むタールストリーム、又はそれらの組み合わせの酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を生成することであって、酸化が態様A~態様Kのいずれかの酸化触媒を用いて達成される、生成することと;酸化生成物の少なくとも一部を含む添加剤ストリームを、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含むストリームに導入し、それによりジビニルベンゼン(DVB)架橋が阻害されることと、を含む、方法。
【0171】
態様Z9:スチレンを含むタールストリームが、エチルベンゼン(EB)リサイクルカラムからの底部ストリームを、タールストリームを含む底部ストリーム及びスチレンを含む頭上ストリームに分離するように構成されたスチレン仕上げカラムからの底部ストリームのスリップストリームである、態様Z8の方法。
【0172】
態様Z10:スリップストリームが、約1、5、10、15、又は20重量パーセント(重量%)以下の、スチレン仕上げカラムからの底部ストリームを含む、態様Z9の方法。
【0173】
態様Z11:添加剤ストリームが、ベンズアルデヒドの濃度、アセトフェノンの濃度、又はベンズアルデヒドの濃度とアセトフェノンの濃度との合計が、ストリームの約0.001、0.01又は0.1重量パーセント以上であるように、スチレン及びDVBを含むストリームに導入される、態様Z8~Z10のいずれかの方法。
【0174】
態様Z12:添加剤ストリームが導入される、スチレン及びDVBを含むストリームが、EB脱水素化反応器の下流の蒸留カラムへのフィード、リサイクル、又は還流ストリームである、態様Z8~態様Z11のいずれかの方法。
【0175】
態様Z13:蒸留カラムが、EBを含む頂部生成物を、スチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたEBリサイクル蒸留カラム、ベンゼン及びトルエンを含む頂部生成物を、EB及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成された蒸留カラム、又はスチレンを含む頂部生成物を、タール及びスチレンを含む底部生成物から分離するように構成されたスチレン仕上げ蒸留カラムを含む、態様Z12の方法。
【0176】
態様Z14:汚染の低下が、添加剤ストリームが存在しない同じプロセスと比較して、不溶性ポリスチレン、可溶性ポリスチレン、又は両方の形成の少なくとも1、10、50、又は100%の低下を含む、態様Z8~態様Z13のいずれかの方法。
【0177】
態様Z15:添加剤ストリームが、195℃、200℃、250℃、又は300℃を超える沸点を有する重合阻害剤をさらに含む、態様Z8~態様Z14のいずれかの方法。
【0178】
態様Z16:重合阻害剤が、ジニトロフェノール、TMPO化合物(例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)、オキシム、又はそれらの組み合わせから選択される、態様Z15の方法。
【0179】
態様Z17:酸化生成物が、態様T~態様Z7のいずれの方法によって形成される、態様Z8~態様Z16のいずれかの方法。
【0180】
態様Z18:エチルベンゼン(EB)の脱水素化によるスチレンの製造のためのシステムであって、システムは:EB及び蒸気を脱水素化条件下で脱水素化触媒と接触させて、スチレン及び副生成物ジビニルベンゼン(DVB)を含む粗スチレン流出物を提供するように操作可能な1つ以上の脱水素化反応器と;粗スチレン流出物の温度を低下させて冷却された粗スチレン流出物を提供するように構成された熱交換装置と;オフガス及び/又は凝縮物を冷却粗スチレン流出物から除去し、従って脱水素化混合物を提供するように構成された分離装置と;脱水素化混合物を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、又はそれらの組み合わせを含む1つ以上のストリーム、ポリマー、添加剤、スチレンよりも高い沸点を有する種、及びスチレンを含むタールストリーム、並びにスチレンを含むストリームに分離するように操作可能な蒸留セクションと;タールストリームの一部の酸化によって、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む酸化生成物を含む酸化生成物ストリームを生成するように構成された酸化ユニットと(ここで酸化ユニットは、態様A~態様Kのいずれかの酸化触媒を含む);任意的に、酸化生成物ストリームを、酸化残渣ストリームからの酸化生成物ストリームよりも高い濃度のベンズアルデヒド、アセトフェノン、又はそれらの組み合わせを含む添加剤成分ストリームに分離するように構成されたセパレーターと;それによって酸化生成物ストリームの少なくとも一部、添加
剤成分ストリームの少なくとも一部、又は両方が、粗スチレン流出物、冷却粗スチレン流出物、脱水素化混合物、蒸留セクションの蒸留カラムへのフィード、リサイクル、若しくは還流物、又はそれらの組み合わせと組み合わされ得る1つ以上のリサイクルラインとを含む、システム。
【0181】
本発明の好ましい態様が示され、記載されてきたが、本開示の教示から逸脱することなく、当業者によりその修正が為され得る。本明細書に記載した態様は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に開示した本発明の多くの変更及び修正が可能であり、本発明の範囲内である。
【0182】
上記の開示を完全に理解した後、多くの他の修正、均等物、及び代替物が当業者に明らかとなるであろう。以下の特許請求の範囲は、適用可能な場合、全てのそのような修正、均等物、及び代替物を包含すると解釈されることが意図される。従って、保護の範囲は、上記に示した説明によって限定されず、その範囲が特許請求の範囲の主題の全ての均等物を含む、次の特許請求の範囲によってのみ限定される。それぞれ及び全ての請求項は、本発明の態様として明細書に組み込まれる。従って、請求項はさらなる説明であり、発明の詳細な説明への追加である。本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書に示されるものへの例示的、手順的または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
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