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特許7556993物質を患者の身体に注入するための埋込み可能なシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】物質を患者の身体に注入するための埋込み可能なシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240918BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20240918BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20240918BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61M5/142 524
A61M5/168 512
A61M5/172
A61M5/172 500
A61M37/00 550
A61M37/00 560
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023019927
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2021115532の分割
【原出願日】2009-10-09
(65)【公開番号】P2023062708
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】61/136,872
(32)【優先日】2008-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517420762
【氏名又は名称】メディカルトゥリー・パテント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーセル,ピーター
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/051563(WO,A1)
【文献】特開2000-210295(JP,A)
【文献】特開2005-230260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 5/172
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体に物質を注入するシステムであって、
少なくとも1つの注入針(11)を少なくとも1つのハウジング(12)内に備え、その注入針の先端は該ハウジングの少なくとも1つの外壁(15)を貫通するようにされ、該ハウジングは患者の身体内への埋込みに適合されており、
患者の体内への埋込みに適合された少なくとも1つの駆動ユニット(D)を備え、その駆動ユニットは、前記先端または端部の前進時に前記少なくとも1つの注射針が前記少なくとも1つの貫通領域(14)における前記外壁を貫通するために、少なくとも1つの注入針の先端を前進および後退させるように少なくとも1つの注入針に結合され、少なくとも1つの注入針を介して前記少なくとも1つの貫通領域を通して物質を注入することを可能とされており、
前記駆動ユニットは、前記少なくとも1つの注入針の少なくとも1つの先端を少なくとも2つの異なる横断方向において、横断方向に移動させ、
前記少なくとも1つの注入針は、少なくとも1つのハウジングの外壁(15)を少なくとも2つの異なる貫通領域(14)において貫通し、
前記少なくとも1つの注入針は、患者からの単一の指示またはアクションを受けると、前記少なくとも2つの異なる貫通領域を貫通する、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの駆動ユニットは、前記少なくとも1つの注射針の先端の前進および後退の動作を、前記先端あるいは端部の前進時に前記少なくとも2つの異なる貫通領域が同時にまたは引き続いて貫通されるように、行うように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なる貫通領域の第1の領域の貫通と第2の領域の貫通との間の時間遅延は、120秒未満、好ましくは60秒未満である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの注入針は、前記少なくとも2つの異なる貫通領域の第1の領域から後退すると、前記少なくとも2つの異なる貫通領域の第2の領域への前記少なくとも1つの注入針の前進は開始される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの異なる貫通領域のそれぞれに対して個別の注入針が設けられる、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも2つの注入針あるいは端部が、前記少なくとも1つのハウジングのうちの共通のハウジング内に離間して収容され、前記駆動ユニットは、前記少なくとも2つの注入針のうちの第1の注入針の先端の前進および後退をさせて前記共通のハウジングの前記外壁を前記少なくとも2つの異なる貫通領域の第1の領域において貫通させ、そして、前記少なくとも2つの注入針のうちの第2の注入針の先端の前進および後退をさせて前記共通のハウジングの前記外壁を前記少なくとも2つの異なる貫通領域の第2の領域において貫通させる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記駆動ユニットは、同時に前記少なくとも2本の注入針の先端を前進および後退するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記駆動ユニットは、各々の前記2つの異なる貫通領域の中で異なる貫通部位に各々の前記少なくとも2本の注入針の先端を横方向に移動するように構成される、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記駆動ユニットは、少なくとも2つの異なる横方向において、各々の前記少なくとも2本の注入針の前記先端を移動するように構成される、請求項6から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記駆動ユニットは、貫通部位の3次元配列に沿って各々の前記少なくとも2本の注入針の先端を移動するように構成される、請求項6から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記駆動ユニットは、同時に前記注入針の前記先端を横方向に移動するように構成される、請求項6から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記駆動ユニットは、2つの横方向の位置の間で前記少なくとも1本の注入針の前記先端を横方向に移動するように構成され、前記1本の注入針は、前記少なくとも2つの異なる貫通領域における前記ハウジングの外壁を貫通することができる、請求項6から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記駆動ユニットは、各々の前記少なくとも2つの異なる貫通領域の中での異なる貫通部位に、前記1本の注入針の前記先端を横方向に移動するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記駆動ユニットは、前記少なくとも1つの注入針の前記先端の前進および/または後退中に、前記少なくとも1つの注入針の前記先端の前記横方向への移動が自動的に行われるように構成されている、請求項1~13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記駆動ユニットは、前記少なくとも1つの注入針が前記少なくとも1つの注入針の前記先端の横変位のために載置される可動キャリッジを備える、請求項1から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記可動キャリッジは、ターンテーブルを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記可動キャリッジは、シャトルを備える、請求項15又は16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に物質、具体的には薬剤の患者の身体への注入に関し、より詳細には、
陰茎を勃起させる刺激に関する。
【背景技術】
【0002】
男性が性的に刺激されると、動脈と静脈の接続が閉じられ(動静脈吻合)、したがって
通常は陰茎海綿体の空間すなわち洞を迂回できる血液が陰茎内に貯留する。
【0003】
陰茎海綿体の勃起組織の海綿体洞に血液を供給する主血管は陰茎深動脈である。したが
って、陰茎深動脈は陰茎の勃起に大きく関係する。陰茎深動脈は、海綿体洞に直接開口す
る多数の分枝(らせん動脈)を生じる。陰茎が弛緩すると、これらの動脈はらせん状にな
り、血流を制限する。ただし、副交感神経刺激により、らせん状のらせん動脈の平滑筋が
弛緩する。らせん動脈は、弛緩した状態では、まっすぐになり、内腔を拡張して、血液を
陰茎海綿体の海綿体洞に動脈圧で流れ込ませて拡張する。球海綿体筋および坐骨海綿体が
陰茎海綿体から出る静脈を圧迫すると共に、勃起した陰茎体が大きくなって硬化し、勃起
が起こる。
【0004】
勃起不全患者は、陰茎海綿体にパパベリンまたはプロスタグランジンE1などの薬剤を
注入することによって陰茎を腫脹させ、平滑筋を弛緩させることができる。患者は、陰茎
海綿体のそれぞれに薬剤を適切に注入できるようになるために、医師の監督下である技術
を習得しなければならない。薬剤の投与後わずか約15分で、薬剤は効果を発揮する。同
じ身体部位を頻繁に突き刺すことによって炎症が引き起こされ、最終的にはさらに突き刺
すことが困難になり、不可能になる場合すらあることが重要である。したがって、手技全
体が面倒であり、薬剤は通常、まず乾燥物質と生理食塩水から一緒に混合されなければな
らないので、さらに面倒である。利用可能な薬剤は安定であるのは、乾燥物質(および典
型的には、冷却される)の場合のみである。そのうえ、注入が適切に行われなかった場合
に薬剤が血液と共に輸送されて患者の身体の他の領域に至ることがあるので、適切な投与
および投薬が重要である。
【0005】
前述の問題は、陰茎勃起を刺激する薬剤の投与に限定されない。類似の問題は、物質が
頻繁に注入される他の適用例でも生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2007/051563
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、プロセス全体がより信頼性の高い、患者にとってより便
利なものになるように、患者の身体への物質の投与を改善することであり、より具体的に
は、陰茎を勃起させる刺激を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の本質は、少なくとも1つの埋込み可能な注入針を使用して患者の身体に物質を
注入することにある。これにより、患者が自分を注入針で突き刺す必要がなくなるので、
患者の快適性が大きく改善される。自分を注入針で突き刺すのは、多くの人々にとって簡
単な作業ではない。そのうえ、注入針の恒久的な埋込みにより、注入は常に、薬剤が最も
効果的であるように選択された適切な場所で行われる。注入針を介して患者の身体に薬剤
を注入するための、多くの考え得る技術的な変形形態があるが、そのような注入は、患者
の体外から手動で薬剤を注入する代替形態と比較して、注入針がいったん埋め込まれると
患者にとってより便利なことは明らかである。
【0009】
したがって、本発明によれば、患者の身体に物質を注入するためのシステムは、1つま
たは複数の注入針を備え、注入針の先端は、少なくとも1つの貫通領域で、好ましくは2
つ以上の異なる貫通領域でハウジングの1つまたは複数の外壁を貫通するように、(少な
くとも1つの)ハウジング内に配設される。後述するように、2つ以上の異なる貫通領域
に薬剤を注入するために単一のハウジング内または異なるハウジング内に2つ以上の注入
針を設けてもよいし、それぞれの異なる貫通領域でハウジングの外壁を貫通するように注
入針の先端を移動させるための適切な駆動ユニットと共に、単一のハウジング内に単一の
注入針を設けてもよい。
【0010】
そのうえ、本発明によれば、患者の体内への埋込みに適合された少なくとも1つの駆動
ユニットは、少なくとも1つの貫通領域の外壁を貫通するために、少なくとも1つの注入
針の先端を前進および後退させるように少なくとも1つの注入針に結合され、少なくとも
1つの注入針を介して前記少なくとも1つの貫通領域を通して物質を注入することを可能
とする。少なくとも1つの注入針が2つ以上の異なる貫通領域で少なくとも1つのハウジ
ングの外壁を貫通するように配置される場合、少なくとも1つの針は、同時に(例えば複
数の針、すなわち少なくとも2つの針が設けられる場合)または即座に引き続いて(例え
ば単一の針が設けられる場合)、少なくとも2つの異なる貫通領域を貫通する。好ましく
は、患者からの単一のコマンドまたは単一の操作は、駆動ユニットの対応する機械的構造
によって、または駆動ユニットを制御する適切に構成された制御ユニットによって、少な
くとも2つの貫通領域を介して物質を注入するのに十分である。これによって、システム
は、患者にとって扱いやすいものになる。
【0011】
加えて、本発明によれば、駆動ユニットはさらに、前記少なくとも1つの注入針の少な
くとも1つの、好ましくはすべての注入針について、注入針の先端を横断する方向(側方
)へ移動させることが、少なくとも2つの異なる方向に関して、行えるように構成される
。言い換えれば、注入針は少なくとも2次元において横断する方向での移動が可能である
。好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるように、このような構成によって、シ
ステムの全体的なサイズを縮小することが可能となる。
【0012】
注入針が、前記少なくとも2つの異なる方向に関して上記のような横断方向での移動に
よって、前記少なくとも1つの貫通領域内の、好ましくは各貫通領域内の異なる貫通部位
に達するように駆動ユニットを構成し、二次元配列に沿ってハウジングの外壁の特定の貫
通領域内の貫通部位を変化させ、それによって、患者の体内の特定の注入領域内の注入部
位をそれに応じて変化させるようにすることが特に好ましい。例えば、いくつかの注入サ
イクルの後で注入針がその初期位置に横断方向に戻ると、同じ貫通領域で次の回数の注入
が、第1の数の貫通部位の横断方向からやや上下にずらされて行われてもよい。したがっ
て、各貫通領域において二次元配列の貫通部位を得ることができる。針を移動させるよう
に適切に適合された駆動ユニットによってハウジングの外壁を通る三次元配列の貫通部位
を得ることができても、ハウジングまたは少なくともそのウィンドウ領域は球状に形成さ
れる。これにより、システムの使用に関する柔軟性が大きく増加する。前述のように、同
じ身体部位を頻繁に突き刺すことによって炎症が引き起こされ、最終的にはさらに突き刺
すことが困難になり、不可能になる場合すらある。各注入サイクルで1つまたは複数の針
を横断方向に移動させることにより注入部位を変えると、このような問題を克服すること
ができる。各貫通領域で二次元配列または三次元配列の貫通部位を得るように、異なる貫
通部位の間で異なる方向へと1つまたは複数の針の先端を移動させることによって、貫通
領域の最大次元を最小に保つことができる。
【0013】
前述のように、少なくとも1つの注入針は、好ましくは、2つ以上の異なる貫通領域内
のハウジングの少なくとも1つの外壁を貫通するように配置される。以下により詳細に説
明するように、これは、単一の注入針の先端を単一のハウジング内の2つ以上の貫通領域
の間で横断方向に移動させることによって、または2つ以上の貫通領域のそれぞれに対し
て設けられた個別の注入針を用いて達成されることができ、この貫通領域は、共通のハウ
ジング内に設けられてもよいし、異なるハウジング内に設けられてもよい。
【0014】
すなわち、単一の注入針が1つのハウジング内に設けられ、このハウジングが患者の体
内に2つ以上の注入領域に隣接して埋め込まれる場合、駆動ユニットは、注入針が2つ(
またはそれ以上)の異なる貫通領域でハウジングの外壁を貫通できるような種々の横断方
向位置の間で1つの注入針の先端を横断方向に移動するように構成されることができる。
その結果、注入針は、2つ(またはそれ以上)の貫通領域の間で横断方向移動を行うよう
に、かつ2つ(またはそれ以上)の貫通領域のそれぞれの内部の複数の貫通部位の間で二
次元または三次元の横断方向移動を行うように、配置される。したがって、患者が陰茎勃
起を希望するとき、針は、薬剤が例えば左右の陰茎海綿体に注入されることができるよう
に、2つの異なる貫通領域でハウジングの外壁を順次貫通する。そのうえ、駆動ユニット
が1つの注入針の先端を異なる貫通領域のそれぞれの内部の異なる貫通部位に対して横断
方向に移動できるので、患者が後でもう1回陰茎勃起を達成することを希望するとき、単
一の注入針は、同じ貫通部位ではなく、ハウジングの外壁の特定の貫通領域内の異なる貫
通部位を貫通する。
【0015】
ただし、システムは有利には、単一の針が2つ(またはそれ以上)の異なる貫通領域の
間での第1の方向の横断方向移動のために、さらには、異なる貫通領域のうちの少なくと
も1つ、好ましくはそのそれぞれの内部で、第1の方向と異なる1つの第2の方向のみの
横断方向移動のために配置される構成でも用いられることができることに留意されたい。
この構成によって、それぞれの貫通領域における多次元配列の貫通部位は実現されないが
、それにもかかわらず、システム全体のサイズを実質的に減少することができる。より好
ましくは、異なる貫通領域のそれぞれの内部の横断方向移動の方向が、異なる貫通領域間
の横断方向移動の方向と異なり、特にこれと直角をなす。これは、システムの特定の構成
に応じて、単一の多機能駆動ユニットを用いて、または協調的に動作するように適切に構
成された複数の異なる駆動ユニットを用いて達成されることができる。
【0016】
少なくとも1つの注入針によって貫通されるべき2つの異なる貫通領域の間の距離は、
薬剤が注入できるときはいつでも患者の身体のそれぞれの部位が突き刺されるように選択
される。2つ(またはそれ以上)の貫通領域が単一の注入針による動作の対象である場合
、各連続した注入時における異なる貫通領域の間の単一の注入針の横断方向移動の距離は
3mm、4mm、5mm、またはこれより多い距離に達する。このような連続した注入は
好ましくは即座に連続し、貫通領域の第1の領域の貫通と第2の領域の貫通の間の時間の
遅延は好ましくはできる限り短く、より好ましくは120秒未満、最も好ましくは60秒
未満である。したがって、注入針が2つの貫通領域の第1の領域から後退すると、注入針
が即時に貫通領域の第2の領域に前進することが好ましい。
【0017】
異なる貫通部位でハウジングの外壁を貫通するようにハウジング内に含まれた横断方向
に移動可能な単一の注入針を備える埋込み可能な注入デバイスは、WO2007/051
563で一般に知られている。しかし、この従来技術によるデバイスは、2つ以上の異な
る注入領域に薬剤を同時にまたはほぼ同時に即座に連続して注入することを意図するもの
ではなく、そのように構成されてもいない。その代わりに、従来技術によるデバイスの駆
動ユニットは、動作時に毎回単一の注入領域の異なる貫通部位で薬剤を投与するように構
成される。例えば、従来技術によるデバイスは、血管の単一の注入領域内の異なる注入部
位に薬剤を注入するように血管に沿って設置されてもよい。したがって、従来技術による
デバイスでは、ある注入と次に続く注入の間の注入針の先端の横断方向移動の距離が、患
者の体内の異なる注入領域に達することができるように構成されていない。そのうえ、従
来技術によるデバイスは、注入針をその横断方向に異なる方向に関して移動するように設
計されていない。具体的には、従来技術による注入デバイスは、異なる注入領域内の注入
部位を横断方向に変化させるように設計されておらず、二次元配列または三次元配列の貫
通部位を達成するように設計されてもいない。また、従来技術による注入デバイスは、陰
茎を勃起させる刺激に使用されることを目的とするものではない。
【0018】
上記で簡単に述べたように、同様に、単一のハウジング内に単一の注入針を有する代わ
りに、共通のハウジング内または個別のハウジング内に2つ以上の注入針を有し、貫通領
域ごとに1つの針を設けるシステムを提供することが可能である。したがって、個別の注
入針を貫通領域ごとに設けることができる。陰茎勃起を引き起こすために2つの異なる領
域のみにおいて注入が行われることが望まれる場合、2つの個別の注入針は、好ましくは
同時に、それぞれのハウジングの対応する貫通領域を通って前進し、注入後に再び後退す
ることができる。各貫通領域内で、それぞれの注入針は、異なる貫通部位の間で少なくと
も2つの異なる方向に関して横断方向に移動されることができる。駆動ユニットは好まし
くは、2つ以上の注入針の先端を同時に横断方向に移動するように構成される。これは、
例えば、おそらくスライド状のターンテーブルおよび/またはシャトルなどの、駆動ユニ
ットの可動キャリッジに注入針を一緒に取り付けることによって達成されることができる
。例えば、注入針は共通のハウジング内に上に配置されてもよい。
【0019】
1つまたは複数の注入針の1つまたは複数の先端をそれぞれ前進および後退させるため
の駆動ユニットは、好ましくは、注入針の先端が前進または後退するたびに注入針の先端
を横断方向に移動するように構成される。したがって、注入針の先端の横断方向移動およ
び前進/後退が整合して行われる。注入針の先端の横断方向移動は、注入前および/また
は注入後に行われてもよい。この機構は、ある回数の横断方向移動後または所定距離にわ
たる横断方向移動後、注入針の先端がその初期位置の近くに横断方向に戻され、次の回数
の注入が、前回針が貫通した場所の近くで行われるようなものであってよい。
【0020】
関係する針の数に関係なく、および達成されるべき特定の貫通部位の配列に関係なく、
1つまたは複数の注入針の先端の横断方向移動が1つまたは複数の針の先端の前進および
/または後退中に自動的に達成されるように駆動ユニットを構成することが好ましい。例
えば、注入針が針の先端の横断方向移動のために、例えばスライド状のターンテーブルま
たはシャトルなどの可動キャリッジに取り付けられる場合、駆動ユニットは、注入針が前
進および/または後退するたびに可動キャリッジを所定の距離だけ自動的に前進させるよ
うに適合されたステッパを備えてもよい。
【0021】
本発明の一態様によれば、注入針が壁を貫通できるように外壁を能動的に開くことが可
能だが、本発明の別の態様によれば、外壁を突き刺すことによって外壁を貫通するように
針を配置することが好ましい。そのため、外壁は、注入針を前進させたときに注入針に押
しのけられるフラップを備えてもよいし、少なくとも貫通領域において少なくとも1つの
注入針による貫通に対して自己封止である材料から作製されてもよい。ハウジング全体が
自己封止材料で作製されてもよく、自己封止材料が外壁内に少なくとも1つのウィンドウ
領域を形成する場合に安定するので有利であり、ウィンドウ領域は少なくとも1つの注入
針の先端によって貫通されるように位置決めされる。ウィンドウ領域は、外壁に圧入され
て外壁に好ましくは一体化された自己封止貫通膜によって形成されてもよい。典型的には
、自己封止材料は、好ましくはシリコーンからなるポリマー材料から作製される。ポリウ
レタンなどの他の生体適合性ポリマー材料を用いてもよい。
【0022】
自己封止材料は複合材料であってもよい。このような複合材料の特に好ましい実施形態
は、少なくとも1つの外形状付与層と、この外層内に含まれる自己封止軟質材料とを備え
る。したがって、外層は、軟質材料のための外郭を形成する。外層は、上述のポリマーの
うちの1つなどの生体適合性ポリマーから作製されてもよく、好ましくは、自己封止軟質
材料はゲルであってもよい。
【0023】
自己封止材料の代わりに、注入針によって貫通されるべき外壁の一部は、1つまたは複
数の注入針が通過できる貫通領域に1つまたは複数のフラップを備えてもよい。これによ
って、自己封止膜の貫通と比較して、注入針が外壁を貫通するのに必要とされる力を減少
させることができる。フラップは、好ましくは、注入針が前進すると注入針によって押し
のけられるように配置される。
【0024】
あるいは、外壁は、貫通領域に少なくとも1つの扉を備えてもよい。扉を能動的に開く
ための駆動装置が扉に接続され、注入針は開いた扉を通って前進できる。また、扉は、通
常は閉鎖されている弾性フラップなどのフラップを備えてもよい。これは、扉に接続され
た駆動装置が、注入針に結合された駆動ユニットの一部を形成する場合に特に好ましい。
より具体的には、配置は、駆動ユニットによって注入針が前進すると同時に駆動装置が扉
を開くようなものであってもよい。
【0025】
本発明のシステムの好ましい適用例によれば、1つまたは複数のハウジングは、患者の
体内での、2つの陰茎海綿体および/もしくはその2つの深動脈に隣接した、ならびに/
または患者の左右の陰茎海綿体を通る血流を調節する筋組織に隣接した、ならびに/また
は2つの陰茎海綿体の近傍の組織に隣接した埋込みに適合される。少なくとも1つの注入
針のための単一のハウジングが設けられる場合、または2つ以上の貫通領域が単一のハウ
ジング内に配置される場合、貫通領域は、患者の陰茎の左右の陰茎海綿体および/もしく
は左右の陰茎海綿体の2つの深動脈に隣接して、ならびに/または左右の陰茎海綿体を通
る血流を調節する筋組織に隣接して、ならびに/または特定の薬剤が注入されると第1の
陰茎海綿体および第2の陰茎海綿体が腫脹できる別のタイプの組織の十分近くに設置され
ることができるように、ハウジング内に配置されてもよい。
【0026】
少なくとも1つの注入針は、好ましくは、先端で閉じる筒状体を有し、特定の身体部分
に薬剤をデリバリするための、側面に配置されたデリバリ出口ポートを備える。したがっ
て、針は貫通中にどの材料も切り抜くことはなく、単に材料を分割するだけである。した
がって、針が線維化および/または自己封止貫通膜などの材料を貫通するとき、薬剤デリ
バリ通路に入ったりこれを遮断したりする材料はない。
【0027】
システムは、患者の体内への埋込みに適合された少なくとも1つのリザーバをさらに備
えてもよく、このリザーバは、患者の体内に注入されるべき物質を注入針に供給するよう
に少なくとも1つの注入針と流体接続される。また、同様に患者の体内への埋込みに適合
された少なくとも1つのポンプを、物質をリザーバから少なくとも1つの注入針に前進さ
せるために設けてもよい。
【0028】
スペースの制約があるため、注入領域から離れてリザーバを埋め込むことが好ましいの
で、柔軟に曲げ得る長い注入針を用いることが有利なことがある。その場合、このような
注入針の先端は、長い注入針の前進時にその外壁を貫通するように第1のハウジング内に
配置されるが、注入針の他の端部は患者の体内に遠隔に埋め込まれた第2のハウジングに
配置される。注入針は、遠隔埋込み用第2のハウジングから第1のハウジングへ、さらに
第1のハウジングを通って、針によって貫通されるべき第1のハウジングの外壁に至る距
離をつなぐ(bridge)のに十分に長い。柔軟に曲げ得る長い注入針は適切なシース
内に案内されてもよい。そのうえ、スペースの制約があるため、注入領域から離れた、好
ましくは第2のハウジング内の、さらにより好ましくは遠隔に埋め込まれたリザーバを有
する共通のハウジング内の、注入針の先端を前進および後退させるための駆動ユニットの
少なくとも一部を配置することも有利である。より好ましくは、モータ、ポンプなどの能
動部分のほとんどまたはすべては、遠隔に埋め込まれた第2のハウジング内に収容される
ことができるが、第1のハウジングは受動要素のみを含む。
【0029】
本発明による駆動ユニットは、電気モータなどの駆動装置自体だけでなく、伝動装置な
ど、駆動装置によって供給される駆動エネルギーを少なくとも1つの針の動きに変換する
ことに関係する構成要素も含む。
【0030】
例えば、柔軟に曲げ得る長い注入針の場合、駆動ユニットは、注入針を回転させること
によって、または注入針と協働する要素を回転させることによって、注入針が前進および
/または後退するようなものであってもよい。より具体的には、注入針を前進および後退
させるための駆動ユニットは、スクリュー・ドライブ接続を備えてもよい。例えば、駆動
ユニットの駆動装置は、注入針に結合されたラックに螺合されたスクリューを回転させて
、スクリューの回転によって注入針を前進または後退させるようにしてもよい。スクリュ
ー・ドライブ接続のスクリューおよびラックは、好ましくは、遠隔に埋め込まれた第2の
ハウジングに収容されるが、針の先端を収容するハウジングに配置されてもよい。スクリ
ューの代わりに、注入針自体が適切な駆動装置によって回転され、注入針が回転すると、
針のスレッディングが固定的に取り付けられたラックに係合されることによって注入針が
前進または後退するようにされてもよい。第1のハウジングと第2のハウジングの間で、
注入針は、好ましくは、摩擦を減少させ、針の動きを妨害する可能性のある線維化の増殖
を防ぐように、シース内に案内される。
【0031】
注入針、または上述の柔軟に曲げ得る長い注入針の場合には少なくともその先端は、間
隙を介した関係で共通のハウジングに含まれてもよく、駆動ユニットはまた、好ましくは
同時に、前記少なくとも2つの異なる貫通領域内の共通のハウジングの外壁を貫通するた
めに、注入針の先端を前進および後退させるように構成される。共通のハウジング内に針
または少なくともその先端を設置することによって、注入領域に近い位置に針を固定する
ための手技が単純になる。そのうえ、単一の駆動ユニットは、複数の注入針の先端を前進
および後退させるために使用されることができ、これによってシステム全体の体積が減少
する。単一の駆動ユニットを使用することは、駆動ユニットも共通のハウジングに含まれ
る場合、すなわち駆動ユニットも非常に限定された注入領域近くに埋め込まれる場合、特
に有利である。
【0032】
ここでリザーバに目を向けると、現在利用可能な多くの薬剤では長期保管は可能ではな
く、これは特に陰茎勃起を刺激する薬剤に当てはまることを考慮されたい。長期保管が望
まれる場合、注入されるべき薬剤は典型的には、第1の物質として供給され、注入が実施
される直前に注入用の第2の物質と混合される。したがって、本発明の好ましい一実施形
態によれば、システムのリザーバは、例えば生理食塩水などの注入液を収容するための少
なくとも1つの第1の区画と、例えば第1の区画の注入液と混合するための薬剤、特に乾
燥形態の薬剤を含む、少なくとも1つの第2の区画とを備える。薬剤は粉末形態であって
よく、より具体的には凍結乾燥薬剤であってもよい。具体的には、第2の区画に含まれる
薬剤は、陰茎勃起を刺激するための薬剤である。第1の区画からの物質を少なくとも1つ
の第2の区画のうちの1つまたは複数からの物質と混合するための混合チャンバを設けて
もよい。
【0033】
第2の区画の数は、50以上、特に100以上など、大きい数であってもよい。これは
、陰茎を勃起させる刺激ごとに必要となる薬剤の量は非常に少なく、数マイクログラムで
あるので、スペースの制約に関する具体的な問題とはならない。そのうえ、リザーバは、
恥骨(symphyseal bone)近くなどの、針を含むハウジングから離れた患
者の体内の埋込みに適合されてもよい。患者の恥骨の上に利用可能な空間が多くあり、薬
剤は、適切な導管を通って針の先端にデリバリされることができる。必要に応じて、薬剤
注入が完了した後に、薬剤の残留がないように導管および針を清掃するために純粋な生理
食塩水を注入することができる。このような注入による清掃は、ハウジングの外壁の異な
る貫通領域を通って陰茎刺激に影響を及ぼさない患者の組織に至ることができる。
【0034】
好ましくは、薬剤を含む第2の区画には、第1の区画に対する液密シールが形成され、
第2の区画と第1の区画の間の接続を個々に開くための機構が設けられる。
【0035】
好ましい一実施形態によれば、第2の区画は、プレートの第1の側面に向かって開くよ
うにプレートに取り付けられ、開放機構は、第2の区画がプレートの第1の側面に開口す
るために、プレートの第1の側面に対向するプレートの第2の側面から第2の区画に作用
するように適合される。したがって、第2の区画は、例えば開かれた第2の区画の内容が
生理食塩水などリザーバの第1の区画の内容と混合する混合チャンバへ前方に開くように
、後方側面(プレートの第2の側面)から押されてもよい。より具体的には、第2の区画
は、移動可能な薬剤容器としてプレートに取り付けられてもよく、開放機構は、説明され
たように薬剤容器が薬剤の内容をデリバリするために薬剤容器を移動するように適合され
てもよい。
【0036】
あるいは、プレートは、プレートが回転すると薬剤容器を導管と位置合わせさせるよう
に回転可能であってもよい。したがって、薬剤をこのような導管と位置合わせさせるとき
、薬剤は、例えば導管を介して注入針にポンプ注入された生理食塩水と混合されてもよい
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、第2の区画は、リールに巻き付けられたテープに取り
付けられる。複数列の第2の区画は、テープの巻き付く方向と異なる方向に並設してテー
プに配置されてもよい。このようにして、テープの長さを減少することができる。これは
、テープが、置き換え可能なカセットに含まれる場合に特に好ましい。したがって、テー
プの第2の区画のすべてが空にされると、カセットを置き換えることによってテープを容
易に置き換えることができる。
【0038】
前述のように、リザーバは一般に少なくとも1つの注入針を収容するハウジングの一部
であってよいが、患者の体内に遠隔に埋め込むためにハウジングから分離してリザーバを
配置することが好ましい。
【0039】
リザーバの第1の区画の周縁の少なくとも一区間は、注入液がリザーバに充填されるか
またはリザーバから引き出されると可撓性材料の変形により第1の区画の体積が変化でき
る可撓性材料から作製されてもよい。したがって、リザーバはバルーン・タイプであって
よい。可撓性材料はポリマー膜を備えてもよい。長期劣化を低減させるため、あらかじめ
曲げられた折り目(crease)を有するベローズ構造が好ましい。
【0040】
特定の実施形態によれば、リザーバから液体を引き出すと、リザーバの少なくとも一部
で圧力が減少し、したがって注入針の前方の圧力と比較して負圧となる。例えば、リザー
バの第1の区画はガス・チャンバと液体チャンバとを備えてもよく、前記チャンバは膜、
例えばポリマー膜によって分離される。液体が液体チャンバから引き出されると、それに
応じてガス・チャンバの圧力が減少する。
【0041】
リザーバは、人体の外部から埋め込まれたリザーバに液体を注入するための注入ポート
を有してもよい。このようにして、注入デバイスと共に患者の体内に埋め込まれたリザー
バは、おそらく医師の助力により、適切な時間間隔で容易に補充できるので、比較的小型
のままであってもよい。
【0042】
好ましくは、注入ポートは、典型的には患者の皮膚を通ってリザーバを充填するために
使用される補充シリンジによる貫通に対して自己封止する材料からなる。リザーバの自己
封止注入ポートは、シリンジを用いて充填するために容易にアクセスできるように、患者
の体内に皮下に埋め込まれることが好ましい。
【0043】
遠隔に埋め込まれたリザーバを1つまたは複数の注入針に接続するための1つまたは複
数の導管は、患者の恥骨と患者の下尿生殖隔膜筋膜の間の距離をつなぐのに十分な長さを
有するべきであり、好ましくは恥骨にハウジングを設置する。したがって、導管は10c
m以上の長さを有するべきである。
【0044】
薬剤、特に陰茎勃起を刺激するための薬剤が長期保管時に分解することがあることが既
に指摘されているが、薬剤の分解に別の重要な影響を及ぼすのは保管温度である。いくつ
かの薬剤は、低温または少なくとも中温にて冷蔵庫で保管されなければならない。したが
って、本発明の好ましい一実施形態は、リザーバの少なくとも1つの区画の内容を37℃
未満の温度に保つ冷却デバイスを提供する。これは、前述のように、冷却されるべき薬剤
の量が極めて少ない場合、および、そのうえリザーバ内の薬剤区画が熱的に絶縁されてい
る場合に、比較的小さなエネルギー供給によって達成されることができる。例えば、リザ
ーバは、断熱チャンバ内に備えられてもよい。
【0045】
冷却デバイスによって生成された患者の体熱と交換するための熱交換器を有する冷却デ
バイスを提供することが好ましい。このような熱交換器は、リザーバの内容に悪影響を及
ぼすことができない領域で熱エネルギーを安全に放散するために、冷却デバイスから離れ
て患者の体内に埋め込まれてもよい。
【0046】
冷却デバイスはさまざまな異なるタイプであってよい。第1の実施形態によれば、冷却
デバイスは、互いに反応する少なくとも2つの異なる化学物質を含んでよく、それによっ
て、リザーバ内の内容から引き出された熱エネルギーを消費し、その結果、その内容への
冷却効果が達成される。この2つの化学物質は個別のチャンバ内に提供されてもよく、リ
ザーバ内の内容から引き出された熱エネルギーの量を制御するように、ある一定量の2つ
の異なる化学物質を1つにするための流れ制御デバイスを設けてもよい。
【0047】
第2の実施形態によれば、冷却デバイスは少なくとも1つのペルチェ素子を備えてもよ
い。ペルチェ素子とは、ペルチェ効果に基づいた、電流が通過するときに温度差を生じさ
せる電熱変換器である。ペルチェ素子の一部が冷却すると、異なる部分が加熱する。この
ような熱は、熱交換器によって、または熱が患者の隣接する身体部分に直接的に放散され
るように、熱を生成する特定部分の表面を拡張するだけで、再び除去されることができる
【0048】
第3の実施形態によれば、冷却デバイスは冷蔵庫タイプの構造であってもよい。すなわ
ち、冷却されるべきチャンバ内の熱交換パイプおよび冷却チャンバに吸収された熱エネル
ギーを放散するためのチャンバ外部の熱交換パイプは、冷媒ガスが冷却チャンバを出ると
きに圧縮するための圧縮器と、冷媒ガスが冷却チャンバに再び入る前に膨張させるための
膨張弁と共に設けられる。
【0049】
ここでリザーバから1つまたは複数の注入針に注入液を前進させるためのポンプに目を
向けると、このようなポンプは、手動で駆動されるポンプであってもよいし、自動で駆動
されるポンプであってもよい。手動で駆動されるポンプは、患者の皮膚下に適切に配置さ
れた場合に手動で圧縮され得るバルーンから形成されてもよい。バルーン・タイプのポン
プは、同時に注入液用の、特に生理食塩水用のリザーバとしての役割を果たしてもよい。
ただし、好ましくは、自動で駆動されるポンプが使用される。ポンプのタイプは重要では
ないが、ある特定のタイプのポンプが特に好ましい。より具体的には、埋込み可能なポン
プは好ましくは第1の弁部材と第2の弁部材とを有する弁デバイスを備え、第1の弁部材
と第2の弁部材はそれぞれ、第1の弁部材と第2の弁部材の間に封止接触を形成するよう
に互いに向き合う滑らかな表面を有し、封止接触を維持しながら互いに対して2つの滑ら
かな表面を移動させることにより位置合わせできる異なる液体チャネルをさらに有する。
このタイプのポンプは、WO2004/012806A1により詳細に記載されている。
第1の弁部材および第2の弁部材は、好ましくは、長期にわたる優れた密封性と多くの物
質に対する不活性を示すためにセラミック材料から作製される。
【0050】
このポンプは、またWO2004/012806A1に記載されるように膜タイプのポ
ンプであってよいが、このタイプのポンプに制限されるものではない。膜タイプのポンプ
は、ピストンが移動するとピストンにより移動可能な膜を備えてもよく、ピストンは、ピ
ストンが移動すると第1の弁部材および第2の弁部材を互いに摺動可能に移動するように
弁デバイスに結合される。好ましくは、ポンプは、患者の体内に遠隔に埋め込まれるため
に1つまたは複数の針を収容するハウジングから分離されて埋め込まれる。
【0051】
患者の体内の注入が行われる領域にスペースの制約があるので、1つまたは複数の注入
針を収容するハウジングから離れてシステムのできる限り多くの構成要素を埋め込むこと
は有利である。このような状況で、駆動ユニットは、患者の体内の遠隔の場所から少なく
とも1つの注入針に運動エネルギーを伝達するための機械的な駆動要素を備えてもよい。
この機械的な駆動要素は、患者の体内でかなりの距離をつなぐことができる回転シャフト
を備えてもよい。この回転シャフトは、その回転軸のまわりで回転させると、注入針を直
接的にまたは間接的に移動させてもよい。より具体的には、回転シャフトは、回転させる
と1つもしくは複数の注入針を前進および後退させ、ならびに/または前進/後退のたび
に1つもしくは複数の注入針を横断方向に移動させるウォーム・スクリューの形をとって
もよい。個々の回転シャフトまたはウォーム・スクリューは、個々の注入針ごとに、なら
びに/または一方で1つもしくは複数の注入針の先端を前進および後退させ、他方で1つ
もしくは複数の注入針の先端を横断方向に移動させるために、設けてもよい。最も好まし
くは、回転シャフトまたはウォーム・スクリューは柔軟に屈曲可能であり、したがって患
者の体内で自由に配置されることができる。
【0052】
あるいは、またはさらに、駆動ユニットは、ワイヤが作動すると注入針が移動するよう
に直接的にまたは間接的に注入針と協働する少なくとも1つのワイヤを備えてもよい。し
たがって、ワイヤは、患者の体内で注入部位から離れて位置するその一端で引っ張られて
もよい。好ましくは、ワイヤは、1つまたは複数の注入針をリザーバに接続する同じ導管
を通って延びる。より具体的には、ワイヤを引っ張ることによって、1つまたは複数の注
入針の先端が、異なる貫通領域の第1の領域から第2の領域に、または異なる貫通領域の
うちの単一の領域の第1の貫通部位から第2の貫通部位に、横断方向に移動してもよい。
単一のメッセンジャ・ワイヤ(pulling wire)は、注入針を一方向に移動さ
せるのに十分とすることができるが、注入針を付勢して初期開始位置にまたは異なる開始
位置に戻すためのばね要素または他の任意のプレテンション方式の手段を設けてもよい。
あるいは、単一の次元で注入針を前後に移動させるために2つのメッセンジャ・ワイヤを
設けてもよい。
【0053】
好ましい一実施形態によれば、注入針は二次元の横断方向移動のために配置される。こ
れは、2つのメッセンジャ・ワイヤによって達成されることができ、好ましくは、ワイヤ
を引っ張ることによって反力を提供するように、ばね要素または他のプレテンション方式
の手段と再び協働する。あるいは、二次元平面で少なくとも2つの方向に沿って注入針の
先端を前後させて横断方向に移動するために、3つのメッセンジャ・ワイヤを設けてもよ
い。
【0054】
メッセンジャ・ワイヤはまた、ワイヤを引っ張ることによって注入針を前進または後退
させるように配置されてもよい。また、注入針を付勢してその初期開始位置または異なる
開始位置に戻すためのばね要素または他のプレテンション方式の手段を設けてもよい。
【0055】
あるいは、駆動ユニットは、注入針の先端を前進させるために、および/または注入針
の先端を横断方向に移動させるために、患者の体内の遠隔の場所から少なくとも1つの注
入針に油圧エネルギーを伝達するための油圧式駆動装置を備えてもよい。注入液自体が油
圧エネルギーを供給する油圧媒体として使用されてもよいし、注入液と異なる二次液が使
用されてもよい。
【0056】
さらにあるいは、駆動ユニットは、少なくとも1つの注入針を収容するハウジング内部
に1つまたは複数の電気モータを備えてもよい。この場合、エネルギーは、適切なワイヤ
リングによって患者の体内の遠隔の場所から少なくとも1つのモータに伝達されてもよい
。また、2つの前述の代替形態と同様に、1つまたは複数の注入針の先端を前進および後
退させるために、ならびに1つまたは複数の注入針の先端を横断方向に移動させるために
単一のモータを設けてもよいし、個々の注入針ごとに、および/または一方で1つまたは
複数の注入針の先端を前進させ、他方で1つまたは複数の注入針を横断方向に移動させる
ために、個々のモータを設けてもよい。
【0057】
さらにあるいは、駆動ユニットは、1つまたは複数の注入針の先端を横断方向に移動さ
せるための、および/または1つまたは複数の注入針の先端を前進および後退させるため
の電磁駆動装置を備えてもよい。例えば、電磁駆動装置は、複数の横断方向に離隔された
電磁石の第1の部分と少なくとも1つの電磁石の第2の部分から構成される一群の電磁石
を備えてもよく、電磁石の第2の部分は、電磁石の第1の部分の通電されたものと協働す
る。電磁石の第2の部分は、1つまたは複数の注入針に直接的にまたは間接的に固定的に
接続され、したがって電磁石の第1の部分のうちの1つまたは複数が通電されると、電磁
石の第2の部分、したがって1つまたは複数の注入針が移動する。電磁石の第1の部分お
よび第2の部分の配置は、電磁石の第1の部分が第1の面に配置され、かつ電磁石の第2
の部分が第1の面の前方または後方に移動可能であるようなものであってよい。あるいは
、電磁石の第1の部分は互いに向かい合い、それによって、それらの間に第1の面を画定
してよく、電磁石の第2の部分はこの第1の面内で移動可能であってよい。電磁石の第1
の部分のうちのどれが通電されるかによって、1つまたは複数の注入針が固定された電磁
石の第2の部分がそれに応じて移動する。磁石の第1の部分は、好ましくは、それぞれ磁
気コイルを含む。
【0058】
前述の代替形態のいずれにおいても、少なくとも1つの注入針を遠隔に埋め込まれたリ
ザーバに接続する導管を介して駆動エネルギーを伝達することは有利である。すなわち、
ワイヤまたは回転シャフトの形をとる機械的な駆動要素の場合、そのワイヤ/シャフトお
よび注入液は共通の導管を通って案内されてもよい。共通の導管は、2つの個別の経路を
備えてもよく、その1つはシャフトまたはワイヤ用であり、1つは注入液用である。この
ような共通の導管によって、埋込み時のシステムの扱いおよび配置が容易になる。同様に
、モータまたは電磁駆動装置に電気エネルギーを伝達するためのワイヤリングは、1つま
たは複数の注入針をリザーバに接続する導管を通って案内されてもよい。
【0059】
ポンプおよび/または駆動ユニットが手動で作動されない場合、モータの形をとる駆動
装置は、例えば、ポンプおよび/または駆動ユニットを電気的、磁気的、または電磁的に
作動させるか、またはポンプおよび/または駆動ユニットを油圧的に作動させるように配
置されてもよい。モータは、好ましくは、ポンプまたは駆動ユニットを作動させるように
配置され、それによって、他方の、例えば駆動ユニットまたはポンプを同時に作動させる
。注入デバイスの他の任意のエネルギー消費部分を作動させるためにモータを設けてもよ
い。より具体的には、複数のモータを設けてもよく、例えば注入針ごとに個々のモータを
設けてもよく、および/または一方で注入針の先端を横断方向に移動させ、他方でハウジ
ングの外壁を通して注入針の先端を前進させるために個々のモータを設けてもよい。
【0060】
また、1つまたは複数の注入針を収容するハウジングの埋込みの領域に関してスペース
の制約があるため、ハウジングから分離して患者の身体内にモータを遠隔に埋め込むこと
は有利である。また、1つまたは複数のモータを手動で作動するための作動手段を設けて
もよく、このような作動手段は好ましくは皮下埋込みに適合される。
【0061】
本発明による「モータ」という用語は、手動力以外のエネルギーを用いるものであって
、このようなエネルギーを運動エネルギーもしくは油圧エネルギーもしくは別のタイプの
エネルギーに自動的に変換するか、またはこのようなエネルギーを直接に使用してポンプ
、駆動ユニット、および/もしくはシステム全体の他の部分を作動させるすべてのものを
含む。したがって、例えば電磁的に作動される駆動ユニットの場合、駆動ユニットの一部
がモータの一部も形成することは可能である。
【0062】
患者の体外からモータに導電的にまたはワイヤレスによりエネルギーを伝達するための
結合要素を設けてもよい。例えば、モータは、外部電磁場によってワイヤレスで駆動され
るように配置されてもよい。
【0063】
ポンプ、駆動ユニットおよびこの駆動ユニットを駆動するための駆動装置(モータ)、
ならびにシステムの他の任意のエネルギー消費部分の少なくとも1つにエネルギーを供給
するためのエネルギー源を設けてもよい。例えば、患者の皮膚に取り付けられる1次エネ
ルギー源または電池、特に再充電可能な電池などの、患者の体外で使用するための外部エ
ネルギー源は、ポンプおよび/または駆動ユニットおよび/またはシステムの他の任意の
エネルギー消費部分にエネルギーを供給するために使用されてもよい。エネルギー源は、
特に、これらの構成要素を作動させるための少なくとも1つのモータに接続されてもよい
。ワイヤレスでエネルギーを伝達するための外部エネルギー源は、電磁場、磁場、もしく
は電場などの外部場を発生させるか、または電磁波信号もしくは音波信号などの波動信号
を発生させるように適合されてもよい。
【0064】
エネルギーが、埋め込まれた構成要素にワイヤレスに伝達される場合、ワイヤレスで伝
達されたエネルギーを電気エネルギーに変換するための変換デバイスを設けてもよい。こ
のような変換デバイスは、好ましくは、変換デバイスと患者の体外のエネルギー供給手段
の間の距離および組織の量を最小限にするように患者の皮下に直接設置されるように適合
される。
【0065】
外部エネルギー源の代わりに、またはこれに加えて、システムは埋込み可能なエネルギ
ー源を備えてもよい。このような埋込み可能なエネルギー源は、1つまたは複数の注入針
を収容するハウジングの一部であってもよいし、ハウジング内に含まれてもよいが、患者
の体内に遠隔に埋め込むための、ハウジングから分離された埋込み可能なエネルギー源を
提供することが好ましい。このような埋込み可能なエネルギー源は、好ましくは長寿命電
池などのエネルギー蓄積手段、より好ましくはアキュムレータを備える。アキュムレータ
は再充電可能という利点を有する。好ましくは、アキュムレータは、再充電可能な電池お
よび/またはキャパシタを備える。
【0066】
また、患者の体外の1次エネルギー源からアキュムレータに導電またはワイヤレスによ
りエネルギーを伝達するための結合要素は、デバイスが患者の体内に埋め込まれたときに
患者の体外からアキュムレータを充電するために設けられてもよい。同様に、アキュムレ
ータは、注入デバイスの少なくとも1つのモータに導電および/またはワイヤレスにより
エネルギーを供給するための結合要素を備えてもよい。
【0067】
有利には、後述の制御ユニットの一部とすることができるフィードバック・サブシステ
ムを設けて、エネルギー蓄積手段に保存されるエネルギーに関連するフィードバック情報
を人体の内部からその外部にワイヤレスで送信することができる。次に、フィードバック
情報が、エネルギー送信器によって伝達されるワイヤレス・エネルギーの量を調整するた
めに使用される。このようなフィードバック情報は、人体の内部で受け取られたワイヤレ
ス・エネルギーの量と少なくとも1つのエネルギー消費部分によって消費されるエネルギ
ーの量のバランスとして定義されるエネルギー・バランスに関連するものであってよい。
あるいは、フィードバック情報は、人体の内部で受け取られたワイヤレス・エネルギーの
率と少なくとも1つのエネルギー消費部分によって消費されたエネルギーの率のバランス
として定義されるエネルギー・バランスに関連するものであってよい。
【0068】
好ましくは、少なくとも1つの注入針を介して投与されるべき注入液の量を制御するた
めの制御ユニットが設けられる。押しボタンまたは他のタイプのスイッチを1回作動させ
るなどの、患者から制御ユニットへの単一のコマンドは、制御ユニットに、患者の体内の
2つの異なる場所における薬剤の注入を制御させるのに十分である。制御ユニットは、ポ
ンプ、駆動ユニットおよびモータ、ならびにシステムの他の任意のエネルギー消費部分の
少なくとも1つを制御するために設けられてもよく、システムが内部エネルギー源または
外部エネルギー源を含む場合は、前記エネルギー源を制御するために設けられてもよい。
また、制御ユニットは、好ましくは、患者の体内に埋込み可能であるように、1つまたは
複数の注入針を収容するハウジングから分離される。制御ユニットは、適切な量の薬剤が
適切な時刻に注入部位の特定の1つに投与されるように調整されてもよい。自動投与によ
り、患者の負担は実質的に軽減される。
【0069】
好ましくは、制御ユニットが1つまたは複数の注入針を収容するハウジングに含まれる
か、または前記ハウジングから離れて患者の体内に埋め込まれるかに関係なく、制御ユニ
ットは、患者の体外の外部データ処理デバイスと患者の体内に埋め込まれた制御ユニット
の間でデータを転送するためのデータ転送ポートを有する。このデータ転送ポートによっ
て、患者の変更要求にシステムを適合させるように制御ユニットを監視することが可能に
なる。好ましくは、データ転送ポートは、例えば医師の診察中に制御ユニットと外部デー
タ処理デバイスの間のデータ交換を簡単に実現するように、データ転送のためのワイヤレ
ス転送ポートである。最も好ましくは、制御ユニットは、その適合柔軟性をさらに増加さ
せるためプログラム可能である。外部データ処理デバイスの代わりに、またはこれに加え
て、制御ユニットは、制御ユニットを動作させ始めるように患者が手動で操作するための
外部構成要素を備えてもよい。
【0070】
制御ユニットとは別に、またはその一部として、治療関連のパラメータに関するフィー
ドバックが提供されてもよい。このようなパラメータは、患者の物理的パラメータおよび
/またはシステムの処理パラメータであってよい。このため、このようなパラメータを検
出するために少なくとも1つのフィードバック・センサが設けられる。例えば、フィード
バック・センサは、薬剤レベル、血管内の流量、圧力、電気パラメータ、膨張、距離など
のいずれかに関連する1つまたは複数のパラメータを検知するように適合されてもよい。
【0071】
フィードバック・センサは制御ユニットに接続されてもよく、制御ユニットは、フィー
ドバック・センサからの1つまたは複数の信号に応答して薬剤デリバリを制御するための
制御プログラムを備えてもよい。さらに、またはあるいは、フィードバック・データは、
制御ユニットから外部データ処理デバイスに転送されてもよい。このようなフィードバッ
ク・データが医師の診断に有用なことがある。
【0072】
1つまたは複数の注入針が配設される1つまたは複数のハウジングの1つまたは複数の
壁の貫通領域は、患者の体内の種々の場所に配置されてよい。例えば、貫通領域は、左右
の陰茎海綿体および/または左右の陰茎海綿体を通る2つの深動脈および/または患者の
左右の陰茎海綿体を通る血流を調節する筋組織および/または左右の陰茎海綿体の近傍の
別の種類の組織に隣接して配置されてよい。
【0073】
ハウジングが所定の位置に留まるように陰茎海綿体に1つまたは複数のハウジングを固
設するために、ホルダを使用してもよい。
【0074】
システムの他の構成要素は、好ましくは、患者の恥骨に隣接するなど、遠隔に埋め込ま
れる。前述のように、システムのいくつかの構成要素は皮下に埋め込まれてもよい。皮下
埋込みにより、システムの埋め込まれた部分と体外部分との間のワイヤレス・エネルギー
および/またはデータ転送の実現性が増加する。また、リザーバの注射ポートが皮下に埋
め込まれると、患者の皮膚を貫通する補充針による注入ポートを介してのリザーバの充填
はかなり容易になる。特に、生理食塩水を含むリザーバの区画は頻繁に充填されることが
必要な場合があるが、個々に小用量の薬剤を含む他の区画は充填の必要はない。ただし、
環境によっては、システムの任意の埋込み可能な構成要素が腹部に設置されてもよく、胸
部にすら設置されてもよいことを理解されたい。例えば上述のモータの1つまたは複数を
動作させ始める目的で、または単にシステムの制御ユニットを動作させ始める目的で、患
者によって直接手動で動作させるための作動手段も、皮下に埋め込まれるように設けられ
てもよい。このような作動手段は、患者の体外から患者により手動で動作可能な、皮下に
埋込み可能なスイッチの形をとってもよい。
【0075】
本発明の上記の種々の特徴は、明らかに矛盾していない限り、いかなる方法で組み合わ
せられてもよい。本発明の好ましい実施形態についてより詳細に、かつ添付の図面を参照
して以下に説明する。また、デバイスの全体的な機能が明らかに損なわれない限り、種々
の実施形態の個々の特徴を組み合わせて、または交換して用いてもよい。特に、以下の好
ましい実施形態の説明は具体的には陰茎を勃起させる刺激に関するものであるが、他の用
途も本発明に含まれることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】会陰の筋肉を示す図である。
図2】陰茎の断面図である。
図3】単一の針を含む本発明の第1の実施形態の上面図である。
図4】共通のハウジングに収容された単一の針とモータとを含む、本発明の第2の実施形態の上面図である。
図5】共通のハウジングに2つの針を含む、本発明の第3の実施形態の上面図である。
図6図4および図5の注入デバイスの一部の平面図である。
図7】複合材料から作製された貫通膜の断面図である。
図8】貫通領域にフラップを有する外壁の断面図である。
図9】貫通領域に能動的に開閉可能な扉を有する外壁の断面図である。
図10】別の実施形態による能動的に開閉可能な扉を有する外壁の断面図である。
図11】横断方向および垂直に移動可能な単一の針を含む、本発明の第4の実施形態の側面図である。
図12】第4の実施形態に類似しているが、針を横断方向に移動させるためのさらなるステップを有する、本発明の第5の実施形態の側面図である。
図13】貫通部位の三次元配列を得るための、球状をした、本発明の第6の実施形態を示す図である。
図14】共通のハウジングに横断方向および垂直に移動可能な2つの針を含む、本発明の第7の実施形態の側面図である。
図15】プル・ワイヤにより注入針を前進および後退させる原理を用いる第8の実施形態を示す図である。
図16】プル・ワイヤにより注入針を横断方向に移動させる原理を用いる第9の実施形態を示す図である。
図17】回転シャフトにより針を前進および後退させ、針を横断方向に移動させる原理を用いる第10の実施形態を示す図である。
図18】患者の体内に埋め込まれた、第1の変形形態による本発明のシステム全体を示す図である。
図19】患者の体内に埋め込まれた、第2の変形形態による本発明のシステム全体を示す図である。
図20】患者の体内に埋め込まれた、第3の変形形態による本発明のシステム全体を示す図である。
図21】第1の原理によるシステムのリザーバの一部としての薬剤区画を示す図である。
図22】第2の原理によるシステムのリザーバの一部としての、置き換え可能なカセット内のリールに巻き付けられたテープに取り付けられた薬剤区画を示す図である。
図23図28のテープの一部をより詳細に示す図である。
図24図22の置き換え可能なカセットの動作の原理を示す図である。
図25】第3の原理によるシステムのリザーバの一部としての薬剤区画を示す図である。
図26】断熱チャンバおよび冷却デバイスを含めての、図25の薬剤区画の断面図である。
図27図26の冷却デバイスの原理を熱交換器と組み合わせて示す図である。
図28図26の冷却デバイスの特定の実施形態を示す図である。
図29】患者の体内に埋め込まれた、左右の陰茎海綿体用に個別の針を備えるシステムの一部を示す図である。
図30図29のシステムを概略的に示す図である。
図31】その中に針を前進させることができるチューブを含めて、図30のシステムの一部を示す図である。
図32A】注入針を電磁的に複数の横断方向に移動させるための、第1の実施形態および第2の実施形態を示す図である。
図32B】注入針を電磁的に複数の横断方向に移動させるための、第1の実施形態および第2の実施形態を示す図である。
図32C】注入針を電磁的に複数の横断方向に移動させるための、第1の実施形態および第2の実施形態を示す図である。
図33A】注入針を電磁的に複数の横断方向に移動させるための、第3の実施形態を示す図である。
図33B】注入針を電磁的に複数の横断方向に移動させるための、第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、男性の会陰の筋肉を示す。参照番号1、2、および3はそれぞれ、坐骨海綿体
筋、球海綿体筋、および浅会陰横筋を示す。球海綿体筋は、会陰膜に停止する尿道球の外
側面を陰茎体の最も近位部で囲み、さらに尿道5を囲む尿道海綿体4の背面および左右の
陰茎海綿体6、7を囲む。坐骨海綿体筋1は、陰茎脚を取り巻き、脚の下面および内側面
に、および脚の内側の会陰膜に停止する。球海綿体筋は、会陰の深静脈を介する流出を圧
迫することによって、および血液を球から陰茎体に押し出すことによって、勃起を補助す
るが、坐骨海綿体筋1は、流出静脈を圧迫して血液を陰茎根から陰茎体に押し出すことに
よって、陰茎の勃起を維持する。図2は、陰茎の断面図である。図に示されるように、陰
茎は、背部の対をなす陰茎海綿体6、7および腹部の単一の尿道海綿体という勃起性の海
綿組織の3つの円筒体から構成される。深動脈9、10は陰茎海綿体の中心近くを遠位に
走行し、これらの構造の勃起組織に血液を供給する。陰茎深動脈は陰茎海綿体の勃起組織
の海綿体洞の主血管であり、したがって陰茎の勃起に関係する。陰茎深動脈は、海綿体洞
に直接開口する多数の分枝を生じる。陰茎が弛緩すると、これらの動脈はらせん状になり
、血流を制限する。
【0078】
簡略化を図るため、以下の図では陰茎海綿体6、7のみを表示する。図3は、第1の実
施形態によるシステムの一部の上面図を示す。より具体的には、単一の注入針11はハウ
ジング12内に配置され、針11の先端13は、ハウジング12の外壁15の自己封止ウ
ィンドウ領域14に隣接して位置する陰茎海綿体6または7を突き刺すために、ウィンド
ウ領域14を通って長手方向16に前進および後退することができるように位置決めされ
る。
【0079】
2つのウィンドウ領域14がハウジング12の外壁15に設けられ、1つのウィンドウ
領域14は2つの陰茎海綿体6、7のそれぞれに隣接する。注入針は、駆動ユニットDを
用いて2つのウィンドウ領域14の間で横断方向17に移動可能である。同じ駆動ユニッ
トDまたは異なる駆動ユニットは、注入針11を前進および後退させることができる。こ
のため、注入針11は、長手方向に前進および後退するようにスライド18に取り付けら
れる。導管19は、注入針11を通ってその先端13に注入液を供給するために注入針1
1の一端に接続される。
【0080】
動作の際、注入針11はまず、2つの自己封止貫通ウィンドウ14の1つを貫通するた
めにその先端13を用いて前進し、陰茎を勃起させる刺激のための薬剤を含む注入流体は
、注入針11を通って陰茎海綿体7に注入され、その後、注入針11は再び後退する。注
入針の後退時には、注入針は、その先端13が2つの自己封止ウィンドウ領域14の他方
の前方に達するように、方向17に沿って横断方向に移動され、注入針11は、注入液が
その先端13を通って他方の陰茎海綿体7に注入されることができるように、再び前進し
、次に注入針11は再び後退する。この手順の終了時には、注入針11は、図3に示され
るその初期位置またはそれの近くに戻る。図11および図12に関連してより詳細に説明
するように、次の1回または複数回の注入サイクルは、前の注入サイクルの貫通部位から
横断方向にずらされた貫通部位を介して行われる。
【0081】
図3に示されるシステムの構造は、純粋に機械的なものであってよい。例えば、より詳
細に後述するように、注入液を導管19を通って針11に向かって前進させる圧力は、ば
ね要素と協働して、針11を他方のウィンドウ領域14に前進、後退、および横断方向に
移動させてもよい。したがって、2回分の注入流体が導管19を通って針11に向かって
前進した後、針11は、図3に示されるその開始位置またはそれの近くに自動的に戻る。
【0082】
ただし、駆動ユニットDを用いて針の所望の移動を達成するためにハウジング15内に
1つのモータMまたは複数のモータMを組み込むことも同様に可能である。これを図4
模式的に示す。もちろん、モータMは、エネルギーを供給されなければならず、望ましい
効果を得るように適切な方法で制御される必要がある。これは、図4に具体的に示されて
いない。エネルギーは、好ましくは、患者の体内に遠隔に埋め込まれたかまたは患者の身
体の外部に設けられたエネルギー源からモータMに伝達される。
【0083】
駆動装置Dは、注入針11の先端13が、次に続く注入サイクルにおいて先行する注入
サイクルと比較して異なる部位でウィンドウ領域14を貫通するために、各貫通サイクル
(2回の注入からなる)後に注入針11が開始位置と異なる位置で停止するように構成さ
れることができる。
【0084】
図5は、ハウジング15内に含まれた2つの注入針11を備える点で第1の実施形態お
よび第2の実施形態と異なる第3の実施形態の上面図を示す。したがって、注入液が導管
19を通って2つの注入針11に向かって案内されるとき、両方の針は方向16に沿って
同時に前進および後退し、その結果、注入液の注入がちょうど同じときに行われる。駆動
ユニットDまたは別の駆動ユニットは、次に続く注入サイクル中にウィンドウ領域14が
異なる貫通部位で注入針11の先端によって貫通されるように、注入針11が取り付けら
れたターンテーブル20を方向17に段階的に回転させるために使用されてもよい。また
図5に示されていない1つまたは複数のモータMは、駆動ユニットDの構成要素の1つ
または複数を駆動するために使用されてもよい。加えて、図14に関連してより詳細に説
明するように、いくつかの注入サイクルの後で、注入針11は、次の回数の注入サイクル
が、前の回数の注入サイクルの貫通部位から横断方向にずらされた貫通部位を介して行わ
れるように、横断方向上方または下方に移動される。
【0085】
次に、注入針を横断方向に移動させる案内構造の原理について、図6に関連して説明す
る。このような案内構造は、例えば図5に示される2つの注入針11のそれぞれに使用さ
れてもよいし、図3および図4に示される注入針11の横断方向移動に対して若干修正し
て使用されてもよい。
【0086】
案内構造28は、自己封止ウィンドウ領域14に隣接して堅固に固定され、自己封止ウ
ィンドウ領域14自体は患者の陰茎海綿体7に隣接して埋め込まれる。案内構造28は、
注入針11(図示せず)が案内構造28と協働するように注入針11に堅固に接続された
ガイド・ピン27を備える。注入針11を前進または後退させると、ガイド・ピン27は
、案内構造28に案内され、それによって注入針11を横断方向に移動させ、この横断方
向への移動によりターンテーブル20(図6に示されていない)が回転する。案内構造2
8内の弾性フラップ28a、28bは、注入針11を繰り返し前進および後退させると、
案内構造28全体を通ってガイド・ピン27を案内するのに役立つ。案内構造28は、自
己封止ウィンドウ領域14を通って陰茎海綿体7に至る異なる貫通部位を形成するように
設計される。必要に応じて、案内構造28の軌道は、ガイド・ピン27を図6に示される
その開始位置に戻す復路28cを含んでもよい。このような戻り操作は、ハウジング15
の剛性部分に永久的に固定された戻しばね29によって引き起こされる。
【0087】
同じ構造は、2つのウィンドウ領域14の間で横断方向に単一の注入針11を移動させ
るために、図3および図4に示される実施形態で同様に使用されることができる。もちろ
ん、構造は、2つのウィンドウ領域14の間で克服されるべき、より長い距離に対応する
ように若干適合されなければならない。
【0088】
図7は、ハウジング12の外壁15の自己封止ウィンドウ領域14として使用される貫
通膜の好ましい一実施形態を示す。貫通膜30は、複合材料から作製される。同じ材料は
、他の可撓性の壁部、または別の実施形態に関連して後述する注入ポートにも使用するこ
とができる。図7に示される貫通膜30の複合材料は、自己封止軟質材料30bが含まれ
る体積を画定する外形状付与層30aを構成する。自己封止軟質材料30bは、外形状付
与層30aの貫通中に注入針11によって引き起こされる貫通を流れないような粘度を有
するゲル・タイプとすることができる。単一の外形状付与層30aの代わりに、形状付与
層30aは複数の層を備えてもよい。外形状付与層30aは、好ましくはシリコーンおよ
び/またはポリウレタンからなる。というのは、このような材料は、注入針11による貫
通に関して自己封止性を有するように製造されることができる。
【0089】
図8に示すように、自己封止膜の代わりに、ハウジング12の外壁15のウィンドウ領
域14は1つまたは複数のフラップによって形成されてもよい。弾性を持つ生体適合性材
料から作製された2つのフラップ30’は、スリットを形成するように配置される。この
スリットは通常は閉じられ、注入針11は前進するときにこれを通過できる。注入針11
を前進させると、針は、通常閉じられているフラップ30’を押しのけ、針11を再び後
退させると、フラップ30’は、体液の進入に対する封止を形成するように、通常閉じら
れている位置に戻る。
【0090】
図9は、異なる実施形態を示す。この場合、外壁15の自己封止ウィンドウ14は、機
械的作用によって開くことができる扉30”を備える。図示の実施形態では、扉は、ウィ
ンドウ領域14をその通常位置で閉じられた状態に保つ、弾性を持つ生体適合性材料から
作製されたフラップによって形成される。プル・ワイヤ300は、プル・ワイヤ300を
引っ張ることによって扉を開くことを可能とするために扉30”の一端に付着される。プ
ル・ワイヤ300または扉30”に接続された他の任意の駆動装置は、注入針11に結合
された駆動ユニットの一部を形成する。例えば、図10に示すように、プル・ワイヤ30
0は注入針11に直接付着され、注入針11を前進させると同時に扉30”を持ち上げ、
注入針11が扉30”の下を通過することができ、したがって外壁15を容易に貫通する
ようにされてもよい。扉の材料が弾性を有することにより、プル・ワイヤ300を介して
発揮される引っ張り力などの力が解除されると、扉30”は自動的に閉じる。代わりにま
たはこれに加えて、閉鎖操作は、扉をその閉位置に付勢する少なくとも1つのばね要素に
よって支援されてもよい。
【0091】
図11は、図3および図4に示される第1の実施形態および第2の実施形態に基づく第
4の実施形態の側面図を示す。したがって、単一の注入針11は、2つの貫通領域14の
間で方向17に横断方向に移動可能であるだけでなく、同じ貫通領域14内の異なる貫通
部位21の間でも横断方向に移動可能である。より具体的には、前記異なる貫通領域14
のそれぞれの内部で注入針11の先端が横断方向に移動する方向は、異なる貫通領域14
の間で横断方向に移動する方向と直角をなす。この結果を達成するために、駆動ユニット
Dは、方向16に沿って注入針11を長手方向に前進および後退させ、ターンテーブル2
0を用いて2つの貫通領域14の間で枢動方向17に沿って注入針11を枢動させ、長手
方向16と直角をなす第3の方向22に沿って注入針11を上下させるように構成される
。純粋に機械的な適切な構造がこの機能を実施してよい。ただし、これらの機能の1つお
よび/または残りを実施するために1つまたは複数のモータを設けることもできる。
【0092】
図12は、図11に示される第4の実施形態に類似した第5の実施形態の側面図を示す
図11とは対照的に、注入針11は、2つの貫通領域14の間の横断方向移動方向と直
角をなす方向に、同じ貫通領域14内の異なる貫通部位21の間で横断方向に移動可能で
あるだけでなく、異なる貫通領域14の間の横断方向移動の方向と平行な方向に同じ貫通
領域14内で横断方向に移動可能でもある。言い換えれば、注入針11の先端は、同じ貫
通領域14で二次元に横断方向に移動可能である。
【0093】
図13は、注入針11が球状に湾曲した三次元配列の貫通部位に沿って移動できる第6
の実施形態を示す。この実施形態では、ハウジング12の一部、より具体的にはウィンド
ウ領域14は球状に湾曲し、針11は、方向17aおよび17bに沿って球が回転すると
針11の先端13がウィンドウ領域14の前方の任意の位置に移動できるように、球の内
部に取り付けられる。先端13にとって適切な位置が調整されると、針11は、ウィンド
ウ領域14を貫通するようにスライド18上を前進することができる。球内にスライドを
収容する代わりに、針11が球の外表面に同様に取り付けられてもよい。同様に、注入針
11自体が球の外表面に取り付けられてもよい。方向17a、17bに沿って球を移動さ
せる機構は、ローラまたは磁性物質を用いる機械的構造などの多数の異なるタイプとする
ことができる。
【0094】
図14は、図5に示される第3の実施形態に基づく第7の実施形態を示す。すなわち、
2つの針11は、貫通領域14を介してその先端を前進および後退させるために長手方向
に移動可能であるように、共通のハウジング内に設けられる。注入針11は、各注入サイ
クルで貫通領域14内の注入部位22を変更するように、図5の第3の実施形態と同様に
、ターンテーブル20に取り付けられる。加えて、2つの注入針は、図11および図12
に関連して前述した第4の実施形態および第5の実施形態に類似して、方向22に沿って
上下されることができる。この場合もやはり、その結果、2つの異なる貫通領域14のそ
れぞれの内部で2つの注入針11の先端が横断方向に移動する方向は、2つの異なる貫通
領域14の間の距離の方向と直角をなす。したがって、この実施形態では、図12に示さ
れる第5の実施形態と同様に、2つの注入針11の先端は、同じ貫通領域14において二
次元で横断方向に移動可能である。
【0095】
図15は、プル・ワイヤ101を用いて注入針11を前進および後退させる原理を用い
る第8の実施形態を示す。プル・ワイヤ101は、患者の体内のある場所から遠隔に位置
する端部でワイヤ101を引っ張ることによって注入針11の先端がハウジング12のウ
ィンドウを通って前進するように、ピン102のまわりで方向を変えられる。コイルばね
は、プル・ワイヤ101の引っ張り力が解除されると注入針11が後退するように、反力
を提供する。この原理は、前述および後述の他の実施形態と組み合わせることができる。
コイルばね104の代わりに、注入針11を後退させるための第2のプル・ワイヤを設け
てもよい。ワイヤ101を一方向にまたは他の方向に引っ張ることによって注入針11を
前進または後退させるように、2つのピン102のまわりをループ状に走る単一のプル・
ワイヤ101を使用することも可能である。
【0096】
プル・ワイヤ101および注入液用の導管19は、共通のシース103に案内される。
共通のシース103は種々の機能を有する。第1に、共通のシース103は屈曲区間にお
いてプル・ワイヤ101を支持する。第2に、共通のシース103は、プル・ワイヤ10
1に加えて導管19の埋込みを容易にする。第3に、共通のシース103は、線維化を増
強しないようにプル・ワイヤ101を保護する。
【0097】
図16は、注入液用の導管19と共に共通のシース103内に案内される、遠隔で作動
されるプル・ワイヤ105、106を伴う第9の実施形態を示す。プル・ワイヤ105お
よび106は、ワイヤ105が引っ張られたかまたはワイヤ106が引っ張られたかに応
じて、ターンテーブル20に取り付けられた注入針11が一方向にまたは他の方向に横断
方向に移動されるように、注入針11の両側に直接付着される。2つのワイヤ105、1
06を使用する代わりに、ワイヤのうちの1つは、図15のコイルばね104などのプレ
テンション方式の手段に置き換えられてもよい。加えて、適切なワイヤを引っ張ることに
よって二次元の横断方向移動が達成されることができるように、さらなる方向に注入針1
1を横断方向に移動するためのさらなるワイヤ、具体的には第3のワイヤ(図示せず)を
設けてもよい。
【0098】
あるいは、注入針11が注入針11以外の要素に接続される場合は、プル・ワイヤはこ
のような他の要素に付着されてもよく、その結果、ワイヤのうちの1つまたは複数を引っ
張ることによって他の要素が移動されるかまたは回転されると、それに応じて注入針11
の先端が移動されるようにする。
【0099】
柔軟に曲げ得る長い針が、第1のハウジング内に配置された、第1のハウジングの外壁
を貫通するための先端を備え、他方の端が、遠隔に埋め込まれた第2のハウジング内に配
置される場合、ターンテーブル20を省き、注入針の前端の周囲に規則的な間隔で直接的
にまたは間接的に付着された3つのプル・ワイヤのうち適切なものを引っ張ることによっ
て針の先端の横断方向への正確な移動を達成することができる。
【0100】
図17は、一方で注入針の先端を前進および後退させ、他方で注入針11の先端を横断
方向に移動させる異なる原理を用いる第10の実施形態を示す。プル・ワイヤの代わりに
、回転シャフト107、108が設けられる。回転シャフト107、108を駆動するた
めの駆動装置が、患者の体内のどこかに遠隔に位置する。回転シャフトの前端は、それぞ
れ注入針11上およびターンテーブル20上に直接的にまたは間接的に形成されたラック
111、112の歯と噛み合う、例えばウォーム・スクリューの形をとるスレッディング
109、110を有する。したがって、場合によっては、ウォーム・スクリュー109と
ラック111の協働により、回転シャフト107を回転させることによって、注入針11
は前進または後退する。同様に、回転シャフト108を回転させることによって、ウォー
ム・スクリュー110とターンテーブル20のラック112の協働により、注入針11は
一方向または他の方向に横断方向に移動される。この場合もやはり、回転シャフト107
、108は、注入液用の導管119と共に共通のシース103内に案内される。
【0101】
図16および図17では、プル・ワイヤ105、106および回転シャフト108の操
作により、2つの異なる貫通領域の間で、および/または単一の貫通領域内の第1の貫通
部位から第2の貫通部位に、注入針11の先端を横断方向に移動させることが可能である
【0102】
図18は、前述の第1の実施形態から第10の実施形態のいずれか1つを備えるシステ
ム全体の第1の変形形態を示す。図18に示される変形形態に具体的に示されているのは
図11に関連して説明された単一の注入針11および駆動ユニットDを有するハウジン
グ12である。ハウジング12は、陰茎海綿体6、7に隣接して位置決めされたそのウィ
ンドウ領域14と共に埋め込まれ、そのウィンドウ領域14のうち1つのみが図18に示
されている。駆動ユニットDを駆動するためのモータMがハウジング12内に含まれる。
ハウジング12内のモータMは、制御システムの埋込み可能部分を構成する制御ユニット
によって制御され、制御システムは、制御ユニットCにコマンドおよび他の任意の
種類のデータを送信できる外部データ処理デバイスCをさらに備える。例えば、外部デ
ータ処理デバイスCは、患者の体外から注入サイクルを開始するために使用されてもよ
く、これは、矢印23によって示されるようにワイヤレスで行われる。埋め込まれた制御
ユニットCは、ハウジング12内部のモータMを制御するだけでなく、アキュムレータ
Aからハウジング12内のモータMへのエネルギー供給も制御する。
【0103】
同様に、外部データ処理デバイスCは、埋め込まれた制御ユニットCをプログラム
するために使用されてもよい。また、外部データ処理デバイスCと埋め込まれた制御ユ
ニットCの間でデータを転送するためのデータ転送ポートは、両方向にデータを転送す
るように適合されてもよい。
【0104】
患者の陰茎内部に埋め込まれたフィードバック・センサFは、本明細書では、ハウジン
グ12内部のモータMに接続されるように示されており、同様に、埋込み可能な制御ユニ
ットCに接続されることができる。フィードバック・センサFは、陰茎海綿体内部の薬
剤レベル、陰茎海綿体を通る流量、陰茎海綿体内部の圧力などの、患者の1つまたは複数
の物理的パラメータを検知することができる。電気的パラメータ、膨張、距離などのシス
テムの処理パラメータを検知するように、異なる場所に他のフィードバック・センサを設
けてもよい。
【0105】
針11を区画RおよびRを備えるリザーバに接続する導管19と、電気エネルギー
をエネルギー源Aからハウジング12内部のモータMに伝達するためのワイヤリング24
は、共通の導管25を通って案内される。
【0106】
図18に示されるシステム全体の変形形態では、リザーバは、例えばその中に生理食塩
水が含まれる第1の区画Rと、例えばその中に粉末形態または凍結乾燥形態の薬剤が含
まれる第2の区画Rとを備える。第2のモータMによって駆動されるポンプPは、リ
ザーバRから注入針11に注入液をポンプ注入するように配置される。ポンプPによっ
てポンプ注入された注入液は混合チャンバ26を通過し、混合チャンバ26内には、薬剤
が適切な時間に調整されてリザーバRから放出される。モータMまたは異なるモータ
によって、薬剤が第2のリザーバRから放出されてもよい。モータMは、制御ユニッ
トCによっても制御される。したがって、相対的に大きな第1のリザーバRから混合
チャンバ26までポンプPを介してポンプ注入された注入液は、混合チャンバ26で第2
のリザーバRから放出された薬剤と混合されて、注入針11に達し、それと同時に注入
針11がハウジング12の自己封止ウィンドウ領域14を貫通し、注入液が陰茎海綿体7
に流れ込む。
【0107】
制御ユニットCに加えて、またはその代わりに、ハウジング12内部のモータMおよ
び/またはモータMを起動するための感圧スイッチを皮下に配置してもよい。
【0108】
図18に示す実施形態はさまざまな種類のリザーバのうちの1つを備え得るが、特定の
種類のリザーバについて説明する。リザーバRの容積は、膜31により2つの区間に分
割されている。一方の区間はガスで満たされ、他方の区間は注入液(生理食塩水)で満た
される。注入ポート32を経由して、リザーバRには補給針により注入液が補充される
。リザーバRが充填されると、ガス区間は大気圧、または、過剰圧にある。各注入サイ
クル時、注入液がポンプPによりリザーバRから引き出されると、ガス区間の圧力は大
気圧以下、すなわち、負の相対値に減少する。ポンプPの種類によっては、ポンプPから
リザーバRへの逆流を防止するために単一作用のボール弁を設けることが有利なことが
ある。
【0109】
モータMおよびMにエネルギーを供給するさまざまな方法がある。図18に示される
変形形態では、エネルギーは、モータにより直接使用される際および/またはアキュムレ
ータAを充電する際に患者の体外から供給され、アキュムレータAは再充電可能な電池お
よび/またはキャパシタの形をとってもよい。体外1次エネルギー源Eは、第1の形態の
エネルギーを電気エネルギーなどの第2の形態のエネルギーに変換するエネルギー変換装
置Tに、患者の皮膚100を介して第1の形態のエネルギーを伝達する。電気エネルギー
は、要求に応じて、モータMに2次エネルギーを供給するアキュムレータAを再充電する
ために使用される。
【0110】
外部1次エネルギー源Eは、電磁場、磁場、もしくは電場などの外部場を発生させるか
、または、電磁波信号もしくは音波信号などの波動信号を発生させるように適合されるこ
とができる。例えば、図19に示されるようなエネルギー変換装置Tは、太陽電池として
作用してもよいが、1次エネルギー源Eの特定のタイプの波動信号に適合されてもよい。
エネルギー変換装置Tはまた、温度変化を電気エネルギーに変換するように適合されても
よい。
【0111】
外部1次エネルギー源Eの代わりに、アキュムレータAの代わりの通常の長寿命電池な
どの埋込み可能な1次エネルギー源Eが使用されてもよい。
【0112】
エネルギー信号はまた、エネルギーがワイヤレスで伝達されるか有線で伝達されるかに
かかわらず、エネルギー信号を適切に変調させることにより外部データ処理デバイスC
からの信号を伝送するために使用され、エネルギー信号は、デジタル制御信号またはアナ
ログ制御信号のための搬送波信号を兼ねる。より具体的には、制御信号は、周波数信号、
位相信号、および/または振幅変調信号であってよい。
【0113】
図19は、ハウジング12内部のモータMが不要になるという点においてのみ図18
システムと基本的に異なるシステム全体の第2の変形形態を示す。その代わり、モータM
は、駆動ユニットDを駆動するために使用される。これは、弾力的に曲げ得るウォーム
・スクリューの形をとる回転シャフト33によって達成され、回転シャフト30は、図1
8に示されるシステムのワイヤリング24を置き換える。
【0114】
図20は、純粋に機械的に動作するシステム全体の第3の変形形態を示す。注入液すな
わち生理食塩水を含むリザーバRはバルーン・タイプであり、それによって、リザーバ
としても、患者の体外から手動で圧迫された場合にポンプとしても機能する。リザーバR
内で生成された圧力は、薬剤を含むリザーバRに作用する。ある一定の圧力が加えら
れると、薬剤がリザーバRから混合チャンバ26に放出され、圧力がさらに増加すると
、注入液は、混合チャンバ26に入り、リザーバRから放出された薬剤と混合され、注
入針11に向かって流れ、駆動ユニットDが注入針11を自己封止ウィンドウ領域14を
通って患者の陰茎海綿体に前進させるように注入針11内の圧力を増加させる。圧力が解
除されると、注入針11は、機械的なばね力などにより自動的に後退し、リザーバR
再度圧迫されると2つの自己封止ウィンドウ領域14のうちの第2のものを貫通できる異
なる位置に移動する。2つの注入針11がハウジング12内に設けられるとき、リザーバ
への1回の圧迫操作は、左右の陰茎海綿体両方に薬剤を注入するのに十分である。
【0115】
図21は、どのようにしてリザーバRの複数の区画34内の薬剤が純粋に油圧機械式
の解決方法によって1つずつ放出されることができるかという第1の原理を示す。注入液
がリザーバRから、1つまたは複数の注入針に通じる導管19に向かって付勢されると
き、注入液は最初に、ある一定の圧力を超えたときのみ開くばね付勢ボール弁34によっ
てブロックされる。ボール弁34の前方で増加する圧力は、ステップ弁Vにより複数の区
画35の1つに順次案内される。区画はそれぞれ、ピストン36内部の空洞35として形
成される。ある一定の圧力を超えると、ピストン36は、区画35が混合チャンバ26と
流体連通する位置に押し込まれる。図21に示される状態では、3つのピストン36がこ
のような位置に既に押し込まれている。リザーバR内の圧力がさらに増加すると、圧力
がボール弁34のばね力を超え、リザーバRから導管19に向かって付勢された注入液
が、混合チャンバ26に放出された薬剤を一緒に運ぶ。
【0116】
図22から図24は、複数の小さな薬剤区画35、35a、35bを備えるリザーバR
を実現する第2の原理を示す。薬剤区画はテープ201内に一体的に形成され、テープ
201は第1のリール202に巻き付けられ、前記第1のリール202から巻き戻されて
第2のリール203に巻き付けられることができる。リール202、203およびテープ
201は、リザーバの一部を形成するようにシステム全体に挿入されることができるカセ
ット200内に含まれる。カセット200は好ましくは置き換え可能である。
【0117】
図23で示されるように、例えば粉末形態または凍結乾燥形態の薬剤を含む区画35、
35a、35bは、輸送方向(矢印によって示される)に示される複数列をなして配置さ
れる。ただし、1列の区画35は、他の列の区画35aおよび35bから輸送方向にある
一定の距離ずらされる。したがって、テープ201がリール202からリール203に巻
き付けられると、テープ201は、注入液がリザーバRから1つまたは複数の注入針に
ポンプ注入されるカセット200の一部を形成する導管204を通って案内され、区画3
5、35a、35bは次々と導管204に入る。
【0118】
ハンマー要素または突き刺し要素などの機械的作用によって導管204に入った区画3
5、35a、35bのうちの1つを開くことが考えられるが、図22から図24に示され
る実施形態において区画35を開くには、テープ201をリール203に巻き付ける以外
のさらなる操作は必要ではない。すなわち、図24から分かるように、テープ201が第
1のスリット205を通って導管204に入るとき、スリット205は比較的に広く、2
つの柔らかいシール・リップ206によって閉じられるので、区画35は損傷を受けない
。しかし、テープ201がそのもう一方の側で導管204を出るとき、テープ201は、
弾性でない前端208を有する、スリット205より狭い第2のスリット207を通過し
なければならない。区画35は、したがって、狭いスリット207の各端208の間で滑
ると、途中で導管204を飛び出す。スリット207の柔らかいシール209は、液体が
導管204から漏れるのを防ぐ。
【0119】
カセット200内部の導管204の入口210および出口211はそれぞれ、カセット
200がシステムから取り外されると自動的に閉じ、カセット200がシステムに装着さ
れると自動的に開く弁を含む。これにより、システム全体の残りの構成要素に悪影響を及
ぼすことなくカセット200を置き換えることが可能となる。
【0120】
図25および図26は、複数の小さな薬剤区画35を備えるリザーバRを実現する第
3の原理を示す。図25図26の断面BBによる横断平面図を示し、図26図25
断面AAによるその断側面図を示す。粉末形態または凍結乾燥形態の薬剤を含む区画35
は、回転可能なプレート37に配置される。モータMは、軸38のまわりにプレート3
7を回転させるために設けられる。モータMは、生理食塩水を含むリザーバRを1つ
または複数の注入針に接続する導管39と区画35を1つずつ位置合わせするためにプレ
ート37を段階的に前進させるように制御される。エネルギーは、アキュムレータAから
制御ユニットCを介してモータMに供給される。
【0121】
回転可能なプレート37は固定されたベース・プレート39に取り付けられ、ベース・
プレート39自体は、ベース・プレート39および回転可能なプレート37を外側ハウジ
ング42から熱的に絶縁するハウジング40内に固定的に取り付けられる。冷却デバイス
41は、ベース・プレート39および回転可能なプレート37を取り囲む液体を冷却して
37℃未満の温度に下げるために設けられる。これは、区画36内部の薬剤が過度に迅速
に分解するのを防ぐのに役立つ。アキュムレータAは、冷却デバイス41にエネルギーを
供給する。
【0122】
図27は、冷却されるべき薬剤を含むリザーバRを冷却する一般原理を示す。冷却デ
バイス41は、電熱冷却器、すなわち電気エネルギーを消費するペルチェ効果に基づくも
のであってもよいし、冷蔵庫タイプであってもよい。したがって、熱エネルギーが外側に
放散されることができるように、冷却器41の冷温部分は冷却されるべき側に設置され、
冷却デバイス41の暖かい部分は他方の側に設置される。冷却デバイス41の温暖部分の
拡張表面41aは、熱放散を増加させるのに役立つ。そのうえ、熱交換流体は、放散され
た熱エネルギーを患者の体内の遠隔の場所に伝達し、そこで熱が特定の熱交換表面41c
を介して患者の身体に放散されるように、拡張表面41aに沿って導管41bを通過して
もよい。
【0123】
図28は、リザーバRに含まれる薬剤を冷却する異なる原理を示す。この実施形態で
は、2つの化学物質X1およびX2は、冷却デバイス41のそれぞれの区画に、互いから
離れて含まれる。化学物質X1およびX2は、1つにされると互いに反応し、このような
反応は、周囲から熱エネルギーとして吸収されるエネルギーを消費する。2つのピストン
41d、41eによって、化学物質X1、X2は制御された形で冷却線41fに分配され
、この冷却線は好ましくは、リザーバRを含むハウジング40と接触する。冷却線41
f内で移される化学物質混合物X1-X2は、化学物質X1、X2を含むチャンバに戻さ
れるが、ピストン41d、41eの他方の側に戻される。
【0124】
他の実施形態が図29に示されている。この実施形態では、やはり、2つの個別の針が
設けられ、左右の陰茎海綿体のそれぞれに対して1つの針がある。ただし、前述の実施形
態とは異なり、2つの針はそれぞれ、患者の体内に埋め込まれた自分のハウジング12を
有し、それぞれの自己封止ウィンドウ領域14はそれぞれ、左右の陰茎海綿体に隣接する
。この原理は、2つの針のうちの1つに関して、図30により詳細に示されている。駆動
ユニットDはピストン50を備え、ピストン50には中空の注入針11が付着されている
。ピストン50は、ピストン50の前方の第1のチャンバ51aと、ピストン50の後方
の第2のチャンバ51bとを分離する。第1のチャンバ51aの圧力はポンプPにより付
勢される圧力に一致するが、第2のチャンバ51bの圧力はこれより低い値に維持される
ことができる。第2のチャンバ51bは注入液などの液体で満たされてよく、液体は可撓
体積52に圧入されてもよい。可撓体積52は、強力な反力を生じずに充填するような簡
単なバルーン・タイプとすることができる。
【0125】
可撓体積52の代わりに、導管53によって、第2のチャンバ51bをリザーバR
接続してもよい。したがって、針11を前進させると、液体が第2のチャンバ51bから
導管53を通ってリザーバRに排出され、針11を戻しばね55を用いて後退させると
、液体はリザーバRから導管53を通して第2のチャンバ51bに引き戻される。
【0126】
注入プロセスは以下のように行われる。ポンプPによって第1のチャンバ51a内の圧
力が増加すると、駆動ユニットBのばね55の力に逆らって針11が移動される。したが
って、注入針11の先端13は、ハウジング12の壁15に圧入された自己封止ウィンド
ウ領域14を貫通し、さらにハウジングの前方で増強された線維化を貫通する。戻しばね
55が完全に圧縮され、ポンプPにより増加される圧力がさらに増加すると、第1の戻し
ばね55より強力な第2の戻しばね57に逆らってボール弁56が移動される。このよう
に、圧力が十分高いレベルに保たれている限り、注入液はリザーバRから導管19、中
空の注入針11、針の側面に配置された出口を通って患者の体内にポンプ注入される。圧
力が解除されると、ボール弁56は戻しばね55および57によって閉じられ、次に針1
1は図21に示されるその初期位置に後退する。
【0127】
注入針11がハウジング12の外壁15を通って前進すると、注入針11によって生体
組織を突き刺さないことが有利な場合がある。したがって、図31に示すように、ウィン
ドウ領域14の前方にチューブ58が設置されてもよい。チューブ58の断面形状は、ウ
ィンドウ領域14の断面形状に適合されてもよく、すなわちウィンドウ領域14が長方形
の場合、チューブ58も同様に長方形の断面を有する。
【0128】
チューブ58の出口端は、線維化の増殖が開放領域にまたがるのを防ぐのに十分なほど
大きな開放領域59を有する。線維化は、比較的長い時間が経過した後にウィンドウ領域
14に達するまで、チューブの内表面に沿ってチューブ内をゆっくりと成長する。針11
の先端13は、したがって、システムの埋込み直後に線維化を貫通する必要はない。好ま
しくは、開放領域59は、少なくとも3mmの開口幅を有する。チューブ58の長さは、
4mm~30mmの範囲であってよい。開口幅59およびチューブ58の長さは、チュー
ブ58内に注入された物質が患者の体内に安全に浸透できるように調整されるべきである
。したがって、チューブが長くなるにつれて、その開口幅は大きくなるべきである。
【0129】
図32Aおよび図32Bは、注入針11の先端を2つ以上の異なる方向に移動させる、
すなわち二次元で移動させるための第1の実施形態を示す。より具体的には、図32A
平面図を示し、図32Bは概略的に側立面図を示す。図に示されるように、注入針11が
固定的に取り付けられたプレート60は、フレーム62中に延びる突起61を有し、突起
61はフレーム62内で任意の方向に自由に動く。電磁コイル63は、フレーム62の各
辺に取り付けられ、個々に通電可能である。電磁コイル63は電磁駆動装置の第1の部分
を構成し、突起61は電磁駆動装置の第2の部分を構成するように構成される。したがっ
て、電磁コイルのうちの1つまたは複数が通電されると、電磁場がフレーム62内に形成
され、電磁石の第2の部分すなわち突起61は、それに応じて電磁場でのその位置を調整
する。注入針11がプレート60に固定的に取り付けられているので、注入針11は突起
61と共に移動する。このようにして、注入針11は、前進および後退でき、横断方向に
移動されることもできる。
【0130】
もちろん、注入針11は、異なる形で、例えば電磁コイル63によって画定された面に
図32Bのように並行ではなく)と直角をなして、電磁駆動装置に付着されてもよい。
その結果、注入針は、複数の方向で(前進可能および後退可能ではなく)横断方向に移動
可能である。
【0131】
あるいは、電磁駆動装置は、注入針を任意の横断方向に移動させ、加えて、注入針を前
進および後退させるようなものであってよい。これは、例えば注入針11の先端移動させ
るための第2の実施形態に関連する図32Cに概略的に示される構造によって達成される
ことができる。図32C図32Bに類似した側立面図を示すが、電磁コイル63が単一
の面を画定するのではなく、追加の電磁コイル63を垂直方向に設けることによって上下
に複数の面が画定される。頂面図は図32Aに類似している。このようにして、針11に
固定的に接続された電磁石の第2の部分61は、磁気コイル63のそれぞれの通電に応じ
て三次元のフレーム62内を移動する。
【0132】
図33Aおよび図33Bは、注入針11を複数の方向に移動させるための電磁駆動装置
の第3の実施形態の平面図および側面図を示す。この実施形態では、電磁石の第1の部分
を構成する電磁コイル63は第1の面に配置され、プレート60を介して注入針11に固
定的に接続された突出部61から構成される電磁石の第2の部分は、電磁石の第1の部分
によって画定された面の前方または後方で移動可能である。ただし、この第3の実施形態
では、電磁コイル63は異なる方向に配向される。やはり、個々の電磁コイルの通電に応
じて、電磁石の第2の部分すなわち突出部61は、フレーム62内部に形成された電磁場
でのその位置を調整する。
【0133】
システムの少なくとも一部を患者の体内に埋め込むことによって人間(または動物)を
治療する方法は、皮膚を切るステップと、左右の陰茎海綿体近くの第1の領域を任意切開
するステップと、少なくとも1つの注入針の先端が、ハウジングの外壁を貫通すると、左
右の陰茎海綿体および/もしくは左右の陰茎海綿体の2つの深動脈内に、ならびに/また
は患者の左右の陰茎海綿体への血流を調節する筋組織内に、ならびに/または2つの陰茎
海綿体を勃起させる刺激を可能にする、患者の左右の陰茎海綿体近傍の別の種類の組織内
に貫通できるように、前記切開された領域内に少なくとも1つの注入針を収容する少なく
とも1つのハウジングを設置するステップと、システムの少なくとも一部の埋込み後に少
なくとも皮膚を最後に閉じるステップとを含む。
【0134】
システムの一部が陰茎海綿体から離れて埋め込まれるとき、例えば少なくとも1つのリ
ザーバを患者の体内の離れた第2の領域に設置するために、第1の領域から離れた第2の
領域が任意切開されてもよく、導管は、少なくとも1つのハウジングに収容された少なく
とも1つの注入針にリザーバを接続する。この場合、リザーバを患者の恥骨に隣接して設
置することが好ましい。
【0135】
以下の要素のうちの1つまたは複数は、患者の体内で少なくとも1つの針を収容する1
つまたは複数のハウジングから離れて設置されてもよい。
- 注入デバイスに患者の体内に注入されるべき物質を供給するためのリザーバと、
- リザーバから少なくとも1つの注入針に物質を前進させるためのポンプ(P)と、
- 駆動ユニット(D)またはこの駆動ユニットを駆動する駆動装置、および/または
ポンプ(P)またはシステムの他の任意のエネルギー消費部分を作動するための少なくと
も1つのモータ(M、M)と、
- 少なくとも1つのモータにエネルギーを供給するためのエネルギー蓄積手段(A)
と、
- 接触式にモータにエネルギーを伝達するための、外部エネルギー源(E)またはエ
ネルギー蓄積手段(A)とモータ(M、M)との間の通電結合要素と、
- モータ(M、M)またはエネルギー蓄積手段(A)またはその両方を体外1次エ
ネルギー源に接続するように適合された、非接触式にモータまたはエネルギー蓄積手段ま
たはその両方にエネルギーを伝達するためのワイヤレスの結合要素と、
- モータ(M、M)を制御するための制御ユニット(C1)と、
- 外部データ処理デバイス(C)から制御ユニット(C)にデータをワイヤレス
により転送するためのデータ転送インタフェースと、
- フィードバック・センサ(F)と、
- ワイヤレス・エネルギー変換手段と、
- リザーバ(R)を充填するための注入ポート(32)。
【符号の説明】
【0136】
6、7 陰茎海綿体; 11 注入針; 12 ハウジング;
14 ウィンドウ領域; C 外部データ処理デバイス;
制御ユニット; D 駆動ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図32C
図33A
図33B