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  • 特許-物品および目的物 図1
  • 特許-物品および目的物 図2
  • 特許-物品および目的物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】物品および目的物
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/02 20060101AFI20240918BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240918BHJP
   C22F 1/14 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C22C5/02
C22F1/00 625
C22F1/00 671
C22F1/00 673
C22F1/00 611
C22F1/00 613
C22F1/00 682
C22F1/00 685Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 630C
C22F1/00 686A
C22F1/00 686B
C22F1/14
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022142
(22)【出願日】2023-02-16
(65)【公開番号】P2023138359
(43)【公開日】2023-10-02
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】22163092.4
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョナ・ヴァンノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・シャルボン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-150562(JP,A)
【文献】特開平11-045901(JP,A)
【文献】特開平11-045899(JP,A)
【文献】特開平11-176867(JP,A)
【文献】特開平09-272931(JP,A)
【文献】特表2013-535571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/02
C22F 1/00- 3/02
C23C 14/00-14/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
前記物品は、
重量基準で、73%~77%の間の金、20%~24.5%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.5%~5%の間である、パラジウムおよび/または白金からなる、金合金から作製される、または
前記金合金から作製されたコーティングを備える、
物品
【請求項2】
前記金合金は、重量基準で、73%~77%の間の金、21%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~4%の間である、パラジウムおよび/または白金からなることを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項3】
前記金合金は、重量基準で、73.5%~76.5%の間の金、22.5%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~2.5%の間である、パラジウムおよび/または白金からなることを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項4】
前記金合金は、重量基準で、74%~76%の間の金、23.5%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~1.5%の間である、パラジウムおよび/または白金からなることを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項5】
前記金合金は、パラジウムを含有し、白金を含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項6】
前記金合金は、15~17の間の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項7】
前記金合金は、CIELAB色空間において、-7~1の間、または-5~0の間のa*値、および20~32の間、または22~30の間のb*値を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項8】
前記金合金は、650℃で30分間焼鈍した状態では、35~60HV1の間、または40~55HV1の間の硬度HV1を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品
【請求項9】
時計、または宝飾品の部品であることを特徴とする、請求項に記載の物品。
【請求項10】
基材表面にコーティングを堆積させるための目的物であって、重量基準で、73%~77%の間の金、20%~24.5%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.5%~5%の間である、パラジウムおよび/または白金からなる、金合金から作製されている、目的物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金合金、より詳細には、グリーンゴールド合金に関する。本発明はまた、全体が本合金から作製された、または表面に本合金のコーティングを備える時計を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
有色の18K金合金は、時計の製造に非常に需要が高い。文献において利用可能なグリーンゴールド合金の組成物はすべて、銀、および場合により亜鉛、銅、カドミウム、またはこれら元素のうちのいくつかの組合せ物を含有する。
【0003】
銀を大きな割合で添加することが、可能な限り強い色合いを確保するための主要なパラメータである。したがって、18Kグリーンゴールド合金の最も有望な組成物は、エレクトラムとしても知られている、重量基準で75%のAuおよび25%のAgを有する合金Au750Ag250という組成物である。しかし、銀は、非常に迅速に色褪せ、このことが、この合金カテゴリーの主要な欠点の1つとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目標は、耐色褪せの増強された新規なグリーンゴールド合金を提案することによって、上に挙げた欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、金合金の化学組成が適合される。こうして開発された金合金は、銀、パラジウムおよび/または白金を含む18カラット合金である。
【0006】
より詳細には、金合金は、重量基準で、73%~77%の間の金、20%~24.5%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.5%~5%の間である、パラジウムおよび/または白金を含む。
【0007】
有利には、本発明は、金、銀およびパラジウムからなる、三成分系金合金に関する。場合により、本発明は、イリジウム、レニウムおよびルテニウムから選択される1種または複数の元素を、少量で、すなわち、全元素に関して、0.05重量%以下で含有することができる。
【0008】
パラジウムの添加により、経時的に合金の色褪せを顕著に低減すると同時に、エレクトラムの色合いに類似した色合いを得ることが可能となる。同様の効果は、白金を添加した場合にも観察される。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細説明を一読すると、一層明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、CIELAB色空間における、本発明による合金および先行技術による合金のパラメータaならびにbを示す図である。
図2図2は、本発明による合金および2種の参照合金に関する、時間の関数としての色の変化(ΔE)を示す図である。
図3図3は、本発明による金合金から作製された文字盤を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、より詳細には、腕時計の製造または宝飾品の分野における用途向けの18カラット金合金に関する。すなわち、本発明はまた、本合金から作製される時計、または宝飾品の部品に関する。時計という用語は、中央部、背部、ベゼル、プッシュピース、ブレスレットの連結部、フランジ、文字盤、時計の針、文字盤のインデックス、振動子などのケーシング部品、およびプレート、ブリッジまたはテンプ輪などのムーブメント部品の両方を表す。本発明によれば、前記時計または宝飾品の部品は、全体が前記金合金から作製されるか、または表面に、前記金合金から作製されたコーティングを含む。外部ケーシング部品の場合、該部品は、好ましくは、前記金合金でコーティングされている。内部ケーシング部品の場合、前記部品は、全体が前記金合金で作製されているか、またはコーティングされている。コーティングの場合、例として、基材は、黄銅または金、例えば、18カラットから作製され得る。さらなる具体例は、図3に示されている通り、全体が前記合金から作製された、または前記合金でコーティングされている、文字盤1である。
【0012】
より一般には、前記金合金は、任意の物品の全体に、またはその表面に使用することができる。本発明による金合金の用途の分野はまた、物理蒸着(PVD)などの、コーティングプロセスに使用される目的物を包含する。
【0013】
本発明による金合金は、重量基準で、73%~77%の間の金、20%~24.5%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.5%~5%の間である、パラジウムおよび/または白金を含む。
【0014】
有利には、金合金は、重量基準で、73%~77%の間の金、21%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~4%の間である、パラジウムおよび/または白金を含む。
【0015】
好ましくは、金合金は、重量基準で、73.5%~76.5%の間の金、22.5%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~2.5%の間である、パラジウムおよび/または白金を含む。
【0016】
より好ましくは、金合金は、重量基準で、74%~76%の間の金、23.5%~24.3%の間の銀、パラジウムおよび/または白金であって、これらの2種の元素の全百分率が0.7%~1.5%の間である、パラジウムおよび/または白金を含む。
【0017】
さらに、金合金は、場合により、重量基準で、イリジウム、レニウムおよびルテニウムから選択される1種または複数の元素を0~0.05%(これを含む)の間で含み、0~0.05%の範囲が、このまたはこれらの元素の全百分率を占める。有利には、金合金は、重量基準で、0.0025%のイリジウムを含む。
【0018】
好ましくは、金合金は、上に挙げた割合の、金、銀、パラジウムおよび/または白金、ならびに場合により、イリジウム、レニウムおよびルテニウムから選択される1種または複数の元素からなる。
【0019】
金合金を調製するために、組成物の様々な元素が、鋳造前に溶融される。次に、鋳造インゴットは、チャンネル圧延、フラット圧延、引抜加工、または線引き加工によって成形される。鋳造インゴッドは、数回に分けた10%~80%の間の冷間加工率で、場合により、550℃~750℃の間の温度範囲内で5分間~30分間の時間、行われる中間焼鈍操作で変形される。本明細書のこれ以降の例では、試料は、650℃の温度で30分間、焼鈍される。冷却後、ブランクは、例えば、機械加工によってサイジングされる。機械加工を容易にするために、ブランクを冷間加工状態にすることも考えることができ、機械加工後に、場合により焼鈍操作が行われる。
【0020】
基材表面に前記金合金でコーティングする状況では、堆積プロセスは、物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)プロセスとすることができる。
【0021】
変形および焼鈍後に得られた合金、またはコーティングの形態の合金は、CIELAB色空間(CIE No.15、lSO7724/1、DIN5033Teil7、ASTM E-1164規格による)において、-7~1の間、好ましくは-5~0の間のa値、および20~32の間、好ましくは22~30の間のb値を有し、aおよびb値は、一緒になって、合金の色合いを規定する。さらに、上記の合金は、80~95の間のL値を有し、L値は、一緒になって、合金の色調を規定する。本発明によれば、より詳細には、合金の色合いを規定する、aおよびb値が重要視される。本発明によれば、金合金は、グリーンの色合いを有する。
【0022】
これらの金合金は、冷間加工状態では、35~60HV1の間、好ましくは40~55HV1の間の硬度を有する。これらの金合金は、15~17の間の密度を有する。
【0023】
表1は、エレクトラム参照品である18カラット金合金、および本発明による4種の18カラット金合金の重量組成を示す。測定された色度値および硬度(HV1)もまた、650℃で30分間焼鈍した変形済み試料に関する、ある特定の組成を表1に提示する。色度値Lは、D65光源および視野角10°のKONICA MINOLTA CM-2600d分光光度計を用いて測定した。
【0024】
表1
【0025】
焼鈍した状態では、45~50HV1の間の値で、硬度のばらつきはほとんど観測されない。
【0026】
図1では、パラジウムだけを添加すると、エレクトラムのaおよびb値に類似したaおよびb値で、色合いがわずかに変化することが観測される。
【0027】
図2は、エレクトラムおよび1種の2N 18K金(重量基準で75%の金、16%の銀および9%の銅)である2種の参照試料、および重量百分率で、2%のパラジウムを含む銀およびパラジウムを含む本発明による金合金に関する、16日間にわたる経時的な色調変化であるデルタEを表す。デルタEは、以下の通り、L値に基づいて計算され、式中、
は、時間0における値を指す。
【0028】
【0029】
パラジウムを添加すると、色褪せが有意に低減され、これによって、2N金に匹敵するか、または2N金よりも色褪せが起こりにくくなることに留意されたい。
図1
図2
図3