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特許7557017コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
E04G21/08 ESW
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023111765
(22)【出願日】2023-07-06
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】399105715
【氏名又は名称】株式会社インフォマティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金野 幸治
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-94406(JP,A)
【文献】特開2018-193681(JP,A)
【文献】特開2016-121499(JP,A)
【文献】特開2019-23402(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112012214(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリート内に挿入される振動体を備えたバイブレータと、
作業者が装着する作業者端末と、
前記フレッシュコンクリートの上面の高さを測定する距離計と、
を含むコンクリート締固め管理システムであって、
前記バイブレータは、
前記振動体に接続されたホースと、
前記作業者による前記ホースの把持位置を検出するセンサユニットと、を含み、
前記作業者端末は、
自己位置を推定する自己位置推定部と、
前記自己位置と、前記ホースの把持位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の前記フレッシュコンクリート内への挿入深さを計算する挿入深さ計算部と、を有する
コンクリート締固め管理システム。
【請求項2】
前記センサユニットは、ホースの長手方向に配列された複数の圧力センサを含む
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項3】
前記振動体の挿入深さ又は位置を示す文字又は図形を表示する管理者端末をさらに有する
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項4】
フレッシュコンクリート内に挿入される振動体を備えたバイブレータと、
作業者が装着する作業者端末と、
センサ端末と、
前記フレッシュコンクリートの上面の高さを測定する距離計と、
を含むコンクリート締固め管理システムであって、
前記バイブレータは、
前記振動体に接続されたホースを有し、
前記センサ端末と前記距離計とが前記ホースの略同位置に設置されており、
前記センサ端末は、
自己位置を推定する自己位置推定部を有し、
前記作業者端末は、
前記センサ端末の自己位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算部を有する
コンクリート締固め管理システム。
【請求項5】
複数の前記センサ端末を含み、
前記センサ端末は、他の前記センサ端末との間で前記自己位置を共有する自己位置共有部をさらに有する
請求項4記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項6】
トータルステーションを含み、
前記センサ端末は、前記トータルステーションによる位置測定結果に基づいて前記自己位置を補正する自己位置補正部をさらに有する
請求項4記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項7】
作業者端末において、
自己位置を推定する自己位置推定ステップと、
作業者による、振動体と接続されたホースの把持位置をセンサユニットから取得するステップと、
フレッシュコンクリートの上面の高さを距離計から取得するステップと、
前記自己位置と、前記ホースの把持位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算ステップと、を有する
コンクリート締固め管理方法。
【請求項8】
作業者端末において、
センサ端末の自己位置を、振動体に接続されたホースに設置された前記センサ端末から取得するステップ、
フレッシュコンクリートの上面の高さを、前記センサ端末と略同位置において前記ホースに設置された距離計から取得するステップと、
前記センサ端末の自己位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算ステップと、を有する
コンクリート締固め管理方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムに関し、特にバイブレータを使用した締固め工程を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工における重要な工程として、フレッシュコンクリートを型枠内に流し込み(打ち込み)、そのフレッシュコンクリートに振動を与える(締固め)工程がある。締固めにより、流し込み時にフレッシュコンクリートに混入した気泡を取り除き、フレッシュコンクリートを均質化し、型枠の隅々にまでフレッシュコンクリートを充填することができる。近年では、打ち込んだフレッシュコンクリート内部にバイブレータを挿入することにより締固めを行う方法が広く採用されている。
【0003】
典型的なバイブレータは、例えば棒型又はヘラ型等の形状を有する振動体を備えている。作業者は、型枠内に打ち込まれたフレッシュコンクリートに振動体を挿入し、所定の時間にわたり振動を与える。これを複数箇所で繰り返し実施することで、できるだけ均等な締固めを行うことができる。振動体の挿入深さ等については事前に指示されることが多いが、実際は作業者によるばらつきが生じがちである。作業者はフレッシュコンクリートに挿入された振動体の先端を目視確認することができないため、自身の感覚や経験に大いに依存しつつ深さを決定している。そのため、コンクリートの品質管理という観点では、作業者によるばらつきを抑制することが課題となっていた。
【0004】
特許文献1には、バイブレータにスマートフォン等の端末装置を治具で固定し、端末装置のカメラで撮影した施工現場の画像にバイブレータの拡張現実画像を重畳して端末装置等の画面に表示することを特徴とするシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許7012980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の手法では、スマートフォン等の端末装置を略水平に(つまり、背面カメラが下方すなわちフレッシュコンクリート側、正面ディスプレイが上方すなわちユーザ側を向くように)バイブレータに取り付ける必要がある。しかしながら、このように端末装置を取り付けると、型枠内に配筋されている鉄筋等に端末装置がぶつかりやすくなり、作業性が低下するという問題がある。
【0007】
特許文献1記載の手法には、フレッシュコンクリートに対するバイブレータの挿入深さを精密に把握できないという問題もある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、バイブレータを使用した締固め工程を支援するためのコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態において、コンクリート締固め管理システムは、フレッシュコンクリート内に挿入される振動体を備えたバイブレータと、作業者が装着する作業者端末と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さを測定する距離計と、を含むコンクリート締固め管理システムであって、前記バイブレータは、前記振動体に接続されたホースと、前記作業者による前記ホースの把持位置を検出するセンサユニットと、を含み、前記作業者端末は、自己位置を推定する自己位置推定部と、前記自己位置と、前記ホースの把持位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算部と、を有する。
一実施の形態において、前記センサユニットは、ホースの長手方向に配列された複数の圧力センサを含む。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理システムは、前記振動体の挿入深さ又は位置を示す文字又は図形を表示する管理者端末をさらに有する。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理システムは、フレッシュコンクリート内に挿入される振動体を備えたバイブレータと、作業者が装着する作業者端末と、センサ端末と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さを測定する距離計と、を含むコンクリート締固め管理システムであって、前記バイブレータは、前記振動体に接続されたホースを有し、前記センサ端末と前記距離計とが前記ホースの略同位置に設置されており、前記センサ端末は、自己位置を推定する自己位置推定部を有し、前記作業者端末は、前記センサ端末の自己位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算部を有する。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理システムは、複数の前記センサ端末を含み、前記センサ端末は、他の前記センサ端末との間で前記自己位置を共有する自己位置共有部をさらに有する。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理システムは、トータルステーションを含み、前記センサ端末は、前記トータルステーションによる位置測定結果に基づいて前記自己位置を補正する自己位置補正部をさらに有する。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理方法は、作業者端末において、自己位置を推定する自己位置推定ステップと、作業者によるホースの把持位置をセンサユニットから取得するステップと、フレッシュコンクリートの上面の高さを距離計から取得するステップと、前記自己位置と、前記ホースの把持位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算ステップと、を有する。
一実施の形態において、コンクリート締固め管理方法は、作業者端末において、センサ端末の自己位置を、ホースに設置された前記センサ端末から取得するステップ、フレッシュコンクリートの上面の高さを、前記センサ端末と略同位置において前記ホースに設置された距離計から取得するステップと、前記センサ端末の自己位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算ステップと、を有する。
一実施の形態において、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、バイブレータを使用した締固め工程を支援するためのコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1の使用態様の一例を示す図である。
図3】バイブレータ10のハードウェア構成を示す図である。
図4】作業者端末20のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】作業者端末20の機能構成を示すブロック図である。
図6】挿入深さD3の計算方法を示す図である。
図7】管理者端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
図10】実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11】実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す。
図12】作業者端末20の一例を示す図である。
図13】センサ端末50の機能構成を示すブロック図である。
図14】作業者端末20の機能構成を示すブロック図である。
図15】挿入深さD3の計算方法を示す図である。
図16】管理者端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図17】管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。
図18】実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
図19】実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す図である。
図20】実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す図である。
図21】センサ端末50の機能構成を示すブロック図である。
図22】実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。コンクリート締固め管理システム1は、バイブレータ10、作業者端末20、管理者端末30、距離計40、センサユニット60を含む。
【0013】
図2は、コンクリート締固め管理システム1の使用態様の一例を示す図である。図2に示す作業者は、型枠内に配筋された鉄筋を足場としてコンクリート締固め作業を実施している。作業者は、腕等に作業者端末20を装着し、バイブレータ10を把持してフレッシュコンクリート内に挿入する。バイブレータ10にはセンサユニット60が装着されている。作業者の近くの型枠又は鉄筋上には距離計40、ARマーカ80が設置されている。管理者は、管理者端末30を使用して作業状況を監視している。
【0014】
図3は、バイブレータ10のハードウェア構成を示す模式図である。バイブレータ10は、典型的には振動体11、ホース12、動力源13を含む。
【0015】
振動体11は、例えば棒型又はヘラ型等の形状を有し、動力源13から与えられる動力によって振動する。振動体11は、フレッシュコンクリート内に挿入され、振動することによりフレッシュコンクリートを締め固める。
【0016】
ホース12は、振動体11の支持部材である。ホース12の一端には振動体11が接続され、他端は動力源13に接続される。動力源13が発生する動力は、ホース12を介して振動体11に伝達され、振動体11が振動する。一般にホース12は可撓性を有する。作業者は、ホース12の任意の箇所を把持し、振動体11をフレッシュコンクリート内に挿入する。
【0017】
センサユニット60は、センサ61、センサ制御装置62を含む。センサユニット60は、作業者がホース12を把持した位置D1(振動体11から把持位置までの距離)を示すデータを出力する。位置D1そのものを出力しても良いし、位置D1を計算するためのデータを出力しても良い。
【0018】
典型的には、センサ61は感圧センサである。ホース12の表面等に設置されたセンサ61は、作業者がホース12を把持した際に生じる圧力を検出する。複数のセンサ61をホース12の長手方向に略等間隔(例えば1cm間隔など)で配列し、各センサ61とセンサ制御装置62とを通信可能に接続することにより、作業者がホース12の把持した位置D1を特定するセンサユニット60を構成できる。すなわち、位置D1に設置されているセンサ61が、作業者がホース12を把持したことを検出してセンシングデータを出力すると、センサ制御装置62が、センシングデータを送信したセンサ61を特定し、当該センサ61の位置D1を示すデータを外部に出力する。典型的には、センサ制御装置62はBluetooth(登録商標)等の無線通信により位置D1を示すデータを作業者端末20に送信する。
【0019】
なお、センサ61の種類は上述の感圧センサに限定されるものでなく、作業者がホース12を把持している位置D1を検出できるものであれば任意である。しかしながら、上述の感圧センサ方式は、本実施例が想定するようなホース12を掴む動作との相性が良い。すなわち、動作検出の確実性、位置D1検出の正確性において優れている。また、感圧センサはカバー等で覆うことにより、汚れ、水濡れ等に対して比較的強靭となるためホース12の表面等への設置に適している。なお、曲げに関しては課題を有するが、作業者の動作として振動体11から把持位置の位置D1間は、基本的に直線上になるため、曲げの影響は、ほぼ受けない、あるいは感圧センサの抵抗値の閾値を反応しない程度に調整することで、対処可能である。また、感圧センサは印刷技術で製造でき比較的低コストである点も、導入のしやすさという観点から好ましい。
【0020】
距離計40は、フレッシュコンクリートの上方の任意の位置に設置され、当該位置からフレッシュコンクリートまでの距離D2を計測し、計測結果を外部に出力する。距離計40は、典型的にはレーザー距離計である。例えば、型枠内に配筋されている鉄筋の上に距離計40を下向きに設置すると、距離計40は、設置位置からフレッシュコンクリートの上面までの距離D2を計測し、Bluetooth(登録商標)等の無線通信により作業者端末20に送信する。
【0021】
作業者端末20は、センサユニット60及び距離計40から送られるデータを受信し、受信したデータに基づいて振動体11の挿入深さを算出する。図4は作業者端末20のハードウェア構成を示すブロック図である。作業者端末20は、カメラ21、処理部24、通信部25、ディスプレイ26を有する情報処理装置である。補助センサ23を有しても良い。
【0022】
典型的には、作業者端末20はスマートフォンである。好ましくは、作業者端末20はアームバンド等を介して作業者の腕に交差して、すなわち作業者端末20の長手方向と作業者の腕の長手方向とが略直行するように装着される。こうすることで、作業者端末20の背面のカメラ21の視界が腕によって妨げられづらくなり、後述の自己位置推定処理をスムーズに実行することができる。
【0023】
カメラ21は、現実世界の映像を撮影する。カメラ21が取得する映像は、主にSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)による自己位置推定に利用される。なお、カメラ21に代えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)やToF(Time of Flight)センサ等を採用しても良い。
【0024】
補助センサ23は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)や衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等を含む。補助センサ23は、主にSLAMの精度向上に利用される。
【0025】
処理部24は、CPU(Central processing unit)241、メモリ242等を備えた情報処理装置であり、メモリ242に格納されたプログラムをCPU241が実行することにより所定の機能を実現する。
【0026】
通信部25は、処理部24の指令に従ってセンサユニット60、距離計40、管理者端末30等と通信を行う。
【0027】
ディスプレイ26は、処理部24が出力する情報を表示する。
【0028】
図5は、作業者端末20の機能構成を示すブロック図である。作業者端末20は、自己位置推定部201、挿入深さ計算部203、出力部205を有する。
【0029】
自己位置推定部201は、現実空間における作業者端末20の位置を常時計算する。典型的には、カメラ21が取得した情報に基づいて、SLAM等の公知技術により、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識する。この際、補助センサ23から取得した情報を使用しても良い。
【0030】
自己位置は任意の座標系で表現できる。好ましくは、現実空間内にARマーカ80などの基準物を設置することにより座標系を定義することが可能である。この場合、カメラ21が現実空間内に置かれたARマーカ80を撮影する。ARマーカ80は、典型的には所定のパターンがプリントされた平板であり、そのパターンには原点の位置と座標軸の向きを示す情報がエンコードされている。処理部24は、撮影画像に含まれたARマーカ80を認識及び解析し、座標系の原点と座標軸を定める。あるいは、作業者端末20の起動時の位置を原点として座標系を定義することも可能である。
【0031】
挿入深さ計算部203は、振動体11がフレッシュコンクリートに挿入されている深さ(挿入深さ)D3を計算し、出力部205に出力する。図6を用いて、挿入深さD3の計算方法について説明する。挿入深さD3は、フレッシュコンクリート上面の高さHcと、振動体11の高さHbとの差分を計算することで得られる。
【0032】
(フレッシュコンクリート上面の高さHc)
フレッシュコンクリートの上面は距離計40の下方に位置する。したがって、距離計40の高さHdから、距離計40とフレッシュコンクリートの上面との距離D2を減じることにより、Hcを計算できる。挿入深さ計算部203は、以下の手順によりHd及びD2を取得し、Hcを計算する。
【0033】
距離計40がD2を計測する。挿入深さ計算部203は、通信部25を介して距離計40からD2を取得する。
【0034】
距離計40の高さHdは、典型的には既定値を使用することができる。例えば、距離計40をARマーカ80と同じ高さに設置したり、距離計40と同じ高さで作業者端末20を起動したりといった運用方法を規定することにより、距離計40の高さHdを予め0と決定できる。又は、作業者等が入力する任意の値をHdの既定値として使用しても良い。あるいは、挿入深さ計算部203が、公知の測位技術を使用して距離計40と作業者端末20との距離と方向とを測定し、自己位置推定部201が計算する自己位置に基づいて、距離計40の座標を計算しても良い。
【0035】
(振動体11の高さHb)
作業者の把持位置からホース12が鉛直に延びて振動体11に至っている。したがって、把持位置の高さ(把持位置の座標Phの高さ成分)から、把持位置と振動体11との距離D1を減じることにより、Hbを計算できる。挿入深さ計算部203は、以下の手順によりPh及びD1を取得し、Hbを計算する。
【0036】
センサユニット60がD1を計測する。挿入深さ計算部203は、通信部25を介してセンサユニット60からD1を取得する。
【0037】
把持位置の座標Phは、把持位置と作業者端末20とのオフセットOがわかれば、作業者端末20の座標Ptを起点として計算できる。自己位置推定部201が作業者端末20の座標Ptを計算する。把持位置と作業者端末20とのオフセットOは、典型的には既定値を使用することができる。例えば、作業者端末20の標準的な装着位置(手首など)をルールとして決めておくならば、作業者端末20と把持位置とのオフセットOを概ね想定し既定値として定めておくことができる。又は、作業者等が入力する任意の値をオフセットOの既定値として使用しても良い。挿入深さ計算部203は、作業者端末20の座標PtにオフセットOを加えることにより、把持位置の座標Phを計算する。
【0038】
なお、作業者が片手でホース12を把持する場合、ホース12を把持する方の手首等に作業者端末20を装着する必要がある。作業者が両手でホース12を把持する場合、振動体11に近い位置を把持する側の腕の手首等に作業者端末20を装着するといったルールを定めておくことが好ましい。作業者が両手でホース12を把持すると、作業者がホース12を把持する位置D1(振動体11から把持位置までの距離)も2つ取得される可能性がある。その場合は、上記運用に従って採用すべき値を決定できる。例えば、振動体11に近い位置を把持する側の腕の手首等に作業者端末20を装着する運用であれば、挿入深さ計算部203は、センサユニット60が出力する2つのD1のうち、より振動体11に近い位置で取得されたD1を採用する。
【0039】
図6に示すように、作業者が立っている場合(図6の左側)と作業者がしゃがんでいる場合(図6の右側)とでは、作業者端末20の座標Pt、把持位置の座標Ph、挿入深さD3が変化する。作業者がこのように動いた場合でも、作業者端末20の自己位置推定部201は、ARマーカ80を原点とする自己位置Ptをリアルタイムで更新する。そのため、挿入深さ計算部203も把持位置の座標Phや挿入深さD3をリアルタイムで再計算できる。
【0040】
入出力部205は、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等を出力する。なお振動体11の位置は、把持位置の座標Phおよび把持位置と振動体11との距離D1に基づいて計算できる。
【0041】
入出力部205は、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイ36に文字又は図で表示することができる。例えば、ARマーカ80を原点とする3次元グリッドを生成し、グリッド内にARマーカ80、作業者端末20、振動体11を表す図形オブジェクトを配置する。同時に、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3を数値で表示しても良い。作業者端末20、振動体11の位置は刻々変化しうる。それで、自己位置推定部201や挿入深さ計算部203がデータを生成する頻度に応じ、例えば10fpsで位置情報を更新する。
【0042】
グリッドや図形オブジェクトは、拡大(ピンチイン)、縮小(ピンチアウト)、回転を可能とすることが好ましい。
【0043】
入出力部205は、種々の既定値を設定するためのユーザ入力を受け付けても良い。例えば、距離計40の高さHd、作業者端末20と把持位置とのオフセットOの入力インターフェイスを提供する。
【0044】
入出力部205は、通信部25を介して管理者端末30にこれらのデータを送信しても良い。
【0045】
管理者端末30は、作業者端末20から送られるデータを受信し、作業状況を描画する。図7は、管理者端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。管理者端末30は、処理部34、通信部35、ディスプレイ36を有する情報処理装置である。カメラ31、補助センサ33を備えても良い。典型的には、管理者端末30はタブレットコンピュータである。
【0046】
処理部34は、CPU341、メモリ342等を備えた情報処理装置であり、メモリ342に格納されたプログラムをCPU341が実行することにより所定の機能を実現する。
【0047】
通信部35は、処理部34の指令に従って作業者端末20等と通信を行う。
【0048】
ディスプレイ36は、処理部34が出力する情報を表示する。
【0049】
カメラ31は、現実世界の映像を撮影する。カメラ31が取得する映像は、主にSLAMによる自己位置推定に利用される。なお、カメラ31に代えて、LiDARやToFセンサ等を採用しても良い。
【0050】
補助センサ33は、慣性計測装置(IMU)や衛星測位システム(GNSS)等を含む。補助センサ33は、主にSLAMの精度向上に利用される。
【0051】
図8は、管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。管理者端末30は、入出力部301を有する。自己位置推定部302を備えても良い。
【0052】
入出力部301は、作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の挿入深さD3等をディスプレイ36に文字又は図で表示する。例えば、ARマーカ80を原点とする3次元グリッドを生成し、グリッド内にARマーカ80、作業者端末20、振動体11を表す図形オブジェクトを配置する。同時に、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3を数値で表示しても良い。作業者端末20、振動体11の位置は刻々変化しうる。それで、作業者端末20からデータが送信される頻度に応じ、例えば10fpsで位置情報を更新する。
【0053】
グリッドや図形オブジェクトは、拡大(ピンチイン)、縮小(ピンチアウト)、回転を可能とすることが好ましい。
【0054】
あるいは、入出力部301は、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を現実空間に重畳して表示しても良い。この場合の処理は以下のとおりである。
【0055】
自己位置推定部302は、現実空間における管理者端末30の位置を常時計算する。典型的には、カメラ31が取得した情報に基づいて、SLAM等の公知技術により、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識する。この際、補助センサ33から取得した情報を使用しても良い。
【0056】
自己位置推定部302は、典型的には、現実空間内に設置されたARマーカ80を基準とする座標系で自己位置を表現する。この場合、カメラ31が現実空間内に置かれたARマーカ80を撮影する。処理部34は、撮影画像に含まれたARマーカ80を認識及び解析し、座標系の原点と座標軸を定める。
【0057】
このように、管理者端末30が作業者端末20と同じARマーカ80を利用して座標系を設定することより、管理者端末30と作業者端末20とは同じ座標系を共有することができる。
【0058】
管理者端末30の入出力部301は、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を現実空間に重畳して表示する。例えば、カメラ31で撮影した現実空間の画像内に、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を表す図形オブジェクトを配置する。管理者端末30は、作業者端末20と座標系を共有しているので、管理者は、ディスプレイ36に描画されるオブジェクトを、あたかも現実空間内に配置されているかのように視認することができる。同時に、入出力部301は、作業者端末20の座標Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等を数値で表示しても良い。これらのデータの内容は刻々変化しうる。それで、管理者端末30がこれらのデータを受信する頻度に応じ、例えば10fpsで表示を更新する。
【0059】
入出力部301は、種々の既定値を設定するためのユーザ入力を受け付けても良い。例えば、距離計40の高さHd、作業者端末20と把持位置とのオフセットOの入力インターフェイスを提供する。
【0060】
図9は、実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0061】
S101:作業者端末20が自己位置を認識
作業者端末20の自己位置推定部201が、ARマーカ80を認識して座標系を設定する。SLAM等の公知技術により、当該座標系における自己位置Ptを認識する。
【0062】
S102:距離計40がフレッシュコンクリートまでの距離を計測
距離計40が、設置位置からフレッシュコンクリートの上面までの距離D2を測定し、作業者端末20に送信する。
【0063】
S103:センサユニット60が把持位置を特定
センサユニット60が、作業者によるホース12の把持を検出する。把持位置(振動体11から把持位置までの距離)D1を測定し、作業者端末に送信する。
【0064】
S104:作業者端末20が振動体11の挿入深さを計算及び出力
作業者端末20の挿入深さ計算部203が、以下の手順で挿入深さD3を計算する。
(1)S102で測定された距離D2、S103で測定された距離D1を取得する。
(2)距離計40の設置位置の高さHd、距離D2に基づき、フレッシュコンクリート上面の高さHcを計算する。
(3)S101で測定された自己位置の座標Pt、既定のオフセット値Oに基づき、把持位置の座標Phを計算する。把持位置の座標Ph、距離D1に基づき、振動体11の高さHbを計算する。
(4)フレッシュコンクリート上面の高さHc、振動体11の高さHbに基づき、振動体11の挿入深さD3を計算する。
【0065】
入出力部205が、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイに表示する。及び/又は、管理者端末30に送信する。
【0066】
S105:管理者端末30が作業状況を出力
管理者端末30の入出力部301は、作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の挿入深さD3等を、例えば現実空間に重畳する形でディスプレイに表示する。
【0067】
実施の形態1によれば、鉄筋等への作業者端末20の干渉リスクを大幅に軽減し、作業性を向上させることができる。フレッシュコンクリートに対するバイブレータの挿入深さを精密に把握することも可能である。また、作業者端末20が作業者の腕等に装着され、型枠内に入り込まないため、SLAMによる自己位置の認識精度を保ちやすいというメリットもある。
【0068】
<変形例>
実施の形態1の変形例として、作業者端末20を2台使用する例を開示する。2台の作業者端末20は、アームバンド等を介して作業者の左右の腕(手首など)に1台ずつ装着される。作業者は、任意の片腕でホース12を把持しても良いし、両腕でホース12を把持しても良い。
【0069】
すなわち、コンクリート締固め管理システム1は、2台の作業者端末20を含む。その他の構成要素、すなわちバイブレータ10、管理者端末30、距離計40、センサユニット60については実施の形態1と同様である。
【0070】
2台の作業者端末20の自己位置推定部201は、それぞれARマーカ80等を原点とした座標系における自己位置Ptを認識する。このうち、振動体11に近い方の作業者端末20が、後続の挿入深さ計算処理を実施する。片腕でホース12を把持している場合、通常は把持している方の腕がより振動体11に近くなるためである。両腕でホース12を把持している場合は、いずれの作業者端末20でも挿入深さ計算を実施可能ではあるが、便宜的に振動体11に近い方の作業者端末20がこの処理を実施することとする。典型的には、Ptの高さ成分の値が小さい方の作業者端末が振動体11に近いと推定できる。
【0071】
振動体11に近い方の作業者端末20の挿入深さ計算部203は、振動体11がフレッシュコンクリートに挿入されている深さ(挿入深さ)D3を計算し、出力部205に出力する。
【0072】
D3の計算過程においては、上述の通り、作業者がホース12を把持する位置D1(振動体11から把持位置までの距離)が必要となる。もし作業者が両手でホース12を把持しているとすると、作業者がホース12を把持する位置D1(振動体11から把持位置までの距離)も2つ取得される。その場合は、より振動体11に近い位置で取得されたD1を採用する。
【0073】
振動体11に近い方の作業者端末20の入出力部205が、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイ26に表示する。及び/又は、これらのデータを管理者端末30に送信する。
【0074】
管理者端末30の入出力部301は、振動体11に近い方の作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の挿入深さD3等を、例えば現実空間に重畳する形でディスプレイ36に表示する。
【0075】
実施の形態1の変形例によれば、どちらの腕に作業者端末20を装着すべきかを運用で定める必要がないため、作業者を煩わせることなく、バイブレータの挿入深さを容易に算出することができる。
【0076】
<実施の形態2>
図10は、本発明の実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。コンクリート締固め管理システム1は、バイブレータ10、作業者端末20、管理者端末30、距離計40、センサ端末50を含む。
【0077】
本実施の形態では、バイブレータ10にセンサユニット60は設けられない。代わりに、ホース12にセンサ端末50が装着される。また、本実施の形態では、ホース12に距離計40が装着される。
【0078】
距離計40は、ホース12の任意の位置に固定される。なお、取付位置はフレッシュコンクリート内に埋没しない高さである必要がある。距離計40は、取付位置からフレッシュコンクリートまでの距離D2を計測し、計測結果を作業者端末20に送信する。距離計40は、典型的にはレーザー距離計である。
【0079】
センサ端末50は、振動体11の位置を算出する。センサ端末50のハードウェア構成について説明する。センサ端末50は、カメラ51、処理部54、通信部55を有する情報処理装置である。補助センサ53を有しても良い。典型的には、センサ端末50はスマートフォンである。
【0080】
図11は、実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)、背面図(d)、上面図(e)、底面図(f)である。センサ端末50は、保護ケース57内に格納されており、バンド等の治具を介してホース12に装着されている。センサ端末50の高さ(鉛直方向の位置)は、距離計40の高さと略同じである。センサ端末50は、筐体の長手方向がホース12の長手方向(すなわち鉛直方向)と略一致するように装着される。これにより、型枠内に配筋された鉄筋等とセンサ端末50とが衝突するリスクを抑制し、作業性を向上させることができる。
【0081】
保護ケース57には、センサ端末50の上部(天面側)においては上に向かって先細となる形状のバンパー部571が、センサ端末50の下部(底面側)においては下に向かって先細となる形状のバンパー部572が備えられていることが好ましい。これにより、仮にバイブレータ10を型枠内に下ろしていく過程、又は型枠内から引き上げていく過程において、センサ端末50が鉄筋等に接触したとしても、保護ケース57のバンパー部571、572の形状に沿ってセンサ端末50が鉄筋等を回避するよう誘導されるので、作業性が向上する。
【0082】
なお、同様のバンパー部が距離計40に設けられても良い。又は、センサ端末50と距離計40の両方をカバーするような共通のバンパー部が設けられても良い。
【0083】
カメラ51は、現実世界の映像を撮影する。カメラ51が取得する映像は、主にSLAMによる自己位置推定に利用される。なお、カメラ51に代えて、LiDARやToFセンサ等を採用しても良い。
【0084】
補助センサ53は、慣性計測装置(IMU)や衛星測位システム(GNSS)等を含む。補助センサ53は、主にSLAMの精度向上に利用される。
【0085】
処理部54は、CPU541、メモリ542等を備えた情報処理装置であり、メモリ542に格納されたプログラムをCPU541が実行することにより所定の機能を実現する。
【0086】
通信部55は、処理部54の指令に従って作業者端末20、管理者端末30等と通信を行う。
【0087】
図13は、センサ端末50の機能構成を示すブロック図である。センサ端末50は、自己位置推定部501、出力部505を有する。
【0088】
自己位置推定部501は、現実空間におけるセンサ端末50の位置を常時計算する。典型的には、カメラ51が取得した情報に基づいて、SLAM等の公知技術により、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識する。この際、補助センサ53から取得した情報を使用しても良い。
【0089】
自己位置は、現実空間内に設置されたARマーカ80等を基準とする座標系で定義される。この場合、カメラ51が現実空間内に置かれたARマーカ80を撮影する。ARマーカ80は、典型的には所定のパターンがプリントされた平板であり、そのパターンには原点の位置と座標軸の向きを示す情報がエンコードされている。処理部54は、撮影画像に含まれたARマーカ80を認識及び解析し、座標系の原点と座標軸を定める。
【0090】
出力部505は、自己位置推定部501が計算したセンサ端末50の位置を、作業者端末20に送信する。
【0091】
図12は、作業者端末20の一例を示す図である。作業者端末20は、典型的には頭部装着型の筐体にカメラ21、処理部24、通信部25及びディスプレイ26等を備える。デプスセンサ22、補助センサ23を備えても良い。作業者端末20はいわゆるHMD(Head Mounted Display)であり、例えばHoloLens(登録商標)等が含まれる。
【0092】
カメラ21は、現実世界の映像を撮影する。典型的には、作業者端末20を装着した作業者の視界に相当する範囲を、所定のフレームレートで撮影する。
【0093】
デプスセンサ22は、現実空間に存在する物体に赤外光等を照射し、反射してくるまでの時間を計測することで物体までの距離を測定する。デプスセンサ22は、物体上の多数の点に対して測距を行う(スキャンする)ことで3次元点群データを取得することができる。3次元点群データは、現実世界に存在する物体の形状を示す情報となる。
【0094】
補助センサ23は、加速度又は角速度等を計測するセンサである。加速度又は角速度等は、例えば作業者端末20の移動量、移動方向、移動速度、姿勢(傾き、すなわち視線の向き)等を算出するために使用される。
【0095】
処理部24は、CPU241、メモリ242等を備えた情報処理装置であり、メモリ242に格納されたプログラムをCPU241が実行することにより所定の機能を実現する。
【0096】
通信部25は、距離計40、センサ端末50、管理者端末30との通信を行う。
【0097】
ディスプレイ26は、処理部24が出力する情報を表示する。作業者端末20を装着した作業者は、ディスプレイ26を透過して、又はディスプレイ26に映し出された現実世界を視認するのと同時に、処理部24がディスプレイ26に表示する情報を視認することができる。
【0098】
図14は、作業者端末20の機能構成を示すブロック図である。作業者端末20は、自己位置推定部201、挿入深さ計算部203、出力部205を有する。
【0099】
自己位置推定部201は、現実空間における作業者端末20の位置を常時計算する。典型的には、カメラ21が取得した情報に基づいて、SLAM等の公知技術により、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識する。この際、デプスセンサ22、補助センサ23から取得した情報を使用しても良い。
【0100】
自己位置は、現実空間内に設置されたARマーカ80により定義される。この場合、カメラ21が現実空間内に置かれたARマーカ80を撮影する。ARマーカ80は、典型的には所定のパターンがプリントされた平板であり、そのパターンには原点の位置と座標軸の向きを示す情報がエンコードされている。処理部24は、撮影画像に含まれたARマーカ80を認識及び解析し、座標系の原点と座標軸を定める。
【0101】
本実施の形態では、作業者端末20は、センサ端末50と同じARマーカ80を利用して座標系を設定する。これにより、作業者端末20とセンサ端末50とは同じ座標系を共有することができる。
【0102】
挿入深さ計算部203は、振動体11がフレッシュコンクリートに挿入されている深さ(挿入深さ)D3を計算し、出力部205に出力する。図15を用いて、挿入深さD3の計算方法について説明する。挿入深さD3は、フレッシュコンクリート上面の高さHcと、振動体11の高さHbとの差分を計算することで得られる。
【0103】
(フレッシュコンクリート上面の高さHc)
フレッシュコンクリートの上面は距離計40の下方に位置する。したがって、距離計40の高さHdから、距離計40とフレッシュコンクリートの上面との距離D2を減じることにより、Hcを計算できる。挿入深さ計算部203は、以下の手順によりHd及びD2を取得し、Hcを計算する。
【0104】
距離計40がD2を計測する。挿入深さ計算部203は、通信部25を介して距離計40からD2を取得する。
【0105】
距離計40の高さHdは、センサ端末50の高さと同じとみなすことができる。挿入深さ計算部203は、通信部25を介して自己位置推定部501が計算したセンサ端末50の高さ(センサ端末50の座標Ptの高さ成分)を取得し、Hdとする。
【0106】
(振動体11の高さHb)
【0107】
振動体11の高さHbは、センサ端末50のホース12への取付位置(振動体11からセンサ端末50までの距離)D4がわかれば、センサ端末50の座標Ptを起点として計算できる。センサ端末50の取付位置D4は、典型的には既定値を使用することができる。又は、作業者等が入力する任意の値をD4の既定値として使用しても良い。挿入深さ計算部203は、センサ端末50の高さ(センサ端末50の座標Ptの高さ成分)からD4を減ずることにより、振動体11の高さHbを計算する。
【0108】
図15に示すように、作業者が立っている場合(図15の左側)と作業者がしゃがんでいる場合(図15の右側)とでは、センサ端末50の座標Pt、挿入深さD3が変化する。作業者がこのように動いた場合でも、センサ端末50の自己位置推定部501は、ARマーカ80を原点とする自己位置Ptをリアルタイムで更新する。そのため、挿入深さ計算部203も挿入深さD3をリアルタイムで再計算できる。
【0109】
入出力部505は、ARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3等を出力する。なお振動体11の位置は、センサ端末50の座標Ptおよびセンサ端末50と振動体11との距離D4に基づいて計算できる。
【0110】
作業者端末20の入出力部205は、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイ36に文字又は図で表示することができる。例えば、振動体11を表す図形オブジェクトを現実空間に重畳配置する。作業者端末20とセンサ端末50とは座標系を共有しているので、作業者は、ディスプレイ36に描画されるオブジェクトを、あたかも現実空間内に配置されているかのように視認することができる。同時に、入出力部505は、振動体11の位置、挿入深さD3を数値で表示しても良い。振動体11の位置は刻々変化しうる。それで、挿入深さ計算部203がデータを生成する頻度に応じ、例えば10fpsで位置情報を更新する。
【0111】
入出力部205は、種々の既定値を設定するためのユーザ入力を受け付けても良い。例えば、センサ端末50の取付位置D4の入力インターフェイスを提供する。
【0112】
入出力部205は、通信部25を介して管理者端末30にARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3等を送信しても良い。
【0113】
管理者端末30は、作業者端末20から送られるデータを受信し、作業状況を描画する。図16は、管理者端末30のハードウェア構成を示すブロック図である。管理者端末30は、処理部34、通信部35、ディスプレイ36を有する情報処理装置である。カメラ31、補助センサ33を備えても良い。典型的には、管理者端末30はタブレットコンピュータである。
【0114】
処理部34は、CPU341、メモリ342等を備えた情報処理装置であり、メモリ342に格納されたプログラムをCPU341が実行することにより所定の機能を実現する。
【0115】
通信部35は、処理部34の指令に従って作業者端末20等と通信を行う。
【0116】
ディスプレイ36は、処理部34が出力する情報を表示する。
【0117】
カメラ31は、現実世界の映像を撮影する。カメラ31が取得する映像は、主にSLAMによる自己位置推定に利用される。なお、カメラ31に代えて、LiDARやToFセンサ等を採用しても良い。
【0118】
補助センサ33は、慣性計測装置(IMU)や衛星測位システム(GNSS)等を含む。補助センサ33は、主にSLAMの精度向上に利用される。
【0119】
図17は、管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。管理者端末30は、入出力部301を有する。自己位置推定部302を備えても良い。
【0120】
入出力部301は、作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイ36に文字又は図で表示する。例えば、ARマーカ80を原点とする3次元グリッドを生成し、グリッド内にARマーカ80、振動体11を表す図形オブジェクトを配置する。同時に、振動体11の位置、挿入深さD3を数値で表示しても良い。振動体11の位置は刻々変化しうる。それで、作業者端末20からデータが送信される頻度に応じ、例えば10fpsで位置情報を更新する。
【0121】
グリッドや図形オブジェクトは、拡大(ピンチイン)、縮小(ピンチアウト)、回転を可能とすることが好ましい。
【0122】
あるいは、入出力部301は、ARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を現実空間に重畳して表示しても良い。この場合の処理は以下のとおりである。
【0123】
自己位置推定部302は、現実空間における管理者端末30の位置を常時計算する。典型的には、カメラ31が取得した情報に基づいて、SLAM等の公知技術により、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識する。この際、補助センサ33から取得した情報を使用しても良い。
【0124】
自己位置推定部302は、典型的には、現実空間内に設置されたARマーカ80を基準とする座標系で自己位置を表現する。この場合、カメラ31が現実空間内に置かれたARマーカ80を撮影する。処理部34は、撮影画像に含まれたARマーカ80を認識及び解析し、座標系の原点と座標軸を定める。
【0125】
このように、管理者端末30が作業者端末20と同じARマーカ80を利用して座標系を設定することより、管理者端末30と作業者端末20とは同じ座標系を共有することができる。
【0126】
管理者端末30の入出力部301は、ARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を現実空間に重畳して表示する。例えば、カメラ31で撮影した現実空間の画像内に、ARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3、3次元グリッド等を表す図形オブジェクトを配置する。管理者端末30は、作業者端末20と座標系を共有しているので、管理者は、ディスプレイ36に描画されるオブジェクトを、あたかも現実空間内に配置されているかのように視認することができる。同時に、入出力部301は、作業者端末20のARマーカ80の位置、振動体11の位置、挿入深さD3等を数値で表示しても良い。これらのデータの内容は刻々変化しうる。それで、管理者端末30がこれらのデータを受信する頻度に応じ、例えば10fpsで表示を更新する。
【0127】
入出力部301は、種々の既定値を設定するためのユーザ入力を受け付けても良い。例えば、センサ端末50の取付位置D4の入力インターフェイスを提供する。
【0128】
図18は、実施の形態2にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0129】
S201:作業者端末20が自己位置を認識
作業者端末20の自己位置推定部201が、ARマーカ80を認識して座標系を設定する。SLAM等の公知技術により、当該座標系における自己位置を認識する。
【0130】
S202:センサ端末50が自己位置を認識
センサ端末50の自己位置推定部501が、ARマーカ80を認識して座標系を設定する。SLAM等の公知技術により、当該座標系における自己位置Ptを認識し、作業者端末20に送信する。
【0131】
S203:距離計40がフレッシュコンクリートまでの距離を計測
距離計40が、設置位置からフレッシュコンクリートの上面までの距離D2を測定し、作業者端末20に送信する。
【0132】
S204:作業者端末20が振動体11の挿入深さを計算及び出力
作業者端末20の挿入深さ計算部203が、以下の手順で挿入深さD3を計算する。
(1)S202で測定された位置Pt、S203で測定された距離D2を取得する。
(2)センサ端末50の位置Ptに基づき、距離計40の高さHdを特定する。高さHd、距離D2に基づき、フレッシュコンクリート上面の高さHcを計算する。
(3)センサ端末50の位置Pt、センサ端末50のホース12への取付位置(振動体11からセンサ端末50までの距離)D4に基づき、振動体11の高さHbを計算する。
(4)フレッシュコンクリート上面の高さHc、振動体11の高さHbに基づき、振動体11の挿入深さD3を計算する。
【0133】
入出力部205が、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイに表示する。及び/又は、管理者端末30に送信する。
【0134】
S205:管理者端末30が作業状況を出力
管理者端末30の入出力部301は、作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の挿入深さD3等を、例えば現実空間に重畳する形でディスプレイに表示する。
【0135】
実施の形態2によれば、鉄筋等へのセンサ端末50の干渉リスクを抑制するとともに、干渉した場合においても容易に回避可能な保護ケースを儲けることにより、作業性を向上させることができる。フレッシュコンクリートに対するバイブレータの挿入深さを精密に把握することも可能である。
【0136】
<実施の形態3>
図19は、本発明の実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す図である。コンクリート締固め管理システム1は、バイブレータ10、作業者端末20、管理者端末30、距離計40、複数のセンサ端末50、トータルステーション70を含む。
【0137】
実施の形態2との主な相違点の1つは、センサ端末50を複数含む点である。センサ端末50は、SLAM処理が滞ることなどにより自己位置の推定に失敗し、一時的に自己位置を見失うことがある。これをロストという。ロストはセンサ端末50の位置推定精度を低下させる大きな要因である。そこで、本実施の形態では、ロストによる位置推定精度低下を抑制すべく、ロストが発生した場合に他のセンサ端末50から自己位置を教えてもらう仕組みを導入する。
【0138】
実施の形態2との他の相違点は、トータルステーション70を含む点である。トータルステーション70が、複数のセンサ端末50のうち1つを追尾して正確な位置を把握することにより、システム全体の自己位置推定精度を維持及び向上させる。
【0139】
図20は、実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)、背面図(d)、上面図(e)、底面図(f)である。ホース12に対し、複数のセンサ端末50が略同じ高さに取り付けられる。そのうち1つのセンサ端末50の保護ケース57にはバンパー部571、572が設けられている。このように、少なくとも1つのセンサ端末50の保護ケース57にはバンパー部571、572を設けることにより、複数のセンサ端末50や距離計40が鉄筋等を回避するよう誘導することができる。
【0140】
なお、バンパー部571、572が他のセンサ端末50の保護ケース57に設けられても良い。又は、複数のセンサ端末50をカバーするバンパー部や、複数のセンサ端末50と距離センサ40とをカバーするバンパー部が設けられても良い。
【0141】
図21は、センサ端末50の機能構成を示すブロック図である。センサ端末50は、自己位置推定部501、出力部505に加え、空間データ統合部507、自己位置共有部509、自己位置補正部511を有する。自己位置推定部501、出力部505の機能については実施の形態2と同様であるため説明を省略する。
【0142】
空間データ統合部507は、他のセンサ端末50と通信を行って、複数のセンサ端末50の空間データを統合する。一例として、現実空間内にセンサ端末50a及びセンサ端末50bが存在する場合を想定する。親機として振る舞うセンサ端末50aは、自己(センサ端末50)が認識した空間データSaを、子機として振る舞うセンサ端末50bに送信する。子機であるセンサ端末50bは、センサ端末50aが認識した空間データSaと、自己(センサ端末50b)が認識した空間データSbとのパターンマッチングを行い、両者の空間データを統合した統合空間データSiを生成する。空間データの統合処理の具体的なプロセスについては、例えば特許6733927号に開示されているため説明を省略する。
【0143】
子機であるセンサ端末50bの空間データ統合部507は、親機であるセンサ端末50aの空間データ統合部507に、生成した統合空間データSiを送信する。これにより、センサ端末50aとセンサ端末50bとの間で統合空間データSiが共有される。以降、センサ端末50aとセンサ端末50bとは統合空間データSiを用いて自己の位置を認識する。すなわち同じ座標系で自己位置を保持する。
【0144】
なお、ここでは子機が1台である例を示したが、本発明はこれに限定されず、子機は複数台であっても良い。この場合、子機それぞれにおいて上述の一連の処理が実行される。
【0145】
自己位置共有部509は、現実空間内に存在する他のセンサ端末50に対し、所定の間隔で自己位置を送信する。例えば、現実空間内にセンサ端末50a及びセンサ端末50bが存在する場合、センサ端末50aは、自己位置Paをセンサ端末50bに対し送信し、センサ端末50bはPaを一定期間保持する。同様に、センサ端末50bは、自己位置Pbをセンサ端末50aに対し送信し、センサ端末50aはPbを一定期間保持する。ここで、自己位置Pa及びPbは、空間データ統合部507による空間データ統合処理の結果、同じ座標系で表現されたものとなっている。そのため、センサ端末50a及びセンサ端末50bは、互いの存在位置を示す座標を共有することができる。
【0146】
自己位置共有部509は、自機でロストが発生したことを検知すると、現実空間内に存在する他のセンサ端末50に対しロスト信号を送信する。ロスト信号を受信した当該他のセンサ端末50の自己位置共有部509は、ロストを起こしたセンサ端末50に対し、当該機の存在位置を通知する。
【0147】
例えば、現実空間内にセンサ端末50a及びセンサ端末50bが存在し、センサ端末50aにおいてロストが発生した場合を想定する。センサ端末50aの自己位置共有部509は、センサ端末50bの自己位置共有部509に対しロスト信号を送信する。センサ端末50bの自己位置共有部509は、センサ端末50aから事前に共有されていた自己位置Paのうち最新のものを、センサ端末50aの自己位置共有部509に対し送信する。センサ端末50aの自己位置共有部509は、受信したPaを自己位置とみなす。これにより、センサ端末50aは、例えば挿入深さの計算等の処理を、ロストが発生したとしても中断することなく実行し続けることが可能となる。
【0148】
自己位置補正部511は、トータルステーション70から得られる位置情報に基づいて自己位置を補正する。以下にその手順を示す。トータルステーション70は、複数のセンサ端末50のうち1つの位置を随時測定し、測定値をそのセンサ端末50の自己位置補正部511に送信する。自己位置補正部511は、自己位置推定部501がSLAMにより算出した自己位置を、トータルステーション70による測定値で単に上書きしてしまっても良い。一般に、SLAMによる推定値よりもトータルステーションによる測定値の方が精度が高いためである。又は、SLAMにより算出された自己位置を、トータルステーション70による測定値を利用して補正しても良い。例えば、SLAMにより算出された自己位置推定値と、トータルステーション70から受信した測定値と、の誤差が所定のしきい値を超えた場合に、当該誤差を打ち消す補正を施すことができる。あるいは、ロストが発生した場合に、トータルステーション70による測定値を利用して自己位置を特定することとしても良い。
【0149】
なお、トータルステーション70の座標系は、センサ端末50の座標系と一致するよう予めキャリブレーションがなされているものとする。
【0150】
作業者端末20、管理者端末30の機能については実施の形態2と同様であるため説明を省略する。
【0151】
図22は、実施の形態3にかかるコンクリート締固め管理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0152】
S301:作業者端末20が自己位置を認識
作業者端末20の自己位置推定部201が、ARマーカ80を認識して座標系を設定する。SLAM等の公知技術により、当該座標系における自己位置を認識する。
【0153】
S302:複数のセンサ端末50が自己位置を認識
複数のセンサ端末50の自己位置推定部501が、ARマーカ80を認識して座標系を設定する。SLAM等の公知技術により、当該座標系における自己位置を認識する。
【0154】
S3021:複数のセンサ端末50が空間データを統合及び自己位置を共有
各センサ端末50は、各センサ端末50の空間データを統合した統合空間データを共有する。また、自己位置を他のセンサ端末50との間で共有する。親機となるセンサ端末50は、当該統合空間における自己位置Ptを作業者端末20に送信する。
【0155】
S3022:トータルステーション70による自己位置の補正
各センサ端末50は、トータルステーション70から得られる位置情報に基づいて自己位置を補正する。この処理は、このタイミングに限らず随時繰り返し実行されうる。
【0156】
S3023:他のセンサ端末50による自己位置の回復
センサ端末50においてロストが発生した場合、他のセンサ端末50からの情報共有により自己位置を回復する。
【0157】
S3024:トータルステーション70による自己位置の回復
センサ端末50においてロストが発生した場合、トータルステーション70から得られる位置情報により自己位置を回復する。
【0158】
S303:距離計40がフレッシュコンクリートまでの距離を計測
距離計40が、設置位置からフレッシュコンクリートの上面までの距離D2を測定し、作業者端末20に送信する。
【0159】
S304:作業者端末20が振動体11の挿入深さを計算及び出力
作業者端末20の挿入深さ計算部203が、以下の手順で挿入深さD3を計算する。
(1)S3021で測定された位置Pt、S303で測定された距離D2を取得する。
(2)親機となるセンサ端末50の位置Ptに基づき、距離計40の高さHdを特定する。親機となるセンサ端末と距離計40とが同じ高さに設置されていれば、Ptの高さ=Hdとみなせる。高さHd、距離D2に基づき、フレッシュコンクリート上面の高さHcを計算する。
(3)センサ端末50の位置Pt、センサ端末50のホース12への取付位置(振動体11からセンサ端末50までの距離)D4に基づき、振動体11の高さHbを計算する。
(4)フレッシュコンクリート上面の高さHc、振動体11の高さHbに基づき、振動体11の挿入深さD3を計算する。
【0160】
入出力部205が、ARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の位置、挿入深さD3等をディスプレイに表示する。及び/又は、管理者端末30に送信する。
【0161】
S305:管理者端末30が作業状況を出力
管理者端末30の入出力部301は、作業者端末20から受信したARマーカ80の位置、作業者端末20の位置Pt、振動体11の挿入深さD3等を、例えば現実空間に重畳する形でディスプレイに表示する。
【0162】
本実施の形態によれば、複数のセンサ端末50が互いの位置情報を共有し合うことにより、又はトータルステーション70を導入することにより、ロストが発生した場合であっても迅速に自己の位置情報を復元することができる。
【0163】
本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、構成要素を追加し、変更し、又は削除することができる。また、上述の複数の実施の形態を組み合わせることも可能である。例えば、実施の形態1と実施の形態2を組み合わせることができる。実施の形態1と実施の形態3を組み合わせても良い。
【0164】
本発明を構成する各処理手段は、ハードウェアにより構成されるものであってもよく、任意の処理をCPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現するものであってもよい。また、コンピュータプログラムは、様々なタイプの一時的又は非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば有線又は無線によりコンピュータに供給される電磁的な信号を含む。
【符号の説明】
【0165】
1 コンクリート締固め管理システム
10 バイブレータ
11 振動体
12 ホース
20 作業者端末
21 カメラ
22 デプスセンサ
23 補助センサ
24 処理部
241 CPU
242 メモリ
25 通信部
26 ディスプレイ
201 自己位置推定部
203 挿入深さ計算部
205 入出力部
30 管理者端末
31 カメラ
33 補助センサ
34 処理部
341 CPU
342 メモリ
35 通信部
36 ディスプレイ
301 入出力部
302 自己位置推定部
40 距離計
50 センサ端末
51 カメラ
53 補助センサ
54 処理部
541 CPU
542 メモリ
55 通信部
56 ディスプレイ
57 保護ケース
501 自己位置推定部
505 出力部
507 空間データ統合部
509 自己位置共有部
511 自己位置補正部
60 センサユニット
61 センサ
62 センサ制御装置
70 トータルステーション
80 ARマーカ
【要約】
【課題】バイブレータを使用した締固め工程を支援するためのコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】コンクリート締固め管理システムは、フレッシュコンクリート内に挿入される振動体を備えたバイブレータと、作業者が装着する作業者端末と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さを測定する距離計と、を含む。バイブレータは、前記振動体に接続されたホースと、前記作業者による前記ホースの把持位置を検出するセンサユニットと、を含み、前記作業者端末は、自己位置を推定する自己位置推定部と、前記自己位置と、前記ホースの把持位置と、前記フレッシュコンクリートの上面の高さと、に基づいて前記振動体の挿入深さを計算する挿入深さ計算部と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22