(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】コイル及び当該コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 5/04 20060101AFI20240918BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240918BHJP
H01F 5/06 20060101ALI20240918BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20240918BHJP
H01F 41/10 20060101ALI20240918BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01F5/04 E
H01F5/00 F
H01F5/06 R
H01F41/12 B
H01F41/10 C
H01F41/04 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023120370
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2021547438の分割
【原出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】102019103895.2
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュールマイアー, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレス, フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ナサル, ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ドレスプリング, アンネリーゼ
(72)【発明者】
【氏名】プロクス, ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ルクス, ヘルベルト
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-097270(JP,A)
【文献】特開2013-222895(JP,A)
【文献】米国特許第05428337(US,A)
【文献】特開2004-165418(JP,A)
【文献】特開2006-049931(JP,A)
【文献】特開平11-126717(JP,A)
【文献】特開2001-102220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/04
H01F 5/00
H01F 5/06
H01F 41/12
H01F 41/10
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の材料から成り管壁(6)を有する管(2)を備えるコイル(1)であって、前記管(2)は誘導部(7)を備え、前記誘導部(7)において前記管壁(6)にはギャップ(4)が配置されており、前記ギャップ(4)は前記誘導部(7)における前記管壁(6)を螺旋形にしており、前記管(2)は2つの接触部(8)を備え、前記接触部(8)において前記管壁(6)はそれぞれ1つの電気接続部に形成されており、
前記管(2)は2つの接続部(10)を有し、前記接続部(10)の各々は、前記2つの接触部(8)のうちの一方を前記誘導部(7)に接続しており、
前記接続部(10)の各々は、前記管(2)の長手軸に対して垂直な方向において、それぞれの前記接触部(8)よりも短く、前記接触部(8)は平坦である、コイル(1)。
【請求項2】
コア(11)を備える、請求項1に記載のコイル(1)。
【請求項3】
前記管(2)はプラスチック(9)中に埋め込まれている、請求項1又は2に記載のコイル(1)。
【請求項4】
前記プラスチック(9)は、磁性粉末、磁性粒子、又は、他の磁性材料と混合されている、請求項3に記載のコイル(1)。
【請求項5】
EPコア(11)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル(1)。
【請求項6】
前記管(2)は0.2mm~50mmの外径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のコイル(1)。
【請求項7】
前記接触部(8)はそれぞれ1つの平坦な面を有し、前記面はそれぞれ1つの半田付け可能な接続部を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載のコイル(1)。
【請求項8】
前記接触部(8)の各々は、前記長手軸に対して垂直に延びる2本のアームを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のコイル(1)。
【請求項9】
共通のハウジング内に配置された、請求項1~8のいずれか1項に記載のコイル(1)を少なくとも2つ備えるモジュール。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のコイル(1)の製造方法であって、
a.導電性の材料から成り管壁(6)を有する管(2)を準備するステップ
b.前記管(2)の誘導部(7)にギャップ(4)を生成するステップであって、前記誘導部(7)の前記ギャップ(4)は前記管壁(6)を螺旋形にするステップ、及び、前記管の少なくとも2つの部分を接触部(8)に形成するステップ
を含み、
前記ステップb.の部分ステップにおいて、前記接続部(10)を形成するために前記管壁(6)の領域が除去されることにより、前記管の前記接触部(8)に凹部が形成され、
前記ステップb.の更なる部分ステップにおいて、前記管壁(6)の前記接触部(8)のうち最初の部分ステップにおいて除去されなかった領域が、平坦化される、方法。
【請求項11】
レーザープロセスが、前記ギャップ(4)を生成するため、及び、前記接触部(8)に形成するために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記管(2)の前記接触部(8)の前記凹部、及び、前記誘導部(7)の前記ギャップ(4)は、単一の方法ステップで共に生成される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップb.において、先ず、前記管(2)に沿って複数の誘導部(7)が生成され、前記複数の誘導部(7)にそれぞれ1つのギャップ(4)が生成され、前記ギャップ(4)がそれぞれの前記誘導部において前記管壁(6)を螺旋形に形成するよう、コイルストランドが生成され、
2つの誘導部(7)の間にそれぞれ1つの接触部(8)が形成され、前記接触部(8)は、前記コイルストランドの分離の後、2つの隣接する誘導部(7)へのそれぞれ1つの電気接続部を形成する、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記コイル(1)はEPコア(11)を備える、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
更に以下のステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。
- 複数のコイルストランドを生成し、複数のコイルストランドをプラスチック(9)中に埋め込むステップであって、コイルストランドは互いに平行に配置されているステップ
【請求項16】
コア(11)が前記コイルストランドに配置されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスチック(9)は、磁性粉末、磁性粒子、又は、他の磁性材料と混合されている、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
更に以下のステップを含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コイルストランドを、当該コイルストランドの長手軸(3)に対して横方向に及び/又は並行に分離するステップ
【請求項19】
共通のハウジング内に請求項9に記載のコイル(1)をそれぞれ少なくとも2つ備えるモジュールの製造方法であって、前記コイル(1)のそれぞれは、導電性の材料から成り管壁(6)を有する管(2)を備え、前記管(2)は誘導部(7)を備え、前記誘導部(7)において前記管壁(6)にはギャップ(4)が配置されており、前記ギャップ(4)は前記誘導部(7)における前記管壁(6)を螺旋形にしており、前記管は1つの接触部(8)を備え、前記接触部(8)において前記管壁(6)は電気接続部に形成されており、以下のステップを含む方法。
- 前記管(2)のそれぞれに沿って複数の誘導部(7)が生成され、前記誘導部(7)にはそれぞれ1つのギャップ(4)が生成され、前記ギャップ(4)はそれぞれの前記誘導部において前記管壁を螺旋形にするよう、少なくとも2つのコイルストランドを生成するステップであって、2つの誘導部の間にそれぞれ1つの接触部が形成され、前記接触部は、前記コイルストランドの分離の後、2つの隣接する誘導部(7)へのそれぞれ1つの電気接続部を形成するステップ
- 前記接触部(8)を平坦化するステップ
- 前記コイルストランドを平行に配置するステップ
- 前記コイルストランドを、前記ハウジングを形成するプラスチック中に埋め込むステップ
- 前記プラスチックによって接続された前記コイルストランドを、前記コイルストランドの中心軸に対して横方向に延びる分離線(12)に沿って、前記モジュールへと分離するステップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の材料から成る管を有するコイル、及び、当該コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路の小型化の過程で、小さな電力損失、大きな通電容量及び信頼性の高い長寿命を有する小さな誘導部品を提供することは、興味深い。
【0003】
特にワイヤーコイルの場合、弱点は、外部接触のために必要とされる接触要素へのワイヤーの接合部であり得る。大抵の場合に溶接部位又は半田付け部位として実現される接合部は、銅、スズ若しくはニッケルを含有する使用合金に起因して、又は、酸素による汚染に起因して、少なくとも僅かに増大した抵抗を有する可能性がある。不正確に為された接触においては、更に、抵抗が大幅に増大している可能性がある。それにより、大きな電力損失を引き起こす大きな接触抵抗が生じる可能性がある。それにより、この部位においても増大した熱負荷が生じる可能性があるが、これは、軽微な場合はコイルの故障に、重大な影響を有する場合は火災に、それぞれつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、改良された特性を有するコイルを提供することである。更に、本発明の課題は、コイルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、請求項1に記載のコイルによって解決される。コイルの更なる実施形態及び当該コイルの製造方法は、更なる請求項から見て取ることができる。
【0006】
導電性の材料から成り管壁を有する管を備え、前記管は誘導部を備え、前記誘導部において前記管壁にはギャップが配置されており、前記ギャップは前記誘導部における前記管壁を螺旋形にしており、前記管は2つの接触部を備え、前記接触部において前記管壁はそれぞれ1つの電気接続部に形成されている、コイルが提案される。
【0007】
開口を有する細長い中空体を管と称することができ、当該開口は、中空体の第1の端部から、中空体全体を通って、第1の端部に向かい合っている第2の端部まで延びている。管は、その中心軸に対して対称であることができ、当該中心軸は、第1の端部における底面の中心から第2の端部における底面の中心まで延びている。一実施形態において、管は、円形、楕円形又は長方形の断面を有することができる。他の断面も可能である。
【0008】
螺旋形の構造を、螺旋と称することができる。螺旋は、特に、コイルの巻回を形成することができる。
【0009】
管は、特に、管壁に螺旋形のギャップを備えることができ、それにより、コイルの巻回は管から形成される。管は、導電性の材料から成る。導電性の材料と見なされるのは、104S/mを超える導電率を有する材料、特に105S/mを超えるか又は106S/mを超える導電率を有する材料である。非常に高い導電率を有する材料、例えば、銅、アルミニウム、銀又は金のような金属が、そのために好適であり得る。同様に、管の出発材料として、炭素鋼、特殊鋼、合金鋼又は工具鋼のような工業用鋼が好適であり得る。
【0010】
管は、誘導部と、少なくとも1つの接触部と、を備える。誘導部は、ギャップにより形成され螺旋によって、インダクタンスを形成し得る。誘導部及び接触部は、管壁の材料から一体に形成されている。したがって、誘導部を接触部と接合するために、半田のような接合パートナーは必要とされない。むしろ、誘導部及び接触部は、管壁の対応する構造化を通じて形成され、その際、管材料を介して互いに接合されたままであり得る。
【0011】
コイルは、インダクタンスをコネクタと接続するために内部の接続部位を必要としないという利点を有する。むしろ、誘導領域及び接触領域は、一体的に形成することができる。コイルは、インダクタンスをコネクタと接続するために内部の接続部位を必要とするコイルよりも、小さな全抵抗を有する。更に、内部接点を省略することにより、さもなければ潜在的な内部接点において生じるであろう熱的な及び機械的な負荷もなくなり、それにより、コイルの欠陥に対する脆弱性が低減される。
【0012】
そのために、管は、断面において丸い必要はないが、例えば、楕円形、正方形、長方形、多角形、丸められた角を有する正方形、丸められた角を有する長方形又は丸められた角を有する多角形であることができる。正方形の断面は、所定の高さ又は幅において利用可能な組立スペースを最適に利用しつくすという利点を提供する。
【0013】
コイルの使用目的に応じて、管の底面は平面であってもよい。すなわち、底面を画定する管の広がりは高さ方向への広がりと比較して大きく、高さは小さくてもよい。あるいは、かなりの高さを有する場合、管は小さな底面を有することができる。コイルが、例えば狭いハウジング内に組み付けられた回路基板上に取り付けられる場合、平面状の平坦な形状は有利であり得る。それとは逆に、回路基板自体の上に僅かなスペースしか提供され得ない場合には、小さな底面を有するが、それに対して顕著な高さを有する、管形状が有利である可能性がある。
【0014】
更に、コイルは、磁気コアを備えることができる。例えば強磁性コアを用いることにより、コイル内の磁束密度を高め、コイルのインダクタンスを増大させることができる。コアに適した材料は、金属(ニッケル亜鉛、マンガン亜鉛及びコバルト)並びに他の合金であり得る。ここで、コアは、専らコイルの内部に配置されたコアにのみ限定されるのではなく、モジュール式のコイルハウジングの一部としてコアを一体的に形成するコア(複数)も含む。モジュール式のコイルハウジングを有するコイルの実施形態は、コイルの電磁適合性を改善することができる。例えばEPコアをハウジングとして使用することにより、とりわけ高周波の用途において、ハウジングによる電磁遮蔽を改善することができ、したがって、電磁適合性を高めることができる。
【0015】
更に、管は、とりわけ機械的な影響からだけでなく、温度及び化学物質による影響からも管を保護するために、プラスチック中に埋め込むことができる。プラスチックとしては、エポキシ樹脂、フェニル樹脂だけでなく、シリコーンも適している。管がプラスチック中に埋め込まれることにより、コイル部品は、例えばピック・アンド・プレース・プロセスにおいて自動装着機械の助けを借りて取り付けられるのに、より適している。
【0016】
プラスチックには、例えば鉄粉又は磁性ナノ粒子のような磁気特性を有する粉末を混入することができる。プラスチックに磁性粒子を添加することにより、コイルのインダクタンスを増大させることができ、電気的な特性を改善することができる。プラスチック中の磁性粒子の割合を介して、インダクタンスを適合させることができる。コイルは更に、プラスチック中に埋め込まれる場合にも、ある割合の磁性粉末を含むかどうかにかかわらず、コイルのインダクタンスを増大させるために、磁気コアを備えることができる。コイルをプラスチック中に、特に磁気特性を有するある割合の粉末を含むプラスチック中に埋め込むことにより、とりわけ高周波の用途においても、部品の電磁遮蔽を改善することができ、電磁適合性を高めることができる。
【0017】
更に、コイルは、0.2~50mmの外径を有することができる。好ましくは、コイルの外径は、0.5~20mmの範囲にあることができる。この大きさは、回路基板上での適用に好適なコイルを供給するのに特に適している。外径は0.2mm未満であるべきではなく、好ましくは0.5mm未満であるべきではない。なぜなら、さもなければ、かなりの技術的困難を伴う自動部品ハンドリングと結び付くであろう、そのような小さなコイルが、製造されることになるからである。外径は、50mm以下、好ましくは20mm以下であるべきである。なぜなら、さもなければ、管からのコイルの製造が不経済であると思われるからである。
【0018】
接触部は、半田付け可能な接続部を形成する平坦な面を備えることができる。それに応じて、コイルは、特に、例えば回路基板の導電路上に半田付けされるように設計することができる。
【0019】
本願の更なる態様は、少なくとも2つのコイルを備えるモジュールに関する。コイルは、特に、上述したコイルであることができる。
【0020】
少なくとも2つのコイルは、共通のハウジング内に配置されている。ハウジングは、2つのコイルが埋め込まれたプラスチックによって形成することができる。2つのコイルは、空間的に互いに平行に配置することができる。
【0021】
有利には、コイルは、電気的に個別に接触されることができ、モジュール内で互いに接続されないように、配置される。代替的な実施形態では、モジュール全体に所望のインダクタンスを与えるために、コイルは電気的に並列に又は直列に相互接続することができる。このようにして、モジュール全体が個々のコイルよりも高い又は低いインダクタンスを有するように、複数のコイルからモジュールを組み立てることが可能である。
【0022】
モジュールを用いることにより、回路基板に多数のコイルを装着する時間を短縮でき、したがって、製造プロセスにおけるサイクルタイムの短縮につなげることができる。モジュールが、多数の個々のコイルの代わりに取り付けられることにより、例えばピック・アンド・プレース機械によるコイルの組み付けの際、複数の個々のコイルの代わりに1つのモジュールだけが、回路基板上で位置決めされれば良い。したがって、モジュールは、当該モジュールが組み込まれる後続のプロセスを簡略化することができる。
【0023】
更に、1つのモジュール内に複数のコイルを配置することにより、複数の個々のコイルを並べて配置する場合と比較して、スペースが節約される。利用可能なスペースが非常に小さい用途、例えばスマートフォンのようなモバイル機器用の回路基板の場合、このスペースの節約は、本質的な利点であり得る。更に、個々に埋め込まれたコイルの代わりにモジュールを使用する場合、ハウジング材料を節約することができる。
【0024】
本願の更なる態様は、コイルの製造方法に関する。コイルは、特に、先述したコイルであり得る。
【0025】
当該方法は、以下のステップを含む。
a.導電性の材料から成り管壁を有する管を準備するステップ、及び
b.前記管の誘導部にギャップを生成するステップであって、前記誘導部の前記ギャップは前記管壁を螺旋形にするステップ、及び、前記管の少なくとも2つの部分を接触部に形成するステップ
【0026】
この場合、誘導部のインダクタンスは、ギャップを生成することによってはじめて生じ得る。ギャップは、レーザーによって生成される切断ギャップであり得る。接触部の形状は、同様にレーザーを用いて、特にギャップの生成を伴うレーザープロセスにおいて、生成され得る。
【0027】
誘導部へのギャップの生成だけでなく、管の接触部への凹部の生成にも、レーザープロセスが適している。レーザープロセスは、柔軟に使用可能であり、高速であるという利点を有する。更に、レーザープロセスは、非接触で作動し、僅かな残留物しか残さないので、機械的な応力を生成しないという利点を有する。ギャップを生成するための更なる代替例は、例えば、フライスプロセス、ソーイングプロセス又はウォータージェット切断であり得る。
【0028】
上述したステップb.は、更なる部分ステップを備えることができ、その際、管壁の領域が除去されることにより、管の接触部に凹部が形成される。管の接触部の凹部、及び、誘導領域のギャップは、単一の方法ステップで共に生成され得る。それに応じて、ステップb.全体は、単一のプロセスステップで、例えばレーザー切断によって生じ得る。
【0029】
ステップb.の更なる部分ステップにおいて、管壁のうち最初の部分ステップにおいて除去されなかった領域が、平坦化され得る。この領域は、例えば回路基板の導電路上に半田付けされ得る平坦な電気接続部に形成され得る。平坦化は、所望の位置に、例えばパンチによって圧力を印加することによって行われ得る。
【0030】
更に、ステップb.において、先ず、管に沿って複数の誘導部が生成されることによりコイルストランド(Spulenstrang)を生成することができ、当該複数の誘導部にはそれぞれ1つのギャップが生成され、当該ギャップはそれぞれの誘導部において管壁を螺旋形にし、2つの誘導部の間にはそれぞれ1つの接触部が形成され、当該接触部は、コイルストランドの分離の後、電気接続部を形成する。そのようなコイルストランドにより、製造におけるコイルの取り扱いを最適化することができる。例えば、複数のコイルを同時に取り扱うことができ、これは、製造におけるサイクルタイムの短縮につながり得る。更に、1つの管に複数の誘導部を生成することにより、材料を節約することができる。
【0031】
付加的な部分ステップにおいて、コイルはEPコアを備える。それにより、コイルのインダクタンス及びコイルの電磁適合性を増大させることができる。
【0032】
複数のコイル又はコイルストランドをプラスチック中に埋め込み、それによってパッケージを形成することができる。コイル又はコイルストランドは、この時点で既に磁気コアを備えることができる。ここで、コイルストランドを、埋め込みの前に互いに平行に配置することが有利である。複数のコイルストランドが、同時にかつ個別にではなく埋め込まれることにより、製造プロセスは加速され得る。プラスチックは、機械的な影響、並びに、温度及び化学物質による影響から、コイルを保護する。プラスチックには、磁気特性を有する粉末又は磁性ナノ粒子を混合することができる。プラスチックに磁性粒子を添加することにより、コイルのインダクタンスを増大させることができ、また、プラスチック中の磁性粒子の割合を介して適合させることができる。
【0033】
コイルストランド又はコイル内に磁気コアを配置することが有利であり得る。これは、コイル又はコイルストランドのインダクタンスを増大させ得る。更に、プラスチックへの埋め込み前にコイルストランド内にコアを配置することにより、磁気構成要素をも含み得るプラスチック中に埋め込まれた、磁気コアを有するコイルを製造することが可能である。それにより、コイルのインダクタンス及び電磁適合性を増大させることができる。
【0034】
複数の平行なコイルストランドをパッケージに埋め込んだ後、コイルは、コイルストランドの中心軸に対して横方向に且つ平行に分離され得る。ここでは、分離線をコイルの接触部を通じて導くことが有利である。それにより、パッケージは、個々のコイルに分離される。パッケージを、最初に横方向に、続いて平行に分離することも、最初に平行に、続いて横方向に分離することも、可能である。
【0035】
更なる態様は、モジュールの製造方法に関する。この場合、複数の平行に配置されたコイルストランドを備えるパッケージは、ストランドの中心軸に対して横方向に分離され得る。軸に平行な個々のコイルへの分離は行われない。
【0036】
モジュールは、共通のハウジング内に少なくとも2つのコイルを備え、コイルのそれぞれは、導電性の材料から成り管壁を有する管を備え、管は誘導部を備え、誘導部おいて管壁にはギャップが配置されており、ギャップは誘導部における管壁を螺旋形にしており、管は接触部を備え、接触部において管壁は電気接続部に形成されている。当該モジュールの製造方法は、以下のステップを含む:
- 管のそれぞれに沿って複数の誘導部が生成されるように少なくとも2つのコイルストランドを生成するステップであって、誘導部にはそれぞれ1つのギャップが生成され、ギャップはそれぞれの誘導部において管壁を螺旋形にし、2つの誘導部の間にそれぞれ1つの接触部が形成され、接触部は、コイルストランドの分離の後、2つの隣接する誘導部へのそれぞれ1つの電気接続部を形成するステップ、
- コイルストランドを平行に配置するステップ、
- コイルストランドを、ハウジングを形成するプラスチック中に埋め込みステップ、及び
- プラスチックによって接続されたコイルストランドを、コイルストランドの中心軸に対して横方向に延びる分離線に沿って、モジュールへと分離するステップ
【0037】
以下において、本発明が、実施例の概略的な図示に基づいて、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1b】管の可能な第2の実施形態の空間表現を示す。
【
図3】コイルストランドからコイルを製造する際の中間製品の空間表現を示す。
【
図4】その接触部が開かれ平坦化されたコイルの空間表現を示す。
【
図5】
図4のようなコイルの空間表現を示すが、当該コイルは、磁気コア(シリンダコア)を備えると共に、プラスチック中に埋め込まれている。
【
図6】一体化されたコア(EPコア)を有する取り外し可能なハウジング内に配置されたコイルの空間表現を示す。
【
図7】パッケージを形成するためにプラスチック中に埋め込まれた複数のコイルストランドの空間表現を示す。
【
図8】プラスチック中に埋め込まれ、コイルストランドの中心軸に対して横方向に分離された複数のコイルの空間表現を示す。
【
図9】プラスチック中に埋め込まれ、すぐに使用可能な個別部品であるコイルの空間表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
同一の要素、類似の又は明らかに同一の要素には、図面において同一の参照符号が付されている。図面及び図面中の大きさの比率は、縮尺どおりではない。
【0040】
図1a及び1bには、それぞれ、丸い断面及び丸み付けされた正方形の断面を有する管2が示されている。管2は開口を有する細長い中空体であり、当該開口は、中空体の第1の端部から、中空体全体を通って、第1の端部に向かい合っている第2の端部まで延びている。管2は、その中心軸3に対して対称であることができ、当該中心軸3は、第1の端部における底面の中心から第2の端部における底面の中心まで延びている。一実施形態において、管2は、円形、楕円形、長方形又は多角形の断面を有することができる。他の断面も可能である。
【0041】
管2は、0.2~50mmの外径を有することができる。好ましくは、管2の外径は、0.5~20mmの範囲にあることができる。この大きさは、回路基板上での適用に好適なコイルを製造するのに特に適している。その厚さが管2の内半径と外半径との間の距離によって決定される管壁6は、使用される管2に応じて大きく異なることができ、1mm未満の厚さが加工のために有利であり得る。外半径に沿って中心軸3の方向に、管2の外被面5が延びている。管2は、第一に導電性の材料から成る。
【0042】
管2は、コイルの製造に使用される出発材料である。コイルの製造方法が、コイルの製造における中間製品を示す
図1~3を参照して説明される。
図4並びに
図5、6、8及び9は、コイル1の可能な実施形態を示している。
【0043】
製造プロセスの過程で、
図1aに示された管2は、最初にコイルストランドに構造化され得る。
図2は、コイルストランドを示している。その際、管2は、特にレーザープロセスによって構造化されることができ、当該プロセスでは、管2内に誘導部7及び接触部8が形成される。誘導部7と接触部8は、管2に沿って交互に配置されている。
【0044】
誘導部7には、管6を貫通すると共に管壁6を螺旋形にする、ギャップ4が形成される。それにより、誘導部7のインダクタンスが形成される。接触部8は、コイルストランドの分離の後、電気接続部を形成する。接触部8には、管2の構造化中に凹部が形成され、その際、管壁6の一部が除去される。
【0045】
コイルストランドによって、製造におけるコイルの取り扱いが最適化される。例えば、複数のコイルを同時に取り扱うことができ、これは、製造におけるサイクルタイムの短縮につながる。更に、管2に複数の誘導部7を生成することによって、材料を節約することができる。
【0046】
誘導部7は、接触部8を介して互いに一体的に接続されており、互いの間に不要な接触抵抗を有さない。
【0047】
コイルストランドの異なる誘導部7は、異なる又は同一のインダクタンスを有することができる。したがって、管2から異なるコイルを生成することが可能であり、それらは、それぞれインダクタンスが異なることができ、したがって異なる用途に適している。インダクタンスは、例えば、ギャップ4によって形成された巻回の数によって、又は、巻回の幅に対応する、管2の周りの1回転の後の中心軸3の方向におけるギャップ4の間隔によって、変化させることができる。
図2の実施例では、図示されたギャップ4は同一であり、したがって個々の誘導部7のインダクタンスも同一である。
【0048】
図3には、コイルストランドからコイルを製造する際の中間製品の空間表現が示されている。コイルストランドは、コイルストランドの中心軸3に対して横方向に延びる分離線に沿って分離された。
【0049】
コイルは、導電性の材料から成る管2を備え、外被面5に沿って且つ管2の長手軸3の周りに延びるギャップ4が生成され、それによって誘導部7が形成される。代替的な実施形態においては、管2の全体が、単一の誘導部7と、これに隣接する2つの接触部8のみが得られるように構造化され得る。それに応じて、管2は、
図3に示された中間製品に構造化されることができるが、その際、管2は、適切な長さに切断されなければならない。
【0050】
接触部8と誘導部7は、接続部10によって互いに接続されている。接触部8、接続部10及び誘導部7は、構造化された管壁6から一体的に形成されている。接続部10は、十分に幅が広いので、コイル1の抵抗にとっては重要でない。
【0051】
図4は、接触部が平坦化された後のコイル1を示している。誘導部7の間にある管2の接触部8は、平坦化された。接触部8を平坦化することによって、電気的接触を可能とするのに適した面として、電気接続部が生成される。
図4に示された実施形態は、例えば、半田付けプロセスによって例えば回路基板の導電路上に接触されるのに適している。
【0052】
しかしながら、接触部8の構成は、図示された実施形態に限定されない。特に、接触部8の形状は、ハウジング形状に適合させることができる。
【0053】
図5は、
図4に示されたコイル1を示しており、当該コイル1には、付加的に磁気コア11が設けられた。更に、コイル1はプラスチック9中に埋め込まれており、当該プラスチック9は、ある割合の磁性粒子を含むことができる。例えば強磁性コア11を用いることにより、コイル1内の磁束密度を高め、コイル1のインダクタンスを増大させることができる。
【0054】
図6は、
図4に示されたコイルがEPコア11と接続された代替的な実施形態を示しており、当該EPコア11は一体的にハウジングも形成している。EPコア11は、引き続いて接着され得る2つの半体から成っている。EPコア11により、コイル1は、特に高周波の用途において、電磁的に遮蔽されることができ、したがって、部品の電磁適合性を高めることができる。
【0055】
図7では、4つのコイルストランドがプラスチック9中に埋め込まれており、コイル1の中心軸3は互いに平行に配置されている。このような配置は、パッケージとも呼ばれる。4つのコイルストランドは、ここでは、それぞれ4つの誘導部7と5つの接触部8とを備えている。
図7に示されたパッケージは一例に過ぎず、より多くのコイルストランド、特に20を超えるコイルストランドが、任意の他の数の誘導部7及び接触部8と共に使用され得る。接触部8は、この実施例では、凹部によって開け広げられ、続いて平坦化されている。破線は、分離のための3つの可能な分離線12を示しており、当該分離線は、コイル1の中心軸3に対して横方向に、かつ、接触部8を通って延びている。分離が他の任意の数の分離線12に沿って行われる代替的な実施形態も考えられる。コイル1の中心軸3に対して平行な分離も可能である。コイル1が管2の中心軸3に対して平行に分離される場合、誘導部7は互いに直列に接続されている。複数のコイルストランド1が、同時にかつ個別にではなく埋め込まれることにより、製造プロセスは加速され得る。
【0056】
まず第1に、コイル1は、プラスチック9によって、機械的な影響だけでなく、温度及び化学物質による影響からも保護される。しかしながら、プラスチック9は、例えば鉄粉又は磁性ナノ粒子のような、磁気特性を有する粒子と混合されることもできる。プラスチック9に磁性粒子を添加することにより、コイル1のインダクタンスは、増大されることができ、また、プラスチック中の割合を介して適合されることができる。
【0057】
図8は、4つの誘導部7から成るモジュールを示しており、当該誘導部7は、同様にプラスチック9中に埋め込まれ、
図7における破線と同様にパッケージから分離された。図に示されたモジュールは例に過ぎず、より多くのコイル1、特に20より多いコイル1がモジュール内に配置され得る。接触面自体は、下から、場合によっては側面から、接触可能であり、例えば、半田パッド又は導電路を介して、半田付けプロセス又は接着プロセスによって、接触され得る。モジュールの使用は、コイル1の組み立てにおけるサイクルタイムの短縮につながり得る。個々のコイル1の代わりにモジュールが取り付けられることにより、例えばピック・アンド・プレース機械は、複数回ではなく1回だけ、部品を回路基板上に位置決めすれば良い。更に、1つのモジュール内に複数のコイルを配置することにより、複数の個々のコイルを並べて配置する場合と比較して、スペースが節約される。
【0058】
図8のような誘導部7の配置の利点は、個々の誘導部7の可変の接続可能性である。モジュール内のコイル1は、互いに並列に、直列に又は全く相互接続されないように設けられ得る。
図8に示された実施形態では、各コイル1は個別に接触され得る。それとは逆に、モジュールが長手軸3に対して垂直に延びる2つの導電路と接触される場合、誘導部7は電気的に互いに並列に相互接続されている。導電路がモジュールの下で蛇行形状に配置される場合、誘導部7は直列に相互接続されている。
【0059】
図9には、プラスチック9中に埋め込まれた単一のコイル1が見られる。コイル1は、図示された例では、10の巻回を有し、平坦な接触部8を備える。しかしながら、他の実施形態では、コイルは、より多くの巻回、特に20よりも多くの巻回を有することができる。それは、
図8のコイル1を管2の長手軸3に対して平行に分離することによって、あるいは、
図3のようなコイル1を個々にプラスチック9中に埋め込むことによって、製造することができる。パッケージからのコイル1の分離であって、最初にコイルの長手軸に対して平行に、次いで横方向に分離が行われるもの、又はその逆に行われるものも、可能である。
【0060】
図9のようなコイル1は、コイル1と共に一体的に形成された平坦な接触部8を介して接触され得るという利点を有する。管2からのコイル1の一体的な形成は、付加的な接合技術を省略することを可能とする。この理由から、コイル1はより小さな全抵抗を有し、これはより小さな電力損失につながる。更に、とりわけ可能な接点における熱的な負荷も低減され、それにより、コイル1の欠陥に対する脆弱性が低減される。
【符号の説明】
【0061】
1 コイル
2 管
3 中心軸
4 ギャップ
5 外被面
6 管壁
7 誘導部
8 接触部
9 プラスチック
10 接続部
11 コア/EPコア
12 分離線