IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シーの特許一覧

<>
  • 特許-中間状態を有する双安定ソレノイド 図1
  • 特許-中間状態を有する双安定ソレノイド 図2
  • 特許-中間状態を有する双安定ソレノイド 図3
  • 特許-中間状態を有する双安定ソレノイド 図4
  • 特許-中間状態を有する双安定ソレノイド 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】中間状態を有する双安定ソレノイド
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20240918BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01F7/16 B
H02K33/16 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023198083
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2019044840の分割
【原出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2024020500
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】62/642,212
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515138399
【氏名又は名称】フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】HUSCO Automotive Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】マット ペルマン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225189(JP,A)
【文献】実公昭59-023371(JP,Y2)
【文献】実開平05-015407(JP,U)
【文献】特開2003-222172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0265608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
第1コイルベイと第2コイルベイを含み、前記ハウジング内に配置されたワイヤコイルと、
ハウジング内に配置された永久磁石と、
ハウジング内にスライド可能に配置され、第1電機子位置と第2電機子位置との間で移動可能な電機子と、
少なくとも部分的にハウジングから延出して、前記電機子とスライド可能に係合するピンと、
前記電機子と前記ピンの間に付勢されたバネと、
を備えた双安定ソレノイドであって、
前記ピンが障害物に係合することによって、前記ピンが後退位置と伸長位置との間の中間位置に遭遇すると、前記障害物が取り除かれるまで前記ピンに付勢力を維持するように前記バネが構成されており、
前記ピンが前記障害物によって前記伸長位置への変位が妨げられると、前記電機子は前記第1電機子位置から前記第2電機子位置へ移動することが可能になるように、前記ピンが前記電機子とスライド可能に係合する
ことを特徴とする双安定ソレノイド。
【請求項2】
前記ワイヤコイルに通電することなく、前記ピンは前記中間位置から前記伸長位置まで移動する
ことを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記第1コイルベイと前記第2コイルベイとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項4】
前記永久磁石は、その中を前記電機子が貫通して延在する環状形状を画定する
ことを特徴とする請求項3に記載の双安定ソレノイド。
【請求項5】
第1磁極片及び第2磁極片を更に備え、
前記ハウジングは、前記第1磁極片と前記第2磁極片のそれぞれを少なくとも部分的に覆う
ことを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項6】
前記第1磁極片は、第1電機子受容凹部を含み、
前記第2磁極片は、第2電機子受容凹部を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の双安定ソレノイド。
【請求項7】
前記電機子が前記第1電機子位置にあるとき、前記電機子は前記第1磁極片の前記第1電機子受容凹部に接触し、
前記電機子が前記第2電機子位置にあるとき、前記電機子は前記第2磁極片の前記第2電機子受容凹部に接触する
ことを特徴とする請求項6に記載の双安定ソレノイド。
【請求項8】
前記第2磁極片は中空の円筒部分を含み、
前記バネは前記ピンの周囲に配置され、前記第2磁極片の前記中空の円筒部分内に少なくとも部分的に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の双安定ソレノイド。
【請求項9】
前記第1磁極片は、前記ピンをスライド可能に受け入れるための第1開口を含み、
前記第2磁極片は、前記ピンをスライド可能に受け入れるための第2開口を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の双安定ソレノイド。
【請求項10】
前記ピンは、半径方向外側に延びる肩部を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項11】
前記ピンの前記肩部は、前記電機子の第1の側に配置され、
前記バネは、前記電機子の反対側の第2の側の前記ピンの周囲に配置される。
ことを特徴とする請求項10に記載の双安定ソレノイド。
【請求項12】
前記電機子が前記第1電機子位置から前記第2電機子位置に移動し、前記ピンが前記バネによって前記伸長位置に向かって付勢されるとき、前記ピンの前記肩部は前記ピンの軸方向の移動を制限するように構成される
ことを特徴とする請求項10に記載の双安定ソレノイド。
【請求項13】
前記電機子が前記第2電機子位置から前記第1電機子位置に移動するとき、前記電機子は前記ピンの前記肩部と係合して、前記ピンを前記伸長位置から前記後退位置に向かって移動させる
ことを特徴とする請求項10に記載の双安定ソレノイド。
【請求項14】
前記電機子は、前記バネの端部と係合するように構成されたバネ受容凹部を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項15】
前記電機子は、前記ワイヤコイルに第1の方向に電流を供給することによって、前記第1電機子位置から前記第2電機子位置へ作動し、
前記電機子は、前記ワイヤコイルに第2の方向に電流を供給することによって、前記第2電機子位置から前記第1電機子位置へ作動し、
前記電機子が前記第1電機子位置及び前記第2電機子位置のそれぞれにあるとき、前記ワイヤコイルは通電されない
ことを特徴とする請求項1に記載の双安定ソレノイド。
【請求項16】
ハウジングと、
第1コイルベイと第2コイルベイを含み、前記ハウジング内に配置されたワイヤコイルと、
前記第1コイルベイと前記第2コイルベイとの間に配置された永久磁石と、
ハウジング内にスライド可能に配置され、第1電機子位置と第2電機子位置との間で移動可能な電機子と、
少なくとも部分的にハウジングから延出して、前記電機子に対して移動可能であって、後退位置と伸長位置との間で移動可能なピンと、
前記電機子と前記ピンの間に付勢されたバネと、
を備えた双安定ソレノイドであって、
前記電機子が前記第1電機子位置から前記第2電機子位置に移動すると、前記バネが前記ピンに力を加え、それによって前記ピンを伸長位置に向けて付勢し、
前記電機子が前記第1電機子位置から前記第2電機子位置に移動し、前記ピンが障害物に遭遇すると、前記障害物が取り除かれ前記ピンが前記伸長位置に移動することができるまで、前記バネは前記ピンを前記伸長位置に向けて付勢し続けることを特徴とする双安定ソレノイド。
【請求項17】
第1磁極片及び第2磁極片を更に備え、
前記ハウジングは、前記第1磁極片と前記第2磁極片のそれぞれを少なくとも部分的に覆い、
前記第1磁極片は、第1電機子受容凹部を含み、
前記第2磁極片は、第2電機子受容凹部を含み、
前記電機子が前記第1電機子位置にあるとき、前記電機子は前記第1磁極片の前記第1電機子受容凹部に接触し、
前記電機子が前記第2電機子位置にあるとき、前記電機子は前記第2磁極片の前記第2電機子受容凹部に接触する
ことを特徴とする請求項16に記載の双安定ソレノイド。
【請求項18】
前記第1磁極片は、前記ピンをスライド可能に受け入れるための第1開口を含み、
前記第2磁極片は、前記ピンをスライド可能に受け入れるための第2開口を含む
ことを特徴とする請求項17に記載の双安定ソレノイド。
【請求項19】
前記ピンは、半径方向外側に延びる肩部を含み、
前記ピンの前記肩部は、前記電機子の第1の側に配置され、
前記バネは、前記電機子の反対側の第2の側の前記ピンの周囲に配置される。
前記電機子が前記第1電機子位置から前記第2電機子位置に移動し、前記ピンが前記バネによって前記伸長位置に向かって付勢されるとき、前記ピンの前記肩部は前記ピンの軸方向の移動を制限するように構成され、
前記電機子が前記第2電機子位置から前記第1電機子位置に移動するとき、前記電機子は前記ピンの前記肩部と係合して、前記ピンを前記伸長位置から前記後退位置に向かって移動させる
ことを特徴とする請求項16に記載の双安定ソレノイド。
【請求項20】
前記電機子は、前記ワイヤコイルに第1の方向に電流を供給することによって、前記第1電機子位置から前記第2電機子位置へ作動し、
前記電機子は、前記ワイヤコイルに第2の方向に電流を供給することによって、前記第2電機子位置から前記第1電機子位置へ作動し、
前記電機子が前記第1電機子位置及び前記第2電機子位置のそれぞれにあるとき、前記ワイヤコイルは通電されない
ことを特徴とする請求項16に記載の双安定ソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年3月13日出願の、表題「中間状態を有する双安定ソレノイド」である米国仮特許出願第62/642,212号明細書に基づき、これに対する優先権を主張し、これを参照によって全体的に本明細書に組み込む。
【0002】
(政府の資金援助)
適用されない。
【背景技術】
【0003】
双安定ソレノイドは通常、可動電機子(armature)の周りに配置されたワイヤコイルを備える。ワイヤコイルに電流が印加されると、可動電機子を第1の位置から第2の位置へと作動させる(すなわち動かす)ことができる磁界が発生する。一般に、双安定ソレノイド内の電機子は2つの安定位置間を移動可能である。例えば、電機子を第1の位置から第2の位置に作動させるのに十分な大きさで第1の方向にワイヤコイルに電流を印加することができる。電機子は、電流が電機子を第2の位置から第1の位置へと作動させるのに十分な大きさで第2の方向にワイヤコイルに印加されるまで、第2の位置に留まることができる。やはり、電機子は、電流がワイヤコイルに第1の方向に十分な大きさで印加されるまで第1の位置に留まることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ピンが歯車の歯と係合することができ、延在方向に付勢されたままであることを可能にする歯のバット(tooth butt)または中間位置に双安定ソレノイドが入ることを許容する、内部に配置されたバネを含む双安定ソレノイドを提供する。
【0005】
一態様では、本発明は、ハウジング、ワイヤコイル、永久磁石、電機子、ピン、およびバネを備える双安定ソレノイドを提供する。ワイヤコイルおよび永久磁石はハウジング内に配置されている。電機子は、ハウジング内にスライド可能に配置され、第1電機子位置と第2電機子位置との間で移動可能である。ピンは少なくとも部分的にハウジングの外へ延びており、電機子とスライド可能に係合している。バネは電機子とピンの間で付勢されている。ピンが障害物に係合しているためにピンが後退位置と伸長位置との間の中間位置に遭遇すると、障害物が取り除かれるまでピンに付勢力を維持するようにバネが構成されている。
【0006】
別の態様では、本発明は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたワイヤコイルと、ハウジング内に配置された永久磁石と、ハウジング内にスライド可能に配置されて第1電機子位置と 第2電機子位置の間で移動可能な電機子を備える双安定ソレノイドを提供す
る。双安定ソレノイドは、ハウジングから少なくとも部分的に延出して電機子とスライド可能に係合するピンをさらに備える。ピンは、伸長位置と後退位置との間で移動可能である。双安定ソレノイドは、電機子とピンとの間に付勢されたバネをさらに備える。電機子が第1電機子位置から第2電機子位置に移動すると、バネはピンに力を加え、それによってピンを伸長位置に向かって付勢する。そして、電機子が第1電機子位置から第2電機子位置に移動してピンが障害物に遭遇すると、障害物が取り除かれてピンが伸長位置に動くことができるまで、バネはピンを伸長位置に向かって付勢し続ける。
【0007】
本発明の前述および他の態様並びに利点は以下の説明から明らかになるであろう。この
説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、図面には本発明の好ましい実施形態が例として示されている。そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲および本明細書を参照する。
【0008】
以下の本発明の詳細な説明を考慮すると、本発明はよりよく理解され、上記以外の特徴、態様および利点が明らかになるであろう。そのような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様による、ロッカー(rockers)を選択的に作動させて歯車の回転をロックおよびロック解除するように構成された双安定ソレノイドの概略図である。
図2】本開示の一態様による、後退位置にあり、ロッカーが歯車から離れることを可能にする双安定ソレノイドの概略図である。
図3】本開示の一態様による、伸長位置にありかつロッカーを歯車に向かって付勢する双安定ソレノイドの概略図である。
図4】本開示の一態様による、中間位置にありかつロッカーを歯車に向かって付勢する双安定ソレノイドの概略図である。
図5】本開示の一態様による別の双安定ソレノイドの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本開示の一態様による歯車システム10を示す。歯車システム10は、歯車14を包囲するハウジング12、1つ以上のロッカーアーム16、および1つ以上の双安定ソレノイド18を含むことができる。図示の非限定的な例では、歯車システム10は、後述するように、一対のロッカーアーム16と、ロッカーアーム16を作動させるように構成された対応する一対の双安定ソレノイド18とを含む。いくつかの非限定的な例では、歯車システム10は車両の変速機内に配置されてもよい。他の非限定的な例では、歯車システム10は、歯車の選択的回転制御を必要とする用途に配置することができる。
【0011】
歯車14は、ハウジング12内に回転可能に取り付けることができる。一対のロッカーアーム16は、ハウジング12内に回転可能に取り付けることができる。ロッカーアーム16は、時計方向または反時計方向のいずれかの方向への歯車14の回転を選択的に阻止または許容するために歯車14と係合および係合解除するように構成することができる。
【0012】
一対の双安定ソレノイド18はそれぞれ、ロッカーアーム16のうちの対応する1つと相互作用するように構成されたピン22を含むことができる。ピン22はそれぞれ、対応する双安定ソレノイド18の通電を介して選択的に移動可能であり得る。ピン22の作動は、それに対応してロッカーアーム16を作動させて、歯車14を選択的に係合させたり解放させたりすることができる。
【0013】
次に図2を参照すると、双安定ソレノイド18のうちの1つが示されている。当然のことながら、双安定ソレノイド18は実質的に同一とすることができる。双安定ソレノイド18は、第1磁極片26、ボビン27、第2磁極片32、永久磁石34、電機子36、およびバネ37を少なくとも部分的に包むハウジング24を備えることができる。いくつかの非限定的な例では、ハウジング24は、概して中空の円筒形状を画定することができ、そして第1表面38および概ね開いた第2端部42を備えることができる。ハウジング24は、開いた第2端部42に近接して取り付けフランジ44に結合することができる。取り付けフランジ44は、開放第2端部42を少なくとも部分的に覆い、それによってハウジング24内に密閉チャンバを形成することができる。取り付けフランジ44は、例えば、歯車14に対して双安定ソレノイド18を固定するために、ハウジング12に結合することができる。
【0014】
第1磁極片26は、磁性材料(例えば、磁性鋼、鉄、ニッケルなど)から製造することができる。第1磁極片26は、少なくとも部分的にハウジング24内に配置することができ、少なくとも部分的に第1表面38まで延びることができる。第1磁極片26は、第1電機子受容部分46と第1ピン係合開口部48とを含むことができる。第1電機子収容部46は、第1磁極片26の第1端部47に配置することができ、電機子36を収容するように構成された第1電機子収容凹部49を含むことができる。第1ピン係合開口部48は、第1磁極片26の第2端部50を通って延びることができ、それを通してピン22をスライド可能に受け入れるように構成することができる。
【0015】
ボビン27は、ハウジング24の第1表面38に隣接して配置することができる第1ボビン部28を画定することができる。第1ボビン部分28は、ほぼ環状の形状を画定することができ、第1磁極片26の少なくとも一部を囲むことができる。ワイヤコイル55の第1コイルベイ54は、第1ボビン部分28の周りに巻かれてもよい。第2ボビン部分30は、ハウジング24内の取り付けフランジ44に隣接して配置することができる。第2ボビン部分30は、ほぼ環状の形状を画定することができ、第2磁極片32の少なくとも一部分を囲むことができる。ワイヤコイル55の第2コイルベイ66は、第2ボビン部30の周りに巻回されてもよい。
【0016】
第2磁極片32は、磁性材料(例えば、磁性鋼、鉄、ニッケルなど)から製造することができる。第2磁極片32は、ハウジング24内に部分的に配置され、第1磁極片26から軸方向に離間している。第2磁極片32は、少なくとも部分的に取り付けフランジ44を貫通して延在することができ、かつ取り付けフランジ44に結合することができる。第2磁極片32は、第2電機子受容部分56、第2ピン係合開口部60、および中空円筒形部分62を含むことができる。第2電機子収容部56は、第2磁極片32の第1端部61に配置することができ、電機子36を収容するように構成された第2電機子収容凹部63を含むことができる。第2ピン係合開口部60は、第2磁極片32の第2端部64を通って延びることができ、それを通してピン22をスライド可能に受け入れるように構成することができる。中空円筒形部分62は、第2電機子受容部分56と第2磁極片32の第2端部64との間に延びることができる。
【0017】
永久磁石34は、ほぼ環状の形状を画定することができ、第2ボビン部分30と第1ボビン部分28との間のハウジング24内に配置することができる。永久磁石34の環状形状は、電機子36がそこを通って延びることを可能にする。
【0018】
電機子36は、磁性材料(例えば、磁性鋼、鉄、ニッケルなど)から製造することができる。電機子36は、第1部分68、第2部分70、および中央開口部72を備えることができる。動作中、第1部分68は第1磁極片26の第1電機子収容凹部49と係合するように構成され、第2部分70は第2磁極片32の第2電機子収容凹部63と係合するように構成され得る。電機子36の第2部分70は、バネ37と係合するように構成されたバネ受け凹部74をさらに含むことができる。本明細書で説明するように、中央開口部72は、それを貫通してピン22をスライド可能に受け入れるように構成することができる。
【0019】
ピン22は、第1磁極片26、電機子36、および第2磁極片32を通ってスライド可能に延びることができる。ピン22は、第2磁極片32の第2ピン係合開口部60、電機子36の中央開口部72、および第1磁極片26の第1ピン係合開口部48にスライド可能に係合することができる。ピン22は、電機子36の両側に配置された肩部76およびスナップリング凹部78を備えることができる。肩部76は、ピン22から半径方向外向
きに延びることができ、肩部76の外径が中央開口部72の内径よりも大きくなるように寸法設定することができる。スナップリング凹部78はスナップリング82を受けることができ、スナップリング82はスナップリング凹部78内にスナップ嵌めすることができ、それによってスナップリング82をピン22に対して固定する。スナップリング82は、スナップリング82の外径がバネ37の直径よりも大きくなるように大きさを決めることができる。スナップリング凹部78は、電機子36が肩部76とスナップリング82との間に配置されるように、肩部76から軸方向に分離することができる。
【0020】
いくつかの非限定的な例では、双安定ソレノイド18は、肩76ではなく、スナップリング82と電機子32の軸方向反対側(例えば図5参照)でピン22に結合された第2のスナップリング80を含み得る。いくつかの非限定的な例では、双安定ソレノイド18は、スナップリング82ではなく、肩部76と電機子32の軸方向反対側に配置された別の肩部を含むことができる。いずれにせよ、ピン22は、電機子32の軸方向両側に機械的構造を含み、ピン22の軸方向変位を制限し、バネ37が電機子32に対してピン22を付勢し得る構造を提供するように設計されている。
【0021】
バネ37は、スナップリング82と電機子36のバネ受け凹部74との間のピン22の一部を包むことができる。バネ37は、バネ受け凹部74と第1スナップリング82との間で付勢することができる。組み立てられたとき、バネ37はピン22を電機子36から離れる軸方向に(すなわち、図2から見て下向き)付勢することができる。
【0022】
歯車システム10内の双安定ソレノイド18の動作の1つの非限定的な例を、図1~4を参照して以下に説明する。当然のことながら、双安定ソレノイド18の記載された動作は、適切な歯車を含む任意のシステムに適合させることができる。動作中、双安定ソレノイド18のワイヤコイル55は選択的に通電される、すなわち所定の大きさで所望の方向に電流が供給される。ワイヤコイル55に印加される電流に反応して、電機子36は、ワイヤコイル55に印加される電流の方向に応じた2つの安定位置間を移動することができる。図示の非限定的な例では、電機子36は、電機子36が第1磁極片26の第1電機子収容凹部49に接触する第1電機子位置(例えば図2参照)と、電機子36が第2磁極片32の第2電機子収容凹部63と接触する第2電機子位置(例えば図3参照)との間で移動可能であり得る。
【0023】
いくつかの非限定的な例では、電機子36は第1電機子位置にあり、双安定ソレノイド18のワイヤコイル55は第1方向の電流が印加され得る。次に電機子36を第2電機子位置に完全に移動(すなわち作動)させ、ワイヤコイル55の電源を切る(すなわち電流を除去する)ことができる。電機子36は、ワイヤコイル55が第1方向とは反対の第2方向の電流が印加されるまで、第2電機子位置に留まる。次に電機子36は第1電機子位置に完全に戻るようにシフトしてもよく、ワイヤコイル55は電源を切られてよい。このように、双安定ソレノイド18の動作は、ワイヤコイル55が連続的に電流印加されることを要求されないので、低減されたエネルギー入力しか要求しない。
【0024】
肩部76、電機子36、バネ37、およびスナップリング82の間の相互作用により、電機子36の動きはピン22の位置に影響を及ぼし得る。例えば、動作中、ピン22は、第1電機子位置と第2電機子位置との間の電機子36の移動に応答して、後退位置(例えば図2参照)と伸長位置(例えば図3参照)との間で移動し得る。いくつかの例では、ピン22は、障害物のためにピン22が後退位置から伸長位置まで完全に延伸するのが一時的に妨げられる中間位置(例えば、図4参照)に遭遇することがある。後述するように、双安定ソレノイド18の設計および特性により、ワイヤコイル55への通電を必要とせずに、ピン22が中間位置に遭遇し、最終的に所望の伸長位置に到達することが可能になる。
【0025】
いくつかの非限定的な例では、伸長位置と後退位置との間のピン22の移動は、歯車14が所望の方向に回転するのを阻止または可能にし得る。図2および図3に示すように、所望の方向への歯車14の回転を防止することが望ましい場合、電流をワイヤコイル55に選択的に印加してピン22を伸長位置に動かすことができる(例えば図3参照)。ピン22を後退位置から伸長位置に移動させるために、第1方向の電流をワイヤコイル55に印加して電機子36を第2電機子位置に移動させることができる。電機子36が第1電機子位置から第2電機子位置に移動すると、バネ37が圧縮されてスナップリング82、それによりピン22を第1軸方向98(例えば、図2および図3から見て下向き)に変位させる。肩部76が電機子36と係合するまで、ピン22を第1軸方向98に変位させることができる。
【0026】
ピン22が伸長位置に変位すると、ピン22の作動端部96がロッカーアーム16と係合し、ロッカーアーム16を変位させて歯車14の一部と係合する。ピン22が伸長位置に変位するときにロッカーアーム16が歯車の歯86の1つと接触しない場合、ロッカーアーム16は、隣接する歯車の歯86の間の空間において歯車14と接触するように変位される。図3のこの図示位置では、ロッカーアーム16は、歯車14が所与の方向に回転するのを防止するように構成されている。例えば、図3の非限定的な例では、歯車14は反時計回り方向に回転するのを妨げられている。
【0027】
図1の非限定的な例では、一方のロッカーアーム16が時計回り方向への歯車14の回転を選択的に防止し、(例えば右側のロッカーアーム16)他方のロッカーアーム16は、歯車14の反時計回り方向の回転を防止する(例えば、左側のロッカーアーム16)ようにロッカーアーム16を配置することができる。したがって、両方のロッカーアーム16がロック位置に作動されると、歯車14が時計回りおよび反時計回りの両方向に回転するのを同時に防止することができる。
【0028】
続けて図2および図3を参照すると、所望の方向への歯車14の回転を許容することが望ましい場合、電流をワイヤコイル55に選択的に印加してピン22を後退位置(例えば図2参照)に動かすことができる。ピン22を伸長位置から後退位置に移動させるために、第2方向の電流をワイヤコイル55に印加して電機子36を第1電機子位置に移動させることができる。電機子36が第2電機子位置から第1電機子位置に移動すると、電機子36は、電機子36と肩部76との間の係合のためにそれと共にピン22を変位させることができる。すなわち、ピン22は、電機子36が第2電機子位置に達するまで、第2軸方向100(例えば、図2から見て上方)に変位することができる。
【0029】
ピン22が後退位置に変位すると、ピン22の作動端部96は歯車14から離れる方向に変位することができ、それによってロッカーアームスプリング92がロッカーアーム16をギア14との係合から外れるように付勢することができ、歯車14の回転を許容する。
【0030】
図4を参照すると、動作中のいくつかの例では、ピン22が後退位置から伸長位置に変位すると、ロッカーアーム16は、隣接する歯86間の空間内に完全に延びるのではなく、歯86と係合することができる。ロッカーアーム16が歯車の歯86と係合すると、ピン22は図4に示すように中間位置にあることができる。中間位置では、ピン22は伸長位置へ完全に変位するのを阻止される。しかしながら、双安定ソレノイドの設計、特にバネ37の使用は、ピン22の伸長位置への完全な変位を妨げても、電機子36が第2電機子位置に完全に移動することを可能にする。電機子36が第2電機子位置に変位するので、バネ37が圧縮されて、スナップリング82に付勢力を加え、それによってピン22に加えられる。そのため、中間位置では、歯車14が回転してロッカーアーム16が隣接する歯車の歯86の間の空間内に変位することができるようになるまで、ばね37がピン22に付勢力を与え、これによりピン22は伸長位置に変位することができる。
【0031】
双安定ソレノイド18内のバネ37の使用は、ワイヤコイル55が通電されることを必要とせずに、ピン22が中間位置に遭遇し、ピン22が必然的に伸長位置に達することを可能にする。この機能性は、ピン22が中間位置に遭遇したときでさえも電機子36が第2電機子位置に到達することを可能にし、それはソレノイド18の双安定機能性を維持しそして電力消費を減少させる。
【0032】
本明細書内では、明確で簡潔な明細書を書くことができるように実施形態を説明した。しかし、本発明から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせたり分離したりすることができることを意図し、理解するであろう。例えば、本明細書に記載の全ての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0033】
したがって、本発明を特定の実施形態および実施例に関連して説明したが、本発明は必ずしもそのように限定されない。そして、多数の他の実施形態、実施例、使用、修正および実施形態、実施例および使用からの逸脱は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。本明細書に引用された各特許および刊行物の全開示は、あたかもそのような各特許または刊行物が本明細書に個別に参照により組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。
【0034】
本発明の様々な特徴および利点は特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5